本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、および該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体である。感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であることが好ましい。さらに、電子写真特性の観点から、積層型感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層であることが好ましい。
図4の(a)および(b)は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図1の(a)および(b)中、101は支持体であり、102は下引き層であり、103は感光層であり、104は電荷発生層、105は電荷輸送層である。
下引き層は、下記式(1)で示される構造を有する層(硬化層)である。換言すれば、下引き層は、下記式(1)で示される構造を有する硬化物(重合体)を含有する。本発明の下引き層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。下引き層が2層以上である場合、それらのうちの少なくとも1層が下記式(1)で示される構造を有する。
式(1)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1から10のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。R2は、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1から10のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。R9は、水素原子、またはアルキル基を示す。A1は、下記式(A−1)〜(A−6)で示されるいずれかの基を示す。B1は、下記式(B−1)〜(B−3)のいずれかで示される基を示す。D1は、下記式(D)で示される主鎖の原子数が5から15の基である。E1は、下記式(E−1)〜(E−8)のいずれかで示される2価の基である。
該置換アルキレン基の置換基は、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子である。該置換フェニレン基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
R10は水素原子、またはアルキル基を示す。
式(B−1)〜(B−3)中、R2は、単結合、置換もしくは無置換の主鎖の原子数が1から10のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。R6、R7は、それぞれ独立に、主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、炭素数1から5のアルキル基で置換された主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の原子数1から5のアルキレン基、アルコシキカルボニル基で置換された主鎖の原子数1から5のアルキレン基、またはフェニル基で置換された主鎖の原子数が1から5のアルキレン基を示す。アルキレン基の主鎖中の炭素原子の1つは、O、S、NHまたはNR15で置き換わっていても良い。R15はアルキル基である。Ar2は置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。R12は、水素原子またはアルキル基を示す。A1およびA2は、前記式(A−1)〜(A−6)で示されるいずれかの基を示す。o、pおよびqは、それぞれ独立に0または1の整数であり、o、pおよびqの和は、1以上3以下である。該置換アルキレン基の置換基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。該置換フェニレン基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基などが挙げられる。*は、上記式(1)中のR3に結合する側を表す。
式(D)中、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、炭素数1から5のアルキル基で置換された主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の原子数1から5のアルキレン基、アルコシキカルボニル基で置換された主鎖の原子数1から5のアルキレン基、またはフェニル基で置換された主鎖の原子数が1から5のアルキレン基を示す。アルキレン基の主鎖中の炭素原子の1つは、O、S、NHまたはNR15で置き換わっていても良い。R15はアルキル基である。Ar1、Ar2は、置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。該置換のアルキレン基の置換基は、アルキル基、アリール基、およびハロゲン原子である。該置換フェニレン基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルキル基、またはハロゲン化アルキル基である。A2は、前記式(A−1)〜(A−6)のいずれかで示される基を示す。l、m、n、o、pおよびqは、それぞれ独立に0または1であり、l、mおよびnの和、o、pおよびqの和は、1以上3以下である。
R4、R5、R6およびR7が、それぞれ独立に、メチル基もしくはエチル基置換の主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、または主鎖の原子数が1から5のアルキレン基であることが、より好ましい。Ar1およびAr2が、フェニレン基であることが、より好ましい。
また、ポジゴースト抑制の観点から、より好ましくは、前記式(D)で示される主鎖の原子数が10以上15以下の基である。
式(E−1)〜(E−8)中、X11〜X16の2つ、X21〜X29の2つ、X31〜X36の2つ、X41〜X48の2つ、X51〜X58の2つ、X61〜X66の2つ、X71〜X78の2つ、およびX81〜X88の2つは、単結合である。その他のX11〜X16、X21〜X29、X31〜X36、X41〜X48、X51〜X58、X61〜X66、X71〜X78、およびX81〜X88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、複素環基、ニトロ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキル基を示す。該置換アルコキシ基の置換基は、カルボキシル基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子である。該置換アルキル基の置換基は、カルボキシル基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子である。Z51〜Z52、Z61〜Z62、およびZ81は、それぞれ独立に、酸素原子、C(CN)2基、またはN−R11を示す。R11は、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアルキル基を示す。該置換のアリール基の置換基は、カルボキシル基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子である。該置換のアルキル基の置換基は、カルボキシル基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子である。
