JP2006295100A - 希土類焼結磁石の製造方法、焼結磁石用原料合金粉の粉砕方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 希土類焼結磁石を製造するに際し、潤滑剤の粒径が原料合金粉の粒径の1.5倍以下となるように潤滑剤を粉砕して潤滑剤粒子を得て、この潤滑剤粒子を原料合金粉に添加して粉砕し、粉砕粉を得る。この粉砕粉を磁場中成形して成形体を形成し、この成形体を焼結することで希土類焼結磁石を得る。このように、原料合金粉の粒径に対して所定の大きさの粒径を持つ潤滑剤粒子を原料合金粉に添加して粉砕すると、潤滑剤がより均一に分散する。これにより、粉砕工程における原料合金の粉砕性、及び磁場中成形工程における粉砕粉の配向性を向上させることができる。
【選択図】なし
Description
このとき磁場に対する原料粉の配向性を向上させるため、原料粉に潤滑剤が加えられることがある。
また、上記のように磁場中成形を行うに先立ち、原料合金を気流式粉砕機(ジェットミル)等で粉砕して原料粉を得る工程で、粉砕性を向上させるために潤滑剤を加えることがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ただ添加するだけでは潤滑剤の凝集粒子が残ってしまい、焼結後、焼結体にこの凝集粒子に起因する空隙が形成されてしまう。さらに、添加した潤滑剤により、成形体の強度が低下する。そして、成形体に剥がれや亀裂が発生し、所望寸法精度の焼結体を得ることが困難であることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
このようにしてなされた本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、潤滑剤を粉砕して原料合金粉の粒径の1.5倍以下の粒径を有する潤滑剤粒子を得る工程と、潤滑剤粒子を原料合金粉に添加して粉砕し、粉砕粉を得る工程と、粉砕粉に磁場を印加し、かつ加圧成形することにより成形体を得る工程と、成形体を焼結する工程と、を備えることを特徴とする。
このように、原料合金粉の粒径に対して所定の大きさの粒径を持つ潤滑剤粒子を原料合金粉に添加して粉砕すると、潤滑剤がより均一に分散する。これにより、粉砕工程における原料合金の粉砕性、及び磁場中成形工程における粉砕粉の配向性を向上させることができる。また、潤滑剤の分散性が向上することで、従来よりも少ない量の潤滑剤で、同等の潤滑効果が期待できる。なお潤滑剤を粉砕する工程では、潤滑剤粒子の粒径が原料合金粉の粒径に対して1.5倍以下となるように潤滑剤を粉砕することが好ましい。このような粒径を有する潤滑剤粒子は、例えば潤滑剤を冷凍した後に粉砕して得ることができる。
このR−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR2T14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。好ましいRの量は28〜35wt%、さらに好ましいRの量は29〜33wt%である。
このR−T−B系焼結磁石は、Coを2.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1.0wt%、さらに望ましくは、0.3〜0.7wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
さらに、このR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが好ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を5000ppm以下、さらには3000ppmと以下とすることが好ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
R−Co系焼結磁石は、Rと、Fe、Ni、Mn及びCrから選ばれる1種以上の元素と、Coとを含有する。この場合、望ましくはさらにCu又は、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素を含有し、特に望ましくはCuと、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素とを含有する。これらのうち特に、SmとCoとの金属間化合物、望ましくはSm2Co17金属間化合物を主相とし、粒界にはSmCo5系を主体とする副相が存在する。具体的組成は、製造方法や要求される磁気特性等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、R:20〜30wt%、特に22〜28wt%程度、Fe、Ni、Mn及びCrの1種以上:1〜35wt%程度、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVの1種以上:0〜6wt%、特に0.5〜4wt%程度、Cu:0〜10wt%、特に1〜10wt%程度、Co:残部の組成が好ましい。
以上、R−T−B系焼結磁石、R−Co系焼結磁石について言及したが、本発明は他の希土類焼結磁石への適用を妨げるものではない。
原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはアルゴン雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をアルゴンガス雰囲気などの非酸化雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板又は薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
R−T−B系焼結磁石を得る場合、R2T14B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を本発明に適用することもできる。
粗粉砕工程では、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕し、粗粉砕粉末を得る。この粗粉砕粉末が本発明における原料合金粉に該当する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はアルゴンガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
