JP2018122393A - 回転打撃工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】主ハンマと副ハンマとを有する回転打撃工具において、副ハンマの支持構造の小型化を実現する。【解決手段】回転打撃工具1において、副ハンマ支持構造は、副ハンマ21とキャリア16の間に複数の鋼球17を配置した構造をもつ。複数の鋼球17は、回転軸線方向および回転軸線方向に直交する径方向とは異なる方向の荷重を受けるように、副ハンマ21の第1保持溝21gとキャリア16の第2保持溝16aの間に配置される。第1保持溝21gおよび第2保持溝16aの回転軸線方向の断面は、円弧状に形成され、それぞれの断面半径は、鋼球17よりも大きい。【選択図】図1
Description
本発明は、回転打撃工具に関する。
特許文献1は、駆動部によって回転されるスピンドルと、スピンドルの回転軸線方向の前方に配置されたアンビルと、スピンドルの回転を回転打撃に変換してアンビルに伝達する回転打撃機構とを備えたインパクトレンチを開示する。回転打撃機構は、スピンドルの回転軸線を中心に回転可能かつ軸線方向に移動可能な主ハンマと、主ハンマを収容して主ハンマと一体となって回転する一方で軸線方向には移動しない副ハンマとを備える。特許文献1に開示されるインパクトレンチでは、スピンドル側の案内溝と主ハンマ側の係合溝との間に鋼球を配置したカム構造が設けられ、主ハンマがカム構造により後退と前進を高速で繰り返すことでアンビルに回転打撃力を付与する。
特許文献1に開示されるインパクトレンチにおいて、副ハンマとスピンドルの間にはスピンドルの回転軸線に対してラジアル方向の荷重を受ける転がり軸受が配設され、副ハンマの後端内周は転がり軸受の外輪に圧入される。このインパクトレンチでは、スピンドルの外周と転がり軸受の内輪の間に隙間を形成することで、転がり軸受に加わるラジアル荷重を低減させている。
特許文献1に開示されるインパクトレンチにおいて、スピンドルと副ハンマとの芯振れを防止するためには、大型の転がり軸受を使用し、且つ転がり軸受外輪に圧入される副ハンマ後端を厚く形成する必要がある。そのため副ハンマの支持構造の重量およびサイズは大きくなる傾向がある。
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、主ハンマと副ハンマとを有する回転打撃工具において、副ハンマの支持構造の小型化を実現する技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回転打撃工具は、駆動部と、駆動部により回転されるスピンドルと、スピンドルの回転軸線方向の前方に配置されたアンビルと、スピンドルの回転軸線を中心に回転可能且つ回転軸線方向に移動可能な主ハンマと、スピンドル側の案内溝と主ハンマ側の係合溝との間に第1鋼球を配置したカム構造と、主ハンマを収容して主ハンマと一体に回転可能な副ハンマと、案内溝の後方側に設けられて案内溝が形成されたスピンドルの部分より大きい外径を有する大径部と、を備える。この態様の回転打撃工具は、副ハンマと大径部の間に第2鋼球を配置した副ハンマ支持構造をさらに備え、副ハンマ支持構造において、第2鋼球は、回転軸線方向および回転軸線方向に直交する径方向とは異なる方向の荷重を受けるように、副ハンマと大径部の間に配置される。
本発明によれば、主ハンマと副ハンマとを有する回転打撃工具において、副ハンマの支持構造の小型化を実現する技術を提供できる。
実施形態の回転打撃工具は、駆動部と、駆動部により回転されるスピンドルと、スピンドルの回転軸線方向の前方に配置されたアンビルと、スピンドルの回転を回転打撃に変換してアンビルに伝達する回転打撃機構とを備える。回転打撃機構はダブルハンマ構成を採用し、スピンドルの回転軸線を中心に回転可能且つ軸線方向に移動可能な主ハンマと、主ハンマを収容して主ハンマと一体に回転可能な副ハンマを備える。回転打撃機構は、主ハンマをアンビルに衝撃的に係合させて、アンビルを軸線回りに回転させる機能をもつ。
