JP2014109153A - 建物用制振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】建物への取り付けが容易で、かつ、伝達部材と建物とをより強固に締結できる新規な建物用制振装置を提供する。
【解決手段】建物用制振装置100は、制振ユニット10と、上側伝達部材30と、下側伝達部材40と、固定具90とを備え、下側伝達部材40は、下梁60に固定される下梁側固定部40Aを備え、下梁側固定部は、下梁60の上面に配置される底板部44aを有し、固定具90は、底板部44aの上に配置される下梁側部90aと、下梁側部90aから立ち上がっており、柱70a、70bに当てられた状態で配置される柱側部90bと、下梁側部90aに対して柱側部90bを支承する支承部90cとを備え、下梁側部90aは、下梁60と下梁側固定部40Aとに締結される第1締結部を備え、柱側部90bは、柱70a、70bに締結される第2締結部を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は建物用制振装置に関する。
建物に取り付けられた制振装置は、例えば、特開2009−293213号公報に開示されている。同公報の制振装置は、制振ユニットと、建物に生じたせん断変形を制振ユニットに伝達する伝達機構とを備えている。伝達機構は、建物の上梁に取り付けられた上側伝達部材と、建物の土台に取り付けられた下側伝達部材とを備えている。下側伝達部材は、制振ユニットに接続された部位から、互いの間隔が徐々に拡がるように斜め下方に延びた2本のブレースと、2本のブレースの下端に架け渡された基材とを有している。基材は、座金付きボルトにより建物の土台に締結されている。
特開2009−293213号公報
ところで、上記構成の制振装置では、基材は、建物の土台に取り付けられた座金付きボルトに締結されている。座金付きボルトは、土台を設置する際に、土台の所定位置にボルト挿通孔を空けておき、土台の下側からボルトを通して土台に取り付けておく必要がある。建物を施工した後では土台に座金付きボルトを取り付けるのは難しい。このため、建物を施工した後で、座金付きボルトを用いて制振装置を取り付けるのが難しい。
また、大きな地震時には、制振装置の伝達部材と建物との締結部分に大きな力が作用する。座金付きボルトで制振装置を固定する場合には、座金付きボルトが土台を傷つける場合がある。また、座金付きボルトによって固定された固定箇所にも大きな力が作用するので、制振装置が変形する場合も生じ得る。建物に生じた揺れに対して、制振装置を機能させるには、建物に生じるせん断変形を適切に制振ユニットに付与する必要がある。建物に生じるせん断変形を適切に制振ユニットに付与するには、制振装置の伝達部材と建物との締結部分がずれたり、制御装置の固定箇所が変形したりするのを極力小さく抑えたい。
このようなことを鑑み、ここでは、建物への取り付けが容易で、かつ、伝達部材と建物とをより強固に締結できる新規な建物用制振装置を提案する。
ここで提案される建物用制振装置は、建物の下梁と、下梁に立てられた一対の柱と、一対の柱に架け渡された上梁とで囲まれた矩形の枠組み内に配置されている。ここで、建物用制振装置は、制振ユニットと、上側伝達部材と、下側伝達部材と、固定具とを備えている。
制振ユニットは、制振部材と、制振部材に相対的な変位が入力される一対の取付部とを備えている。
上側伝達部材は、建物の上梁に固定される上梁側固定部と、制振ユニットの一対の取付部のうち一方の取付部に固定される第1ユニット側固定部とを備えている。
下側伝達部材は、建物の下梁に固定される下梁側固定部と、制振ユニットの一対の取付部のうち他方の取付部に固定される第2ユニット側固定部とを備えている。
下梁側固定部は、下梁の上面に沿って配置される底板部を有している。
固定具は、下梁側固定部の底板部の上に配置される下梁側部と、下梁側部から立ち上がっており、柱に当てられた状態で配置される柱側部と、下梁側部と柱側部との間に架け渡され、下梁側部に対して柱側部を支承する支承部とを備えている。
下梁側部は、下梁と下梁側固定部とに締結される第1締結部を備え、柱側部は、柱に締結される第2締結部を備えている。
かかる建物用制振装置によれば、固定具によって、下側伝達部材の下梁側固定部が、下梁および柱に固定される。この際、固定具は、下梁および柱に、例えば、ビスで締結でき、座金付きボルトのように、建物を施工した後で、下梁に取り付けることが難しい締結手段を用いる必要がない。また、固定具は下梁だけでなく柱にも取り付けられる。このため、大きな地震時に、下側伝達部材の下梁側固定部に作用する力を下梁と柱に分散させて下梁側固定部を支持することができる。これにより、下側伝達部材の下梁側固定部を下梁と柱に強固に固定するとともに、下梁に生じる応力の集中を緩和でき、下梁の損傷を小さく抑えることができる。
ここで、下梁側部に設けられた第1締結部には、下梁の長手方向に沿って長い長穴が形成されていてもよい。これにより、下側伝達部材の下梁側固定部に対して、下梁側部の位置を調整することができる。このため、建物用制振装置は、柱の間隔が異なる規格の住宅に対応しても同じ固定具を用いて施工することができる。
また、固定具の下梁側部は、下梁の上面に沿って配置される下梁側固定部の底板部からはみ出ていてもよい。この場合、当該下梁側部と下梁との隙間を埋めるスペーサを備えているとよい。これにより、固定具の下梁側部を、下梁に対して安定させた状態で施工することができる。
下側伝達部材は、第1ユニット側固定部から、互いの間隔が徐々に拡がるように延在した2本のブレースを備えていてもよい。この場合、下側伝達部材の下梁側固定部は、下梁の幅方向において、底板部の両側から立ち上がった側板部を備え、2本のブレースの先端が当該側板部に取り付けられていてもよい。
この場合、固定具の下梁側部は、下梁側固定部の側板部の内側に装着されて、底板部に重ねられていてもよい。固定具の下梁側部が下梁側固定部の側板部の内側に装着されて、底板部に重ねられているので、下梁側固定部の底板部の変形を小さく抑えることができる。
また、この場合、支承部は、下梁側固定部の側板部の内側に装着されていてもよい。支承部は、下梁側固定部の側板部の内側に装着されていることによって、下梁側固定部の側板部の変形を小さく抑えることができる。このように、下側伝達部材の下梁側固定部の変形を小さく抑えることによって、建物の揺れに応じて、制振ユニットをより適切にせん断変形させることができる。
