JP2014240108A - インパクトレンチ - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載された従来のインパクトレンチは、スピンドルの回転の軸線に対して副ハンマの回転の軸線が振れるという、いわゆる「芯ぶれ回転」を防止する構造として、第一の形態及び第二の形態の2つの形態を開示している。
また、従来の第二の形態は、スピンドル用の玉軸受と副ハンマ用の玉軸受とを、スペーサとしての1つの円筒型のブッシュで支持することにより、芯ぶれ回転を防止しようとしている(特許文献1の図5参照)。
(1) 副ハンマの底部の孔の内径をスピンドルの外径とほぼ等しくしたので、底部の孔とスピンドルの外周とが摺動することによって摩擦が生じ、副ハンマの回転抵抗が大きくなり打撃力が低下する要因となっていた。
摩擦による回転抵抗を少なくするには、副ハンマの底部の孔とスピンドルの外周との接触面積を小さくすればよいが、その場合には短期間で摺動部が焼きついたり摩耗したりするため、耐久性が低下するという問題があった。
(2) 副ハンマ及びスピンドルは、回転打撃力に耐えうるように、高強度の材質で構成する必要がある。
一方、焼きつきなどを生じにくくして耐久性を向上させるためには、潤滑性の良い材料で構成する必要がある。
しかし、潤滑性の良い材料は一般的に強度が低いため、耐久性と強度とを両立させることができなかった。
(3) 副ハンマの芯ぶれ回転を少なくするにはスピンドルと副ハンマとの隙間を小さくする必要があるが、隙間を小さくした場合には、回転打撃機構を構成する部品の加工上の公差や熱処理時の歪などによって、それらを組み合わせたときに部品相互の軸線が一致しないといういわゆる「センターずれ」が生じてしまう。
その場合、組み立てた時点において、既にスピンドルと副ハンマの軸支部分にラジアル荷重が加わり摩擦抵抗が増え、回転打撃力が低下したり、インパクトレンチの使用時には衝撃によりその軸支部分に増幅された荷重が加わることで、軸支部分の寿命を短くする要因となっていた。
また、スピンドルと副ハンマとの隙間を大きくしすぎると、副ハンマの芯ぶれ回転を防止できないという問題があった。
しかしこの場合、スピンドル及び副ハンマの外周を軸支するために、大きな内径の軸受が必要となり、標準サイズの軸受を用いるとその外径が副ハンマの外径よりも大きくなって、結果としてインパクトレンチの外径も大きくなるという問題がある。
また、スピンドル及び副ハンマをケースを介して保持しているために、組み合わせ時のセンターずれも生じやすくなってしまう。
前記副ハンマと前記スピンドルとの間に、前記スピンドルの回転の軸線に対してラジアル方向の荷重を受ける軸受機構を前記副ハンマ及び前記スピンドルのいずれとも別体で配設し、
前記スピンドルで前記副ハンマを軸支したものである。
前記副ハンマの内周と前記転がり軸受の外輪との間、又は、前記スピンドルの外周と前記転がり軸受の内輪との間のどちらか一方に隙間を形成するとともに、他方を隙間のない圧入構造としたものである。
前記副ハンマの内周と前記転がり軸受の外輪との間及び前記スピンドルの外周と前記転がり軸受の内輪との間に、それぞれ隙間を形成したものである。
前記転動体は、前記スピンドルの回転の軸線に対してラジアル方向の荷重及びアキシアル方向の荷重を受けるようにしたものである。
前記副ハンマの円筒部の内周面における前記第1の溝に対応する位置に、複数の第2の溝を形成し、
前記第1の溝と前記第2の溝とで形成される孔に棒状部材を嵌め込み、
前記副ハンマの外周に前記棒状部材の抜け止め機能をもつ止め輪を取付けたものである。
また、軸受機構に滑り軸受を選択した場合は、インパクトレンチの使用条件が、低負荷で長時間締付けの必要な軟体締付け(例えば、撓んだ鋼板をボルトで徐々に押さえつけていって、撓みを除去する締付け)には、高鉛青銅系の滑り軸受を使用し、高負荷で短時間締付けの必要な剛体締付け(例えば、硬いもの同士をボルトでしっかり締付け、大きな軸力を発生させる締付け)には、リン青銅系の滑り軸受を使用することでコストと耐久性のバランスが良くなる。
このように軸受を別体とすることで、耐久性や、コスト要求に応じた軸受を選択することができる。
