JP2008305878A - 磁石材料、その製造方法、及びこれを用いたセンサー用樹脂結合型磁石 - Google Patents

磁石材料、その製造方法、及びこれを用いたセンサー用樹脂結合型磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】自動車の位置制御用センサーなどに要求される温度特性に優れた磁石材料とその製造方法、並びにこの磁石材料を用いたセンサー等に使われる樹脂結合型磁石を提供する。
【解決手段】一般式SmαHREβFe(100−α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErから選ばれる一種以上の重希土類元素であり、α、β、γ、δは原子%で、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、及び15≦δ≦25なる関係式を満足する)で表わされる磁石材料であって、該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相と、主相に比べて窒素濃度が高い副相を含み、しかも保磁力Hcjが240kA/m(3kOe)以上、保磁力Hcjの温度係数が絶対値で0.50%/K以下、磁束密度Brの温度係数が絶対値で0.02%/K以下であることを特徴とする磁石材料などにより提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁石材料、その製造方法、及びこれを用いたセンサー用樹脂結合型磁石に関し、より詳しくは、自動車の位置制御用センサーなどに要求される温度特性に優れた磁石材料とその製造方法、並びにこの磁石材料を用いたセンサー等に使われる樹脂結合型磁石に関するものである。
磁石材料の高性能化は、各種電気・電子機器の小型・高性能化に不可欠である。これまでにSm−Co系(SmCo系およびSmCo17系)、Nd−Fe−B系、Sm−Fe−N系(SmFe17系およびSmFe系)などの希土類磁石が発明されて、家庭電化製品、音響製品、自動車部品やコンピューターの周辺端末機など幅広い分野で使用されている。
Sm−Co系磁石は、キュリー温度が高く、温度特性が優れているという特徴を有するが、Coの供給が不安定であることから、特殊な用途に限定されている。
Nd−Fe−B系磁石は、Feをベースとする磁石であるため原料供給が安定しており、また極めて高いエネルギー積を有するため、幅広い分野で使用されている。現在では希土類磁石といえばほとんどがこの系である。しかしながら、Sm−Co系に比べてキュリー温度が低いため温度特性が十分でなく、また、耐食性が悪く表面コートが不可欠であるという問題がある(特許文献1参照)。
一方、Sm−Fe−N系磁石は、Sm−Co系に比べて飽和磁化が高く、異方性磁界は小さいが、Nd−Fe−B系磁石と比べると、飽和磁化は同等で、異方性磁界が高いという特徴がある。また、そのキュリー温度はSm−Co系磁石とNd−Fe−B系磁石の中間であり、温度特性はNd−Fe−B系に比べて優れている。さらに、Fe系磁石としてはNd−Fe−B系磁石に比べて耐食性に優れているという特徴を有している。
希土類−鉄−窒素−水素系材料は、10μm以下に細かく粉砕してはじめて高い保磁力が得られるが、保磁力の温度係数βは−0.54%/KとSm−Co系磁石の保磁力の温度係数β−0.23%/Kに比べて大きい。
また、希土類元素、鉄元素に金属元素Mnを共存させ、かつ、窒素量を高窒化領域に限定することにより、10μm以上の粒径でも高い保磁力が達成でき、保磁力の温度係数βは−0.26%/KとSm−Co系磁石に匹敵する特性を実現した希土類−鉄−窒素系磁石が提案されている(特許文献2参照)。これにより保磁力の温度係数βは小さくできたものの、磁束密度の温度係数αは−0.13%/Kであり、特許文献1の希土類−鉄−窒素系材料微粉(−0.07%/K)と比べると大きいという問題があった。
NdFeB磁石の場合には、Tb,Dy,Hoなどの重希土類元素を含むようにすると保磁力を大きく保ったまま磁束密度の温度変化を小さくできるという報告がなされているが(特許文献4参照)、SmCo磁石の場合では、Tb,Dy、Hoは保磁力を低下させてしまうため有効ではなかった。
SmCo系の磁石では、磁束密度の温度変化を小さくするため重希土類元素(特にGdまたはEr)でSmを置換する研究がなされている(非特許文献1参照)。非特許文献1では、Sm0.59Gd0.41またはSm0.59Er0.41の比率で置換することで磁束密度の温度係数がそれぞれ−0.005%/Kまたは+0.012%/K(20−100℃)と小さくできると報告されている。また、非特許文献2では、Sm1−xEr(Co0.69Fe0.22Cu0.08Zr0.027.22で、磁束密度の温度係数を小さくできることが報告されている。
ところで、モーター用途では、希土類元素(R)と鉄(Fe)と窒素(N)と必要によりコバルト(Co)とを主成分とする磁性粉末と、樹脂バインダーとからなり、磁束密度の温度係数?絶対値)が0.16%/K以下である極異方性希土類樹脂結合型磁石が提案されている(特許文献3参照)。
このようなSmFeN系磁石微粉の場合でも、Smを重希土類元素で置換することが考えられるが、重希土類元素による置換で結晶磁気異方性が大きく低下して、大きな保磁力を得ることができなくなることが予想され、磁束密度の温度係数がSm−Co系磁石並みの−0.035%/K、または、アルニコ磁石の−0.02%/K程度が必要とされている自動車の位置制御として使用できるセンサー用樹脂結合型磁石としては、その機能を実現することは難しいものと考えられていた。