また、支承部は、柱側部の幅方向の中間部分に取り付けられていてもよい。この場合、第2締結部は、柱側部の幅方向の両側に設けられているとよい。この場合、固定具の施工が容易になる。
また、かかる建物用制振装置に用いられる制振ユニットは、オイルダンパなどを用いることができる。また、好適一形態は、対向するプレートと、対向するプレートの間に配置され、各プレートにそれぞれ接着された粘弾性体とを備え、対向するプレートのうち一方のプレートに上側伝達部材が固定され、他方のプレートに下側伝達部材が固定された制振ユニットである。かかる制振ユニットであれば、オイルダンパのように変位する方向に自由度があり、より適切に建物の揺れを小さく抑えるとともに、建物の揺れを早期に減衰させることができる。
本発明の一実施形態に係る制振装置を示す図。 本発明の一実施形態に係る制振装置の制振ユニットを拡大した図。 本発明の一実施形態に係る制振装置の制振ユニットの正面図。 本発明の一実施形態に係る制振装置の制振ユニットの底面図。 本発明の一実施形態に係る制振装置の制振ユニットの側面図。 制振ユニットにせん断変形が作用した状態を示す図。 粘弾性体のヒステリシスループを示す図。 図2のVIII−VIII断面矢視図。 2本のブレースの基端部を示す、下側伝達部材の左側面図。 横軸材とブレースとの取り付け構造を示す図。 基部の平面図。 固定具の平面図。 固定具の下梁側部の長手方向における側面図。 固定具の下梁側部の幅方向における側面図。 固定具と基部と土台との取付構造を示す分解斜視図。 固定具が基部および土台に取り付けられた状態を示す斜視図。 固定具が基部、土台および柱に取り付けられた状態を示す平面図。 図17のXVIII−XVIIIの矢視図。 (a)、(b)は制振装置の使用状態を示す図。 固定具が取り付けられていない場合に生じる基部の変形事例を示す図。
以下、本発明の一実施形態に係る建物用制振装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、同じ作用を奏する部材、部位には、適宜に同じ符号を付している。
<建物用制振装置>
図1は、建物用制振装置100を示している。建物用制振装置100は、図1に示すように、制振ユニット10と、上側伝達部材30と、下側伝達部材40とを備えている。図1に示す例では、制振ユニット10は、建物200の上梁50と、下梁60と、柱70a、70bで囲まれた矩形の枠組み203に配置されている。ここで、上梁50と下梁60と、柱70a、70bは、それぞれ建物200の構造材である。ここで、上梁と下梁は、互いに上下に対向する梁である。
この実施形態では、建物200は、木造住宅である。建物用制振装置100は、建物200の1階に取り付けられている。ここでは、下梁60は、具体的には、アンカーボルトによってコンクリート基礎202に取り付けられる土台であり、以下、適宜に、「土台60」という。また、上梁50は2階床梁であり、以下、適宜に、「2階床梁50」という。
建物用制振装置100は、かかる土台60と、2階床梁50と、土台60から立ち上がり、2階床梁50を支持する建物200の1階の柱70a、70bとで囲まれた矩形の枠組み203に取り付けられている。また、この実施形態では、柱70a、70bには、ホールダウン金物150が取り付けられている。柱70a,70bは、ホールダウン金物150をコンクリート基礎202に埋め込まれたホールダウンボルト105に取り付けて固定されている。また、コンクリート基礎202と土台60との間には、厚さ2cm程度の基礎パッキン106が取り付けられており、コンクリート基礎202内の通気が確保されている。
<制振ユニット10>
図2は、制振ユニット10を拡大した図である。図3から図5は、建物用制振装置100に取り付けられる前の状態における、制振ユニット10がそれぞれ示されている。図3は、制振ユニット10の正面図であり、図4は、制振ユニット10の底面図であり、図5は、制振ユニット10の側面図であり、図3の左側面図である。この制振ユニット10は、制振部材(ここでは、粘弾性体18a、18b)と、制振部材(粘弾性体18a、18b)に相対的な変位が入力される一対の取付部(ここでは、一対のプレート(12、13)、14)とを備えている。
<一対のプレート(12、13)、14>
この実施形態では、一対のプレート(12、13)、14は、それぞれ矩形の鋼板である。図3から図5に示すように、一対のプレート(12、13)、14の法線方向から見て、プレート14に対して、プレート12、13がそれぞれ対向するように配置されている。プレート12とプレート13は、同形状の長方形の鋼板であり、それぞれ向きを揃えて平行に配置されている。プレート14は、長手方向片側がプレート12とプレート13の間に配置され、反対側がプレート12とプレート13からはみ出るように配置されている。
プレート14の片側は、プレート12とプレート13が重なった領域に対して重なっているが、プレート14の反対側は当該領域からはみ出ている。また、プレート12とプレート13の両側は、それぞれプレート14が重なった領域からはみ出ている。プレート12とプレート13の両側部には、プレート14が重なった領域からはみ出た部位に、ボルトを挿通するための挿通孔17が形成されている。また、プレート12およびプレート13と重なった領域からはみ出た、プレート14の一端には、プレート14に直交するようにフランジ15が設けられている。この実施形態では、フランジ15は、プレート14の一端に溶接されている。当該フランジ15には、ボルトを挿通するための挿通孔15aが形成されている。
<粘弾性体18a、18b>
粘弾性体18a、18bは、例えば、高減衰性を有する粘弾性ゴム(制振ゴム)で構成されている。この実施形態では、粘弾性体18a、18bは、それぞれ矩形の平板状に成形されている。粘弾性体18a、18bは、プレート(12、13)、14の法線方向から見て、プレート(12、13)、14が重なった四角形の領域内にそれぞれ配置されている。ここで、粘弾性体18aは、プレート14とプレート12との間に配置されており、プレート14とプレート12とにそれぞれ接着されている。粘弾性体18bはプレート14とプレート13との間に配置されており、プレート14とプレート13とにそれぞれ接着されている。ここで、粘弾性体18a、18bと、プレート(12、13)、14とは、それぞれ加硫接着によって接着されている。