本発明の式(1)で示される構造において、式(1)中のR2は、下記式(1−A)に示される破線で囲まれている構造Xに結合している。なお、この構造Xは、樹脂鎖に相当する部分であると考えられる。
D1において、主鎖の原子数とは、上記式(D)の右端と左端の結合間の最短の原子数のことである。例えば、p−フェニレン基は主鎖の原子数が4である。m−フェニレン基は主鎖の原子数が3である。o−フェニレン基は主鎖の原子数が2である。
本発明者らは、下引き層が、上記式(1)で示される構造を有していることにより、長期間繰り返し使用してもポジゴーストが低減される理由を以下のように考えている。
特許文献1の重合物では、電子輸送性化合物と架橋剤との距離(分子間距離)が長いため、電子トラップになりやすいと考えられる。下引き層中に電子トラップが形成されると、電子輸送性が低下しやすく、残留電荷が発生しやすくなる。これにより、長期間の繰り返し使用時に残留電荷が蓄積しやすくなることで、ポジゴーストの発生が起こると考えられる。
本発明者らは、電子輸送性構造(E1)とイソシアヌレート構造(下記式(1−A)に示される破線で囲まれている部分)との間が、主鎖の原子数が5から15(5以上15以下)の基で結合していることにより、本願のポジゴーストが低減されると考えている。電子輸送性構造(E1)およびイソシアヌレート構造は、どちらも電子輸送性を有しており、この2つの構造が結合されることにより電子輸送性の要因と考えられる伝導準位を形成する。そして、電子輸送性構造とイソシアヌレート構造との間に式(D)で示される主鎖の原子数が5から15の基があることで、均一な伝導準位が形成されると考えられる。これにより、電荷がトラップされにくくなり、下引き層の残留電荷が抑制され、長期間の繰り返し使用時のポジゴーストが低減されていると考えられる。D1中の主鎖の原子数が5より小さい、D1中の主鎖の原子数が15より大きいと、長期間の繰り返し使用時に下引き層に残留電荷が蓄積し、ポジゴーストが起こりやすい。
D1中の主鎖の原子数が5より小さいと、ウレタン結合部分(−NHCO−)に直接イソシアヌレート構造または電子輸送性構造が結合することになる。この場合、ウレタン結合部分が加水分解を受けやすく、ウレタン結合が切断されやすくなると考えられる。そして、下引き層中の局所的な伝導準位が変化することによって、電荷トラップが発生し、長期間の繰り返し使用時に下引き層の残留電荷が蓄積しやすくなると考えられる。D1中の主鎖の原子数が15より大きいと、電子輸送性構造とイソシアヌレート構造が相互作用しにくく、電子輸送性構造同士が局在化し、イソシアヌレート構造同士が局在化しやすい。そのため、電子輸送性構造同士、イソシアヌレート構造同士で伝導準位が形成されるため、下引き層中で伝導準位が不均一になると考えられる。伝導準位が不均一になることで、電荷トラップが発生し、長期間の繰り返し使用時に下引き層の残留電荷が蓄積しやすくなると考えられる。
以上より、本発明のように電子輸送性構造とイソシアヌレート構造との間が式(D)で示される主鎖の原子数が5以上15以下の基で結合されていると、長期間繰り返し使用時によるポジゴーストの低減が達成されると考えられる。
下引き層は、上記式(1)で示される構造を下引き層の全質量に対して30質量%以上70質量%以下含有することが好ましい。
下引き層中の上記式(1)で示される構造の含有量は一般的な分析手法で解析可能である。以下に、分析手法の例を示す。下引き層中の上記式(1)で示される構造の含有量はFT−IRを用い、KBr−tab法を用いる。KBr紛に対してイソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)添加量を変化させたサンプルでイソシアヌレート構造由来の吸収に基づいた検量線を作成することで、下引き層中の式(1)で示される構造の含有量を算出することができる。
さらに、式(1)で示される構造は、下引き層に対して、固体13C−NMR測定、質量分析測定、熱分解GC−MS分析によるMSスペクトル測定、赤外分光分析による特性吸収測定などの測定方法により確認することができる。例えば、固体13C−NMR測定は、Chemagnetics社製CMX−300Infiniyを用い、観測核13C、基準物質ポリジメチルシロキサン、積算回数8192回、パルス系列CP/MAS、DD/MAS、パルス幅2.1μsec(DD/MAS)、4.2μsec(CP/MAS)、コンタクトタイム2.0msec、試料回転数10kHzの条件で測定した。質量分析は質量分析計(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)を用い、加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60の条件で、分子量を測定した。得られたピークトップ値で確認した。
下引き層は、上記式(1)で示される構造以外にも、成膜性や電子写真特性を良化させるために、種々の樹脂、架橋剤、レベリング剤、金属酸化物粒子などを含有してもよい。ただし、それらの含有量は、下引き層の全質量に対して50質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましい。また、下引き層の膜厚は0.1μm以上5.0μm以下が好ましい。
以下に、式(1)で示される構造の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されない。
ここで、式(1)中のE1の右側は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、または、結合部位を示す。置換もしくは無置換のアルキル基の主鎖中の炭素原子の1つは、O、S、NH、またはNR16で置き換わっていても良い。R16はアルキル基である。置換アリール基の置換基は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基が挙げられる。置換アルキル基の置換基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基が挙げられる。結合部位の場合は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または、アルキレン基を介して式(1)で示される構造からE1を除いて、D1に結合していることを示す。置換アリーレン基の置換基は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基が挙げられる。また、l、m、n、o、pおよびqは、0または1である。
