JP2014162391A - 車両用サイドエアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】着座乗員の胸部がサイドエアバッグから受ける負荷を軽減すると共に、エネルギ吸収ストローク及び肩部の拘束性を良好に確保する。
【解決手段】サイドエアバッグ装置では、肩拘束部30Aを備えたサイドエアバッグ20が膨張展開すると、テザー72によってサイドエアバッグ20が部分的に膨張を抑制され、上腕部Aに対して下方側から対向する棚状部74が形成される。このサイドエアバッグ20が側面衝突の衝撃により着座乗員Pとドアトリム68との間で荷重を受け、その内圧が上昇すると、縫製部T4が破断してテザー72による上記膨張抑制が解除される。これにより、前側バッグ部28における棚状部74の周辺が膨張するので、その膨張圧によって着座乗員Pの上腕部Aを上方側へ押し上げることができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、車両の側面衝突時にサイドエアバッグによって着座乗員を拘束する車両用サイドエアバッグ装置に関する。
下記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、サイドエアバッグにおいて、膨張展開状態で乗員の肘部と対応する部位に、当該部位の厚さを規制するための厚み規制部(シーム)が形成されている。これにより、乗員の肘部がサイドエアバッグによって車両幅方向内側へ過度に押圧されるのを防止して、乗員の胸部の保護を適切に行うようにしている。
一方、下記特許文献2に記載されたサイドエアバッグ装置では、サイドエアバッグが、膨張展開時に乗員の肩部を拘束する肩拘束部と、肩拘束部よりも車両前側で乗員の脇より低い位置にあるアームサポート縁とを備えている。このサイドエアバッグ装置では、比較的耐性の高い着座乗員の肩部を肩拘束部によって拘束する一方、着座乗員の上腕部をアームサポート縁に載せることにより、比較的耐性の低い着座乗員の胸部とサイドエアバッグとの間に上腕部が介在することを抑制し、胸部が受ける負荷を軽減するようにしている。
特開2005−053465号公報 特開2010−132072号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、厚み規制部の周辺部でサイドエアバッグの膨張厚が薄くなるため、エネルギ吸収ストロークが減少してしまう。
一方、上記特許文献2に記載されたサイドエアバッグ装置では、サイドエアバッグの肩拘束部が、肩部の後部のみを拘束するように形成されているため、肩部の拘束性を良好にする観点で改善の余地がある。
本発明は上記事実を考慮し、着座乗員の胸部がサイドエアバッグから受ける負荷を軽減することができると共に、エネルギ吸収ストローク及び肩部の拘束性を良好に確保することができる車両用サイドエアバッグ装置を得ることを目的とする。
請求項1に記載の発明に係る車両用サイドエアバッグ装置は、車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部に設けられ、車両の側面衝突が検知又は予知された場合に作動されてガスを発生させるインフレータと、前記側部に設けられ、前記インフレータからのガスが内部に供給されて着座乗員と車体側部との間へ膨張展開し、着座乗員の肩部から少なくとも腹部までを拘束すると共に、内部に取り付けられた膨張抑制部材によって部分的に膨張を抑制されることにより着座乗員の上腕部に対して下方側から対向する棚状部が形成され、内圧の上昇によって前記抑制が解除されるサイドエアバッグと、を備えている。
請求項1に記載の発明では、車両の側面衝突が検知又は予知された場合に、インフレータが作動される。すると、インフレータから発生するガスがサイドエアバッグの内部に供給されてサイドエアバッグが膨張展開し、着座乗員の肩部から少なくとも腹部までがサイドエアバッグによって拘束される。このサイドエアバッグの内部には、膨張抑制部材が取り付けられており、当該膨張抑制部材によってサイドエアバッグが部分的に膨張を抑制される。これにより、サイドエアバッグには、着座乗員の上腕部に対して下方側から対向する棚状部(段差部)が形成される。
上記の状態で、例えば、サイドエアバッグが側面衝突の衝撃により着座乗員と車体側部との間で荷重を受けることにより、サイドエアバッグの内圧が上昇すると、膨張抑制部材による上記膨張抑制が解除される。これにより、サイドエアバッグにおける上記棚状部の周辺が膨張するので、その膨張圧によって着座乗員の上腕部を上方側へ押し上げることができる。その結果、着座乗員の胸部とサイドエアバッグとの間に上腕部が介在しないようにすることができるので、胸部が受ける負荷を軽減することができる。