図1は、実施形態に係る回転打撃工具の主要部の断面概略図を示す。図1において一点鎖線は、回転打撃工具1における回転軸線を示している。図2は、実施形態に係る回転打撃機構の構成部品の分解斜視図を示し、図3は、実施形態に係る回転打撃機構の組立斜視図を示す。図4(a)は主ハンマの前面側斜視図を示し、図4(b)はスピンドルおよびキャリアの斜視図を示し、図4(c)は副ハンマの後面側斜視図を示す。なお図1、図3では、後述する止め部材27の図示を省略している。以下、図1〜図4を用いて、回転打撃工具1の構造について説明する。
回転打撃工具1は、工具本体を構成するハウジング2を備える。ハウジング2の上部は、各種構成部品を収容するための収容空間を形成し、ハウジング2の下部は、ユーザにより把持される把持部3を構成する。把持部3の前側には、ユーザの手指により操作される操作スイッチ4が設けられ、把持部3の下端部には、駆動部10に電力を供給するバッテリ(図示せず)が設けられる。
駆動部10は電動モータであって、駆動部10の駆動軸10aは、動力伝達機構12を介してキャリア16およびスピンドル11に連結される。キャリア16はスピンドル11の後端側に位置して、動力伝達用の歯車を収容する。図4(b)を参照してキャリア16は、スピンドル11より大きい外径を有する大径部として構成される。キャリア16は、スピンドル11より大径の前側部材16bと、前側部材16bよりも後方に位置する後側部材16cとを有し、前側部材16bと後側部材16cとの間に歯車を収容するための空間16dを形成する。
動力伝達機構12は、駆動軸10aの先端に圧入固定される太陽歯車13と、太陽歯車13に噛合する2個の遊星歯車14と、遊星歯車14に噛合する内歯車15とを有する。遊星歯車14はキャリア16の空間16dにおいて、前側部材16bおよび後側部材16cに固定される支軸14aにより回転可能に支持される。内歯車15は、ハウジング2の内周面に固定されている。
以上のように構成した動力伝達機構12により、駆動軸10aの回転が、太陽歯車13の歯数と内歯車15の歯数との比に基づいて減速されるとともに、その回転トルクが増大される。これによりキャリア16およびスピンドル11を低速高トルクで駆動できるようになる。
回転打撃工具1の回転打撃機構は、スピンドル11、キャリア16、主ハンマ20、副ハンマ21およびばね部材23によって構成される。スピンドル11は円柱状に形成され、その先端には、小径の突起部11aがスピンドル11の軸線と同軸に形成される。突起部11aは、アンビル22の後部に形成した円柱状の内部空間を有する孔に回転可能な状態で挿入される。
スピンドル11の外周には、略円盤状であって中心部に貫通孔を形成した鋼製の主ハンマ20が装着される。主ハンマ20の前面には、アンビル22に向けて突出する一対のハンマ爪20aが形成される。主ハンマ20は、スピンドル11の回転軸線を中心に回転可能であり、且つスピンドル11の回転軸線方向すなわち前後方向に移動可能となるように、スピンドル11に取り付けられる。これにより主ハンマ20は、アンビル22に対して回転打撃力を加えられるようになる。副ハンマ21は鋼製の円筒部材として形成され、環状仕切部21eにより前部21aと後部21bに仕切られる。副ハンマ21は、前部21aの内部空間に主ハンマ20を収容する。
副ハンマ21と主ハンマ20は、一体となって回転する一体回転機構を備える。図2を参照して、主ハンマ20は、その外周面に、断面が半円形でスピンドル11の回転軸線と平行な4つの第1ピン溝20dを備える。また副ハンマ21は、前部21aの内周面に、断面が半円形でスピンドル11の回転軸線と平行な4つの第2ピン溝21cを備える。ここで副ハンマ21の4つの第2ピン溝21cは、主ハンマ20の4つの第1ピン溝20dに対応する位置に形成される。第1ピン溝20dは、主ハンマ20の外周面において90度の間隔で形成されてよく、このとき第2ピン溝21cは、副ハンマ21の内周面において90度の間隔で形成される。
