JP7183912B2 - 希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法、及び希土類永久磁石の製造方法 - Google Patents

希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法、及び希土類永久磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法、及び希土類永久磁石の製造方法に関する。
Nd‐Fe‐B系磁石に代表される希土類永久磁石は、他の永久磁石に比べて優れた磁気特性を有している。したがって、希土類永久磁石は自動車用モータ又は産業機械用モータに多用されている。近年のモータの小型化に伴い、希土類永久磁石の需要が増加している。モータの作動時、モータの温度は高温(例えば150~180℃)にまで達する。したがって、高温でも磁気特性が維持される希土類永久磁石が必要とされている。希土類永久磁石の材料である合金粉末の平均粒子径が小さいほど、高温での希土類永久磁石の磁気特性は向上する。下記特許文献1及び2は、潤滑剤が添加された原料合金を粉砕することにより、平均粒子径が小さい合金粉末を得る方法を開示している。
特開平10‐321451号公報 特開2006‐295100号公報
粉砕工程によって得られる合金粉末の平均粒子径の減少に伴い、粉砕工程における原料合金の粉砕速度が低下し、粉砕工程に要する時間が延びてしまう。例えば、粉砕工程によって得られる合金粉末の平均粒子径が4μm以下である場合、潤滑剤が不足し易く、粉砕速度が著しく低下してしまう。粉砕速度を増加させるために多量の潤滑剤が用いられる場合、潤滑剤に由来する炭素が希土類永久磁石に残存し易い。その結果、希土類永久磁石の保磁力が低下してしまう。
本発明は、原料合金の粉砕速度が高く、高い保磁力を有する希土類永久磁石の製造に適した合金粉末を製造することができる希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法、及び希土類永久磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法は、希土類永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備え、粉砕工程において、潤滑剤Aが、原料合金、及び原料合金から形成された合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加され、潤滑剤Aが、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、潤滑剤Aの分子量が、45以上120以下であり、潤滑剤Aにおける炭素の含有量が、10質量%以上60質量%以下であり、粉砕工程において用いられる潤滑剤Aの質量の合計が、100質量部の原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下である。
粉砕工程が、原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、第一の粉砕工程によって得られた合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含んでよく、第一の粉砕工程において、潤滑剤Aが原料合金へ添加されてよい。
粉砕工程が、原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、第一の粉砕工程によって得られた合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含んでよく、第二の粉砕工程において、潤滑剤Aが合金粉末へ添加されてよい。
第一の粉砕工程では、水素吸蔵粉砕により原料合金が粉砕されてよい。
本発明の他の一側面に係る希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法は、希土類永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備え、粉砕工程において、潤滑剤A及び潤滑剤Bが、原料合金、及び原料合金から形成された合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加され、潤滑剤Aが、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、潤滑剤Aの分子量が、45以上120以下であり、潤滑剤Aにおける炭素の含有量が、10質量%以上60質量%以下であり、粉砕工程において用いられる潤滑剤Aの質量の合計が、100質量部の原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下であり、潤滑剤Bが、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、脂肪酸アミド、脂肪族アミン、ビスアミド、エステルアミド及び金属石鹸からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、潤滑剤Bの分子に含まれる直鎖の炭素数が、11以上21以下であり、粉砕工程において用いられる潤滑剤Bの質量の合計が、100質量部の原料合金に対して、0.04質量部以上0.12質量部以下である。
粉砕工程が、原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、第一の粉砕工程によって得られた合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含んでよく、潤滑剤Aが、原料合金及び合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加され、潤滑剤Bが、原料合金及び合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加されてよい。
第二の粉砕工程において、潤滑剤A及び潤滑剤Bが合金粉末へ添加されてよい。
第一の粉砕工程では、水素吸蔵粉砕により原料合金が粉砕されてよい。
