JP2004266151A - 希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石 - Google Patents
希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004266151A JP2004266151A JP2003055983A JP2003055983A JP2004266151A JP 2004266151 A JP2004266151 A JP 2004266151A JP 2003055983 A JP2003055983 A JP 2003055983A JP 2003055983 A JP2003055983 A JP 2003055983A JP 2004266151 A JP2004266151 A JP 2004266151A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetic powder
- rare earth
- composition
- hybrid magnet
- powder
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Powder Metallurgy (AREA)
- Hard Magnetic Materials (AREA)
Abstract
【課題】希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保されるだけでなく配向性能に優れ、しかも安価な希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石の提供。
【解決手段】モード径が5μm以下の希土類系磁性粉末(A)と、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)との混合粉体に樹脂バインダー(C)を配合した希土類ハイブリッド磁石用組成物であって、希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)のモード径の差が1μm以上2.5μm以下であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物によって提供。
【選択図】 なし
【解決手段】モード径が5μm以下の希土類系磁性粉末(A)と、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)との混合粉体に樹脂バインダー(C)を配合した希土類ハイブリッド磁石用組成物であって、希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)のモード径の差が1μm以上2.5μm以下であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物によって提供。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石に関し、さらに詳しくは、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保されるだけでなく配向性能に優れ、しかも安価な希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
近年、雑貨からモーターやセンサーに至る様々な分野で使用される種々の永久磁石が開発されている。こうした永久磁石は、磁性材料、製造方法、特性等の相違により、次のような種々のタイプに分類される。すなわち、磁性材料で分類すると、フェライト、Sm−Co系やNd−Fe−B系等の希土類系磁性材料、アルニコや鉄クロムコバルト等の金属系磁性材料がある。
【0003】
また、製造方法で分類すると、焼結磁石、磁性粉末と樹脂バインダーとからなるボンド磁石、鋳造磁石があるが、ボンド磁石は、成形方法により、さらに射出成形磁石、押出成形磁石、圧縮成形磁石、圧延成形磁石等に分類できる。さらに、磁化の方向によれば、着磁により任意の方向に磁化できる等方性磁石と、磁石の製造時に決められたある方向に磁化して使用する異方性磁石とに分類することもできる。
【0004】
一般に、焼結磁石は、粉末冶金の手法を応用して相対密度を90%以上に緻密化できるため、材料の磁力をそのまま引き出せるが、形状自由度が小さく、また機械強度に劣るという問題点がある。これに対し、ボンド磁石は、樹脂を結合材として磁性粉末を成形しているため、樹脂体積分に相当する磁力低下があるものの、形状自由度や機械強度に優れ、他の部品との一体成形が可能であるという利点を持つ。
【0005】
一方、永久磁石の磁気特性は、上記の材料と製造方法の組み合わせにより幅広く選択できる。例えば、フェライト磁性粉末のボンド磁石であれば16kJ/m3、フェライトの焼結磁石であれば36kJ/m3程度までの最大エネルギー積を得ることが可能である。
【0006】
さらに高い磁気特性が要求される場合は、安価なフェライト磁性粉末に代えて、より高価な希土類系磁性材料が用いられる。例えば、Sm−Co系またはNd−Fe−B系ボンド磁石であれば95kJ/m3、Sm−Co系またはNd−Fe−B系焼結磁石であれば430kJ/m3程度までの最大エネルギー積を得ることが可能である。また、最大エネルギー積16kJ/m3〜100kJ/m3程度の中間域では、安価で、磁気特性を任意に選択できるフェライト磁性粉末と希土類系磁性材料とを混合したボンド磁石、いわゆるハイブリッド磁石が提案されている。
【0007】
例えば、フェライト磁性粉末とSm−Co系磁性粉末からなるハイブリッド磁石(特許文献1〜3を参照)、フェライト磁性粉末とNd−FeB系磁性粉末からなるハイブリッド磁石(特許文献4〜6を参照)が提案されている。また、フェライト磁性粉末とSm−Fe−N系磁性粉末からなるハイブリッド磁石(特許文献7〜10を参照)も提案されている。
【0008】
しかし、前記Sm−Co系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石は、Sm−Co系磁性粉末の磁化の低さから、また、前記Nd−Fe−B系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石では、等方性Nd−Fe−B系磁性粉末の磁化の低さから、所望の磁気特性を得るために必要とされる希土類系磁性粉末の量が多くなり、コストの低減の点で十分であるとは言えなかった。一方、前記Sm−Fe−N系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石では、Sm−Fe−N系磁性粉末が前記2種の磁石に比較して磁化が高く、Sm−Fe−N系磁性粉末の量を減らすことが出来ることから安価にはなったが、より一層のコスト低減が求められている。
【0009】
所望の特性にて、さらにSm−Fe−N系磁性粉末の割合を低減するためには、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、かつ、Sm−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末からなる磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めていく必要があるが、磁性粉末の割合をただ増加させるだけであると、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量(単位時間にオリフィスを通して流れる溶融組成物の体積のことであり、成形性の目安となる。)が低下して磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するという問題を有していた。また、フェライト磁性粉末は、希土類ハイブリッド磁石の製造工程でせん断力を受け、歪みによって保磁力が大きく低下する問題がある。
【0010】
耐環境特性を改善するために磁性粉末を表面処理することが提案されているが(例えば、特許文献11を参照)、磁性粉末表面に非磁性層が存在することから磁気特性が低下するため、従来よりもSm−Fe−N系磁性粉末の割合を高めなければならない点、また、Sm−Fe−N系磁石は、フェライトボンド磁石に比較して配向性能が悪いため、Sm−Fe−N系磁性粉末の割合を制御して所望の磁気特性を得なければならない点などが、改善点として求められている。
【0011】
このような状況下、フェライト磁性粉末の割合を高めても体積流量が低下せず、配向性能を悪化させずに、優れた磁気特性と耐環境特性を有する希土類ハイブリッド磁石の出現が切望されていた。
【0012】
【特許文献1】
特開昭55−99703号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭57−39102号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭60−223095号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭61−284906号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開昭62−257703号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平10−223421号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
特開2000−21615号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】
特開2000−124018号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】
特開2002−110410号公報(特許請求の範囲)
【特許文献10】
特開2002−110411号公報(特許請求の範囲)
【特許文献11】
特開2002−110412号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保されるだけでなく配向性能に優れ、しかも安価な希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、希土類系磁性粉末、フェライト磁性粉末、及び樹脂バインダーからなる希土類ハイブリッド磁石用組成物において、特定の粒度分布を有する希土類系磁性粉末、フェライト磁性粉末を選定し、両粉末の混合粉体のモード径の差を特定の範囲にすることにより、フェライト磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めることができ、その時、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保され、配向性能に優れ、結果として安価となる希土類ハイブリッド磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、モード径が5μm以下の希土類系磁性粉末(A)と、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)との混合粉体に樹脂バインダー(C)を配合した希土類ハイブリッド磁石用組成物であって、希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)のモード径の差が1μm以上2.5μm以下であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0016】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、希土類系磁性粉末(A)が、希土類元素と、鉄または鉄及びコバルトと、窒素とを主成分とすることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0017】
本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、フェライト磁性粉末(B)の保磁力が310kA/m以上であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0018】