なお、粘弾性体18a、18bとして用いられる高減衰性を有する粘弾性ゴム(制振ゴム)には、例えば、天然ゴム,スチレンブタジエンゴム(SBR),ニトリルブタジエンゴム(NBR),ブタジエンゴム素材(BR),イソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR),ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR),クロロプレンゴム(CR)のゴム素材に、高減衰性を発揮する添加剤を加えて生成された高減衰性ゴム組成物を用いることができる。高減衰性を発揮する添加剤としては、例えば、カーボンブラックなど、種々の添加剤が知られている。
図6に示すように、プレート12およびプレート13に対して、プレート14を平行に移動して、粘弾性体18a、18bにせん断変形を生じさせる。このとき、粘弾性体18a、18bに生じたせん断変位と、せん断荷重との関係から図7に示すようなヒステリシスループA(実測ヒステリシス曲線)が描かれる。図7中、横軸はせん断方向の変位を示し、縦軸はその際のせん断荷重を示している。かかるヒステリシスループAによれば、せん断変位の増加につれてせん断荷重が高くなり、粘弾性体18a、18bの抵抗力が大きくなることが分かる。この粘弾性体18a、18bは、せん断変形を伴う振動を受けると、一周期毎に、当該ヒステリシスループAで囲まれたエネルギに相当するエネルギを吸収し得る。
この制振ユニット10は、上述したように、制振部材として機能する粘弾性体18a、18bと、粘弾性体18a、18bに相対的な変位が入力される一対の取付部として機能する一対のプレート(12、13)、14とを備えている。ここで、一対の取付部として機能する部位は、具体的には、プレート(12、13)に形成された挿通孔17と、プレート14に形成された挿通孔15aとも言える。プレート12とプレート13の両側部に形成された挿通孔17に上側伝達部材30が連結され、プレート14のフランジ15に形成された挿通孔15aに下側伝達部材40が連結される。これにより、上側伝達部材30と下側伝達部材40とを通じて、建物200の2階床梁50と土台60に生じた相対的なせん断変位が一対のプレート(12、13)、14に伝達される。そして、一対のプレート(12、13)、14に伝達されたせん断変位に相当するせん断変位が、制振部材としての粘弾性体18a、18bに入力される。
次に、上側伝達部材30と下側伝達部材40を説明する。上側伝達部材30と下側伝達部材40は、建物200に生じたせん断変位を制振ユニット10に伝達する部材である。
<上側伝達部材30>
上側伝達部材30は、上梁側固定部30Aと、第1ユニット側固定部30Bとを備えている。上梁側固定部30Aは、建物200の2階床梁50に固定される部位である。第1ユニット側固定部30Bは、制振ユニット10の一対の取付部のうち一方の取付部に固定される部位である。この実施形態では、上側伝達部材30は、図2に示すように、制振ユニット10の対向する一対のプレート(12、13)、14のうち、一方のプレート(12、13)と、2階床梁50とに接続される部材である。上側伝達部材30は、図2に示すように、上梁側固定部30Aとして機能するベース32と、第1ユニット側固定部30Bとして機能する取付片34a、34bとを備えている。ベース32は、2階床梁50の下面に沿って配置される鋼板部材である。ベース32には、ボルト挿通孔32aが貫通して形成されている。ベース32は、ボルト挿通孔32aにボルト52を挿通して2階床梁50に取り付けられる。
2つの取付片34a、34bは、ベース32に溶接されており、ベース32から下側に延びる片材である。2つの取付片34a、34bは、上述した制振ユニット10のプレート12、13の間(図4参照)に嵌り、かつ、所要の剛性を有する。2つの取付片34a、34bは、図2に示すように、プレート12、13の間に配置されている制振ユニット10のプレート14に対して、それぞれ所要の間隔をあけて、プレート12、13の両側部に配置されている。この実施形態では、プレート12、13は、上側伝達部材30の2つの取付片34a、34bに、ボルトナット17aで固定されている。かかる2つの取付片34a、34bによって、制振ユニット10のプレート12、13の間隔が保たれる。さらに、プレート14と2つの取付片34a、34bとの間には、プレート14が予め定められた振幅で揺動できるように所要の空隙がある。
<下側伝達部材40>
下側伝達部材40は、下梁側固定部40Aと、第2ユニット側固定部40Bとを備えている。下梁側固定部40Aは、建物200の土台60に固定される部位である。第2ユニット側固定部40Bは、制振ユニット10の一対の取付部のうち他方の取付部に固定される部位である。この実施形態では、下側伝達部材40は、制振ユニット10の対向する一対のプレート(12、13)、14のうち他方のプレート14と、土台60とに接続された部材である。この実施形態では、下側伝達部材40は、図1および図2に示すように、第2ユニット側固定部40Bとして機能するフランジ48が設けられた2本のブレース42a、42bと、下梁側固定部40Aとして機能する基部44とを備えている。フランジ48は、2本のブレース42a、42bの一端に設けられている。下側伝達部材40のフランジ48は、制振ユニット10のプレート14の一端に設けられたフランジ15に面を合わせて当接させて、ボルトナット48aによって締結している。フランジ48には、2本のブレース42a、42bを取り付けるための取付片49が、フランジ48から立ち上がった状態(図2では、フランジ48から下側に延在した状態)で溶接されている。
<ブレース42a、42b>
2本のブレース42a、42bは、プレート14に接続された部位から、互いの間隔が徐々に拡がるように延在している。この実施形態では、2本のブレース42a、42bは、プレート14に接続されるフランジ48から立ち上がった取付片49に溶接されている。2本のブレース42a、42bは、フランジ48から互いの間隔が徐々に拡がるように延在している。2本のブレース42a、42bの間には、複数(図1に示す例では、3つ)の横軸材46が架け渡された状態で溶接されている。これにより、2本のブレース42a、42bは、所要の剛性で、互いの間隔が維持されている。
