JP5159521B2 - 半硬質ボンド磁石 - Google Patents
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本発明の半硬質ボンド磁石は、常温でのトルクが高く、かつ高温でのトルク低下が小さいという特長があり、特に異形状対応可能なトルクリミッターやダンパー、ショックアブソーバー、テンショナー、ブレーキおよびアクセルペダル等に要求される非接触式のヒステリシス発生装置に適用して好適なものである。
併せて面対向のものも知られ、アキシャルギャップのトルクリミッターと称されている。
一方、特許文献2に開示の半硬質プラスチックマグネットはその残留磁束密度が十分とは言えず、トルクリミッター等の用途に使用した場合に十分なトルクが得難いため、その利用範囲は限定的であった。
「 化学式:Fe100-a-b-c-d−Ra−Bb−Tic−Nbd
但し、a:2.0〜3.5 at%、
b:6.0〜9.0 at%、
c:0.5〜1.5 at%、
d:0〜1.5 at%
で示される組成になり、保磁力(iHc)が8.0〜160.0 kA/m、残留磁束密度(Br)が 1.0〜1.5Tであることを特徴とする半硬質磁性粉。」
を開発した。
「(Fe1-mCom)100-x-yBxRyMz(Feは鉄、Coはコバルト、Bはボロン、RはY、La、Ce、Pr、NdおよびSmからなる群から選択された少なくとも1種の希土類、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、AuおよびPbからなる群から選択された少なくとも1種の元素)の組成式で表される半硬質磁性材料であって、
前記x、y、zが
7原子%≦x<15原子%、
0.5原子%≦y≦4原子%、
0.1原子%≦z≦7原子%、および0.001≦m≦0.5の関係を満足し、かつ構成相として、平均結晶粒径が100nm以下であるα−Fe微結晶を含んでいることを特徴とする半硬質磁性材料。」
が提案されている。
しかしながら、この半硬質ボンド磁石は、高温でのトルクが極端に低下するところに問題を残していた。
また、この半硬質磁性材料は、急冷凝固箔であることから、実際の使用に際しては所要厚みとするために数枚〜数十枚を積層して使用する必要が生じるが、数十枚の積層材とした場合例えばトルクリミッターとして使用した場合には、積層体の積層厚みのバラつきが、相対的に永久磁石との間のギャップを変動させ、その結果としてトルクが変動するという問題があった。
なお、接着剤で接着積層体の形にしてまとめれば上記の問題を解決できるものの、この場合には半硬質層の占積率が低下しトルクの低下をもたらすという問題が生じた。
前記した鋳造磁石粉体(アルニコ磁石)や酸化物磁性粉(フェライト粉末)の他に、半硬質磁石の代表的なものとして鉄−クロム−コバルト磁石が知られているが、この磁石は剛性が高いため加工し難く、その厚みは加工できる厚みに限定されることから、磁石側からの磁束をもれなく利用することは困難なため、十分なトルクを得ることはできなかった。また、この磁石は、加工後に熱処理を必要とするが、その温度管理が難しいため、ばらつきが発生し易いだけでなく、エネルギーコストが高いという点にも問題を残していた。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.半硬質磁性粉と樹脂とを混合した半硬質ボンド磁石であって、それに使用される半硬質磁性粉が、
化学式:(Fe100-a-b-c-d-e−Ra−Cob−Bc−Tid−Nbe)
但し、R:希土類元素、
a:2.5〜4.0at%、
b:0.1〜8.0at%、
c:3.0〜8.0at%、
d:1〜2.5at%、
e:0〜2.0at%(0at%を含む)
で示される組成になり、該半硬質磁性粉の保磁力(iHc)が25.0〜160.0 kA/m、残留磁束密度(Br)が1.2T以上、キュリー温度が310℃以上であることを特徴とする、高温でのヒステリシストルクに優れる非接触式のヒステリシス発生装置用半硬質ボンド磁石。
また、半硬質磁粉とバインダー樹脂を基本構成成分とするので、適切な成形方法により異形の最適な形状に調節できるため、ハウジングを兼用することができ、その結果、安価にトルクリミッター、ダンパー、ショックアブソーバー、テンショナー、ブレーキ、クラッチおよびアクセルペダル等のヒステリシス発生装置を提供することができる。