また、スピンドルで副ハンマを軸支したから、主ハンマ、副ハンマ、及びスピンドルの3部品を組み合わせたときのセンターずれを、ケースを介して保持する場合に比べて少なくすることができる。
センターずれが少ないということは、副ハンマの芯ぶれ回転も生じにくくなり、その結果、主ハンマの軸線方向の移動が円滑となり、回転打撃力の低下を防ぐ効果がある。
さらに、スピンドルで副ハンマを軸支したから、内外径が小さくかつ標準サイズの転がり軸受で構成が可能となり、流通性の問題を回避し、部品コストも低くすることができる。
なお、この隙間は、副ハンマが芯ぶれ回転を惹き起こされることによる主ハンマの軸線方向への円滑な往復動の支障とはならない範囲である。
さらに、転がり軸受は構造上、内輪と外輪の間に内部隙間があるので、組み合わせ時のセンターずれによるラジアル荷重を低減する効果がアップする。
また、上記、隙間と内部隙間は、緩衝効果もあり、インパクトレンチの使用時の衝撃によりラジアル荷重が加わっても、転がり軸受の寿命を延長させることができるのである。
すなわち、前記範囲の上限の前記隙間は、副ハンマが芯ぶれ回転を惹き起こされることによる前記主ハンマの軸線方向への円滑な往復動の支障とならない限度であり、前記範囲の下限の前記隙間は、副ハンマの内周と転がり軸受の外輪との間、又は、スピンドルの外周と転がり軸受の内輪との間で回転速度差を生じさせることが可能となり、軸受側が低速回転となることで軸受に加わる負荷を軽減できる限度である。
したがって、形成された前記隙間は、前記副ハンマとスピンドルとを組み合わせたときに生じるセンターずれによるラジアル荷重の緩衝作用を示して前記転がり軸受に加わるラジアル荷重を低減し、結果として前記転がり軸受の耐久性を向上させ、軸受寿命を延長させることができる範囲とするのである。
副ハンマの内周と転がり軸受の外輪との間及びスピンドルの外周と転がり軸受の内輪との間に、それぞれ隙間を形成することで、組み合わせ時のセンターずれにより転がり軸受の軸支部分に加わるラジアル荷重を低減することができるのである。
なお、これらの隙間は、副ハンマが芯ぶれ回転を惹き起こされることによる主ハンマの軸線方向への円滑な往復動の支障とはならない範囲である。
また、上記、隙間と内部隙間は、緩衝効果もあり、インパクトレンチの使用時の衝撃によりラジアル荷重が加わっても、転がり軸受の寿命を延長させることができるのである。
すなわち、前記範囲の上限の前記隙間は、副ハンマが芯ぶれ回転を惹き起こされることによる前記主ハンマの軸線方向への円滑な往復動の支障とならない限度であり、前記範囲の下限の前記隙間は、副ハンマの内周と転がり軸受の外輪との間、及び、スピンドルの外周と転がり軸受の内輪との間で回転速度差を生じさせることが可能となり、軸受側が低速回転となることで軸受に加わる負荷を軽減できる限度である。
したがって、形成された前記隙間は、前記副ハンマとスピンドルとを組み合わせたときに生じるセンターずれによるラジアル荷重の緩衝作用を示して前記転がり軸受に加わるラジアル荷重を低減し、結果として前記転がり軸受の耐久性を向上させ、軸受寿命を延長させることができる範囲とするのである。
また、先に回転打撃機構を組み立てた後に、第1の溝と第2の溝の位置を目視して合わせられることで、棒状部材を簡単に嵌め込むことができるという組み立て上の容易さを享受しつつ、棒状部材を嵌めこんだのちに止め輪を取り付けることで、インパクトレンチの使用中にも棒状部材の位置がずれたり抜けたりすることを防ぐことができるのである。
なお、請求項8に係る本発明では、後述する実施の形態4が有する以下の不具合が生じない。
つまり、実施の形態4においては、副ハンマの前端側から主ハンマを挿入して組み立てる時は、副ハンマの第2の溝は前端側に貫通していなければならない。
そして、アンビルの爪の外周面が副ハンマの円筒部の前端部の内周面に接しているため、アンビルの爪の外周面は、副ハンマの円筒部の前端部に形成された円弧部分との接触と、第2の溝が形成された部分での非接触とを繰り返さなければならず、円弧と溝との境目の稜線部で引っかかりが生じるため、副ハンマは円滑に回転することができない。