特開平2−57663号公報 特開平8−55712号公報 特開2000−195713号公報 特公平06−78582号公報 D.Li,J.Liu,S.Zhou,X.Jin and E.Xu,Proceedings of the Seventh International Workshop on Rare Earth−Cobalt Permanent Magnets and Their Applications,495(1983) H.F.Mildrum,J.B.Krupar and A.E.Ray,J.Less Common Metals,261 93(1983)
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、自動車の位置制御用センサーなどに要求される温度特性に優れた磁石材料とその製造方法、並びにこの磁石材料を用いたセンサー等に使われる樹脂結合型磁石を提供することにある。
本発明者は、かかる問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、平均粒径が30μm程度でも660kA/m(8.3kOe)という大きな保磁力と、最大エネルギー積157kJ/m(19.6MGOe)を有するSm−Fe−Mn−N磁石粉に着目し、それを構成する希土類元素Smの一部を特定の重希土類元素(GdまたはEr)で置換することによって、意外にも保磁力を極端に低下させずにすむということが分かり、磁束密度の温度係数を小さくすることができるだけでなく、保磁力の温度係数も小さくできるという顕著な作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、一般式SmαHREβFe(100−α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErから選ばれる一種以上の重希土類元素であり、α、β、γ、δは原子%で、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、及び15≦δ≦25なる関係式を満足する)で表わされる磁石材料であって、該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相と、主相に比べて窒素濃度が高い副相を含み、しかも保磁力Hcjが240kA/m(3kOe)以上、保磁力Hcjの温度係数が絶対値で0.50%/K以下、磁束密度Brの温度係数が絶対値で0.02%/K以下であることを特徴とする磁石材料が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、HREの含有量(β)が、1〜4.5原子%であることを特徴とする磁石材料が提供される。
一方、本発明の第3の発明によれば、実質的にSm、HRE(Gd及び/またはEr)、Fe、及びMnからなり、平均粒径が5〜50μmである合金粉末を反応容器に装入した後、アンモニアガスを含む雰囲気下、300〜600℃の温度に加熱することにより、該合金粉末を窒化処理して、一般式SmαHREβFe(100−α−β−γ−δ) Mnγδ(但し、α、β、γ、δは原子%であり、また、5≦α+β≦10、α>β)、≦γ≦5、及び15≦δ≦25を満足する)で表わされる組成の磁石材料とすることを特徴とする磁石材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明に係り、磁石材料に樹脂バインダーを配合してなる樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
一方、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、樹脂結合型磁石用組成物を圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、又は圧延成形法から選ばれるいずれかの方法で成形して得られるセンサー用樹脂結合型磁石が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、自動車の位置制御に用いられることを特徴とするセンサー用樹脂結合型磁石が提供される。
本発明の磁石材料は、希土類元素Smの一部を重希土類元素であるGdまたはErで置換された一般式SmαHREβFe(100− α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErのうちの少なくとも一種であり、α、β、γ、δは原子%であり、また、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、15≦δ≦25 なる関係式を満足する)という特定の組成を有する希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石材料であり、該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相を含み、該磁石材料結晶粒内には窒素濃度分布を有しているため、磁束密度の温度係数が絶対値で0.02%/K以下で、従来の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石材料よりも小さい。しかも、母合金は高周波溶解法などにより容易に製造でき、それを窒化し粒度調整することで、平均粒径5〜50μmの磁石材料とすることができる。
