JP2013253219A - ボンド磁石用組成物及びそれを用いたボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】磁性粉末と樹脂バインダとしてポリアミド樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂とを含むボンド磁石用組成物において、前記樹脂バインダは、スチレン単位とブチレン単位とを構成成分として含むブロック共重合体を含有し、該ブロック共重合体が樹脂バインダ中に平均粒径0.1〜5μmの球状体として分散していることを特徴とするボンド磁石用組成物などにより提供。
【選択図】図1
Description
磁性粉末を40体積%以上含有し熱可塑性樹脂をバインダとするボンド磁石用組成物は、射出成形や押出成形により加工されて製品となる。
この特許文献の実施例には、24.6wt%Sm−3.6wt%N−bal.FeのSm−Fe−N系磁性粉末を得た後、磁性粉末100重量部に対して12−ポリアミド樹脂8重量部、エチレンビスステアリン酸アミド1重量部、パラフィンワックス1重量部を混合しラボプラストミルにて混練したと記載されている。
ここには、希土類−遷移金属系磁石粉末と、PPS樹脂とを含有するリサイクル性に優れた希土類系ボンド磁石用組成物として、PPS樹脂の少なくとも70重量%を、溶融粘度(300℃、剪断速度600s−1で測定)が200poise以上の架橋型PPS樹脂とした希土類系ボンド磁石用組成物が記載されている。
しかしながら、成形温度が高くなるほど、希土類遷移金属合金粉末は酸化劣化しやすく、PPS樹脂も劣化して成形品の曲げ強さや引張強さなどの物性低下を引き起こすという問題があった。
また、特許文献6には、水添スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレン含有率が、20wt%以上60wt%以下であるブロック共重合体を、エチレンエチルアクリレート系樹脂と磁性粉末との組成物に含有させた押出成形用樹脂磁石組成物が開示されている。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、前記ブロック共重合体の含有量は、樹脂バインダ全体の1〜50質量%であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記ブロック共重合体は、スチレン単位に対するスチレン単位以外の構成成分の質量比(α)が1〜6であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記ブロック共重合体は、樹脂バインダ中、180℃以上の温度で溶融・混練されることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記ポリアミド樹脂は、平均分子量が1000〜60000であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、溶融粘度が300°Cにおいて10〜1000Pa・sの範囲であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、得られた磁石の残材をリサイクルする際に、加熱混練、射出成形等を繰り返しても、特性は変わらないので本発明のボンド磁石は、リサイクル性にも優れたものとなる。
1.ボンド磁石用組成物
本発明のボンド磁石用組成物は、磁性粉末と樹脂バインダとしてポリアミド樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂とを含むボンド磁石用組成物において、前記樹脂バインダは、スチレン単位とブチレン単位とを構成成分として含むブロック共重合体を含有し、該ブロック共重合体が樹脂バインダ中に平均粒径0.1〜5μmの球状体として分散していることを特徴とする。
本発明において使用される磁性粉末は、ボンド磁石用の磁性粉末として一般的なものでよく、種類によって特に制限されない。
たとえば、希土類元素と遷移金属元素とを含む金属間化合物合金を主相とするもので、希土類元素としては、特に制限されないが、Sm、Gd、Tb、およびCeから選ばれる少なくとも1種の元素、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbから選ばれる少なくとも1種の元素が含まれるものが好ましい。具体的には、Sm2Fe17N3系などの合金、正方晶のNd2Fe14B系の合金、Th2Zn17型構造を有するSm2Co17系の合金やCaCu5型構造を有するSmCo5系の合金などの各種合金が適用できる。また、フェライト磁石粉末も使用できる。
この希土類−鉄−窒素系磁石は、FeとSm金属を用いて高周波炉、アーク炉などにより原料粉末を1500℃以上で溶解、粉砕、組成均一化のための熱処理を行って希土類−鉄合金を作製する溶解法や、FeあるいはFe2O3、Sm2O3等とCaを混合加熱処理により希土類−鉄合金を作製する還元拡散法によって得られた母合金を窒化することで得られている。