さらに、本発明の半硬質ボンド磁石は、所謂ボンド磁石なので、従来知られた圧延半硬質磁石(通常、〜0.7mm厚程度)や急冷凝固合金の熱処理半硬質箔(通常、10〜30μm厚)と違って、積層する必要がなく単味のままで所望厚みに成形することができるため、ギャップ変動のおそれがない。また、接着層による積層体中の半硬質箔占積率の低下も無く、また、異形状への加工が容易という特長を生かして、円筒を含めた複雑形状タイプの諸製品形状に好適に対応することができる。
加えて上記の応用として、本発明に従う半硬質ボンド磁石を利用すれば、従来材を使用した場合に比べて、高温度下で使用する際のトルクリミッターの大きさを極端に大きくすることなしに、使用に耐え得るヒステリシストルクを得ることができる。
例えば、同じトルクリミッター構成(内外径が同じ)で比較した場合、従来材(特許文献3)に比べて半硬質磁石及び永久磁石の長さを、使用温度にもよるが(10〜45%程度)短くすることができる。
前述したとおり、トルクリミッター等のヒステリシス発生装置としては、適正な保磁力と高い残留磁気を有することが求められる。
さらに、本発明では、高温でのトルクの低下を極力防止することが求められる。
ここに、かかるトルクリミッターの特性を得るために必要な磁性粉として適正な保磁力としては、共に使用される軸側の永久磁石等の残留磁束密度にも依存するので、一概には言えないものの、一般に、保磁力が25.0 kA/m(300エルステッド)に満たないと、例えばトルクリミッター用に用いた場合に十分なヒステリシストルクが得られず、一方160.0 kA/m(2000エルステッド)を超えると、例えば、ヒステリシスボンド磁石とともに用いられる磁石の残留磁束密度が小さい場合に、コギングが生じる場合があり、スムーズなヒステリシストルクが得られないことがある。
従って、本発明では、半硬質ボンド磁石の素材である半硬質磁性粉の保磁力(iHc)は、25.0〜160.0 kA/mの範囲に限定した。より好ましくはiHc:50.0〜150.0 kA/mの範囲である。
例えば、半硬質ボンド磁石を、紙送り重送防止トルクリミッターの用途に使用する場合、回転数がこれまでの3000(回/rpm)程度までであれば、前掲特許文献3に開示した磁性粉で十分であったのであるが、最近では、生産効率の向上を目指して回転数を増大させさらに高速化しようという動きがある。
しかしながら、回転数が3000(回/rpm)を超える高速回転になると、これに使用される半硬質ボンド磁石の温度が上昇し、特に温度が180℃以上になると、トルクの大幅な低下が避けられなかった。
発明者らは、この高温におけるトルク低下を防止する手法について検討したところ、半硬質ボンド磁石に使用する磁性粉のキュリー温度を310℃以上にすれば良いことを突き止めた。
半硬質ボンド磁石の磁性粉として、
化学式:(Fe100-a-b-c-d-e−Ra−Cob−Bc−Tid−Nbe)
但し、R:希土類元素、
a:2.5〜4.0at%、
b:0.1〜8.0at%、
c:3.0〜8.0at%、
d:1〜2.5at%、
e:0〜2.0at%(0at%を含む)
で示される組成に到達したのである。
かかる希土類元素としては、従来公知のものいずれもが使用できるが、中でもネオジムやプラセオジウム或はサマリウムは高い残留磁束密度(Br)を得る上で有利である。これらは、単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて用いることができる。
同図に示したとおり、Co量が0.1at%未満ではキュリー温度が310℃に満たず、一方8.0 at%を超えると残留磁束密度(Br)が1.2T未満になるので、本発明ではコバルトについてはその含有量を0.1〜8.0at%の範囲に限定した。より好ましくは2.0〜8.0at%の範囲である。
そして、上記のようにして得た急冷薄帯を粉砕して、半硬質磁性粉とするのである。
というのは、磁粉が50体積%に満たないと実用に耐える十分なトルクを得難く、一方83体積%を超えると例えば圧縮成形の場合機械的強度の大幅な低下を引き起こしたり、良好半硬質ボンド磁石をつくることができないからである。なお、成形法が射出成形の場合における磁性粉の好適配合比率は50〜75体積%である。ここで、磁粉が75体積%を超えると、加工性が劣悪となって成形が困難となり、良好な半硬質ボンド磁石をつくることができなくなる。
滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、エチレンビスアミド(EBS)、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類等が挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ組み合わせて用いることができる。
滑剤が0.1体積%未満では、金型からの離型が困難となる場合があり、生産性が低下し てコストアップを招いたり、離型時に成形品の表面がえぐり取られることがあり、この場合には該部分から機械的強度の低下およびヒステリシストルクの低下をもたらす場合がある。一方、5体積%を超えると成形品表面からのブリードを惹き起こしたり、機械的強度の低下をもたらす場合がある。
また、カップリング剤が0.5体積%未満では、加工時の流動性不良に起因した加工不良 が生じ、一方3体積%を超えると熱分解によるガス発生に起因したボイドの発生および機械強度の低下が懸念される。
このときのバインダー樹脂としては、本発明の半硬質ボンド磁石と同じものを用いることができる。配合割合は磁性粉が50〜83体積%、バインダー樹脂が17〜50体積%程度とすることが好ましい。磁性粉が50体積%未満では十分な磁気特性が得られず、一方83体積%を超えると成形性の悪化を招く。
かくして得られた半硬質ボンド磁石を、図2に示したようなトルクリミッターに組み込み、そのヒステリシストルクを測定した。
なお、軸側の永久磁石としては、(BH)max が88 kJ/m3(45 MGOe)で、iHc が640 kA/m(8000エルステッド)のネオジム焼結磁石を用いた。また、着磁した磁極数は、図2(b)に示すように12とした。
また、表2には、半硬質ボンド磁石の常温(25℃)、中温(125℃)および高温(180℃)における保磁力(iHc)および残留磁束密度(Br)、さらにはトルクリミッターとして使用したときの各温度におけるヒステリシストルクについて調査した結果を併記する。
なお、表2中において、No.1〜11は発明例(但し、No.4,6,7は参考例)、そしてNo.12が特許文献3に相当する従来例、No.13〜15が特許文献4に相当する従来例である。
従って、本発明に従う半硬質ボンド磁石を利用すれば、従来材を使用した場合に比べて、高温度下で使用する際のトルクリミッターの大きさを大きくすること無しに、十分に使用に耐え得るヒステリシストルクを得ることができる。
例えば、同じトルクリミッター構成(内外径が同じ)で比較した場合、従来材(特許文献3)に比べて半硬質磁石及び永久磁石の長さを、
25℃で 13%
125℃で 29%
180℃で 42%
短くすることができた。
2 ケーシング
3 回転軸
4 焼結磁石
5 半硬質プラスチックマグネット
Claims (6)
- 半硬質磁性粉と樹脂とを混合した半硬質ボンド磁石であって、それに使用される半硬質磁性粉が、
化学式:(Fe100-a-b-c-d-e−Ra−Cob−Bc−Tid−Nbe)
但し、R:希土類元素、
a:2.5〜4.0at%、
b:0.1〜8.0at%、
c:3.0〜8.0at%、
d:1〜2.5at%、
e:0〜2.0at%(0at%を含む)
で示される組成になり、該半硬質磁性粉の保磁力(iHc)が25.0〜160.0 kA/m、残留磁束密度(Br)が1.2T以上、キュリー温度が310℃以上であることを特徴とする、高温でのヒステリシストルクに優れる非接触式のヒステリシス発生装置用半硬質ボンド磁石。 - 前記半硬質磁性粉の保磁力(iHc)が50.0〜150.0 kA/mであることを特徴とする請求項1記載の半硬質ボンド磁石。
- 前記半硬質磁性粉のR(希土類元素)が、ネオジム、プラセオジウムまたはサマリウムあるいはそれらの混合体であること特徴とする請求項1または2記載の半硬質ボンド磁石。
- 前記半硬質磁性粉が、急冷処理により得たものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半硬質ボンド磁石。
- 前記半硬質磁性粉の配合比率が50〜83体積%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半硬質ボンド磁石。
- 前記半硬質ボンド磁石の配向が等方性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半硬質ボンド磁石。
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