この磁石材料は、240kA/m(3kOe)以上の保磁力を有し、保磁力Hcjの温度係数が絶対値で0.50%/K以下であることから、優れた温度特性を有する磁石を使用する必要がある自動車の位置制御用センサーなどの用途に適用でき、工業的意義は大きい。
以下、本発明の磁石粉末とその製造方法、及びこれを用いたセンサー用樹脂結合型磁石について詳細に説明する。
1.磁石粉末
本発明の磁石粉末は、一般式SmαHREβFe(100−α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErから選ばれる一種以上の重希土類元素であり、α、β、γ、δは原子%で、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、及び15≦δ≦25なる関係式を満足する)で表わされる磁石材料であって、該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相と、主相に比べて窒素濃度が高い副相を含み、しかも保磁力Hcjが240kA/m(3kOe)以上、保磁力Hcjの温度係数が絶対値で0.50%/K以下、磁束密度Brの温度係数が絶対値で0.02%/K以下であることを特徴とする。
この希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組成は、前記一般式SmαHREβFe(100−α− β− γ−δ) Mnγδで表わされ、5〜10原子%の希土類元素と、2〜5原子%のMnと、15〜25原子%のNと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoであり、Smの含有量(α)が重希土類元素の含有量(β)よりも多くなければならない。特に好ましいのは、8〜10原子%の希土類元素と、3.5〜5原子%以下のMnと、17〜23原子%のNと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoである磁石粉末である。
そして、本発明においては、希土類元素として、GdまたはErから選ばれる一種以上の重希土類元素(HRE)が含まれ、その含有量(β)が、Smの含有量(α)に対して、5≦α+β≦10、α>βなる関係式を満足しなければならない。ここで、α+βが5未満、すなわち希土類元素が5原子%未満であると、磁石粉末に未拡散の鉄−マンガン相が残留するので、磁化と保磁力と角形性が低下する。また、希土類元素(α+β)が10原子%を超えると、ThZn17型のSm(Fe、Mn)17化合物結晶相よりも希土類リッチの窒化物相が形成され、磁石粉末の磁化と角形性が低下する。一方、重希土類元素(HRE)の含有量が多く、α≦βであると、磁化と保磁力と角形性が低下するので好ましくない。特に好ましいHREの含有量(β)は、1〜4.5原子%である。
これまでの希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の保磁力の温度係数は−0.26%/Kであり、SmFeN微粉の−0.54%/Kに比べて小さいが、該磁石粉末の磁束密度の温度係数は−0.13%/Kであり、SmFeN微粉の−0.07%/Kに比べて大きいという問題があった。
また、市場で多く用いられているNdFeB磁石、例えば、MQP−B(Magnequench社製)の場合は、保磁力の温度係数は−0.4%/Kで比較的小さいが、磁束密度の温度係数は−0.11%/Kであり、磁束密度の温度係数ではこのNdFeB磁石のほうが従来の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末よりも優れている。
上記の課題を解決し、保磁力の温度係数を保ったまま磁束密度の温度係数を小さくすることは熱安定性に優れた磁石として重要である。特に、温度変化に対する熱安定性が要求される、センサー用途の磁石では重要となる。
従来の希土類磁石の場合、軽希土類に属するPr,Nd,Smなどが遷移金属と合金化されて用いられている。これは希土類元素と遷移金属元素の磁気モーメントが平行となり磁気モーメントを大きくできるためである。
SmCo系の磁石、例えば前記の非特許文献1では、表1に示すように、Sm0.59Gd0.41またはSm0.59Er0.41の比率で置換することで磁束密度の温度係数がそれぞれ−0.005%/Kまたは+0.012%/K(20−100℃)と小さくできる。また、前記の非特許文献2では、Sm1−xEr(Co0.69Fe0.22Cu0.08Zr0.027.22で、表2に示すように、磁束密度の温度係数を小さくできる。
Figure 2008305878
Figure 2008305878
しかし、上記のように、SmCo系材料では重希土類元素でSmを置換することによって、磁束密度の温度係数を小さくすることができるが、希土類元素−遷移金属系磁石材料において、重希土類元素で軽希土類元素を置換することによって、どのような効果が現れるかは、その他の添加元素の存在、あるいは、主相と副相の作り出す構造等によっても異なる。本発明においては、重希土類元素(HRE)は、Gd又はErでなければならず、Tb,Dy又はHoで置換した場合、結晶磁気異方性が大きく低下して、大きな保磁力は得られない。
