JP2008214661A - 希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Nd−Fe−B系焼結磁石の原料合金を粗粉砕する工程と、粗粉砕する工程で得られた粗粉砕粉末をジェットミルにより微粉砕する工程と、微粉砕する工程で得られた微粉砕粉末に磁場を印加しつつ加圧成形する工程と、加圧成形する工程で得られた成形体を焼結する工程と、を備え、微粉砕する工程において、衝突板式ジェットミルを用い、その粉砕雰囲気の酸素量を8000〜15000ppmとする。微粉砕粉末は、平均粒径D50=3.0〜6.0μm、D10/D50=0.35〜0.55、D90/D50=1.80〜2.05の条件を満足することが好ましい。
【選択図】図1
Description
Nd−Fe−B系焼結磁石を作製する場合は、希土類であるNdが酸化しやすいために、磁気特性を考慮すると焼結体中の酸素量は極力低い方が好ましい。しかしながら、合金粉末の活性度が高いため、粉砕処理工程を無酸素(または低酸素)にすると、場合によっては、成形時に酸化にともなう発火がおこることもある。
特許文献1〜3ともに、微粉砕時に微粉砕粉末の表面に安定した酸化膜を形成することを意図しており、安定した酸化膜が形成される結果、微粉砕粉末を粉砕機から大気中に取出した際、あるいは大気中にて磁場中成形する際の発火を防止できることが述べられている。
ここで、高い磁気特性を得るために、磁場中成形の過程で微粉砕粉末の配向度を高くすることが要求される。そのために、微粉砕時に潤滑剤を添加する。ところが、この潤滑剤は微粉砕粉末を構成する各粒子間の摩擦を低減するためのものであるから、潤滑剤の添加は成形体強度を低下させる要因となる。成形体強度を考慮すると、結着性の高い潤滑剤を用いることも可能であるが、この結着性の高い潤滑剤は、高い配向度、換言すれば高い磁気特性を得る観点からは好ましくない。また、成形圧力を高くすることによっても成形体強度を高くすることができるが、高い成形圧力は配向度を低下させる要因となる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、磁気特性の低下を抑えつつ、磁場中成形による成形体強度を向上できる手法を提供することを目的とする。
次に、衝突板式のジェットミルを用い、かつ粉砕雰囲気の酸素量を特定の範囲に設定して得られた微粉砕粉末を成形して得られた成形体は、その強度が高いことがその測定結果から判明した。
本発明は、微粉砕を行うジェットミルの形式及び粉砕雰囲気中の酸素量を特定することにより、成形体の強度を高くすることができる。この場合、微粉砕粉末の酸素量の増加が抑えられるため、磁気特性の低下を最小限に抑えることができる。
また、本発明において、緻密な焼結体を作製し、高い磁気特性を確保するために、微粉砕粉末の酸素量は、3000〜6000ppmとすることが好ましい。
ジェットミル(または気流式粉砕機)は、ボールミル、アトライタのように粉砕メディアを使用しないため、不純物の混入を極力低減することができる。したがって、Nd−Fe−B系焼結磁石の製造過程の微粉砕には、専らジェットミルが用いられている。
Nd−Fe−B系焼結磁石を得るための原料合金は、例えば、ストリップキャスト法により得ることができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。ストリップキャスト法によって得られた薄板又は薄片(鱗片)状の原料合金は、厚みが0.05〜3mm、柱状結晶粒の平均径が1〜50μmであることが好ましい。平均径が1μm未満になると粉砕後に多磁区粒子が増加し、また50μmを超えると粉砕性が劣化する。
まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
衝突板式ジェットミルの粉砕雰囲気の酸素量が少ないと成形体強度の向上に効果が不十分である。また、酸素量が多すぎても成形体強度向上の効果が低減する。また、微粉砕粉末の酸素量が多くなり、磁気特性が劣化する。そこで本発明では、衝突板式ジェットミルによる粉砕雰囲気の酸素量を8000〜15000ppmとする。粉砕雰囲気の好ましい酸素量は8500〜13000ppm、さらに好ましい酸素量は9000〜12000ppmである。なお、この粉砕雰囲気は、以上の酸素を含む不活性ガスから構成する。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、これらの混合ガスを用いることができる。