本発明の他の一側面に係る希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法は、希土類永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備え、粉砕工程において、潤滑剤Aが原料合金へ添加され、粉砕工程によって得られた合金粉末に潤滑剤Bが添加され、潤滑剤Aが、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、潤滑剤Aの分子量が、45以上120以下であり、潤滑剤Aにおける炭素の含有量が、10質量%以上60質量%以下であり、粉砕工程において用いられる潤滑剤Aの質量の合計が、100質量部の原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下であり、潤滑剤Bが、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、脂肪酸アミド、脂肪族アミン、ビスアミド、エステルアミド及び金属石鹸からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、潤滑剤Bの分子に含まれる直鎖の炭素数が、11以上21以下であり、潤滑剤Bの質量の合計が、100質量部の料合金に対して、0.04質量部以上0.12質量部以下である。
希土類永久磁石用の合金粉末における炭素の含有量が、400質量ppm以上1500質量ppm以下であってよい。
本発明の一側面に係る希土類永久磁石の製造方法は、上記の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法によって希土類永久磁石用の合金粉末を製造する工程と、型を用いて合金粉末から成形体を作製する成形工程と、を備える。
本発明の一側面に係る希土類永久磁石の製造方法は、型内に設置された合金粉末に磁場を印加することにより、合金粉末を配向させる配向工程を更に備えてよい。
成形工程及び配向工程の後、形体を焼結させる焼結工程を更に備えてよい。
本発明によれば、原料合金の粉砕速度が高く、高い保磁力を有する希土類永久磁石の製造に適した合金粉末を製造することができる希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法、及び希土類永久磁石の製造方法が提供される。
以下、本発明の好適な一実施形態が詳細に説明される。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「永久磁石」はいずれも、「希土類永久磁石」を意味する。
(永久磁石用の合金粉末の製造方法)
永久磁石を構成する各元素を含む金属(金属原料)から、永久磁石用の原料合金が作製される。原料合金は、ストリップキャスティング法、ブックモールド法、又は遠心鋳造法によって作製されてよい。金属原料は、例えば、希土類元素の単体(金属単体)、純鉄、フェロボロン、又はこれらを含む合金であってよい。これらの金属原料は、所望の永久磁石の組成に略一致するように秤量される。一種類の原料合金が用いられてよい。複数種の原料合金が用いられてもよい。粉砕工程前の原料合金は、多数の粒子であってよい。例えば、原料合金は、フレーク状の粒子であってよい。原料合金はインゴットであってもよい。
永久磁石用の原料合金は、希土類元素Rを含む。希土類元素Rは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。原料合金は、希土類元素Rに加えて、B,Fe,Co,Cu,Ni,Mn,Al,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでよい。原料合金の化学組成は、最終的に得たい希土類磁石の主相及び粒界相の化学組成に応じて調整すればよい。つまり、目的とする希土類磁石の組成に応じて上記元素を含む各出発原料を秤量及び配合して、原料合金を調製すればよい。希土類磁石は、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、サマリウム‐鉄‐窒素磁石、又はプラセオジム磁石であってよい。希土類磁石の主相は、例えば、NdFe14B,SmCo,SmCo17,SmFe17,SmFe,又はPrCoであってよい。粒界相は、例えば、主相に比べて希土類元素Rの含有量が大きい相(Rリッチ相)であってよい。粒界相は、遷移金属リッチ相、Bリッチ相、酸化物相又は炭化物相を含んでもよい。
本実施形態に係る永久磁石用の合金粉末の製造方法は、永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備える。粉砕工程において、潤滑剤Aが、原料合金、及び原料合金から形成された合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加されてよい。粉砕工程において、潤滑剤A及び潤滑剤Bが、原料合金、及び原料合金から形成された合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加されてもよい。粉砕工程において、潤滑剤Aが原料合金へ添加され、粉砕工程によって得られた合金粉末に潤滑剤Bが添加されてもよい。潤滑剤の添加とは、潤滑剤を、原料合金、又は原料合金から形成された合金粉末と物理的に合わせることを意味する。原料合金自体の組成は、潤滑剤の添加によって変化しなくてよい。つまり、粉砕工程において原料合金自体の組成は変化しなくてよい。
粉砕工程は、原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、第一の粉砕工程によって得られた合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含んでよい。第一の粉砕工程は、粗粉砕工程と言い換えられてよい。第二の粉砕工程は、微粉砕工程と言い換えられてよい。第一の粉砕工程及び第二の粉砕工程が実施されることにより、平均粒子径が小さい合金粉末が得られ易い。ただし粉砕工程は、第一の粉砕工程及び第二の粉砕工程に分けられなくてもよい。つまり、一段階の粉砕工程のみによって、原料合金から合金粉末が作製されてよい。以下では、第一の粉砕工程及び第二の粉砕工程を含む粉砕工程が説明される。第一の粉砕工程において粉砕された原料合金は、合金粉末と表記される。潤滑剤Aは、原料合金及び合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加されてよい。複数回の潤滑剤Aの添加が行われてよい。潤滑剤Bは、原料合金及び合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加されてよい。複数回の潤滑剤Bの添加が行われてよい。以下の各工程は、酸素濃度が50ppm以下である非酸化的雰囲気下で実施されてよい。