第2ピン溝21cには、円柱部材である係合ピン26が配設される。係合ピン26は、針状コロであってよい。係合ピン26は、副ハンマ21の前端側から第2ピン溝21cに挿入され、内周に張り出した段部21fに設けられた溝底部まで差し込まれる。係合ピン26を溝底部まで差し込んだ状態で、副ハンマ21の内周面に形成された環状溝21dに、係合ピン26の抜け止め機能をもつ止め部材27が嵌め込まれる。止め部材27が環状溝21dに配設されることで、第2ピン溝21cにおける係合ピン26の移動が制限される。
組付時、副ハンマ21の4つの第2ピン溝21cに4つの係合ピン26を取り付けた状態で、主ハンマ20の4つの第1ピン溝20dと4つの係合ピン26の位置を合わせて、主ハンマ20を副ハンマ21に挿入する。これにより主ハンマ20と副ハンマ21とは、スピンドル11の回転軸線を中心として一体となって回転可能となる。
ばね部材23は、主ハンマ20の後部と、副ハンマ21の環状仕切部21eとの間に介装される。主ハンマ20は係合ピン26をガイドとして前後方向に移動可能であり、ばね部材23の付勢力によりアンビル22に回転打撃力を加えることができる。
スピンドル11は、その外周面に2つの案内溝11bを備え、主ハンマ20は、貫通孔の内周面に2つの係合溝20bを備える。2つの案内溝11bは同一形状を有して周方向に並べて設けられ、また2つの係合溝20bは同一形状を有して周方向に並べて設けられる。スピンドル11の外周に主ハンマ20を装着した状態で、案内溝11bおよび係合溝20bの間には鋼球19が配置される。スピンドル11側の案内溝11bと、主ハンマ20側の係合溝20bと、両者の間に配置された鋼球19は「カム構造」を構成する。2つの鋼球19は、主ハンマ20がスピンドル11の回転軸線を中心に回転可能且つ回転軸線方向に移動可能となるように主ハンマ20を径方向に支持する。
カム構造において、案内溝11bは、工具先端側からみてV字ないしはU字形状に形成されている。つまり案内溝11bは、最前部から対称に後斜め方向に傾斜する2つの傾斜溝をもつ。係合溝20bは、工具先端側からみて逆向きのV字ないしはU字形状に形成されている。鋼球19が案内溝11bの最前部から傾斜溝に沿って移動すると、主ハンマ20はスピンドル11に対して相対的に後退することになる。
副ハンマ21は、環状仕切部21eの後面に環状の第1保持溝21gを備え、スピンドル11よりも大径のキャリア16は、前側部材16bの前面外周に環状の第2保持溝16aを備える。第1保持溝21gと第2保持溝16aの間には、複数の鋼球17が周方向に隙間無く配置される。鋼球17は、鋼球19よりも小さく形成されてよい。副ハンマ21側の第1保持溝21gと、キャリア16側の第2保持溝16aと、両者の間に隙間無く配置された鋼球17は「副ハンマ支持構造」を構成する。副ハンマ支持構造において、鋼球17は、スピンドル11の回転軸線方向および回転軸線方向に直交する径方向とは異なる方向の荷重を受けるように、副ハンマ21とキャリア16の間に配置される。
ストッパ部材30は主ハンマ20とキャリア16の間に設けられて、カム構造における鋼球19が傾斜溝の端部に衝突しないように、主ハンマ20の回転軸線方向の移動範囲を規制する。ストッパ部材30は、たとえば樹脂材料で形成されてよい。
主ハンマ20に係合するアンビル22は鋼製であり、鋼製もしくは黄銅製の滑り軸受を介してハウジング2に回転自在に支持されている。アンビル22の先端には、6角ボルトの頭部や6角ナットに装着するソケット体を取り付けるための、断面が四角形状の工具装着部22aが設けられる。
アンビル22の後部には、主ハンマ20の一対のハンマ爪20aに係合する一対のアンビル爪が設けられる。一対のアンビル爪は、それぞれ断面扇形の柱状部材として形成される。なおアンビル22のアンビル爪および主ハンマ20のハンマ爪20aは、必ずしも2個である必要はなく、それぞれの爪の数が等しければ、アンビル22および主ハンマ20の周方向に等間隔に3個以上設けてもよい。
次に、実施形態の回転打撃工具1におけるカム構造の動作を説明する。