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、希土類系磁性粉末(A)及びフェライト磁性粉末(B)は、燐酸塩系化合物、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びチタネート系カップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤(D)で表面処理されていることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0019】
本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、フェライト磁性粉末(B)の割合が、組成物全体を基準として25〜65重量%であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0020】
本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、混合粉体のかさ密度が、2.3g/cm3以上であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0021】
本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、体積流量が1.0cm3/s以上であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0022】
本発明の第8の発明によれば、第1〜第7の発明に係る希土類ハイブリッド磁石用組成物を、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、または圧延成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなる希土類ハイブリッド磁石が提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物、それを用いた希土類ハイブリッド磁石について詳細に説明する。
【0024】
1.希土類磁性粉末(A)
本発明で用いられる希土類系磁性粉末(A)は、希土類元素(R)と、鉄(Fe)または鉄(Fe)及びコバルト(Co)と、窒素(N)とを主成分とする菱面体晶系または六方晶系の結晶構造を有する磁性粉末(以下、R−Fe−N系磁性粉末と略称する場合がある。)である。
【0025】
希土類系磁性粉末(A)には、種々の添加元素を加えて組成を変えたものも対象に含まれる。中でも、必須成分がSmとFeであり、主としてSm2Fe17Nx相からなる希土類系磁性粉末が好ましく、Nの含有量は、x=2.8〜3.2が好ましい。
【0026】
Smの一部をY、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuから選択される一種以上の元素で置換してもよい。但し、磁気特性の低下を避けるため、その置換量は50原子%以下とすることが好ましい。
また、Feの一部をCoで置換しても良く、Co以外にも、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlから選択される一種以上の元素で置換することができる。但し、磁気特性の低下を避けるため、その置換量は50原子%以下とすることが好ましい。
【0027】
R−Fe−N系磁性粉末を製造する方法は、特に限定されないが、Nを含有しない原料合金粉末を鋳造法、急冷法、還元拡散法、メカニカルアロイング法、HDDR法などによって製造し、N2ガスまたはN原子を含む雰囲気中で熱処理して合金粉末内にNを導入して得ることができる。
【0028】
これらの製造方法は、例えば、特開平2−57663号公報、特開平3−16102号公報、特開平3−101102号公報、特開平3−141608号公報、特開平3−153852号公報、特開平3−160705号公報、特開平8−45718号公報、特開平8−55712号公報、特開平8−144024号公報、特開平8−316018号公報、特開平10−163056号公報、特開平10−241923号公報、特開平10−289811号公報、特開平11−297518号公報等に開示されている。
【0029】
希土類ハイブリッド磁石には低コストが要求されることから、本発明では製造コストが低い還元拡散法で原料合金粉末を製造することが望ましい。希土類系磁性粉末を粉砕する場合には、有機溶媒を用いた湿式粉砕あるいは微量酸素雰囲気下で乾式粉砕を行う。それぞれに様々な粉砕機、粉砕形式が存在するが所望の粒径に粉砕できるものであれば特に制限されない。
【0030】
希土類系磁性粉末(A)のモード径は、5μm以下、好ましくは4.5μm以下である。ここでモード径とは、レーザー回折式粒度分布計に依って測定された体積頻度分布の最頻値径である。
モード径が5μmを超えると、希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末からなる磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めることができないか、高められたとしても希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量が低下して磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するなどの問題が顕著となる場合がある。
【0031】
また、本発明の希土類系磁性粉末(A)は、発火防止等、ハンドリング性を向上させるために、湿式または乾式処理によって徐酸化皮膜が表面に形成された磁性粉末を用いることができる。これらの方法は、例えば、特開昭52−54998、特開昭59−170201、特開昭60−128202、特開平3−211203号公報、特開昭46−7153、特開昭56−55503、特開昭61−154112、特開平3−126801号公報等に開示されている。
徐酸化皮膜が表面に形成されていない希土類系磁性粉末(A)を用いる場合は、フェライト磁性粉末(B)と混合する前に、後で詳述する方法で表面処理しておく必要がある。
【0032】
2.フェライト磁性粉末(B)
本発明で用いられるフェライト磁性粉末(B)は、得られる希土類ハイブリッド磁石の角型性を良好に保つ上で重要な役目を担うものであって、その特性としては、保磁力が310kA/m以上であることが好ましい。
【0033】
フェライト磁性粉末は、前述のように、希土類ハイブリッド磁石の製造工程でせん断力を受け、歪みによって保磁力が大きく低下する。そのため、フェライト磁性粉末の保磁力が310kA/m未満では、優れた角型性を有する希土類ハイブリッド磁石は得られない。
【0034】
フェライト磁性粉末の材質としては、Srフェライト、Baフェライトのいずれでも構わないが、角型性を高めるためには、Srフェライトが好ましい。尚、後述するように、本発明の希土類ハイブリッド磁石を異方性ボンド磁石として製造する場合、フェライト磁性粉末としては、磁界中成形工程での磁性粉末配向性を高めるために、個々の粉末が実質的に単結晶となっている異方性磁性粉末でかつ球状に近い形状のものを選択することが望ましい。
【0035】
また、フェライト磁性粉末(B)の比表面積は、特に制限されないが、上記粒度分布を維持する中で、通常は1.5m2/g以上、好ましくは2.0m2/g以上、さらに好ましくは3.5m2/g以上であることが好ましい。比表面積が1.5m2/g未満の場合は、角型性が低下してしまう。
【0036】
さらに、フェライト磁性粉末の圧縮密度は、特に制限されないが、通常は3.3g/cc以下、好ましくは2.9g/cc以下、さらに好ましくは2.5g/cc以下である。圧縮密度が3.3g/ccを超える場合は、角型性が低下してしまう。
上記のフェライト磁性粉末を用いることにより、成形時の保磁力低下が抑制され、希土類ハイブリッド磁石の角型性が向上する。
【0037】
フェライト磁性粉末のモード径は、3μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、希土類系磁性粉末のモード径(5μm以下)との差が1μm以上2.5μm以下であることが必要である。
【0038】
モード径の差がこの範囲を外れてしまうと、希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末からなる磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めることができないか、高められたとしても希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量が低下して磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するなどの問題が顕著となってしまう。
また、両粉末の混合粉体のかさ密度は、2.3g/cm3以上であることが望ましい。かさ密度が2.3g/cm3未満では、体積流量、配向性能、磁気特性を悪化させる場合がある。
【0039】
3.表面処理剤(D)
希土類系磁性粉末(A)とフェライト磁性粉末(B)は、表面処理剤(D)で表面処理することが好ましい。この表面処理により、磁性粉末の表面が被覆されるため、混練時や射出成形時のせん断によるフェライト磁性粉末の保磁力低下が抑制され、その結果、希土類ハイブリッド磁石の角型性が向上する。また、それに加えてR−Fe−N系磁性粉末の耐環境性も向上する。
【0040】
かかる表面処理剤(D)としては、燐酸系化合物、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0041】
上記の燐酸系化合物としては、特に限定されないが、それ自身が反応するか反応せずに燐酸塩を形成し、かつR−Fe−N系磁性粉末の表面を被覆できることが重要となる。これらの条件を満足させる燐酸系化合物としては、市販されている燐酸、燐酸溶液、燐酸塩、これらの混合物が挙げられる。
燐酸塩としては、燐酸マンガン系、燐酸亜鉛系、燐酸水素ナトリウム系、燐酸カルシウム系、有機燐酸エステル系等の有機燐酸化合物が挙げられる。尚、これらの燐酸系化合物は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0042】
R−Fe−N系磁性粉末表面を保護するために必要な燐酸塩皮膜の厚さは、平均で3〜150nm、好ましくは5〜100nmである。皮膜の平均厚さが3nm未満では十分な耐熱性、耐湿性が得られず、また、150nmを超えると磁気特性が低下すると共にボンド磁石を作製する際の混練性、成形性が低下する。
本発明の方法によれば、通常はR−Fe−N系磁性粉末表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上を燐酸塩皮膜で覆う(均一に被覆する)ことができる。
【0043】
また、シラン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。尚、これらのシラン系カップリング剤は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0044】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルコキシアルミニウムキレート類が挙げられる。例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等である。尚、これらのアルミニウム系カップリング剤は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0045】
さらに、チタネート系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。
【0046】