本発明においてMnは、保磁力を発現させるための必須元素であるが、5原子%を超えると磁石粉末の磁化が低下する。より好ましいMn量は3.5〜5原子%である。
本発明においてN量(δ)は、15≦δ≦25でなければならない。δが15原子%未満では、微粉砕して保磁力を発現するタイプの合金になってしまい、平均粒径が10μm以上の磁石材料では保磁力が320kA/m以下となり、角形性が不十分となるので、15原子%以上でなければならない。ただし、δが25原子%を超えると、磁石粉末中のアモルファス相が増加するとともに、ThZn17型結晶構造を持つSm(Fe、Mn)17化合物結晶相主相をアモルファス相が取り囲む形をとった個々のセル構造において、ThZn17型結晶構造を持つSm(Fe、Mn)17化合物結晶相のc軸が揃わなくなってくるため、磁化が低下する。より好ましいN量は、17〜23原子%である。
残部はFeであるが、その一部をCoで置換することができる。Feの20重量%以下をCoで置換するとキュリー温度が上昇し、磁化や磁化の温度係数を改善できる。
本発明の磁石材料は、平均粒径が10〜50μmである。平均粒径が10μm未満となり、微粉末が多くなると磁石粉末の磁化と角形性が低下する。一方、平均粒径50μmを超える粗粉末が多くなると、その粗粉末の窒素分布が不均一になって磁石粉末の角形性が低下する。
また、この磁石材料は、結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相と主相に比べて窒素濃度が高い副相を含んでいる。
上記磁石材料の窒素濃度が高い状態とは、まだ詳細に規定することができないが、例えば希土類元素、Fe、MnおよびNを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相に対して、該主相の内部にランダムに存在する、主相に比べてMnおよびNの濃度が高い副相が、直径20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相として含まれた構造形態を有する状態、いわゆる微細相析出型である。
本発明の磁石材料は、保磁力が大きく、少なくとも240kA/m以上であり、好ましくは300kA/m以上、より好ましくは400kA/m以上という優れた性能を有するものであるが、その理由はまだ十分には解明されていない。本発明においては、ワイヤー状形態を有するアモルファス相が、単結晶内部にワイヤー状に存在しているので、「セル構造」よりも非磁性相が少ない分、より大きな磁化が得られ、また、アモルファス相は単結晶内部にワイヤー状に存在するため単結晶の構造を変化させることがないためと考えられる。
2.磁石材料の製造方法
本発明の磁石材料の製造方法は、実質的にSm、HRE(Gd及び/またはEr)、Fe、及びMnからなり、平均粒径が5〜50μmである合金粉末を反応容器に装入した後、アンモニアガスを含む雰囲気下、300〜600℃の温度に加熱することにより、該合金粉末を窒化処理して、一般式SmαHREβFe(100−α−β−γ−δ) Mnγδ(但し、α、β、γ、δは原子%であり、また、5≦α+β≦10、α>β)、≦γ≦5、及び15≦δ≦25を満足する)で表わされる組成の磁石材料とすることを特徴とする。
そして、本発明の磁石材料のベースとなる合金粉末は、製造方法によって制限されず、高周波溶解法や還元拡散法で得ることができる。
高周波溶解法による場合、具体的には、一般式SmαHREβFe(100− α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErのうちの少なくとも一種であり、α、β、γ、δは原子%であり、また、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、15≦δ≦25 なる関係式を満足する)で表わされる磁石材料となるように、原料粉末を用意し、例えば、アルゴンガス雰囲気下高周波溶解炉で溶解鋳造する。
この時、原料粉末としては、金属サマリウム、金属ガドリニウムまたはエルビウム、電解鉄および電解マンガンを用いれば良い。各金属の純度は高いほうが望ましく、例えば99%以上、特に99.9%以上が好ましい。溶融温度は、1500〜1600℃、加熱時間は、0.5時間程度であるが、溶融した後長時間放置するとSmの蒸気圧が高いため組成ずれを起こすという問題がある。組成ずれを防ぐためにアルゴン雰囲気中で溶解することが必要である。十分溶融した後、鉄製の鋳型に鋳込んで取り出す。また、1100〜1200℃で10〜20時間焼鈍後、徐冷することにより、包晶反応で生成したα−Feを消失させる必要がある。窒化を行う場合には予め室温から300℃程度の水素中で50μm程度に崩壊させて供する。
