以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
インパクト工具1は、モータ6と、モータ6が発生する回転力により回転するスピンドル8とを備える。実施形態において、スピンドル8の回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、回転方向又は周方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
実施形態において、回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向と前後方向とは一致する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。
また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
[第1実施形態]
<インパクト工具の概要>
図1は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す縦断面図である。図3は、本実施形態に係るインパクト工具1の一部を拡大した縦断面図である。図4は、本実施形態に係るインパクト工具1の一部を拡大した横断面図である。インパクト工具1は、打撃機構9及びアンビル10を有するインパクトドライバである。
図1、図2、図3、及び図4に示すように、インパクト工具1は、ハウジング2と、リヤケース3と、ハンマケース4と、バッテリ装着部5と、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、工具保持機構11と、ファン12と、コントローラ13と、トリガスイッチ14と、正逆切換レバー15と、操作パネル16と、モード切換スイッチ17と、ライト18とを備える。
ハウジング2は、合成樹脂製である。本実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。
ハウジング2は、モータ収容部21Aと、ハンマケース被覆部21Bと、モータ収容部21Aの下方に配置されるグリップ部22と、グリップ部22の下方に配置されるコントローラ収容部23とを有する。
モータ収容部21Aは、筒状である。モータ収容部21Aは、モータ6の少なくとも一部を収容する。
ハンマケース被覆部21Bは、ハンマケース4を覆うように配置される。ハンマケース被覆部21Bは、モータ収容部21Aの前方に配置される。
グリップ部22は、ハンマケース被覆部21Bから下方に突出する。トリガスイッチ14は、グリップ部22の上部に設けられる。グリップ部22は、作業者に握られる。
コントローラ収容部23は、グリップ部22の下端部に接続される。コントローラ収容部23は、コントローラ13を収容する。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、コントローラ収容部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
リヤケース3は、合成樹脂製である。リヤケース3は、モータ収容部21Aの後部に接続される。リヤケース3は、モータ収容部21Aの後部の開口を覆うように配置される。リヤケース3は、ねじ2Tによりモータ収容部21Aに固定される。リヤケース3は、ファン12の少なくとも一部を収容する。
モータ収容部21Aは、吸気口19を有する。また、モータ収容部21Aは、第1排気口20Aを有する。第1排気口20Aは、モータ収容部21Aの後部に形成される。リヤケース3は、第2排気口20Bを有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介して、ハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、第1排気口20Aを通過した後、第2排気口20Bを通過する。ハウジング2の内部空間の空気は、第1排気口20A及び第2排気口20Bを介して、ハウジング2の外部空間に流出する。
ハンマケース4は、金属製である。本実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4の前部の内径は、ハンマケース4の後部の内径よりも小さい。ハンマケース4は、モータ収容部21Aの前方に配置される。ハンマケース4の後部及び中間部は、ハンマケース被覆部21Bで覆われる。ハンマケース4の前部は、ハンマケースカバー4Cで覆われる。ハンマケース4の後部にベアリングリテーナ24が接続される。ベアリングリテーナ24の少なくとも一部は、ハンマケース4の内側に配置される。
ハンマケース4は、減速機構7、スピンドル8、打撃機構9、及びアンビル10の少なくとも一部を収容する。減速機構7の少なくとも一部は、ベアリングリテーナ24の内側に配置される。
バッテリ装着部5は、コントローラ収容部23の下部に設けられる。バッテリパック25は、バッテリ装着部5に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部5に着脱可能である。バッテリパック25は、二次電池を含む。本実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部5に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクト工具1に電力を供給可能である。モータ6は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。コントローラ13は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて作動する。
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ステータ26の内側に配置されるロータ27とを有する。
ステータ26は、ステータコア28と、ステータコア28の前部に設けられる前インシュレータ29と、ステータコア28の後部に設けられる後インシュレータ30と、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28に装着される複数のコイル31とを有する。
ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。前インシュレータ29及び後インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。前インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。後インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介して、ティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前インシュレータ29及び後インシュレータ30により電気的に絶縁される。
ロータ27は、ロータ27の回転軸を中心に回転する。ロータ27の回転軸とスピンドル8の回転軸AXとは一致する。ロータ27は、ロータシャフト32と、ロータシャフト32の周囲に配置されるロータコア33と、ロータコア33の周囲に配置される永久磁石34と、センサ用永久磁石35を有する。ロータシャフト32は、前後方向に延伸する。ロータシャフト32に、ロータコア33が固定される。ロータコア33は、円筒状である。ロータコア33は、積層された複数の鋼板を含む。なお、ロータシャフト32とロータコア33とは単一部材でもよい。永久磁石34は、円筒状である。永久磁石34は、第1極性の第1永久磁石と、第2極性の第2永久磁石とを含む。第1永久磁石と第2永久磁石とが周方向に交互に配置されることにより、円筒状の永久磁石34が形成される。センサ用永久磁石35は、ロータコア33及び永久磁石34の前方に配置される。樹脂スリーブ36の少なくとも一部がセンサ用永久磁石35の内側に配置される。樹脂スリーブ36は、円筒状である。樹脂スリーブ36は、ロータシャフト32の前部に装着される。
前インシュレータ29に、センサ基板37及びコイル端子38が取り付けられる。センサ基板37及びコイル端子38は、ねじ29Sにより前インシュレータ29に固定される。センサ基板37は、円環状の回路基板と、回路基板に支持される回転検出素子とを有する。回転検出素子は、センサ用永久磁石35の位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。コイル端子38は、複数のコイル31とコントローラ13からの3本の電源線とを接続する。