潤滑剤Aは、粉砕工程において原料合金間の摩擦、原料合金同士の結着及び凝集を抑制し、原料合金の粉砕を促進する。従来の潤滑剤の代わりに潤滑剤Aが添加された原料合金を粉砕することにより、原料合金の粉砕速度が増加する。特に第二の粉砕工程における合金粉末の粉砕速度が増加し易い。また潤滑剤Aが添加された原料合金を粉砕することにより、原料合金から製造された合金粉末中に残存する炭素が減少する。換言すれば、従来の潤滑剤の代わりに潤滑剤Aを用いることにより、潤滑剤の添加量を低減し、且つ粉砕速度の低下を抑制することが可能である。その結果、合金粉末から作製された永久磁石に残存する炭素が減少し、永久磁石の保磁力が増加する。原料合金の粉砕速度は、m/t(単位:kg/hоur)と表されてよい。mは、原料合金の質量(単位:kg)である。tは、原料合金の平均粒子径を目標値まで低減するために要する粉砕時間(単位:hоur)である。潤滑剤Aを用いることにより、粉砕速度が増加し、且つ合金粉末中に残存する炭素が減少するメカニズムは必ずしも解明されていない。後述される全ての条件を満たす潤滑剤Aは、原料合金の表面に付着した潤滑剤Aを除いて、粉砕工程(特に第二の粉砕工程)において分解し易い、と本発明者は推測する。
潤滑剤Aは、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物である。複数種の潤滑剤Aが併用されてよい。潤滑剤Aは固体(例えば、粒子若しくは粉末)又は液体であってよい。
潤滑剤Aの分子量は、45以上120以下、好ましくは60以上118以下である。潤滑剤Aの分子量が下限値以上であることにより、粉砕速度が十分に増加する。潤滑剤Aの分子量が上限値を超える場合も、潤滑剤Aに由来する炭素が永久磁石に残存し易く、永久磁石の保磁力が低下し易い。
潤滑剤Aにおける炭素の含有量は、10質量%以上60質量%以下、好ましくは20質量%以上55質量%以下である。潤滑剤Aにおける炭素の含有量が上限値を超える場合、潤滑剤Aに由来する炭素が永久磁石に残存し易く、永久磁石の保磁力が低下し易い。潤滑剤Aにおける炭素の含有量は、潤滑剤Aにおける炭素の含有量は、100[C]/M質量%と表されてよい。Mは、潤滑剤Aの分子量である。[C]は、炭素の原子量(約12)と、潤滑剤Aの一分子に含まれる炭素の数nとの積である。
粉砕工程において用いられる潤滑剤Aの質量の合計は、100質量部の原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下である。100質量部の原料合金に対する潤滑剤Aの質量の合計は、好ましくは、0.30質量部以上1.20質量部以下であってよい。潤滑剤Aの質量の合計が下限値未満である場合、原料合金の粉砕速度が増加し難い。潤滑剤Aの質量の合計が上限値を超える場合、潤滑剤Aの質量の合計の増加に伴う粉砕速度の増加量が減少する。つまり、潤滑剤Aの質量の合計が上限値を超える場合、潤滑剤Aに係るコストが増加するだけであり、潤滑剤Aの添加に見合った利点がない。原料合金の質量の絶対値は、m(kg)と表されてよく、潤滑剤Aの質量の絶対値の合計は、a(kg)と表されてよく、100質量部の原料合金に対する潤滑剤Aの質量の合計は、100a/m(質量部)と表されてよい。
潤滑剤Aの上記条件の全てを満たす脂肪酸アミドは、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、アセトアミド、プロピオン酸アミド、ブチルアミド及びイソブチルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Aの上記条件の全てを満たす尿素の誘導体は、例えば、1‐メチル尿素、アセチル尿素、アリル尿素、ブチル尿素、1,1‐ジエチル尿素、1,1‐ジメチル尿素、エチル尿素、2‐ヒドロキシルエチル尿素及びヒドロキシ尿素からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Aの上記条件の全てを満たすカルバミン酸の誘導体は、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸イソプロピル、カルバミン酸ブチル、カルバミン酸tert‐ブチル、カルバミン酸アンモニウム及びN‐メチルカルバミン酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Aの上記条件の全てを満たすシュウ酸ジエステルは、例えば、シュウ酸ジメチルであってよい。
粉砕工程では、潤滑剤Bが更に原料合金及び合金粉末のいずれかに添加されてよい。後述される諸条件の全てを満たす潤滑剤Bは、潤滑剤Aに比べて原料合金間の摩擦を低減する効果に優れている。したがって、潤滑剤Aだけではなく潤滑剤Bも添加されることにより、摩擦し難い合金粉末が得られ易い。その結果、成形工程において合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され、成形体の密度が増加し易い。また潤滑剤Bが更に添加されることにより、配向工程において合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され、合金粉末が磁場に沿って配向され易い。成形体の密度の増加及び合金粉末の配向性の向上により、永久磁石の残留磁束密度が増加する。
潤滑剤Bは、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、脂肪酸アミド、脂肪族アミン、ビスアミド、エステルアミド及び金属石鹸からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物である。複数種の潤滑剤Bが併用されてよい。潤滑剤Bは固体(例えば、粒子若しくは粉末)又は液体であってよい。
潤滑剤Bの分子に含まれる直鎖の炭素数は、11以上21以下、好ましくは11以上17以下である。直鎖の炭素数とは、直鎖を構成する炭素の数である。直鎖の炭素数が10以下である場合、合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され難く、永久磁石の残留磁束密度が低下し易い。直鎖の炭素数が上限値を超える場合、潤滑剤Bに由来する炭素が永久磁石に残存し易く、永久磁石の保磁力が低下し易い。