チタネート系カップリング剤の中では、磁性粉末表面との接着性に優れ、かつバインダー成分とのなじみも良いため、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートが特に好ましい。尚、これらのチタネートカップリング剤は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0047】
4.樹脂バインダー(C)
本発明で用いられる樹脂バインダー(C)としては、各種の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂が使用でき、それぞれの物性、性状等も所望の特性が得られれば特に限定されることはない。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6,12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、各種エラストマーやゴム類等の単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品等が挙げられる。尚、これらの熱可塑性樹脂は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0049】
また、上記の熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、特に限定されないが、所望の機械的強度が得られる範囲で低い方が望ましく、また形状としてはパウダー、ビーズ、ペレット等を任意に選択し得るが、磁性粉末との均一混合性の観点からはパウダーが好ましい。
【0050】
一方、熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル系エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、熱硬化性ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。尚、これらの熱硬化性樹脂は、単独または二種類以上を組合せて用いることもできるし、他種モノマーと組合せて用いても良い。
【0051】
また、上記の熱硬化性樹脂の粘度、分子量、性状等は、特に限定されず、所望の機械的強度や成形性が得られる範囲であれば良く、磁性粉末との均一混合性や成形性の観点からはパウダーまたは液状が望ましい。
【0052】
5.その他の添加剤
本発明のハイブリッド用磁石組成物には、前記の必須成分(A)〜(D)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤や安定剤等の添加剤を配合することができる。これら添加剤を配合することにより、組成物の加熱流動性が一層向上し、成形性や磁気特性の向上が図れる。
【0053】
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組合せて使用することができる。
【0054】
また、安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダード・アミン系安定剤、または、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組合せて使用することができる。
【0055】
6.希土類ハイブリッド磁石用組成物
本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物は、(1)少なくとも希土類系磁性粉末を特定の表面処理剤により被膜し、(2)これにフェライト磁性粉末を混合し、(3)得られた混合粉体に、樹脂バインダーと、さらに必要に応じて他の添加剤を配合することにより調製される。
【0056】
(1)希土類系磁性粉末の表面処理
本発明の希土類ハイブリッド磁石組成物の原料であるR−Fe−N系磁性粉末は、耐環境性を向上させるため表面処理が施される。
【0057】
本発明において、希土類系磁性粉末を表面処理するには、モード径が5μm以下になるように粉砕した磁性粉末を、前記の表面処理剤と接触させて燐酸塩やカップリング剤などによる皮膜を形成させればよい。
【0058】
例えば、有機溶媒を用いた媒体攪拌ミルで、その粉末のモード径が5μm以下となるように粉砕し、得られたスラリーのR−Fe−N合金粉末100重量部に対して0.1〜2重量部となるように、燐酸系化合物を添加する。そのスラリーをプラネタリーミキサーにて、不活性ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱乾燥し、100〜200℃にて10〜60分保持した後、冷却すれば表面処理されたR−F−N磁性粉末が得られる。
【0059】
また、モード径が5μmを超える希土類系磁性粉末の粗粉末を燐酸系化合物と有機溶媒からなる溶液中に入れ、R−Fe−N系合金粉末を粉砕しながら表面処理することもできる。粉砕に要する時間は、粉砕装置や、その運転条件にもよるが、例えば、媒体撹拌ミルであれば、1〜2時間とするのが好ましい。
【0060】
この方法によれば、ボールミル等の媒体撹拌ミルによって磁石合金粉を粉砕する際に、燐酸系化合物を添加することにより、粉砕によって凝集粒子に新生面が生じても、瞬時に溶媒中の燐酸系化合物と反応し、粒子表面に安定な燐酸塩皮膜が形成される。また、その後、粉砕された磁性粉末が凝集しても、接触面はすでに安定化されており、解砕により腐食は生じない。
【0061】
燐酸系化合物としては、特に制限はなく、市販されている通常の燐酸、例えば、85%濃度の燐酸水溶液を使用することができる。燐酸系化合物の添加量は、粉砕後のR−Fe−N系磁性粉末の粒径、表面積等に関係するので一概には言えないが、通常は、粉砕するR−Fe−N系合金粉末に対して0.1〜2mol/kgとし、好ましくは0.13〜1.5mol/kg、さらに好ましくは0.15〜0.4mol/kgとする。
燐酸系化合物の添加量が0.1mol/kg未満であると、R−Fe−N系磁性粉末の表面処理が不十分で、耐熱性と耐湿性が改善されず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性が極端に低下する。一方、2mol/kgを超えると、R−Fe−N系磁性粉末との反応が激しく起こって磁性粉末が溶解する。
【0062】
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、トルエンなどが使用できるが、特にエタノール、イソプロパノールなどのアルコールが好ましい。
【0063】
こうして表面処理されたR−Fe−N系磁性粉末は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中または真空中、100〜400℃の温度範囲で加熱処理する。温度範囲は、110〜250℃、特に130〜200℃が好ましい。100℃未満では、磁性粉末の乾燥が十分に進まず安定な表面皮膜の形成が阻害され、また、400℃を超える温度では、磁性粉末が熱的ダメージを受け、保磁力が低くなる。
【0064】
(2)希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末との混合
次に、表面処理された希土類系磁性粉末(A)に、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)を混合する。
【0065】
この際、希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)とのモード径の差が1μm以上2.5μm以下となるように調整することが肝要である。これにより、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量を1.0cm3/s以上とすることができる。モード径の差がこの範囲を外れると、体積流量が1.0cm3/sよりも低くなり磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するので好ましくない。また、同様な理由によって、この混合粉体のかさ密度を2.3g/cm3以上とすることが好ましい。
【0066】
希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末と樹脂バインダーとの混合比率は、特に限定されず、目的とする磁気特性に対して適宜設定することができる。例えば、(希土類系磁性粉末重量)/(フェライト磁性粉末重量)比率を大きく設定して目的の磁気特性を確保する場合は、樹脂バインダーの混合率を高くすることができ、結果的に組成物の流動性は向上する。
【0067】
他方、樹脂バインダーの混合率を低目に設定すれば、(R−Fe−N系磁性粉末重量)/(フェライト磁性粉末重量)比率を小さくする、換言すれば、フェライト磁性粉末の混合比率を高めて原料コストを低減することができる。
【0068】
フェライト磁性粉末(B)の割合は、希土類ハイブリッド磁石用組成物全体を基準として25〜65重量%とすることが望ましく、25重量%未満では、磁気特性に比して安価な希土類ハイブリッド磁石が得られず、65重量%を超えると磁気特性が低下するので好ましくない。
なお、この工程は必須ではなく、希土類系磁性粉末の種類、表面処理方法、混合方法によっては、フェライト磁性粉末の混合を次の工程と一緒に行うこともできる。
【0069】
(3)磁性粉末と有機バインダーとの混合
こうして得られた希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末との混合粉体に樹脂バインダー及び、必要により他の添加剤を混合する。樹脂バインダー及び、他の添加剤は前記のとおりである。
【0070】
フェライト磁性粉末が表面処理されていない場合は、この工程で、混合粉体に表面処理剤を樹脂バインダーとともに添加することができる。
表面処理剤の添加量は、その種類によって最適値が異なるが、R−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末との合計100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部とするのが好ましい。添加量が0.1重量部よりも少ないと、耐環境性、角型性の十分な向上が得られず、10重量部よりも多いと、成形体の密度が低下して所望の磁気特性が得られない。
【0071】
このように各磁性粉末の混合粉体に、有機バインダーと表面処理剤とを同時に混合しても良いが、より確実な被膜を得るためには、R−Fe−N系磁性粉末、フェライト磁性粉末の各々を完全に表面処理した後、各磁性粉末と有機バインダーとを混合することが望ましい。
【0072】
また、希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末の混合粉体と樹脂バインダー等とを混合・混練する方法は、特に限定されないが、例えば、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して行うことができる。
【0073】
7.希土類ハイブリッド磁石
こうして混合・混練により得られた組成物を成形することで、本発明の希土類ハイブリッド磁石が得られる。成形方法は、特に限定されないが、射出成形、圧縮成形、押出成形、または圧延成形のいずれかでよく、特に射出成形、圧縮成形によることが好ましい。
【0074】
本発明の希土類ハイブリッド磁石は、従来のSm−Co系磁性粉末やNd−Fe−B系磁性粉末を用いた磁石と比べて、安価で、かつ耐環境性及びB−H減磁曲線の角型性に優れたものとなる。
【0075】
尚、特開平2−57663号公報等で開示されているR−Fe−N系磁性粉末を使用する場合、個々の粉末が実質的に単結晶となっている異方性磁性粉末であるため、組成物を磁界中で成形することにより、R−Fe−N系磁性粉末の磁化容易方向が揃い、高い磁束密度を持つ異方性希土類ハイブリッド磁石が製造できる。同様に、フェライト磁性粉末についても、異方性磁性粉末を選択して磁界中で成形することにより、フェライト磁性粉末の磁化容易方向が揃い、高い磁束密度を持つ異方性希土類ハイブリッド磁石が製造できる。すなわち、異方性のR−Fe−N系磁性粉末と異方性のフェライト磁性粉末とから製造された組成物を、磁界中で成形することにより、最も高い磁束密度を有する異方性希土類ハイブリッド磁石が得られる。