ロータシャフト32は、前軸受39及び後軸受40のそれぞれに回転可能に支持される。前軸受39は、ベアリングリテーナ24に保持される。後軸受40は、リヤケース3に保持される。前軸受39は、ロータシャフト32の前部を支持する。後軸受40は、ロータシャフト32の後端部を支持する。ロータシャフト32の前端部は、ベアリングリテーナ24の開口を介して、ハンマケース4の内部空間に配置される。
ロータシャフト32の前端部にピニオンギヤ41が設けられる。ロータシャフト32は、ピニオンギヤ41を介して、減速機構7に連結される。
減速機構7は、モータ6の前方に配置される。減速機構7は、ロータシャフト32とスピンドル8とを連結する。減速機構7は、モータ6が発生した回転力をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータシャフト32の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。本実施形態において、プラネタリギヤ42は、3つ配置される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に固定される。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に対して回転しない。
モータ6の駆動によりロータシャフト32が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト32の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
スピンドル8は、モータ6よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7よりも前方に配置される。スピンドル8は、フランジ部44と、フランジ部44から前方に突出するロッド部45とを有する。ロッド部45は、前後方向に延伸する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してフランジ部44に回転可能に支持される。
スピンドル8は、モータ6が発生する回転力により回転する。スピンドル8は、回転軸AXを中心に回転する。スピンドル8は、後軸受46に回転可能に支持される。後軸受46は、ベアリングリテーナ24に保持される。後軸受46は、スピンドル8の後端部を支持する。
スピンドル8は、スピンドル8の周囲に潤滑油を供給する供給口101を有する。潤滑油は、グリス(grease)を含む。供給口101は、ロッド部45に設けられる。スピンドル8は、潤滑油が収容される内部空間103を有する。供給口101は、流路102を介して、内部空間103に結ばれる。スピンドル8の遠心力により、潤滑油は、供給口101からスピンドル8の周囲の少なくとも一部に供給される。
打撃機構9は、スピンドル8の回転に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。打撃機構9は、スピンドル8に前後方向及び回転方向のそれぞれに移動可能に支持されるハンマ47と、スピンドル8とハンマ47との間に配置されるボール48と、ハンマ47を常時前方に付勢する第1ばね91と、ハンマ47が基準位置よりも後方に移動した後にハンマ47を前方に付勢する第2ばね92と、第2ばね92の遊動を抑制する遊動抑制機構90とを有する。打撃機構9の詳細については後述する。
本実施形態において、供給口101からの潤滑油は、ロッド部45とハンマ47との間に供給される。ロッド部45とハンマ47との間に供給された潤滑油の少なくとも一部は、ボール48の表面に供給される。また、ロッド部45とハンマ47との間に供給された潤滑油の少なくとも一部は、第1ばね91の表面、第2ばね92の表面、及び遊動抑制機構90の表面に供給される。
アンビル10の少なくとも一部は、ハンマ47よりも前方に配置される。アンビル10は、モータ6から伝達された回転力により、アンビル10の回転軸を中心に回転する。アンビル10の回転軸とスピンドル8の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、スピンドル8と一緒に回転可能であり、スピンドル8と相対回転可能である。また、アンビル10は、ハンマ47と一緒に回転可能であり、ハンマ47と相対回転可能である。アンビル10は、一対の前軸受56に回転可能に支持される。一対の前軸受56は、ハンマケース4に保持される。また、アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。
アンビル10は、ロッド状のアンビルボディ10Aと、アンビルボディ10Aの後部に設けられるアンビル突起部10Bとを有する。アンビルボディ10Aは、先端工具が挿入される挿入孔55を有する。挿入孔55は、アンビルボディ10Aの前端部から後方に延伸するように設けられる。先端工具は、アンビルボディ10Aに装着される。アンビル突起部10Bは、2つ設けられる。アンビル突起部10Bは、アンビルボディ10Aの後部から径方向外側に突出する。
また、アンビル10は、ロッド部45の前端部が配置される孔58を有する。孔58は、アンビル10の後端部に設けられる。ロッド部45の前端部は、孔58に配置される。ロッド部45の前端部が孔58に配置されることにより、スピンドル8がアンビル10の軸受と機能し、アンビル10がスピンドル8の軸受として機能することができる。
工具保持機構11は、アンビル10の前部の周囲に配置される。工具保持機構11は、アンビル10の挿入孔55に挿入された先端工具を保持する。工具保持機構11は、先端工具を着脱可能である。
工具保持機構11は、ボール71と、リーフスプリング72と、スリーブ73と、コイルばね74と、位置決め部材75とを備える。
アンビル10は、ボール71を支持する支持凹部76を有する。支持凹部76は、アンビルボディ10Aの外面に形成される。支持凹部76は、軸方向においてアンビルボディ10Aの中間部に形成される。支持凹部76は、軸方向に長い。本実施形態において、支持凹部76は、アンビルボディ10Aに1つ形成される。
ボール71は、アンビル10に移動可能に支持される。ボール71は、アンビルボディ10Aに設けられた支持凹部76に配置される。ボール71は、1つの支持凹部76に1つ配置される。本実施形態において、工具保持機構11は、1つのボール71を有する。ボール71は、アンビルボディ10Aの周囲に1つ設けられる。
アンビルボディ10Aに、支持凹部76の内面と挿入孔55の内面とを結ぶ貫通孔76Mが形成される。ボール71の直径は、貫通孔76Mの直径よりも大きい。ボール71が支持凹部76に支持された状態で、ボール71の少なくとも一部は、貫通孔76Mを介して、挿入孔55の内側に配置される。すなわち、ボール71が支持凹部76に支持された状態で、ボール71の少なくとも一部は、貫通孔76Mから挿入孔55の内側に突出するように配置される。
ボール71は、挿入孔55に挿入された先端工具を固定することができる。ボール71は、支持凹部76の内面に接触した状態で、軸方向及び径方向のそれぞれに移動可能である。ボール71は、先端工具を固定する係合位置と先端工具の固定を解除する解除位置とに移動可能である。
上述のように、ボール71の少なくとも一部は、貫通孔76Mを介して、挿入孔55の内側に配置される。先端工具の側面に溝部が設けられる。ボール71の少なくとも一部が先端工具の溝部に配置されることにより、先端工具が固定される。ボール71の少なくとも一部が先端工具の溝部に配置されることにより、軸方向、径方向、及び周方向のそれぞれにおいて先端工具が位置決めされる。ボール71の係合位置は、ボール71の少なくとも一部が先端工具の溝部に配置される位置を含む。ボール71の解除位置は、ボール71が先端工具の溝部の外側に配置される位置を含む。
リーフスプリング72は、ボール71を係合位置に移動させる弾性力を発生する。リーフスプリング72は、アンビルボディ10Aの周囲に配置される。リーフスプリング72は、ボール71を前方に移動させる弾性力を発生する。
スリーブ73は、円筒状の部材である。スリーブ73は、アンビルボディ10Aの周囲に配置される。スリーブ73は、アンビルボディ10Aの周囲において軸方向に移動可能である。スリーブ73は、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することを阻止することができる。スリーブ73は、軸方向に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させることができる。
スリーブ73は、アンビルボディ10Aの周囲において、ボール71の径方向外側への移動を阻止する阻止位置と径方向外側への移動を許容する許容位置とに移動可能である。
スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが抑制される。すなわち、スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが阻止される。スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が維持される。