粉砕工程において用いられる潤滑剤Bの質量の合計が、100質量部の原料合金に対して、0.04質量部以上0.12質量部以下であってよい。または、粉砕工程によって得られた合金粉末に添加される潤滑剤Bの質量の合計が、100質量部の原料合金に対して、0.04質量部以上0.12質量部以下であってもよい。潤滑剤Bの質量の合計が下限値御未満である場合、合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され難く、永久磁石の残留磁束密度が低下し易い。潤滑剤Bの質量の合計が上限値を超える場合、潤滑剤Bに由来する炭素が永久磁石に残存し易く、永久磁石の保磁力が低下し易い。原料合金の質量の絶対値は、m(kg)と表されてよく、潤滑剤Bの質量の絶対値の合計は、b(kg)と表されてよく、100質量部の原料合金に対する潤滑剤Bの質量の合計は、100b/m(質量部)と表されてよい。潤滑剤A以外の他の潤滑剤Cが、潤滑剤Bと併用されてもよい。潤滑剤Cが用いられる場合、100質量部の原料合金に対する潤滑剤B及び潤滑剤Cの質量の合計は、0.04質量部以上0.12質量部以下であってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たす脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、ベヘン酸及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たす脂肪酸の誘導体は、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル及びステアリン酸ブチルからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たす脂肪酸アミドは、例えば、ラウリン酸アミド、トリデカンアミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデカンアミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデカンアミド、ステアリン酸アミド、エイコサン酸アミド、ベヘン酸アミド及びオレイン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たす脂肪族アミンは、例えば、ラウリルアミン、トリデシルアミン、ミリスチルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、エイコサニルアミン、ドコサニルアミン及びオレイルアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たすビスアミドは、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド及びヘキサメチレンビスベヘン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たすエステルアミドは、例えば、エタノールアミンジステアレートであってよい。
潤滑剤Bの上記条件の全てを満たす金属石鹸は、例えば、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム及びリノシール酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
第一の粉砕工程における原料合金の粉砕手段は、水素吸蔵粉砕、ディスクミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル及びスタンプミルからなる群より選ばれる少なくとも一種の手段であってよい。第一の粉砕工程では、複数種の粉砕手段によって原料合金が粉砕されてよい。第一の粉砕工程によって得られた合金粉末の平均粒子径は、例えば、10μm以上1000μm以下であってよい。第一の粉砕工程によって得られた合金粉末は、粗粉末と言い換えられてよい。
第一の粉砕工程では、水素吸蔵粉砕により原料合金が粉砕されることが好ましい。水素吸蔵粉砕では、水素が原料合金へ吸蔵される。水素の吸蔵後、原料合金の加熱により水素が原料合金から脱離する。原料合金からの水素の脱離により、原料合金が粉砕される。水素吸蔵粉砕により、高い粉砕速度で原料合金の平均粒子径が目標値まで低減され易い。原料合金からの水素の脱離のために、水素が吸蔵された原料合金は、200℃以上又は350℃以上で加熱されてよい。加熱時間は、30分以上又は60分以上であってよい。原料合金からの水素の脱離のために、水素が吸蔵された原料合金は、真空中又はアルゴン(Ar)ガスの気流中で加熱されてよい。
潤滑剤Aが添加された原料合金が水素吸蔵粉砕により粉砕される場合、潤滑剤Aの水素化分解によって潤滑剤Aが減少し易い。第一の粉砕工程における潤滑剤Aの減少により、第一の粉砕工程に及び第二の粉砕工程其々の粉砕速度が低下し易い。したがって、第一の粉砕工程において原料合金が水素吸蔵粉砕によって粉砕される場合、第一の粉砕工程における潤滑剤Aの水素化分解を防止するために、第二の粉砕工程において潤滑剤Aが合金粉末へ添加されることが好ましい。
潤滑剤Bが添加された原料合金が水素吸蔵粉砕により粉砕される場合、潤滑剤Bの水素化分解によって潤滑剤Bが減少し易い。第一の粉砕工程における潤滑剤Bの減少により、成形工程において合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され難く、成形体の密度が増加し難い。また第一の粉砕工程における潤滑剤Bの減少により、配向工程において合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され難く、合金粉末が磁場に沿って配向され難い。したがって、第一の粉砕工程において原料合金が水素吸蔵粉砕によって粉砕される場合、第一の粉砕工程における潤滑剤Bの水素化分解を防止するために、第一の粉砕工程の後、潤滑剤Bが合金粉末へ添加されることが好ましい。例えば、第二の粉砕工程において潤滑剤Bが合金粉末へ添加されてよい。第二の粉砕工程の後、潤滑剤Bが合金粉末へ添加されてもよい。
水素吸蔵粉砕以外の粉砕方法によって第一の粉砕工程が実施される場合、第一の粉砕工程では潤滑剤A及び潤滑剤Bの水素化分解は起きない。したがって、水素吸蔵粉砕以外の粉砕方法によって第一の粉砕工程が実施される場合、第一の粉砕工程において潤滑剤Aが原料合金へ添加されてよい。つまり、水素吸蔵粉砕以外の粉砕方法によって第一の粉砕工程が実施される場合、第一の粉砕工程では、潤滑剤Aが添加された原料合金が粉砕されてよい。水素吸蔵粉砕以外の粉砕方法によって第一の粉砕工程が実施される場合、第一の粉砕工程において潤滑剤Bが原料合金へ添加されてよい。つまり、水素吸蔵粉砕以外の粉砕方法によって第一の粉砕工程が実施される場合、第一の粉砕工程では、潤滑剤Bが添加された原料合金が粉砕されてよい。水素吸蔵粉砕以外の粉砕方法によって第一の粉砕工程が実施される場合、第一の粉砕工程では、潤滑剤A及び潤滑剤Bが添加された原料合金が粉砕されてよい。
