JP2021009862A - 希土類磁石素材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温下であっても十分な磁気特性を有する希土類磁石が得られる希土類磁石素材を提供する。【解決手段】Ndを含む少なくとも一種の希土類元素Rと、Feを含む少なくとも一種の遷移金属元素Tと、B及びCから選択される少なくとも一種の元素Xとで構成され、Rの組成比をα、Tの組成比をβとしたとき、RαTβXで示される化合物を含む第一相と、前記第一相の結晶粒界に存在して前記RαTβXよりもRの濃度が高い粒界相と、Smを含む少なくとも一種の希土類元素Sと、Coを含む少なくとも一種の遷移金属元素Mとで構成され、Sの組成比をγ、Mの組成比をδとしたとき、SγMδで示される化合物を含む第二相とを備える希土類磁石素材。【選択図】図1
Description
本発明は、希土類磁石素材に関する。
特許文献1には、Nd(ネオジム)とFe(鉄)とB(ホウ素)とを含むNd−Fe−B系合金(例えば、Nd2Fe14B)の粉末を用いた希土類磁石が開示されている。具体的には、Nd−Fe−B系合金の粉末を水素化した水素化粉末を原料粉末とし、この原料粉末を圧縮成形した粉末成形体に脱水素処理を施してNd−Fe−B系合金材を製造し、この合金材を希土類磁石の素材に用いている。
高温下であっても、十分な磁気特性を有する希土類磁石が望まれている。
希土類磁石の残留磁束密度や保磁力は、温度によって変化する。Nd−Fe−B系合金材を用いた希土類磁石は、温度によって残留磁束密度や保磁力の特性が変化する度合(温度係数)が大きく、温度が高くなるほど残留磁束密度や保磁力が大きく低下し易い。
そこで、本開示は、高温下であっても十分な磁気特性を有する希土類磁石が得られる希土類磁石素材を提供することを目的の一つとする。
本開示に係る希土類磁石素材は、
Ndを含む少なくとも一種の希土類元素Rと、Feを含む少なくとも一種の遷移金属元素Tと、B及びCから選択される少なくとも一種の元素Xとで構成され、Rの組成比をα、Tの組成比をβとしたとき、RαTβXで示される化合物を含む第一相と、
前記第一相の結晶粒界に存在して前記RαTβXよりもRの濃度が高い粒界相と、
Smを含む少なくとも一種の希土類元素Sと、Coを含む少なくとも一種の遷移金属元素Mとで構成され、Sの組成比をγ、Mの組成比をδとしたとき、SγMδで示される化合物を含む第二相とを備える。
Ndを含む少なくとも一種の希土類元素Rと、Feを含む少なくとも一種の遷移金属元素Tと、B及びCから選択される少なくとも一種の元素Xとで構成され、Rの組成比をα、Tの組成比をβとしたとき、RαTβXで示される化合物を含む第一相と、
前記第一相の結晶粒界に存在して前記RαTβXよりもRの濃度が高い粒界相と、
Smを含む少なくとも一種の希土類元素Sと、Coを含む少なくとも一種の遷移金属元素Mとで構成され、Sの組成比をγ、Mの組成比をδとしたとき、SγMδで示される化合物を含む第二相とを備える。
上記希土類磁石素材は、高温下であっても十分な磁気特性を有する希土類磁石が得られる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係る希土類磁石素材は、
Ndを含む少なくとも一種の希土類元素Rと、Feを含む少なくとも一種の遷移金属元素Tと、B及びCから選択される少なくとも一種の元素Xとで構成され、Rの組成比をα、Tの組成比をβとしたとき、RαTβXで示される化合物を含む第一相と、
前記第一相の結晶粒界に存在して前記RαTβXよりもRの濃度が高い粒界相と、
Smを含む少なくとも一種の希土類元素Sと、Coを含む少なくとも一種の遷移金属元素Mとで構成され、Sの組成比をγ、Mの組成比をδとしたとき、SγMδで示される化合物を含む第二相とを備える。
Ndを含む少なくとも一種の希土類元素Rと、Feを含む少なくとも一種の遷移金属元素Tと、B及びCから選択される少なくとも一種の元素Xとで構成され、Rの組成比をα、Tの組成比をβとしたとき、RαTβXで示される化合物を含む第一相と、
前記第一相の結晶粒界に存在して前記RαTβXよりもRの濃度が高い粒界相と、
Smを含む少なくとも一種の希土類元素Sと、Coを含む少なくとも一種の遷移金属元素Mとで構成され、Sの組成比をγ、Mの組成比をδとしたとき、SγMδで示される化合物を含む第二相とを備える。
上記希土類磁石素材は、第二相を備えることで、第二相を備えない場合に比較して、温度による磁気特性の変化の度合(温度係数)を小さくでき、高温下であっても十分な磁気特性を有する希土類磁石が得られる。具体的には、上記希土類磁石素材は、第二相を備えることで、温度によって残留磁束密度が変化する度合(残留磁束密度の温度係数)を小さくでき、かつ温度によって保磁力が変化する度合(保磁力の温度係数)を小さくでき、高温下において残留磁束密度や保磁力が低下することを抑制できる。
(2)上記希土類磁石素材の一例として、前記希土類磁石素材に占める前記第二相の含有量は、3質量%以上50質量%以下であることが挙げられる。
希土類磁石素材に占める第二相の含有量が3質量%以上であることで、高温下であっても実用上十分な磁気特性を有する希土類磁石が得られる。一方、希土類磁石素材に占める第二相の含有量が50質量%以下であることで、希土類磁石素材に占める第一相の含有量を確保することができ、残留磁束密度の低下を抑制でき、かつコストの増大を抑制できる。