このとき、微粉砕工程における粉砕性の向上を目的として、潤滑剤を添加する。この潤滑剤としては、脂肪酸又は脂肪酸の誘導体、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等を挙げることができる。また、各種エステル系、アルコール系の誘導体を用いることもできる。これら潤滑剤は、成形時の潤滑及び配向性を向上する機能を兼ねることができる。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm2(30〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増又は漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
また、印加する磁場は、12〜20kOe(960〜1600kA/m)程度とすればよい。また、印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
また、潤滑剤としてオレイン酸アミドを液体窒素にて冷凍し、粉砕ミルを用いて粉砕した。得られた潤滑剤(潤滑剤粒子)を篩い分けにより分級した。
さらに、比較例として、粉砕されていない潤滑剤及び分級されていない粗粉砕粉末を用いた以外は実施例と同様にして微粉砕粉末を用意した。
得られた成形体の強度として抗折強度を以下の方法で測定した。抗折強度測定は、日本工業規格JIS R 1601に準じて行った。具体的には、図5に示すように、成形体11を丸棒状の2本の支持具12,13の上に載置し、成形体11上の中央位置に丸棒状の支持具14を配置して荷重を加えた。抗折圧を加える方向はプレス方向とした。丸棒状の支持具12,13,14の半径は3mm、支点間距離は10mm、荷重点移動速度は0.5mm/分とした。成形体11の長手方向と支持具14とを互いに平行となるように配置した。サンプル数nは10個で測定を行った。成形体強度は粒子径に依存して変化するが、本実施例では微粉砕粉末の粒径は上記の通り所定の範囲内(4.40μm<D50<4.60μm)に納めているため、成形体強度を比較し易いものとなっている。
図2に、表2に示す粗粉砕粉末の粒径が200〜500μmの実施例F、G(粒径比率0.17、1.00)と、比較例H〜J(粒径比率1.86、2.57、粉砕なし)の成形体強度と磁気特性の関係をグラフで示す。
図3に、表2に示す粗粉砕粉末の粒径が500〜800μmの実施例K〜N(粒径比率0.09、0.54、1.00、1.38)と、比較例O(粉砕なし)の成形体強度と磁気特性の関係をグラフで示す。
図4に、表2に示す粗粉砕粉末の粒径が800〜1000μmの実施例P〜S(粒径比率0.06、0.37、0.68、0.95)と、比較例T(粉砕なし)の成形体強度と磁気特性の関係をグラフで示す。
図1〜図4において、残留磁束密度(Br)が低い方から高い方に向かって、潤滑剤の添加量を順に0.02wt%、0.06wt%、0.1wt%とした場合の結果を示している。また図中のキャプションでは、数字は粒径比率(潤滑剤の粒径/粗粉砕粉末の粒径)を示している。図中に示される「original」は粉砕されていない潤滑剤及び分級されていない粗粉砕粉末を用いた場合の結果を示している。
さらに図1〜図4を比較するとわかるように、粗粉砕粉末の粒径が大きいものほど、残留磁束密度(Br)が大きくなる傾向が見られた。特に、粒径比率が1.5以下の実施例で顕著であった。これは、微粉砕粉末の粒径を揃えるために粉砕時間が長くかかっており、その分、潤滑剤がよく分散されたためと思われる。
これに対し、化合物A、化合物Bの双方を添加した場合、Brは13.2kGを上回り、成形体強度も1.05MPaを上回った。すなわち、化合物A、化合物Bを複合添加することで、高い成形体強度と高い磁気特性を兼ね備えることができることが確認された。しかも、得られる成形体強度、磁気特性は、化合物Aを単独添加した場合の成形体強度、化合物Bを単独添加した場合の磁気特性と同等以上であることがわかる。
Claims (7)
- 潤滑剤を粉砕し、原料合金粉の粒径の1.5倍以下の粒径を有する潤滑剤粒子を得る工程と、
前記潤滑剤粒子を前記原料合金粉に添加して粉砕し、粉砕粉を得る工程と、
前記粉砕粉に磁場を印加し、かつ加圧成形することにより成形体を得る工程と、
前記成形体を焼結する工程と、
を備えることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。 - 前記潤滑剤を粉砕する前記工程では、前記潤滑剤粒子の径が前記原料合金粉の粒径以下となるように前記潤滑剤を粉砕することを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記潤滑剤を粉砕する前記工程では、前記潤滑剤を冷凍した後に粉砕して前記潤滑剤粒子を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記潤滑剤は、
一般式R1−CONH2又はR1−CONH−R3−HNCO−R2で示される化合物Aと、
R4−OCO−R5、R4−OH、(R4−COO)nMからなる群のうちいずれか一種で示される化合物B(R1〜4はCnH2n+1又はCnH2n−1。R5はH、CnH2n+1又はCnH2n−1。Mは金属。nは整数。)とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。 - 前記潤滑剤は、
一般式R1−CONH2又はR1−CONH−R3−HNCO−R2で示される化合物Aと、
R4−OCO−R5、R4−OH、(R4−COO)nMからなる群のうちいずれか一種で示される化合物B(R1〜4はCnH2n+1又はCnH2n−1。R5はH、CnH2n+1又はCnH2n−1。Mは金属。nは整数。)とが炭化水素を介して結合した化合物Dであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。 - 原料合金粉と、粒径比率(潤滑剤の粒径/前記原料合金粉の粒径)が1.5以下の潤滑剤粒子とを粉砕機に投入し、前記原料合金粉を粉砕して粉砕粉を得ることを特徴とする焼結磁石用原料合金粉の粉砕方法。
- 前記粉砕機として、気流式粉砕機を用いることを特徴とする請求項6に記載の焼結磁石用原料合金粉の粉砕方法。
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