【0076】
一方、前述の特許文献5(特開昭61−284906号公報)等で開示されているフェライト磁性粉末とNd−Fe−B系希土類磁性粉末とからなるハイブリッド磁石は、Nd−Fe−B系磁性粉末が等方性であるため、同一の磁束密度を得る場合に、高価な希土類系磁性粉末の混合比率を高く設定せざるを得ず、本発明のコストメリットは得られない。
【0077】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
なお、磁性粉末の混合粉体のかさ密度、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量は次の方法で測定した。
(かさ密度の測定)
タッピングによるかさ密度(d)は、Sm2Fe17N3合金粉末とフェライト磁性粉末の混合粉体50gをメスシリンダーに入れ、50mmの落差のタッピングを1000回した後の体積を読みとることで算出した。
【0079】
(体積流量の測定)
希土類ハイブリッド磁石用組成物としての体積流量(Q値)は、キャピラリーレオメーター(商品名:CFT−100D (株)島津製作所製)にて温度250℃、オリフィスφ1mm−1mm、加重294N/cm2、予熱時間120secの条件下で測定した。
【0080】
また、希土類ハイブリッド磁石の磁気特性、配向性能は希土類ハイブリッド磁石用組成物から得られたペレットを用いて磁場中成形することで評価した。
(磁気特性の評価)
希土類ハイブリッド磁石用組成物から得られたペレットを200〜220℃のシリンダー温度、90〜120℃の金型温度にてφ50−φ30mm×50mmリング体を磁場中成形した(配向磁場は50mm方向に796kA/mの大きさで印加した)。
磁気特性は、成形体より切り出した5mm×5mm×10mmの直方体(配向方向は10mmの方向とした)に3183kA/mのパルス磁場で着磁したものをCioffi型自記磁束計(商品名:TRF 東英工業(株)製)にて測定することで、残留磁化(Br)、保磁力(bHc)を得た。
【0081】
(配向性能の評価)
配向性能の評価は、ペレットを200〜220℃のシリンダー温度、90〜120℃の金型温度にてφ50−φ30mm×50mmリング体を磁場中成形し(配向磁場は50mm方向に159kA/mの大きさで印加した)、成形体より切り出した5mm×5mm×10mmの直方体(配向方向は10mmの方向とした)に3183kA/mのパルス磁場で着磁したものをCioffi型自記磁束計にて磁化(Br’)を測定し、磁気特性評価用成形体の磁化(Br)と比較することで行った。
【0082】
(実施例1)
150タイラーメッシュ(ふるいの目開き:104μm)アンダー、純度99.9wt%の電解Feと325タイラーメッシュ(ふるいの目開き:43μm)アンダー、純度99wt%の酸化Smを純度99.7wt%のCaペレットとともにダブルコーンブレンダーに入れ混合した。その混合物をステンレス坩堝に入れ、Arガス雰囲気下にて1200℃で8時間加熱した。
冷却後の還元物を水中にて崩壊させ、その後、酢酸により洗浄した。これをさらに水洗、濾過した後に、振動流動乾燥機にて乾燥させ、Sm2Fe17合金粉末を得た。
この合金粉末を、35vol%アンモニアガス−水素ガス雰囲気下にて480℃で6時間の熱処理を行い、引き続き、炉内をアルゴンガス雰囲気に置換して480℃で2時間の熱処理を行い、Sm2Fe17N3合金粉末を得た。
有機溶媒を用いた媒体攪拌ミルで、その粉末のモード径が4.2μmとなるように粉砕した。得られたスラリーのSm2Fe17N3合金粉末100重量部に対して0.4重量部となるように、有機燐酸エステル化合物(商品名:TBP 大八化学(株)製)を添加した。そのスラリーをプラネタリーミキサーにて、N2ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱乾燥し、140℃にて30分保持した後、冷却することにより表面処理されたSm2Fe17N3合金粉末を得た。
このようにして得られたSm2Fe17N3合金粉末30.8重量%を、モード径が2.5μmのフェライト磁性粉末(商品名:FAN−800 戸田工業(株)製)57.4重量%、12ナイロン樹脂(商品名:P−3014U 宇部興産(株)製)10.0重量%、滑剤のエチレンビスステアリルアミド1.2重量%、ビニルトリエトキシシランカップリング剤(商品名:A−151 日本ユニカー(株)製)0.6重量%とタンブラーにて混合し、200〜220℃で2軸押出機を用いて混練した。混練物は冷却後に粉砕し、成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0083】
(実施例2)
有機燐酸エステル化合物の添加量を1.2重量部とした以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0084】
(実施例3)
得られたSm2Fe17N3合金粉末スラリーのSm2Fe17N3合金粉末100重量部に対して0.4重量部となるように、有機燐酸エステル化合物に代えてイソプロピルトリイソステアロイルチタネートカップリング剤(商品名:KR−TTS 味の素(株)製)を添加した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0085】
(実施例4)
得られたSm2Fe17N3合金粉末スラリーのSm2Fe17N3合金粉末100重量部に対して1.0重量部となるように、有機燐酸エステル化合物に代えてイソプロピルトリイソステアロイルチタネートカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0086】
(実施例5)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が3.6μmとなるように粉砕した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0087】
(実施例6)
モード径2.1μmのフェライト磁性粉末(商品名:MA−951 戸田工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0088】
(実施例7)
Sm2Fe17N3合金粉末をモード径が3.6μmとなるように粉砕し、モード径2.1μmのフェライト磁性粉末を混合した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0089】
(比較例1)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が5.0μmとなるように粉砕し、モード径2.4μmのフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0090】
(比較例2)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が3.0μmとなるように粉砕し、モード径2.1μmのフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0091】
(比較例3)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が6.0μmとなるように粉砕し、モード径2.1μmのフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
上記の結果、実施例1〜7により、希土類系磁性粉末(A)のモード径が5μm以下で、フェライト磁性粉末(B)のモード径が3μm以下であり、両粉末のモード径の差が1μm以上2.5μm以下の混合粉体を用いると、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量(Q値)が1.0cm3/s以上となり、かつ磁気特性も優れたものになることが分かる。なお、実施例7は、両粉末の混合粉体のかさ密度が2.3g/cm3未満であるため、他の実施例よりも体積流量(Q値)、磁気特性が低下した。
【0094】
これに対して、比較例1〜3により、希土類系磁性粉末(A)のモード径が5μmを超えるか、5μm以内であっても、フェライト磁性粉末(B)とのモード径の差が1〜2.5μmの範囲を外れた混合粉体を用いると、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量(Q値)が1.0cm3/s未満となり、かつ磁気特性も低下することが分かる。
【0095】
【発明の効果】
本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物は、希土類系磁性粉末(A)、フェライト磁性粉末(B)、及び樹脂バインダー(C)からなる希土類ハイブリッド磁石用組成物において、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高めることができ、その時、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保することができる。しかも、配向性能に優れ、結果として安価となる希土類ハイブリッド磁石を提供できることから、この発明の工業的価値は極めて大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石に関し、さらに詳しくは、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保されるだけでなく配向性能に優れ、しかも安価な希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
近年、雑貨からモーターやセンサーに至る様々な分野で使用される種々の永久磁石が開発されている。こうした永久磁石は、磁性材料、製造方法、特性等の相違により、次のような種々のタイプに分類される。すなわち、磁性材料で分類すると、フェライト、Sm−Co系やNd−Fe−B系等の希土類系磁性材料、アルニコや鉄クロムコバルト等の金属系磁性材料がある。
【0003】
また、製造方法で分類すると、焼結磁石、磁性粉末と樹脂バインダーとからなるボンド磁石、鋳造磁石があるが、ボンド磁石は、成形方法により、さらに射出成形磁石、押出成形磁石、圧縮成形磁石、圧延成形磁石等に分類できる。さらに、磁化の方向によれば、着磁により任意の方向に磁化できる等方性磁石と、磁石の製造時に決められたある方向に磁化して使用する異方性磁石とに分類することもできる。
【0004】
一般に、焼結磁石は、粉末冶金の手法を応用して相対密度を90%以上に緻密化できるため、材料の磁力をそのまま引き出せるが、形状自由度が小さく、また機械強度に劣るという問題点がある。これに対し、ボンド磁石は、樹脂を結合材として磁性粉末を成形しているため、樹脂体積分に相当する磁力低下があるものの、形状自由度や機械強度に優れ、他の部品との一体成形が可能であるという利点を持つ。
【0005】
一方、永久磁石の磁気特性は、上記の材料と製造方法の組み合わせにより幅広く選択できる。例えば、フェライト磁性粉末のボンド磁石であれば16kJ/m3、フェライトの焼結磁石であれば36kJ/m3程度までの最大エネルギー積を得ることが可能である。
【0006】
さらに高い磁気特性が要求される場合は、安価なフェライト磁性粉末に代えて、より高価な希土類系磁性材料が用いられる。例えば、Sm−Co系またはNd−Fe−B系ボンド磁石であれば95kJ/m3、Sm−Co系またはNd−Fe−B系焼結磁石であれば430kJ/m3程度までの最大エネルギー積を得ることが可能である。また、最大エネルギー積16kJ/m3〜100kJ/m3程度の中間域では、安価で、磁気特性を任意に選択できるフェライト磁性粉末と希土類系磁性材料とを混合したボンド磁石、いわゆるハイブリッド磁石が提案されている。
【0007】
例えば、フェライト磁性粉末とSm−Co系磁性粉末からなるハイブリッド磁石(特許文献1〜3を参照)、フェライト磁性粉末とNd−FeB系磁性粉末からなるハイブリッド磁石(特許文献4〜6を参照)が提案されている。また、フェライト磁性粉末とSm−Fe−N系磁性粉末からなるハイブリッド磁石(特許文献7〜10を参照)も提案されている。
【0008】