(3)上記希土類磁石素材の一例として、前記SγMδは、γが1以上3以下、δが4以上18以下であることが挙げられる。
SγMδの組成比が上記範囲を満たすことで、磁気特性に優れる希土類磁石を得易い。
(4)上記希土類磁石素材の一例として、前記RαTβXは、αが1.5以上2.5以下、βが12.5以上15.5以下であることが挙げられる。
RαTβXの組成比が上記範囲を満たすことで、磁気特性に優れる希土類磁石を得易い。
(5)上記希土類磁石素材の一例として、前記RαTβXは、Nd2T14Xであることが挙げられる。
RαTβXがNd2T14Xであることで、磁気特性に優れる希土類磁石を得易い。
(6)上記希土類磁石素材の一例として、前記第一相の平均結晶粒径は、700nm以下であることが挙げられる。
第一相の平均粒径が700nm以下であることで、微細結晶組織に起因する磁気特性(特に保磁力)の向上効果が期待できる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
≪希土類磁石素材≫
図1を参照して、実施形態に係る希土類磁石素材1を説明する。希土類磁石素材1は、RαTβX(RはNdを含む少なくとも一種の希土類元素、TはFeを含む少なくとも一種の遷移金属元素、XはB及びCから選択される少なくとも一種の元素、αはRの組成比、βはTの組成比)で示される化合物を含む第一相11と、第一相11を構成する結晶粒110の結晶粒界に存在してRαTβXよりもRの濃度が高い粒界相111とを備える。Ndを含む希土類磁石素材を用いた希土類磁石は、温度が高くなるにつれて、残留磁束密度や保磁力が低下する傾向にある。そこで、実施形態に係る希土類磁石素材1は、高温下であっても十分な残留磁束密度や保磁力を発揮できる構成を備える点を特徴の一つとする。具体的には、実施形態に係る希土類磁石素材1は、SγMδ(SはSmを含む少なくとも一種の希土類元素、MはCoを含む少なくとも一種の遷移金属元素、γはSの組成比、δはMの組成比)で示される化合物を含む第二相12を備える点を特徴の一つとする。
図1を参照して、実施形態に係る希土類磁石素材1を説明する。希土類磁石素材1は、RαTβX(RはNdを含む少なくとも一種の希土類元素、TはFeを含む少なくとも一種の遷移金属元素、XはB及びCから選択される少なくとも一種の元素、αはRの組成比、βはTの組成比)で示される化合物を含む第一相11と、第一相11を構成する結晶粒110の結晶粒界に存在してRαTβXよりもRの濃度が高い粒界相111とを備える。Ndを含む希土類磁石素材を用いた希土類磁石は、温度が高くなるにつれて、残留磁束密度や保磁力が低下する傾向にある。そこで、実施形態に係る希土類磁石素材1は、高温下であっても十分な残留磁束密度や保磁力を発揮できる構成を備える点を特徴の一つとする。具体的には、実施形態に係る希土類磁石素材1は、SγMδ(SはSmを含む少なくとも一種の希土類元素、MはCoを含む少なくとも一種の遷移金属元素、γはSの組成比、δはMの組成比)で示される化合物を含む第二相12を備える点を特徴の一つとする。
〔第一相〕
第一相11は、RαTβXで示される化合物を含む。第一相11は、多結晶である。図1では、説明の便宜上、第一相11の一つの粒子を一つの四角形で示し、第一相11の多結晶を構成する一つの結晶粒110を、一つの六角形で示す。
第一相11は、RαTβXで示される化合物を含む。第一相11は、多結晶である。図1では、説明の便宜上、第一相11の一つの粒子を一つの四角形で示し、第一相11の多結晶を構成する一つの結晶粒110を、一つの六角形で示す。
Rは、Nd(ネオジム)を含む少なくとも一種の希土類元素である。Rは、Nd単独であってもよいし、Ndの一部をPr(プラセオジム)、Ce(セリウム)、Dy(ジスプロシウム)、Tb(テルビウム)及びY(イットリウム)から選択される少なくとも一種の元素で置換してもよい。RαTβXにおけるRの含有量は、例えば、25質量%以上35質量%以下、更に26質量%以上34質量%以下が挙げられる。Rとして、Ndの一部を上記元素で置換する場合、R全体に占める置換元素の含有量は、3質量%以下、更に2質量%以下が挙げられる。
Tは、Fe(鉄)を含む少なくとも一種の遷移金属元素である。Tは、Fe単独であってもよいし、Feの一部をCo(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ga(ガリウム)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Ti(チタン)、Mn(マンガン)及びNb(ニオブ)から選択される少なくとも一種の元素で置換してもよい。RαTβXにおけるTの含有量は、例えば、62質量%以上74.5質量%以下、更に64質量%以上73質量%以下が挙げられる。Tとして、Feの一部を上記元素で置換する場合、T全体に占める置換元素の含有量は、10質量%以下、更に8質量%以下が挙げられる。
Xは、B(ホウ素)及びC(炭素)から選択される少なくとも一種の元素である。Xは、B又はC単独であってもよいし、Bの一部をCに置換してもよい。RαTβXにおけるXの含有量は、例えば、0.7質量%以上1.5質量%以下、更に0.8質量%以上1.3質量%以下が挙げられる。Xとして、Bの一部をCで置換する場合、X全体に占めるCの含有量は、0.1質量%以下、更に0.07質量%以下が挙げられる。
