以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による回転電機を示す片側縦断面図である。また、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図において、回転電機1は、筒状の固定子2と、固定子2の径方向について固定子2の内側に配置された回転子3と、固定子2及び回転子3を支持するハウジング4とを有している。
ハウジング4は、固定子2及び回転子3が内部に配置されたカップ状の第1のハウジング部41と、第1のハウジング部41の開口部を塞ぐ第2のハウジング部42とを有している。固定子2は、第1のハウジング部41の内周面に固定されている。
ハウジング4には、一対の軸受5が設けられている。一対の軸受5のうち、一方は第1のハウジング部41に設けられ、他方は第2のハウジング部42に設けられている。ハウジング4には、回転軸6が一対の軸受5を介して回転自在に支持されている。回転軸6は、第1及び第2のハウジング部41,42を貫通した状態で回転電機1の軸線上に配置されている。
回転子3は、回転軸6に固定されている。これにより、回転子3は、回転電機1の軸線を中心に固定子2に対して回転軸6と一体に回転される。また、回転子3は、図1に示すように、回転軸6と同軸に配置された磁性体である円柱状の回転子コア31と、回転子コア31に固定された複数の永久磁石32とを有している。
固定子2は、回転子3と同軸に配置されている。また、固定子2は、回転子3の径方向について回転子3と隙間を介して対向する固定子コア21と、固定子コア21に設けられ、固定子コア21の周方向へ並ぶ複数の固定子コイル22と、固定子コア21に設けられ、固定子コア21に対する各固定子コイル22の絶縁状態を確保する複数のインシュレータ23と、各インシュレータ23の少なくともいずれかに設けられ、固定子コイル22の温度を検出する温度センサ24と、インシュレータ23に設けられ、温度センサ24をインシュレータ23に保持するホルダ25とを有している。
固定子コア21は、固定子2の軸線方向について複数枚の磁性板(例えば鋼板等)が積層されて構成された積層体である。また、固定子コア21は、図2に示すように、固定子2の軸線を中心とする円筒状のコアバック211と、コアバック211から径方向内側へそれぞれ突出し、コアバック211の周方向について互いに離して配置された複数のティース212とを有している。固定子コイル22は、各ティース212にそれぞれ設けられている。各ティース212間には、固定子コイル22が配置されたスロット213が形成されている。
図3は、図1のIII部を示す拡大断面図である。また、図4は、図2のティース212に固定子コイル22が設けられている状態を示す拡大斜視図である。共通のティース212には、図4に示すように、一対のインシュレータ23が固定子コア21の軸線方向両側から嵌められている。固定子コイル22は、一対のインシュレータ23を介してティース212に設けられている。
固定子コイル22は、ティース212に複数回巻かれている導線221により構成されている。また、固定子コイル22には、ワニスが含浸されている。これにより、固定子コイル22とインシュレータ23との間、及び導線221間は、ワニスによって固められている。固定子コイル22では、固定子コア21の軸線方向の範囲から突出している部分がコイルエンド部22aとなっている。固定子コイル22は、ハウジング4内を流れる絶縁性の冷媒により冷却される。冷媒としては、例えばオイル又は空気等が挙げられる。
各インシュレータ23は、電気絶縁材料(例えば樹脂等)により構成されている。また、各インシュレータ23は、固定子コイル22とティース212との間に介在する胴部231(図3)と、固定子コア21の径方向について胴部231の外側端部(コアバック211に近い端部)に設けられた第1の鍔部(第1のフランジ部)232と、固定子コア21の径方向について胴部231の内側端部(回転子3に近い端部)に設けられた第2の鍔部(第2のフランジ部)233とを有している。
第1の鍔部232及び第2の鍔部233は、胴部231の外周面に対して立てて設けられた板状部である。固定子コイル22は、第1の鍔部232と第2の鍔部233との間に配置されている。また、第1の鍔部232及び第2の鍔部233は、固定子コア21の径方向について固定子コイル22にそれぞれ隣接している。インシュレータ23に対する固定子コイル22の位置は、第1の鍔部232及び第2の鍔部233によって固定子コア21の径方向について規制されている。