この様にして得られた粉末状の希土類−鉄−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、次の工程において平均粒径が数μmから5μm程度になるまで微粉砕処理されている。また、出発原料として用いる粉末の粒径を小さくすることにより、母合金を粉砕せずに磁石微粉末を得る方法もある。
R−Fe−B系永久磁石の原料にはR−Fe−B系合金粉末が使用されるが、この合金粉末の製造法にも液体急冷法とHDDR法とがある。液体急冷法は、構成成分となる金属や母合金を目的組成に調合し、溶解し、銅などの金属ロールで急冷し薄片化するものである。HDDR法は、合金に水素を吸収させてR2Fe14B金属間化合物を分解し、その後脱水素熱処理することでR2Fe14B金属間化合物を再生成させる方法である。
本発明で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を微粉砕するには、固体を取り扱う各種の化学工業において広く使用され、種々の材料を所望の程度に粉砕するための粉砕装置であれば、特に限定されるわけではない。その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で優れた、媒体撹拌ミルまたはビーズミルによる湿式粉砕方式によることが好適である。
粉砕に用いる溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。粉砕後所定の目開きのフィルターを用いて、ろ過、乾燥して希土類−鉄−窒素系磁石微粉末を得る。
本発明では、前記磁性粉末のいずれかを単独で用いても良いが、例えば、Nd2Fe14B系の合金とSm2Co17系の合金、Nd2Fe14B系の合金とSm2Fe17N3系の合金、またSm2Fe17N3系の合金とフェライトを混合使用してもよい。組み合わせることで、大きい粒子の間に小さい粒子が入り、コンパウンドの流動性を下げずにボンド磁石の磁粉充填率を高めて磁気特性をアップしたり、コストを低減したりすることができる。また、磁性粉末の混合割合は、要求される用途や成形手段などによって適宜設定される。
本発明において、熱可塑性樹脂は、樹脂バインダの主成分であって、ポリアミド系樹脂(A)又はポリフェニレンサルファイド樹脂(B)が使用される。これらは単独で用いても、混合して用いても良い。
ポリアミド系樹脂としては、ボンド磁石用に用いられるポリアミド樹脂であれば制限無く利用できる。たとえば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12、芳香族ポリアミド、重合脂肪酸系ポリアミド、これらの末端基を変性したポリアミドなどの単独重合ポリアミドや共重合ポリアミドが利用できる。また、これら熱可塑性樹脂は、単独でも2種類以上のブレンド等による混合物でもよい。
ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂は、その分子構造によって架橋型、直鎖型、セミ直鎖型(部分架橋型あるいは半架橋型とも称される)に大別される。通常ボンド磁石用には、剛性が求められる場合には架橋型、靱性が求められる場合には直鎖型またはセミ直鎖型が使用される。本発明ではいずれのものも使用でき、それぞれを混合して使用してもよいが、直鎖型またはセミ直鎖型を使うと効果が顕著である。
本発明においては、PPS樹脂を架橋率によって区別する場合、架橋型PPS樹脂とは架橋率が26%以上(例えば、30〜40%)のもの、セミ直鎖型PPS樹脂とは架橋率が5〜25%のもの、直鎖型PPS樹脂とは架橋率が5%未満のものを指すものとする。
磁性粉末への添加量は、その種類や成形方法などによっても異なるが、磁性粉末100重量部に対して5〜50重量部の割合が良く、好ましくは8〜20重量部、さらには8〜15重量部がより好ましい。該熱可塑性樹脂の添加量が該磁性粉100重量部に対して5重量部未満の場合は、成形性が著しく低下し、所望の樹脂結合型磁石成形することができない。また、添加量が50重量部を超える場合、所望の磁気特性が得られない。
本発明の組成物において、熱可塑性樹脂には、スチレン単位とブチレン単位とを構成成分として含むブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体ともいう)、いわゆるスチレン系の熱可塑性エラストマーが添加される。
そして、本発明のボンド磁石用組成物では、このブロック共重合体が0.1〜5μmの球状体としてポリアミド樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂の中に微細分散していると、リサイクルに伴う組成物の強度低下を抑えながら流動性の指標であるQ値を向上できることが確認されている。
これに対して質量比(α)が1未満では、環状のスチレン単位が多いので強度が低くなる傾向にあり、また6を超えると鎖状のブタジエン単位とブチレン単位などが多いのでポリアミド樹脂系では流動性が低くなり、ポリフェニレンサルファイド樹脂系では逆に流動性が上がりすぎ、ブロック共重合体が球状体として分散しないので、強度が低下する傾向にある。