第二の粉砕工程における合金粉末の粉砕手段は、ジェットミル(気流粉砕機)、ボールミル、ビーズミル、振動ミル及び湿式アトライターからなる群より選ばれる少なくとも一種の手段であってよい。第二の粉砕工程では、複数種の粉砕手段によって合金粉末が粉砕されてよい。第二の粉砕工程において粉砕された合金粉末の平均粒子径は、例えば、0.5μm以上4μm以下であってよい。第二の粉砕工程において粉砕された合金粉末は、微粉末と言い換えられてよい。
第二の粉砕工程では、ジェットミルにより合金粉末が粉砕されることが好ましい。ジェットミルでは、高圧の不活性ガスが高速でノズルから噴射され、合金粉末が不活性ガスによって加速される。加速された合金粉末同士の衝突、及び合金粉末とその容器の内壁との衝突によって、合金粉末が更に粉砕される。ジェットミルにより、高い粉砕速度で合金粉末の平均粒子径が目標値まで低減され易い。不活性ガスは、例えばArであってよい。
第二の粉砕工程では、潤滑剤A及び潤滑剤Bが添加された合金粉末が粉砕されてよい。例えば、第二の粉砕工程では、合金粉末、潤滑剤A及び潤滑剤Bが、円錐型混合機(ナウタミキサー)、V型混合機又は攪拌羽式攪拌機によって混合されてよく、これらの混合物がジェットミルにより粉砕されてよい。第二の粉砕工程において潤滑剤Aだけではなく潤滑剤Bが合金粉末に添加されることにより、第二の粉砕工程の粉砕速度が増加し易い。また粉砕工程において潤滑剤Aだけではなく潤滑剤Bが合金粉末に添加されることにより、潤滑剤Bが合金粉末中に分散し易く、合金粉末を構成する各合金粒子の表面に均一に付着し易い。その結果、成形工程及び配向工程において、合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され易い。
上述の通り、潤滑剤Bは、粉砕工程に続く成形工程及び配向工程において、合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦を低減する機能を担っている。したがって、潤滑剤Bは、粉砕工程の後、潤滑剤Bが合金粉末へ添加されてもよい。例えば、第二の粉砕工程の後、潤滑剤Bが合金粉末へ添加されてもよい。第二の粉砕工程の後、潤滑剤Bが合金粉末へ添加される場合、成形工程前に合金粉末及び潤滑剤Bが均一に混合されることが好ましい。例えば、合金粉末及び潤滑剤Bは、円錐型混合機(ナウタミキサー)又はV型混合機によって混合されてよい。合金粉末及び潤滑剤Bの混合により、潤滑剤Bが合金粉末中に分散し易く、合金粉末を構成する各合金粒子の表面に均一に付着し易い。その結果、成形工程及び配向工程において、合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減され易い。
以上の方法によって製造された永久磁石用の合金粉末における炭素の含有量は、400質量ppm以上1500質量ppm以下、好ましくは490質量ppm以上1420質量ppm以下であってよい。上述の通り、潤滑剤Aが添加された原料合金を粉砕することにより、高い粉砕速度を維持しつつ、合金粉末における炭素の含有量を1500質量ppm以下に低減することができる。その結果、合金粉末から作製された永久磁石に残存する炭素が減少し、永久磁石の保磁力が増加し易い。合金粉末は、成形工程及び配向工程において合金粒子間の摩擦を低減するために潤滑剤Bを含んでいてよい。つまり、合金粉末は潤滑剤Bを構成する炭素を含んでいてよい。したがって、合金粉末における炭素の含有量の下限値はゼロではなくてもよく、合金粉末における炭素の含有量は400質量ppm以上であってよい。
(永久磁石の製造方法)
本実施形態に係る永久磁石の製造方法は、上記の製造方法によって永久磁石用の合金粉末を製造する工程と、型を用いて合金粉末から成形体を作製する成形工程と、を備える。永久磁石の製造方法は、型内に設置された合金粉末に磁場を印加することにより、合金粉末を配向させる配向工程を更に備えてよい。永久磁石の製造方法は、成形工程及び配向工程の後、成形体を焼結させる焼結工程を更に備えてよい。
成形工程及び配向工程は同時に実施されてよい。成形工程及び配向工程が同時に実施される場合、金型内の合金粉末に磁場を印加しながら、合金粉末が金型で加圧される。その結果、磁場に沿って配向された合金粉末を含む成形体が得られる。上述の通り、合金粉末が潤滑剤Bを含むことにより、合金粉末を構成する合金粒子間の摩擦が低減される。その結果、成形体の密度が高まり、合金粉末が磁場に沿って配向され易く、永久磁石の残留磁束密度が高まる。金型が合金粉末に及ぼす圧力は、30MPa以上300MPa以下であってよい。金型内の合金粉末に印加される磁場の強さは、796kA/m以上1990kA/m以下であってよい。磁場は、静磁場又はパルス磁場であってよい。合金粉末及び有機溶媒の混合物(スラリー)が成形されてよい。つまり、湿式成形によって、成形体が形成されてよい。
成形工程の後、配向工程が実施されてよい。配向工程前に実施される成形工程では、型を用いて合金粉末から成形体が形成される。型は、樹脂、金属及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなっていてよい。配向工程前に実施される成形工程では、型が合金粉末に及ぼす圧力が、0.049MPa以上20MPa以下であってよい。成形工程後に実施される配向工程では、型内に保持された成形体へ磁場が印加される。つまり、型内の成形体に磁場を印加することにより、成形体を構成する合金粉末が磁場に沿って配向される。磁場は、静磁場又はパルス磁場であってよい。型内の成形体に印加する磁場の強度は、例えば、796kA/m以上5173kA/m以下であってよい。配向工程においても、型内の成形体が加圧されてよい。配向工程において型が成形体に及ぼす圧力は、0.049MPa以上20MPa以下であってよい。
成形工程及び配向工程の後、成形体が脱磁されてよい。
焼結工程では、焼結炉中で成形体を焼結させることにより、焼結体が得られる。焼結炉内の雰囲気は、真空又は不活性ガスであってよい。不活性ガスは、例えばArであってよい。焼結工程の諸条件は、目的とする永久磁石の組成、原料合金の粉砕方法及び合金粉末の平均粒子径等に応じて、適宜設定されてよい。焼結温度は、例えば900℃以上1200℃以下であってよい。焼結時間は、1時間以上20時間以下であってよい。
時効処理工程において、焼結体が更に加熱されてよい。時効処理工程により、焼結体の磁気特性が向上する。時効処理工程の雰囲気は、真空又は不活性ガスであってよい。不活性ガスは、例えばArであってよい。時効処理工程では、焼結体が約600℃で1~3時間加熱されてよい。多段階の時効処理工程が実施されてもよい。例えば、第一時効処理では、焼結体が700~900℃で1~3時間加熱されてよく、第一時効処理に続く第二時効処理では、焼結体が500~700℃で1~3時間加熱されてよい。焼結工程に連続して時効処理工程が実施されてよい。