しかも、上記膨張抑制が解除されることにより、サイドエアバッグの膨張厚が増加するため、エネルギ吸収ストロークを良好に確保することができる。また、上腕部を押し上げるための構成とは関係なく、サイドエアバッグにおける着座乗員の肩部を拘束する部位の形状を設定することができるので、肩部の拘束性を良好に確保することができる。
請求項2に記載の発明に係る車両用サイドエアバッグ装置は、請求項1において、前記膨張抑制部材は、膨張展開した前記サイドエアバッグの基布における乗員側部分と車体側部側部分との間に、車両幅方向外側へ向かって斜め下方へ延びるように架け渡されている。
請求項2に記載の発明では、上記のように膨張抑制部材が架け渡されているため、膨張展開したサイドエアバッグの基布における乗員側部分が、膨張抑制部材によって車両幅方向外側へ向かって斜め下方側へ引っ張られる。これにより、サイドエアバッグにおける着座乗員側の面に棚状部の段差形状を良好に形成することができる。
請求項3に記載の発明に係る車両用サイドエアバッグ装置は、請求項2において、前記膨張抑制部材は、膨張展開した前記サイドエアバッグを車幅方向から見た場合に、前記乗員側部分に縫製された端部が、前記車体側部側部分に縫製された端部に対して車両前方斜め上方に位置する。
請求項3に記載の発明では、上記のように膨張抑制部材が架け渡されているため、サイドエアバッグにおける乗員側の面に形成される棚状部を、車両前方斜め下方向きに傾斜させることができる。それにより、棚状部が着座乗員の上腕部に沿うようにすることができるので、棚状部を上腕部の下面に良好に係合させることができる。
請求項4に記載の発明に係る車両用サイドエアバッグ装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項において、前記膨張抑制部材の一端部と前記サイドエアバッグの基布との縫製部が破断することにより前記抑制が解除される。
請求項4に記載の発明では、膨張抑制部材の一端部とサイドエアバッグの基布との縫製部が、破断可能な所謂ティアシームとされており、サイドエアバッグの内圧の上昇によって当該ティアシームが破断する。これにより、簡単な構成で膨張抑制部材による膨張抑制を解除することができる。
請求項5に記載の発明に係る車両用サイドエアバッグ装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項において、前記膨張抑制部材に設けられた脆弱部において前記膨張抑制部材が破断されることにより前記抑制が解除される。
請求項5に記載の発明では、膨張抑制部材に脆弱部が設けられており、サイドエアバッグの内圧の上昇により膨張抑制部材が脆弱部において破断する。これにより、簡単な構成で膨張抑制部材による膨張抑制を解除することができる。
請求項6に記載の発明に係る車両用サイドエアバッグ装置は、請求項1〜請求項5の何れか1項において、前記サイドエアバッグは、前側バッグ部と後側バッグ部とに仕切られており、着座乗員の胸部及び腹部の前部が前記前側バッグ部によって拘束され、着座乗員の肩部と胸部及び腹部の後部とが前記後側バッグ部によって拘束されると共に、前記前側バッグ部内に前記膨張抑制部材が設けられている。
請求項6に記載の発明では、サイドエアバッグが前側バッグ部と後側バッグ部とに仕切られているため、例えば前側バッグ部の内圧を後側バッグ部の内圧よりも低く設定することができる。それにより、相対的に荷重耐性が高い着座乗員の肩部と胸部及び腹部の後部とを、内圧が高い後側バッグ部によって効果的に拘束する一方、相対的に荷重耐性が低い着座乗員の胸部及び腹部の前部を、前側バッグ部によってソフトに拘束することができ、着座乗員の各部の荷重耐性に応じた適切な拘束が可能になる。
以上説明したように、本発明に係る車両用サイドエアバッグ装置では、着座乗員の胸部がサイドエアバッグから受ける負荷を軽減することができると共に、エネルギ吸収ストローク及び肩部の拘束性を良好に確保することができる。
本発明の第1実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置が搭載された車両用シートの側面図であり、サイドエアバッグの膨張展開途中の状態を示す図である。 同サイドエアバッグを拡大して示す拡大側面図である。 図2のF3−F3線に沿った切断面を示す断面図である。 図2のF4−F4線に沿った切断面を示す断面図である。 図2のF5−F5線に沿った切断面に縮小して示す縮小断面図である。 テザーの一端部とサイドエアバッグの基布との縫製が破断して、テザーによる膨張抑制が解除された状態を示す図5に対応した断面図である。 テザーの第1変形例を示す斜視図である。 テザーの第2変形例を示す側面図である。