表中のB1は、下記式(B−1)〜(B−3)のいずれかで示される基を示す。ここで、(B−2)中のE1の右側は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、複素環基または、結合部位を示す。置換アリール基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基が挙げられる。結合部位の場合は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または、アルキレン基を介して上記式(1)で示される構造からE1を除いて、上記式(1)中のD1に結合していることを示す。式(B−3)中、R2の下側は、下引き層中に存在する樹脂の側鎖に結合していることを示す。
下記の表1から表9中、結合部位は破線で示す。また、単結合である場合は「単」と示す。また、式(1)の左右の向きと表1から表9中の各構造の左右の向きは同じである。また、表1から表9中の例示化合物において、式(1)中のR9は、すべて水素原子である。
本発明の式(1)で示される構造を有する下引き層は、以下のようして形成できる。まず、イソシアネート化合物(架橋剤)、イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応可能な重合性官能基を有する樹脂、およびイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応可能な重合性官能基を有する電子輸送物質を溶剤に溶解させる。これにより、下引き層用塗布液を調製し、その下引き層用塗布液の塗膜を形成して、塗膜を熱硬化することで得られる。熱硬化は、塗膜の乾燥中に反応させた方が均一に反応させることができるため好ましい。
上記イソシアネート化合物は、イソシアヌレート構造を有している。また、イソシアネート化合物のイソシアネート基が、例えばオキシムなどのブロック剤で保護されたイソシアネート化合物(ブロック化イソシアネート化合物)であることが好ましい。ブロック化イソシアネート化合物は、上記樹脂および上記電子輸送物質とともに加熱をすることで付加反応を開始し、ブロック剤が外れて架橋反応が進む。そして、下引き層に式(1)で示される構造を有する硬化物が得られる。
前記ブロック剤としては、酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドなどの酸アミド系化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物、コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド系化合物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、などのイミダゾール系化合物、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素系化合物、ホルムアミドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミンなどのアミン系化合物が挙げられ、これらのブロック剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのブロック剤の中でも、汎用性、製造の容易さ、作業性、熱硬化温度の観点から、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム系化合物、ε−カプロラクタムなどのラクタム系化合物、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物が好ましい。
次に、上記イソシアネート化合物の例を以下に挙げる。
イソシアネート化合物のイソシアネート基(モル数=Iとする)は、上記樹脂の重合性官能基および上記電子輸送物質の重合性官能基の和(モル数=Hとする)に対して、0.5以上2.5以下のモル比(I/H)の割合で存在するのが好ましい。このモル比(I/H)が0.5以上2.5以下であると、イソシアネート基と重合性官能基の反応効率が良く、架橋密度が高まるため好ましい。
上記樹脂の重合性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基であるのが好ましい。さらには、イソシアネート基との反応効率が高い、ヒドロキシ基またはアミノ基であるのが好ましい。つまり、樹脂としては、2つ以上のヒドロキシ基またはアミド基を有するポリオール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂またはポリアミド樹脂が好ましい。本発明で用いられる樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)=5000〜1500000の範囲が好ましい。
上記式(1)で示される構造を有する硬化物は、さらに下記式(2)で示される構造を有することが好ましい。つまり、樹脂が下記式(2)で示される構造を有することが好ましい。式(2)で示される構造を有すると、下引き層の下層や上層との接着性、下引き層の膜厚均一性が良好となり、より長期間繰り返し使用時におけるポジゴーストおよび電位変動が低減される。
式(2)中、R8は置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を示す。該置換アルキル基の置換基は、アルキル基、アリール基またはハロゲン原子である。
D1中のR4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、メチル基もしくはエチル基置換の主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、または主鎖の原子数が1から5のアルキレン基であることが、初期ポジゴーストが低減の観点から好ましい。
上記式(1)で示される構造を有する重合体は、D1中の、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に無置換のフェニレン基あることが、初期ポジゴーストが低減の観点から好ましい。
次に、上記重合性官能基を有する電子輸送物質の例を以下に挙げる。
これらの電子輸送物質の中でも、より好ましくは、例示化合物(E−1−1)から(E−1−34)に例示した化合物が好ましい。また、重合性官能基を2つ以上有している電子輸送物質は、重合(架橋)密度を高めやすいため、好ましい。
(E−1)の構造を有する誘導体(電子輸送物質の誘導体)は、例えば、米国特許第4442193号公報、米国特許第4992349号公報、米国特許第5468583号公報、Chemistry of materials,Vol.19,No.11,2703−2705(2007)に記載の公知の合成方法を用いて合成することが可能である。また、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)やジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能なナフタレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成する事が出来る。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには以下の方法が挙げられる。例えば、(E−1)の構造を有する誘導体に直接重合性官能基を導入する方法。前記重合性官能基または、重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。ナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。ナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ナフチルイミド誘導体を合成する際の原料として、前記重合性官能基または、重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有するナフタレンテトラカルボン酸二無水物誘導体またはモノアミン誘導体を用いる方法がある。