しかし、前記Sm−Co系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石は、Sm−Co系磁性粉末の磁化の低さから、また、前記Nd−Fe−B系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石では、等方性Nd−Fe−B系磁性粉末の磁化の低さから、所望の磁気特性を得るために必要とされる希土類系磁性粉末の量が多くなり、コストの低減の点で十分であるとは言えなかった。一方、前記Sm−Fe−N系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石では、Sm−Fe−N系磁性粉末が前記2種の磁石に比較して磁化が高く、Sm−Fe−N系磁性粉末の量を減らすことが出来ることから安価にはなったが、より一層のコスト低減が求められている。
【0009】
所望の特性にて、さらにSm−Fe−N系磁性粉末の割合を低減するためには、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、かつ、Sm−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末からなる磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めていく必要があるが、磁性粉末の割合をただ増加させるだけであると、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量(単位時間にオリフィスを通して流れる溶融組成物の体積のことであり、成形性の目安となる。)が低下して磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するという問題を有していた。また、フェライト磁性粉末は、希土類ハイブリッド磁石の製造工程でせん断力を受け、歪みによって保磁力が大きく低下する問題がある。
【0010】
耐環境特性を改善するために磁性粉末を表面処理することが提案されているが(例えば、特許文献11を参照)、磁性粉末表面に非磁性層が存在することから磁気特性が低下するため、従来よりもSm−Fe−N系磁性粉末の割合を高めなければならない点、また、Sm−Fe−N系磁石は、フェライトボンド磁石に比較して配向性能が悪いため、Sm−Fe−N系磁性粉末の割合を制御して所望の磁気特性を得なければならない点などが、改善点として求められている。
【0011】
このような状況下、フェライト磁性粉末の割合を高めても体積流量が低下せず、配向性能を悪化させずに、優れた磁気特性と耐環境特性を有する希土類ハイブリッド磁石の出現が切望されていた。
【0012】
【特許文献1】
特開昭55−99703号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭57−39102号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭60−223095号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭61−284906号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開昭62−257703号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平10−223421号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
特開2000−21615号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】
特開2000−124018号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】
特開2002−110410号公報(特許請求の範囲)
【特許文献10】
特開2002−110411号公報(特許請求の範囲)
【特許文献11】
特開2002−110412号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高め、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保されるだけでなく配向性能に優れ、しかも安価な希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、希土類系磁性粉末、フェライト磁性粉末、及び樹脂バインダーからなる希土類ハイブリッド磁石用組成物において、特定の粒度分布を有する希土類系磁性粉末、フェライト磁性粉末を選定し、両粉末の混合粉体のモード径の差を特定の範囲にすることにより、フェライト磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めることができ、その時、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保され、配向性能に優れ、結果として安価となる希土類ハイブリッド磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、モード径が5μm以下の希土類系磁性粉末(A)と、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)との混合粉体に樹脂バインダー(C)を配合した希土類ハイブリッド磁石用組成物であって、希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)のモード径の差が1μm以上2.5μm以下であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0016】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、希土類系磁性粉末(A)が、希土類元素と、鉄または鉄及びコバルトと、窒素とを主成分とすることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0017】
本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、フェライト磁性粉末(B)の保磁力が310kA/m以上であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0018】
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、希土類系磁性粉末(A)及びフェライト磁性粉末(B)は、燐酸塩系化合物、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びチタネート系カップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤(D)で表面処理されていることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0019】
本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、フェライト磁性粉末(B)の割合が、組成物全体を基準として25〜65重量%であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0020】
本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、混合粉体のかさ密度が、2.3g/cm3以上であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0021】
本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、体積流量が1.0cm3/s以上であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物が提供される。
【0022】
本発明の第8の発明によれば、第1〜第7の発明に係る希土類ハイブリッド磁石用組成物を、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、または圧延成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなる希土類ハイブリッド磁石が提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物、それを用いた希土類ハイブリッド磁石について詳細に説明する。
【0024】
1.希土類磁性粉末(A)
本発明で用いられる希土類系磁性粉末(A)は、希土類元素(R)と、鉄(Fe)または鉄(Fe)及びコバルト(Co)と、窒素(N)とを主成分とする菱面体晶系または六方晶系の結晶構造を有する磁性粉末(以下、R−Fe−N系磁性粉末と略称する場合がある。)である。
【0025】
希土類系磁性粉末(A)には、種々の添加元素を加えて組成を変えたものも対象に含まれる。中でも、必須成分がSmとFeであり、主としてSm2Fe17Nx相からなる希土類系磁性粉末が好ましく、Nの含有量は、x=2.8〜3.2が好ましい。
【0026】
Smの一部をY、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuから選択される一種以上の元素で置換してもよい。但し、磁気特性の低下を避けるため、その置換量は50原子%以下とすることが好ましい。
また、Feの一部をCoで置換しても良く、Co以外にも、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlから選択される一種以上の元素で置換することができる。但し、磁気特性の低下を避けるため、その置換量は50原子%以下とすることが好ましい。
【0027】
R−Fe−N系磁性粉末を製造する方法は、特に限定されないが、Nを含有しない原料合金粉末を鋳造法、急冷法、還元拡散法、メカニカルアロイング法、HDDR法などによって製造し、N2ガスまたはN原子を含む雰囲気中で熱処理して合金粉末内にNを導入して得ることができる。
【0028】
これらの製造方法は、例えば、特開平2−57663号公報、特開平3−16102号公報、特開平3−101102号公報、特開平3−141608号公報、特開平3−153852号公報、特開平3−160705号公報、特開平8−45718号公報、特開平8−55712号公報、特開平8−144024号公報、特開平8−316018号公報、特開平10−163056号公報、特開平10−241923号公報、特開平10−289811号公報、特開平11−297518号公報等に開示されている。
【0029】
希土類ハイブリッド磁石には低コストが要求されることから、本発明では製造コストが低い還元拡散法で原料合金粉末を製造することが望ましい。希土類系磁性粉末を粉砕する場合には、有機溶媒を用いた湿式粉砕あるいは微量酸素雰囲気下で乾式粉砕を行う。それぞれに様々な粉砕機、粉砕形式が存在するが所望の粒径に粉砕できるものであれば特に制限されない。
【0030】
希土類系磁性粉末(A)のモード径は、5μm以下、好ましくは4.5μm以下である。ここでモード径とは、レーザー回折式粒度分布計に依って測定された体積頻度分布の最頻値径である。
モード径が5μmを超えると、希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末からなる磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めることができないか、高められたとしても希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量が低下して磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するなどの問題が顕著となる場合がある。
【0031】