第1の鍔部232は、固定子コア21の軸線方向について固定子コア21から出ている鍔突出部(厚肉部)232aと、固定子コア21の軸線方向の範囲内へ鍔突出部232aから延び、鍔突出部232aよりも厚さが薄い鍔挿入部(薄肉部)232bとを有している。鍔突出部232aと鍔挿入部232bとの境界には、コアバック211に嵌る段差部が形成されている。これにより、鍔突出部232aの一部がコアバック211の軸線方向端面に載っているとともに、鍔挿入部232bがコアバック211と固定子コイル22との間に挿入されている。即ち、固定子2の軸線方向に沿って第1の鍔部232を見たときには、鍔突出部232aの一部がコアバック211に重なり、鍔挿入部232bがコアバック211と固定子コイル22との間に配置されている。
ここで、図5は、図4のインシュレータ23を第2の鍔部233側から見たときの状態を示す斜視図である。また、図6は、図4のインシュレータ23を第1の鍔部232側から見たときの状態を示す斜視図である。胴部231の外周面には、第1の鍔部232から第2の鍔部233に達するワニス供給用溝236が設けられている。胴部231の外周面と鍔突出部232aとの境界には、第1の鍔部232の厚さ方向へ鍔突出部232aを貫通する連通空間237が設けられている。連通空間237とワニス供給用溝236とは、互いに繋がっている。これにより、インシュレータ23では、連通空間237からワニス供給用溝236を通して固定子コイル22へワニスが供給可能になっている。
鍔突出部232aには、切欠部234が鍔突出部232aの外周部から胴部231に向かって設けられている。切欠部234は、第1の鍔部232の厚さ方向について鍔突出部232aを貫通し、かつ鍔突出部232aの外周部で開放されたスリット部である。この例では、切欠部234が鍔突出部232aに固定子コア21の軸線方向に沿って設けられている。これにより、この例では、切欠部234の深さ方向が固定子コア21の軸線方向と一致している。
切欠部234は、連通空間237と繋がっている。これにより、ワニス供給用溝236内の空間、連通空間237及び切欠部234内の空間は、互いに連続した一体空間となっている。
切欠部234の内側面には、一対の嵌合溝(嵌合部)235が切欠部234の深さ方向に沿って設けられている。一対の嵌合溝235は、切欠部234の幅方向について互いに対向している。これにより、この例では、一対の嵌合溝235が固定子コア21の周方向について互いに対向している。
各嵌合溝235は、鍔突出部232aの外周部で開放されている。また、各嵌合溝235は、鍔突出部232aの外周部から、切欠部234と連通空間237との境界の位置まで延びている。各嵌合溝235の連通空間237側の端部には、溝端面235aが形成されている。この例では、溝端面235aが嵌合溝235の長手方向に対して垂直に形成されている。
切欠部234の内側面のうち、各嵌合溝235よりも固定子コイル22に近い部分は、鍔突出部232aの固定子コイル22側の面に対して互いに逆方向へ傾斜する一対の傾斜面234aとなっている。切欠部234の幅方向寸法は、一対の傾斜面234aにより、固定子コイル22に向かって広がっている。
この例では、温度センサ24の形状が直方体とされている。温度センサ24は、図3に示すように、温度センサ24の一部を溝端面235aに係合させた状態で切欠部234に配置されている。温度センサ24には、引き出し線24aが接続されている。引き出し線24aは、温度センサ24から、鍔突出部232aの外周部に位置する切欠部234の開放部を通って切欠部234外へ出されている。
図7は、図4のVII−VII線に沿った断面図である。また、図8は、図4のホルダ25を示す斜視図である。さらに、図9は、図4の温度センサ24及びホルダ25がインシュレータ23から外れている状態を示す分解斜視図である。ホルダ25は、切欠部234に配置されたホルダ本体251と、ホルダ本体251に設けられ、鍔突出部232aに取り付けられたホルダ固定部252とを有している。ホルダ25は、インシュレータ23とは別部材となっている。
ホルダ25は、ホルダ本体251の一部が各嵌合溝235に嵌っている状態で鍔突出部232aに取り付けられている。温度センサ24は、固定子コイル22に接触した状態で、ホルダ本体251及びインシュレータ23によって覆われている。