しかし、本発明では、熱可塑性樹脂には特定のブロック共重合体が配合されていることから、低温溶融時の流動性に優れ、成形性が良く、磁気特性、剛性等の機械強度及びリサイクル性に優れたボンド磁石用組成物とすることができる。
本発明における組成物は、本発明の目的を損なわない限り、上記の必須成分であるポリアミド樹脂、またはポリフェニレンサルファイド樹脂やブロック共重合体の他にも、これら以外の樹脂、プラスチック成形用滑剤や種々の安定剤等を添加することができる。
本発明の組成物に添加可能な樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エタクリレート共重合樹脂、エチレン−メタクリレート共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、部分酸化ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系及びその共重合樹脂をはじめ、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル樹脂、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、エチレン−ポリテトラフロロエチレン共重合樹脂等が挙げられる。
これら任意成分の樹脂は、必須成分であるポリアミド樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂に対して40重量%以下、好ましくは30重量%以下とする。任意成分である樹脂が40重量%を超えると、組成物の成形性やボンド磁石の強度、あるいはリサイクル性が低下するために、本発明の目的を達することができない。
また、樹脂バインダの配合量は、磁性粉末の種類や量、成形方法などによっても異なるが、組成物全体に対して3〜20質量%とするのが望ましく、好ましくは5〜15質量%とする。配合量が3質量%より少ないと流動性が低く成形できなかったり、15質量%を超えると磁気特性が低くなったりすることがある。
本発明のボンド磁石用組成物は、磁性粉末、ポリアミド系熱可塑性樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂と、スチレン単位とブチレン単位とを構成成分として含むブロック共重合体とを混合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂またはポリフェニレンサルファイド系熱可塑性樹脂中に0.1〜5μmの球状の共重合体が分散するように溶融混練することで製造される。必要に応じて前記の滑剤や安定化剤などの添加剤を添加してもよい。
ブロック共重合体は、樹脂バインダの溶融する温度よりも高温に加熱・混練される。混練温度は、樹脂の種類によっても異なるが、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂のいずれであっても180℃以上とする必要があり、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。混練温度が180℃未満では、分散物が球状にならないか大きさが5μmを超えることがある。
しかし、このエチレンエチルアクリレート系樹脂は本発明で用いるポリアミド系樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂とは異なり、また最も重要な熱可塑性樹脂中の共重合体の球状分散物の大きさについて記載がない。0.1〜5μmの球状に分散させるのは、ただ所定のブロック共重合体を添加すればよいのではなく、そのような大きさで分散させるための配合量や混練条件を必要とするものである。
混練物は、プラスチック粉砕機などでペレット化して射出成形原料とすることができる。
本発明のボンド磁石は、前記の組成物を樹脂の融点以上の温度で加熱溶融した後、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等を用いて該溶融物を磁場中で成形することにより、成形体として得ることができる。加熱溶融温度は、ポリアミド系樹脂の場合、好ましくは200〜250℃の範囲とし、ポリフェニレンサルファイド樹脂の場合、好ましくは250〜350℃の範囲とする。
得られた成形体は、使用前に着磁することが望ましい。着磁には、静磁場を発生する電磁石、パルス磁場を発生するコンデンサー着磁機等が用いられる。着磁磁場、すなわち磁場強度は、磁石粉末の種類によって若干異なるが、1200kA/m(15kOe)以上が好ましく、さらには2400kA/m(30kOe)以上が好ましい。
得られるボンド磁石は、磁気特性に優れ、かつ剛性等の機械的強度に優れる。例えば電子機器用モーター部品等の小型で偏平な複雑形状品に用いられ、大量生産が可能、後加工が不要、インサート成形可能等の特長を有しており、特に、金属材料との一体成形部品に好適である。
なお、ブロック共重合体として、表1に示す市販品を用いた。
<組成物の溶融流動性Q値>