時効処理工程に続く冷却工程により、焼結体が急冷されてよい。焼結体は、不活性ガス中で急冷されてよい。不活性ガスは、例えばArであってよい。焼結体の冷却速度は、例えば5℃/分以上100℃/分以下であってよい。
加工工程では、切削及び研磨等により、焼結体の寸法及び形状が調整されてよい。以上方法によって得られた焼結体は、重希土類元素を含んでいなくてよい。焼結体が、既に重希土類元素を含んでいてもよい。焼結体中の重希土類元素の有無に関わらず、以下の拡散工程が実施されてよい。ただし拡散工程は必須ではない。
重希土類元素を含む永久磁石を製造する場合、拡散工程が実施されてよい。重希土類元素は、例えば、Tb及びDyのうち少なくとも一つの元素であってよい。拡散工程では、重希土類元素又はその化合物を上記の焼結体の表面に付着させた後、焼結体が加熱されてもよい。例えば、重希土類元素を焼結体の表面に付着させてよい。重希土類元素を含む蒸気中において、焼結体が加熱されてもよい。拡散工程により、重希土類元素が焼結体の表面から内部へ拡散し、さらに重希土類元素が粒界を介して主相粒子の表面へ拡散する。
重希土類元素を含有する塗料が焼結体に表面に塗布されてよい。塗料が重希土類元素を含む限り、塗料の組成は限定されない。塗料は、例えば、重希土類元素の単体、重希土類元素を含む合金、又は重希土類元素を含む化合物であってよい。重希土類元素を含む化合物は、水素化物、フッ化物、又は酸化物であってよい。塗料に含まれる溶媒(分散媒)は、水以外の溶媒であってよい。例えば、溶媒は、アルコール、アルデヒド、又はケトン等の有機溶媒であってよい。塗料における重希土類元素の濃度は限定されない。
拡散工程における拡散処理温度は、800℃以上950℃以下であってよい。拡散処理時間は、1時間以上50時間以下であってよい。拡散処理温度及び拡散処理時間が上記の範囲内であることにより、重希土類元素の濃度分布を制御し易く、永久磁石の製造コストが低減される。拡散工程が上述の時効処理工程を兼ねてもよい。
拡散工程後に、さらに熱処理を永久磁石に施してもよい。拡散工程後の熱処理温度は、450℃以上600℃以下であってよい。熱処理時間は、1時間以上10時間以下であってよい。拡散工程後の熱処理によって、最終的に得られる永久磁石の磁気特性(特に保磁力)が向上し易い。
拡散工程の後、切削及び研磨等により、焼結体の寸法及び形状が調整されてよい。
焼結体の表面の酸化又は化成処理(chemical treatment)により、不動態(passive)層が焼結体の表面に形成されてよい。焼結体の表面が樹脂膜で覆われてもよい。不動態層又は樹脂膜の形成により、永久磁石の耐食性が更に向上する。
以上の方法により、永久磁石が製造される。永久磁石の形状は限定されない。例えば、永久磁石の形状は、直方体、立方体、矩形(板)、多角柱、アークセグメント、扇、環状扇形(annular sector)状、球、円板、円柱、筒、リング、又はカプセルであってよい。永久磁石の断面の形状は、例えば、多角形、円弧(円弦)、弓形、アーチ形、C字形、又は円であってよい。永久磁石は、モータ、発電機又はアクチュエーター等に適用されてよい。例えば、永久磁石は、ハイブリッド自動車、電気自動車、ハードディスクドライブ、磁気共鳴画像装置(MRI)、スマートフォン、デジタルカメラ、薄型TV、スキャナー、エアコン、ヒートポンプ、冷蔵庫、掃除機、洗濯乾燥機、エレベーター及び風力発電機等の様々な分野で利用される。
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、合金粉末からボンド磁石が製造されてよい。合金粉末から熱間加工磁石が製造されてもよい。
以下、本発明が実施例により更に詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ストリップキャスト法により、フレーク状の原料合金が作製された。原料合金は、Nd、Pr、Co、Al、Cu、B及びFeからなっていた。原料合金における各元素の含有量は以下の値であった。
Ndの含有量:24.0質量%。
Prの含有量:7.2質量%。
Coの含有量:0.5質量%。
Alの含有量:0.2質量%。
Cuの含有量:0.1質量%。
Bの含有量:0.98質量%。
Feの含有量:balance(残部)。
第一の粉砕工程では、室温下で1時間にわたって水素を原料合金へ吸蔵させた。水素の吸蔵後、原料合金を500℃で1時間加熱することにより、原料合金が脱水素された。以上の水素吸蔵粉砕により原料合金が粉砕され、合金粉末が得られた。第一の粉砕工程によって得られた合金粉末の平均粒子径は、500μmであった。
第一の粉砕工程に続く第二の粉砕工程では、潤滑剤Aが合金粉末へ添加された。実施例1の潤滑剤Aは、下記表1に示される。潤滑剤Aの分子量Mは、下記表1に示される。潤滑剤Aにおける炭素の含有量は、下記表1に示される。表1中の[C]/Mは、潤滑剤Aにおける炭素の含有量を意味する。[C]/Mの単位は、質量%である。[C]/Mの定義は上述の通りである。潤滑剤Aの添加量は、下記表1に示される。潤滑剤Aの添加量とは、100質量部の原料合金に対する潤滑剤Aの質量の合計である。潤滑剤Aの添加量の単位は、質量部である。
第二の粉砕工程では、潤滑剤A及び合金粉末が室温で10分間混合された。潤滑剤A及び合金粉末はV型混合機によって混合された。潤滑剤Aと混合された合金粉末はジェットミルによって更に粉砕された。合金粉末の平均粒子径が3μmになるまで、合金粉末がジェットミルによって粉砕された。ジェットミルの気流は、Nガスであった。気流中の酸素の濃度は50ppm以下であった。第二の粉砕工程の粉砕速度Vは、下記表1に示めされる。Vの単位は、kg/hоurである。粉砕速度の定義は上述の通りである。
以上の第一の粉砕工程及び第二の粉砕工程により、実施例1の永久磁石用の合金粉末が作製された。実施例1の合金粉末における炭素の含有量<C>が測定された。合金粉末における炭素の含有量は、赤外線吸収法によって測定された。実施例1の<C>は、下記表1に示される。<C>の単位は、質量ppmである。
合金粉末がV型混合機によって攪拌された。合金粉末の攪拌後、金型内の合金粉末に磁場を印加しながら、合金粉末を金型で加圧することにより、成形体が作製された。つまり成形工程及び配向工程が同時に実施された。金型が合金粉末に及ぼす圧力は、1.4t/cmであった。金型内の合金粉末に印加された磁場の強さは、1193kA/mであった。