ホルダ本体251は、一対の嵌合溝235間に配置された押さえ部253と、押さえ部253の幅方向両端部に設けられ、各嵌合溝235にそれぞれ摺動可能に嵌る一対の嵌合壁部254と、押さえ部253に設けられ、切欠部234の開放部に配置された一対の蓋部255とを有している。
鍔突出部232aに対するホルダ25の位置は、各嵌合壁部254が各嵌合溝235に嵌ることにより、切欠部234の深さ方向(この例では、固定子コア21の軸線方向)を除くいずれの方向についても規制されている。温度センサ24は、図3に示すように、固定子コア21の径方向についてホルダ本体251の押さえ部253と固定子コイル22との間に挟まれている。
押さえ部253は、図8に示すように、切欠部234の深さ方向及び幅方向に沿って配置された受け板257と、受け板257に設けられ、温度センサ24に接触する突起である弾性部258とを有している。受け板257の厚さ寸法は、各嵌合溝235の幅寸法よりも小さくなっている。
弾性部258は、蓋部255から離れた位置で押さえ部253の幅方向に沿って設けられている。また、弾性部258は、弾性材料(例えばゴム等)により構成されている。ホルダ25が鍔突出部232aに取り付けられ、押さえ部253と固定子コイル22との間に温度センサ24が挟まれている状態では、図3に示すように、温度センサ24と受け板257との間で弾性部258が弾性変形している。これにより、弾性部258は、温度センサ24を固定子コイル22に押し付ける弾性復元力を発生している。ホルダ25は、電気絶縁材料により構成されている。この例では、ホルダ25のうち、弾性部258を除く部分が樹脂により構成され、弾性部258がゴムにより構成されている。
各嵌合壁部254は、嵌合溝235に沿って配置されている。また、各嵌合壁部254は、嵌合溝235の幅寸法に合わせて受け板257から固定子コイル22側へ突出している。温度センサ24は、図7に示すように、切欠部234の幅方向について、一対の嵌合壁部254間に保持されている。鍔突出部232aに対する温度センサ24の位置は、一対の嵌合壁部254による温度センサ24の保持により、切欠部234の幅方向について規制されている。
各嵌合壁部254は、温度センサ24に接触する複数の突起254aをそれぞれ有している。これにより、各嵌合壁部254は、温度センサ24に部分的に接触している。この例では、各嵌合壁部254が突起254aを2つずつ有している。
各蓋部255は、受け板257から固定子コイル22側へ突出している。各蓋部255間には、温度センサ24の引き出し線24aを通す凹部256が形成されている。温度センサ24は、図7に示すように、切欠部234の深さ方向について、各溝端面235aと各蓋部255との間に保持されている。これにより、温度センサ24が切欠部234の開放部から外れることが防止されている。
各蓋部255は、温度センサ24に接触する突起255aをそれぞれ有している。これにより、各蓋部255が温度センサ24に部分的に接触している。
ホルダ固定部252は、ホルダ本体251の一方の蓋部255に設けられている。また、ホルダ固定部252は、ホルダ本体251の幅方向外側へ突出している。これにより、ホルダ固定部252は、鍔突出部232aの外周面と重なっている。即ち、ホルダ固定部252は、嵌合壁部254が嵌合溝235に沿って摺動する方向について鍔突出部232aと重なっている。
また、ホルダ固定部252は、鍔突出部232aの外周面に対向する複数(この例では、2つ)の溶着用突起252aを有している。また、ホルダ固定部252は、鍔突出部232aの外周面に各溶着用突起252aを接触させた状態で各溶着用突起252a及び鍔突出部232aを溶融させて固化させることにより、鍔突出部232aの外周面に溶着されている。この例では、ホルダ固定部252と鍔突出部232aとの溶着をより確実にするために、ホルダ固定部252を構成する材料が、鍔突出部232aを構成する材料と同じ樹脂とされている。鍔突出部232aに対するホルダ25の位置は、ホルダ固定部252が溶着によって鍔突出部232aに固定されることにより、切欠部234の深さ方向について規制されている。
温度センサ24は、図3に示すように、固定子コイル22のコイルエンド部22aの導線221に切欠部234から接触している。これにより、温度センサ24と固定子コイル22とは互いに部分的に接触し、温度センサ24及び固定子コイル22との間には隙間が部分的に生じている。また、温度センサ24は、弾性部258の弾性復元力により固定子コイル22に押圧されている。これにより、温度センサ24と固定子コイル22との接触状態が確保されている。