また、本発明の希土類系磁性粉末(A)は、発火防止等、ハンドリング性を向上させるために、湿式または乾式処理によって徐酸化皮膜が表面に形成された磁性粉末を用いることができる。これらの方法は、例えば、特開昭52−54998、特開昭59−170201、特開昭60−128202、特開平3−211203号公報、特開昭46−7153、特開昭56−55503、特開昭61−154112、特開平3−126801号公報等に開示されている。
徐酸化皮膜が表面に形成されていない希土類系磁性粉末(A)を用いる場合は、フェライト磁性粉末(B)と混合する前に、後で詳述する方法で表面処理しておく必要がある。
【0032】
2.フェライト磁性粉末(B)
本発明で用いられるフェライト磁性粉末(B)は、得られる希土類ハイブリッド磁石の角型性を良好に保つ上で重要な役目を担うものであって、その特性としては、保磁力が310kA/m以上であることが好ましい。
【0033】
フェライト磁性粉末は、前述のように、希土類ハイブリッド磁石の製造工程でせん断力を受け、歪みによって保磁力が大きく低下する。そのため、フェライト磁性粉末の保磁力が310kA/m未満では、優れた角型性を有する希土類ハイブリッド磁石は得られない。
【0034】
フェライト磁性粉末の材質としては、Srフェライト、Baフェライトのいずれでも構わないが、角型性を高めるためには、Srフェライトが好ましい。尚、後述するように、本発明の希土類ハイブリッド磁石を異方性ボンド磁石として製造する場合、フェライト磁性粉末としては、磁界中成形工程での磁性粉末配向性を高めるために、個々の粉末が実質的に単結晶となっている異方性磁性粉末でかつ球状に近い形状のものを選択することが望ましい。
【0035】
また、フェライト磁性粉末(B)の比表面積は、特に制限されないが、上記粒度分布を維持する中で、通常は1.5m2/g以上、好ましくは2.0m2/g以上、さらに好ましくは3.5m2/g以上であることが好ましい。比表面積が1.5m2/g未満の場合は、角型性が低下してしまう。
【0036】
さらに、フェライト磁性粉末の圧縮密度は、特に制限されないが、通常は3.3g/cc以下、好ましくは2.9g/cc以下、さらに好ましくは2.5g/cc以下である。圧縮密度が3.3g/ccを超える場合は、角型性が低下してしまう。
上記のフェライト磁性粉末を用いることにより、成形時の保磁力低下が抑制され、希土類ハイブリッド磁石の角型性が向上する。
【0037】
フェライト磁性粉末のモード径は、3μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、希土類系磁性粉末のモード径(5μm以下)との差が1μm以上2.5μm以下であることが必要である。
【0038】
モード径の差がこの範囲を外れてしまうと、希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末からなる磁性粉末の樹脂バインダー中に占める割合を高めることができないか、高められたとしても希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量が低下して磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するなどの問題が顕著となってしまう。
また、両粉末の混合粉体のかさ密度は、2.3g/cm3以上であることが望ましい。かさ密度が2.3g/cm3未満では、体積流量、配向性能、磁気特性を悪化させる場合がある。
【0039】
3.表面処理剤(D)
希土類系磁性粉末(A)とフェライト磁性粉末(B)は、表面処理剤(D)で表面処理することが好ましい。この表面処理により、磁性粉末の表面が被覆されるため、混練時や射出成形時のせん断によるフェライト磁性粉末の保磁力低下が抑制され、その結果、希土類ハイブリッド磁石の角型性が向上する。また、それに加えてR−Fe−N系磁性粉末の耐環境性も向上する。
【0040】
かかる表面処理剤(D)としては、燐酸系化合物、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0041】
上記の燐酸系化合物としては、特に限定されないが、それ自身が反応するか反応せずに燐酸塩を形成し、かつR−Fe−N系磁性粉末の表面を被覆できることが重要となる。これらの条件を満足させる燐酸系化合物としては、市販されている燐酸、燐酸溶液、燐酸塩、これらの混合物が挙げられる。
燐酸塩としては、燐酸マンガン系、燐酸亜鉛系、燐酸水素ナトリウム系、燐酸カルシウム系、有機燐酸エステル系等の有機燐酸化合物が挙げられる。尚、これらの燐酸系化合物は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0042】
R−Fe−N系磁性粉末表面を保護するために必要な燐酸塩皮膜の厚さは、平均で3〜150nm、好ましくは5〜100nmである。皮膜の平均厚さが3nm未満では十分な耐熱性、耐湿性が得られず、また、150nmを超えると磁気特性が低下すると共にボンド磁石を作製する際の混練性、成形性が低下する。
本発明の方法によれば、通常はR−Fe−N系磁性粉末表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上を燐酸塩皮膜で覆う(均一に被覆する)ことができる。
【0043】
また、シラン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。尚、これらのシラン系カップリング剤は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0044】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルコキシアルミニウムキレート類が挙げられる。例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等である。尚、これらのアルミニウム系カップリング剤は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0045】
さらに、チタネート系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。
【0046】
チタネート系カップリング剤の中では、磁性粉末表面との接着性に優れ、かつバインダー成分とのなじみも良いため、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートが特に好ましい。尚、これらのチタネートカップリング剤は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0047】
4.樹脂バインダー(C)
本発明で用いられる樹脂バインダー(C)としては、各種の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂が使用でき、それぞれの物性、性状等も所望の特性が得られれば特に限定されることはない。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6,12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、各種エラストマーやゴム類等の単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品等が挙げられる。尚、これらの熱可塑性樹脂は、単独または二種類以上を組合せて用いることができる。
【0049】
また、上記の熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、特に限定されないが、所望の機械的強度が得られる範囲で低い方が望ましく、また形状としてはパウダー、ビーズ、ペレット等を任意に選択し得るが、磁性粉末との均一混合性の観点からはパウダーが好ましい。
【0050】
一方、熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル系エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、熱硬化性ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。尚、これらの熱硬化性樹脂は、単独または二種類以上を組合せて用いることもできるし、他種モノマーと組合せて用いても良い。
【0051】
また、上記の熱硬化性樹脂の粘度、分子量、性状等は、特に限定されず、所望の機械的強度や成形性が得られる範囲であれば良く、磁性粉末との均一混合性や成形性の観点からはパウダーまたは液状が望ましい。
【0052】
5.その他の添加剤
本発明のハイブリッド用磁石組成物には、前記の必須成分(A)〜(D)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤や安定剤等の添加剤を配合することができる。これら添加剤を配合することにより、組成物の加熱流動性が一層向上し、成形性や磁気特性の向上が図れる。
【0053】
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組合せて使用することができる。
【0054】
また、安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダード・アミン系安定剤、または、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組合せて使用することができる。
【0055】
6.希土類ハイブリッド磁石用組成物
本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物は、(1)少なくとも希土類系磁性粉末を特定の表面処理剤により被膜し、(2)これにフェライト磁性粉末を混合し、(3)得られた混合粉体に、樹脂バインダーと、さらに必要に応じて他の添加剤を配合することにより調製される。
【0056】
(1)希土類系磁性粉末の表面処理
本発明の希土類ハイブリッド磁石組成物の原料であるR−Fe−N系磁性粉末は、耐環境性を向上させるため表面処理が施される。
【0057】
本発明において、希土類系磁性粉末を表面処理するには、モード径が5μm以下になるように粉砕した磁性粉末を、前記の表面処理剤と接触させて燐酸塩やカップリング剤などによる皮膜を形成させればよい。
【0058】
例えば、有機溶媒を用いた媒体攪拌ミルで、その粉末のモード径が5μm以下となるように粉砕し、得られたスラリーのR−Fe−N合金粉末100重量部に対して0.1〜2重量部となるように、燐酸系化合物を添加する。そのスラリーをプラネタリーミキサーにて、不活性ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱乾燥し、100〜200℃にて10〜60分保持した後、冷却すれば表面処理されたR−F−N磁性粉末が得られる。
【0059】
また、モード径が5μmを超える希土類系磁性粉末の粗粉末を燐酸系化合物と有機溶媒からなる溶液中に入れ、R−Fe−N系合金粉末を粉砕しながら表面処理することもできる。粉砕に要する時間は、粉砕装置や、その運転条件にもよるが、例えば、媒体撹拌ミルであれば、1〜2時間とするのが好ましい。
【0060】
この方法によれば、ボールミル等の媒体撹拌ミルによって磁石合金粉を粉砕する際に、燐酸系化合物を添加することにより、粉砕によって凝集粒子に新生面が生じても、瞬時に溶媒中の燐酸系化合物と反応し、粒子表面に安定な燐酸塩皮膜が形成される。また、その後、粉砕された磁性粉末が凝集しても、接触面はすでに安定化されており、解砕により腐食は生じない。
【0061】
燐酸系化合物としては、特に制限はなく、市販されている通常の燐酸、例えば、85%濃度の燐酸水溶液を使用することができる。燐酸系化合物の添加量は、粉砕後のR−Fe−N系磁性粉末の粒径、表面積等に関係するので一概には言えないが、通常は、粉砕するR−Fe−N系合金粉末に対して0.1〜2mol/kgとし、好ましくは0.13〜1.5mol/kg、さらに好ましくは0.15〜0.4mol/kgとする。