(E−2)または(E−8)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、フルオレノン誘導体とマロノニトリルを用い、米国特許第4562132号公報に記載の合成方法を用いて合成することができる。また、フルオレノン誘導体およびアニリン誘導体を用い、特開平5−279582号公報、特開平7−70038号公報に記載の合成方法を用いて合成することもできる。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには以下の方法が挙げられる。例えば、(E−2)または(E−8)の構造を有する誘導体に、重合性官能基を導入する方法。重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばフルオレノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。フルオレノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。フルオレノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法がある。
(E−3)の構造を有する誘導体は、例えばChemistry Letters,37(3),360−361(2008)、特開平9−151157号公報に記載の合成方法を用いて合成することが出来る。また、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには、ナフトキノン誘導体に重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。この方法としては、例えばナフトキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。ナフトキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。ナフトキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などがある。
(E−4)の構造を有する誘導体は、例えば特開平1−206349号公報、PPCI/Japan Hard Copy’98 予稿集p.207(1998)に記載の合成方法を用いて合成することができる。例えば、東京化成工業(株)またはシグマアルドリッチジャパン(株)から購入可能なフェノール誘導体を原料として合成することができる。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。この方法としては、例えばジフェノキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。ジフェノキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。ジフェノキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などがある。
(E−5)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、フェナントレン誘導体またはフェナントロリン誘導体を基に、Chem.Educator No.6,227−234(2001)、有機合成化学協会誌,vol.15,29−32(1957)、有機合成化学協会誌,vol.15,32−34(1957)に記載の合成方法で合成することもできる。また、マロノニトリルとの反応によりジシアノメチレン基を導入することもできる。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには以下の方法が挙げられる。例えば、上記式(E−5)の構造を有する誘導体を合成した後、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばフェナントレンキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。フェナントレンキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。フェナントレンキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などがある。
(E−6)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、フェナントレン誘導体またはフェナントロリン誘導体を基に、Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.65,1006−1011(1992)に記載の合成方法で合成することもできる。マロノニトリルとの反応によりジシアノメチレン基を導入することもできる。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには以下の方法が挙げられる。例えば、上記式(E−6)の構造を有する誘導体を合成した後、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばフェナントロリンキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。フェナントロリンキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。フェナントロリンキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などがある。
(E−7)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。
また、架橋剤と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、およびカルボキシル基)を有するためには、購入可能なアントラキノン誘導体に重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。この方法としては、例えばアントラキノンのハロゲン化物を元に、例えばパラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。アントラキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。アントラキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などがある。