また、副ハンマの後端側から主ハンマを挿入して組み立てる時は、副ハンマの後端の内径は主ハンマの直径以上の大きさが必要となるため、副ハンマとスピンドルとの間に配設する軸受機構は大きな径のものを用いなければならず、部品コストが高くなってしまう。
請求項8に係る本発明ではそのような不具合が生じない。
図1〜図4は実施の形態1に係る図面、図5は実施の形態2に係る図面、図6は実施の形態3に係る図面、図7及び図8は実施の形態4に係る図面、図9は実施の形態5に係る図面、図10は実施の形態6に係る図面、図11は実施の形態7に係る図面、図12は実施の形態8に係る図面である。
本発明の実施の形態1に係るインパクトレンチについて図1〜図4に基づき説明する。
<インパクトレンチの全体概略構成>
図1において、1は、インパクトレンチであり、ハウジング11と、駆動部2と、動力伝達機構21と、スピンドル3と、主ハンマ4と、副ハンマ5と、アンビル6と、を備えている。以下、これら構成部品の構造及び機能を説明する。
前記前部ハウジング11bは前記後部ハウジング11aに複数本のビス(図示せず)により固定している。
また、後部ハウジング11aの下方は操作者が把持するグリップ11cとしており、グリップ11cの前部側に操作スイッチ11dを設け、グリップ11cの下端に前記電動モータ(駆動部)2の電源としてのバッテリ(図示せず)を設けている。
前記駆動部2の駆動軸2aの駆動力は、前記動力伝達機構21を介して前記スピンドル3に伝達するようにしている。
前記動力伝達機構21は、前記駆動軸2aに固定した太陽歯車22と、太陽歯車22に噛み合う3個の遊星歯車23と、遊星歯車23に噛み合う内歯車24とから構成している。
前記内歯車24は、図1に示すように、前記後部ハウジング11aの内面に固定している。
前記スピンドル3は、図1に示すように、前記張出部31の後端部31aの外周と、スペーサ12の前部12aの内周との間に玉軸受13を介して回転可能に支持している。
前記スペーサ12は、前部12aの外周を前記内歯車24の後部24aの内周に固定することにより、前記内歯車24を介して前記後部ハウジング11aに固定している。
前記スペーサ12には、前記円盤状と前記玉軸受13の外輪との間に座金14を設けている。
また、スピンドル3の前部側は円柱状に形成しており、その先端には、円柱状の小径の突起部32をスピンドル3の軸線と同軸に形成している。
前記スピンドル3の外周には、中心部に貫通孔を形成した鋼製の前記主ハンマ4を嵌合している。
主ハンマ4の前端部には、前記アンビル6側に向けて突出する一対の爪41を設けている。
前記回転打撃機構は、前記スピンドル3の外周面に形成した2本の第一カム溝33、前記主ハンマ4の前記貫通孔の内周面に形成した2本の第二カム溝42及び第一カム溝33と第二カム溝42に挟まれるように配置した2個の鋼球71を備えている。
さらに、前記回転打撃機構は、前記副ハンマ5と、前記アンビル6と、前記主ハンマ4を前記アンビル6の方向に付勢するばね72とを備えている。なお、回転打撃機構の動作については、図3及び図4に基づいて後述する。
前記主ハンマ4の外周側には、図1に示すように、前記主ハンマ4が収容されるとともに前記スピンドル3が挿通されて前記主ハンマ4と一体となって回転する円筒部を有する鋼製の副ハンマ5を配置している。
副ハンマ5は、後端側に外径を小さくした小径段部51を形成し、小径段部51の後端内周を転がり軸受8の外輪81に圧入している。
前記副ハンマ5と前記主ハンマ4とが一体となって回転する一体回転機構を両ハンマ4、5間に備えている。
前記主ハンマ4と前記副ハンマ5とが一体となって回転する一体回転機構は、図2に示すように、主ハンマ4の外周面に、断面が半円形で前記スピンドル3の回転の軸線と平行な4つの第1の溝43を形成している。
また、副ハンマ5の円筒部の内周面における前記第1の溝43に対応する位置に、断面が半円形で4つの第2の溝53を形成している。
前記C型止め輪75の取付は、インパクトレンチ1の組立中に円柱部材74が不用意に抜けることがなく、組立作業をやりやすくするためである。
そして、主ハンマ4は、円柱部材74をガイドとして前後方向に移動することができるのである。ただし、図1には、円柱部材74及び溝43、53を下方にのみ図示し、上方の図示を省略している。