ニーダーから回収された組成物をプラスチック粉砕機で粉砕し、JIS K 7210−1976「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」の参考試験とされている手法に基づき組成物の溶融流動性Q値を測定した。ダイの流路は直径1mm長さ10mmで、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド樹脂を用いたときの試験温度は250℃、荷重は21.6kgであり、ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いたときの試験温度は300℃、荷重は21.6kgである。
なお、ニーダーで混練直後の組成物をバージン材(V材)とし、一度射出成形し粉砕した組成物をリサイクル材(R材)と呼ぶ。V材およびR材の溶融流動性Q値は、いずれも0.1cc/s以上であり、両者の差が0.1cc/s以下であるものが望ましい。
得られた組成物をポリアミド樹脂の場合、シリンダ温度240℃で射出成形し、また、ポリフェニレンサルファイド樹脂の場合、310℃で射出成形し、長さ40mm、幅8mm、厚み2mmの板状試験片を得て、JIS K 7203−1982「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して曲げ強さを評価した。評価にあたって、支点間距離は30mm、クロスヘッドの移動速度は1mm/minとしている。曲げ強さは、V材およびR材ともに50MPa以上であるものが望ましい。
また、組成物中の樹脂バインダ部分へのブロック共重合体の分散状態については、曲げ強さ試験後の破断面をトルエンでエッチングした後、走査型電子顕微鏡で観察した。ブロック共重合体が球状に分散している場合、エッチングによって球状の穴が形成され、開いた穴の直径を20点測定し平均することによって分散粒径を算出した。ブロック共重合体の分散粒径は、本発明の場合、5μm以下でなければならない。
磁性粉末としてSmFeN系磁石粉末(住友金属鉱山製SFN−C)を90.0質量%、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12(宇部興産製UBESTA3020、平均分子量Mw 5300、末端アミノ基の残存量 7mmol/kg)を9.0質量%、スチレン単位とブチレン単位とエチレン単位を含むブロック共重合体A(JSR製DYNARON890P)を1.0質量%として、加圧型ニーダーに充填率80vol%で投入し、200℃30分混練した。ポリアミド系熱可塑性樹脂バインダ全体に占めるブロック共重合体の比率は、10質量%となる。
スチレン単位とブチレン単位を含むブロック共重合体の種類、ブチレン単位に対するスチレン単位の、またはブチレン単位とエチレン単位との和に対するスチレン単位の質量比α、ニーダー混練時の充填率、ブレード回転数、混練時間を表2に示す。
ニーダーから回収された組成物をプラスチック粉砕機で粉砕し、前記手法に基づき組成物の溶融流動性Q値を測定した。また、この組成物をシリンダ温度240℃で射出成形し、長さ40mm、幅8mm、厚み2mmの板状試験片を得て、前記の条件で曲げ強さを評価した。
また、組成物中の樹脂バインダ部分へのブロック共重合体の分散状態については、曲げ強さ試験後の破断面をトルエンでエッチングした後、走査型電子顕微鏡で観察し、ブロック共重合体が球状に分散している場合、エッチングによって球状の穴が形成され、開いた穴の直径を20点測定し平均することによって分散粒径を算出した。
次に、組成物のリサイクル性を調べるため、射出成形品の一部をプラスチック粉砕機で粉砕し、再度溶融流動性Q値を測定した。また再び射出成形し、曲げ強さおよび分散粒径を評価した。なお、ニーダーで混練直後の組成物をバージン材(V材)とし、一度射出成形し粉砕した組成物をリサイクル材(R材)と呼ぶ。
混練後の組成物の溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さ、樹脂バインダ内のブロック共重合体の分散粒径を、それぞれV材とR材について評価した結果を表4に示す。
実施例1で用いたスチレン単位とブチレン単位とエチレン単位を含むブロック共重合体A(JSR製DYNARON890P)の代わりに、表1に示すブロック共重合体を用い、実施例1と同様にして、組成物を調製した。なお、ブロック共重合体A〜Gはスチレン単位とブチレン単位に加え、エチレン単位を含むブロック共重合体である。
組成物を表2の条件で混練後に、溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さ、樹脂バインダ内のブロック共重合体の分散粒径を、それぞれV材とR材について評価した。結果を表4に示す。
なお、実施例7で得られるボンド磁石(成形品)は、破断面をSEM観察すると、図1のような状態になっていた。図2は図1の試料をトルエンでエッチングしたものであり、球状の孔がブロック共重合体の跡である。20点の孔の大きさを測定し平均した分散粒径は0.7μmだった。
ポリアミド12を含む熱可塑性樹脂バインダと磁性粉末からなるボンド磁石用組成物中の熱可塑性樹脂バインダの占める比率を10質量%とし、ブロック共重合体の投入量を表2のように変化させた以外は、実施例2と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表4に示す。