RαTβXの化学量論組成は、αが1.5以上2.5以下、βが12.5以上15.5以下、更にαが1.6以上2.4以下、βが13.0以上15.0以下を満たすことが好ましい。特に、RαTβXの化学量論組成は、R2T14Xが理想的である。RがNd単独である場合、RαTβXの化学量論組成は、Nd2Fe14B、Nd2Fe14C、Nd2(Fe13Co1)Bなどが挙げられる。この組成を満たすことで、磁気特性を高めることができる。この組成は、第一相における各元素の含有量から求められる。元素の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により測定できる。
第一相11の多結晶を構成する結晶粒110の平均結晶粒径は、700nm以下が挙げられる。平均結晶粒径が700nm以下と微細であることで、微細結晶組織に起因する磁気特性(特に保磁力)の向上効果が期待できる。上記平均結晶粒径は、小さいほど磁気特性に優れ、500nm以下、更に300nm以下が挙げられる。平均結晶粒径は、希土類磁石素材1の表面又は断面について走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察を行い、その観察像から各結晶粒110の面積をそれぞれ調べ、各面積の等面積円相当径を測定し、その平均値を算出することで求められる。観察像を用いて算出する際、市販の画像処理ソフトを用いると容易に算出できる。
〔粒界相〕
粒界相111は、第一相11を構成する結晶粒110の結晶粒界に存在する。粒界相111は、第一相11においてRαTβXの化学量論組成を形成しない余分なRによって形成される。粒界相111は、RαTβXよりもRの濃度(質量%濃度)が高く、例えば、RαTβXにおけるRの濃度に比較して1.1倍以上、更に1.2倍以上を満たす。第一相11を構成する結晶粒110同士は、粒界相111によって結合されている。
粒界相111は、第一相11を構成する結晶粒110の結晶粒界に存在する。粒界相111は、第一相11においてRαTβXの化学量論組成を形成しない余分なRによって形成される。粒界相111は、RαTβXよりもRの濃度(質量%濃度)が高く、例えば、RαTβXにおけるRの濃度に比較して1.1倍以上、更に1.2倍以上を満たす。第一相11を構成する結晶粒110同士は、粒界相111によって結合されている。
〔第二相〕
第二相12は、SγMδで示される化合物を含む。第二相12は、単結晶である。図1では、説明の便宜上、第二相12の一つの粒子を一つの円形で示す。なお、図1では、第一相11と第二相12との間の隙間を誇張して示しているが、実際には、その隙間は小さい、又は実質的に存在しない。
第二相12は、SγMδで示される化合物を含む。第二相12は、単結晶である。図1では、説明の便宜上、第二相12の一つの粒子を一つの円形で示す。なお、図1では、第一相11と第二相12との間の隙間を誇張して示しているが、実際には、その隙間は小さい、又は実質的に存在しない。
Sは、Sm(サマリウム)を含む少なくとも一種の希土類元素である。Sは、Sm単独であってもよいし、Smの一部をPr、Ce、Dy、Tb及びYから選択される少なくとも一種の元素で置換してもよい。SγMδにおけるSの含有量は、例えば、30質量%以上38質量%以下、更に32質量%以上36質量%以下が挙げられる。Sとして、Smの一部を上記元素で置換する場合、S全体に占める置換元素の含有量は、5質量%以下、更に3質量%以下が挙げられる。
Mは、Co(コバルト)を含む少なくとも一種の遷移金属元素である。Mは、Co単独であってもよいし、Coの一部をFe、Ni、Ga、Cu、Al、Si、Ti、Mn及びNbから選択される少なくとも一種の元素で置換してもよい。SγMδにおけるMの含有量は、例えば、62質量%以上70質量%以下、更に64質量%以上68質量%以下が挙げられる。Mとして、Coの一部を上記元素で置換する場合、M全体に占める置換元素の含有量は、30質量%以下、更に20質量%以下が挙げられる。
SγMδの化学量論組成は、γが1以上3以下、δが4以上18以下を満たすことが好ましい。SがSm単独である場合、SγMδの化学量論組成は、Sm1Co5、Sm2Co17などが挙げられる。この組成を満たすことで、磁気特性を高めることができる。この組成は、第二相における各元素の含有量から求められる。元素の含有量は、ICP発光分光分析法により測定できる。
〔含有量〕
希土類磁石素材1は、第二相12を備えることで、第二相12を備えない場合に比較して、温度による磁気特性の変化の度合(温度係数)を小さくでき、高温下において磁気特性が低下することを抑制できる。希土類磁石素材1に占める第二相12の含有量は、3質量%以上50質量%以下であることが挙げられる。第二相12の含有量が3質量%以上であることで、高温下であっても実用上十分な磁気特性を発揮できる。第二相12の含有量は、多いほど、希土類磁石素材1における温度係数を小さくできるため、更に5質量%以上、10質量%以上、特に15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上であることが挙げられる。一方、第二相12の含有量は、多いほど、希土類磁石素材1に占める第一相11の含有量が相対的に少なくなり、残留磁束密度が低下したり、コストの増大を招いたりするため、50質量%以下、更に45質量%以下、40質量%以下、特に35質量%以下であることが挙げられる。希土類磁石素材1における第一相11及び第二相12の各含有量は、後述する希土類磁石素材1の製造方法における原料粉末の第一相粉末31及び第二相粉末32の各含有量と同じである。
