JP7025230B2 - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、希土類磁石、特に、Sm、Fe、及びNを含有する希土類磁石及びその製造方法に関する。
高性能希土類磁石としては、Sm-Co系希土類磁石及びNd-Fe-B系希土類磁石が実用化されているが、近年、これら以外の希土類磁石が検討されている。
例えば、Sm、Fe、及びNを含有する希土類磁石(以下、「Sm-Fe-N系希土類磁石」ということがある。)が検討されている。Sm-Fe-N系希土類磁石は、Sm-Fe結晶に、Nが侵入型で固溶していると考えられている。Sm-Fe-N系希土類磁石は、キュリー温度が高く、高温磁気特性に優れた希土類磁石として知られている。ここで、高温とは、150~300℃のことをいう。
Sm-Fe-N系希土類磁石の改良も、検討されている。例えば、特許文献1には、Sm、Fe、及びNを含有する磁性粉末と金属Zn粉末とを混合して成形し、その成形体を熱処理して、保磁力を向上させる試みが開示されている。
特開2015-201628号公報
特許文献1に開示された希土類磁石については、保磁力の向上が充分でない場合があった。すなわち、Sm-Fe-N系希土類磁石においては、保磁力の向上の余地がある、という課題を、本発明者らは、見出した。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、優れた保磁力を有するSm-Fe-N系希土類磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、本開示の希土類磁石及びその製造方法を完成させた。その要旨は、次のとおりである。
〈1〉Sm、Fe、及びNを含有する磁性相と、
前記磁性相の周囲に存在するZn相と、
前記磁性相と前記Zn相との間に存在する中間相と、
を有し、
前記中間相がZnを含有し、かつ、
前記中間相の酸素含有量が、前記Zn相の酸素含有量よりも高い、
希土類磁石。
〈2〉前記中間相の酸素含有量が、前記Zn相の酸素含有量よりも1.5~20.0倍高い、〈1〉項に記載の希土類磁石。
〈3〉前記中間相中に、Ia-3型の結晶構造を有するSm相が形成されている、〈1〉又は〈2〉項に記載の希土類磁石。
〈4〉前記磁性相が、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17(ただし、RはSm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上、iは0~0.50、jは0~0.52、かつ、hは1.5~4.5)で表される相を含む、〈1〉~〈3〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石。
〈5〉式H=α・H-Neff・M(Hは保磁力、Hは異方性磁界、Mは飽和磁化、かつ、Neffは自己減磁界係数)で表される組織パラメタαが0.07~0.55である、〈1〉~〈4〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石。
〈6〉前記組織パラメタαが、0.11~0.55である、〈5〉項に記載の希土類磁石。
〈7〉前記希土類磁石全体に対する酸素含有量が、1.55~3.00質量%である、〈1〉~〈6〉項のいずれか一項に記載の希土類磁石。
〈8〉Sm、Fe、及びNを含有する磁性材原料粉末と、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する改良材粉末とを、前記磁性材原料粉末と前記改良材粉末の合計に対して、前記改良材粉末中のZn成分が1~20質量%になるように混合して、混合粉末を得ること、及び
前記混合粉末が含有する金属Zn又はZn合金の融点のうち、最も低い融点をT℃としたとき、前記混合粉末を、(T-30)℃以上、500℃以下で熱処理すること、
を含み、
前記改良材粉末全体に対し、前記改良材粉末中の酸素含有量が、1.0質量%以下である、
希土類磁石の製造方法。
〈9〉前記磁性材原料粉末が、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17(ただし、RはSm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上、iは0~0.50、jは0~0.52、かつ、hは1.5~4.5)で表される磁性相を含む、〈8〉項に記載の方法。
〈10〉前記混合と前記熱処理を同時に行う、〈8〉又は〈9〉項に記載の方法。
〈11〉前記熱処理の前に、さらに、前記混合粉末を圧粉することを含む、〈8〉又は〈9〉項に記載の方法。
〈12〉前記圧粉を磁場中で行う、〈11〉項に記載の方法。
〈13〉前記改良材粉末の単位粒子について、酸素含有量をC(質量%)、体積に対する表面積の割合をS(cm-1)としたとき、S/C(cm-1・質量%-1)の値が90000以上である、〈8〉~〈12〉のいずれか一項に記載の方法。
本開示の希土類磁石によれば、磁性相を覆う酸化相中の酸素を、Zn相に拡散させて、磁性相とZn相との間の中間相に酸素を濃化させることによって、優れた保磁力を有する、Sm-Fe-N系希土類磁石を提供することができる。
本開示の希土類磁石の製造方法によれば、酸素含有量の少ない改良材粉末を用いて熱処理し、改良材粉末中のZn相に磁性相中の酸素を拡散し、中間相に酸素を濃化させて、優れた保磁力を有する、Sm-Fe-N系希土類磁石の製造方法を提供することができる。
図1は、本開示の希土類磁石の一形態における組織を模式的に示した図である。 図2は、本開示の希土類磁石の別の形態における組織を模式的に示した図である。 図3は、磁性材原料粉末と改良材粉末の混合と熱処理を同時に行う場合の一例を模式的に示す図である。 図4は、実施例5の試料について、走査型透過電子顕微鏡を用いて、中間相付近の組織を観察した結果を示す図である。 図5は、実施例5の試料について、中間相付近の組成をEDX線分析した結果を示す図である。 図6は、実施例5の試料について、中間相付近の組成をEPMA線分析した結果を示す図である。 図7は、実施例5の試料について、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡を用いて、中間相付近の組織を観察した結果を示す図である。 図8は、実施例5の試料について、電子線回折図形を、測定と数値解析で得た結果を示す図である。 図9は、磁性材原料粉末について、走査型透過電子顕微鏡観察を用いて、磁性相の表面付近を観察した結果を示す図である。 図10は、実施例5の試料と磁性材原料粉末について、温度と保磁力の関係を示すグラフである。 図11は、実施例5の試料と磁性材原料粉末について、H/MとH/Mの関係を示すグラフである。 図12は、実施例5及び比較例3の試料について、X線回折(XRD)分析した結果を示す図である。 図13は、実施例5の試料について、透過型電子顕微鏡を用いて、中間相近傍の組織を観察した結果を示す図である。 図14は、図13の破線で囲まれた部分について、透過電子顕微鏡を用いて電子線回折分析をした結果を示す図である。 図15は、アークプラズマデポジション装置を用いて、磁性材原料粉末と改良材粉末とを混合する場合の一例を模式的に示す図である。 図16は、焼結時のヒートサイクルを示す図である。 図17は、実施例15~18及び比較例6~8の試料について、S/Cと保磁力(室温)との関係を示すグラフである。 図18は、実施例9~14の試料について、組織パラメタαと保磁力(160℃)との関係を示すグラフである。 図19は、比較例8の試料について、磁性相とZn相の界面付近の組織を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果を示す図である。
以下、本開示の希土類磁石及びその製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示の希土類磁石及びその製造方法を限定するものではない。
本開示の希土類磁石は、Sm、Fe、及びNを含有する磁性材原料粉末と、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する改良材粉末との混合粉末を、所定の温度で熱処理して得られる。
図1は、本開示の希土類磁石の一形態における組織を模式的に示した図である。図1において、(a)は混合粉末を熱処理する前の組織を示し、(b)は混合粉末を熱処理した後の組織を示す。
改良材粉末の粒子は、磁性材原料粉末の粒子よりも軟らかいため、磁性材原料粉末と改良材粉末とを混合すると、磁性材原料粉末の粒子の表面に、改良材粉末の構成元素で被覆される。また、磁性材原料粉末は酸化されやすいため、磁性材原料粉末の粒子の表面は、酸化相で覆われている。これらのことから、図1(a)に示したように、混合粉末の粒子50は、磁性相10、酸化相15、及びZn相20を有する。磁性相10は酸化相15で覆われており、酸化相15の表面にZn相20が被覆される。
酸化相15には、磁性相10を構成しなかったFeによって、微細なα-Fe相12が形成されている。また、磁性相10と酸化相15と間の界面16では、磁性相10の結晶と酸化相15の結晶が整合していないため、不整合界面14が形成されて、界面16に乱れを生じている。α-Fe相12及び不整合界面14は、磁化反転の核生成サイトになるため、保磁力が低下する。