スリーブ73が許容位置に移動されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが許容される。スリーブ73は、許容位置に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させる。すなわち、スリーブ73が許容位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが許容される。スリーブ73が許容位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が解除可能になる。
コイルばね74は、スリーブ73が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。コイルばね74は、アンビルボディ10Aの周囲に配置される。阻止位置は、許容位置よりも後方に規定される。コイルばね74は、スリーブ73を後方に移動させる弾性力を発生する。
位置決め部材75は、アンビルボディ10Aの外面に固定されたリング状の部材である。位置決め部材75は、スリーブ73の後端部に対向可能な位置に固定される。位置決め部材75は、スリーブ73を阻止位置に位置決めする。コイルばね74から後方に移動する弾性力を付与されているスリーブ73は、位置決め部材75に接触することにより、阻止位置に位置決めされる。
スリーブ73は、円筒状のスリーブボディ73Aと、スリーブボディ73Aの内面から径方向内側に突出し、アンビルボディ10Aと接触可能な突起部73Bと、突起部73Bよりも後方に設けられアンビルボディ10Aに面する第1溝73Cと、突起部73Bよりも前方に設けられアンビルボディ10Aに面する第2溝73Dとを有する。突起部73Bは、アンビルボディ10Aのみならず、ボール71にも接触可能である。リーフスプリング72は、第1溝73Cの内側に配置される。コイルばね74は、第2溝73Dの内側に配置される。
突起部73Bは、リーフスプリング72よりも前方に配置される。突起部73Bは、スリーブボディ73Aの内面から径方向内側に延伸する。突起部73Bは、リング状である。
突起部73Bは、前方を向く前面と、後方を向く後面と、径方向内側を向く内面とを有する。突起部73Bの内面は、アンビルボディ10Aの外面に接触可能である。突起部73Bの内面は、ボール71に接触可能である。
アンビルボディ10Aにおいて、支持凹部76よりも前方にストップリング77が配置される。アンビルボディ10Aの外面において、支持凹部76よりも前方に溝80が形成される。ストップリング77の少なくとも一部は、溝80に配置される。ストップリング77の後方にストッパ78が配置される。ストッパ78は、リング状の部材である。ストッパ78は、ストップリング77により位置決めされる。
コイルばね74は、コイルばね74の後端部が突起部73Bの前面に接触し、コイルばね74の前端部がストッパ78に接触するように配置される。コイルばね74の前端部がストッパ78及びストップリング77を介してアンビルボディ10Aに連結され、コイルばね74の後端部がスリーブ73の突起部73Bに接触することにより、コイルばね74は、スリーブ73を後方に移動させる弾性力を発生することができる。
リーフスプリング72の少なくとも一部は、支持凹部76に面するように、アンビルボディ10Aの周囲に配置される。アンビルボディ10Aの外面において、支持凹部76よりも後方に溝81が形成される。溝81は、スリーブ73に面するように設けられる。リーフスプリング72は、溝81の内側に配置される。
リーフスプリング72は、リーフスプリング72の前端部がボール71に接触し、リーフスプリング72の後端部が溝81の後端部の壁面に接触するように配置される。リーフスプリング72の後端部が溝81の後端部の壁面に接触し、リーフスプリング72の前端部がボール71に接触することにより、リーフスプリング72は、ボール71を前方に移動させる弾性力を発生することができる。
次に、先端工具をアンビル10に装着するときの動作について説明する。先端工具がアンビル10に装着される前の状態において、スリーブ73は、コイルばね74の弾性力により後方に移動される。コイルばね74は、スリーブ73が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。スリーブ73の後端部は、位置決め部材75に接触する。位置決め部材75は、スリーブ73を阻止位置に位置決めする。
スリーブ73が阻止位置に配置されている状態において、突起部73Bは、ボール71の径方向外側に配置される。突起部73Bがボール71の径方向外側に配置されるので、ボール71の径方向外側への移動が阻止される。
挿入孔55に対する先端工具の挿入が開始されると、先端工具の少なくとも一部がボール71に接触する。ボール71は、先端工具との接触により、支持凹部76の内側において後方に移動する。
先端工具が更に後方に移動されると、ボール71は、先端工具との接触により、径方向外側に移動する。ボール71は、径方向外側に移動することにより、リーフスプリング72に接触する。
先端工具が更に後方に移動され、ボール71が径方向外側にすると、リーフスプリング72は、ボール71との接触により変形する。リーフスプリング72は、拡径するように変形する。
また、ボール71が径方向外側に移動すると、ボール71の表面の少なくとも一部と突起部73Bの後面とが接触する。ボール71と突起部73Bの後面との接触により、スリーブ73は、前方に移動する。すなわち、径方向外側に移動するボール71と突起部73Bの後面との接触により、スリーブ73は、許容位置に移動する。
スリーブ73が許容位置に配置されることにより、ボール71は、径方向外側に移動することができる。ボール71の少なくとも一部は、第1溝73Cに配置される。ボール71の解除位置は、ボール71の少なくとも一部が第1溝73Cに配置される位置を含む。ボール71の少なくとも一部が第1溝73Cに配置された状態において、リーフスプリング72の少なくとも一部は、拡径された状態で、ボール71の径方向外側に配置される。
ボール71が径方向外側に移動され、解除位置に配置されることにより、先端工具は、挿入孔55に円滑に挿入される。先端工具は、ボール71に接触さしながら、後方に移動することができる。
先端工具が更に後方に移動され、ボール71の径方向内側に先端工具の溝部が配置されると、リーフスプリング72は、ボール71を係合位置に移動させる弾性力を発生する。ボール71は、リーフスプリング72の弾性力により、支持凹部76の内側において、前方に移動される。支持凹部76の内側において前方に移動したボール71の少なくとも一部は、貫通孔76Mを介して、挿入孔55の内側に配置される。ボール71の少なくとも一部は、先端工具の溝部の内側に配置される。また、ボール71の少なくとも一部は、支持凹部76に支持される。ボール71の係合位置は、ボール71の少なくとも一部が先端工具の溝部に配置される位置を含む。ボール71が係合位置に配置されることにより、先端工具は、固定される。先端工具は、ボール71を介して、アンビルボディ10Aに固定される。
また、ボール71が係合位置に配置されると、スリーブ73は、コイルばね74の弾性力により、後方に移動する。後方に移動したスリーブ73は、位置決め部材75に接触して、阻止位置に位置決めされる。スリーブ73が阻止位置に配置された状態において、突起部73Bは、ボール71の径方向外側に配置される。ボール71が係合位置に配置された状態で、突起部73Bの内面は、ボール71の表面の少なくとも一部に接触する。突起部73Bとボール71との接触により、ボール71の径方向外側への移動が阻止される。ボール71の移動が阻止されるので、先端工具がボール71に固定された状態が維持される。
このように、スリーブ73が操作されない状態で、先端工具が挿入孔55に挿入された場合、リーフスプリング72が弾性変形することにより、ボール71は、先端工具の溝部に自動的に嵌ることができる。また、ボール71が先端工具の溝部に自動的に嵌った後、リーフスプリング72が急激に縮径される。リーフスプリング72が急激に縮径されることにより、ボール71は勢い良く先端工具の溝部に移動される。ボール71が勢い良く先端工具の溝部に移動することにより、ボール71が先端工具の溝部の内面に衝突して音が発生する。そのため、作業者は、先端工具がアンビル10に固定されたことを認識することができる。
次に、先端工具をアンビル10から外すときの動作について説明する。先端工具をアンビル10から外すために、作業者は、先端工具を前方に移動させる。先端工具が前方に移動すると、ボール71は、先端工具との接触により、径方向外側に移動する。また、作業者は、スリーブ73が前方に移動するようにスリーブ73を操作する。