希土類磁石素材1は、第二相12を備えることで、第二相12を備えない場合に比較して、温度による磁気特性の変化の度合(温度係数)を小さくでき、高温下において磁気特性が低下することを抑制できる。希土類磁石素材1に占める第二相12の含有量は、3質量%以上50質量%以下であることが挙げられる。第二相12の含有量が3質量%以上であることで、高温下であっても実用上十分な磁気特性を発揮できる。第二相12の含有量は、多いほど、希土類磁石素材1における温度係数を小さくできるため、更に5質量%以上、10質量%以上、特に15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上であることが挙げられる。一方、第二相12の含有量は、多いほど、希土類磁石素材1に占める第一相11の含有量が相対的に少なくなり、残留磁束密度が低下したり、コストの増大を招いたりするため、50質量%以下、更に45質量%以下、40質量%以下、特に35質量%以下であることが挙げられる。希土類磁石素材1における第一相11及び第二相12の各含有量は、後述する希土類磁石素材1の製造方法における原料粉末の第一相粉末31及び第二相粉末32の各含有量と同じである。
〔磁気特性〕
希土類磁石素材1は、温度によって残留磁束密度が変化する度合(残留磁束密度の温度係数)が絶対値で0.129%/℃未満であり、かつ温度によって保磁力が変化する度合(保磁力の温度係数)が絶対値で0.562%/℃未満であることが挙げられる。残留磁束密度の温度係数が絶対値で0.129%/℃未満であり、かつ保磁力の温度係数が絶対値で0.562%/℃未満であることで、温度変化の大きい環境下でも磁石性能が一定となり、温度変化によるデバイス性能の変化を小さくすることができる。希土類磁石素材1では、残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数は負の値を有し、絶対値が小さいほど残留磁束密度及び保磁力の温度変化は小さい。
希土類磁石素材1は、温度によって残留磁束密度が変化する度合(残留磁束密度の温度係数)が絶対値で0.129%/℃未満であり、かつ温度によって保磁力が変化する度合(保磁力の温度係数)が絶対値で0.562%/℃未満であることが挙げられる。残留磁束密度の温度係数が絶対値で0.129%/℃未満であり、かつ保磁力の温度係数が絶対値で0.562%/℃未満であることで、温度変化の大きい環境下でも磁石性能が一定となり、温度変化によるデバイス性能の変化を小さくすることができる。希土類磁石素材1では、残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数は負の値を有し、絶対値が小さいほど残留磁束密度及び保磁力の温度変化は小さい。
希土類磁石素材1における残留磁束密度の温度係数は、絶対値が小さいほど、残留磁束密度の温度変化が小さいため、絶対値で0.127%/℃以下、更に絶対値で0.120%/℃以下であることが挙げられる。また、希土類磁石素材1における保磁力の温度係数は、絶対値が小さいほど、保磁力の温度変化が小さいため、絶対値で0.541%/℃以下、更に絶対値で0.492%/℃以下であることが挙げられる。残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数は、上述したように、第二相12の含有量が多いほど小さくできるが、第二相12の含有量には好適な範囲がある。そのため、残留磁束密度の温度係数は、絶対値で0.078%/℃以上、保磁力の温度係数は、絶対値で0.283%/℃以上であることが挙げられる。残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数の測定方法は、後述する試験例で説明する。
〔用途〕
上述した希土類磁石素材1は、永久磁石、例えば、各種のモータ、特に、ハイブリッド自動車やハードディスクドライブなどに具備される高速モータに用いられる永久磁石の素材に好適に利用できる。
上述した希土類磁石素材1は、永久磁石、例えば、各種のモータ、特に、ハイブリッド自動車やハードディスクドライブなどに具備される高速モータに用いられる永久磁石の素材に好適に利用できる。
≪希土類磁石素材の製造方法≫
上述した希土類磁石素材1は、例えば、準備工程と、成形工程と、脱水素工程とを行うことで製造することができる。図2を参照して、希土類磁石素材1の製造方法を説明する。
上述した希土類磁石素材1は、例えば、準備工程と、成形工程と、脱水素工程とを行うことで製造することができる。図2を参照して、希土類磁石素材1の製造方法を説明する。
〔準備工程〕
準備工程では、第一相粉末31と第二相粉末32とを混合した磁石用粉末3を準備する。準備工程は、第一相粉末31を準備する工程と、第二相粉末32を準備する工程と、第一相粉末31と第二相粉末32とを混合する工程とを備える。
準備工程では、第一相粉末31と第二相粉末32とを混合した磁石用粉末3を準備する。準備工程は、第一相粉末31を準備する工程と、第二相粉末32を準備する工程と、第一相粉末31と第二相粉末32とを混合する工程とを備える。
〈第一相粉末の準備工程〉