つまり、実施の形態4においては、副ハンマ5aの前端側から主ハンマ4aを挿入して組み立てる時は、副ハンマ5aの第2の溝53は前端側に貫通していなければならない。
また、副ハンマ5aの後端側から主ハンマを挿入して組み立てる時は、副ハンマ5aの後端の内径は主ハンマ4aの直径以上の大きさが必要となるため、副ハンマ5aとスピンドル3aとの間に配設する軸受機構としての転がり軸受は大きな径のものを用いなければならず、部品コストが高くなってしまう。
主ハンマ4の後部側に形成した環状の凹部44と、副ハンマ5の小径段部51の後端内周を圧入した前記転がり軸受8の外輪81との間に、外輪81側には座金73を介して前記ばね72を介装し、ばね72により主ハンマ4をアンビル6に向けて付勢している。
主ハンマ4と副ハンマ5及びばね72は、スピンドル3の軸線を中心として一体となって回転する。
したがって、ばねの後端を例えばスピンドルで受ける場合に必要となる捩じれ防止用の座金やボールが不要となり、回転打撃機構の構成を簡素化している。
前記アンビル6は、鋼製であり、図1に示すように、鋼製もしくは黄銅製の滑り軸受63を介して前記前部ハウジング11bに回転自在に支持している。
アンビル6の先端には、6角ボルトの頭部や6角ナットに装着するソケット体を取り付けるための、断面が四角形状の前記工具装着部61を設けている。
一対の爪64は、図2に示すように、それぞれ扇形に形成し、その外周面は、副ハンマ5の円筒部の前端部の内周面に接している。
なお、アンビル6の爪64及び主ハンマ4の爪41は必ずしも一対(2個)である必要はなく、それぞれの爪の数が等しければ、アンビル6及び主ハンマ4の円周方向に等間隔に3個以上設けてもよい。
また、フランジ65の外周側には、副ハンマ5の円筒部の前部開放端を覆うようにリング状の前記カバー52を配設し、カバー52と前記滑り軸受63との間にはOリング54を配設して、カバー52と副ハンマ5の間に隙間が生じないようにしている。
ここで、本発明の実施の形態1の特徴である、前記転がり軸受8の構成について説明する。
転がり軸受8は、深溝玉軸受であり、ラジアル玉軸受に分類され、内輪82、前記外輪81、転動体としての玉83及び保持器(図示せず)を有する。
そして、前記副ハンマ5の小径段部51の後端内周を前記転がり軸受8の外輪81に圧入し、前記スピンドル3の外周と前記転がり軸受8の内輪82との間に隙間84を形成している。
例えば、内輪82の内径を30mmとすれば、隙間84を0.6mm〜0.06mmの範囲に設定するのである。
そして、インパクトレンチの使用時においても、この隙間84によってラジアル荷重を低減することができ、転がり軸受8の寿命を延長させることができる。
また、上記範囲の下限の隙間84は、スピンドル3の外周と転がり軸受8の内輪82との間で回転速度差を生じさせることが可能となり、軸受側が低速回転となることで軸受に加わる負荷を軽減できる限度である。
次に、前述の図1、図3及び図4を参照してインパクトレンチ1における回転打撃機構の動作を説明する。
図4に、主ハンマ4とアンビル6の外周面を円周方向に展開して平面にした模式的な状態を示す。図4は、主ハンマ4の爪41とアンビル6の爪64との係合状態を説明する際に用いる。
スピンドル3の回転力は、スピンドル3の第一カム溝33と主ハンマ4の第二カム溝42の間に嵌め込まれた鋼球71を介して主ハンマ4に伝達される。
また、図4(a)に、同一時点の主ハンマ4の爪41とアンビル6の爪64との係合状態を示す。
また、ばね72によって、主ハンマ4には直進方向の付勢力Bが矢印で示す方向に加わっている。なお、主ハンマ4とアンビル6との間に若干の隙間があるが、これは緩衝部材45によって生じた隙間である。
アンビル6の回転によって、アンビル6の工具装着部61に取付けられたソケット体(図示せず)が回転し、ボルトやナットに回転力を与えて初期の締め付けが行われる。
そして、ばね72の付勢力Bに打ち勝って、鋼球71が第一カム溝33及び第二カム溝42の斜面に沿って矢印Fで示す方向に移動しながら、主ハンマ4はX方向に移動する。
主ハンマ4の爪41がアンビル6の爪64から外れると、押し縮められたばね72の付勢力Bが開放されることによって、主ハンマ4は高速で、Yとは逆方向に回転しながらXとは逆方向に前進する。