スリーブ73が前方に移動し、許容位置に配置されると、ボール71の径方向外側に第1溝73Cが配置される。ボール71の径方向外側に第1溝73Cが配置された状態で、先端工具が更に前方に移動されることにより、ボール71は先端工具の溝部から脱出し、先端工具の外面に接触し、径方向外側に移動する。径方向外側に移動したボール71の少なくとも一部は、第1溝73Cに配置される。
ボール71が径方向外側に移動され、解除位置に配置されることにより、先端工具は、円滑に移動することができる。先端工具は、ボール71の表面に接触しながら、前方に移動することができる。
ボール71が解除位置に配置された状態で、先端工具が前方に移動されることにより、先端工具が挿入孔55から抜去される。先端工具は、アンビル10から外される。
ファン12は、モータ6の後方に配置される。ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12は、ブッシュ61を介して、ロータシャフト32の後部に固定される。ファン12は、後軸受40とロータコア33との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト32が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト32と一緒に回転する。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、第1排気口20A及び第2排気口20Bを介して、ハウジング2の外部空間に流出する。
コントローラ13は、コントローラ収容部23に収容される。コントローラ13は、モータ6を制御する制御信号を出力する。コントローラ13は、複数の電子部品が実装された基板を含む。基板に実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、及び抵抗が例示される。電界効果トランジスタは、例えば6個設けられる。
コントローラ13の少なくとも一部は、コントローラケース62に収容される。コントローラケース62は、コントローラ収容部23の内部空間に配置される。コントローラ13は、作業者による操作パネル16の操作に基づいて、モータ6の制御モードを切り換える。モータ6の制御モードとは、モータ6の制御方法又は制御パターンをいう。
トリガスイッチ14は、グリップ部22の上部に設けられる。トリガスイッチ14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガスイッチ14は、トリガ部材14Aと、スイッチ本体14Bとを含む。スイッチ本体14Bは、グリップ部22の内部空間に配置される。トリガ部材14Aは、グリップ部22の前部の上部から前方に突出する。トリガ部材14Aは、後方に移動するように作業者に操作される。トリガ部材14Aが後方に移動するように操作されることにより、モータ6が駆動する。トリガ部材14Aの操作が解除されることにより、モータ6の駆動が停止する。
正逆切換レバー15は、ハンマケース被覆部21Bの下端部とグリップ部22の上端部との境界に設けられる。正逆切換レバー15は、左方向又は右方向に移動するように作業者に操作される。正逆切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。
操作パネル16は、コントローラ収容部23に設けられる。操作パネル16は、合成樹脂製である。操作パネル16は、板状である。コントローラ収容部23は、操作パネル16が配置される開口63を有する。開口63は、グリップ部22よりも前方側において、コントローラ収容部23の上面に設けられる。操作パネル16の少なくとも一部は、開口63に配置される。操作パネル16に複数の操作スイッチ64が配置される。作業者により操作スイッチ64が操作されることにより、モータ6の制御モードが切り換えられる。
モード切換スイッチ17は、トリガ部材14Aの上部に設けられる。モード切換スイッチ17は、作業者に操作される。モード切換スイッチ17が後方に移動するように操作されることにより、モータ6の制御モードが切り換え可能である。
ライト18は、ハンマケース4の左部及び右部のそれぞれに配置される。ライト18は、インパクト工具1の前方を照明する照明光を射出する。ライト18は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を含む。
<打撃機構>
次に、打撃機構9について説明する。図5は、本実施形態に係る打撃機構9を示す縦断面図である。図5は、図3の一部を拡大した図に相当する。図3、図4、及び図5に示すように、打撃機構9は、スピンドル8に前後方向及び回転方向のそれぞれに移動可能に支持されるハンマ47と、スピンドル8とハンマ47との間に配置されるボール48と、ハンマ47を常時前方に付勢する第1ばね91と、ハンマ47が基準位置よりも後方に移動した後にハンマ47を前方に付勢する第2ばね92と、第2ばね92の遊動を抑制する遊動抑制機構90と、ハンマ47に支持される第1ワッシャ94と、第1ワッシャ94よりも後方に配置されハンマ47に支持される第2ワッシャ95とを有する。
遊動抑制機構90は、前後方向及び回転方向の少なくとも一方における第2ばね92の遊動を抑制する。本実施形態において、遊動抑制機構90は、第2ばね92を付勢する第3ばね93を有する。
ハンマ47、ボール48、第1ばね91、第2ばね92、第3ばね93、第1ワッシャ94、及び第2ワッシャ95のそれぞれは、ハンマケース4に収容される。第3ばね93を含む遊動抑制機構90は、ハンマケース4の内部空間において、第2ばね92の遊動を抑制する。すなわち、遊動抑制機構90は、ハンマケース4の内部空間において、第2ばね92の位置が自由に動くことを抑制する。
ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、筒状のハンマボディ47Aと、ハンマボディ47Aの前部に設けられるハンマ突起部47Bとを有する。ハンマボディ47Aは、スピンドル8のロッド部45の周囲に配置される。ハンマボディ47Aは、スピンドル8のロッド部45が配置される孔57を有する。ハンマ突起部47Bは、2つ設けられる。ハンマ突起部47Bは、ハンマボディ47Aの前部から前方に突出する。
ハンマ47は、スピンドル8と一緒に回転可能である。また、ハンマ47は、スピンドル8に対して前後方向及び回転方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47は、ハンマ47の回転軸を中心に回転する。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸AXとは一致する。
ハンマボディ47Aは、内筒部471と、外筒部472と、ベース部473とを有する。内筒部471は、ロッド部45の周囲に配置される。内筒部471の内面は、ロッド部45の外面に接触する。外筒部472は、内筒部471よりも径方向外側に配置される。ベース部473は、内筒部471と前端部及び外筒部472の前端部のそれぞれに接続される。ハンマ突起部47Bは、ベース部473の前面から前方に突出する。
内筒部471と外筒部472とベース部473とにより凹部53が規定される。凹部53は、ハンマ47の後端部から前方に窪むように形成される。回転軸AXと直交する面内において、凹部53は、リング状である。
ハンマ47の内筒部471は、大径部471Aと、大径部471Aよりも後方に配置される小径部471Bとを有する。大径部471Aの外面474の外径は、小径部471Bの外面475の外径よりも大きい。大径部471Aの外面474の後端部と小径部471Bの外面475の前端部との境界に段差が設けられる。ハンマ47の内筒部471は、大径部471Aの外面474と小径部471Bの外面475との間に配置される後面476を有する。後面476は、後方を向く。後面476は、回転軸AXと実質的に直交する。
内筒部471の後端部471Rは、外筒部472の後端部472Rよりも後方に配置される。
内筒部471の後端部471Rは、第2ワッシャ95よりも後方に配置される。内筒部471の後端部471Rは、第2ばね92の径方向内側に配置される。前後方向において、内筒部471の後端部471Rの位置は、第2ばね92の少なくとも一部の位置と一致する。
外筒部472の後端部472Rは、第2ワッシャ95よりも後方に配置される。外筒部472の後端部472Rは、第2ばね92の径方向外側に配置される。外筒部472の後端部472Rは、第1ばね91の径方向外側に配置される。前後方向において、外筒部472の後端部472Rの位置は、第2ばね92の少なくとも一部の位置と一致する。前後方向において、外筒部472の後端部472Rの位置は、第1ばね91の少なくとも一部の位置と一致する。