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合、混合溶媒として上記イソシアネート化合物と、上記樹脂と、上記電子輸送物質を溶解することができる溶媒であれば、特に限定されない。
本発明の電子写真感光体は、一般的には、円筒状支持体上に感光層(電荷発生層、電荷輸送層)を形成してなる円筒状の電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状、シート状などの形状とすることも可能である。
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄などの金属または合金製の支持体を用いることができる。ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスなどの絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金などの金属の薄膜を形成した支持体、または酸化インジウム、酸化スズなどの導電性材料の薄膜を形成した支持体が挙げられる。
支持体の表面は、電気的特性の改善や干渉縞の抑制のため、陽極酸化などの電気化学的な処理や、湿式ホーニング処理、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体と、上述の下引き層との間には、導電層を設けてもよい。導電層は、導電性粒子を樹脂に分散させた導電層用塗布液の塗膜を支持体上に形成し、塗膜を乾燥させることで得られる。導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。
また、樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
支持体または導電層と、感光層との間には、上述の下引き層が設けられる。
次に、下引き層上には感光層が設けられる。
電荷発生物質としては、アゾ顔料や、ペリレン顔料、アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体、イソビオラントロン該導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料、ビスベンズイミダゾール誘導体などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、またはフタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。
感光層が積層型感光層である場合、電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどのビニル化合物の重合体および共重合体や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリビニルアセタールが好ましく、これらの中でも、ポリビニルアセタール樹脂がより好ましい。
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との比率(電荷発生物質/結着樹脂)は、10/1〜1/10の範囲であることが好ましく、5/1〜1/5の範囲であることがより好ましい。電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
正孔輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、トリフェニルアミン化合物などが挙げられる。また、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマーも挙げられる。
感光層が積層型感光層である場合、電荷輸送層(正孔輸送層)に用いられる結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。また、これらの樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜300,000の範囲であることが好ましい。
電荷輸送層において、正孔輸送物質と結着樹脂との比率(正孔輸送物質/結着樹脂)は、10/5〜5/10の範囲であることが好ましく、10/8〜6/10の範囲であることがより好ましい。正孔輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
また、感光層(電荷輸送層)上には、導電性粒子または正孔輸送物質と、結着樹脂とを含有する保護層(表面保護層)を形成してもよい。保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有してもよい。また、保護層の結着樹脂自体に導電性や正孔輸送性を有させてもよい。その場合、保護層には、当該樹脂以外の導電性粒子や正孔輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光または放射線(電子線など)などにより硬化(重合)させてなる硬化性樹脂であってもよい。
下引き層、電荷発生層、電荷輸送層などの電子写真感光体を構成する各層を形成する方法としては、各層を構成する材料を溶剤に溶解もしくは分散させて得られた塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥および/重合させることによって形成する方法が好ましい。塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法などが挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布法が好ましい。
図1に、本発明の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面(周面)は、帯電手段3(一次帯電手段:帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図2に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを選択し容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
以下のように作成された電子写真感光体を2本用意した。1本は、下引き層の構造解析に用い、もう1本は、ポジゴーストの評価に用いた。
長さ260.5mmおよび直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
次に、酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子(粉体抵抗率:120Ω・cm、SnO2の被覆率(質量比率):40%。)50部、フェノール樹脂(プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60%。)40部、メトキシプロパノール40部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散処理して、導電層用塗布液(分散液)を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間145℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が16μmの導電層を形成した。