第一相粉末31の準備工程では、RαTβXで示される化合物(例えば、Nd2T14X)を主相とするR−T−X系合金の粉末を準備し、この合金の粉末に水素化処理を施す。つまり、水素化処理後に得られる第一相粉末31は、R−T−X系合金の水素化粉末である。更に、第一相粉末31の準備工程では、水素化処理後の水素化粉末を粉砕する。
第一相粉末31の準備工程では、RαTβXで示される化合物(例えば、Nd2T14X)を主相とするR−T−X系合金の粉末を準備し、この合金の粉末に水素化処理を施す。つまり、水素化処理後に得られる第一相粉末31は、R−T−X系合金の水素化粉末である。更に、第一相粉末31の準備工程では、水素化処理後の水素化粉末を粉砕する。
R−T−X系合金の粉末は、例えば、R−T−X系合金からなる溶湯鋳造インゴットや急冷凝固法で得られる箔状体をジョークラッシャー、ジェットミルやボールミルなどの粉砕装置により粉砕したり、ガスアトマイズ法といったアトマイズ法を利用したりして製造することができる。このR−T−X系合金の粉末の大きさは、最大径が500μm以上30mm以下であることが挙げられる。最大径が500μm以上であることで、後の粉砕時に中粒度に粉砕し易く、圧縮成形に適した粒度の水素化粉末を製造し易い。一方、最大径が30mm以下であることで、後の粉砕時に要する時間を短縮できる。なお、最大径とは、1つのR−T−X系合金の粒子をあらゆる方向から平面視したときの粒子の最も長い部分の長さのことである。
水素化処理は、水素元素を含む雰囲気中で熱処理する。水素元素を含む雰囲気は、H2(水素)のみの単一雰囲気や、H2とAr(アルゴン)やN2(窒素)といった不活性ガスとの混合雰囲気が挙げられる。熱処理時の温度は、R−T−X系合金の不均化反応が進行する温度、即ち不均化温度以上とする。不均化反応とは、希土類元素(Ndを含む少なくとも一種の希土類元素R)の優先水素化により、希土類元素の水素化合物と、鉄(或いは鉄及び鉄化合物)とに分離する反応であり、この反応が生じる下限温度を不均化温度と呼ぶ。上記不均化温度は、R−T−X系合金の組成や希土類元素Rの種類により異なるが、例えば、600℃以上1100℃以下が挙げられる。例えば、R−T−X系合金が、Nd2Fe14Bの場合、650℃以上が挙げられる。熱処理時の保持時間は、0.5時間以上5時間以下が挙げられる。この熱処理は、公知の不均化条件を適用することができる。
上記水素化処理により得られる水素化粉末(第一相粉末31)を構成する各第一相粒子310は、希土類元素の水素化合物の相311と、鉄含有物の相312とに相分解した組織を有する(図2の上図の右側を参照)。希土類元素の水素化合物は、RH2などが挙げられる。鉄含有物は、Fe及びFe2Xなどが挙げられる。この水素化処理後の第一相粒子310は、相分解前のR−T−X系合金や希土類元素の水素化合物の相311に比較して柔らかい軟質部分である純鉄が存在することから、後述する成形工程において圧縮成形したときに変形して成形性を高め易い。
希土類元素の水素化合物の相311と鉄含有物の相312との存在形態は、希土類元素の水素化合物の相311と鉄含有物の相312とが積層構造となっている層状形態や、鉄含有物の相312の相中に粒状の希土類元素の水素化合物の相311が分散して存在する分散形態が挙げられる。これらの存在形態は、水素化処理の熱処理条件(主に温度)に依存する。分散形態は、希土類元素の水素化合物の相311の周囲に鉄含有物の相312が均一的に存在することで、層状形態よりも成形性を高め易い。そのため、円弧状、円筒状、円柱状などといった種々の形状の粉末成形体(希土類磁石素材1)が得られ易い。また、磁粉密度の高い高密度な粉末成形体が得られ易い。
水素化処理後の第一相粒子310は、鉄含有物の相312が60体積%以上であることが好ましい。鉄含有物の相312が60体積%以上であることで、硬質である希土類元素の水素化合物の相311が相対的に少なくなり、後述する成形工程における圧縮成形時に成形性をより高め易い。一方、鉄含有物の相312が90体積%以下であることで、希土類元素の水素化合物の相311が相対的に多くなり、磁気特性に優れる。鉄含有物の相312は、更に63体積%以上85体積%以下、65体積%以上80体積%以下が挙げられる。
希土類元素の水素化合物の相311と鉄含有物の相312とは隣接して存在しており、かつ鉄含有物の相312を介して隣り合う希土類元素の水素化合物の相311の間隔は3μm以下であることが挙げられる。鉄含有物の相312が希土類元素の水素化合物の相311間に存在し、希土類元素の水素化合物の相311が特定の間隔で存在する組織は、両相311,312が均一的に存在する組織であるため、圧縮成形したときに均一的に変形する。上記間隔が3μm以下であると、後で脱水素処理により、希土類元素の水素化合物の相311と鉄含有物の相312とが相分解前のR−T−X系合金に再結合する際に、過度なエネルギーを投入しなくて済む上に、R−T−X系合金の結晶粒の粗大化による磁気特性の低下を抑制できる。希土類元素の水素化合物の相311間に鉄含有物の相312が十分に存在するためには、上記間隔は0.5μm以上、更に1μm以上であること挙げられる。上記間隔は、例えば、原料に用いるR−T−X系合金の組成を調整したり、水素化処理の条件、特に熱処理温度を調整したりすることで制御できる。例えば、R−T−X系合金において鉄の比率(原子比)を多くしたり、上記した温度範囲で熱処理温度を高くしたりすると、上記間隔が大きくなる傾向がある。