磁性粉末として異方性NdFeB系磁石粉末(愛知製鋼製MF−P18)56.5質量%とSmFeN系磁石粉末(住友金属鉱山製SFN−C)37.5質量%を混合した粉末に、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12(宇部興産製UBESTA3020)5.4質量%とブロック共重合体Iを0.6質量%加えて、さらに混合し加圧型ニーダーに充填率75体積%で投入し、ブレード回転数50rpm、200℃で30分混練した。得られた組成物を評価し、結果を表4に示す。
磁性粉末として異方性Sm2Co17系磁石粉末(信越化学製)46質量%とSmFeN系磁石粉末(住友金属鉱山製SFN−C)46質量%を混合した粉末に、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12(宇部興産製UBESTA3020)6.8質量%とブロック共重合体Iを1.2質量%加えて、さらに混合し加圧型ニーダーに充填率75体積%で投入し、ブレード回転数50rpm、200℃で30分混練した。得られた組成物を評価し、結果を表4に示す。
磁性粉末として異方性フェライト磁石粉末(同和鉱業製SF−H270)45質量%とSmFeN系磁石粉末(住友金属鉱山製SFN−C)43質量%を混合した粉末に、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12(宇部興産製UBESTA3020)8.4質量%とブロック共重合体Iを3.6質量%加えて、さらに混合し加圧型ニーダーに充填率75体積%で投入し、ブレード回転数50rpm、200℃で30分混練した。得られた組成物を評価し、結果を表4に示す。
磁性粉末として等方性NdFeB系磁石粉末(マグネクエンチ製MQP−B)93質量%を混合した粉末に、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12(宇部興産製UBESTA3020)5.6質量%とブロック共重合体Iを1.4質量%加えて、さらに混合し加圧型ニーダーに充填率75体積%で投入し、ブレード回転数50rpm、200℃で30分混練した。得られた組成物を評価し、結果を表4に示す。
従来例として、ブロック共重合体を添加せず、熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12の量を10質量%とした以外は、実施例1と同様にして組成物を作製し、溶融流動性Q値、曲げ強さを、V材とR材について評価した。その結果も表2,4に示す。
ブレード回転数を20rpmに落として混練のせん断力を下げた以外は、実施例2と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表2,4に示す。
混練時間を15分に短縮して混練した以外は、実施例2と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表2,4に示す。
ニーダーの混練槽に投入する材料の充填率を65vol%に抑えた以外は、実施例2と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表2,4に示す。
ブロック共重合体の投入量を6質量%(熱可塑性樹脂バインダ全体の60質量%)に増やした以外は、実施例2と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表2、4に示す。
磁性粉末として等方性NdFeB系磁石粉末(マグネクエンチ製MQP−B)を89.0質量%、熱可塑性樹脂バインダとしてポリフェニレンサルファイド(DIC社製LR−2G、溶融粘度 80Pa・s、直鎖型)を10.5質量%、スチレン単位とブチレン単位とエチレン単位を含むブロック共重合体E(クラレ製セプトン807)を0.5質量%として、加圧型ニーダーに充填率70vol%で投入し、300℃20分混練した。熱可塑性樹脂バインダ全体に占めるブロック共重合体の比率は、4.5質量%となる。
スチレン単位とブチレン単位を含むブロック共重合体の種類、ブチレン単位に対するスチレン単位の、またはブチレン単位とエチレン単位との和に対するスチレン単位の質量比α、ニーダー混練時の充填率、ブレード回転数、混練時間を表3に示す。
ニーダーから回収された組成物をプラスチック粉砕機で粉砕し、前記の手法に基づき組成物の溶融流動性Q値を測定した。
また、この組成物をシリンダ温度310℃で射出成形し、長さ40mm、幅8mm、厚み2mmの板状試験片を得て、前記の要領で曲げ強さを評価した。
また、組成物中の樹脂バインダ部分へのブロック共重合体の分散状態については、曲げ強さ試験後の破断面をトルエンでエッチングした後、走査型電子顕微鏡で観察した。ブロック共重合体が球状に分散している場合、エッチングによって球状の穴が形成され、開いた穴の直径を20点測定し平均することによって分散粒径を算出した。