この導電層用塗布液における酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子の平均粒径を、(株)堀場製作所製の粒度分布計(商品名:CAPA700)を用い、テトラヒドロフランを分散媒とし、回転数5000rpmにて遠心沈降法で測定した。その結果、平均粒径は、0.33μmであった。
次に、電子輸送物質として例示化合物(E−1−1)3.6部、イソシアネート化合物として例示化合物(I−8)6.2部、および樹脂としてブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製。)1.29部を、メチルエチルケトン50部とジメチルアセトアミド50部の混合溶液に溶解した。得られた溶液に、触媒としてジオクチルスズジウラレートを0.031部添加して、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を、上記導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間160℃で加熱し、重合(硬化)させることによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。
次に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する。)10部、ブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン260部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、1.5時間分散処理した。次に、これに酢酸エチル240部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、上記下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間95℃で乾燥させることによって、膜厚が0.18μmの電荷発生層を形成した。
次に、ポリアリレート樹脂(下記式(16−1)で示される繰り返し構造単位と、下記式(16−2)で示される繰り返し構造単位を5/5の割合で有し、重量平均分子量(Mw)が100,000である。)10部、および下記式(15)で示されるアミン化合物(正孔輸送物質)7部を、ジメトキシメタン30部およびクロロベンゼン70部の混合溶媒に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして、支持体上に導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を有する電子写真感光体を製造した。
下引き層の構造は、以下のようにして解析した。下引き層の構造解析用の電子写真感光体をジメトキシメタン40部およびクロロベンゼン60部の混合溶剤に5分間浸漬させて超音波を印加し、正孔輸送層を剥離させた。次に、ラッピングテープ(C2000:富士写真フィルム(株)製)を用いて電荷発生層を研磨した後、10分100℃で乾燥させることによって、下引き層の構造解析用電子写真感光体とした。尚、FTIR−ATR法を用いて下引き層表面に電荷輸送層および電荷発生層の成分が残留していない事を確認した。感光体を25℃/50%RH環境下に24時間放置後、電子写真感光体の中央部(端から130mm位置)を1cm角に切り出し、下引き層の構造解析用サンプルとした。上述の固体13C−NMR測定、質量分析測定、熱分解GC−MS分析によるMSスペクトル測定、赤外分光分析による特性吸収測定で確認された、式(1)で示される構造およびD1構造の主鎖の原子数を表15〜17に示す。
もう1本の電子写真感光体を用いて、以下の評価を行った。製造した電子写真感光体を温度23度、湿度50%RHの環境下にて、キヤノン(株)製のレーザービームプリンター(商品名:LBP−2510)の改造機に装着した。その後、表面電位の測定、5000枚繰り返し使用時の明部電位の変動(電位変動)の評価および5000枚繰り返し使用時のゴーストの評価を行った。詳しくは以下のとおりである。
上記前露光が発光しないように改造したレーザービームプリンターのシアン色用のプロセスカートリッジに、製造した電子写真感光体を装着して、そのプロセスカートリッジをシアンのプロセスカートリッジのステーションに装着し、画像を出力した。まず、ベタ白画像1枚、ゴースト評価用画像5枚、ベタ黒画像1枚、ゴースト評価用画像5枚の順に連続して画像出力を行った。次に、A4サイズの普通紙で、5000枚のテストチャート(印字率5%の文字画像)の出力を行い、その後、ベタ白画像1枚、ゴースト評価用画像5枚、ベタ黒画像1枚、ゴースト評価用画像5枚の順に連続して画像出力を行った。
ゴースト評価用画像は、図2に示すように、画像の先頭部に「白画像」中に四角の「ベタ画像」を出力した後、図3に示す「1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像」を作成したものである。なお、図2中、「ゴースト」部は、「ベタ画像」に起因するゴーストが出現し得る部分である。
ポジゴースト画像の評価は、1ドット桂馬パターンの画像の画像濃度と、ゴースト部の画像濃度との濃度差(マクベス濃度差)を測定することで行った。分光濃度計(商品名:X−Rite504/508、X−Rite(株)製)で、1枚のゴースト評価用画像中で濃度差を10点測定した。この操作をゴースト評価用画像10枚すべてで行い、合計100点の平均を算出し、初期および5000枚繰り返し使用後のマクベス濃度差を評価した。ゴースト部の濃度の方が高い画像が、ポジゴースト画像である。この濃度差は、値が小さいほど、ポジゴーストが抑制されたことを意味する。また、5000枚の出力後のマクベス濃度差と初期画像出力時のマクベス濃度差との差が小さい程、ポジゴーストの変動抑制効果が大きいことを意味する。結果を表15から17に示す。
電位変動(明部電位変動量)は、以下のように評価した。
評価装置の780nmのレーザー光源の露光量(画像露光量)については、電子写真感光体の表面での光量が0.3μJ/cm2となるように設定した。電子写真感光体の表面電位(暗部電位および明部電位)の測定は、電子写真感光体の端部から130mmの位置に電位測定用プローブが位置するように固定された冶具と現像器とを交換して、現像器位置で行った。電子写真感光体の非露光部の暗部電位が−450Vとなるよう印加バイアスを設定し、レーザー光を照射して暗部電位から光減衰させた明部電位を測定した。また、A4サイズの普通紙を用い、連続して画像出力を5000枚行い、その後の明部電位(繰り返し使用後の明部電位)を測定し、初期明部電位と繰り返し使用後の明部電位との差(明部電位変動量)を算出した。テストチャートは、印字比率5%のものを用いた。結果を表15から17中の電位変動に示す。
(実施例2〜10)
実施例1において、電子輸送物質、イソシアネート化合物(架橋剤)、樹脂を表15のように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表15に示す。