<第1の実施形態>
本発明の第1実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置10について、図1〜図6に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印OUTは、車両の前方向(進行方向)、上方向、車両幅方向の外側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下を示すものとする。
(構成)
図1に示されるように、本第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置10は、車両用シート12におけるシートバック14のドア側サイド部14A(車両幅方向外側の側部:図4に示されるサイドドア66側の側部)に搭載されている。このシートバック14は、シートクッション16の後端部に傾倒可能に連結されており、上端部にはヘッドレスト18が連結されている。
なお、本実施形態では、車両用シート12の前後方向、左右方向(幅方向)及び上下方向は、車両の前後方向、左右方向(幅方向)及び上下方向と一致している。また、図1では、車両用シート12には実際の乗員の代わりに、衝突試験用のダミーPが着座している。このダミーPは、例えばWorldSID(国際統一側面衝突ダミー:World Side Impact Dummy)のAM50(米国人成人男性の50%をカバーするモデル)である。以下、説明をわかり易くするため、ダミーPを「着座乗員P」と称する。
サイドエアバッグ装置10は、サイドエアバッグ20と、該サイドエアバッグ20内でガスを発生させるインフレータ22(ガス発生手段)とを主要部として構成されている。サイドエアバッグ20は、折り畳まれてインフレータ22等と共にユニット化(モジュール化)された状態でドア側サイド部14Aの内部に配設(格納)されており、インフレータ22から発生するガスの圧力で着座乗員Pとサイドドア66のドアトリム68(図5及び図6参照)との間に膨張展開する。この膨張展開の際には、シートバックパッド17(図3参照)及びシート表皮(図示省略)がサイドエアバッグ20の膨張圧を受けて破断される構成になっている。なお、以下の説明に記載するサイドエアバッグ20の前後上下の方向は、特に断りのない限り、サイドエアバッグ20が膨張展開した状態での方向を示すものであり、シートバック14の前後上下の方向と略一致している。
図1〜図6に示されるように、サイドエアバッグ20は、所謂2チャンバサイドエアバッグであり、例えばナイロン系又はポリエステル系の布材を切り出して形成された1枚の基布24が縫製されることにより袋状に形成されている。この基布24は、折れ線Kに沿って二つ折りにされると共に、折れ線Kを介した一側部分24A(乗員側部分)と他側部分24B(車体側部側部分:反乗員側部分)とが重ね合わされて外周縁部を縫製部T1(図1及び図2では図示省略)において縫製されている。なお、2枚の基布が重ね合わされて外周縁部を縫製されることによりサイドエアバッグ20が形成される構成にしてもよい。
このサイドエアバッグ20は、膨張展開状態で、基布24の一側部分24Aが車両幅方向内側(着座乗員P側)を向き、基布24の他側部分24Bが車両幅方向外側(サイドドア66側)を向くように配設されている。また、このサイドエアバッグ20は、図1及び図2に示される如く膨張展開状態を側面視で見た場合に、シートバック高さ方向に沿って長尺な略長円形状を成すように形成されており、着座乗員Pの肩部S、胸部C、腹部B及び腰部Lを拘束可能な大きさに形成されている。なお、サイドエアバッグ20が、着座乗員Pの腰部Lを拘束せず、肩部Sから腹部Bまでを拘束する構成にしてもよい。
サイドエアバッグ20の内部は、仕切部である仕切布26によって仕切られている。この仕切布26は、基布24と同様の布材によって長尺帯状に形成されており、一方の長辺縁部が縫製部T2(図3〜図6参照。図1及び図2では図示省略)において基布24の一側部分24Aに縫製され、他方の長辺縁部が縫製部T3(図3〜図5参照。図1及び図2では図示省略)において基布24の他側部分24Bに縫製されている。この仕切布26は、サイドエアバッグ20の上下方向中間部から下部にかけてシートバック高さ方向に延びる縦仕切部26Aと、縦仕切部26Aの上端からシートバック14の前方斜め上方へ延びる上仕切部(傾斜仕切部)26Bとによって構成されており、サイドエアバッグ20を前側バッグ部28と後側バッグ部30とに仕切っている。