ユーザによる操作スイッチ4の引き操作により駆動部10が回転駆動すると、動力伝達機構12を介してキャリア16およびスピンドル11が回転する。スピンドル11の回転力は、スピンドル11の案内溝11bと主ハンマ20の係合溝20bの間に嵌め込まれた鋼球19を介して主ハンマ20に伝達され、主ハンマ20および副ハンマ21が一体となって回転する。
ユーザによる操作スイッチ4の引き操作により駆動部10が回転駆動すると、動力伝達機構12を介してキャリア16およびスピンドル11が回転する。スピンドル11の回転力は、スピンドル11の案内溝11bと主ハンマ20の係合溝20bの間に嵌め込まれた鋼球19を介して主ハンマ20に伝達され、主ハンマ20および副ハンマ21が一体となって回転する。
図5(a)は、ボルトやナットの締め付け開始直後のカム構造の状態を示し、図5(b)は、締め付け開始から時間経過後のカム構造の状態を示す。図5(b)は、図5(a)に示すカム構造の初期状態と比較するための比較図であり、鋼球19が案内溝11bの最前部から溝端部に向かって移動する様子を示している。
図6(a)〜図6(c)は、主ハンマ20とアンビル22の係合面を周方向に模式的に展開した位置関係を示す。ここで図6(a)は、ボルトやナットの締め付け開始直後の主ハンマ20のハンマ爪20aとアンビル22のアンビル爪22bとの係合状態を示している。
図6(a)〜図6(c)に示すように、主ハンマ20には、駆動部10の回転による回転力Aが矢印で示す方向に加わる。また主ハンマ20には、ばね部材23による前進方向の付勢力Bが矢印で示す方向に加わる。
主ハンマ20が回転すると、ハンマ爪20aとアンビル爪22bとの周方向の係合により、主ハンマ20の回転力がアンビル22に伝達される。そしてアンビル22の回転によって、工具装着部22aに取付けられたソケット体(図示せず)が回転し、ボルトやナットに回転力を与えて初期の締め付けが行われる。ばね部材23が主ハンマ20に対して付勢力Bを加えているため、鋼球19は、図5(a)に示すように、案内溝11bにおける最前部に位置する。このときハンマ爪20aとアンビル爪22bとは、最大係合長で係合した状態にある。
ボルトやナットの締め付けが進むに伴ってアンビル22に加わる負荷トルクが大きくなると、主ハンマ20にY方向の回転力が生じる。そして負荷トルクが所定値を超えると、ばね部材23の付勢力Bに抗して、鋼球19が案内溝11bおよび係合溝20bの斜面に沿って矢印Fで示す方向に移動し、主ハンマ20が後退する方向(X方向)に移動する。
そして鋼球19が傾斜溝内を移動して、主ハンマ20がX方向に、ハンマ爪20aとアンビル爪22bとの最大係合長分の距離を移動すると、図6(b)に示すように、ハンマ爪20aとアンビル爪22bとの係合が解除される。
ハンマ爪20aがアンビル爪22bから外れると、押し縮められたばね部材23の付勢力Bが開放されることによって、主ハンマ20は高速で、回転力Aが加えられている方向に回転しながら、付勢力Bにより前進する。
そして図6(c)に示すように、ハンマ爪20aが、矢印Gで示す軌跡で移動してアンビル爪22bに衝突し、アンビル22に回転方向の打撃力を付与する。その後、反動によりハンマ爪20aは、軌跡Gとは逆方向に移動するが、最終的には、回転力Aおよび付勢力Bにより図6(a)に示す状態に戻る。以上の動作が高速で繰り返され、主ハンマ20による回転打撃力がアンビル22に対して繰り返し付与される。
以上はボルトやナットを締め付ける際の動作についての説明であるが、締め付けられたボルトやナットを緩める際にも、回転打撃機構により締め付け時と同様の動作が行われる。この場合、駆動部10を締め付け時とは逆方向に回転させることにより、鋼球19が図5(a)に示す案内溝11bに沿って右上方に移動し、ハンマ爪20aがアンビル爪22bを、締め付け時とは逆方向に打撃する。