(実施例11)
実施例1において、電子輸送物質、イソシアネート化合物を表15に示すように変更し、樹脂としてブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学社製)1.29部に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表15に示す。
(実施例12)
実施例1において、電子輸送物質、イソシアネート化合物を表15に示すように変更し、樹脂としてポリビニルアルコール樹脂(商品名:PVA117、クラレ株式会社製)1.29部に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表15に示す。
(実施例13)
実施例1において、電子輸送物質、イソシアネート化合物を表15に示すように変更し、樹脂として部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂(商品名:VAGH、ダウ・ケミカル社製。)1.29部に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表15に示す。
(実施例14)
実施例1において、電子輸送物質、イソシアネート化合物を表15に示すように変更し、樹脂としてポリ(p−ヒドロキシスチレン)(商品名:マルカリンカー、丸善石油化学社製。)1.29部に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表15に示す。
(実施例15〜90)
実施例1において、電子輸送物質、イソシアネート化合物、樹脂を表15〜17に示すように変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表15〜17に示す。
(実施例91)
実施例1において、導電層用塗布液、下引き層用塗布液および電荷輸送層用塗布液の調整を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表17に示す。
導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO2)が被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子214部、結着樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%。)132部、および、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れて分散処理(分散条件、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃。)を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して10質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子を分散液に添加した。該シリコーン樹脂粒子は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製のトスパール120(商品名)であり、平均粒径は2μmである。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製。)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
次に、電子輸送物質、イソシアネート化合物を表17のように変更し、樹脂としてアセタール樹脂(商品名:KS−5、積水化学社製)、触媒としてオクチル酸亜鉛(II)を0.031部を添加した以外は、実施例1のように下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を、上記導電層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間160℃で加熱し、重合(硬化)させることによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。
電荷発生層は実施例1と同様に形成した。
次に電荷輸送層用塗布液の調製を以下のように変更した。ポリエステル樹脂F(下記式(24)で示される繰り返し構造、式(26)で示される繰り返し構造と式(25)で示される繰り返し構造を7:3の比で有し、重量平均分子量が90,000である。)3部、ポリエステル樹脂H(下記式(27)で示される繰り返し構造と下記式(28)で示される繰り返し構造を5:5の比で含有し、重量平均分子量が120,000である。)7部、上記式(15)で示される電荷輸送物質9部、および下記式(18)で示される電荷輸送物質1部を、ジメトキシメタン30部およびオルトキシレン50部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。なお、ポリエステル樹脂Fのおける、下記式(24)で示される繰り返し構造単位の含有量が10質量%であり、下記式(25)、(26)で示される繰り返し構造単位の含有量が90質量%であった。
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。形成された電荷輸送層には電荷輸送物質とポリエステル樹脂Hを含むマトリックス中にポリエステル樹脂Fを含むドメイン構造が含有されていることが確認された。
(実施例92〜111)
実施例91において、電子輸送物質、イソシアネート化合物、樹脂を表17に示すように変更した以外は実施例91と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表16に示す。
(実施例112)
実施例93において、電荷輸送層用塗布液の調製を以下のように変更した以外は、実施例93と同様に電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表17に示す。
電荷輸送層用塗布液の調製を以下のように変更した。ポリカーボネート樹脂I(下記式(29)で示される繰り返し構造を有し、重量平均分子量が70,000である。)10部、ポリカーボネート樹脂J(下記式(29)で示される繰り返し構造、下記式(30)で示される繰り返し構造および、末端の少なくともいずれか一方に下記式(31)で示される構造を有し、重量平均分子量が40,000である。)0.3部、上記式(15)で示される電荷輸送物質9部、および上記式(18)で示される電荷輸送物質1部、ジメトキシメタン30部およびオルトキシレン50部混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。なお、ポリカーボネート樹脂Jにおける、下記式(30)と(31)で示される繰り返し構造単位の合計質量が30質量%であった。
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。
(実施例113)
実施例112の電荷輸送層用塗布液を、ポリカーボネート樹脂I(重量平均分子量70,000)から、ポリエステル樹脂H(重量平均分子量120,000)10部とした以外は実施例112と同様に電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表17に示す。