なお、特許文献4に、衝突板式ジェットミルを用い、粉砕雰囲気を500ppm以下にして微粉砕を行う技術が記載されているが、粉砕雰囲気の酸素量を8000〜15000ppmとすることにより、成形体強度を向上できることの開示、示唆はなされていない。
微粉砕粉末の粒度分布は、成形体の強度に影響を与える。すなわち、微粉砕粉末が細かすぎても、また粗すぎても成形体強度が不十分となる。また、D50が小さすぎると、同条件で粉砕された場合であっても、微粉砕粉末の酸素量が多くなる傾向にある。また、粉砕が完了するまでに時間がかかり、生産効率を阻害する。そこで、本発明はD50を3.0〜6.5μmとする。さらに好ましいD50は3.5〜6.0μm、より好ましいD50は4.0〜5.5μmである。
焼結は、真空又は不活性ガス雰囲気中、好ましくは真空中で行われる。焼結条件は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1100℃の温度で1〜10時間程度保持すれば緻密な焼結体を得ることができる。焼結後、焼結体に対して時効処理を施すことが一般的である。また、焼結体は所定形状に加工し、めっき等の表面処理を施して、製品として供給される。
以上では、焼結体の組成と一致する一種類の原料合金を用いる例について説明したが、組成の異なる複数種類の原料合金を用いてNd−Fe−B系焼結磁石を製造する場合についても本発明を適用できる。
Nd−Fe−B系焼結磁石は、Nd2Fe14B化合物を主相とし、その主相を非磁性であるNdリッチな層で取囲む組織形態を有している。
Nd−Fe−B系焼結磁石は、Ndの一部を他の希土類元素で置換することができる。ここで、この希土類元素はYを含む概念を有しており、したがって、Y、La、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上によりNdの一部を置換することができる。また、保磁力を向上したい場合、Ndの一部を重希土類元素で置換する。この重希土類元素としては、Tb、Dyを選択することが好ましい。
本発明が適用されるNd−Fe−B系焼結磁石は、上記したNd(希土類元素)、Fe及びB以外の元素を含有することができる。例えば、好ましくはCoを5.0wt%以下(0を含まず)、さらに好ましくは0.1〜3.0wt%含有する。Coはキュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上などに効果がある。さらに他の元素、例えば、Al、Cu、Zr、Mo、Ti、Bi、F、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。これらは、Feの一部を置換する元素と位置づけることができ、Feの一部をこれら元素で置換した場合も、本願発明のNd−Fe−B系焼結磁石に包含されることはいうまでもない。
26.5wt%Nd−5.0wt%Pr−1.8wt%Dy−0.5wt%Co−0.25wt%Al−0.07wt%Cu−1wt%B−残Feの組成を有する原料合金をストリップキャスト法により作製した。
得られた原料合金に水素吸蔵処理を行った後に、衝突板式ジェットミル及びカウンタ式ジェットミルの2種類のジェットミルにより、微粉砕を行った。微粉砕の際に、潤滑剤としてオレイン酸アミドを0.10wt%添加した。また、粉砕雰囲気中の酸素量を表1に示すように変えて微粉砕を行った。
磁場強度:1273kA/m(16kOe)
加 圧 力:98MPa(1.0ton/cm2)
得られた成形体を、真空中、1040℃で4時間焼結した。次いで、焼結体を800℃で1時間保持、550℃で1時間保持する2段階の時効処理を施した。得られたNd−Fe−B系焼結磁石の磁気特性を測定した。
成形体強度:20×18mmの開口寸法を有する金型に微粉砕粉末を10g投入して、磁場強度:1194MPa(15kOe)、圧力:147MPa(1.5ton/cm2)の条件で磁場中成形して成形体を作製。アイコーエンジニアリング(株)製の1310荷重試験機を用いて、当該成形体の3点曲げ強度(n=10の平均値)を測定。
割れ、欠けの発生率:C型35×70×30mmの成形体を2000個成形し、焼結、時効処理後に目視確認により発生率を評価。
安全性:50×20×25mmの成形体を大気中において9個連続で作製(サイクルタイム:30秒)し、この成形体を3列3行(10mm間隔)に自動積載。中心に位置する成形体の上面の温度を15分間測定し、その間の最高温度を評価対象とする。この成形体上面の温度測定は、温度24.7℃、湿度60%の環境下で行った。
以上の測定、評価結果を表1に示す。
(a)粉砕雰囲気の酸素量が同じでも、衝突板式ジェットミルの方がカウンタ式ジェットミルよりも成形体強度が高い。