実施形態の回転打撃工具1はダブルハンマ構成を採用するため、回転方向の衝撃の大きさは、主ハンマ20および副ハンマ21の合計の慣性モーメントに比例する一方で、回転軸線方向の衝撃の大きさは、主ハンマ20の質量に比例する。主ハンマ20および副ハンマ21の合計の質量をもつ1つのハンマを用いた回転打撃工具と比較すると、実施形態の回転打撃工具1は、回転方向の衝撃の大きさをそのままに、回転軸線方向の衝撃の大きさを低減する。主ハンマ20の質量を副ハンマ21の質量と比較してできるだけ小さくすることで、回転軸線方向に生じる衝撃力をより小さくすることが可能となる。
さらに実施形態の回転打撃工具1では、慣性モーメントの大きさが回転半径の2乗に比例することを利用して、慣性モーメントの増大を図っている。すなわち質量の大きい副ハンマ21を主ハンマ20の外周側に設けることで、副ハンマ21の慣性モーメントを大きくし、ダブルハンマによる回転方向の衝撃力を増大させている。
図7は、実施形態に係る副ハンマ支持構造を示す図である。図8は、副ハンマ支持構造において鋼球が受ける荷重方向を示す。副ハンマ支持構造は、副ハンマ21とキャリア16との間に複数の鋼球17を配置した構造をもつ。
副ハンマ21の環状仕切部21eの後面に、鋼球17を保持するための環状の第1保持溝21gが設けられる。第1保持溝21gの回転軸線方向の断面は、円弧状に形成されており、第1保持溝21gの断面半径は、鋼球17の半径よりも大きい。またキャリア16の前側部材16bの前面外周に、鋼球17を保持するための環状の第2保持溝16aが設けられる。第2保持溝16aの回転軸線方向の断面は、円弧状に形成されており、第2保持溝16aの断面半径は、鋼球17の半径よりも大きい。
このように第1保持溝21gおよび第2保持溝16aを形成して、鋼球17を第1保持溝21gと第2保持溝16aの間に挟み込むことで、鋼球17は、第1保持溝21gおよび第2保持溝16aに安定且つ確実に接触する。これにより鋼球17は、副ハンマ21を好適に支持できるようになる。
図8に示すように、鋼球17は、スピンドル11の回転軸線方向および径方向とは異なる方向の荷重を受けるように第1保持溝21gと第2保持溝16aの間に配置される。回転打撃工具1では、回転打撃機構による回転打撃衝撃により、回転軸線方向の荷重と径方向の荷重がそれぞれ発生する。実施形態の副ハンマ支持構造は、複数の鋼球17が、回転軸線方向および径方向とは異なる方向の荷重を受けることにより、たとえば転がり軸受で副ハンマ21を支持する場合と比べると、副ハンマ支持構造の小型化を実現している。
ここで鋼球17に作用する回転軸線方向の荷重と、径方向の荷重の大きさを比較すると、回転軸線方向にはばね部材23によるばね荷重がかかるため、回転軸線方向荷重の方が径方向荷重よりも大きい。そこで、かかる荷重の合力を分散させるために、鋼球17が受ける荷重方向と径方向のなす角度をαとすると、αを45度よりも小さい角度に設定することが好ましい。これにより、回転軸線方向の荷重を効果的に分散させることができ、鋼球17の寿命を延ばすことが可能となる。
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
実施形態の副ハンマ支持構造では、鋼球17を副ハンマ21とキャリア16の間に配置したが、変形例では、鋼球17を、副ハンマ21と、スピンドル11より大きな外径を有する部材との間に配置して、副ハンマ21を支持させてもよい。
本発明の一態様の概要は、次の通りである。
本発明のある態様の回転打撃工具(1)は、駆動部(10)と、駆動部により回転されるスピンドル(11)と、スピンドルの回転軸線方向の前方に配置されたアンビル(22)と、スピンドルの回転軸線を中心に回転可能且つ回転軸線方向に移動可能な主ハンマ(20)と、スピンドル側の案内溝(11b)と主ハンマ側の係合溝(20b)との間に第1鋼球(19)を配置したカム構造と、主ハンマを収容して主ハンマと一体に回転可能な副ハンマ(21)と、案内溝の後方側に設けられて案内溝が形成されたスピンドルの部分より大きい外径を有する大径部(16)と、を備える。この態様の回転打撃工具は、副ハンマと大径部の間に第2鋼球(17)を配置した副ハンマ支持構造をさらに備え、副ハンマ支持構造において、第2鋼球(17)は、回転軸線方向および回転軸線方向に直交する径方向とは異なる方向の荷重を受けるように、副ハンマと大径部の間に配置される。