その後、反動により主ハンマ4の爪41は、軌跡Gとは逆方向に移動するが、最終的には、回転力A及び付勢力Bが作用して図4(a)に示す状態に戻る。
なお、以上はボルトやナットを締め付ける際の動作について説明したが、締め付けられたボルトやナットを緩める際にも、回転打撃機構によって締め付け時とほぼ同様の動作が行われる。
次に、回転打撃における副ハンマ5の作用について、主ハンマしかないインパクトレンチと比較して説明する。
主ハンマ4の爪41とアンビル6の爪64との係合が外れると、ばね72が圧縮状態から開放され、ばね72に蓄積されたエネルギーが主ハンマ4及び副ハンマ5の運動エネルギーとして放出される。
そして、主ハンマ4の爪41がアンビル6の爪64に衝突することにより、アンビル6に回転方向の衝撃が加わる。また主ハンマ4の前端面がアンビル6の後端面に衝突することにより、軸線方向に衝撃が加わる。
これらの振動は作業者に疲労を与え、作業能率が低下したり、手に痺れが生じる原因となるため、できるだけ小さい方がよい。
その一方で、主ハンマ4による軸線方向に加わる衝撃はボルトやナットの締め付けには寄与しない。
1つのハンマを用いてアンビル6に回転打撃を加える場合、軸線方向の衝撃を小さくするためにはハンマの質量を減らす必要がある。
本発明では、スピンドル3に嵌合された主ハンマ4とは別に、主ハンマ4と一体となって回転するが、スピンドル3の軸線方向には移動しない副ハンマ5を用いることによって、上述した問題の解決を図っている。
このようなハンマ構成においては、ばね72が圧縮状態から開放されることによってもたらされるアンビル6の回転方向に加わる衝撃力は、ハンマの慣性モーメント、すなわち主ハンマ4及び副ハンマ5の合計の慣性モーメントに比例する。
したがって、回転方向の衝撃力にのみ寄与する副ハンマ5の質量を、主ハンマ4の質量と比較してできるだけ大きくすることにより、主ハンマ4による軸線方向に加わる衝撃力を小さくすることができる。
すなわち、本発明に用いた円筒部を有する副ハンマ5は質量の大半が半径の大きい部分に集中するため、回転の中心部に質量が集中する円柱型の副ハンマを採用する場合に比べて慣性モーメントが大きくなり、副ハンマによる衝撃力が増大する。
次に、本発明の実施の形態2を図5に基づいて説明する。
実施の形態2は、前記副ハンマの小径段部の後端内周と前記転がり軸受の外輪との間及び前記スピンドルの外周と前記転がり軸受の内輪との間に、それぞれ隙間を形成した点と、前記副ハンマにおける前記転がり軸受を配設する部分の形状を変更した点で、以上の実施の形態1とは相違している。
<転がり軸受の構成と隙間の作用>
この実施の形態2では、図5に示すように、前記副ハンマ5の小径段部51の後端内周と前記転がり軸受8の外輪81との間及び前記スピンドル3の外周と前記転がり軸受8の内輪82との間に、それぞれ隙間84a、84bを形成するのである。
なお、図5における前記隙間84a、84bについては、わかり易くするために、隙間の寸法を誇張して表している。
また、実施の形態2では、前記転がり軸受8の外輪81の前方端面側に突出するように、前記副ハンマ5に円環状の鍔部55を形成して前記転がり軸受8の軸線方向の位置決めとしている。
次に、本発明の実施の形態3を図6に基づいて説明する。
実施の形態3は、副ハンマの後端内周とスピンドルの外周との間の転がり軸受の配設構成、主ハンマをアンビルに向けて付勢するばねの構成、インパクトレンチの全体の軸線方向寸法を小さくしたことなどが、実施の形態1とは相違している。
以下、実施の形態1と同様な構成については、同一の符号を付して説明を省略ないし簡略にし、実施の形態1と相違する構成について詳細に説明する。
インパクトレンチ1における主ハンマ4の外周側には、図6に示すように、前記主ハンマ4が収容されるとともにスピンドル3aが挿通されて前記主ハンマ4と一体となって回転する円筒部を有する鋼製の副ハンマ5aを配置している。
副ハンマ5aは、前端部外径を先細状に縮径して内周をアンビル6の一対の爪64の外周面と接している。
また、スピンドル3aは、張出部34の後端部34aの外周と、第一スペーサ15の後部15aの内周との間に玉軸受13を介して回転可能に支持している。