前側バッグ部28の内部は、前側チャンバ32とされ、後側バッグ部30の内部は、後側チャンバ34とされている。前側チャンバ32と後側チャンバ34とは、縦仕切部26Aの上部に形成された連通口36を介して互いに連通されている。
上記の縦仕切部26Aは、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両幅方向から見た場合に、着座乗員Pのヒップポイントと重なる位置から肩部Sの中心へ向けて脇部の下側近傍まで延在するように設定されている。なお、肩部Sの中心の位置は、ダミーPの肩部Sに設けられたボルトの軸心の位置とされる。
この縦仕切部26Aは、サイドエアバッグ20の膨張展開状態で、着座乗員Pの胸部C、腹部B及び腰部Lの前後方向中間部と対向するように設けられており、着座乗員Pの胸部C、腹部B及び腰部Lの前部(前半部)が前側バッグ部28によって拘束され、胸部C、腹部B及び腰部Lの後部(後半部)が後側バッグ部30によって拘束される構成になっている。この縦仕切部26Aの付近では、図3に示されるように、サイドエアバッグ20の車両幅方向内側面が車両幅方向外側へ凹んで凹部40が形成される。この凹部40は、縦仕切部26Aに沿ってシートバック高さ方向に延在する。この凹部40が胸部Cの前後方向中央部(すなわち車両幅方向外側へ最も張り出した部分)と対向するようになっている。
一方、上記の上仕切部26Bは、シートバック14の前後方向、すなわちシート側面視でシートバック14の高さ方向(図2の一点鎖線Yに沿った方向)と直交する方向(図2の一点鎖線Xに沿った方向)に対して、シートバック14の前方側へ向かうに従い上昇するように傾斜している。なお、シートバック14の高さ方向とは、シートバックフレーム15の上端部の前後方向中央とリクライニングロッド46の軸心とを結ぶ方向である。また、本実施形態では、シートバック14の前後方向に対する上仕切部26Bの傾斜角度θは、30〜60度の範囲内が好ましく、より好ましくは40〜50度の範囲内に設定されている。
この上仕切部26Bは、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両幅方向から見た場合に、着座乗員Pの肩部Sの中心と上腕部Aの長手方向中央部(上腕部Aの重心ACの位置又は重心ACの近傍の位置)との間の中央付近に位置するように設定されている。この上仕切部26Bが設定されることにより、後側バッグ部30の上部には前側バッグ部28と区画された肩拘束部30Aが形成されている。この肩拘束部30Aは、前側バッグ部28の上方側で車両前方側へ延びて着座乗員Pの肩部Sを拘束する。
また、上仕切部26Bの付近では、図5及び図6に示されるように、サイドエアバッグ20の車両幅方向内側面が車両幅方向外側へ凹んで凹部42が形成される。この凹部42は、上仕切部26Bに沿ってシートバック14の前方斜め上方へ延びるように延在する。また、前側バッグ部28の車両幅方向内側面は、上下方向中央部よりも上方側が車両幅方向外側へ向かうに従い上昇するように湾曲するようになっている。
なお、本実施形態では、基布24及び仕切布26が縫製されることによりサイドエアバッグ20が形成されているが、これに限らず、サイドエアバッグ20の製造方法は特に限定されない。例えば、自動織機による袋織り工法(所謂OPW工法)によってサイドエアバッグが形成される構成にしてもよい。
また、本実施形態では、縦仕切部26A及び上仕切部26Bの両方が仕切布26によって構成されているが、これに限らず、縦仕切部26Aを仕切布26によって構成し、上仕切部をシーム(縫製部)によって構成してもよい。また、縦仕切部26A及び上仕切部26Bの両方をシームによって構成してもよい。さらに、本実施形態では、図1及び図2に示されるように、縦仕切部26A及び上仕切部26Bが側面視で直線状に展開するように設定されているが、これに限らず、縦仕切部26A及び上仕切部26Bが側面視で円弧状に展開するようにしてもよい。
一方、インフレータ22は、所謂シリンダータイプのインフレータであり、円柱状に形成されている。このインフレータ22は、軸線方向がシートバック14の高さ方向に沿う状態で後側バッグ部30の内部に配設されており、サイドエアバッグ20が膨張展開した状態では、後側バッグ部30の後端部における上下方向中央部付近に位置するように設けられている。