図8および図9は、2本のブレース42a、42bの上側の基端部42cと、フランジ48に設けられた一対の取付片49、49との取り付け構造を示している。ここで、図8は、図2のVIII−VIII断面矢視図である。また、図9は、2本のブレース42a、42bの基端部42cを示す、下側伝達部材40の左側面図である。この実施形態では、図8および図9に示すように、2本のブレース42a、42bの基端部42cを挟んで対向するように一対の取付片49、49が、フランジ48に設けられている。2本のブレース42a、42bの基端部42cは、当該一対の取付片49、49にそれぞれ取り付けられている。
また、フランジ48と、フランジ48に直交するように設けられたプレート14とは溶接されている。また、フランジ48と、一対の取付片49、49とは、溶接されている。さらに、一対の取付片49、49と、2本のブレース42a、42bの基端部42cとは、それぞれ溶接されている。
また、2本のブレース42a、42bは、図8に示すように、横断面が矩形の角柱材である。2本のブレース42a、42bの基端部42cは、フランジ48に設けられた一対の取付片49、49に挟まれている。この際、図8および図9に示すように、矩形の角柱材からなる2本のブレース42a、42bのうち、横断面において対向する一対の側面a、bが、フランジ48に設けられた一対の取付片49、49にそれぞれ当接している。そして、2本のブレース42a、42bの基端部42cと、一対の取付片49、49とは、2本のブレース42a、42bの側周面の角部c1〜c4に沿って溶接されている。
さらに、この実施形態では、2本のブレース42a、42bの側面と一対の取付片49、49の縁d1、d2とが重なった部位は、一対の取付片49、49の縁d1、d2に沿って溶接されている。これにより、2本のブレース42a、42bと、一対の取付片49、49とが強固に溶接されている。
<横軸材46>
この実施形態では、横軸材46は、2本のブレース42a、42bの中間部分に架け渡されている。横軸材46は、2本のブレース42a、42bに対してピン係合で取り付けられている。図10は、横軸材46とブレース42a、42bとの取り付け構造を示す図であり、図1のX−Xに沿ってブレース42a、42bを横断した端面矢視図である。
図1に示すように、横軸材46は、2本のブレース42a、42b間に架け渡される軸部材である。この実施形態では、2本のブレース42a、42bは、フランジ48に対して、均等な角度で斜めに設けられている。2本のブレース42a、42bの先端43a、43bは、それぞれ基部44に溶接されている。基部44および横軸材46は、フランジ48と凡そ平行になるように、2本のブレース42a、42bに架け渡されている。このように、この実施形態では、2本のブレース42a、42b、基部44および横軸材46は、凡そ等脚台形を構築している。
ここで、基部44は、2本のブレース42a、42bの先端43a、43b(下端)に溶接されている。これに対して、横軸材46は、2本のブレース42a、42bに対してピン係合で取り付けられている。この実施形態では、図10に示すように、横軸材46は、2本の長軸部材(この実施形態では、2枚の長軸の板材)で構成されている。横軸材46は、ブレース42a、42bの前面側と背面側(矩形の枠組み203の表側と裏側)において対向し、2本のブレース42a、42bを挟むように配置されている。横軸材46の両端部46a、46bは、2本のブレース42a、42bにピン係合されている。この実施形態では、横軸材46の両端部46a、46bにボルトを挿通させる孔を開け、2本のブレース42a、42bのブレースにも対応するように孔を開け、ボルト47を挿通させている。そして、当該ボルト47をピンとしてブレース42a、42bと横軸材46とをピン結合によって接合している。かかるピン係合によって、横軸材46の接合部分はブレース42a、42bに対して回転が許容されている。
<基部44(下梁側固定部40A)>
基部44は、図1に示すように、下側伝達部材40の下梁側固定部40Aとして機能する。この実施形態では、基部44は、土台60の長手方向に沿って土台60の上に配置される部位であり、長尺の部材である。基部44は、2本のブレース42a、42bの先端(図示した例では下端)43a、43bに架け渡され、当該2本のブレースの両方に取り付けられている。図11は、基部44の平面図である。この実施形態では、基部44は、図1および図11に示すように、底板部44aと、側板部44b、44bとを備えている。
底板部44aは、土台60の長手方向に沿って土台60の上に配置される長尺の平板状の部位である。底板部44aは、ブレース42a、42bの先端43a、43bに対向している。側板部44b、44bは、土台60の長手方向に沿って、底板部44aの幅方向の両側から互いに対向するように立ち上がった状態で設けられている。側板部44b、44bには、2本のブレース42a、42bの先端が接合される箇所が高くなった溶接部位44c、44cが設けられている。基部44は、底板部44aと側板部44bで構成されており、上部と長さ方向の両端部は開口している。
<基部44とブレース42a、42bとの組み付け>
下側伝達部材40の2本のブレース42a、42bは、基部44の側板部44b、44bの間に入れ込まれて、当該側板部44b、44bに溶接されている。この実施形態では、図1に示すように、2本のブレース42a、42bは、基部44の長手方向の両側の離れた位置にそれぞれ溶接されている。基部44の側板部44b、44bの溶接部位44c、44cは、各ブレース42a、42bに沿ってそれぞれ高くなっている。これにより、基部44と、各ブレース42a、42bとの溶接面積が増え、基部44と各ブレース42a、42bとが強固に固定されている。
基部44の底板部44aは、土台60に固定される。図11に示すように、底板部44aには、基部44を土台60に固定するための複数のビス孔101〜103が形成されている。
ここで、ビス孔103は、長尺の基部44の中間部分を土台60に固定するビス130(図1参照)を取り付けるためのビス孔である。この実施形態では、ビス孔103は、合計8個のビス孔が形成されている。8個のビス孔は、長尺の基部44の中間部分において幅方向に2個、長さ方向に4列並んでいる。