本発明者らは、改良材粉末全体に対し、改良材粉末中の酸素含有量が1.0質量%以下であるとき、磁化反転の核生成サイトを解消できることを知見した。さらに、本発明者らは、混合粉末を熱処理した後、本開示の希土類磁石100は、次のようになっていることを知見した。すなわち、本開示の希土類磁石100は、図1(b)に示すように、磁性相10、Zn相20、及び中間相30を有する。そして、中間相30はZnを含有し、かつ、中間相30の酸素含有量は、Zn相20の酸素含有量よりも高く、中間相30に酸素が濃化している。
理論に拘束されないが、中間相30がZnを含有し、かつ、中間相30の酸素含有量が、Zn相20の酸素含有量よりも高く、中間相30で酸素が濃化している理由は、次のとおりであると考えられる。
上述したように、磁化反転の核生成サイトとしては、α-Fe相12及び不整合界面14等が挙げられる。α-Fe相12は、磁性相10を構成しなかったFeに由来し、かつ、酸化相15中に存在する。そして、酸化相15は、磁性相10との間で、不整合界面14を形成している。
α-Fe相12及び不整合界面14は、いずれも不安定であり、かつ、Zn相20中のZnは酸素との親和力が高い。そのため、混合粉末の粒子50を熱処理することによって、酸化相15中の酸素は、Zn相20中のZnと結合して、中間相30を形成する。これによって、酸化相15は消滅し、その結果、酸化相15中に存在していたα-Fe相12も消滅し、磁性相10と酸化相15との間の不整合界面14も消滅する。そして、中間相30中に、Ia-3型のSmが形成される。理論に拘束されないが、hcp型のSmが形成される場合と比べて、Ia-3型のSmが形成されることによって、磁性相10と中間相30との間に、ファセット界面17が形成され易く、中間相の結晶性が向上して、保磁力の増加に寄与する。
中間相30は、Znと酸素が結合することによって形成されているため、中間相30はZnを含有する。中間相30がZnを含有することは、中間相30が、熱処理前の混合粉末の粒子50に由来することを意味する。
中間相30の形成は、熱処理前のZn相20の酸素含有量が低いときに生じ、かつ、Zn相20の酸化相15との接触面近傍で生じる。そのため、中間相30で酸素が濃化する。そして、熱処理によって、このような中間相30が形成されるようにするためには、磁性材原料粉末と改良材粉末とで混合粉末を準備するとき、改良材粉末中の酸素含有量を、改良材粉末全体に対して、1.0質量%以下にする。このようにすることで、熱処理によって、図1(b)に示したように、Zn相20中のZnが中間相30の形成に寄与する。
これまで述べてきた知見等によって完成された、本開示の希土類磁石及びその製造方法の構成要件を、次に説明する。
《希土類磁石》
図1(b)に示したように、本開示の希土類磁石100は、磁性相10、Zn相20、及び中間相30を有する。希土類磁石100の形態は、特に限定されない。希土類磁石100の形態としては、粉末、ボンド磁石、及び焼結磁石等が挙げられる。
図1(b)は、本開示の希土類磁石の一形態における組織を模式的に示しており、希土類磁石が粉末である場合の組織の一例である。図1(b)で示したような組織を有する粉末を用いて、ボンド磁石を形成してもよい。
図2は、本開示の希土類磁石の別の形態における組織を模式的に示す図である。図2の組織は、図1(b)で示したような組織を有する粉末を、焼結(液相焼結を含む)して得られた焼結磁石の組織の一例である。希土類磁石100が焼結磁石である場合には、図2に示したように、磁性相10と中間相30で構成される粒子が、Zn相20で連結されていてもよいが、これに限られない。希土類磁石100が焼結磁石である場合の別の形態としては、例えば、Zn相20及び中間相30を構成する元素が相互に拡散して、図2におけるZn相20と中間相30とが一体になっている形態が挙げられる。
希土類磁石100の全体組成は、磁性相10、Zn相20、及び中間相30が、後述する組成、組織、及び形態等になるように、適宜決定される。希土類磁石100の組成は、例えば、SmFe(100-x-y-z-w-p-q)Co ・(Zn(1-s-t) で表される。RはSm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上である。MはGa、Ti、Cr、Zn、Mn、V、Mo、W、Si、Re、Cu、Al、Ca、B、Ni、及びCから選ばれる1種以上並びに不可避的不純物元素である。Mは、Sn、Mg、及びAlから選ばれる1種以上並びに不可避的不純物元素である。x、y、z、w、p、q、及びrは原子%であり、s及びtは割合(モル比)である。
本明細書で、希土類元素とは、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuである。
SmFe(100-x-y-z-w-p-q)Co ・(Zn(1-s-t) で表される組成において、SmFe(100-x-y-z-w-p-q)Co は磁性材原料粉末に由来する。また、(Zn(1-s-t) は改良材粉末に由来する。
Smは、希土類磁石100の主要元素の1つであり、その含有量は、磁性相10が、後述する組成等になるように、適宜決定される。Smの含有量xは、例えば、4.5原子%以上、5.0原子%以上、又は5.5原子%以上であってよく、10.0原子%以下、9.0原子%以下、又は8.0原子%以下であってよい。
希土類磁石100に含まれる希土類元素は、主としてSmであるが、磁性相10が、本開示の希土類磁石及びその製造方法の効果を阻害しない範囲で、Rを含有してもよい。Rは、上述したように、Sm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上である。Rの含有量yは、例えば、0原子%以上、0.5原子%以上、又は1.0原子%以上であってよく、5.0原子%以下、4.0原子%以下、又は3.0原子%以下であってよい。
Feは、希土類磁石100の主要元素の1つであり、Sm及びNとともに、磁性相10を形成する。その含有量は、SmFe(100-x-y-z-w-p-q)Co 式において、Sm、R、Co、M、N、及びOの残部である。
Feの一部をCoとしてもよい。希土類磁石100がCoを含有すると、希土類磁石100のキュリー温度が向上する。Coの含有量zは、例えば、0原子%以上、5原子%以上、又は10原子%以上であってよく、31原子%以下、20原子%以下、又は15原子%以下であってよい。
は、希土類磁石100の磁気特性を阻害しない範囲で、特定の特性、例えば、耐熱性、及び耐食性等を向上させるために添加される元素と、不可避的不純物元素である。特定の特性を向上させる元素としては、Ga、Ti、Cr、Zn、Mn、V、Mo、W、Si、Re、Cu、Al、Ca、B、Ni、及びCから選ばれる1種以上である。不可避的不純物元素とは、希土類磁石100の原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物のことをいう。Mの含有量wは、例えば、0原子%以上、0.5原子%以上、又は1.0原子%以上であってよく、3.0原子%以下、2.5原子%以下、又は2.0原子%以下であってよい。
Nは、希土類磁石100の主要元素の1つであり、その含有量は、磁性相10が、後述する組成等になるように、適宜決定される。Nの含有量pは、例えば、11.6原子%以上、12.5原子%以上、又は13.0原子%以上であってよく、15.6原子%以下、14.5原子%以下、又は14.0原子%以下であってよい。
Znは、混合粉末中の磁化反転の核生成サイトを解消して、希土類磁石100の保磁力を向上させる。改良材粉末中のZnは、希土類磁石100中に残留する。希土類磁石100において、保磁力を向上させつつ、磁化を低下させない程度の量のZnを希土類磁石100に残留(含有)させる。磁化反転の核生成サイトを解消する観点からは、Znの含有量は、希土類磁石100全体に対して、0.89原子%(1質量%)以上が好ましく、2.60原子%(3質量%)以上がより好ましく、4.30原子%(5質量%)以上がより一層好ましい。一方、磁化を低下させない観点からは、Znの含有量は、希土類磁石100全体に対して、15.20原子%(20質量%)以下が好ましく、11.90原子%(15質量%)以下がより好ましく、8.20原子%(10質量%)以下がより一層好ましい。なお、Znの含有量は、希土類磁石100全体に対して、(1-s-t)r原子%で表される。
は、改良材粉末として、Zn合金を使用するときの合金元素である。希土類磁石100は、磁性材原料粉末と改良材粉末との混合粉末を熱処理して得られる。Mは、Znと合金化して、Zn-M合金の溶融開始温度を、金属Znの融点よりも降下させる元素及び不可避的不純物元素である。なお、本明細書において、金属Znとは、合金化されていないZnのことを意味する。
Zn-M合金の溶融開始温度を、金属Znの融点よりも降下させる元素Mとしては、ZnとMとで共晶合金を形成する元素が挙げられる。Mとしては、典型的には、Sn、Mg、及びAl並びにこれらの組み合せ等が挙げられる。このような元素による融点降下作用を阻害せず、希土類磁石100の特定の特性、例えば、耐熱性及び耐食性等を向上させるために添加される元素についても、Mとすることができる。また、不可避的不純物元素とは、改良材粉末の原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物元素のことをいう。
改良材粉末における、Zn及びMの割合(モル比)は、熱処理温度が適正になるように適宜決定すればよい。改良材粉末全体に対するMの割合(モル比)sは、例えば、0以上、0.05以上、又は0.10以上であってよく、0.90以下、0.80以下、又は0.70以下であってよい。また、改良材粉末は金属Zn粉末でもよく、このとき、Mの割合(モル比)sは0である。なお、金属Zn粉末は、Znの含有量が100質量%ではなく、上述した不可避的不純物の含有を許容する。不可避的不純物の許容量は、金属Zn粉末全体に対して、1質量%以下、2質量%以下、又は4質量%以下であってよい。これらのことから、金属Zn粉末のZn含有量は、96質量%以上、98質量%、又は99質量%以上であってよい。