温度センサ24と固定子コイル22との間に生じている隙間には、図3に示すように、伝熱性及び電気絶縁性を持つペースト状の充填材222が充填されている。充填材222の材料としては、例えば樹脂等が用いられている。
次に、回転電機1の製造方法について説明する。回転電機1を製造するときには、回転子3を回転軸6に固定して回転子3及び回転軸6を予め一体化しておくとともに、固定子2を第1のハウジング部41内に予め固定しておく。この後、回転子3を回転軸6とともに固定子2の内側に挿入した後、第1及び第2のハウジング部41,42を組み合わせてハウジング4を構成する。このようにして、回転電機1を製造する。
次に、固定子2の製造方法について説明する。固定子2を製造するときには、まず固定子コア21の各ティース212にインシュレータ23を2つずつ取り付ける。このとき、各インシュレータ23は、固定子コア21の径方向について第2の鍔部233の位置よりも第1の鍔部232の位置を外側にして胴部231をティース212に嵌める。また、このとき、切欠部234が設けられている鍔突出部232aが固定子コア21の軸線方向について固定子コア21から出ている状態にしておく。
この後、ティース212に対して各胴部231の外側から導線221を巻く。これにより、固定子コイル22が胴部231を介して各ティース212にそれぞれ設けられる。このとき、胴部231、第1の鍔部232及び第2の鍔部233に導線221を押し付けながらティース212に導線221を巻く。これにより、固定子コイル22は、胴部231、第1の鍔部232及び第2の鍔部233のそれぞれに接触した状態でインシュレータ23に配置され、インシュレータ23に対する固定子コイル22の位置が固定される(巻線工程)。
巻線工程後、図9に示すように、鍔突出部232aに設けられている切欠部234に温度センサ24を挿入する。このとき、温度センサ24及び固定子コイル22の少なくともいずれかにペースト状の充填材222(図3)を塗布しておき、温度センサ24と固定子コイル22との間に充填材222を介在させる。また、このとき、各溝端面235aに温度センサ24を係合させた状態で切欠部234に温度センサ24を配置する(温度センサ挿入工程)。
温度センサ挿入工程後、図9に示すように、切欠部234の開放部から切欠部234内にホルダ本体251を挿入する。これにより、固定子コイル22とホルダ本体251との間で温度センサ24が挟まれる。このとき、切欠部234の幅方向について各嵌合壁部254間に温度センサ24を挟んだ状態で各嵌合壁部254を各嵌合溝235にそれぞれ嵌め、受け板257と温度センサ24との間で弾性部258を弾性変形させながら、各嵌合壁部254を各嵌合溝235に沿って摺動させる。これにより、弾性部258が弾性復元力を発生し、温度センサ24が弾性部258の弾性復元力により固定子コイル22に押し付けられる。ホルダ本体251は、ホルダ固定部252の各溶着用突起252aが鍔突出部232aの外周面に接触するまで切欠部234に挿入される。
この後、固定子コイル22とホルダ本体251との間で温度センサ24を挟みながら、各溶着用突起252aと鍔突出部232aとの接触部分を熱して各溶着用突起252a及び鍔突出部232aを溶融させて固化させることにより、ホルダ固定部252を鍔突出部232aに溶着させる。これにより、ホルダ25が鍔突出部232aに取り付けられる(ホルダ取付工程)。
ホルダ取付工程後、連通空間237及びワニス供給用溝236を通してワニスを固定子コイル22に供給する。これにより、固定子コイル22にワニスが含浸され、固定子コイル22とインシュレータ23との間、及び固定子コイル22の導線221間がワニスで固められる(ワニス供給工程)。このようにして、固定子2を製造する。
このような固定子2、及び固定子2を含む回転電機1では、第1の鍔部232のうち、固定子コア21の軸線方向について固定子コア21から出ている部分である鍔突出部232aに、切欠部234が鍔突出部232aの外周部から胴部231に向かって設けられ、切欠部234に配置されているホルダ本体251と固定子コイル22との間に温度センサ24が挟まれているので、固定子コア21の軸線方向の範囲外に温度センサ24を配置することができる。これにより、固定子コイル22が配置されるべき空間を避けて温度センサ24を配置することができ、固定子コイル22の占積率の低下を防止することができる。また、固定子コイル22がインシュレータ23に設けられている状態で、鍔突出部232aの切欠部234に温度センサ24を配置することができるので、固定子コイル22の導線221の線径及び固定子コイル22の配置のばらつき等があっても、固定子コイル22に対する温度センサ24の接触状態の調整を容易にすることができ、固定子コイル22に温度センサ24をより確実に接触させることができる。