上記間隔の測定は、例えば、第一相粒子310の断面をエッチングして鉄含有物の相312を除去して希土類元素の水素化合物の相311を抽出したり、又はエッチング溶液の種類によっては希土類元素の水素化合物の相311を除去して鉄含有物の相312を抽出したり、若しくは断面をEDX(エネルギー分散型X線分析装置)により組成分析することで測定できる。
水素化処理後の水素化粉末(第一相粉末31)を粉砕し、所望の粒径に制御することができる。水素化処理後の水素化粉末を中粒度に粉砕し、圧縮成形に適した粒径の第一相粉末31を製造することが挙げられる。なお、第一相粉末31を構成する各第一相粒子310は、その組織(希土類元素の水素化合物の相311及び鉄含有物の相312)が粉砕前後で実質的に同じである。
粉砕して得られた第一相粉末31は、平均粒径D50が50μm以上700μm以下であることが好ましい。このような第一相粉末31は、後述する成形工程における圧縮成形時に適した粒径であるため成形性に特に優れる。特に、平均粒径D50を50μm以上とすることで、第二相粉末32を構成する各粒子同士を強固に結着し易い。平均粒径D50を700μm以下とすることで、磁粉密度の高い希土類磁石素材1を作製し易い。第一相粉末31の平均粒径D50は、更に75μm以上550μm以下、特に100μm以上400μm以下が挙げられる。平均粒径D50(50体積%粒径)とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した場合において、体積基準の粒度分布をとり、その粒度分布の小径側から累積が50%となる粒径値のことである。この点は、後述する第二相粉末32でも同様である。
〈第二相粉末の準備工程〉
第二相粉末32の準備工程では、SγMδで示される化合物(例えば、Sm1Co5)を主相とするS−M系合金の粉末を準備する。このS−M系合金の粉末は、例えば、S−M系合金の原料を、Arなどの不活性ガス雰囲気中で高周波溶解し、その後ジョークラッシャーやジェットミルなどの粉砕装置で粉砕することにより製造することができる。このS−M系合金の粉末(第二相粉末32)の大きさは、平均粒径D50(50体積%粒径)が1μm以上1000μm以下であることが好ましい。平均粒径D50を上記範囲とすることで、磁粉密度の高い希土類磁石素材1を作製し易い。第二相粉末32の平均粒径D50は、更に3μm以上900μm以下、特に5μm以上800μm以下が挙げられる。
第二相粉末32の準備工程では、SγMδで示される化合物(例えば、Sm1Co5)を主相とするS−M系合金の粉末を準備する。このS−M系合金の粉末は、例えば、S−M系合金の原料を、Arなどの不活性ガス雰囲気中で高周波溶解し、その後ジョークラッシャーやジェットミルなどの粉砕装置で粉砕することにより製造することができる。このS−M系合金の粉末(第二相粉末32)の大きさは、平均粒径D50(50体積%粒径)が1μm以上1000μm以下であることが好ましい。平均粒径D50を上記範囲とすることで、磁粉密度の高い希土類磁石素材1を作製し易い。第二相粉末32の平均粒径D50は、更に3μm以上900μm以下、特に5μm以上800μm以下が挙げられる。
〈混合工程〉
混合工程では、第一相粉末31と第二相粉末32とを混合した混合粉末(磁石用粉末3)を作製する。
混合工程では、第一相粉末31と第二相粉末32とを混合した混合粉末(磁石用粉末3)を作製する。
磁石用粉末3における第一相粉末31と第二相粉末32との配合割合は、得られる希土類磁石素材1における第一相11と第二相12との存在割合(含有量)に維持される。そのため、磁石用粉末3における第二相粉末32の配合割合は、多いほど、希土類磁石素材1における温度係数を小さくできる。よって、磁石用粉末3における第二相粉末32の配合割合は、質量割合で3%以上、更に5%以上、10%以上、特に15%以上、20%以上、25%以上であることが挙げられる。一方、磁石用粉末3における第二相粉末32の配合割合は、多過ぎると、磁石用粉末3における第一相粉末31の配合割合が相対的に少なくなり、成形性が低下したり、得られる希土類磁石素材1の残留磁束密度が低下したり、コストの増大を招いたりする。そのため、磁石用粉末3における第二相粉末32の配合割合は、質量割合で50%以下、更に45%以下、40%以下、特に35%以下であることが挙げられる。
第一相粉末31と第二相粉末32との混合には、両粉末31,32を均一的に混合できる適宜な混合機を用いて行うとよい。混合時間は、例えば、10分以上3時間以下、更に30分以上2.5時間以下とすることが挙げられる。混合時は、窒素雰囲気中で行うことが挙げられる。
〔成形工程〕
成形工程では、磁石用粉末3を圧縮成形して粉末成形体2を作製する(図2上から2番目の図)。成形には、所望の形状の粉末成形体2が得られる金型9を利用するとよい。
成形工程では、磁石用粉末3を圧縮成形して粉末成形体2を作製する(図2上から2番目の図)。成形には、所望の形状の粉末成形体2が得られる金型9を利用するとよい。
金型9は、代表的には、貫通孔を有するダイ91と、ダイ91の内周面と共に成形空間を形成し、上記貫通孔に挿入して磁石用粉末3を圧縮成形する一対の上パンチ92及び下パンチ93とを備える。貫通孔を有する筒状又は環状の粉末成形体を成形する場合には、ダイ91の貫通孔に挿入配置されるロッド(図示せず)を利用する。