内筒部471の後端部471R及び外筒部472の後端部472Rのそれぞれが第2ワッシャ95よりも後方に配置されることにより、凹部53が設けられていても、ハンマ47の打撃力(慣性力)が小さくなることが抑制される。
ボール48は、スピンドル8のロッド部45とハンマ47との間に配置される。ボール48は、鉄鋼のような金属製である。スピンドル8は、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝50を有する。スピンドル溝50は、ロッド部45の外面の一部に設けられる。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝51を有する。ハンマ溝51は、ハンマ47の内筒部471の内面の一部に設けられる。ボール48は、スピンドル溝50とハンマ溝51との間に配置される。ボール48は、スピンドル溝50の内側及びハンマ溝51の内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ボール48に伴って移動可能である。
スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝50及びハンマ溝51により規定される可動範囲において、前後方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。ハンマ47は、スピンドル8に前後方向及び回転方向のそれぞれに移動可能に支持される。
スピンドル8のフランジ部44は、第1部分44Aと、第2部分44Bとを有する。第1部分44Aは、フランジ部44の周縁部を含む。第2部分44Bは、ロッド部45の周囲に配置される。第1部分44Aは、第2部分44Bの周囲に配置される。前後方向において、第1部分44Aの寸法(厚さ)は、第2部分44Bの寸法(厚さ)よりも小さい(薄い)。第1部分44Aの前面は、第2部分44Bの前面よりも後方に配置される。第2部分44Bの前面の外形は、円形状である。第1部分44Aの前面は、リング状である。第1部分44Aの前面の内縁部と第2部分44Bの前面の外縁部との境界に段差部44Cが形成される。
第1ワッシャ94は、ボール96を介してハンマ47に支持される。第1ワッシャ94は、凹部53の内側に配置される。本実施形態において、第1ワッシャ94は、ハンマ47の大径部471Aの周囲に配置される。
ボール96は、第1ワッシャ94の前面とベース部473の後面との間に配置される。ボール96は、回転軸AXの周囲に複数配置される。ベース部473の後面に凹部473Rが形成される。回転軸AXを含む断面において、凹部473Rは、半円状である。回転軸AXと直交する面内において、凹部473Rは、リング状である。ボール96は、回転軸AXを囲むように、凹部473Rに複数配置される。
第2ワッシャ95は、第1ワッシャ94よりも後方に配置される。第2ワッシャ95は、ハンマ47の小径部471Bの周囲に配置される。第2ワッシャ95の内面と小径部471Bの外面との間に間隙が形成される。第2ワッシャ95とハンマ47とは前後方向に相対移動可能である。
第1ばね91は、コイルばねである。第1ばね91は、スピンドル8の回転軸AXの周囲に配置される。本実施形態において、第1ばね91の少なくとも一部は、ハンマ47の内筒部471の周囲に配置される。第1ばね91の少なくとも一部は、スピンドル8のロッド部45の周囲に配置される。第1ばね91は、ハンマ47を常時前方に付勢する。第1ばね91は、圧縮された状態で、ハンマ47とフランジ部44の第1部分44Aとの間に配置される。
第1ばね91の前部は、凹部53の内側に配置される。第1ばね91の前端部は、第1ワッシャ94の後面に接触する。第1ばね91の後端部は、フランジ部44の第1部分44Aの前面に接触する。第1ばね91は、第1ワッシャ94を介して、ハンマ47を前方に付勢する。第1ばね91の前端部は、フランジ部44の第1部分44Aに接触した状態で、段差部44Cの表面に接触可能である。第1ばね91の前端部が段差部44Cの表面に接触することにより、第1ばね91が径方向に移動することが抑制される。
第2ばね92は、コイルばねである。第2ばね92は、スピンドル8の回転軸AXの周囲に配置される。本実施形態において、第2ばね92の少なくとも一部は、ハンマ47の内筒部471の周囲に配置される。第2ばね92の少なくとも一部は、スピンドル8のロッド部45の周囲に配置される。第2ばね92は、ハンマ47が後方に移動したときにハンマ47を前方に付勢する。すなわち、第2ばね92は、ハンマ47が後方に移動した位置に配置されたときにハンマ47を前方に付勢する。
第2ばね92の全長は、第1ばね91の全長よりも短い。第2ばね92の前端部は、第1ばね91の前端部よりも後方に配置される。
第2ばね92の前部は、凹部53の内側に配置される。第2ばね92の前端部は、第2ワッシャ95の後面に接触する。第2ばね92の後端部は、フランジ部44の第2部分44Bの前面に接触する。
第2ワッシャ95の外径は、第1ワッシャ94の外径よりも小さい。第2ワッシャ95は、第1ばね91よりも径方向内側に配置される。第1ばね91と第2ワッシャ95とは接触しない。
第2ばね92は、第1ばね91よりも径方向内側に配置される。第1ばね91と第2ばね92とは接触しない。
遊動抑制機構90は、ハンマケース4の内部空間において第2ばね92の遊動を抑制する。遊動抑制機構90は、少なくともスピンドル8に対する第2ばね92の遊動を抑制する。
第2ばね92の後端部は、スピンドル8の少なくとも一部に接触する。遊動抑制機構90は、スピンドル8に対する第2ばね92の後端部の遊動を抑制する。すなわち、遊動抑制機構90は、スピンドル8に対して第2ばね92の後端部の位置が自由に動くことを抑制する。上述のように、本実施形態において、第2ばね92の後端部は、スピンドル8のフランジ部44に接触する。遊動抑制機構90は、スピンドル8のフランジ部44に対する第2ばね92の後端部の遊動を抑制する。
本実施形態において、遊動抑制機構90は、第2ばね92を後方に付勢する第3ばね93を有する。
第3ばね93は、コイルばねである。第3ばね93は、スピンドル8の回転軸AXの周囲に配置される。第2ばね92と第3ばね93とは、回転軸AXと平行な前後方向に配置される。第3ばね93は、第2ばね92よりも前方に配置される。本実施形態において、第3ばね93は、ハンマ47の内筒部471の周囲に配置される。第3ばね93の少なくとも一部は、大径部471Aの周囲に配置される。図5に示す状態において、第3ばね93の少なくとも一部は、小径部471Bの周囲に配置される。第3ばね93は、第2ばね92を常時後方に付勢する。第3ばね93は、圧縮された状態で、ハンマ47と第2ばね92の前端部との間に配置される。第3ばね93は、第2ばね92を後方に付勢し、ハンマ47を前方に付勢する。
第3ばね93は、凹部53の内側に配置される。第3ばね93の前端部は、第1ワッシャ94の後面に接触する。第3ばね93の後端部は、第2ワッシャ95の前面に接触する。上述のように、第2ワッシャ95とハンマ47とは前後方向に相対移動可能である。第3ばね93は、第2ワッシャ95を介して、第2ばね92を後方に付勢する。第3ばね93は、第2ばね92の後端部がフランジ部44の第2部分44Bの前面に押し付けられるように第2ばね92を後方に付勢する。これにより、フランジ部44に対して第2ばね92の後端部が遊動することが抑制される。
第3ばね93は、第1ばね91よりも径方向内側に配置される。第1ばね91と第3ばね93とは接触しない。
第3ばね93の付勢力は、第1ばね91の付勢力及び第2ばね92の付勢力よりも小さい。すなわち、第3ばね93のばね定数は、第1ばね91のばね定数及び第2ばね92のばね定数よりも小さい。本実施形態において、第3ばね93の素線径は、第1ばね91の素線径及び第2ばね92の素線径よりも小さい。素線径とは、ばねを構成するワイヤの直径をいう。
本実施形態において、第2ばね92の付勢力は、第1ばね91の付勢力よりも大きい。すなわち、第2ばね92のばね定数は、第1ばね91のばね定数よりも大きい。なお、第2ばね92のばね定数は、第1ばね91のばね定数よりも小さくてもよいし、第1ばね91のばね定数と等しくてもよい。
上述のように、ハンマ47は、スピンドル8に対して前後方向及び回転方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47は、前後方向において、基準位置P0、第1位置P1、及び第2位置P2のそれぞれに移動可能である。
基準位置P0は、前後方向におけるハンマ47の可動範囲において最も前方の位置である。第1位置P1は、前後方向におけるハンマ47の可動範囲において基準位置P0よりも後方の位置である。本実施形態において、第1位置P1は、ハンマ47に対する第2ばね92の付勢が開始される位置である。第2位置P2は、前後方向におけるハンマ47の可動範囲において第1位置P1よりも後方の位置である。