なお、16は第一スペーサ15の後部15aと駆動部2との間に設けた第二スペーサである。
主ハンマ4の後部側に形成した環状の凹部44と、前記スピンドル3aの張出部34の前端部34bにおける環状の凹部34cとの間に、ばね72aを介装し、ばね72aにより主ハンマ4をアンビル6に向けて付勢している。
前記ばね72aは、後部から前部にかけてつる巻きが末広がり状であり、前記主ハンマ4の環状の凹部44に複数個の鋼球76及び座金77を介してつる巻きの大径側を設けており、前記スピンドル3aの環状の凹部34cにつる巻きの小径側を設けている。
また、ばね72aのアキシアル方向の力は、スピンドル3aと主ハンマ4とに加わるが、スピンドル3aの第一カム溝33と主ハンマ4の第二カム溝42の間に嵌め込まれた鋼球71を介して、スピンドル3aと主ハンマ4とで釣りあっている。
つまり、転がり軸受8aの外輪81a及び内輪82aと副ハンマ5a及びスピンドル3aとを圧入構造としているため、組み合わせ時のセンターずれに基づくラジアル荷重が低減されることなく軸受に加わるが、アキシアル荷重が加わらないため、両方の荷重の合成荷重としての動等価ラジアル荷重が小さくなり、軸受の耐久性を確保できるのである。
すなわち、主ハンマ4の第1の溝43と副ハンマ5aの前記第2の溝53とで形成される孔に円柱部材74を嵌め込むことにより、主ハンマ4と副ハンマ5aとは、前記スピンドル3aの回転の軸線を中心として一体となって回転するのである。
次に、本発明の実施の形態4を図7及び図8に基づいて説明する。
実施の形態4は、実施の形態3とは、主ハンマと副ハンマとが一体となって回転する一体回転機構が相違している。
以下、実施の形態3と同様な構成については、同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態3と相違する上記一体回転機構の構成について詳細に説明する。
主ハンマ4aには、図7及び図8に示すように、その外周に軸線方向の4つの断面半円状の突条46を一体に形成している。ただし、図7には、突条46及び第2の溝53を上方にのみ図示し、下方の図示を省略している。
そして、副ハンマ5aには、実施の形態3と同様に、第2の溝53を形成しており、この第2の溝53は、前記主ハンマ4aの突条46と係合するのである。
なお、この実施の形態4における一体回転機構の構成は、実施の形態1〜実施の形態3における一体回転機構の構成に比べて部品点数を削減できるが、実施の形態1において上述した下記の不具合が生ずる(段落0046及び0047参照)。
そして、アンビル6の爪64の外周面が副ハンマ5aの円筒部の前端部の内周面に接しているため、アンビル6の爪64の外周面は、副ハンマ5aの円筒部の前端部に形成された円弧部分との接触と、第2の溝53が形成された部分での非接触とを繰り返さなければならず、円弧と溝との境目の稜線部で引っかかりが生じるため、副ハンマ5aは円滑に回転することができない。
次に、本発明の実施の形態5を図9に基づいて説明する。
実施の形態5は、軸受機構として複数の球状の転動体とした点、前記転動体を配設する部分の副ハンマ及びスピンドルの構成を変更した点と、前記主ハンマを前記アンビルの方向に付勢するばねの配設構成を変更した点で、以上の実施の形態1とは相違している。
<球状の転動体による軸受機構の構成>
副ハンマ5bは、後端側に外径を小さくした小径段部51を形成し、小径段部51の後端に内方に突出する環状のフランジ56を形成している。
そして、両方の前記凹部56a、31bで複数の球状の転動体91を挟持している。
前記転動体91は環状の凹部56a、31bの全周にわたって若干の間隙を残して多数の転動体91設け、転動体91が自在に転動できるようにしている。
前記ばね72は主ハンマ4を付勢する反力により、前記副ハンマ5bのフランジ56を前記アンビル6と逆方向に付勢する。
前記球状の転動体91は鋼製、セラミック製、エンジニアプラスチック製等を用いることができる。
次に、本発明の実施の形態6を図10に基づいて説明する。
実施の形態6は、実施の形態5と同様に、軸受機構として複数の球状の転動体を用いながら、転動体を副ハンマとスピンドルとの間に配設する構成が実施の形態5の構成と相違している。