さらに、ホルダ本体251が切欠部234から外れている状態では、切欠部234に配置されている温度センサ24に空間的余裕があるので、固定子コイル22に対して垂直方向から温度センサ24を接触させることができる。これにより、温度センサ24を設置するときに温度センサ24が固定子コイル22と擦れないようにすることができ、温度センサ24と固定子コイル22とが擦れることによる不具合の発生を防止することができる。温度センサ24と固定子コイル22とが擦れることによる不具合としては、例えば、固定子コイル22の導線221の絶縁被膜及び温度センサ24の少なくともいずれかが損傷すること、及び温度センサ24と固定子コイル22との間に充填材222を介在させる場合に充填材222が温度センサ24によって擦り落とされること等が挙げられる。
また、インシュレータ23からホルダ25を外すことによって温度センサ24がインシュレータ23から外れるので、インシュレータ23に対する温度センサ24及びホルダ25の取り外し作業及び再度の取り付け作業を、温度センサ24及び固定子コイル22を破壊せずに容易に行うことができる。
また、切欠部234の内側面には、ホルダ本体251の一部である各嵌合壁部254が摺動可能に嵌る一対の嵌合溝235が切欠部234の幅方向について互いに対向して設けられているので、固定子2の使用時に温度センサ24に加わる荷重のうち、嵌合溝235に沿った方向への荷重以外の荷重を嵌合溝235の内面(鍔突出部232a)で受けるようにすることができる。これにより、インシュレータ23からホルダ本体251を外れにくくすることができ、温度センサ24及びホルダ25についての取付状態の信頼性の向上を図ることができる。
また、胴部231と鍔突出部232aとの境界には、第1の鍔部232の厚さ方向へ鍔突出部232aを貫通する連通空間237が設けられ、連通空間237には、胴部231の外周面に設けられたワニス供給用溝236及び切欠部234のそれぞれが繋がっているので、切欠部234に繋がった連通空間237からワニス供給用溝236を通して固定子コイル22内にワニスを注入することができる。これにより、切欠部234に連続する一体空間として連通空間237を鍔突出部232aに形成することができ、固定子コイル22内にワニスを注入するための専用の貫通穴をインシュレータ23に別途設ける必要がなくなる。従って、インシュレータ23の形状の簡素化及び小形化を図ることができる。
また、ホルダ固定部252は、溶着用突起252aを溶融させて鍔突出部232aに溶着されているので、ねじ等による機械的な締結のためのスペースを確保する必要がなく、鍔突出部232aにホルダ固定部252を固定する範囲を狭くすることができる。これにより、鍔突出部232aに対するホルダ固定部252の取り付け構造をコンパクトにすることができる。また、鍔突出部232aにホルダ固定部252を接着剤によって固定する場合と比較すると、余剰接着剤が想定外の箇所に付着することによって想定外の熱流路が生じて温度センサ24の周囲の熱特性がばらついてしまうことを抑制することができ、温度センサ24による温度検出の精度を向上させることができる。さらに、接着剤の管理という生産上の負担も軽減することができる。
また、ホルダ固定部252は、嵌合壁部254が嵌合溝235に沿って摺動する方向について鍔突出部232aと重なっているので、嵌合溝235に沿った方向以外の方向については嵌合溝235の内面でホルダ本体251を保持することができ、嵌合溝235に沿った方向の引張荷重のみを考慮して、鍔突出部232aに対するホルダ固定部252の固定強度を決めることができる。これにより、鍔突出部232aに対するホルダ固定部252の取り付け構造をコンパクトにした場合であっても、鍔突出部232aに対するホルダ固定部252の固定強度を十分確保することができる。
また、温度センサ24は、固定子コイル22に接触した状態でインシュレータ23及びホルダ25によって覆われているので、回転電機1内を流れる冷媒に対して温度センサ24が露出することを抑制することができる。これにより、温度センサ24に対する冷媒の不安定な冷却によるノイズを抑制することができ、温度センサ24による温度検出の精度をさらに向上させることができる。