インフレータ22の外周部からは、車両幅方向内方側へ向けて上下一対のスタッドボルト48(図3参照)が突出している。これらのスタッドボルト48は、基布24の一側部分24A及びシートバックフレーム15のサイドフレーム15Aを貫通しており、先端側にナット50が螺合している。これにより、インフレータ22がサイドエアバッグ20と共にサイドフレーム15Aに締結固定(所謂側面締め)されている。なお、インフレータ22の外周部から車両後方側へ突出したスタッドボルトがサイドフレーム15Aに固定されたブラケット等を車両前方側から貫通してナットに螺合される構成(所謂背面締め)にしてもよい。
このインフレータ22の下端部には、ガス噴出口22Aが設けられており、インフレータ22が作動した際には、ガス噴出口22Aからガスが噴出される。このインフレータ22には、図1に示されるように、車両に搭載された側突ECU52が電気的に接続されている。この側突ECU52には、側面衝突を検知する側突センサ54が電気的に接続されている。側突ECU52は、側突センサ54からの信号に基づいて側面衝突(の不可避)を検知した際にインフレータ22を作動させる構成とされている。なお、側突ECU52に側面衝突を予知(予測)するプリクラッシュセンサが電気的に接続されている場合には、プリクラッシュセンサからの信号に基づいて側突ECU52が側面衝突を予知した際にインフレータ22が作動される構成にしてもよい。
上述のインフレータ22は、インナチューブ(整流布)56によって覆われている。このインナチューブ56は、サイドエアバッグ20の基布24と同様の布材によって筒状に縫製されたものであり、当該インナチューブ56の内側にインフレータ22が挿入されている。このインナチューブ56には、インフレータ22の上下一対のスタッドボルト48が貫通しており、インフレータ22と基布24の一側部分24Aとの間に挟持されている。
このインナチューブ56は、インフレータ22から噴出されたガスを、上下の開口によって上方側及び下方側へ案内する機能(ガスを整流する機能)を有している。インナチューブ56の上端開口からは、後側バッグ部30の上部の肩拘束部30Aへ向けてガスが噴出され、インナチューブ56の下端開口からは、後側バッグ部30の下部(腰拘束部)へ向けてガスが噴出される。さらに、後側バッグ部30内に噴出されたガスは、縦仕切部26Aの連通口36を通って前側バッグ部28に供給される。このため、後側バッグ部30の内圧が前側バッグ部28の内圧よりも高くなるようになっている。つまり、本実施形態では、後側バッグ部30内にインフレータ22が設けられること、及び、縦仕切部26Aに連通口36が形成されることにより、後側バッグ部30の内圧を前側バッグ部28の内圧よりも高くする内圧調整手段が構成されている。
また、本実施形態では、図1〜図6に示されるように、前側バッグ部28内には、膨張抑制部材としてのテザー72(膨張抑制布)が配設されている。このテザー72は、基布24と同様の布材によって長尺帯状に形成されており、長手方向一端部72Aが縫製部T4において基布24の一側部分24Aに縫製されている。また、テザー72の長手方向他端部72Bは、前述した縫製部T3において仕切布26の他方の長辺縁部と基布24の他側部分24Bとに共縫いされている。これにより、テザー72が基布24の一側部分24Aと他側部分24Bとの間に架け渡されている。
上記のテザー72は、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両前後方向から見た場合に、車両幅方向外側へ向かって斜め下方へ延びるように配設されている。また、このテザー72は、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両幅方向から見た場合に、一側部分24Aに縫製された長手方向一端部72Aが、他側部分24Bに縫製された長手方向他端部72Bに対して車両前方斜め上方に位置するように配設されており、長手方向一端部72Aを一側部分24Aに縫製した縫製部T4が車両前方斜め下方へ向けて傾斜するように設定されている。
また、上記テザー72の長さ寸法は、前側バッグ部28においてテザー72が架け渡された部位の本来の膨張幅よりも短く設定されている。このため、前側バッグ部28が膨張展開した際には、テザー72が伸張されることにより、前側バッグ部28における縫製部T4の周辺の部位が、テザー72によって縫製部T3側へ引っ張られる。これにより、縫製部T3の周辺で前側バッグ部28の膨張が抑制され、前側バッグ部28における着座乗員P側の面には、図4及び図5に示されるように、車両幅方向外側の斜め下方側へ向けて窪んだ棚状部74(段差部)が形成される。この棚状部74は、着座乗員Pの上腕部Aに対して下方側から近接して対向する(接触する場合を含む)位置とされている。また、この棚状部74は、車両幅方向から見ると、縫製部T4と同様に、車両前方斜め下方へ向けて傾斜するように設定されている。