図5は、ハンマ47が基準位置P0に配置されている状態を示す。図6及び図7のそれぞれは、本実施形態に係る打撃機構9を示す縦断面図である。図6は、ハンマ47が基準位置P0よりも後方の第1位置P1に配置された状態を示す。図7は、図7は、ハンマ47が第1位置P1よりも後方の第2位置P2に配置された状態を示す。
アンビル10に負荷が作用していない場合又はねじ締め作業においてアンビル10に作用する負荷が低い場合、ハンマ47は、基準位置P0に配置される。ハンマ47が基準位置P0に配置されている状態において、ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとは接触する。ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。すなわち、図5に示すように、ねじ締め作業の初期においては、ハンマ47は、基準位置P0において回転する。打撃機構9による打撃動作が行われない状態で、ねじ締め作業が進行する。
ねじ締め作業においてアンビル10に作用する負荷が高くなると、モータ6が発生する回転力だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。モータ6が発生する回転力だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47は、ボール48を介して、スピンドル8に対して前後方向及び回転方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する回転力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48がスピンドル溝50及びハンマ溝51のそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47は、ボール48から力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。
例えばアンビル10に第1所定値の負荷が作用した場合、図6に示すように、ハンマ47は、基準位置P0から基準位置P0よりも後方の第1位置P1に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。ハンマ47は、第1位置P1において回転する。
アンビル10に第1所定値よりも大きい第2所定値の負荷が作用した場合、図7に示すように、ハンマ47は、第1位置P1から第1位置P1よりも後方の第2位置P2に移動する。第2位置P2においても、ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとの接触は解除される。ハンマ47は、第2位置P2において回転する。
<インパクト工具の動作>
次に、インパクト工具1の動作について説明する。例えば、作業対象にねじ締め作業を実施するとき、ねじ締め作業に使用される先端工具が、アンビル10の挿入孔55に挿入される。挿入孔55に挿入された先端工具は、工具保持機構11により保持される。先端工具がアンビル10に装着された後、作業者は、グリップ部22を握ってトリガスイッチ14を操作する。トリガスイッチ14が操作されると、バッテリパック25からコントローラ13を介してモータ6に電力が供給され、モータ6が起動する。モータ6の起動により、ロータシャフト32が回転する。ロータシャフト32が回転すると、ロータシャフト32の回転力がピニオンギヤ41を介してプラネタリギヤ42に伝達される。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。プラネタリギヤ42の公転により、スピンドル8は、ロータシャフト32の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
図2、図3、図4、及び図5は、ハンマ47が基準位置P0に配置されている状態を示す。第1ばね91は、ハンマ47を常時前方に付勢する。第1ばね91は、ハンマ47が基準位置P0に配置されるように、ハンマ47を前方に付勢する。また、第3ばね93も、ハンマ47を前方に付勢する。
ハンマ47が基準位置P0に配置された状態において、第3ばね93の付勢力は、第2ばね92の付勢力よりも小さい。ハンマ47が基準位置P0に配置された状態において、第2ばね92は、第3ばね93から小さい付勢力を受けるものの、実質的に自由長の状態である。
ハンマ47が基準位置P0に配置されているとき、ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとが接触する。ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、スピンドル8が回転すると、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。アンビル10が回転することにより、打撃機構9による打撃動作が行われない状態でねじ締め作業が進行する。
ねじ締め作業の進行により、アンビル10に規定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ハンマ47は、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Bとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。また、ハンマ47が後方に移動することにより、第1ばね91が圧縮される。
図6は、ハンマ47が基準位置P0よりも後方の第1位置P1に配置された状態を示す。アンビル10に第1所定値の負荷が作用すると、図6に示すように、ハンマ47が基準位置P0よりも後方の第1位置P1に配置される。ハンマ47は、第1位置P1において回転する。ハンマ47が第1位置P1に配置されることにより、第1ばね91は圧縮される。ハンマ47が第1位置P1に配置されたときに、ハンマ47の後面476が第2ワッシャ95の前面に接触する。ハンマ47の第1位置P1は、ハンマ47に対する第2ばね92の付勢が開始される位置である。本実施形態において、ハンマ47の第1位置P1は、ハンマ47の後面476が第2ワッシャ95の前面に接触する位置である。ハンマ47が第1位置P1に配置された状態において、ハンマ47の内筒部471の後端部471Rとフランジ部44の前面とは第1間隙を介して対向する。
基準位置P0と第1位置P1との間において、第2ワッシャ95とハンマ47とは前後方向に相対移動可能である。また、第3ばね93の付勢力は、第2ばね92の付勢力よりも小さい。そのため、図6に示すように、ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、第2ばね92は実質的に圧縮されず、第3ばね93が圧縮される。また、第2ワッシャ95は、後面476に接近するように小径部471Bを移動する。圧縮された第3ばね93は、大径部471Aの周囲に配置される。ハンマ47が基準位置P0よりも後方の第1位置P1に配置されたときに、第3ばね93が大径部471Aの周囲に配置されるので、ハンマ47の後面476は、第2ワッシャ95の前面に接触することができる。
アンビル10に第1所定値の負荷が作用し、第1位置P1まで移動したハンマ47は、第1ばね91の付勢力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ突起部47Bは、回転しながらアンビル突起部10Bに接触する。これにより、アンビル突起部10Bは、ハンマ突起部47Bにより回転方向に打撃される。ハンマ47は、第1位置P1から基準位置P0に移動することにより、第1打撃力でアンビル10を打撃する。アンビル10には、モータ6の回転力とハンマ47の慣性力(第1打撃力)との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
図7は、ハンマ47が第1位置P1よりも後方の第2位置P2に配置された状態を示す。アンビル10に第1所定値よりも大きい第2所定値の負荷が作用すると、図7に示すように、ハンマ47が第1位置P1よりも後方の第2位置P2に配置される。ハンマ47は、第2位置P2において回転する。ハンマ47が第2位置P2に配置されることにより、第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれが圧縮される。ハンマ47が第2位置P2に配置されることにより、第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれがハンマ47を前方に付勢する。本実施形態において、ハンマ47の第2位置P2は、ハンマ47の内筒部471の後端部471Rとフランジ部44の前面とが第1間隙よりも小さい第2間隙を介して対向する位置である。第2間隙は微小である。ハンマ47が第2位置P2に配置された状態において、ボール48は、スピンドル8のスピンドル溝50の後端部に配置される。