また、還元拡散法を用いて、磁石合金粉を作製することもできる。本発明では、鉄、マンガンからなる磁石原料粉末と還元剤とを反応容器に投入し、加熱処理することによって、希土類酸化物と他の酸化物原料とを還元するとともに、還元された希土類元素等の金属元素を鉄粉末に拡散させてThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄−マンガン母合金粉末を生成させる。還元剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種が使用される。その代表的な例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びこれらの水素化物を例示することができるが、取扱の安全性及びコストの点から金属カルシウムが好適である。またこれらの還元剤は、粒状または粉末状の形で使用されるが、特にコストの点から粒度4メッシュ以下の粒状金属カルシウムが好適である。これらの還元剤は、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、遷移金属を酸化物の形で使用した場合には、これを還元するに必要な分を含む)の1.1〜3.0倍量、好ましくは1.5〜2.0倍量の割合で使用される。
還元拡散法においては、上述した原料粉末と還元剤とを混合し、該混合物を窒素以外の不活性雰囲気、例えばアルゴンガス中で加熱を行うことにより還元を行う。熱処理温度は、900〜1200°C、特に1050〜1150℃の範囲とすることが望ましい。
得られた母合金粉に対して均一な窒化処理をするためには、粉体の平均粒径を10〜50μmにする必要がある。平均粒径が50μmを超えると、均一に窒化できないので好ましくない。一方、平均粒径が10μmよりも細かくなりすぎると、粒子表面の状態が粒子内部に影響するため保磁力劣化の原因となり耐候性が悪くなる。
粉砕の方法としてはジョークラッシャー等の市販の粉砕機で機械的に行う方法もあるが、合金塊を水素雰囲気中で室温から300℃程度の温度に保持して水素吸蔵させ体積を膨張させて内部応力を高め粗粉にする方法も用いることができる。水素吸蔵させて粉砕する場合、室温以下では水素吸蔵が起こりにくく、一方、水素吸蔵は比較的低い温度で始まるため300℃以上にする必要はない。
粒度分布が広い場合、大きな粒子と一緒に窒化した小さな粒子は過窒化となり高い磁気特性は得られない。したがって、水素で粉砕した合金粉には大きな粒子も含まれているため、一般的なミルで軽く機械粉砕し、ふるいで粒度を調整して平均粒径10〜50μmとしておく必要がある。
得られた合金粉の窒化処理は、純粋な窒素またはアンモニア雰囲気中で行う。その際、水素ガスで窒素またはアンモニアで置換することにより、より均一な窒化が可能となる。ガスの圧力は1気圧より高めても良いが、1気圧のガスフローで行うことができる。窒化の温度は、300〜600℃、好ましくは400〜500℃の範囲とする。600℃を超えると合金の一部が分解してSmの窒化物とα−Feになってしまう。また、300℃以下の温度では窒化が進まない。窒化の時間はガス圧、処理温度によって適宜選択することができる。窒化熱処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、200〜600分、好ましくは、300〜550分とする。200分未満では、窒化が不十分になり、一方、600分を超えると窒化が進みすぎるので好ましくない。
得られた磁石材料は、XRDで調べると、該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相に起因する少しブロードな回折線が得られる。また、TEMで詳しく見ると、該磁石材料結晶粒内には窒素濃度分布が観察される。
本発明の磁石材料では、磁石合金粉に対して、表面処理を行い、耐食性、耐酸化性および樹脂密着性を向上することができる。表面処理としては、特に制限されず、例えば、まず鉄と希土類元素の金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜(A)で被覆し、その表面にシリケート被膜(B)を形成し、さらに、このシリケート被膜(B)の表面上には、必要によりシラン系カップリング剤などによる処理被膜(C)を形成することができる。その詳細は、本出願人による特開2006−169618号公報に記載されている。
3.樹脂結合型磁石用組成物
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、磁石材料に樹脂バインダーを配合してなる樹脂結合型磁石用組成物である。
樹脂バインダーは、磁性粉末の結合材として働くものであり、用いられる樹脂としては特に限定されることはなく、目的とする樹脂結合型磁石の成形方法に合ったものを使うことが必要であり、圧縮成形法の場合は一般にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を、射出成形法の場合は一般にナイロン等の熱可塑性樹脂を用いる。また、押出成形法および圧延成形法の場合はエラストマー等を使うことになる。
熱可塑性樹脂としては、6ナイロン、6,6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6,12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレンーエチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、各種エラストマーやゴム類等が挙げられる。これらの単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品などが挙げられる。またこれら熱可塑性樹脂の2種類以上のブレンド等における系も当然含まれる。