さらに、本実施形態では、縫製部T4が所謂ティアシームとされており、サイドエアバッグ20が側面衝突の衝撃によって着座乗員Pとドアトリム68との間で圧縮されることにより、前側バッグ部28の内圧が予め設定された値以上に上昇すると、破断するように構成されている。なお、この縫製部T4は、例えば、縫い方、糸の本数、糸の強度などによって破断強度が設定される。
(作用及び効果)
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成のサイドエアバッグ装置10では、側突ECU52が側突センサ54からの信号により側面衝突を検知すると、当該側突ECU52によってインフレータ22が作動される。すると、インフレータ22から噴出されるガスが、インナチューブ56の上端開口から後側バッグ部30の肩拘束部30Aへ向けて噴出されると共に、インナチューブ56の下端開口から後側バッグ部30の下部へ向けて噴出される。さらに、後側バッグ部30内に噴出されたガスが、縦仕切部26Aの連通口36を通って前側バッグ部28に供給される。これにより、サイドエアバッグ20が着座乗員Pとドアトリム68との間に膨張展開し、着座乗員Pの肩部Sから腰部Lまでがサイドエアバッグ20によって拘束される。
前側バッグ部28の内部には、テザー72が取り付けられており、当該テザー72によって前側バッグ部28が部分的に膨張を抑制される。これにより、前側バッグ部28には、着座乗員Pの上腕部Aに対して下方側から対向する棚状部74が形成される。
上記の状態で、サイドエアバッグ20が側面衝突の衝撃により着座乗員Pとドアトリム68との間で荷重を受けることにより、サイドエアバッグ20の内圧が上昇すると、縫製部T4が破断してテザー72による上記膨張抑制が解除される。これにより、図6に示されるように、前側バッグ部28における棚状部74の周辺が膨張するので、その膨張圧によって着座乗員Pの上腕部Aを上方側へ押し上げることができる。その結果、着座乗員Pの胸部Cとサイドエアバッグ20との間に上腕部Aが介在しないようにすることができるので、胸部Cが受ける負荷を軽減することができる。
しかも、テザー72による膨張抑制が解除されることにより、前側バッグ部28の膨張厚が増加するため、エネルギ吸収ストロークを良好に(十分に)確保することができる。また、上腕部Aを押し上げるための構成とは関係なく、サイドエアバッグ20の肩拘束部30Aの形状を設定することができるので、肩部Sの拘束性を良好に確保することができる。
また、上記のテザー72は、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両前後方向から見た場合に、車両幅方向外側へ向かって斜め下方へ延びるように、基布24の一側部分24Aと他側部分24Bとの間に架け渡されている。これにより、基布24の一側部分24Aが車両幅方向外側へ向かって斜め下方側へ引っ張られるので、サイドエアバッグ20における着座乗員P側の面に棚状部74の段差形状を良好に形成することができる。
さらに、このテザー72は、膨張展開したサイドエアバッグ20を車幅方向から見た場合に、基布24の一側部分24Aに縫製された長手方向一端部72Aが、他側部分24Bに縫製された長手方向他端部72Bに対して車両前方斜め上方に位置する。これにより、前側バッグ部28の乗員側の面に形成される棚状部74を、車両前方斜め下方向きに傾斜させることができる。それにより、棚状部74が着座乗員Pの上腕部Aに沿うようにすることができるので、棚状部74を上腕部Aの下面に良好に係合させることができる。
また、本実施形態では、テザー72の長手方向一端部72Aとサイドエアバッグ20の基布24との縫製部T4が、破断可能な縫製部(所謂ティアシーム)とされており、サイドエアバッグ20の内圧の上昇によって当該縫製部T4が破断する。これにより、簡単な構成でテザー72による前側バッグ部28の膨張抑制を解除することができる。
また、本実施形態では、サイドエアバッグ20が前側バッグ部28と後側バッグ部30とに仕切られると共に、後側バッグ部30内にインフレータ22が設けられており、前側バッグ部28の内圧が後側バッグ部30の内圧よりも低くなるように構成されている。これにより、相対的に荷重耐性が高い着座乗員Pの肩部Sと胸部C及び腹部Bの後部とを、内圧が高い後側バッグ部30によって効果的に拘束する一方、相対的に荷重耐性が低い着座乗員Pの胸部C及び腹部Bの前部を、前側バッグ部28によってソフトに拘束することができ、着座乗員Pの各部の荷重耐性に応じた適切な拘束が可能になる。