O(酸素)は、磁性材原料粉末及び改良材粉末に由来して、希土類磁石100中に残留(含有)する。酸素は中間相30に濃化されているため、希土類磁石100全体の酸素含有量が比較的高くても、優れた保磁力を確保することができる。希土類磁石100全体に対する酸素含有量は、例えば、5.5原子%以上、6.2原子%以上、又は7.1原子%以上であってよく、10.3原子%以下、8.7原子%以下、又は7.9原子%以下であってよい。なお、希土類磁石100全体に対する酸素含有量は、q+tr原子%である。希土類磁石100全体に対する酸素含有量を、質量%に換算すると、酸素含有量は、1.55質量%以上、1.75質量%以上、又は2.00質量%以上であってよく、3.00質量%以下、2.50質量%以下、又は2.25質量%以下であってよい。
次に、磁性相10、Zn相20、及び中間相30それぞれについて説明する。希土類磁石100の形態が粉末である場合で説明するが、特に断りがない限り、希土類磁石100の形態がボンド磁石又は焼結磁石等であっても同様である。
〈磁性相〉
希土類磁石100は、磁性相10によって、磁気特性を発現する。磁性相10は、Sm、Fe、及びNを含有する。磁性相10には、本開示の希土類磁石及びその製造方法の効果を阻害しない範囲で、Rを含有していてもよい。Rは、Sm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上である。このような磁性相10を、Sm、R、Fe、Co、及びNのモル比で表すと、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17である。ここで、hは、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上がより一層好ましい。一方、hは、4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がより一層好ましい。また、iは、0以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.50以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。そして、jは、0以上、0.10以上、又は0.20以上であってよく、0.52以下、0.40以下、又は0.30以下であってよい。
(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、典型的には、Sm(Fe(1-j)Co17のSmの位置にRが置換しているが、これに限られない。例えば、Sm(Fe(1-j)Co17に、侵入型でRの一部が配置されていてもよい。
また、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、典型的には、(Sm(1-i)Fe17のFeの位置にCoが置換しているが、これに限られない。例えば、(Sm(1-i)Fe17に、侵入型でCoの一部が配置されていてもよい。
さらに、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17については、hは1.5~4.5をとり得るが、典型的には、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17である。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17全体に対する(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%がより一層好ましい。一方、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17のすべてが(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17でなくてもよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17全体に対する(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17の含有量は、98質量%以下、95質量%以下、又は92質量%以下であってよい。
希土類磁石100全体に対する磁性相10の含有量は、70質量%以上が好ましく、75質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましい。希土類磁石100全体に対する磁性相10の含有量が100質量%でないのは、希土類磁石100中には、Zn相20及び中間相30を含有するためである。一方、適正量のZn相20及び中間相30を確保するため、希土類磁石100全体に対する磁性相10の含有量は、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
また、磁性相10全体に対するSm(Fe(1-i)Co17の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより一層好ましい。磁性相10全体に対するSm(Fe(1-i)Co17の含有量が100質量%でないのは、磁性相10は、Sm(Fe(1-i)Co17の他に、O及びMを含有するためである。
磁性相10の粒径は、特に制限されない。磁性相10の粒径は、例えば、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってよい。本明細書で、特に断りがない限り、粒径は、投影面積円相当径を意味し、粒径が範囲で記載されている場合には、全粒子の80%以上がその範囲内に分布しているものとする。
〈Zn相〉
図1(b)に示したように、Zn相20は、磁性相10の周囲に存在する。後述するように、磁性相10とZn相20との間には中間相30が存在するため、Zn相20は中間相30の外周に存在する。
Zn相20は、上述したように、磁性材原料粉末と改良材粉末とを混合したときに、磁性材原料粉末の粒子に、改良材粉末中の金属Zn及び/又はZn合金が被覆されることに由来する。改良材粉末は、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有するため、本明細書では、Zn相20は、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する相を意味する。
Zn相20の厚さは、特に制限されない。Zn相の厚さは、平均で、例えば、1nm以上、10nm以上、又は100nm以上であってよく、1000nm以下、500nm以下、又は250nm以下であってよい。希土類磁石100が、図2に示したような形態である場合には、磁性相10と中間相30を有する粒子相互間の最短距離の平均を、Zn相20の厚さとする。
〈中間相〉
図1(b)に示したように、中間相30は、磁性相10とZn相20との間に存在する。混合粉末の粒子50(図1(a)、参照)を熱処理することによって、酸化相15中の酸素が、Zn相20中のZnと結合して、中間相30を形成する。このため、中間相30は、Znを含有する。中間相30におけるZnの含有量は、希土類磁石100全体に対して、5原子%以上であれば、中間相30による保磁力向上を明瞭に認識できる。保磁力向上観点からは、中間相30におけるZnの含有量は、10原子%以上がより好ましく、15原子%以上がより一層好ましい。一方、中間相30におけるZnの含有量が、希土類磁石100全体に対して、60原子%以下であれば、磁化の低下を抑制できる。磁化の低下を抑制する観点からは、中間相30におけるZnの含有量は、希土類磁石100全体に対して、50原子%以下がより好ましく、30原子%以下がより一層好ましい。なお、中間相30におけるZnの含有量は、中間相30におけるEDX線分析結果の平均値である。
中間相30の酸素含有量は、Zn相20の酸素含有量より高く、中間相30に酸素が濃化している。この濃化により、希土類磁石100の保磁力を向上させることができる。中間相30の酸素含有量が、Zn相20の酸素含有量よりも1.5倍以上高ければ、保磁力をより向上させることができる。保磁力向上の観点からは、中間相30の酸素含有量は、Zn相20の酸素含有量よりも3.0倍以上高いことがより好ましく、6.0倍以上高いことがより一層好ましい。一方、中間相30の酸素含有量が、Zn相20の酸素含有量の20.0倍以下であれば、保磁力向上がそれ以上期待できないにもかかわらず、より多くのZnを加えることを回避できる。この観点からは、中間相30の酸素含有量が、Zn相20の酸素含有量の15.0倍以下であることがより好ましく、10.0倍以下であることがより一層好ましい。なお、Zn相20及び中間相30における酸素含有量は、Zn相20及び中間相30におけるEDX線分析結果の平均値である。
〈組織パラメタα〉
上述したように、中間相30の形成によって、α-Fe相12と不整合界面14が消滅する。理論に拘束されないが、α-Fe相12と不整合界面14が消滅することによって、磁性相10と中間相30との間には、ファセット界面17が形成される。ファセット界面17としては、例えば、(101)面、(100)面、(101)面、(201)面、(-102)面、及び(003)面等の低指数面が挙げられる。