燐酸系化合物の添加量が0.1mol/kg未満であると、R−Fe−N系磁性粉末の表面処理が不十分で、耐熱性と耐湿性が改善されず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性が極端に低下する。一方、2mol/kgを超えると、R−Fe−N系磁性粉末との反応が激しく起こって磁性粉末が溶解する。
【0062】
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、トルエンなどが使用できるが、特にエタノール、イソプロパノールなどのアルコールが好ましい。
【0063】
こうして表面処理されたR−Fe−N系磁性粉末は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中または真空中、100〜400℃の温度範囲で加熱処理する。温度範囲は、110〜250℃、特に130〜200℃が好ましい。100℃未満では、磁性粉末の乾燥が十分に進まず安定な表面皮膜の形成が阻害され、また、400℃を超える温度では、磁性粉末が熱的ダメージを受け、保磁力が低くなる。
【0064】
(2)希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末との混合
次に、表面処理された希土類系磁性粉末(A)に、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)を混合する。
【0065】
この際、希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)とのモード径の差が1μm以上2.5μm以下となるように調整することが肝要である。これにより、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量を1.0cm3/s以上とすることができる。モード径の差がこの範囲を外れると、体積流量が1.0cm3/sよりも低くなり磁石成形が不能となったり、異方性磁石として重要な要素である配向性能が悪化して磁気特性が低下するので好ましくない。また、同様な理由によって、この混合粉体のかさ密度を2.3g/cm3以上とすることが好ましい。
【0066】
希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末と樹脂バインダーとの混合比率は、特に限定されず、目的とする磁気特性に対して適宜設定することができる。例えば、(希土類系磁性粉末重量)/(フェライト磁性粉末重量)比率を大きく設定して目的の磁気特性を確保する場合は、樹脂バインダーの混合率を高くすることができ、結果的に組成物の流動性は向上する。
【0067】
他方、樹脂バインダーの混合率を低目に設定すれば、(R−Fe−N系磁性粉末重量)/(フェライト磁性粉末重量)比率を小さくする、換言すれば、フェライト磁性粉末の混合比率を高めて原料コストを低減することができる。
【0068】
フェライト磁性粉末(B)の割合は、希土類ハイブリッド磁石用組成物全体を基準として25〜65重量%とすることが望ましく、25重量%未満では、磁気特性に比して安価な希土類ハイブリッド磁石が得られず、65重量%を超えると磁気特性が低下するので好ましくない。
なお、この工程は必須ではなく、希土類系磁性粉末の種類、表面処理方法、混合方法によっては、フェライト磁性粉末の混合を次の工程と一緒に行うこともできる。
【0069】
(3)磁性粉末と有機バインダーとの混合
こうして得られた希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末との混合粉体に樹脂バインダー及び、必要により他の添加剤を混合する。樹脂バインダー及び、他の添加剤は前記のとおりである。
【0070】
フェライト磁性粉末が表面処理されていない場合は、この工程で、混合粉体に表面処理剤を樹脂バインダーとともに添加することができる。
表面処理剤の添加量は、その種類によって最適値が異なるが、R−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末との合計100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部とするのが好ましい。添加量が0.1重量部よりも少ないと、耐環境性、角型性の十分な向上が得られず、10重量部よりも多いと、成形体の密度が低下して所望の磁気特性が得られない。
【0071】
このように各磁性粉末の混合粉体に、有機バインダーと表面処理剤とを同時に混合しても良いが、より確実な被膜を得るためには、R−Fe−N系磁性粉末、フェライト磁性粉末の各々を完全に表面処理した後、各磁性粉末と有機バインダーとを混合することが望ましい。
【0072】
また、希土類系磁性粉末とフェライト磁性粉末の混合粉体と樹脂バインダー等とを混合・混練する方法は、特に限定されないが、例えば、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して行うことができる。
【0073】
7.希土類ハイブリッド磁石
こうして混合・混練により得られた組成物を成形することで、本発明の希土類ハイブリッド磁石が得られる。成形方法は、特に限定されないが、射出成形、圧縮成形、押出成形、または圧延成形のいずれかでよく、特に射出成形、圧縮成形によることが好ましい。
【0074】
本発明の希土類ハイブリッド磁石は、従来のSm−Co系磁性粉末やNd−Fe−B系磁性粉末を用いた磁石と比べて、安価で、かつ耐環境性及びB−H減磁曲線の角型性に優れたものとなる。
【0075】
尚、特開平2−57663号公報等で開示されているR−Fe−N系磁性粉末を使用する場合、個々の粉末が実質的に単結晶となっている異方性磁性粉末であるため、組成物を磁界中で成形することにより、R−Fe−N系磁性粉末の磁化容易方向が揃い、高い磁束密度を持つ異方性希土類ハイブリッド磁石が製造できる。同様に、フェライト磁性粉末についても、異方性磁性粉末を選択して磁界中で成形することにより、フェライト磁性粉末の磁化容易方向が揃い、高い磁束密度を持つ異方性希土類ハイブリッド磁石が製造できる。すなわち、異方性のR−Fe−N系磁性粉末と異方性のフェライト磁性粉末とから製造された組成物を、磁界中で成形することにより、最も高い磁束密度を有する異方性希土類ハイブリッド磁石が得られる。
【0076】
一方、前述の特許文献5(特開昭61−284906号公報)等で開示されているフェライト磁性粉末とNd−Fe−B系希土類磁性粉末とからなるハイブリッド磁石は、Nd−Fe−B系磁性粉末が等方性であるため、同一の磁束密度を得る場合に、高価な希土類系磁性粉末の混合比率を高く設定せざるを得ず、本発明のコストメリットは得られない。
【0077】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
なお、磁性粉末の混合粉体のかさ密度、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量は次の方法で測定した。
(かさ密度の測定)
タッピングによるかさ密度(d)は、Sm2Fe17N3合金粉末とフェライト磁性粉末の混合粉体50gをメスシリンダーに入れ、50mmの落差のタッピングを1000回した後の体積を読みとることで算出した。
【0079】
(体積流量の測定)
希土類ハイブリッド磁石用組成物としての体積流量(Q値)は、キャピラリーレオメーター(商品名:CFT−100D (株)島津製作所製)にて温度250℃、オリフィスφ1mm−1mm、加重294N/cm2、予熱時間120secの条件下で測定した。
【0080】
また、希土類ハイブリッド磁石の磁気特性、配向性能は希土類ハイブリッド磁石用組成物から得られたペレットを用いて磁場中成形することで評価した。
(磁気特性の評価)
希土類ハイブリッド磁石用組成物から得られたペレットを200〜220℃のシリンダー温度、90〜120℃の金型温度にてφ50−φ30mm×50mmリング体を磁場中成形した(配向磁場は50mm方向に796kA/mの大きさで印加した)。
磁気特性は、成形体より切り出した5mm×5mm×10mmの直方体(配向方向は10mmの方向とした)に3183kA/mのパルス磁場で着磁したものをCioffi型自記磁束計(商品名:TRF 東英工業(株)製)にて測定することで、残留磁化(Br)、保磁力(bHc)を得た。
【0081】
(配向性能の評価)
配向性能の評価は、ペレットを200〜220℃のシリンダー温度、90〜120℃の金型温度にてφ50−φ30mm×50mmリング体を磁場中成形し(配向磁場は50mm方向に159kA/mの大きさで印加した)、成形体より切り出した5mm×5mm×10mmの直方体(配向方向は10mmの方向とした)に3183kA/mのパルス磁場で着磁したものをCioffi型自記磁束計にて磁化(Br’)を測定し、磁気特性評価用成形体の磁化(Br)と比較することで行った。
【0082】
(実施例1)
150タイラーメッシュ(ふるいの目開き:104μm)アンダー、純度99.9wt%の電解Feと325タイラーメッシュ(ふるいの目開き:43μm)アンダー、純度99wt%の酸化Smを純度99.7wt%のCaペレットとともにダブルコーンブレンダーに入れ混合した。その混合物をステンレス坩堝に入れ、Arガス雰囲気下にて1200℃で8時間加熱した。
冷却後の還元物を水中にて崩壊させ、その後、酢酸により洗浄した。これをさらに水洗、濾過した後に、振動流動乾燥機にて乾燥させ、Sm2Fe17合金粉末を得た。
この合金粉末を、35vol%アンモニアガス−水素ガス雰囲気下にて480℃で6時間の熱処理を行い、引き続き、炉内をアルゴンガス雰囲気に置換して480℃で2時間の熱処理を行い、Sm2Fe17N3合金粉末を得た。
有機溶媒を用いた媒体攪拌ミルで、その粉末のモード径が4.2μmとなるように粉砕した。得られたスラリーのSm2Fe17N3合金粉末100重量部に対して0.4重量部となるように、有機燐酸エステル化合物(商品名:TBP 大八化学(株)製)を添加した。そのスラリーをプラネタリーミキサーにて、N2ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱乾燥し、140℃にて30分保持した後、冷却することにより表面処理されたSm2Fe17N3合金粉末を得た。
このようにして得られたSm2Fe17N3合金粉末30.8重量%を、モード径が2.5μmのフェライト磁性粉末(商品名:FAN−800 戸田工業(株)製)57.4重量%、12ナイロン樹脂(商品名:P−3014U 宇部興産(株)製)10.0重量%、滑剤のエチレンビスステアリルアミド1.2重量%、ビニルトリエトキシシランカップリング剤(商品名:A−151 日本ユニカー(株)製)0.6重量%とタンブラーにて混合し、200〜220℃で2軸押出機を用いて混練した。混練物は冷却後に粉砕し、成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0083】
(実施例2)
有機燐酸エステル化合物の添加量を1.2重量部とした以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0084】
(実施例3)
得られたSm2Fe17N3合金粉末スラリーのSm2Fe17N3合金粉末100重量部に対して0.4重量部となるように、有機燐酸エステル化合物に代えてイソプロピルトリイソステアロイルチタネートカップリング剤(商品名:KR−TTS 味の素(株)製)を添加した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0085】
(実施例4)
得られたSm2Fe17N3合金粉末スラリーのSm2Fe17N3合金粉末100重量部に対して1.0重量部となるように、有機燐酸エステル化合物に代えてイソプロピルトリイソステアロイルチタネートカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0086】
(実施例5)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が3.6μmとなるように粉砕した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0087】
(実施例6)