成形圧力は、大きいほど、相対密度が大きく、空隙が少ない粉末成形体2を得易い。成形圧力は、所望の相対密度となるように適宜選択できる。成形圧力は、例えば、490MPa以上1500MPa以下とすることが挙げられる。
〔脱水素工程〕
脱水素工程では、粉末成形体2を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、粉末成形体2の再結合温度以上の温度で熱処理(脱水素処理)して、希土類磁石素材1を作製する(図2上から3番目の図)。
脱水素工程では、粉末成形体2を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、粉末成形体2の再結合温度以上の温度で熱処理(脱水素処理)して、希土類磁石素材1を作製する(図2上から3番目の図)。
脱水素処理時の雰囲気は、水素化粉末(第一相粉末31)と反応せず、各水素を効率よく除去できるように非水素雰囲気とする。非水素雰囲気には、不活性雰囲気又は減圧雰囲気が挙げられ、例えば、ArやN2などの不活性ガス雰囲気、又は標準の大気圧よりも圧力が低い真空雰囲気が挙げられる。特に、減圧雰囲気(真空雰囲気)中で脱水素処理した場合、再結合反応がより進行して、希土類元素の水素化合物が残存し難い。脱水素処理時の熱処理の温度は、粉末成形体2の再結合温度(分離していた鉄含有物と希土類元素とが化合する温度)以上とする。再結合温度は、粉末成形体2を構成する粒子の組成により異なるが、例えば、600℃以上1000℃以下、より好ましくは650℃以上850℃以下、さらに700℃以上800℃以下とすることが挙げられる。脱水素処理時の熱処理の時間は、例えば、10分以上10時間以下、より好ましくは30分以上5時間以下、さらに1時間以上3時間以下とすることが挙げられる。脱水素処理により得られる希土類磁石素材1の相対密度は、熱処理の温度や時間によって多少変化するものの、粉末成形体2の相対密度と実質的に等しい。
脱水素処理後の希土類磁石素材1は、水素化処理により相分解した希土類元素の水素化合物の相311と鉄含有物の相312とが元のRαTβXで示される化合物に再結合され、かつその結晶粒が微細化された多結晶組織である。この平均結晶粒径は、700nm以下であることが挙げられる。
[試験例1]
希土類磁石素材の試料を作製し、各試料を用いて希土類磁石を作製して、各試料の磁気特性を評価した。
希土類磁石素材の試料を作製し、各試料を用いて希土類磁石を作製して、各試料の磁気特性を評価した。
≪試料の作製≫
準備工程では、第一相粉末と第二相粉末とを混合した磁石用粉末を準備した。第一相粉末として、化学量論組成がNd2Fe14Bで0.5〜30mmの大きさの鋳造薄片を準備し、この鋳造薄片に水素化処理を施した後に粉砕して水素化粉末を作製した。水素化処理は、水素雰囲気中で、850℃×3時間行った。粉砕は、超硬合金製の乳鉢を用いて行った。粉砕後の水素化粉末(第一相粉末)は、平均粒径D50が150μmであった。第二相粉末として、平均粒径D50が10μmで、化学量論組成がSm1Co5の粉末を準備した。
準備工程では、第一相粉末と第二相粉末とを混合した磁石用粉末を準備した。第一相粉末として、化学量論組成がNd2Fe14Bで0.5〜30mmの大きさの鋳造薄片を準備し、この鋳造薄片に水素化処理を施した後に粉砕して水素化粉末を作製した。水素化処理は、水素雰囲気中で、850℃×3時間行った。粉砕は、超硬合金製の乳鉢を用いて行った。粉砕後の水素化粉末(第一相粉末)は、平均粒径D50が150μmであった。第二相粉末として、平均粒径D50が10μmで、化学量論組成がSm1Co5の粉末を準備した。
準備した第一相粉末と第二相粉末とを混合して磁石用粉末を作製した。混合は、V型混合機を用い、窒素雰囲気中で30分行った。第一相粉末と第二相粉末との配合割合を表1に示す。なお、試料No.1−11は、第一相粉末のみを磁石用粉末として用いた。
上記磁石用粉末を金型に充填し、圧縮成形して直径10mm×高さ10mmの粉末成形体を作製した。圧縮成形は、成形圧力を980MPa(10ton/cm2)とした。
上記粉末成形体に脱水素処理を施して希土類磁石素材の試料を作製した。脱水素処理は、真空雰囲気中(真空度:0.5Pa未満)で、800℃×3時間行った。
≪組織観察≫
各試料の希土類磁石素材について、その表面又は断面をSEMにより組織観察すると共に、各試料の希土類磁石素材における各元素の含有量をICP発光分光分析法及び電子線マイクロアナライザ(EPMA)によるライン分析により測定し、測定した各元素の含有量から組成比を算出した。その結果、試料No.1−1〜1−5は、Nd2Fe14Bの相(第一相)と、第一相を構成する結晶粒の結晶粒界に存在し、Nd量が第一相に対して1.1倍以上である粒界相と、Sm1Co5の相(第二相)とを備えることがわかった。また、試料No.1−1〜1−5について、SEMの観察像から第一相を構成する結晶粒の平均結晶粒径を測定した。具体的には、市販の画像処理ソフトを用いて観察像から各結晶粒の面積を調べ、各面積の等面積円相当径の平均を平均結晶粒径とした。その結果、平均結晶粒径が700nm以下であることがわかった。