これら熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、所望の機械的強度が得られる範囲で低い方が望ましく、形状は、パウダー、ビーズ、ペレット等特に限定されないが、磁性粉との均一混合性から考えるとパウダーが望ましい。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル系エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、熱硬化性ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、これらの基本組成物や他種モノマーやこれら樹脂の2種類以上のブレンド等における系も当然含まれる。これら熱硬化性樹脂の粘度、分子量、性状等は、所望の機械的強度や成形性が得られる範囲であれば特に限定されないが、磁性粉との均一混合性や成形性から考えるとパウダー状又は液状が望ましい。射出成形の際、金型内で磁石成形品が硬化する直前でいったん樹脂バインダーの粘度が低下するため良好な配向特性が得られる。
これらの樹脂バインダーの含有量は、磁性粉100重量部に対して100重量部よりも多く充填した場合、樹脂結合型磁石の磁束密度が著しく低下する。また、3重量部より少ないと著しく成形性が低下し所望の成形体が得られない。従って、これらの樹脂混合量は、磁性粉100重量部に対し3〜100重量部が好ましい。また本発明の組成物を製造するとき、添加物としてカップリング剤や滑剤や安定剤などを使用すると、さらに組成物の加熱流動性が向上し成形性や磁気特性が向上する。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがある。このうち、シラン系カップリング剤には、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
カップリング剤は、樹脂バインダーの種類にあわせた適当なものを選択しそれらの一種または二種以上を使うことができる。
滑剤としては、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
また、安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン、[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダード・アミン系安定剤のほか、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤等が挙げられる。
これらの磁性粉末と樹脂バインダーなどとを、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して混合・混練することによって樹脂結合型磁石用組成物が得られる。
4.センサー用樹脂結合型磁石
本発明のセンサー用樹脂結合型磁石(以下、単に樹脂結合型磁石ともいう)は、樹脂結合型磁石用組成物から樹脂結合型磁石を製造する一般的な成形方法であればいずれでも採用でき、前記磁石材料と樹脂バインダー成分を混合、混練した後、圧縮成形法、射出成形法、又は押出成形法、圧延成形法から選ばれるいずれかの方法で成形される。
近年、リング状永久磁石の径方向に多極にN極とS極を生成した製品が、モーター用途を中心に増えている。このような用途においては、磁石の外周面(あるいは内周面)に沿ってNS極が現れ、内周面(あるいは外周面)にはほとんど現れないようになっている極異方性磁石、または磁石の外周面と内周面とにそれぞれNS極が現れているラジアル異方性磁石が使用される。極異方性磁石は、同一形状のラジアル異方性磁石に比べて、一般的にその磁石の動作点が高いため磁気特性が高い。
このような極異方性磁石を製造するには、成形金型に設けられたリング状キャビティーの外周面(あるいは内周面)にNS極が現れるようキャビティーの外側(あるいは内側)に永久磁石を埋め込む。このような構成の金型では、キャビティーに極異方性配向磁界が形成される。従って射出成形であれば、この金型キャビティーに磁性粉末と樹脂バインダーとからなる溶融した組成物(コンパウンド)を射出充填させる成形工程において、成形金型のキャビティー(成形原料を充填する空間)内で磁性粉末を磁界配向させると、冷却後に金型から取り出した磁石成形体は上述したような極異方性磁石となる。
この組成物を、配向磁界発生側の金型キャビティー面での磁界強度が2.5kOe以上である金型に射出成形することが好ましい。ここで磁界強度が2.5kOe未満だと磁性粉末の配向が低下し、必要な磁気特性が得られない。金型キャビティーに組成物を射出充填する際のゲートは、リング状磁石の端面に配置されるのが一般的である。本発明においてゲートは、最終的に得られる樹脂結合型磁石用の極数の1/3以上の点数の多点ゲートであるか、または円周方向に連続的なゲートであるのが望ましい。円周方向に連続的なゲートとしては、例えばフィルムゲート、ファンゲート、リングゲート、ディスクゲートが挙げられる。極数の1/3未満の点数の多点ゲートや1点ゲートでは、組成物がリング状キャビティー内部を移動する際に配向磁界の極間で磁粉が揺り動かされるために、流動が阻害されたり磁性粉末の配向性が乱され、表面磁束密度ピーク値の低下とピーク値の極間ばらつきの増加をもたらすからである。すなわち充填過程では、キャビティー内で配向磁界の極間を磁性粉末が極力横断しないよう、同一極上でリング状磁石の軸方向に組成物を流動させることが好ましい。これらのゲート構成により製造された樹脂結合型磁石は、磁石に設けられたゲート跡により確認できる。配向磁界の発生方法は、特に限定されず永久磁石方式・電磁石方式のいずれでもよい。永久磁石の場合にはNd−Fe−B焼結磁石またはSm−Co焼結磁石が望ましい。またNd−Fe−B焼結磁石を用いる場合には、金型の加熱温度において大きな不可逆減磁を引き起こさない程度に残留磁束密度の高い材質を選択する。押出成形法でも、押出金型で同様な配向磁界発生用磁気回路を組み込むことができる。