このようなファセット界面17の形成により、中間相30における結晶性が向上する。それにより、中間相30における異方性磁界が、磁性相10の異方性磁界と同等になる。その結果、希土類磁石100の保磁力が向上する。
希土類磁石100の結晶性は、組織パラメタαを用いて表すことができる。αの算出方法は一般的に知られており、Kronmullerの式から算出する。Kronmullerの式は、H=α・H-Neff・M(Hは保磁力、Hは異方性磁界、Mは飽和磁化、かつ、Neffは自己減磁界係数)で表される。
αが0.07以上であれば、中間相30における結晶性が向上して、保磁力の向上が認められる。結晶性向上の観点からは、αは、0.11以上がより好ましく、0.15以上がより一層好ましい。一方、αが1のとき、希土類磁石100の結晶表面に、格子欠陥が全く存在しないが、そのようなことは、現実にはなく、αが、0.45~0.55であれば、非常に結晶性が高いといえる。このことから、αは、0.55以下、0.50以下、又は0.45以下であってよい。さらに、αが、0.30以下、0.25以下、0.20以下、又は0.15以下であっても、結晶性の向上が実質的に認められ、その結果、保磁力向上の効果も、実質的に認められる。
上述したように、中間相30の酸素含有量は、Zn相20の酸素含有量より高く、中間相30に酸素が濃化している。この濃化により、図1(a)に示したα-Fe相12及び不整合界面14が消滅する。これらの消滅と結晶性の向上には、強い相関があることから、αの値が高いとき、中間相30の酸素含有量は、Zn相20の酸素含有量より高く、中間相30に酸素が濃化しているといってよい。αが0.070以上であれば中間相30に酸素が濃化しているといってよい。
さらに、αが0.090以上であれば、磁性材原料粉末と改良材粉末との混合粉末から焼結磁石(液相焼結の場合も含む)を得たとき、焼結磁石の保磁力は、磁性材原料粉末が有する保磁力を超えるだけにとどまらず、高温時の保磁力にも優れる。αが0.090以上であれば、高温時(160℃)でも550A/m以上の保磁力が得られ、例えば、車載用のモータにも適用し易くなる。高温保磁力の確保の観点からは、αは0.090以上であってよい。
〈希土類磁石全体に対する酸素含有量〉
希土類磁石100に存在する酸素は、磁性材原料粉末と改良材粉末との混合粉末に由来する。希土類磁石100においては、改良粉末全体に対し、改良粉末中の酸素含有量が1.0質量%以下である混合粉末を用いる。それによって、酸素含有量の多い磁性材原料粉末を用いても、中間相30に酸素を濃化させて、保磁力を向上させることができる。そして、熱処理後の希土類磁石100に、比較的多くの酸素が残留(含有)しても、充分に保磁力を向上させることができる。
すなわち、希土類磁石100全体に対して、酸素含有量が1.55質量%以上、2.00質量%以上、又は2.25質量%以上であっても、充分に保磁力を向上させることができる。一方、希土類磁石100全体に対して、酸素含有量が3.00質量%以下、2.75質量%以下、又は2.50質量%以下であれば、保磁力向上が抑制され難い。
《製造方法》
次に、本開示の希土類磁石100の製造方法について説明する。本開示の希土類磁石100の製造方法は、混合粉末準備工程と混合粉末の熱処理工程を含む。以下、それぞれの工程について説明する。
〈混合粉末準備工程〉
先ず、Sm、Fe、及びNを含有する磁性材原料粉末と、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する改良材粉末とを、磁性材原料粉末と改良材粉末の合計に対して、改良材粉末中のZn成分が1~20質量%になるように混合して、混合粉末を得る。
磁性材原料粉末は、Sm、Fe、及びNを含有する。磁性材原料粉末中には、上述した、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相10を含有してもよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相10については、希土類磁石100で説明した内容と同様のことがいえる。
磁性材原料粉末は、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相10の他に、希土類磁石100の磁気特性を阻害しない範囲で、酸素及びMを含有してもよい。希土類磁石100の磁気特性を確保する観点からは、磁性材原料粉末全体に対する、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相10の含有量は、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってよい。一方、磁性材原料粉末全体に対して、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相10の含有量を過度に高くしなくとも、実用上問題はない。したがって、その含有量は、97質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってよい。(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17で表される磁性相10の残部が、O及びMの含有量となる。
本開示の製造方法では、比較的酸素含有量の多い磁性材原料粉末を用いることができるため、磁性材原料粉末の酸素含有量の上限は、磁性材原料粉末全体に対して、比較的高くてもよい。このことから、磁性材原料粉末の酸素含有量は、磁性材原料粉末全体に対して、3.0質量%以下、2.5質量%以下、又は2.0質量%以下であってよい。一方、磁性材原料粉末中の酸素含有量は少ない方が好ましいが、磁性材原料粉末中の酸素量を極度に低減することは、製造コストの増大を招く。このことから、磁性材原料粉末の酸素含有量は、磁性材原料粉末全体に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。
磁性材原料粉末の粒径は、特に制限されない。磁性材原料粉末の粒径は、例えば、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってよい。
改良材粉末は、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する。改良材粉末は、例えば、Zn(1-s-t) で表される金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する。なお、Zn(1-s-t) で表される改良材粉末についての事項は、希土類磁石100で説明した内容も含む。
Zn(1-s-t) で表される式で、Oは、改良材粉末中のZn又はZn合金の一部と酸化物又は吸着物を構成している酸素を表し、tはそのような酸素の総和である。
改良材粉末の酸素含有量が、改良材粉末全体に対し、1.0質量%以下であれば、中間相30に酸素を濃化させて、保磁力を向上させることができる。酸素濃化の観点からは、改良材粉末の酸素含有量は、改良材粉末全体に対し、少ない方が好ましい。改良材粉末の酸素含有量は、改良材粉末全体に対し、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.4質量%以下、又は0.2質量%以下であってよい。一方、改良材粉末の酸素含有量を、改良材粉末全体に対し、過剰に低くすることは、製造コストの増大を招く。この観点から、改良材粉末の酸素含有量は、改良材粉末全体に対し、0.01質量%以上、0.05質量%以上、又は0.09質量%以上であってよい。
中間相10に、できるだけ多くの酸素を濃化させるには、改良材粉末の酸素含有量を低減することの他に、磁性材原料粉末と改良材粉末との接触面積を増加させることが重要である。磁性材原料粉末と改良材粉末との接触面積は、磁性材原料粉末と改良材粉末の粒径に影響される。磁性材原料粉末の粒径は、磁気特性との兼ね合いもあることから、改良材粉末の粒径と比べて、その自由度はそれほど大きくない。このことから、実用的には、改良材粉末の粒径を制御することによって、中間相10への酸素の濃化を高めることが多い。改良材粉末について、酸素含有量と粒径の関係は、後ほど詳述する。
Zn(1-s-t) で表される式は、Zn(1-s-t) で表されるZn合金を示す場合と、金属ZnとZn合金との混合物の平均組成がZn(1-s-t) で表される場合の両方を含む。なお、上式中のsが0であるとき、改良材粉末は、金属Zn粉末である。
Zn合金としては、例えば、Zn-Sn合金(共晶温度:200℃)、Zn-Mg合金(共晶温度:341℃)、及びZn-Al合金(共晶温度:380℃)等が挙げられる。Zn-Sn合金のSn含有量は、2~98原子%の範囲から適宜決定すればよく、例えば、30~90原子%であってよい。Zn-Mg合金のMgの含有量は、5~50原子%の範囲から適宜決定すればよく、例えば、5~15原子%であってよい。Zn-Al合金のAl含有量は、2~95原子%の範囲から適宜決定すればよく、例えば、5~25原子%であってよい。
改良材粉末の粒径は、中間相30が形成されるように、磁性材原料粉末の粒径との関係で適宜決めればよい。改良材粉末の粒径は、例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上、3μm以上、10μm以上であってよく、500μm以下、300μm以下、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってよい。磁性材原料粉末の粒径が1~10μmの場合には、磁性材原料粉末への改良材粉末の被覆を確実にするため、改良材粉末の粒径は、200μm以下、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってよい。