<球状の転動体による軸受機構の構成>
副ハンマ5cは、後端側に外径を小さくした小径段部51を形成し、小径段部51の後端に、内方に突出するとともに内端の後方隅部が略45度の角度の傾斜面とした環状のフランジ57を形成している。
そして、両方の前記凹部57a、31cで複数の球状の転動体91を挟持している。
また、実施の形態5と同様に、前記主ハンマ4を前記アンビル6の方向に付勢するばね72を前記副ハンマ5cのフランジ57の前側端面と前記主ハンマ4の後部側に形成した環状の凹部44との間に配設している。
両方の前記環状の凹部57a、31cで狭持された前記転動体91は、副ハンマ5cのラジアル方向の荷重及びばね72のアキシアル方向の荷重を受けるのである。
次に、本発明の実施の形態7を図11に基づいて説明する。
実施の形態7は、軸受機構として内輪なしの針状ころ軸受を用いた点と、アキシアル荷重を受ける鋼球を備えている点とで、実施の形態5とは相違している。
<針状ころ軸受による軸受機構の構成>
副ハンマ5dは、後端側に外径を小さくした小径段部51を形成し、小径段部51の後端に内方に突出する環状のフランジ58を形成している。
また、針状ころ軸受92の針状ころ92aはスピンドル3dの外周を直接軌道面としており、この針状ころ軸受92には内輪を備えていないのである。
そこで、副ハンマ5dのフランジ58の後側端面には、環状の凹部58aを形成して、この凹部58aとスピンドル3dの前側端面との間に、複数の鋼球93を設けて、アキシアル方向の荷重を受けるようにしている。
次に、本発明の実施の形態8を図12に基づいて説明する。
実施の形態8は、軸受機構として滑り軸受を用いた点と、副ハンマ側のばねの配設の構成を変更している点とで、実施の形態7とは相違している。
<滑り軸受による軸受機構の構成>
副ハンマ5eは、後端側に外径を小さくした小径段部51を形成し、小径段部51の後端に内方に突出する環状のフランジ59を形成している。
また、副ハンマ5eのフランジ59の前側端面には環状の凹部59aを形成している。
この滑り軸受94は、副ハンマ5eのラジアル方向の荷重を受け、ばね72のアキシアル方向の荷重を受けることができないのである。
なお、滑り軸受94の仕様については、インパクトレンチ1の使用条件が、低負荷で長時間締付けの必要な軟体締付け(例えば、撓んだ鋼板をボルトで徐々に押さえつけていって、撓みを除去する締付け)では、高鉛青銅系の滑り軸受とするのである。
以上の実施の形態1では、前記副ハンマ5の小径段部51の後端内周を前記転がり軸受8の外輪81に圧入し、前記スピンドル3の外周と前記転がり軸受8の内輪82との間に隙間84を形成している。
この実施の形態1の変形例として、前記スピンドル3の外周を前記転がり軸受8の内輪82に圧入し、前記副ハンマ5の小径段部51の後端内周と前記転がり軸受8の外輪81との間に隙間を形成してもよい。
変形例の隙間の作用についても、実施の形態1と同様に、転がり軸受8に加わるラジアル荷重を低減し、結果として転がり軸受8の耐久性を向上させ、軸受寿命を延長させることができるのである。
また、以上の実施の形態1及び2では、副ハンマ5の後端側外周の前記小径段部51に前記円柱部材74の抜け止め機能をもつC型止め輪75を取付けたが、C型に限らず、各種の止め輪を採用することができる。
さらに、止め輪の取付は小径段部を形成することなく、副ハンマの後端側外周であればよい。
以上の実施の形態1、2、5〜8では、副ハンマ5、5b、5c、5d、5eに小径段部51を形成したが、小径段部を形成しなくてもよい。
以上の実施の形態1〜3、5〜8では、前記円柱部材74を用いたが、円柱部材に限らず、断面多角形などの棒状部材を採用することができる。
以上の実施の形態1〜4では、転がり軸受8、8aとして、深溝玉軸受の場合を説明したが、これに変えて、円すいころ軸受、円筒ころ軸受としてもよく、ラジアル玉軸受に分類されるアンギュラ玉軸受としてもよい。
以上の実施の形態5では、副ハンマ5bのフランジ56の後側端面に環状の凹部56aを形成し、前記フランジ56の後側端面と対向するスピンドル3bの張出部31の前側端面に環状の凹部31bを形成したが、凹部は必ずしも両方に設ける必要はない。