表1に示すように、衝突板式ジェットミルはカウンタ式ジェットミルよりも、粉砕効率が2倍程度高い。粉砕効率によって、粉砕雰囲気中に微粉砕粉末が曝されている時間が変わる。つまり、衝突板式ジェットミルは、カウンタ式ジェットミルに比べて微粉砕粉末が粉砕雰囲気に晒されている時間が短い。そして、衝突板式ジェットミルの方がカウンタ式ジェットミルに比べて微粉砕粉末の酸素量が少ない。ただし、この微粉砕粉末の酸素量の差異が、成形体強度に差異がでることの理由の全てではない。微粉砕粉末の酸素量が同程度であっても、衝突板式ジェットミルの方がカウンタ式ジェットミルよりも成形体強度が高い結果となっているからである。後述するように、2つの形式のジェットミルは、得られる微粉砕粉末の粒度分布に差異があり、このことも作用して成形体強度に差異がでているかもしれない。いずれにしろ、この理由は明らかでない。
(b)図1に、粉砕雰囲気の酸素量と成形体強度の関係を示している。粉砕雰囲気の酸素量が増加するにつれて、成形体強度が高くなる。衝突板式ジェットミルにおいて、粉砕雰囲気の酸素量が15000ppm近傍で、成形体強度がピークを示す。つまり、高い成形体強度を得るために適する粉砕雰囲気の酸素量が存在する。成形体強度と割れ、欠けの発生率とを対比すると、成形体強度が0.55MPaを超えると、割れ、欠け発生率がいずれも0.5%以下と低い値となる。
(c)図2に粉砕雰囲気の酸素量と残留磁束密度(Br)の関係を、また、図3に粉砕雰囲気の酸素量と保磁力(HcJ)の関係を示している。粉砕雰囲気の酸素量が高い場合でも成形体強度は0.55MPaを超えるが、図2及び図3に示すように、磁気特性、特に保磁力(HcJ)の低下が顕著となる。
したがって、本発明は、磁気特性の観点をも考慮して、粉砕雰囲気の酸素量を8000〜15000ppmに特定する。
(e)粉砕雰囲気の酸素量が本発明の範囲内にある場合でも、微粉砕粉末のD10/D50が小さくなるか、またはD90/D50が大きくなると、成形体強度が十分に高くならない。したがって、微粉砕粉末の粒度分布が狭くシャープな方が、成形体強度にとって好ましい。カウンタ式ジェットミルにより得られた微粉砕粉末は、衝突板式ジェットミルに比べて、D10/D50が小さく、かつD90/D50が大きい。つまり、カウンタ式ジェットミルにより得られた微粉砕粉末は、粒度分布が広い。この粒度分布の差異が、成形体強度の差異に影響している可能性を否定できない。
(f)R(D50*0.15)の値が小さくなると成形体強度が高くなり、R(D50*0.15)を3.2%以下にすると、0.55MPaを超える高い成形体強度が得られる。
図6に微粉砕粉末のD50と微粉砕粉末の酸素量の関係を示す。D50が小さいほど、微粉砕粉末の酸素量が多くなることがわかる。No.20の成形体強度が低く、かつ割れ欠け発生率が高いのは、酸素量が多いことが起因している可能性がある。
※大場コメント:以上の記載の適否をご検討下さい。図7を含めて言及しない、というのも選択肢としてあります。
Claims (4)
- Nd−Fe−B系焼結磁石の原料合金を粗粉砕する工程と、
前記粗粉砕する工程で得られた粗粉砕粉末をジェットミルにより微粉砕する工程と、
前記微粉砕する工程で得られた微粉砕粉末に磁場を印加しつつ加圧成形する工程と、
前記加圧成形する工程で得られた成形体を焼結する工程と、を備え、
前記微粉砕する工程において、衝突板式ジェットミルを用い、その粉砕雰囲気の酸素量を8000〜15000ppmとすることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。 - 前記微粉砕粉末が、平均粒径D50=3.0〜6.0μm、D10/D50=0.35〜0.55、D90/D50=1.80〜2.05(ただし、D10とは累積体積比率が10%となる粒径、D50とは累積体積比率が50%となる粒径、D90とは累積体積比率が90%となる粒径をいう)の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記微粉砕粉末が、D50×0.15の値(ただし、D50とは累積体積比率が50%となる粒径)以下の粒径を有する粒子の累積体積比率が3.2%以下の条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記微粉砕粉末の酸素量が、3000〜6000ppmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
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