モード径2.1μmのフェライト磁性粉末(商品名:MA−951 戸田工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0088】
(実施例7)
Sm2Fe17N3合金粉末をモード径が3.6μmとなるように粉砕し、モード径2.1μmのフェライト磁性粉末を混合した以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0089】
(比較例1)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が5.0μmとなるように粉砕し、モード径2.4μmのフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0090】
(比較例2)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が3.0μmとなるように粉砕し、モード径2.1μmのフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0091】
(比較例3)
Sm2Fe17N3合金粉末のモード径が6.0μmとなるように粉砕し、モード径2.1μmのフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様な方法で成形用ペレットを得た。
このペレットのかさ密度、体積流量を測定し、磁気特性、配向性能を評価し、結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
上記の結果、実施例1〜7により、希土類系磁性粉末(A)のモード径が5μm以下で、フェライト磁性粉末(B)のモード径が3μm以下であり、両粉末のモード径の差が1μm以上2.5μm以下の混合粉体を用いると、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量(Q値)が1.0cm3/s以上となり、かつ磁気特性も優れたものになることが分かる。なお、実施例7は、両粉末の混合粉体のかさ密度が2.3g/cm3未満であるため、他の実施例よりも体積流量(Q値)、磁気特性が低下した。
【0094】
これに対して、比較例1〜3により、希土類系磁性粉末(A)のモード径が5μmを超えるか、5μm以内であっても、フェライト磁性粉末(B)とのモード径の差が1〜2.5μmの範囲を外れた混合粉体を用いると、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量(Q値)が1.0cm3/s未満となり、かつ磁気特性も低下することが分かる。
【0095】
【発明の効果】
本発明の希土類ハイブリッド磁石用組成物は、希土類系磁性粉末(A)、フェライト磁性粉末(B)、及び樹脂バインダー(C)からなる希土類ハイブリッド磁石用組成物において、希土類ハイブリッド磁石用組成物に占めるフェライト磁性粉末の割合を高めることができ、その時、希土類ハイブリッド磁石用組成物の体積流量も確保することができる。しかも、配向性能に優れ、結果として安価となる希土類ハイブリッド磁石を提供できることから、この発明の工業的価値は極めて大きい。
Claims (8)
- モード径が5μm以下の希土類系磁性粉末(A)と、モード径が3μm以下のフェライト磁性粉末(B)との混合粉体に樹脂バインダー(C)を配合した希土類ハイブリッド磁石用組成物であって、
希土類系磁性粉末(A)と、フェライト磁性粉末(B)のモード径の差が1μm以上2.5μm以下であることを特徴とする希土類ハイブリッド磁石用組成物。 - 希土類系磁性粉末(A)が、希土類元素と、鉄または鉄及びコバルトと、窒素とを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
- フェライト磁性粉末(B)の保磁力が310kA/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
- 希土類系磁性粉末(A)及びフェライト磁性粉末(B)は、燐酸塩系化合物、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びチタネート系カップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤(D)で表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
- フェライト磁性粉末(B)の割合が、組成物全体を基準として25〜65重量%であることを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
- 混合粉体のかさ密度が、2.3g/cm3以上であることを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
- 体積流量が1.0cm3/s以上であることを特徴とする請求項1に記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の希土類ハイブリッド磁石用組成物を、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、または圧延成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなる希土類ハイブリッド磁石。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003055983A JP2004266151A (ja) | 2003-03-03 | 2003-03-03 | 希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003055983A JP2004266151A (ja) | 2003-03-03 | 2003-03-03 | 希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004266151A true JP2004266151A (ja) | 2004-09-24 |
Family
ID=33119840
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003055983A Pending JP2004266151A (ja) | 2003-03-03 | 2003-03-03 | 希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004266151A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006279026A (ja) * | 2005-02-28 | 2006-10-12 | Tdk Corp | 希土類焼結磁石の製造方法 |
JP2006295100A (ja) * | 2005-03-17 | 2006-10-26 | Tdk Corp | 希土類焼結磁石の製造方法、焼結磁石用原料合金粉の粉砕方法 |
JP2008166523A (ja) * | 2006-12-28 | 2008-07-17 | Nichia Chem Ind Ltd | ボンド磁石用組成物およびそれを用いたボンド磁石 |
JP2017210663A (ja) * | 2016-05-26 | 2017-11-30 | 国立大学法人東北大学 | 磁石合金粉の製造方法 |
-
2003
- 2003-03-03 JP JP2003055983A patent/JP2004266151A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006279026A (ja) * | 2005-02-28 | 2006-10-12 | Tdk Corp | 希土類焼結磁石の製造方法 |
JP4506981B2 (ja) * | 2005-02-28 | 2010-07-21 | Tdk株式会社 | 希土類焼結磁石の製造方法 |
JP2006295100A (ja) * | 2005-03-17 | 2006-10-26 | Tdk Corp | 希土類焼結磁石の製造方法、焼結磁石用原料合金粉の粉砕方法 |
JP4506973B2 (ja) * | 2005-03-17 | 2010-07-21 | Tdk株式会社 | 希土類焼結磁石の製造方法、焼結磁石用原料合金粉の粉砕方法 |
JP2008166523A (ja) * | 2006-12-28 | 2008-07-17 | Nichia Chem Ind Ltd | ボンド磁石用組成物およびそれを用いたボンド磁石 |
JP2017210663A (ja) * | 2016-05-26 | 2017-11-30 | 国立大学法人東北大学 | 磁石合金粉の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7871475B2 (en) | Rare-earth magnet and manufacturing method thereof and magnet motor | |
JP2003007521A (ja) | 高耐候性磁石粉及びこれを用いた磁石 | |
WO1999062081A1 (fr) | Materiau pour aimant permanent en terre rare de type nitrure et aimant lie utilisant ce materiau | |
JP5910467B2 (ja) | ボンド磁石用組成物及びそれを用いたボンド磁石 | |
JP2002124406A (ja) | 高耐候性磁石粉の製造方法及び得られる製品 | |
JP4096531B2 (ja) | 希土類ハイブリッド磁石用組成物、その製造方法及びそれから得られる磁石 | |
JP2000195714A (ja) | 極異方性希土類ボンド磁石とその製造方法及び永久磁石型モ―タ | |
JP2004266151A (ja) | 希土類ハイブリッド磁石用組成物及び希土類ハイブリッド磁石 | |
JP4135447B2 (ja) | 高耐候性磁石粉、ボンド磁石用樹脂組成物及びそれを用いて得られるボンド磁石 | |
JP2007250646A (ja) | 樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法 | |
JP2002110411A (ja) | 希土類ハイブリッド磁石用組成物及びこれを用いた磁石 | |
JP4438445B2 (ja) | 希土類ハイブリッドボンド磁石用組成物および希土類ハイブリッドボンド磁石 | |
JP2008305878A (ja) | 磁石材料、その製造方法、及びこれを用いたセンサー用樹脂結合型磁石 | |
JP2016092262A (ja) | ボンド磁石形成材料およびボンド磁石 | |
US20040079445A1 (en) | High performance magnetic materials with low flux-aging loss | |
JP2008010460A (ja) | ボンド磁石用組成物、それを用いたボンド磁石、およびその製造方法 | |
JP4898366B2 (ja) | 希土類磁石合金薄帯及び製造方法、希土類磁石合金 | |
JP3835133B2 (ja) | 希土類ハイブリッド磁石用組成物および磁石 | |
JP2010001544A (ja) | 希土類−鉄−窒素系磁石粉末およびその製造方法、これを含むボンド磁石用樹脂組成物、並びにボンド磁石 | |
JP3473677B2 (ja) | 希土類ボンド磁石用磁性粉末と希土類ボンド磁石用組成物および希土類ボンド磁石 | |
JP2002343623A (ja) | 可撓性シート状磁石成形体及びその製造方法 | |
JP3217057B2 (ja) | 磁性材樹脂複合材料、その製造方法およびボンド磁石 | |
JP4296379B2 (ja) | ボンド磁石用Sm−Fe−N系磁性粉末の製造法及びボンド磁石 | |
JP2000195713A (ja) | 極異方性希土類ボンド磁石とその製造方法 | |
JP2000331810A (ja) | R−Fe−B系希土類永久磁石材料 |