アンビル10に第2所定値の負荷が作用し、第2位置P2まで移動したハンマ47は、第1ばね91及び第2ばね92の付勢力により、前方に移動する。ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ突起部47Bは、回転しながらアンビル突起部10Bに接触する。これにより、アンビル突起部10Bは、ハンマ突起部47Bにより回転方向に打撃される。ハンマ47は、第2位置P2から基準位置P0に移動することにより、第1打撃力よりも大きい第2打撃力でアンビル10を打撃する。アンビル10には、モータ6の回転力とハンマ47の慣性力(第2打撃力)との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
図8は、本実施形態に係る打撃機構9のばね特性を示す図である。図8において、横軸はハンマ47の位置を示し、縦軸はハンマ47に付与される付勢力を示す。図8に示すラインLaは、ハンマ47の位置に基づいて変化する付勢力を示す。
上述のように、第2ばね92及び第3ばね93のそれぞれは、第1ばね91よりも径方向内側に配置される。第1ばね91と第2ばね92とは、並列に配置される。第1ばね91と第3ばね93とは、並列に配置される。第2ばね92は、第3ばね93の後方に配置される。第2ばね92と第3ばね93とは、直列に配置される。
ハンマ47が基準位置P0に配置されている状態において、第1ばね91及び第3ばね93のそれぞれは、圧縮されている。ハンマ47が基準位置P0に配置されている状態において、第2ばね92は、自然長である。ハンマ47は、第1ばね91及び第3ばね93により前方に付勢される。第2ばね92は、第3ばね93により後方に付勢される。
第1ばね91のばね定数をk1、第2ばね92のばね定数をk2、第3ばね93のばね定数をk3としたとき、ハンマ47が第1位置P1よりも前方に配置されているときの第1ばね91と第2ばね92と第3ばね93との合成ばね定数Kaは、以下の(1)式で表わされる。
Ka=k1+(k2×k3)/(k2+k3) …(1)
図8において、基準位置P0と第1位置P1との間におけるラインLaの傾きは、合成ばね定数Kaを示す。ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1に近付くほど、第1ばね91及び第3ばね93のそれぞれの圧縮量は大きくなり、ハンマ47に作用する付勢力は大きくなる。ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、ハンマ47は、第1ばね91及び第3ばね93のそれぞれから付勢力を受け、第2ばね92からの付勢力を実質的に受けない。
ハンマ47が第1位置P1よりも後方に配置されると、第2ばね92とハンマ47と第2ワッシャ95を介して直接接触するようになる。第2ばね92とハンマ47とが直接接触した後は、第2ばね92も圧縮されることとなり、ハンマ47は第3ばね93の付勢力を実質的に受けなくなる。ハンマ47が第1位置P1よりも後方に配置されているときの第1ばね91と第2ばね92との合成ばね定数Kbは、以下の(2)式で表わされる。
Kb=k1+k2 …(2)
図8において、第1位置P1と第2位置P2との間におけるラインLbの傾きは、合成ばね定数Kbを示す。ハンマ47が第1位置P1から第2位置P2に近付くほど、第1ばね91及び第2ばね92の圧縮量は大きくなり、ハンマ47に作用する付勢力は大きくなる。ハンマ47が第1位置P1から第2位置P2まで移動する区間においては、ハンマ47は、第1ばね91及び第2ばね92から付勢力を受ける。
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、打撃機構9は、第1ばね91及び第2ばね92を有する。第2ばね92が設けられることにより、打撃機構9の打撃力を大きくすることができる。本実施形態によれば、第2ばね92の遊動を抑制する遊動抑制機構90が設けられる。遊動抑制機構90により、第2ばね92が自由に動くことが抑制される。第2ばね92が自由に動いてしまうと、第2ばね92が例えばハンマ47又はスピンドル8に当たってしまい、異音が発生する可能性がある。また、第2ばね92が自由に動いてしまうと、回転するスピンドル8が停止したときに回転の慣性で第2ばね92が空転してしまい、異音が発生する可能性がある。本実施形態によれば、第2ばね92が自由に動いてしまうことが抑制されるので、異音の発生が抑制される。
遊動抑制機構90は、スピンドル8に対する第2ばね92の遊動を抑制する。そのため、第2ばね92がハンマ47又はスピンドル8に当たったり、回転するスピンドル8が停止したときに回転の慣性で第2ばね92が空転したりすることが抑制される。
第2ばね92の後端部は、スピンドル8の少なくとも一部に接触する。遊動抑制機構90は、スピンドル8に対する第2ばね92の後端部の遊動を抑制する。すなわち、遊動抑制機構90は、スピンドル8に対して第2ばね92の後端部の位置が自由に動くことを抑制する。第2ばね92の後端部がスピンドル8の少なくとも一部に接触した状態で、スピンドル8に対する第2ばね92の後端部の遊動が抑制されることにより、第2ばね92の遊動は効果的に抑制される。
本実施形態において、遊動抑制機構90は、第2ばね92を後方に付勢する第3ばね93を有する。そのため、簡単な構造で、第2ばね92の遊動が効果的に抑制される。
第3ばね93は、第2ばね92の後端部がスピンドル8のフランジ部44に押し付けられるように第2ばね92を付勢する。フランジ部44は、第2ばね92の後端部を安定して支持することができる。そのため、第2ばね92の遊動は効果的に抑制される。
第1ばね91、第2ばね92、及び第3ばね93のそれぞれは、スピンドル8の回転軸AXの周囲に配置される。第2ばね92及び第3ばね93のそれぞれは、第1ばね91よりも径方向内側に配置される。すなわち、第1ばね91と、第2ばね92及び第3ばね93とは、並列に配置される。これにより、インパクト工具1の寸法が大きくなることが抑制される。
第2ばね92と第3ばね93とは回転軸AXと平行な前後方向に配置される。すなわち、第2ばね92と第3ばね93とは直列に配置される。本実施形態において、第3ばね93は、第2ばね92よりも前方に配置される。第2ばね92と第3ばね93とは直列に配置されるので、第3ばね93は第2ばね92を適正に付勢することができる。
第1ばね91の前端部及び第3ばね93の前端部のそれぞれは、第1ワッシャ94の後面に接触する。第1ばね91の前端部及び第3ばね93の前端部のそれぞれは、第1ワッシャ94に安定して支持される。
第3ばね93の後端部及び第2ばね92の前端部のそれぞれは、第2ワッシャ95に接触する。第3ばね93の後端部は、第2ワッシャ95の前面に接触する。第2ばね92の前端部は、第2ワッシャ95の後面に接触する。第3ばね93の後端部及び第2ばね92の前端部のそれぞれは、第2ワッシャ95に安定して支持される。
第2ワッシャ95は、第1ばね91よりも径方向内側に配置される。第2ワッシャ95は、第1ばね91に接触しない。そのため、第1ばね91は適正に作動することができる。
第1ワッシャ94とハンマ47とは前後方向に相対移動不可能である。これにより、ハンマ47が後方に移動したとき、第1ばね91及び第3ばね93のそれぞれは、適正に圧縮される。第2ワッシャ95とハンマ47とは前後方向に相対移動可能である。そのため、ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、ハンマ47に対して第2ワッシャ95が移動することにより、第2ばね92の圧縮が抑制される。また、第3ばね93は、第2ワッシャ95を介して第2ばね92を後方に付勢することができる。
ハンマ47は、第1ワッシャ94が配置される大径部471Aと、第2ワッシャ95が配置される小径部471Bとを有する。図6に示したように、ハンマ47が第1位置P1に配置されたときに、第3ばね93は、圧縮された状態で、大径部471Aの周囲に配置される。そのため、ハンマ47の後面476と第2ワッシャ95の前面とは十分に接触することができる。
ハンマ47の第1位置P1は、ハンマ47の後面476が第2ワッシャ95の前面に接触する位置である。ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間において、第1ばね91がハンマ47を前方に付勢し、第2ばね92はハンマ47を実質的に付勢しない。ねじ締め作業の初期においては、第1ばね91の付勢力のみがハンマ47が作用するので、アンビル10に作用する負荷が小さくても、ハンマ47は後方に移動することができる。すなわち、軽作業時においても、打撃機構9による打撃動作を得ることができる。