ビス孔102は、ブレース42a、42bが取り付けられる近傍位置において、基部44を土台60に固定するビス120(図1参照)を取り付けるためのビス孔である。ここでは、ビス孔102は、ビス孔103よりも太いビスが装着される。ビス孔102は、基部44の長さ方向において、上記ビス孔103が形成された中間部分の両側で、かつ、基部44の側板部44b、44bにブレース42a、42bが溶接された部位の内側に、それぞれ形成されている。ここでは、ビス孔103が形成された中間部分の両側において、それぞれ4つのビス孔102が形成されている。ビス孔103が形成された中間部分の両側において、4つのビス孔102は、長尺の基部44の幅方向に2個、長さ方向に2列並んでいる。
ビス孔101は、基部44の長さ方向の両端部において、後述する固定具90と、基部44と、土台60を固定するビス110を取り付けるためのビス孔である。ここでは、ビス孔101は、ビス孔103と同程度のビスが装着される。ビス孔101は、基部44の両端部において、それぞれ2つのビス孔が形成されている。2つのビス孔は、長尺の基部44の幅方向に並んでいる。
<固定具90>
次に、固定具90について説明する。固定具90は、図1に示すように、下側伝達部材40の基部44を土台60と柱70a,70bに固定する部材である。ここで、図12は、固定具90の平面図である。図13は、固定具90の下梁側部90aの長手方向における側面図である。図14は、固定具90の下梁側部90aの幅方向における側面図である。固定部90は、所要の剛性を有する金属部材で形成されている。固定具90は、図12〜図14に示すように、下梁側部90aと、柱側部90bと、支承部90cとを備えている。
<下梁側部90a>
ここで、下梁側部90aは、下梁側固定部としての基部44の底板部44aの上に配置される部位である。この実施形態では、下梁側部90aは、図12に示すように、横長の凡そ四角形状の板である。下梁側部90aは、上述した基部44の側板部44b、44bの間に収まりうる幅を有している。下梁側部90aは、基部44の側板部44b、44bの間に収められて、底板部44aの上に重ねられる。
<柱側部90b>
柱側部90bは、図14に示すように、下梁側部90aから立ち上がっており、柱70a、70bに当てられる部位である。柱側部90bは柱70a,70bの一側面に当てられる凡そ縦長の四角形状の板である。柱側部90bは、下梁側部90aの一端から連続しており、下梁側部90aに対して直交している。柱側部90bは、下梁側部90aよりも幅が広く、柱70a,70bと凡そ同じ幅を有している。
<支承部90c>
支承部90cは、図13に示すように、下梁側部90aと柱側部90bとの間に架け渡され、下梁側部90aに対して柱側部90bを支承する部位である。この実施形態では、支承部90cは、図12および図13に示すように、2枚の略三角形の板で構成されている。2枚の支承部90cは、下梁側部90aの幅方向の両側縁部からそれぞれ凡そ垂直に立ち上がり、柱側部90bとの間に架け渡されており、下梁側部90aと柱側部90bとに溶接されている。ここでは、柱側部90bは、2枚の支承部90cが溶接された部位よりも幅が広く、2枚の支承部90cの両側に延び出ている。なお、支承部90cの形状は特に限定されない。
<第1締結部91>
下梁側部90aは、土台60と基部44とに締結される第1締結部91を備えている。第1締結部91は、下梁側部90aのうち基部44の底板部44aの上に重ねられる部位に設けられている。この実施形態では、下梁側部90aの第1締結部91には、基部44の長手方向(土台60に取り付けられた状態において土台60の長手方向に相当)に沿って長い長穴91aが形成されている。
長穴91aは、下梁側部90aを基部44の底板部44aの上に配置したとき、底板部44aに形成されているビス孔101と重なる位置に形成されている。この実施形態では、長穴91aは、基部44の底板部44aに形成されているビス孔101に合わせて下梁側部90aの幅方向に2個形成されている。ここで、固定具90の下梁側部90aに長穴91aが形成されているので、基部44に固定具90を固定する位置を、基部44の長手方向(土台60の長手方向)に沿って調整することができる。
<挿通孔92>
また、下梁側部90aには、下梁側部90aを土台60に対して固定するための複数の挿通孔92が形成されている。挿通孔92は、下梁側部90aに形成された長穴91aよりも柱側部90b側に形成されている。挿通孔92は、丸孔である。この実施形態では、挿通孔92は、下梁側部90aの幅方向に2個形成されている。ただし、挿通孔92の数や位置は特に言及されない限りにおいて限定されない。
<第2締結部93>
柱側部90bは、柱70a、70bに締結される第2締結部93を備えている。この実施形態では、第2締結部93は、支承部90cの両側に延び出た柱側部90bの両側部に設けられている。第2締結部93には、複数のビス孔93aが形成されている。詳しくは、ビス孔93aは、柱側部90bの両側部に、それぞれ3つずつ所要の間隔を開けて形成されている。ビス孔93aはそれぞれ丸孔である。
<スペーサ95>
また、下梁側部90aの底面には、スペーサ95が取り付けられている。スペーサ95は、基部44の底板部44aと凡そ同じ厚さの板材である。スペーサ95は、図1に示すように基部44を土台60に取り付けた際に、柱70a,70bと基部44との間の間隙に装着されるとともに、基部44に取り付けられる固定具90の下梁側部90aが土台60から浮くのを防止する部材である。この実施形態では、スペーサ95は、下梁側部90aの下面96に対して、溶接されており、下梁側部90aに形成された挿通孔92はスペーサ95を貫通している。なお、スペーサ95は、固定具90とは別部材としてもよい。この場合、スペーサ95は、固定具90の下梁側部90aと土台60との間隙に装着し、ビスなどで固定するとよい。
<建物用制振装置100の取り付け構造>
この建物用制振装置100は、図1に示すように、建物200の2階床梁50と、土台60と、柱70a、70bとによって囲まれた矩形の枠組み203内に配置され、土台60と、2階床梁50と、柱70a、70bに取り付けられている。
この建物用制振装置100は、例えば、上側伝達部材30を2階床梁50に取り付け、下側伝達部材40を土台60に取り付ける。次に、上側伝達部材30と下側伝達部材40とに制振ユニット10を取り付ける。ここで、上側伝達部材30は、図1に示すように、ボルト52によって2階床梁50に取り付けられる。下側伝達部材40の基部44は、ビス120、130によって、土台60に取り付けられる。そして、制振ユニット10は、図2に示すように、上側伝達部材30の一対の取付片34a、34bと、下側伝達部材40のフランジ48に取り付けられる。次に、土台60に取り付けられた下側伝達部材40の基部44(下梁側固定部)と柱70a,70bとに、固定具90を取り付ける。