改良材粉末の粒径が不適切で中間相30が形成されない場合には、前述した組織パラメタαが急激に低下して、αが0.030以下となる。
上述したように、保磁力の一層の向上には、改良材粉末において、酸素含有量と粒径の関係が重要である。
例えば、改良材粉末の粒径が、ある範囲内では、改良材粉末の酸素含有量が低減すると、保磁力が向上するが、やがて、その保磁力向上は飽和する。これにより、改良材粉末の酸素含有量が低くても、改良材粉末の粒子が大きいと、保磁力の向上には限界がある。
一方、例えば、改良材粉末の酸素含有量が、ある範囲内では、改良材粉末の粒径を小さくすると、保磁力が向上するが、やがて、その保磁力向上は飽和する。これにより、改良材粉末の粒径が小さくても、改良材粉末の酸素含有量が高いと、保磁力の向上には限界がある。
また、例えば、改良材粉末の粒径が小さいと、酸素含有量が飽和しやすいが、改良材粉末の粒子表面に、僅かにでも、非酸化部分が残存していると、十分な量の酸素を改良材が吸収することができる。理論に拘束されないが、これは、非酸化部分は、熱処理及び/又は焼結(液相焼結を含む)中に、液相になりやすく、非酸化部分から改良材粉末が半溶融又は溶融して、磁性材原料粉末を改良材で被覆しやすいためである。
これまで説明した例示の内容から、保磁力の一層の向上には、改良材粉末の酸素含有量と改良材粉末の粒径との関係を決めることが好ましい。改良材粉末の粒径は、さらに、改良材粉末の形態も考慮することが、より好ましい。改良材粉末の形態を、改良材粉末の個々の粒子の体積と表面積の関係で表してもよい。
改良材粉末の単位粒子について、酸素含有量をC(質量%)、体積に対する表面積の割合をS(cm-1)としたとき、S/C(cm-1・質量%-1)の値は、90000以上が好ましい。S/Cの値が90000以上であると、磁性材原料粉末と改良材粉末とを焼結(液相焼結を含む)した場合でも、磁性材原料粉末が有する保磁力を超えることができ、かつ、組織パラメタαを0.07以上にできる。これらの観点からは、S/Cの値は、95000以上がより好ましく、100000以上がより一層好ましい。一方、理論的には、S/Cの値は高いほど好ましいが、実用的には、350000以下、30000以下、又は25000以下であってよい。
理論に拘束されないが、S/Cには、次のような技術的意義がある。S/Cを大きくするためには、改良材粉末の酸素含有量Cを低減し、かつ、Sを増加させるのがよい。Sを増加させるには、改良材粉末の単位粒子について、その表面積を増加させ、かつ、その体積を小さくするのがよい。Sが増加するには、典型的には、改良材粉末の粒径を小さくすることが挙げられる。
改良材粉末は、多数の改良材粒子の集合体である。個々の改良材粒子の形状(形態)及び大きさは、同一ではない。改良材粉末の単位粒子は、使用する改良材粉末全体を代表する物性値を有する粒子を意味する。
改良材粒子の単位粒子(以下、単に「単位粒子」ということがある。)の酸素含有量C(質量%)は、使用する改良材粉末全体の酸素含有量(質量%)で代表される。単位粒子の粒径d(cm)は、使用される改良材粉末全体の平均粒径で代表される。本明細書で、特に断りがない限り、粒径は、投影面積円相当径を意味し、平均粒径とは、その平均である。単位粒子の体積(cm)は、4/3π(d/2)で代表される。単位粒子の表面積(cm)は、4π(d/2)で代表される。体積に対する表面積の割合をS(cm-1)は、(4π(d/2))/(4/3π(d/2))で代表される。
改良材粉末に、少量の石油類を加えてもよい。石油類を加えることによって、酸化を抑制し、磁性材原料粉末との潤滑性がよくなり、均一に混合することができる。混合に使用できる石油類としては、ヘプタン、オクタン、及びヘキサン並びにそれらの組み合せ等が挙げられる。
磁性材原料粉末と改良材粉末の合計に対して、改良材粉末中のZn成分が1~20質量%になるように、磁性材原料粉末と改良材粉末を秤量し、そして、混合する。秤量及び混合する際の雰囲気については、磁性材原料粉末及び改良材粉末の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気に、窒素ガス雰囲気も含まれる。
Zn成分が1質量%以上であれば、中間相30を形成することができる。中間相30の形成の観点からは、Zn成分は3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、9質量%以上がより一層好ましい。一方、Zn成分が20質量%以下であれば、磁化の低下を抑制できる。磁化の低下を抑制する観点からは、Zn成分は18質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下がより一層好ましい。なお、本明細書において、Zn成分とは、改良材粉末が、Zn(1-s-t) で表される合金を含む場合に、M及びOを含まないZnだけの含有量を意味する。
磁性材原料粉末は、磁性相10を含有する。磁性相10は金属間化合物であるため、磁性材原料粉末の粒子は硬い。改良材粉末は、金属Zn及び/又はZn合金を含有する。金属Zn及びZn合金は金属材料であるため、改良材粉末の粒子は軟らかい。そのため、磁性材原料粉末と改良材粉末を混合すると、改良材粉末の粒子が変形して、磁性材原料粉末の粒子の外周が、改良材粉末中の金属Zn及び/又はZn合金で被覆される。ただし、磁性材原料粉末の粒径に対して、改良材粉末の粒径が過剰に大きいと、このような被覆は実現されにくい。その結果、中間相30を得ることが難しい。
また、改良材粉末は、磁性材原料粉末よりも融点が低いため、磁性材原料粉末と改良材粉末の混合と熱処理を同時に行う場合には、先ず、改良材粉末が溶融して、磁性材原料粉末の粒子の外周が、改良材粉末中の金属Zn又はZn合金で被覆される。熱処理については後述する。
磁性材原料粉末と改良材粉末との混合に用いる混合機は、特に制限されない。混合機としては、マラーホイール式ミキサー、アジテータ式ミキサー、メカノフュージョン、V型混合器、及びボールミル等が挙げられる。磁性材原料粉末の粒子の外周を、改良材粉末中の金属Zn又はZn合金で被覆する観点からは、ボールミルを用いることが好ましい。混合と熱処理を同時に行う場合には、ロータリーキルン炉等を用いることができる。V型混合器は、2つの筒型容器をV型に連結した容器を備え、その容器を回転することによって、容器中の粉末が、重力と遠心力で集合と分離が繰り返され、混合される装置である。
磁性材原料粉末と改良材粉末を混合する際、硬質ボールを用いてもよい。硬質ボールを用いることによって、磁性材原料粉末の粒子と被膜の密着性を向上させることができる。これによって、被膜が剥がれ難くなるだけでなく、酸化相15中の酸素がZn相20と反応しやすくなり、均一な中間相30を形成することができる。その結果、保磁力が向上する。
また、硬質ボールを用いることによって、磁性材原料粉末と改良材粉末をより均一に混合することができる。また、混合条件によっては、磁性材原料粉末と改良材粉末の粒子を粉砕しながら混合することができる。
磁性材原料粉末の粒子を粉砕することによって、磁性相10の粒径が小さくなり、希土類磁石100の磁化及び保磁力を向上させることができる。磁性相10の粒径が小さくなると、磁化を発現する相を細かく磁気分断することができるため、磁性材原料粉末の粒子の粉砕は、保磁力向上に特に寄与する。
改良材粉末の粒子を粉砕することによって、改良材粉末の粒子の粒径が小さくなり、磁性材原料粉末の粒子の外周に、金属Zn及び/又はZn合金が被覆され易くなる。
硬質ボールの材質及び粒径は、特に制限されない。硬質ボールの材質としては、鋼、ステンレス、セラミック、及びナイロン等が挙げられる。硬質ボールの粒径は、例えば、0.5mm以上、1.0mm以上、2.5mm以上、又は4.0mmであってよく、20.00mm以下、10.0mm以下、8.0mm以下、又は6.0mm以下であってよい。
混合時間及び混合機の回転速度は、混合機の種類、混合機の回転速度、及び粉末の量等を考慮して適宜決定すればよい。混合時間は、例えば、10分以上、30分以上、又は50分以上であってよく、120分以下、90分以下、又は70分以下であってよい。混合機の回転速度は、例えば、70rpm以上、90rpm以上、又は110rpm以上であってよく、300rpm以下、250rpm以下、又は200rpm以下であってよい。
〈混合粉末の熱処理工程〉
混合粉末50が含有する金属Zn又はZn合金の融点のうち、最も低い融点をT℃としたとき、準備した混合粉末50(図1(a)、参照)を、(T-30)℃以上、500℃以下で熱処理する。この熱処理によって、混合粉末50のZn相20に磁性相10中の酸素が拡散し、中間相30(図1(b)、参照)に酸素が濃化する。さらに、中間相30中に、Ia-3型のSmが形成される。理論に拘束されないが、hcp型のSmが形成される場合と比べて、Ia-3型のSmが形成されることによって、磁性相10と中間相30との間に、ファセット界面17が形成され易く、中間相の結晶性が向上して、保磁力の増加に寄与する。
混合粉末50が含有する金属Zn又はZn合金の融点のうち、最も低い融点をT℃としたとき、熱処理温度が(T-30)℃以上であれば、混合粉末50が軟化又は液化して、混合粉末50のZn相20に磁性相10中の酸素が拡散し、中間相30に酸素が濃化する。酸素の濃化の観点からは、熱処理温度は、(T-20)℃以上、(T-10)℃以上、又はT℃以上であってもよい。
Zn合金の融点は、溶融開始温度とする。また、Zn合金が共晶合金である場合には、溶融開始温度は、共晶温度とする。