また、本実施形態では、後側バッグ部30の肩拘束部30Aは、縦仕切部26Aの上端からシートバック14の前方斜め上方へ延びる上仕切部26Bによって前側バッグ部28と区画されており、前側バッグ部28の上方側へ膨張展開する。つまり、シートバック14の前後方向に対して前上がりに延びる上仕切部26Bが設定されることにより、後側バッグ部30の上部(肩拘束部30A)が前側バッグ部28の上方側で車両前方側へ延びて着座乗員Pの肩部Sを拘束する。このように上仕切部26Bが設定されることにより、後側バッグ部30の容量の増加を抑制しつつ、肩拘束部30Aによる肩部Sの拘束面積を良好に拡大することができる。
さらに、本実施形態では、上仕切部26Bは、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両幅方向から見た場合に、着座乗員Pの肩部Sの中心と上腕部Aの長手方向中央部(上腕部Aの重心AC付近)との間の中央付近に位置する。このため、上腕部Aの重心ACの付近に上仕切部26Bが設定されている場合と比較して、膨張抑制が解除された前側バッグ部28による上腕部Aの押し上げ力を上腕部Aの重心AC付近に良好に作用させることができる。これにより、上腕部Aを効果的に押し上げることが可能になる。
また、本実施形態では、縦仕切部26Aは、サイドエアバッグ20の膨張展開状態を車両幅方向から見た場合に、着座乗員Pの胸部C及び腹部Bの前後方向中央部に沿ってシートバック上下方向に延びるように設定されている。このため、前側バッグ部28と後側バッグ部30とによって、着座乗員Pの胸部C及び腹部Bの側面をその湾曲に沿って前後から覆うように拘束することができる。これにより、胸部C及び腹部Bとサイドエアバッグ20との車両前後方向の位置関係を安定させることができる。
さらに、本実施形態では、サイドエアバッグ20が膨張展開すると、縦仕切部26A及び上仕切部26Bの付近においてサイドエアバッグ20の車両幅方向内側面が車両幅方向外側へ凹む。縦仕切部26Aの付近に形成される凹部40には、胸部Cの側面における前後方向中央部(すなわち車両幅方向外側へ最も張り出した部分)が嵌まり込む。これにより、胸部C(肋骨など)への負荷を低減することができる。また、上仕切部26Bの付近に形成される凹部42には、前側バッグ部28によって押し上げられた上腕部Aが嵌まり込む。これにより、上腕部Aを押し上げられた位置に良好に拘束することができる。
また、本実施形態では、縦仕切部26A及び上仕切部26Bが仕切布26によって構成されているため、当該仕切布26の幅寸法の分だけ前側バッグ部28及び後側バッグ部30の膨張厚(膨張展開状態における車両幅方向の寸法)を増加させることができる。これにより、前側バッグ部28及び後側バッグ部30のエネルギ吸収ストロークを良好に確保することができる。
<実施形態の補足説明>
上記実施形態では、サイドエアバッグ20がインナチューブ56を備えた構成にしたが、本発明はこれに限らず、インナチューブ56が省略された構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、縫製部T4が破断することにより、テザー72による前側バッグ部28の膨張抑制が解除される構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図7に示されるように、テザー72の長手方向中間部に細幅な脆弱部72Cを形成し、前側バッグ部28の内圧が設定値以上に上昇すると、テザー72が脆弱部72Cにおいて破断することにより前側バッグ部28の膨張抑制が解除される構成にしてもよい。
また例えば、図8に示されるように、テザー72の長手方向中間部を折り重ねて縫製部T5(ティアシーム)により縫製し、前側バッグ部28の内圧が設定値以上に上昇すると、縫製部T5が破断することにより、テザー72の長さ寸法が長くなり、前側バッグ部28の膨張抑制が解除される構成にしてもよい。この変形例では、縫製部T5が破断して前側バッグ部28の膨張抑制が解除された状態において、前側バッグ部28の膨張幅をテザー72によって所定の幅に規制することができる。
また、上記実施形態では、仕切布26における縦仕切部26Aの上端部に連通口36が形成された構成にしたが、本発明はこれに限らず、前側バッグ部と後側バッグ部とを連通させる連通口の数及び位置は適宜変更することができる。
また、上記実施形態では、サイドエアバッグ20が、前側バッグ部28と後側バッグ部30とに仕切られた2チャンバサイドエアバッグとされた構成にしたが、本発明はこれに限らず、サイドエアバッグにおけるチャンバの数は適宜変更することができる。