図15は、固定具90と基部44と土台60との取付構造を示す分解斜視図である。図16は、固定具90が基部44および土台60に取り付けられた状態を示す斜視図である。図16では、固定具90の取り付け構造を説明する便宜上、柱70aは、図示を省略している。図17は、固定具90が基部44、土台60および柱70aに取り付けられた状態を示す平面図である。図18は、図17のXVIII−XVIIIの矢視図である。
図16に示すように、固定具90は、土台60に取り付けられた基部44の両端において、下梁側部90aを装着する。この際、図17に示すように、基部44の端部と柱70aとの間隙にスペーサ95を装着し、基部44の底板部44aに下梁側部90aを重ねる。次に、固定具90の柱側部90bを柱70aに当接するように、固定具90の位置を基部44に沿って土台60の長さ方向にずらす。そして、この位置で、固定具90の下梁側部90aに形成された長穴91a、および、基部44に形成されたビス孔101(図11参照)を通じて土台60にビス110をねじ込む。さらに、当該長穴91aよりも柱70a側に形成された挿通孔92(図15参照)を通じて土台60にビス115をねじ込む。これにより、固定具90の下梁側部90aを基部44および土台60に固定することができる。さらに、図18に示すように、固定具90の柱側部90bの両側に形成されたビス孔93a(図16参照)を通じて、柱70aにビス140をねじ込み、柱側部90bを柱70aに固定することができる。なお、図1に示すように、基部44の両側端部は、同様に固定具90を当てた状態で、ビス110およびビス115によって土台60および柱70a,70bに固定されている。
この実施形態では、下側伝達部材40の基部44は、図1に示すように、8本のビス130によって長さ方向の中央部分が土台60に締結されている。さらに、その両側で、かつ、2本のブレース42a、42bの先端が基部44に溶接された溶接部位44c、44cの少し内側に、それぞれ4本のビス120が取り付けられている。このビス120は、中央部分に取り付けたビス130よりも太く強いビスが用いられている。これにより、2本のブレース42a、42bの先端が基部44に溶接された溶接部位44c、44cの少し内側を、強固に土台60に固定することができる。さらに、この実施形態では、基部44の両端部には、固定具90が取り付けられている。固定具90は、基部44の底板部44aに下梁側部90aが重ねられ、基部44の側板部44b、44bの内側に支承部90cが重なり、柱70a、70bに柱側部90bが当接した状態で、柱70a、70bおよび土台60に固定されている。
このため、基部44の両端部において、底板部44aが土台60から浮き上がるのを防止するとともに、基部44の側板部44b、44bが内側において、支承板90cによって支持される。
図19(a)、(b)は、建物用制振装置100が取り付けられた建物200について、2階床梁50と土台60とが水平方向に相対的に変位した状態を示している。ここで、図19(a)は、2階床梁50が、土台60に対して右側に変位した状態を示しており、図19(b)は、2階床梁50が、土台60に対して左側に変位した状態を示している。
かかる建物200において、大きな地震時には、2階床梁50と土台60とが水平方向に相対的な変位を伴って揺れる。このため、2階床梁50に取り付けられた上側伝達部材30と、土台60に取り付けられた下側伝達部材40との間に相対的な変位が生じる。上側伝達部材30と、下側伝達部材40とが相対的に変位すると、制振ユニット10の対向するプレート(12、13)、14に相対的な変位が生じる。対向するプレート(12、13)、14に相対的な変位が生じると、図6に示すように、粘弾性体18a、18bにせん断変形が生じる。大きな地震時には、2階床梁50(上側伝達部材30)およびプレート(12、13)と、土台60(下側伝達部材40)およびプレート14とが水平方向に相対的な変位を伴って揺れる。この際、粘弾性体18a、18bに、繰返しせん断荷重が入力される。
粘弾性体18a、18bは、図7に示すように、せん断荷重に対して抵抗力を有するとともに、せん断変形を伴う振動を受けると、一周期毎に、当該ヒステリシスループAで囲まれたエネルギに相当するエネルギを吸収し得る。このため、この建物用制振装置100は、地震時に建物200の揺れを小さく抑えるとともに、振動を早期に減衰させることができ、建物200に生じる損傷や被害の程度を小さくすることができる。
この際、建物用制振装置100の下側伝達部材40は、図19(a)、(b)に示すように、制振ユニット10から受ける反力F1によって、基部44の端部の一方Tを土台60から引き上げる力F3と、他方Sが土台60に押し付ける力F2が、基部44の両側で交互に繰返し作用する。この際、上述した固定具90が取り付けられていない場合には、図20に示すように、基部44の両側端部が変形することも生じ得る。例えば、基部44の底板部44aは、変形Xのように変形する。
これに対して、建物用制振装置100は、下側伝達部材40の基部44の両側端部と柱70a,70bとに固定具90を当てて、基部44の両側端部を土台60に固定している。この場合、基部44の端部を土台60から引き上げる力F3と、土台60に押し付ける力F2は、固定具90を介して、柱70a,70bへも分散される。特に、図19(a)(b)に示すように、基部44の端部を土台60から引き上げる力F3は、固定具90を介して、柱70aまたは柱70bを外側へ押す力F4となる。柱70aまたは柱70bを外側へ押す力F4は、2階床梁50と土台60と柱70a,70bで囲まれる枠体のせん断変形を、元の形に戻すような方向に作用する。このため、基部44の端部を土台60から引き上げる力F3が緩和される。
また、この建物用制振装置100では、下側伝達部材40の下梁側固定部としての基部44が、特に両側端部において土台60に強固に固定される。この場合、基部44の両側端部が、土台60から浮き上がりにくい。このため、2階床梁50と土台60と柱70a,70bで囲まれる枠体のせん断変形に対して、上側伝達部材30と下側伝達部材40が2階床梁50と土台60とからずれ難い。