「混合粉末50が含有する金属Zn又はZn合金の融点のうち、最も低い融点をT℃としたとき、混合粉末を、(T-30)℃以上、500℃以下で熱処理する」とは次のことを意味する。なお、熱処理温度とは、保持温度のことをいう。
混合粉末50が、金属Znを含有し、かつ、Zn合金を含有しない場合には、Tは金属Znの融点である。金属Znの融点は419.5℃であるため、熱処理温度は、389.5(419.5-30)℃以上、500℃以下である。
混合粉末50が、金属Znを含有せず、かつ、Zn合金を含有する場合には、TはZn合金の融点である。Zn合金が複数種類のZn合金である場合には、それらのZn合金の融点のうち、最も低い融点をTとする。例えば、Zn合金として、Zn-Sn合金(共晶温度:200℃)とZn-Mg合金(共晶温度:341℃)を含有する場合には、熱処理温度は、170(200-30)℃以上、500℃以下である。
混合粉末50が、金属ZnとZn合金の両方を含有する場合には、Tは、Zn合金の融点である。例えば、改良材粉末が、金属ZnとZn-Mg合金(共晶温度:341℃)とを含有する場合、熱処理温度は、311(341-30)℃以上、500℃以下である。
熱処理温度が500℃以下であれば、保磁力が低下することはない。理論に拘束されないが、熱処理温度が500℃を超えると、磁性相10の窒素が乖離して磁性相10が分解し、保磁力が低下すると考えられる。保磁力低下を抑制する観点から、熱処理温度は、490℃以下、470℃以下、又は450℃以下であってよい。
熱処理時間は、混合粉末の量などによって、適宜決定すればよい。熱処理時間には、熱処理温度に達するまでの昇温時間は含まない。熱処理時間は、例えば、10分以上、30分以上、又は50分以上であってよく、600分以下、240分以下、又は120分以下であってよい。
熱処理時間が経過したら、熱処理対象物を急冷して、熱処理を終了する。急冷により、希土類磁石100の酸化等を抑制することができる。また、急冷速度は、例えば、2~200℃/秒であってよい。
熱処理雰囲気については、磁性材原料粉末及び改良材粉末の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。
〈混合と熱処理の同時処理〉
磁性材原料粉末と改良材粉末の混合と熱処理を同時に行ってもよい。図3は、磁性材原料粉末と改良材粉末の混合と熱処理を同時に行う場合の一例を模式的に示す図である。図3において、(a)は、改良材粉末が溶融する前の状態を示す図であり、(b)は、改良材粉末が溶融した後の状態を示す図である。
図3は、ロータリーキルン炉を用いる場合を示すが、混合と熱処理を同時にすることができれば、これに限られない。ロータリーキルン炉(図示しない)は、撹拌ドラム110を備える。撹拌ドラム110は、材料格納部120及び回転軸130を有する。回転軸130には、電動機等の回転手段(図示しない)が連結されている。
材料格納部120に、磁性材原料粉末150と改良材粉末160を装入する。その後、材料格納部120を加熱して、改良材粉末160の溶融液170を得て、磁性材原料粉末150を溶融液170に接触させる。
材料格納部120の回転速度については、回転速度が速すぎると、溶融液170中の磁性材原料粉末150が材料格納部120の内壁に押し付けられることにより、撹拌効果が低下する。一方、材料格納部120の回転速度が遅すぎると、溶融液170中で磁性材原料粉末150が沈降して、撹拌効果が低下する。
材料格納部120の回転速度を適切に設定することによって、均一な中間相30を形成することができる。均一な中間相30を得るため、材料格納部120の回転速度は、例えば、5rpm以上、10rpm以上、又は20rpm以上であってよく、200rpm以下、100rpm以下、又は50rpm以下であってよい。
加熱温度、加熱時間、及び加熱雰囲気は、それぞれ、上述の熱処理温度、熱処理時間、及び熱処理雰囲気に準拠して決定すればよい。
〈堆積混合〉
磁性材原料粉末の表面に、改良材粉末中の金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを堆積させることによって、磁性材原料粉末と改良材粉末とを混合してもよい。堆積混合には、アークプラズマデポジション装置等を用いることができる。図15は、アークプラズマデポジション装置を用いて、磁性材原料粉末の粒子の表面に、金属Zn及び/又はZn合金を堆積する一例を模式的に示す図である。
アークプラズマデポジション装置200は、アークプラズマガン210と、ステージ230を備える。アークプラズマガン210とステージ230は対向している。ステージ230には、磁性材原料粉末150が載置されている。アークプラズマガン210には、改良材粉末(図示しない)が装填される。アークプラズマガン210からは、ステージ230に向かって、改良材粉末中の金属Zn及び/又はZn合金の粒子220が放出される。粒子220は、蒸気及び/又は液滴である。粒子220が磁性材原料粉末150の粒子に衝突することによって、磁性材原料粉末150の粒子の表面に、金属Zn及び/又はZn合金が堆積して、混合粉末を得ることができる。
〈圧粉〉
熱処理の前に、混合粉末を圧粉してもよい。圧粉することによって、混合粉末の個々の粒子が相互に密着するため、良好な中間相30を形成することができ、保磁力を向上させることができる。圧粉方法は、金型を用いたプレス等の常法でよい。プレス圧力は、例えば、50MPa以上、100MPa以上、又は150MPa以上であってよく、1500MPa以下、1000MPa以下、又は500MPa以下であってよい。
圧粉は、磁場中で行ってもよい。これにより、圧粉体に配向性をもたせることができ、磁化を向上させることができる。磁場中で圧粉する方法としては、磁石製造時に一般的に行われている方法でよい。印加する磁場は、例えば、0.3T以上、0.5T以上、又は0.8T以上であってよく、5.0T以下、3.0T以下、又は2.0T以下であってよい。
〈焼結〉
熱処理の一態様として、例えば、焼結が挙げられる。典型的には、混合粉末の圧粉体を焼結するが、これに限られない。焼結には、材料の一部が液相になる液相焼結が含まれる。本開示の希土類磁石の製造方法では、典型的には、改良材粉末の一部が溶融する。焼結方法としては、希土類磁石の製造で用いられる周知の方法を適用することができる。
焼結条件について、図面を用いて説明する。図16は、焼結時のヒートサイクルを示す図である。図16で、T(℃)は焼結温度を示す。焼結温度は、上述した熱処理温度に準拠して決めればよい。図16で、M(分)は焼結時間を示す。焼結では、後述するように、加熱中に加圧するため、上述した熱処理時間に比べて短時間でもよい。焼結時間は、例えば、1分以上、3分以上、又は5分以上であってよく、120分以下、60分以下、又は40分以下であってよい。
焼結時間が経過したら、焼結対象物を金型から取り出して、焼結を終了する。焼結雰囲気については、磁性材原料粉末及び改良材粉末の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気を含む。
焼結方法は、常法でよく、例えば、放電プラズマ焼結法(SPS:Spark Plasma Sintering)、高周波加熱によるホットプレス、及び集光加熱によるホットプレス等が挙げられる。放電プラズマ焼結法、高周波加熱によるホットプレス、及び集光加熱によるホットプレスは、所望の温度まで急速に圧粉体を昇温でき、圧粉体が所望の温度に達するまでに、結晶粒が粗大化することを防止できる点で好ましい。
焼結については、圧粉体を装入した金型に圧力を加える加圧焼結を行ってもよい。加圧焼結は、焼結性を向上させる。圧粉体は改良材粉末を含有するため、焼結圧力が0.80GPa以上であれば、焼結温度が上述した範囲のような低温域でも、圧粉体を焼結することができる。その結果、焼結体の密度を向上させることができる。焼結体の密度の向上は、本開示の製造方法で得られる希土類磁石の磁気特性の向上に繋がる。焼結性の観点からは、焼結圧力は、0.20GPa以上が好ましく、0.50GPa以上がより好ましく、0.95GPa以上がより一層好ましい。
一方、焼結圧力が1.80GPa以下であれば、焼結体が割れ難く、その結果、焼結体に「欠け」が生じ難い。焼結体の欠けを抑制する観点からは、焼結圧力は1.60GPa以下が好ましく、1.50GPa以下がより好ましく、1.40GPa以下がより一層好ましい。
加圧焼結に用いる金型には、耐久性が要求される。金型の耐久性の観点からは、焼結圧力は低いほどよい。金型が超硬合金でできている場合には、焼結圧力は、1.80GPa以下、1.75GPa以下、又は1.50GPa以下であってよい。なお、超硬合金とは、炭化タングステンと結合剤であるコバルトとを焼結して得られる合金である。
金型が鉄鋼材料でできている場合には、焼結圧力は、さらに低い方が好ましく、例えば、1.45GPa以下、1.30GPa以下、又は1.15GPa以下であってよい。
金型に用いる鉄鋼材料としては、例えば、炭素鋼、合金鋼、工具鋼、及び高速度鋼等が挙げられる。炭素鋼としては、例えば、日本工業規格のSS540、S45C、及びS15CK等が挙げられる。合金鋼としては、例えば、日本工業規格のSCr445、SCM445、又はSNCM447等が挙げられる。工具鋼としては、例えば、日本工業規格のSKD5、SKD61、又はSKT4等が挙げられる。高速度鋼としては、例えば、日本工業規格のSKH40、SKH55、又はSKH59等が挙げられる。
焼結時間Mを長くすることができる場合、あるいは、非常に高い焼結性が要求されない場合には、無加圧焼結でもよい。無加圧焼結の際の焼結時間としては、5分以上、15分以上、30分以上であってよく、120分以下、90分以下、又は60分以下であってよい。