すなわち、どちらか一方に設けるときや、いずれにも設けないときでも、前記複数の球状の転動体91が、前記スピンドル3bの回転の軸線に対してラジアル方向の荷重及びアキシアル方向の荷重を受けるようにした場合は、転動体91にはばね72による付勢力がアキシアル方向の荷重となって予圧として加わるため、スピンドル3bの回転の軸線に対するラジアル方向の副ハンマ5bの移動を規制することが可能となって、副ハンマ5bの芯ぶれ回転が惹き起こされるのを防ぐことができるのである。
以上の実施の形態5及び6では、スピンドル3b、3cに環状の凹部31b、31c及び副ハンマ5b、5cに環状の凹部56a、57aをそれぞれ形成したが、これらの環状の凹部に変えて、スピンドル3b、3c側又は副ハンマ5b、5c側のいずれか一方を独立した3箇所以上の凹部としてもよい。
なお、この変形例の場合、独立した凹部は球面状の一部分からなるものでもよく、その他、円錐形の穴からなる「皿モミ」でもよい。
2 駆動部(電動モータ)
3、3a、3b、3c、3d、3e スピンドル
31b、31c 凹部
4、4a 主ハンマ
43 第1の溝
5、5a、5b、5c、5d、5e 副ハンマ
53 第2の溝
56a、57a 凹部
6 アンビル
74 円柱部材(棒状部材)
75 C型止め輪(止め輪)
8、8a 転がり軸受
81、81a 外輪
82、82a 内輪
84、84a、84b 隙間
91 球状の転動体
Claims (8)
- 駆動部と、前記駆動部によって回転されるスピンドルと、前記スピンドルの回転の軸線方向の前方に配置されたアンビルと、前記スピンドルの回転の軸線を中心に回転可能かつ前記軸線方向に移動可能な主ハンマと、前記主ハンマが収容されるとともに前記スピンドルが挿通されて前記主ハンマと一体となって回転する円筒部を有する副ハンマと、前記主ハンマを前記アンビルに衝撃的に係合させて前記アンビルを軸線回りに回転させる回転打撃機構とを備えたインパクトレンチにおいて、
前記副ハンマと前記スピンドルとの間に、前記スピンドルの回転の軸線に対してラジアル方向の荷重を受ける軸受機構を前記副ハンマ及び前記スピンドルのいずれとも別体で配設し、
前記スピンドルで前記副ハンマを軸支したことを特徴とするインパクトレンチ。 - 前記軸受機構は、内輪及び外輪を有する転がり軸受であり、
前記副ハンマの内周と前記転がり軸受の外輪との間、又は、前記スピンドルの外周と前記転がり軸受の内輪との間のどちらか一方に隙間を形成するとともに、他方を隙間のない圧入構造としたことを特徴とする請求項1に記載のインパクトレンチ。 - 前記隙間を、前記転がり軸受の内輪の内径の2.0%〜0.2%としたことを特徴とする請求項2に記載のインパクトレンチ。
- 前記軸受機構は、内輪及び外輪を有する転がり軸受であり、
前記副ハンマの内周と前記転がり軸受の外輪との間及び前記スピンドルの外周と前記転がり軸受の内輪との間に、それぞれ隙間を形成したことを特徴とする請求項1に記載のインパクトレンチ。 - 両方の前記隙間の合計を、前記転がり軸受の内輪の内径の2.0%〜0.2%としたことを特徴とする請求項4に記載のインパクトレンチ。
- 前記軸受機構は、複数の球状の転動体であり、
前記転動体は、前記スピンドルの回転の軸線に対してラジアル方向の荷重及びアキシアル方向の荷重を受けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のインパクトレンチ。 - 前記副ハンマと前記スピンドルとの対向するそれぞれの端面に、凹部を形成し、前記両方の凹部で前記転動体を挟持したことを特徴とする請求項6に記載のインパクトレンチ。
- 前記主ハンマの外周面に、前記スピンドルの回転の軸線と平行な複数の第1の溝を形成し、
前記副ハンマの円筒部の内周面における前記第1の溝に対応する位置に、複数の第2の溝を形成し、
前記第1の溝と前記第2の溝とで形成される孔に棒状部材を嵌め込み、
前記副ハンマの外周に前記棒状部材の抜け止め機能をもつ止め輪を取付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインパクトレンチ。
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