このため、建物200に大きな揺れが生じた場合に、下側伝達部材40が建物200の土台60の動きに応じて動くのに対して、上側伝達部材30は建物200の2階床梁50(上梁)に応じて動く。このため、下側伝達部材40と、上側伝達部材30との間には、土台60と2階床梁50との相対変位に応じた、適当な相対変位が生じる。これにより、建物200の揺れに対して、制振ユニット10を適切に機能させ、粘弾性体18a、18bに入力されるせん断変形に伴って生じる抗力によって、建物200の揺れを緩和するとともに、建物200の揺れを早期に減衰させることができる。
以上、固定具90の取り付け、および、固定具90を取り付けた効果を説明した。
なお、かかる建物用制振装置100では、下側伝達部材40は、固定具90およびビス110〜140によって、土台60および柱70a,70bに固定されている。このため、この建物用制振装置100は、建物200を施工した後でも特に支障なく取り付けられる。また、この建物用制振装置100は、ビス110〜140を取り外すことによって、建物200から取り外すことができる。このため、この建物用制振装置100は、例えば、大きな地震があった後で、建物用制振装置100が損傷した場合でも新しいものに交換することが容易である。また、この建物用制振装置100は、土台60に座金付きボルトを取り付ける手間が必要ないので、既存の住宅への施工も比較的容易である。
上記のように、かかる建物用制振装置100は、建物200の土台60と、土台60に立てられた一対の柱70a、70bと、一対の柱70a、70bに架け渡された2階床梁50とで囲まれた矩形の枠組み203内に配置されている。この建物用制振装置100は、制振ユニット10と、上側伝達部材30と、下側伝達部材40と、固定具90とを備えている。制振ユニット10は、制振部材(粘弾性体18a、18b)と、制振部材(粘弾性体18a、18b)に相対的な変位が入力される一対の取付部(一対のプレート(12、13)、14)とを備えている。
上側伝達部材30は、建物200の2階床梁50に固定される上梁側固定部30Aと、制振ユニット10の一対の取付部(12,13)、14のうち一方の取付部に固定される第1ユニット側固定部30Bとを備えている。下側伝達部材40は、下梁側固定部40A(基部44)と、第2ユニット側固定部40Bとを備えている。下梁側固定部40A(基部44)は、土台60の上面に沿って配置される底板部44aを有し、固定具90は、下梁側固定部40Aの底板部44aの上に配置される下梁側部90aと、下梁側部90aから立ち上がっており、柱70a、70bに当てられた状態で配置される柱側部90bと、下梁側部90aと柱側部90bとの間に架け渡され、下梁側部90aに対して柱側部90bを支承する支承部90cとを備えている。下梁側部90aは、土台60と下梁側固定部40Aとに締結される第1締結部91を備え、柱側部90bは、柱70a、70bに締結される第2締結部93を備えている。
かかる建物用制振装置100によれば、固定具90によって、下側伝達部材40の基部44が、土台60および柱70a,70bに固定される。この際、固定具90は、土台60および柱70a,70bに、例えば、ビス110およびビス140で締結できる。このため、座金付きボルトのように、建物を施工した後で、土台60に取り付けることが難しい締結手段を用いる必要がない。また、固定具90は土台60だけでなく柱70a,70bにも取り付けられる。このため、大きな地震時に、下側伝達部材40の基部44に作用する力を土台60と柱70a,70bに分散させて基部44を支持することができる。これにより、下側伝達部材40の基部44を土台60と柱70a,70bに強固に固定するとともに、土台60に生じる応力の集中を緩和でき、土台60の損傷を小さく抑えることができる。
また、図12に示すように、固定具90の下梁側部90aに設けられた第1締結部91には、土台60の長手方向に沿って長い長穴91aが形成されていてもよい。これにより、下側伝達部材40の基部44に対して、固定具90の下梁側部90aの位置を調整することができる。このため、建物用制振装置100は、柱70a,70bの間隔が異なる規格の住宅に対応しても同じ固定具90を用いて施工することができる。
また、図16および図17に示すように、固定具90の下梁側部90aは、土台60の上面に沿って配置される下側伝達部材40の基部44の底板部44aからはみ出ていてもよい。この場合、固定具90の下梁側部90aと土台60との隙間を埋めるスペーサ95を備えているとよい。これにより、固定具90の下梁側部90aを、土台60に対して安定させた状態で施工することができる。
下側伝達部材40は、図1に示すように、第1ユニット側固定部40Bから、互いの間隔が徐々に拡がるように延在した2本のブレース42a、42bを備えていてもよい。この場合、下側伝達部材40の下梁側固定部40A(基部44)は、土台60の幅方向において、底板部44aの両側から立ち上がった側板部44b、44bを備えており、2本のブレース42a、42bの先端が当該側板部44b、44bに取り付けられていてもよい。
この場合、固定具90の下梁側部90aは、基部44の側板部44b、44bの内側に装着されて、底板部44aに重ねられていてもよい。この場合、固定具90の下梁側部90aが、より広い領域で底板部44aを抑えることができる。このため、図19(a)(b)に示すように、建物の揺れに応じて、ブレース42a、42bを通じて下梁側固定部(基部44)を引き上げる力が作用した場合でも、下梁側固定部(基部44)の底板部44aに局所的に応力が集中しない。このため、底板部44aに生じる変形を小さく抑えることができる。
また、この場合、固定具90の支承部90cは、下梁側固定部(基部44)の側板部44b、44bの内側に装着されていてもよい。この場合、支承部90cは、基部44の側板部44b、44bを内側から支承する。このため、基部44の側板部44b、44bが内側に折れ曲がるような変形を小さく抑えることができる。このように、建物の揺れが生じた場合に、下側伝達部材40の下梁側固定部(基部44)の変形を小さく抑えることができる。このため、建物の揺れに応じて、制振ユニット10をより適切にせん断変形させることができる。