焼結雰囲気は、焼結中の圧粉体及び焼結体の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気には、窒素ガス雰囲気が含まれる。
以下、本開示の希土類磁石及びその製造方法を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明する。なお、本開示の希土類磁石及びその製造方法は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
《試料の準備》
希土類磁石の試料を次の要領で準備した。
〈実施例1~5及び比較例1~3〉
磁性材原料粉末と改良材粉末とを、ボールミルを用いて混合した。磁性材原料粉末については、磁性材原料粉末全体に対して、SmFe17の含有量が、95質量%以上である粉末を用いた。改良材粉末については、金属Zn粉末を用いた。磁性材原料粉末の粒径は、3μmであった。改良材粉末の粒径は、1μmであった。磁性材原料粉末と改良材粉末の合計質量は、15gとした。ボールミルの回転速度は125rpmとした。回転時間は60分とした。混合の際には、磁性材原料粉末と改良材粉末に、ヘプタンを80cm加えた。混合の際には、直径が1mmのステンレス球100gと、直径が5mmのステンレス球50gを加えた。磁性材原料粉末全体に対する磁性材原料粉末の酸素含有量、改良材粉末全体に対する改良材粉末の酸素含有量、及び、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量を、それぞれ、表1に示した。なお、各粉末の酸素含有量は、非分散型赤外線吸収法によって測定した。また、実施例1~5及び比較例1~3については、改良材粉末として金属Zn粉末を用いたため、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量は、混合粉末全体に対する金属Zn粉末量である。
磁性材原料粉末と改良材粉末との混合粉末1.5gを、磁場中で、6.5mm×7mm×7mmの大きさに圧粉した。適用磁場は2.3MA・M-1、成形圧力は200MPaとした。
成形体を30分にわたり熱処理した。熱処理は成形体を200℃/秒で急冷して終了した。熱処理温度は、表1に示した。
〈実施例6~8及び比較例4~5〉
磁性材原料粉末と改良材粉末とを、ロータリーキルン炉を用いて、混合と熱処理を同時に行った。磁性材原料粉末については、磁性材原料粉末全体に対して、SmFe17の含有量が、95質量%以上である粉末を用いた。改良材粉末については、金属Zn粉末を用いた。磁性材原料粉末の粒径は、3μmであった。改良材粉末の粒径は、7μmであった。磁性材原料粉末と改良材粉末の合計質量は、10gであった。
磁性材原料粉末全体に対する磁性材原料粉末の酸素含有量、改良材粉末全体に対する改良材粉末の酸素含有量、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn量、及び熱処理時間を、それぞれ、表1に示した。なお、各粉末の酸素含有量は、非分散型赤外線吸収法によって測定した。また、実施例6~8及び比較例4~5については、改良材粉末として金属Zn粉末を用いたため、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量は、混合粉末全体に対する金属Zn粉末量である。
〈実施例9~14〉
磁性材原料粉末と改良材粉末とを、V型混合器を用いて混合した。磁性材原料粉末については、磁性材原料粉末全体に対して、SmFe17の含有量が、95質量%以上である粉末を用いた。改良材粉末については、金属Zn粉末を用いた。磁性材原料粉末の粒径は、3μmであった。改良材粉末の粒径は、20~65μmであった。磁性材原料粉末と改良材粉末の合計質量は、15gとした。磁性材原料粉末全体に対する磁性材原料粉末の酸素含有量、改良材粉末全体に対する改良材粉末の酸素含有量、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量、及び、改良材粉末の粒径を、それぞれ、表4に示した。なお、各粉末の酸素含有量は、非分散型赤外線吸収法によって測定した。また、実施例9~14については、改良材粉末として金属Zn粉末を用いたため、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量は、混合粉末全体に対する金属Zn粉末量である。
磁性材原料粉末と改良材粉末との混合粉末1.0gを、磁場中で、直径10mm及び高さ2mmの大きさに圧粉した。適用磁場は1.0T、成形圧力は100MPaとした。成形体を5~30分にわたり300MPaにて加圧焼結した。焼結温度は、表4に示した。
〈実施例15~18及び比較例6~8〉
磁性材原料粉末と改良材粉末とを、ボールミルを用いて混合した。磁性材原料粉末については、磁性材原料粉末全体に対して、SmFe17の含有量が、95質量%以上である粉末を用いた。改良材粉末については、金属Zn粉末を用いた。磁性材原料粉末の粒径は、3μmであった。改良材粉末の粒径は、3.3~1000μmであった。磁性材原料粉末と改良材粉末の合計質量は、15gとした。磁性材原料粉末全体に対する磁性材原料粉末の酸素含有量、改良材粉末全体に対する改良材粉末の酸素含有量、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量、改良材粉末の粒径、及びS/Cを、それぞれ、表5に示した。なお、各粉末の酸素含有量は、非分散型赤外線吸収法によって測定した。また、実施例15~18及び比較例6~8については、改良材粉末として金属Zn粉末を用いたため、混合粉末全体に対する改良材粉末中のZn成分量は、混合粉末全体に対する金属Zn粉末量である。
磁性材原料粉末と改良材粉末との混合粉末1.0gを、磁場中で、直径10mm及び高さ2mmの大きさに圧粉した。適用磁場は1.0T、成形圧力は100MPaとした。成形体を5分にわたり1GPaで焼結した。焼結温度は、表5に示した。
《評価》
各試料について、保磁力と磁化を測定した。測定は、東英工業社製のパルス式BHトレーサーを用いて行った。測定は、常温(室温)で行ったが、実施例9~14については、160℃での保磁力も測定した。
実施例5の試料については、中間相30付近の組成を、STEM-EDX及びEPMAを用いて線分析した。また、実施例5の試料については、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡像を用いて、中間相付近の組織を観察した。
また、実施例5及び比較例3の試料については、X線回折(XRD)分析した。さらに、実施例5の試料について、透過型電子顕微鏡を用いて、中間相30近傍の組織を観察し、その一部について、電子線回折分析した。
比較例8の試料については、磁性相10とZn相20の界面付近の組織を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
実施例1~5及び比較例1~3の評価結果を表1に示す。表1には、実施例1~5及び比較例1~3の試料の準備に用いた磁性材原料粉末の酸素含有量と保磁力を併記した。実施例6~8及び比較例4~5の評価結果を表2に示す。表2には、実施例6~8及び比較例4~5の試料の準備に用いた磁性材原料粉末の酸素含有量と保磁力を併記した。なお、表1及び2に示した保磁力及び磁化は、常温(室温)での測定結果である。
Figure 0007025230000001
Figure 0007025230000002
表1から分かるように、改良材粉末全体に対する改良材粉末の酸素含有量が、1.0質量%以下であるとき、保磁力が向上していることを確認できた。また、表2から分かるように、ロータリーキルン炉を用いて、混合と熱処理を行った場合にも、同様の結果が得られることを確認できた。また、熱処理温度が500℃以下であれば、保磁力が低下しないことを確認できた。
図4は、実施例5の試料について、走査型透過電子顕微鏡を用いて、中間相30付近の組織を観察した結果を示す図である。図4から分かるように、実施例5の試料において、磁性相10とZn相20の間に、中間相30が形成されていることを確認できた。
図5は、実施例5の試料について、中間相30付近の組成をEDX線分析した結果を示す図である。図5から、中間相30の酸素含有量が、Zn相20の酸素含有量よりも1.5倍以上高いことを確認できた。
また、表1及び表2において、本開示の希土類磁石の効果が認められるとき、磁性材原料粉末全体に対する磁性材原料粉末の酸素含有量の最大値は1.5質量%であり、改良材粉末全体に対する改良材粉末の酸素含有量の最小値は0.087質量%である。そして、図5から、中間相30において、酸素含有量は、磁性相10からZn相20に向かって上昇している。これらのことから、中間相30の酸素含有量は、Zn相20の酸素含有量よりも20倍(1.7/0.084)以下であると考えられる。
図6は、実施例5の試料について、中間相付近の組成をEPMA線分析した結果を示す図である。図6から分かるように、EPMA線分析でも図5と同様の結果が得られていることを確認できた。
図7は、実施例5の試料について、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡を用いて、中間相30付近の組織を観察した結果を示す図である。図7から分かるように、磁性相10と中間相30との間には、ファセット界面17が形成されていることを確認できた。そして、ファセット界面は、(101)面、(100)面、(101)面、及び(201)面の低指数面であることを確認できた。