このようにして得られた樹脂結合型磁石は、このまま後着磁することなく使用可能であるが、成形時の付与されたNS極に極性をあわせて後着磁することによってさらに磁気特性が向上する。後着磁を行う場合にはNS極の極性の目印となるように樹脂結合型磁石に凸凹部を設けることもできる。また、後着磁を行う場合には、磁石のNS極と着磁ヨークの極性が合うように、例えば樹脂結合型磁石に凸凹部を設けることもできる。
こうして、従来にない安定な温度特性を有する樹脂結合型磁石が得られ、該樹脂結合型磁石はセンサー用の樹脂結合型磁石として好適である。しかも、保磁力および磁束密度の温度変化が小さいという特性を有することから、センサー用途として、広い温度範囲で一定の磁束を保持する特性が必要とされる自動車の位置制御に用いることができる。これまでのガソリンや軽油を燃料とした自動車のほかに、近年では、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)が実用化されている。これら新しいタイプの自動車では、センサーの小型、効率化(高出力化、高性能化)が要求されており、本発明の磁石材料は磁束密度を高くでき、小型化できるために好ましく適用できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
なお、磁石合金粉の金属元素の組成分析は、ICP発光分光分析装置(セイコーインスツル社製SPS1200型)で行い、窒素の分析は不活性ガス−インパルス加熱融解−熱伝導度法(LECO社)で行った。
また、磁気特性の測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製VSM−3型)で行った。約30mgの粉体を銅製の筒にエポキシ樹脂と一緒に詰め、磁界配向した上で固めて測定試料とした。20℃から100℃の範囲で3点温度を変えて磁化曲線を描き、磁束密度Brと保磁力Hcjを求め、それぞれの温度係数αおよびβを求めた。
(実施例1)
純度99.9%のSm、純度99.9%のGd、純度99.9%のFe及び純度99.9%のMnを用いて、Sm6.8Gd4.6Fe83.9Mn4.7組成となるように、アルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉(富士電波工機社製FIT−2.5型)で溶解混合し、さらにアルゴン雰囲気中、1150℃で20時間焼鈍し徐冷することにより、調製し、上記組成の母合金を作製した。この合金を水素雰囲気下で100℃にて一時間加熱して、粗粉砕し、次いで窒素雰囲気中マルチミル(ナルミ技研社製MA−1型)でさらに粉砕した後、ふるいで粒度を調整して、平均粒径約50μmの粉体を得た。
得られた上記組成の合金粉の窒化処理は、得られたSm−HRE−Fe−Mn合金粉体を横型管状炉に仕込み、アンモニアガス(ガス雰囲気中の分圧を0.5気圧とした)の一部を水素ガスで置換したガス雰囲気中で行った。ガスの圧力は1気圧とし、ガスフローで行った。窒化温度と窒化時間は、450℃で8時間とした。窒化して窒化粉体を作製し、続いて窒素気流中で0.5時間焼鈍したのち、平均粒径約30μmに調整した。その後、磁気測定等各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
得られた磁石材料は、XRDで調べると、該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、Gd、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶の結晶構造を有する主相に起因する少しブロードな回折線が得られる。また、TEMで詳しく見ると、該磁石材料結晶粒内には窒素濃度分布が見られた。
(実施例2)
Sm9.1Gd2.3Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
(実施例3)
純度99.9%のGdの代わりに純度99.9%のErを用い、磁石母合金の組成を、Sm6.8Er4.6Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
(実施例4)
磁石母合金の組成を、Sm9.1Er2.3Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
(実施例5)
実施例1の磁石材料を用い、この磁石材料90重量部に対して、樹脂バインダー(12ナイロン)を10重量部配合して、220℃で0.5時間混練し、樹脂結合型磁石用組成物を調製した。次に、射出成形機(株式会社日本製鋼所社製)で成形温度210〜270℃、金型温度100〜120℃の条件で射出することにより、10mm直径、7mm長さの円柱状樹脂結合型磁石を製造した。得られた樹脂結合型磁石の特性を評価したところ、Br=0.35T,HcJ=500kA/mであって、用いた磁石材料の性能が保持されていた。この樹脂結合型磁石は、自動車の位置制御用のセンサーに好ましく適用できる。