各試料の希土類磁石素材について、その表面又は断面をSEMにより組織観察すると共に、各試料の希土類磁石素材における各元素の含有量をICP発光分光分析法及び電子線マイクロアナライザ(EPMA)によるライン分析により測定し、測定した各元素の含有量から組成比を算出した。その結果、試料No.1−1〜1−5は、Nd2Fe14Bの相(第一相)と、第一相を構成する結晶粒の結晶粒界に存在し、Nd量が第一相に対して1.1倍以上である粒界相と、Sm1Co5の相(第二相)とを備えることがわかった。また、試料No.1−1〜1−5について、SEMの観察像から第一相を構成する結晶粒の平均結晶粒径を測定した。具体的には、市販の画像処理ソフトを用いて観察像から各結晶粒の面積を調べ、各面積の等面積円相当径の平均を平均結晶粒径とした。その結果、平均結晶粒径が700nm以下であることがわかった。
≪磁気特性の評価≫
各試料の希土類磁石素材を3.5Tのパルス磁界で着磁して、各試料の希土類磁石を作製し、希土類磁石における残留磁束密度の温度係数(%/℃)及び保磁力の温度係数(%/℃)を調べた。残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数は、B−Hトレーサー(理研電子社製BHH−530AP)に設置されたグローブボックス内を窒素雰囲気にし、そのグローブボックス内で各試料の希土類磁石素材を設定温度(50℃、100℃、150℃)に加熱し、各温度での残留磁束密度及び保磁力をB−Hトレーサーで測定し、その測定結果から算出した。その結果を表1に併せて示す。
各試料の希土類磁石素材を3.5Tのパルス磁界で着磁して、各試料の希土類磁石を作製し、希土類磁石における残留磁束密度の温度係数(%/℃)及び保磁力の温度係数(%/℃)を調べた。残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数は、B−Hトレーサー(理研電子社製BHH−530AP)に設置されたグローブボックス内を窒素雰囲気にし、そのグローブボックス内で各試料の希土類磁石素材を設定温度(50℃、100℃、150℃)に加熱し、各温度での残留磁束密度及び保磁力をB−Hトレーサーで測定し、その測定結果から算出した。その結果を表1に併せて示す。
表1に示すように、第二相粉末を3質量%以上含む試料No.1−1〜1−5は、第二相粉末を含まない試料No.1−11に比較して、残留磁束密度の温度係数及び保磁力の温度係数の各絶対値が小さくなっていることがわかる。具体的には、第二相粉末を3質量%含む試料No.1−1は、第二相粉末を含まない試料No.1−11に比較して、残留磁束密度の温度係数が約1.5%小さくなり、保磁力の温度係数が約3.7%小さくなっている。残留磁束密度の温度係数が約1.5%小さくなり、かつ保磁力の温度係数が約3.7%小さくなることで、その希土類磁石素材は、高温下であっても実用上十分な磁気特性を発揮できると期待できる。
表1に示すように、第二相粉末の含有量は、多くなるほど、残留磁束密度の温度係数と保磁力の温度係数の双方が小さくなることがわかる。しかし、第二相粉末の含有量が多くなると、第一相粉末の含有量が相対的に少なくなり、残留磁束密度が低下したり、コストの増大を招いたりする虞がある。そのため、第二相粉末の含有量は、50質量%以下であることが好ましいと考えられる。
1 希土類磁石素材
11 第一相
110 結晶粒
111 粒界相
12 第二相
2 粉末成形体
3 磁石用粉末
31 第一相粉末
310 第一相粒子
311 希土類元素の水素化合物の相
312 鉄含有物の相
32 第二相粉末
9 金型
91 ダイ
92 上パンチ
93 下パンチ
11 第一相
110 結晶粒
111 粒界相
12 第二相
2 粉末成形体
3 磁石用粉末
31 第一相粉末
310 第一相粒子
311 希土類元素の水素化合物の相
312 鉄含有物の相
32 第二相粉末
9 金型
91 ダイ
92 上パンチ
93 下パンチ
Claims (6)
- Ndを含む少なくとも一種の希土類元素Rと、Feを含む少なくとも一種の遷移金属元素Tと、B及びCから選択される少なくとも一種の元素Xとで構成され、Rの組成比をα、Tの組成比をβとしたとき、RαTβXで示される化合物を含む第一相と、
前記第一相の結晶粒界に存在して前記RαTβXよりもRの濃度が高い粒界相と、
Smを含む少なくとも一種の希土類元素Sと、Coを含む少なくとも一種の遷移金属元素Mとで構成され、Sの組成比をγ、Mの組成比をδとしたとき、SγMδで示される化合物を含む第二相とを備える希土類磁石素材。 - 前記希土類磁石素材に占める前記第二相の含有量は、3質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の希土類磁石素材。
- 前記SγMδは、γが1以上3以下、δが4以上18以下である請求項1又は請求項2に記載の希土類磁石素材。
- 前記RαTβXは、αが1.5以上2.5以下、βが12.5以上15.5以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の希土類磁石素材。
- 前記RαTβXは、Nd2T14Xである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の希土類磁石素材。
- 前記第一相の平均結晶粒径は、700nm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の希土類磁石素材。
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