図8は、実施例5の試料について、電子線回折図形を、測定と数値解析で得た結果を示す図である。表3は、図7及び図8で、1、2、及び3で示した方位について、測定で得られたdhklと数値解析で得られたdhklを纏めたものである。図3及び表3から分かるように、低指数面が形成されていることが確認できた。
Figure 0007025230000003
図9は、磁性材原料粉末について、走査型透過電子顕微鏡観察を用いて、磁性相10の表面付近を観察した結果を示す図である。図9において、符号90は、磁性相10の表面付近を観察するための埋め込み樹脂である。図9に示したように、磁性材原料粉末の磁性相10の表面にはファセット界面が認められない。これに対し、図7に示したように、実施例5の試料(希土類磁石)にはファセット界面17が認められる。これらから、実施例5の試料で認められるファセット界面17は、混合粉末50を熱処理することによって形成されたことを確認できた。
図10は、実施例5の試料と磁性材原料粉末について、温度と保磁力の関係を示すグラフである。図10から分かるように、保磁力には、温度依存性があることを確認できた。
図11は、実施例5の試料と磁性材原料粉末について、H/MとH/Mの関係を示すグラフである。ここで、Kronmullerの式の両辺をMで割ると、H/Ms=α・H/M-Neff(αは組織パラメタ、Hは保磁力、Hは異方性磁界、Mは飽和磁化、かつ、Neffは自己減磁界係数)となる。したがって、図11において、傾きがα、y切片がNeffである。
図11から分かるように、組織パラメタαについて、実施例5の試料は、磁性材原料粉末よりも向上していることが確認できた。また、Neffについては、実施例5の試料と磁性材原料粉末とで大差がないことから、希土類磁石100における磁性相10の粒径と、磁性材原料粉末における磁性相の粒径とで大差がないことを確認できた。
図12は、実施例5及び比較例3の試料について、X線回折(XRD)分析した結果を示す図である。図12から分かるように、比較例3の試料では、hcp型のSmが形成されているのに対して、実施例5の試料ではIa-3型のSmが形成されていることが確認できた。
図13は、実施例5の試料について、透過型電子顕微鏡を用いて、中間相30近傍の組織を観察した結果を示す図である。図14は、図13の破線で囲まれた部分について、透過電子顕微鏡を用いて電子線回折分析をした結果を示す図である。図13及び図14から分かるように、実施例5の試料におけるIa-3型のSmは、中間相30に形成されていることが確認できた。
理論に拘束されないが、実施例5の試料において、Ia-3型のSmによって、保磁力が向上していると考えられる。
実施例9~14の評価結果を表4に示す。表4には、160℃での保磁力測定の結果も併記した。また、表4の結果から、組織パラメタαと保磁力(160℃)との関係を図18に纏めた。
Figure 0007025230000004
表4及び図18から分かるように、αの値が0.090以上であれば、高温時(160℃)でも550A/m以上の保磁力が得られることを確認できた。
実施例15~18及び比較例6~8の評価結果を表5に示す。表5には、改良材粉末粒径及びS/Cの値を併記した。また、表5から、S/Cと保磁力(室温)との関係を図17に纏めた。図17(b)は、図17(a)のS/Cを対数目盛で表したものである。
Figure 0007025230000005
表5及び図17から分かるように、S/Cが90000以上であれば、磁性材原料粉末の保磁力(857kA/m)を超えることが分かった。
図19は、比較例8の試料について、磁性相10とZn相20の界面付近の組織を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果を示す図である。図19(a)は、比較例8の走査電子顕微鏡像、図19(b)は図19(a)の像についてFe面分析(Feマッピング)した結果、図19(c)は図19(a)の像についてZn面分析(Znマッピング)した結果を示す。図19(b)において、明るく示されている部分は、Fe濃度が高いことを示す。図19(c)において、明るく示されている部分は、Zn濃度が高いことを示す。
図19(a)の下部には、粒子の集合している領域310が認められ、図19(b)から、その集合体は多量のFeを含有していることが認められる。このことから、領域310は、磁性材原料粉末(SmFe17)が、そのまま集合している領域であるといえる。
一方、図19(a)の上部には、塊状物が存在している領域が認められ、図19(c)から、その塊状物は多量のZnを含有していることが認められる。このことから、領域320は、改良材粉末のZnが溶融し凝固した領域であるといえる。
そして、領域310と領域320の間には、粒子と塊状物が混合する領域が認められる。これは、比較例8の試料では、磁性原料粉末の粒径に比べて、改良材粉末の粒径が著しく大きいため、磁性材原料粉末に由来する磁性相10の表面に、改良材粉末に由来するZn相が充分に被覆されなかったと考えられる。その結果、図1のような中間相30が形成されずに、磁性材原料粉末の粒子間に溶融した改良材粉末が侵入したと考えられる。
そして、比較例8においては、試料全体で図19(a)のようになっているため、表5に示したように、比較例8の試料の組織パラメタαは非常に小さい。その結果、保磁力も小さい。
これらの結果から、本開示の希土類磁石及びその製造方法の効果を確認できた。
10 磁性相
12 α-Fe相
14 不整合界面
16 界面
15 酸化相
20 Zn相
30 中間相
50 混合粉末の粒子
90 埋め込み樹脂
100 本開示の希土類磁石
110 撹拌ドラム
120 材料格納部
130 回転軸
150 磁性材原料粉末
160 改良材粉末
170 溶融液
200 アークプラズマデポジション装置
210 アークプラズマガン
220 粒子
230 ステージ
310 粒子集合領域
320 塊状物領域
330 混在領域

Claims (13)

  1. Sm、Fe、及びNを含有する磁性相と、
    前記磁性相の周囲に存在するZn相と、
    前記磁性相と前記Zn相との間に存在する中間相と、
    を有し、
    前記中間相がZnを含有し、かつ、
    前記中間相の酸素含有量が、前記Zn相の酸素含有量よりも高い、
    希土類磁石。
  2. 前記中間相の酸素含有量が、前記Zn相の酸素含有量よりも1.5~20.0倍高い、請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 前記中間相中にIa-3型のSm相が形成されている、請求項1又は2に記載の希土類磁石。
  4. 前記磁性相が、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17(ただし、RはSm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上、iは0~0.50、jは0~0.52、かつ、hは1.5~4.5)で表される相を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 式H=α・H-Neff・M(Hは保磁力、Hは異方性磁界、Mは飽和磁化、かつ、Neffは自己減磁界係数)で表される組織パラメタαが0.07~0.55である、請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  6. 前記組織パラメタαが0.11~0.55である、請求項5に記載の希土類磁石。
  7. 前記希土類磁石全体に対する酸素含有量が、1.55~3.00質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  8. Sm、Fe、及びNを含有する磁性材原料粉末と、金属Zn及びZn合金の少なくともいずれかを含有する改良材粉末とを、前記磁性材原料粉末と前記改良材粉末の合計に対して、前記改良材粉末中のZn成分が1~20質量%になるように混合して、混合粉末を得ること、及び
    前記混合粉末が含有する金属Zn又はZn合金の融点のうち、最も低い融点をT℃としたとき、前記混合粉末を、(T-30)℃以上、500℃以下で熱処理すること、
    を含み、
    前記磁性材原料粉末の粒子の表面は、酸化相で覆われており、かつ
    前記改良材粉末全体に対し、前記改良材粉末中の酸素含有量が、1.0質量%以下である、
    希土類磁石の製造方法。
  9. 前記磁性材原料粉末が、(Sm(1-i)(Fe(1-j)Co17(ただし、RはSm以外の希土類元素並びにY及びZrから選ばれる1種以上、iは0~0.50、jは0~0.52、かつ、hは1.5~4.5)で表される磁性相を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記混合と前記熱処理を同時に行う、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記熱処理の前に、さらに、前記混合粉末を圧粉することを含む、請求項8又は9に記載の方法。
  12. 前記圧粉を磁場中で行う、請求項11に記載の方法。
  13. 前記改良材粉末の単位粒子について、酸素含有量をC(質量%)、体積に対する表面積の割合をS(cm-1)としたとき、S/C(cm-1・質量%-1)の値が90000以上である、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
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