例えば、前側バッグ部及び後側バッグ部とは仕切られた下側バッグ部をサイドエアバッグの下部に設け、当該下側バッグ部(下側チャンバ)によって着座乗員の腰部を拘束する構成にしてもよい。その場合、サイドエアバッグの基布における乗員側部分にテザーの一端部を縫製する一方、後側バッグ部と下側バッグ部とを仕切る仕切布にテザーの他端部を縫製する構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、膨張展開したサイドエアバッグ20を車幅方向から見た場合に、基布24の一側部分24A(乗員側部分)に縫製されたテザー72の長手方向一端部72Aが、基布24の他側部分24Bに縫製された長手方向他端部72Bに対して車両前方斜め上方に位置する構成にしたが、本発明はこれに限らず、サイドエアバッグの膨張展開状態で、テザー72の長手方向両端部における車両前後方向の位置が同じになる構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、サイドエアバッグ20の基布24と同様の布材からなるテザー72が膨張抑制部材(膨張抑制布)とされた構成にしたが、本発明はこれに限らず、ストラップ状の部材、紐状の部材、或いは長尺帯状のゴム材によって膨張抑制部材を形成してもよい。ゴム材によって膨張抑制部材が形成される場合、例えば、サイドエアバッグの内圧上昇によってゴム材が伸びることにより、ゴム材によるサイドエアバッグの膨張抑制が解除される構成にすることができる。
また、上記実施形態では、上仕切部26Bが、サイドエアバッグ20の膨張展開状態において、シートバック14の前方斜め上方へ延びる構成にしたが、本発明はこれに限らず、上仕切部26Bがシートバック14の前後方向に沿って延びる構成にしてもよい。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
10 車両用サイドエアバッグ装置
12 車両用シート
14 シートバック
14A ドア側サイド部(車両幅方向外側の側部)
20 サイドエアバッグ
22 インフレータ
26 仕切布
28 前側バッグ部
30 後側バッグ部
66 サイドドア(車体側部)
72 テザー(膨張抑制部材)
74 棚部

Claims (6)

  1. 車両用シートのシートバックにおける車両幅方向外側の側部に設けられ、車両の側面衝突が検知又は予知された場合に作動されてガスを発生させるインフレータと、
    前記側部に設けられ、前記インフレータからのガスが内部に供給されて着座乗員と車体側部との間へ膨張展開し、着座乗員の肩部から少なくとも腹部までを拘束すると共に、内部に取り付けられた膨張抑制部材によって部分的に膨張を抑制されることにより着座乗員の上腕部に対して下方側から対向する棚状部が形成され、内圧の上昇によって前記抑制が解除されるサイドエアバッグと、
    を備えた車両用サイドエアバッグ装置。
  2. 前記膨張抑制部材は、膨張展開した前記サイドエアバッグの基布における乗員側部分と車体側部側部分との間に、車両幅方向外側へ向かって斜め下方へ延びるように架け渡されている請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
  3. 前記膨張抑制部材は、膨張展開した前記サイドエアバッグを車幅方向から見た場合に、前記乗員側部分に縫製された端部が、前記車体側部側部分に縫製された端部に対して車両前方斜め上方に位置する請求項2に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
  4. 前記膨張抑制部材の一端部と前記サイドエアバッグの基布との縫製部が破断することにより前記抑制が解除される請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
  5. 前記膨張抑制部材に設けられた脆弱部において前記膨張抑制部材が破断されることにより前記抑制が解除される請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
  6. 前記サイドエアバッグは、前側バッグ部と後側バッグ部とに仕切られており、着座乗員の胸部及び腹部の前部が前記前側バッグ部によって拘束され、着座乗員の肩部と胸部及び腹部の後部とが前記後側バッグ部によって拘束されると共に、前記前側バッグ部内に前記膨張抑制部材が設けられている請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
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