(実施例114)
実施例93において、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した以外は、実施例93と同様に電子写真感光体を製造し、同様の評価を行った。結果を表17に示す。
導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。金属酸化物粒子としてのリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子207部、結着樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325)144部、および、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して15質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
(実施例115)
実施例112において、導電層用塗布液の調整を以下のように変更した以外は、実施例112と同様に電子写真感光体を製造し、同様の評価を行った。結果を表17に示す。
導電層用塗布液の調整を以下のように変更した。金属酸化物粒子としてのリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子207部、結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ−325)144部、および、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。
この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して15質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
(実施例116)
実施例113において、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した以外は、実施例113と同様に電子写真感光体を製造し、同様の評価を行った。結果を表17に示す。
導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。金属酸化物粒子としてのリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子207部、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325)144部、および、1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子とフェノール樹脂の合計質量に対して15質量%になるように、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子とフェノール樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、シリコーンオイル(商品名:SH28PA)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
(比較例1)
実施例1において、電子輸送物質として下記式(C−1)で示される化合物を用い、イソシアネート化合物(架橋剤)に(I−1)を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表18に示す。式(1)で示される構造中のD1に相当する構造の主鎖の原子数は4であった。
(比較例2)
実施例1において、電子輸送物質として下記式(C−2)で示される化合物を用い、イソシアネート化合物(架橋剤)に(I−1)を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表18に示す。式(1)で示される構造中のD1に相当する構造の主鎖の原子数は4であった。
(比較例3)
実施例1において、電子輸送物質として、特表2009−505156号公報に記載されている下記式で示される構造を有するブロック共重合体を用いて下引き層を形成した以外は、本発明の実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表18に示す。式(1)で示される構造中のD1に相当する構造の主鎖の原子数は25であった。
(比較例4)
ヘキサメチレンジイソシアネートと下記化合物(11)とを用いて下引き層を作成(特開2007−148293号公報の実施例1の構成)した以外は実施例1と同様に感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表18に示す。
<溶出試験>
実施例1〜116において調製した下引き層用塗布液0.5gを、アルミニウムシート上にワイヤーバー法により均一に塗布し、得られた塗膜を温度160℃30分間で加熱し、重合(硬化)させてサンプルを得た。このサンプルの中央部を100mm×50mmの領域だけ切り取り、それぞれ温度20度のアノンおよび酢酸エチルの混合液(重量比=1:1)中に10分間浸漬し、浸漬前の初期重量と浸漬後の重量を測定した。さらに、サンプル上に形成された塗膜を削り取り、アルミニウムシートの重量を測定した。下記式により浸漬後重量減少率(溶出量、%)を求めた。
浸漬後重量減少率(%)=((初期重量−浸漬後重量)/初期重量−アルミニウムシート重量))×100
浸漬後重量減少率(%)が5%以下の場合、下引き層は溶出しにくい膜であると判断した。この結果、実施例1〜116で形成した下引き層は、浸漬後重量減少率(%)が5%以下であり、溶出しにくい膜であった。
表15、16、17中、「電子輸送物質の含有量」は、下引き層用塗布液中の電子輸送物質の含有量(質量部)を示す。「イソシアネート化合物の含有量」は、下引き層用塗布液中のイソシアネート化合物の含有量(質量部)を示す。「樹脂質量部」は、下引き層用塗布液中の樹脂の含有量(質量部)を示す。
実施例60と比較例1および比較例2により、式(1)で示される構造中のD1の主鎖の原子数が5より小さい場合、十分なポジゴースト変動抑制の効果が得られないことが示されている。このことは本評価法の初期および5000枚繰り返し使用後のマクベス濃度の変化が、実施例に比べて大きいことにより示されている。これは、D1の主鎖の原子数が5より小さい場合、ウレタン結合と電子輸送性構造の結合距離が短いため、繰り返し使用時加水分解され電荷トラップが増加したためだと考えられる。
実施例13と比較例3により、式(1)で示される構造中のD1の主鎖の原子数が15より大きい場合、十分なポジゴースト変動抑制の効果が得られないことが示されている。このことは本評価法の初期および5000枚繰り返し使用後のマクベス濃度の変化が、実施例に比べて大きいことにより示されている。これは、D1の主鎖の原子数が15より大きい場合、比較例3の電子輸送性構造であるナフタレンカルボン酸無水物構造とイソシアヌレート構造部分が相互作用しにくく、伝導準位が不均一になると考えられる。その結果、電子輸送構造の劣化が引き起こされ電荷トラップが増加したためだと考えられる。