焼結過程では、成形体をArガス中で加熱することにより、焼結体が得られた。焼結過程では、成形体が1030℃で4時間加熱された。焼結過程に続いて、焼結体は急冷された。
焼結体の急冷後、第一時効処理と、第一時効処理に続く第二時効処理が実施された。第一時効処理及び第二時効処理のいずれにおいても、焼結体はArガス中で加熱された。第一時効処理では、焼結体が900℃で1時間加熱された。第二時効処理では、焼結体が530℃で1時間加熱された。
以上の方法により、実施例1の永久磁石が作製された。
室温における実施例1の永久磁石の保磁力Hcjが測定された。Hcjの測定には、B‐Hトレーサーを用いた。実施例1のHcjは、下記表1に示される。Hcjの単位は、kA/mである。
(実施例2~10、比較例1~4)
実施例2~10及び比較例1~4其々の第一の粉砕工程では、下記表1に示される潤滑剤Aが原料合金へ添加された。実施例2~10及び比較例1~4其々の潤滑剤Aの添加量は、下記表1に示される。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、実施例2~10及び比較例1~4其々の合金粉末及び永久磁石が作製された。実施例2~10及び比較例1~4其々の第二の粉砕工程の粉砕速度Vは、下記表1に示される。実施例1と同様の方法で、実施例2~10及び比較例1~4其々の合金粉末における炭素の含有量<C>が測定された。実施例2~10及び比較例1~4其々の<C>は、下記表1に示される。実施例1と同様の方法で、実施例2~10及び比較例1~4其々の永久磁石のHcjが測定された。実施例2~10及び比較例1~4其々のHcjは、下記表1に示される。
実施例2~10及び比較例1~4其々のΔVが算出された。ΔVは、下記数式1によって定義される。数式1中のVは、実施例2~10及び比較例1~4其々の第二の粉砕工程の粉砕速度である。数式1中のVは、比較例1の第二の粉砕工程の粉砕速度である。ΔVの単位は、%である。ΔVは大きいことが好ましい。
ΔV=100×(V-V)/V (1)
実施例2~10及び比較例1~4其々のΔHcjが算出された。ΔHcjは、下記数式2によって定義される。数式2中のHcjは、実施例2~10及び比較例1~4其々のHcjである。数式1中のHcjは、比較例1のHcjである。実施例2~10及び比較例1~4其々のΔHcjは、下記表1に示される。ΔHcjの単位は、%である。ΔHcjが負の値である場合、ΔHcjの絶対値は2.0%以下であることが好ましい。ΔHcjが正の値である場合、ΔHcjは大きいことが好ましい。
ΔHcj=100×(Hcj-Hcj)/Hcj (2)
Figure 0007183912000001
(実施例11~20、比較例5~7)
実施例11~20及び比較例5~7其々の第二の粉砕工程では、潤滑剤A及び潤滑剤Bが合金粉末へ添加された。つまり、実施例11~20及び比較例5~7其々の第二の粉砕工程では、潤滑剤A及び潤滑剤Bと混合された合金粉末が、ジェットミルによって粉砕された。実施例11~20及び比較例5~7其々の潤滑剤Aは、下記表2に示される。実施例11~20及び比較例5~7其々の潤滑剤Aの添加量は、下記表2に示される。実施例11~20及び比較例5~7其々の潤滑剤Bは、下記表2に示される。各潤滑剤Bの分子に含まれる直鎖の炭素数Ncは、下記表2に示される。実施例11~20及び比較例5~7其々の潤滑剤Bの添加量は、下記表2に示される。潤滑剤Bの添加量とは、100質量部の原料合金に対する潤滑剤Bの質量の合計である。潤滑剤Bの添加量の単位は、質量部である。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例11~20及び比較例5~7其々の合金粉末及び永久磁石が作製された。実施例11~20及び比較例5~7其々の第二の粉砕工程の粉砕速度Vは、下記表2に示される。実施例1と同様の方法で、実施例11~20及び比較例5~7其々の合金粉末における炭素の含有量<C>が測定された。実施例11~20及び比較例5~7其々の<C>は、下記表2に示される。実施例1と同様の方法で、実施例11~20及び比較例5~7其々の永久磁石のHcjが測定された。実施例11~20及び比較例5~7其々のHcjは、下記表2に示される。実施例11~20及び比較例5~7其々のΔV及びΔHcjは、下記表2に示される。
室温における実施例3、11~20及び比較例5~7其々の永久磁石の残留磁束密度Brが測定された。Brの測定には、上記のB‐Hトレーサーを用いた。実施例3、11~20及び比較例5~7其々のBrは、下記表2に示される。Brの単位は、mTである。
実施例3、11~20及び比較例5~7其々のΔBrが算出された。ΔBrは、下記数式3によって定義される。数式3中のBrは、実施例3、11~20及び比較例5~7其々のBrである。数式3中のBrは、実施例3のBrである。実施例3、11~20及び比較例5~7其々のΔBrは、下記表2に示される。ΔBrの単位は、%である。ΔBrは大きいことが好ましい。
ΔBr=100×(Br-Br)/Br (3)
Figure 0007183912000002
本発明に係る希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法によれば、原料合金の粉砕速度が増加し、高い保磁力を有する希土類永久磁石の製造に適した合金粉末を製造することができる。

Claims (13)

  1. 希土類永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備え、
    前記粉砕工程において、潤滑剤Aが、前記原料合金、及び前記原料合金から形成された合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加され、
    前記潤滑剤Aが、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、
    前記潤滑剤Aの分子量が、45以上120以下であり、
    前記潤滑剤Aにおける炭素の含有量が、10質量%以上60質量%以下であり、
    前記粉砕工程において用いられる前記潤滑剤Aの質量の合計が、100質量部の前記原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下である、
    希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  2. 前記粉砕工程が、前記原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、前記第一の粉砕工程によって得られた前記合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含み、