本発明のある態様の回転打撃工具(1)は、駆動部(10)と、駆動部により回転されるスピンドル(11)と、スピンドルの回転軸線方向の前方に配置されたアンビル(22)と、スピンドルの回転軸線を中心に回転可能且つ回転軸線方向に移動可能な主ハンマ(20)と、スピンドル側の案内溝(11b)と主ハンマ側の係合溝(20b)との間に第1鋼球(19)を配置したカム構造と、主ハンマを収容して主ハンマと一体に回転可能な副ハンマ(21)と、案内溝の後方側に設けられて案内溝が形成されたスピンドルの部分より大きい外径を有する大径部(16)と、を備える。この態様の回転打撃工具は、副ハンマと大径部の間に第2鋼球(17)を配置した副ハンマ支持構造をさらに備え、副ハンマ支持構造において、第2鋼球(17)は、回転軸線方向および回転軸線方向に直交する径方向とは異なる方向の荷重を受けるように、副ハンマと大径部の間に配置される。
副ハンマ支持構造は、副ハンマ側の第1保持溝(21g)と大径部側の第2保持溝(16a)の間に、複数の第2鋼球(17)を配置した構造を有してよい。第1保持溝および第2保持溝の回転軸線方向の断面は円弧状であってよく、また第1保持溝および第2保持溝の半径は、第2鋼球(17)の半径よりも大きいことが好ましい。
第2保持溝(16a)は、大径部の前面外周に設けられてよい。また大径部は、スピンドル(11)の後端側に位置して動力伝達用の歯車を収容するキャリア(16)であってよい。
1・・・回転打撃工具、10・・・駆動部、11・・・スピンドル、11b・・・案内溝、12・・・動力伝達機構、16・・・キャリア、16a・・・第2保持溝、17,19・・・鋼球、20・・・主ハンマ、20b・・・係合溝、21・・・副ハンマ、21e・・・環状仕切部、21g・・・第1保持溝、22・・・アンビル、23・・・ばね部材。
Claims (6)
- 駆動部と、前記駆動部により回転されるスピンドルと、前記スピンドルの回転軸線方向の前方に配置されたアンビルと、前記スピンドルの回転軸線を中心に回転可能且つ回転軸線方向に移動可能な主ハンマと、前記スピンドル側の案内溝と前記主ハンマ側の係合溝との間に第1鋼球を配置したカム構造と、前記主ハンマを収容して前記主ハンマと一体に回転可能な副ハンマと、前記案内溝の後方側に設けられて前記案内溝が形成された前記スピンドルの部分より大きい外径を有する大径部と、を備えた回転打撃工具であって、
前記副ハンマと前記大径部の間に第2鋼球を配置した副ハンマ支持構造をさらに備え、
前記副ハンマ支持構造において、前記第2鋼球は、回転軸線方向および回転軸線方向に直交する径方向とは異なる方向の荷重を受けるように、前記副ハンマと前記大径部の間に配置される、
ことを特徴とする回転打撃工具。 - 前記副ハンマ支持構造は、前記副ハンマ側の第1保持溝と前記大径部側の第2保持溝の間に、複数の第2鋼球を配置した構造である、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転打撃工具。 - 前記第1保持溝および前記第2保持溝の回転軸線方向の断面は、円弧状である、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転打撃工具。 - 前記第1保持溝および前記第2保持溝の半径は、前記第2鋼球の半径よりも大きい、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転打撃工具。 - 前記第2保持溝は、前記大径部の前面外周に設けられる、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の回転打撃工具。 - 前記大径部は、前記スピンドルの後端側に位置して動力伝達用の歯車を収容するキャリアである、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の回転打撃工具。
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