(比較例1)
Mnを加えず、Sm11Fe89組成の合金を、上記母合金作製条件で調整し作製した。窒化時間を2時間とした以外は実施例1同じと同じにして、特性の比較を行った。この磁石合金材料のiHcは0.5kOeであったが、さらに、この材料をボールミルで約2μmまで微粉砕した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
(比較例2)
磁石母合金の組成を、Sm11.4Fe83.9Mn4.73組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
(比較例3)
磁石母合金の組成を、Sm4.6Gd6.8Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
(比較例4)
磁石母合金の組成を、Sm4.6Er6.8Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
(比較例5)
磁石母合金の組成を、Sm9.1Tb2.3Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
(比較例6)
磁石母合金の組成を、Sm9.1Dy2.3Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
(比較例7)
磁石母合金の組成を、Sm9.1Ho2.3Fe83.9Mn4.7組成となるように調製した磁石母合金を用い、これをアルゴンガス雰囲気下高周波真空溶解炉に装入し、実施例1と同じ条件で粗粉砕し、次いで窒化した。その後、得られた磁性材料の磁気測定等各種測定を行った。特性測定結果を表3に示す。
Figure 2008305878
「評価」
実施例1〜4では、一般式SmαHREβFe(100−α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErから選ばれる一種以上の重希土類元素であり、α、β、γ、δは原子%で、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、及び15≦δ≦25の関係式を満足する)で表わされる磁石材料が得られているために、保磁力が320kA/m(4kOe)以上、磁束密度の温度係数は絶対値で0.02%/K以下であることが分かる。
一方、比較例1では、Mnと重希土類元素が含まれないSm11Fe89組成の合金をベースとしているために、保磁力は970kA/m(12.1kOe)と高いものの磁束密度の温度係数が−0.07%/Kで大きくなった。比較例2では、磁石母合金の組成を、重希土類元素が含まれないSm11.4Fe83.9Mn4.73組成としたため、保磁力は664kA/m(8.3kOe)と高いものの、磁束密度の温度係数は−0.13%/Kと大きくなった。比較例3と比較例4は、重希土類元素が含まれているが、その含有量が本発明の範囲から外れるため、保磁力が80kA/m(1kOe)以下と小さくなった。比較例5−7は、重希土類元素としてTb,Dy,Hoをそれぞれ用いたが、GdまたはErではなかったために、保磁力が80kA/m(1kOe)以下と小さくなった。

Claims (6)

  1. 一般式SmαHREβFe(100−α− β− γ−δ) Mnγδ(但し、HREはGdまたはErから選ばれる一種以上の重希土類元素であり、α、β、γ、δは原子%で、5≦α+β≦10、α>β、2≦γ≦5、及び15≦δ≦25なる関係式を満足する)で表わされる磁石材料であって、
    該磁石材料結晶粒内に少なくとも前記Sm、HRE、Fe、Mn及びNを成分とする菱面体晶および/または六方晶の結晶構造を有する主相と、主相に比べて窒素濃度が高い副相を含み、しかも保磁力Hcjが240kA/m(3kOe)以上、保磁力Hcjの温度係数が絶対値で0.50%/K以下、磁束密度Brの温度係数が絶対値で0.02%/K以下であることを特徴とする磁石材料。
  2. HREの含有量(β)が、1〜4.5原子%であることを特徴とする請求項1に記載の磁石材料。
  3. 実質的にSm、HRE(Gd及び/またはEr)、Fe、及びMnからなり、平均粒径が5〜50μmである合金粉末を反応容器に装入した後、アンモニアガスを含む雰囲気下、300〜600℃の温度に加熱することにより、該合金粉末を窒化処理して、一般式SmαHREβFe(100−α−β−γ−δ) Mnγδ(但し、α、β、γ、δは原子%であり、また、5≦α+β≦10、α>β)、≦γ≦5、及び15≦δ≦25なる関係式を満足する)で表わされる組成の磁石材料とすることを特徴とする磁石材料の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の磁石材料に樹脂バインダーを配合してなる樹脂結合型磁石用組成物。
  5. 請求項4に記載の樹脂結合型磁石用組成物を圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、又は圧延成形法から選ばれるいずれかの方法で成形して得られるセンサー用樹脂結合型磁石。
  6. 自動車の位置制御に用いられることを特徴とする請求項5に記載のセンサー用樹脂結合型磁石。
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