また、ホルダ本体251は、温度センサ24に接触する複数の突起254a,255a,257を有しているので、温度センサ24に対するホルダ本体251の接触面積を小さくすることができる。これにより、温度センサ24からホルダ25への熱伝導を抑制することができ、温度センサ24からの熱の漏れ量を少なくすることができる。従って、温度センサ24による温度検出の精度をさらに向上させることができる。
また、ホルダ本体251は、温度センサ24を固定子コイル22に押し付ける弾性復元力を発生する弾性部258を有しているので、固定子コイル22に温度センサ24をさらに確実に接触させることができる。これにより、温度センサ24と固定子コイル22との間の熱抵抗を低下させることができ、温度センサ24による温度検出の精度をさらに向上させることができる。
また、互いに部分的に接触する温度センサ24と固定子コイル22との間に生じている隙間には、電気絶縁性及び伝熱性を持つ充填材222が充填されているので、温度センサ24と固定子コイル22との間の熱抵抗を充填材222によってさらに低下させることができる。これにより、温度センサ24による温度検出の精度をさらに向上させることができる。
また、このような回転電機1の固定子2の製造方法では、インシュレータ23の胴部231を介して固定子コイル22をティース212に設けた後、固定子コア21から出ている鍔突出部232aに設けられた切欠部234に温度センサ24を挿入し、この後、切欠部234にホルダ本体251を挿入して固定子コイル22とホルダ本体251との間に温度センサ24を挟むので、固定子コイル22がインシュレータ23に設けられている状態で切欠部234に温度センサ24を挿入することができる。これにより、固定子コイル22に対する温度センサ24の接触状態の調整を容易にすることができ、固定子コイル22に温度センサ24をより確実に接触させることができる。また、切欠部234に温度センサ24を挿入した後、切欠部234にホルダ本体251を挿入する前には、温度センサ24に空間的余裕があり、このときに、固定子コイル22に温度センサ24を切欠部234から接触させることができるので、温度センサ24が固定子コイル22と擦れないようにすることができ、温度センサ24と固定子コイル22とが擦れることによる不具合の発生を防止することができる。さらに、固定子コア21から出ている鍔突出部232aに設けられた切欠部234に温度センサ24を挿入するので、固定子コイル22が配置されるべき空間を避けて温度センサ24を配置することができ、固定子コイル22の占積率の低下を防止することができる。
また、切欠部234にホルダ本体251を挿入するときに、切欠部234の内側面に設けられた一対の嵌合溝235にホルダ本体251の一部である嵌合壁部254を嵌めて摺動させるので、切欠部234にホルダ本体251を挿入しやすくすることができるとともに、インシュレータ23からホルダ本体251が外れにくくすることができる。
また、切欠部234に温度センサ24を挿入するときに、温度センサ24と固定子コイル22との間に充填材222を介在させるので、温度センサ24と固定子コイル22との間の隙間に充填材222をより確実かつ容易に充填することができる。
また、鍔突出部232aにホルダ25を固定した後に、連通空間237及びワニス供給用溝236を通してワニスを固定子コイル22に供給するので、固定子コイル22へのワニスの供給をより確実かつ容易に行うことができる。
なお、上記の例では、ホルダ25が、温度センサ24を固定子コイル22に押し付ける弾性復元力を発生する弾性部258を有しているが、例えば固定子コイル22に対する温度センサ24の接触状態が固定子コイル22の弾性復元力によって確保されるのであれば、弾性復元力を発生する機能を弾性部258に持たせる必要はなく、例えば、受け板257及び弾性部258を含む押さえ部253を、樹脂で構成された単一材としてもよい。
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2による回転電機の固定子の要部を示す拡大断面図である。また、図11は、図10のホルダ25を示す斜視図である。なお、図10は実施の形態1での図3に対応する図、図11は実施の形態1での図8に対応する図である。ホルダ25は、切欠部234に配置されたホルダ本体251と、ホルダ本体251に設けられ、鍔突出部232aに固定されたホルダ固定部252とを有している。