ハンマ47の後面476が第2ワッシャ95の前面に接触した状態で、ハンマ47が第1位置P1よりも後方に移動することにより、第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれがハンマ47を前方に付勢する。これにより、ハンマ47は、大きい打撃力でアンビル10を回転方向に打撃することができる。
第3ばね93の付勢力は、第1ばね91の付勢力及び第2ばね92の付勢力よりも小さい。第3ばね93の付勢力が小さいので、ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、ハンマ47には、実質的に第1ばね91の付勢力のみが加えられる。
第3ばね93の素線径は、第1ばね91の素線径及び第2ばね92の素線径よりも小さい。これにより、第3ばね93は、適正な付勢力を発生することができる。
第2ばね92の付勢力は、第1ばね91の付勢力よりも大きい。これにより、ねじ締め作業の初期においては、第1ばね91の付勢力のみがハンマ47が作用するので、アンビル10に作用する負荷が小さくても、ハンマ47は後方に移動することができる。
なお、本実施形態においては、図7を参照して説明したように、ハンマ47が第2位置P2に配置されたとき、内筒部471の後端部471Rとフランジ部44の前面とが第2間隙を介して対向することとした。内筒部471の後端部471Rとフランジ部44の前面とが直接接触しないように、内筒部471の後端部471Rとフランジ部44の前面との間に弾性体が配置されてもよい。
なお、本実施形態においては、第1ばね91の後端部がフランジ部44の前面に直接接触し、第2ばね92の後端部がフランジ部44の前面に直接接触することとした。第1ばね91の後端部及び第2ばね92の後端部のそれぞれがフランジ部44に直接接触しないように、第1ばね91の後端部とフランジ部44の前面との間及び第2ばね92の後端部とフランジ部44の前面との間にワッシャが配置されてもよい。
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図9は、本実施形態に係る打撃機構9を示す縦断面図である。遊動抑制機構90は、スピンドル8に対する第2ばね92の後端部の遊動を抑制する。すなわち、遊動抑制機構90は、スピンドル8に対して第2ばね92の後端部が自由に動くことを抑制する。図9に示すように、遊動抑制機構90は、第2ばね92の後端部とスピンドル8の少なくとも一部とを固定する固定部200を有する。本実施形態において、固定部200は、スピンドル8のフランジ部44に設けられる。固定部200は、フランジ部44の前面に設けられた溝部201を含む。第2ばね92の後端部は、固定部200の溝部201に配置される。第2ばね92の後端部が溝部201に圧入されることによって、第2ばね92の後端部がフランジ部44に固定される。第2ばね92の後端部がフランジ部44に固定されることにより、スピンドル8に対する第2ばね92の後端部の遊動が抑制される。
本実施形態においては、上述の第1実施形態で説明した第3ばね93及び第2ワッシャ95は省略可能である。第2ばね92の前端部は、ハンマ47の後面476と対向する。
図9は、ハンマ47が基準位置P0に配置された状態を示す。ハンマ47が基準位置P0に配置された状態において、第2ばね92の前端部とハンマ47とは離れている。ハンマ47が基準位置P0に配置された状態において、第2ばね92の前端部とハンマ47の後面476とは前後方向に間隙を介して対向する。
ねじ締め作業の進行によりハンマ47が基準位置P0よりも後方の第1位置P1に配置された状態において、第2ばね92の前端部とハンマ47の後面476とが接触する。すなわち、本実施形態において、ハンマ47の第1位置P1は、ハンマ47の後面476が第2ばね92の前端部と接触する位置である。
ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、第1ばね91は圧縮され、第2ばね92は圧縮されない。ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、ハンマ47は、第1ばね91のみから付勢力を受け、第2ばね92からは付勢力を受けない。
ハンマ47の後面476が第2ばね92の前端部に接触した状態で、ハンマ47が第1位置P1よりも後方に移動することにより、第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれが圧縮される。第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれがハンマ47を前方に付勢する。
以上説明したように、本実施形態においても、第2ばね92の遊動が抑制される。
なお、本実施形態において、第2ばね92の後端部は、例えば溶接によりフランジ部44に固定されてもよい。固定部200は、第2ばね92の後端部とフランジ部44とを固定する溶接部を含んでもよい。
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図10は、本実施形態に係る打撃機構9を示す縦断面図である。本実施形態において、遊動抑制機構90は、ハンマ47に対する第2ばね92の前端部の遊動を抑制する。すなわち、遊動抑制機構90は、ハンマ47に対して第2ばね92の前端部が自由に動くことを抑制する。図10に示すように、遊動抑制機構90は、第2ばね92の前端部とハンマ47の少なくとも一部とを固定する固定部300を有する。本実施形態において、固定部300は、ハンマ47の内筒部471に設けられる。固定部300は、内筒部471に設けられた溝部301を含む。第2ばね92の前端部は、固定部300の溝部301に配置される。第2ばね92の前端部が溝部301に圧入されることによって、第2ばね92の前端部が内筒部471に固定される。第2ばね92の前端部が内筒部471に固定されることにより、ハンマ47に対する第2ばね92の前端部の遊動が抑制される。
本実施形態においても、上述の第1実施形態で説明した第3ばね93及び第2ワッシャ95は省略可能である。第2ばね92の後端部は、スピンドル8のフランジ部44の前面と対向する。
図10は、ハンマ47が基準位置P0に配置された状態を示す。ハンマ47が基準位置P0に配置された状態において、第2ばね92の後端部とスピンドル8とは離れる。ハンマ47が基準位置P0に配置された状態において、第2ばね92の後端部とスピンドル8のフランジ部44の前面とは前後方向に間隙を介して対向する。
ハンマ47が基準位置P0よりも後方の第1位置P1に配置された状態において、第2ばね92の後端部とフランジ部44の前面とが接触する。すなわち、本実施形態において、ハンマ47の第1位置P1は、フランジ部44の前面が第2ばね92の後端部と接触する位置である。
ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、第1ばね91は圧縮され、第2ばね92は圧縮されない。ハンマ47が基準位置P0から第1位置P1まで移動する区間においては、ハンマ47は、第1ばね91から付勢力を受け、第2ばね92からは付勢力を受けない。
フランジ部44の前面が第2ばね92の後端部に接触した状態で、ハンマ47が第1位置P1よりも後方に移動することにより、第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれが圧縮される。第1ばね91及び第2ばね92のそれぞれがハンマ47を前方に付勢する。
以上説明したように、本実施形態においても、第2ばね92の遊動が抑制される。
なお、本実施形態において、第2ばね92の前端部は、例えば溶接により内筒部471に固定されてもよい。固定部300は、第2ばね92の前端部と内筒部471とを固定する溶接部を含んでもよい。
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、ハンマボディ47Aは、内筒部471と外筒部472とを有することとした。外筒部472は無くてもよい。内筒部471の周囲に第1ばね91の前端部及び第2ばね92の前端部が配置される空間が設けられていればよい。
上述の実施形態で説明した構成要素は、挿入孔55及び工具保持機構11を有さずに先端部が四角柱形状のアンビル10を有する、所謂インパクトレンチにも適用することができる。
上述の実施形態においては、インパクト工具1の電源としてバッテリ装着部5に装着されるバッテリパック25が使用されることとした。インパクト工具1の電源として、商用電源(交流電源)が使用されてもよい。
上述の実施形態においては、インパクト工具1がモータ6(電動モータ)を動力源とする電動工具であることとした。インパクト工具1の動力源は、圧縮空気により駆動する空気モータでもよいし、油圧モータでもよいし、エンジンにより駆動するモータでもよい。