    前記第一の粉砕工程において、前記潤滑剤Aが前記原料合金へ添加される、
    請求項1に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  3. 前記粉砕工程が、前記原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、前記第一の粉砕工程によって得られた前記合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含み、
    前記第二の粉砕工程において、前記潤滑剤Aが前記合金粉末へ添加される、
    請求項1に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  4. 前記第一の粉砕工程では、水素吸蔵粉砕により前記原料合金が粉砕される、
    請求項3に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  5. 希土類永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備え、
    前記粉砕工程において、潤滑剤A及び潤滑剤Bが、前記原料合金、及び前記原料合金から形成された合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加され、
    前記潤滑剤Aが、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、
    前記潤滑剤Aの分子量が、45以上120以下であり、
    前記潤滑剤Aにおける炭素の含有量が、10質量%以上60質量%以下であり、
    前記粉砕工程において用いられる前記潤滑剤Aの質量の合計が、100質量部の前記原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下であり、
    前記潤滑剤Bが、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、脂肪酸アミド、脂肪族アミン、ビスアミド、エステルアミド及び金属石鹸からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、
    前記潤滑剤Bの分子に含まれる直鎖の炭素数が、11以上21以下であり、
    前記粉砕工程において用いられる前記潤滑剤Bの質量の合計が、100質量部の前記原料合金に対して、0.04質量部以上0.12質量部以下である、
    希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  6. 前記粉砕工程が、前記原料合金を粉砕する第一の粉砕工程と、前記第一の粉砕工程によって得られた前記合金粉末を更に粉砕する第二の粉砕工程と、を含み、
    前記潤滑剤Aが、前記原料合金及び前記合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加され、
    前記潤滑剤Bが、前記原料合金及び前記合金粉末のうち少なくともいずれかへ添加される、
    請求項5に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  7. 前記第二の粉砕工程において、前記潤滑剤A及び前記潤滑剤Bが前記合金粉末へ添加される、
    請求項6に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  8. 前記第一の粉砕工程では、水素吸蔵粉砕により前記原料合金が粉砕される、
    請求項7に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  9. 希土類永久磁石用の原料合金を粉砕する粉砕工程を備え、
    前記粉砕工程において、潤滑剤Aが前記原料合金へ添加され、
    前記粉砕工程によって得られた合金粉末に潤滑剤Bが添加され、
    前記潤滑剤Aが、脂肪酸アミド、尿素、尿素の誘導体、カルバミン酸の誘導体、及びシュウ酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、
    前記潤滑剤Aの分子量が、45以上120以下であり、
    前記潤滑剤Aにおける炭素の含有量が、10質量%以上60質量%以下であり、
    前記粉砕工程において用いられる前記潤滑剤Aの質量の合計が、100質量部の前記原料合金に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下であり、
    前記潤滑剤Bが、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、脂肪酸アミド、脂肪族アミン、ビスアミド、エステルアミド及び金属石鹸からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物であり、
    前記潤滑剤Bの分子に含まれる直鎖の炭素数が、11以上21以下であり、
    前記潤滑剤Bの質量の合計が、100質量部の前記原料合金に対して、0.04質量部以上0.12質量部以下である、
    希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  10. 前記希土類永久磁石用の合金粉末における炭素の含有量が、400質量ppm以上1500質量ppm以下である、
    請求項1~9のいずれか一項に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の希土類永久磁石用の合金粉末の製造方法によって前記希土類永久磁石用の合金粉末を製造する工程と、
    型を用いて前記合金粉末から成形体を作製する成形工程と、
    を備える、
    希土類永久磁石の製造方法。
  12. 前記型内に設置された前記合金粉末に磁場を印加することにより、前記合金粉末を配向させる配向工程を更に備える、
    請求項11に記載の希土類永久磁石の製造方法。
  13. 前記成形工程及び前記配向工程の後、前記成形体を焼結させる焼結工程を更に備える、
    請求項12に記載の希土類永久磁石の製造方法。
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