ホルダ本体251は、一対の嵌合溝235間に配置された押さえ部253と、押さえ部253の幅方向両端部に設けられ、各嵌合溝235にそれぞれ摺動可能に嵌る一対の嵌合壁部254と、押さえ部253に設けられ、切欠部234の開放部に配置された一対の蓋部255とを有している。ホルダ25のうち、押さえ部253を除く部分の構成は、実施の形態1でのホルダ25の構成と同様である。
押さえ部253は、切欠部234の深さ方向及び幅方向に沿って配置された受け板257と、蓋部255から離して受け板257に設けられ、温度センサ24に接触する突起である弾性部259とを有している。
受け板257の蓋部255に近い部分には、蓋部255に近づくにつれて温度センサ24に向かって傾斜する受け板傾斜面257aが形成されている。温度センサ24の上部(蓋部255に近い部分)は、固定子コイル22から離れないように受け板傾斜面257aによって押さえられている。
弾性部259を構成する材料は、金属とされている。この例では、弾性部259が金属製の板ばねとされている。また、弾性部259は、受け板傾斜面257aを避けて受け板257に設けられている。さらに、弾性部259は、受け板257に取り付けられた一対の取付部259aと、一対の取付部259a間に設けられ、温度センサ24側に突出して湾曲している湾曲部259bとを有している。湾曲部259bは、受け板257と温度センサ24との間で弾性変形されることにより、固定子コイル22に温度センサ24を押し付ける弾性復元力を発生する。他の構成は、実施の形態1と同様である。
このような固定子2、及び固定子2を含む回転電機1では、蓋部255に近づくにつれて温度センサ24に向かって傾斜する受け板傾斜面257aが受け板257に形成されているので、固定子コイル22から離れないように受け板傾斜面257aによって温度センサ24を押さえることができ、固定子コイル22に対する温度センサ24の接触状態をさらに安定させることができる。
また、弾性部259を構成する材料が金属であるので、弾性部259の耐久性を向上させることができ、弾性部259の弾性復元力の低下を長期にわたって抑制することができる。これにより、ホルダ25の長寿命化を図ることができ、温度センサ24が固定子コイル22に安定して接触している状態を長期にわたって確保することができる。
なお、上記の例では、受け板257に受け板傾斜面257aが形成されているが、受け板傾斜面257aはなくてもよい。また、上記の例の受け板傾斜面257aを実施の形態1の受け板257に形成してもよい。
また、各上記実施の形態では、ホルダ固定部252が鍔突出部232aの外周面に溶着されているが、鍔突出部232aに対するホルダ固定部252の固定方法は、これに限定されない。例えば、鍔突出部232aにホルダ固定部252を接着剤又はねじにより固定してもよい。
また、各上記実施の形態では、ホルダ25がホルダ固定部252を有しているが、例えばホルダ本体251を切欠部234の内側面に接着剤で直接固定すること等によって、ホルダ本体251が切欠部234に保持されるのであれば、ホルダ固定部252はなくてもよい。
また、各上記実施の形態では、ホルダ本体251の一部が摺動可能に嵌る一対の嵌合溝235が切欠部234の内側面に設けられているが、ホルダ本体251が切欠部234に保持されるのであれば、一対の嵌合溝235はなくてもよい。
また、各上記実施の形態では、ホルダ本体251の一部が摺動可能に嵌る嵌合部として嵌合溝235が切欠部234の内側面に設けられているが、一対の嵌合突起を嵌合部として切欠部234の内側面に設けてもよい。この場合、一対の嵌合突起は、切欠部234の幅方向について互いに対向し、かつ切欠部234の深さ方向に沿って設けられる。また、この場合、各嵌合突起に摺動可能に嵌る凹部がホルダ本体251の各嵌合壁部254に設けられる。
また、各上記実施の形態では、固定子コイル22と温度センサ24との間の隙間に充填されている充填材222が、固定子コイル22に供給されるニカワと異なっているが、固定子コイル22に供給されるニカワを、固定子コイル22と温度センサ24との間の隙間にまで及ばして、充填材222としてニカワを用いてもよい。
また、各上記実施の形態では、筒状の固定子2の内側に回転子3が配置されたインナロータ型の回転電機1にこの発明が適用されているが、筒状の回転子の内側に固定子が配置されたアウタロータ型の回転電機にこの発明を適用してもよい。この場合、固定子コアの各ティースは、コアバックから筒状の回転子に向けて径方向外側へ突出する。また、この場合、切欠部が設けられた第1の鍔部の鍔突出部は、第2の鍔部よりもコアバックに近い径方向内側に配置される。