また、固定具90の支承部90cは、柱側部90bの幅方向の中間部分に取り付けられていてもよい。この場合、柱側部90bに設けられる第2締結部93は、柱側部90bの幅方向の両側に設けられていてもよい。この場合、例えば、第2締結部93にビスをねじ止めする場合に、ビスの延長線上に、建物用制振装置のブレース42a、42bが干渉しない。このため、工具が取り扱いやすく、固定具90が施工し易くなる。
以上、本発明の一実施形態に係る建物用制振装置100を説明した。建物用制振装置100は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、上述した実施形態では、建物用制振装置100は、建物200の1階に取り付けた例を例示したが、建物用制振装置100は、建物200の2階以上の階に取り付けてもよい。また、建物用制振装置100は、木造の建物だけでなく種々の建物に適用できる。例えば、鉄筋コンクリート製の建物にも効果的に取り付けることができる。
上述した実施形態では、建物用制振装置100は、制振ユニット10の粘弾性体18a、18bによって振動エネルギを吸収する形態を例示したが、制振ユニット10はオイルダンパであってもよい。オイルダンパは、公知なので、ここでは詳細な説明は省略する。この場合、制振ユニット10の制振部材としてのオイルダンパのシリンダ側の端部と、ピストン側の端部とが、オイルダンパに相対的な変位が入力される一対の取付部として機能する。
以上のように、本発明に係る建物用制振装置は、図1に示すように、建物200に生じた振動を小さく抑え、かつ、早期に減衰させる制振装置として好適である。本発明に係る建物用制振装置は、特に言及されない限りにおいて、上述された何れの実施形態およびその変形例にも限定されない。
10 制振ユニット
12、13、14 プレート
15 フランジ
15a 挿通孔
17 挿通孔
17a ボルトナット
18a、18b 粘弾性体
30 上側伝達部材
30A 上梁側固定部
30B 第1ユニット側固定部
32 ベース
32a ボルト挿通孔
34a、34b 取付片
40 下側伝達部材
40A 下梁側固定部
40B 第2ユニット側固定部
42a、42b ブレース
42c 2本のブレースの上側の基端部
43a、43b ブレースの下端(ブレースの先端)
44 基部
44a 底板部
44b 側板部
44c 溶接部位
46 横軸材
46a、46b 両側部
47 ボルト
48 フランジ
48a ボルトナット
49 取付片
50 上梁(2階床梁)
52 ボルト
60 下梁(土台)
70a、70b 柱
90 固定具
90a 下梁側部
90b 柱側部
90c 支承部
91 第1締結部
91a 長穴
92 挿通孔
93 第2締結部
93a ビス孔
95 スペーサ
96 下面
100 建物用制振装置
101 ビス孔
102 ビス孔
103 ビス孔
105 ホールダウンボルト
106 基礎パッキン
110 ビス
115 ビス
120 ビス
130 ビス
140 ビス
150 ホールダウン金物
200 建物
202 コンクリート基礎
203 枠組み

Claims (8)

  1. 建物の下梁と、前記下梁に立てられた一対の柱と、前記一対の柱に架け渡された上梁とで囲まれた矩形の枠組み内に配置され、
    制振ユニットと、
    上側伝達部材と、
    下側伝達部材と、
    固定具と
    を備え、
    前記制振ユニットは、
    制振部材と、
    前記制振部材に相対的な変位が入力される一対の取付部と
    を備え、
    前記上側伝達部材は、
    前記建物の前記上梁に固定される上梁側固定部と、
    前記制振ユニットの一対の取付部のうち一方の取付部に固定される第1ユニット側固定部と
    を備え、
    前記下側伝達部材は、
    前記建物の前記下梁に固定される下梁側固定部と、
    前記制振ユニットの一対の取付部のうち他方の取付部に固定される第2ユニット側固定部と
    を備え、
    前記下梁側固定部は、前記下梁の上面に沿って配置される底板部を有し、
    前記固定具は、
    前記下梁側固定部の前記底板部の上に配置される下梁側部と、
    前記下梁側部から立ち上がっており、前記柱に当てられた状態で配置される柱側部と、
    前記下梁側部と前記柱側部との間に架け渡され、前記下梁側部に対して前記柱側部を支承する支承部と
    を備え、
    前記下梁側部は、前記下梁と前記下梁側固定部とに締結される第1締結部を備え、
    前記柱側部は、前記柱に締結される第2締結部を備えた、
    建物用制振装置。
  2. 前記下梁側部の第1締結部には、前記下梁の長手方向に沿って長い長穴が形成されており、前記下側伝達部材の前記下梁側固定部に対して、前記下梁側部の位置を調整して、前記固定具を締結できる、請求項1に記載された建物用制振装置。
  3. 前記固定具の下梁側部は、前記下梁の上面に沿って配置される前記下梁側固定部の底板部からはみ出ており、当該下梁側部と前記下梁との隙間を埋めるスペーサを備えた、請求項1または2に記載された建物用制振装置。
  4. 前記下側伝達部材は、前記第1ユニット側固定部から、互いの間隔が徐々に拡がるように延在した2本のブレースを備え、
    前記下梁側固定部は、前記下梁の幅方向において、前記底板部の両側から立ち上がった側板部を備え、
    前記2本のブレースの先端が前記側板部に取り付けられている、請求項1から3までの何れか一項に記載された建物用制振装置。
  5. 前記固定具の前記下梁側部は、前記下梁側固定部の前記側板部の内側に装着されている、請求項4に記載された建物用制振装置。
  6. 前記支承部は、前記下梁側固定部の前記側板部の内側に装着されている、請求項5に記載された建物用制振装置。
  7. 前記支承部は、前記柱側部の幅方向の中間部分に取り付けられており、
    前記第2締結部は、前記柱側部の幅方向の両側に設けられている、請求項4から6までの何れか一項に記載された建物用制振装置。
  8. 前記制振ユニットは、対向するプレートと、前記対向するプレートの間に配置され、各プレートにそれぞれ接着された粘弾性体とを備え、前記対向するプレートのうち一方のプレートに前記上側伝達部材が固定され、他方のプレートに前記下側伝達部材が固定される、請求項1から7までの何れか一項に記載された建物用制振装置。
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