次に、組成物のリサイクル性を調べるため、射出成形品の一部をプラスチック粉砕機で粉砕し、再度溶融流動性Q値を測定した。また再び射出成形し、曲げ強さおよび分散粒径を評価した。なお、ニーダーで混練直後の組成物をバージン材(V材)とし、一度射出成形し粉砕した組成物をリサイクル材(R材)と呼ぶ。
混練後の組成物の溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さ、樹脂バインダ内のブロック共重合体の分散粒径を、それぞれV材とR材について評価した結果を表4に示す。
磁性粉末とポリフェニレンサルファイドからなるボンド磁石用組成物中の熱可塑性樹脂バインダ全体の占める比率を11質量%とし、ブロック共重合体の投入量を表3のように変化させた以外は、実施例25と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表4に示す。
スチレン単位とブチレン単位とエチレン単位を含むブロック共重合体E(クラレ製セプトン807)の代わりに表1に示すブロック共重合体を用い、熱可塑性樹脂バインダ全体に占めるブロック共重合体の比率を8質量%とした以外は、実施例25と同様に組成物を調製した。
組成物を混練後に溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さ、樹脂バインダ内のブロック共重合体の分散粒径を、それぞれV材とR材について評価した。結果を表4に示す。
磁性粉末として異方性NdFeB系磁石粉末(愛知製鋼製MF−P18)63質量%とSmFeN系磁石粉末(住友金属鉱山製SFN−C)27質量%を混合した粉末、つまり両者を70:30で混合した粉末と、熱可塑性樹脂バインダとしてポリフェニレンサルファイド(DIC社製LR−2G)と表2のブロック共重合体を用意した。ボンド磁石用組成物中の熱可塑性樹脂バインダの量を10質量%とし、樹脂バインダ全体に占めるブロック共重合体の比率を10質量%とした。これらを加圧型ニーダーに充填率75体積%で投入し、ブレード回転数50rpm、300℃で20分混練した。
組成物を混練後に溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さ、樹脂バインダ内のブロック共重合体の分散粒径を、それぞれV材とR材について評価した。結果を表4に示す。
なお、実施例35で得られるボンド磁石(成形品)は、破断面をトルエンでエッチングしたSEM観察すると、図3のような状態になっていた。球状の孔がブロック共重合体の跡である。20点の孔の大きさを測定し平均した分散粒径は1.6μmだった。
磁性粉末として異方性Sm2Co17系磁石粉末(信越化学製)54.6質量%とSmFeN系磁石粉末(住友金属鉱山製SFN−C)36.4質量%を混合した粉末、つまり両者を60:40で混合した粉末、熱可塑性樹脂バインダとしてポリフェニレンサルファイド(DIC社製LR−2G)、および表2のブロック共重合体を用意した。ボンド磁石用組成物中の熱可塑性樹脂バインダの量を9質量%とし、樹脂バインダ全体に占めるブロック共重合体の比率を20質量%とした。これらを加圧型ニーダーに充填率80体積%で投入し、ブレード回転数40rpm、300℃で20分混練した。
組成物を混練後に溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さ、樹脂バインダ内のブロック共重合体の分散粒径を、それぞれV材とR材について評価した。結果を表4に示す。
従来例として、ブロック共重合体を添加せず、熱可塑性樹脂バインダとしてポリフェニレンサルファイドを11質量%とした以外は、実施例25と同様にして組成物を作製し、溶融流動性Q値、曲げ強さを、V材とR材について評価した。その結果を表3、4に示す。
従来例として、ブロック共重合体を添加せず、熱可塑性樹脂バインダとしてポリフェニレンサルファイドを10質量%とした以外は、実施例34と同様にして組成物を作製し、溶融流動性Q値、曲げ強さを、V材とR材について評価した。その結果を表3、4に示す。
従来例として、ブロック共重合体を添加せず、熱可塑性樹脂バインダとしてポリフェニレンサルファイドを9質量%とした以外は、実施例38と同様にして組成物を作製し、溶融流動性Q値、曲げ強さを、V材とR材について評価した。その結果を表3、4に示す。
ブレード回転数を15rpmに落として混練のせん断力を下げた以外は、実施例23と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表3、4に示す。
混練時間を7分に短縮して混練した以外は、実施例35と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表3、4に示す。
ニーダーの混練槽に投入する材料の充填率を50vol%に抑えた以外は、実施例40と同様にニーダー混練し、得られた組成物を評価した。結果を表3、4に示す。
スチレン単位とブチレン単位とエチレン単位を含むブロック共重合体C(JSR製DYNARON860P)の代わりにブロック共重合体J(旭化成製タフテックH122)を用いた以外は、実施例32と同様に組成物を調製した。
組成物を混練後に溶融流動性Q値、板状試験片の曲げ強さを、それぞれV材とR材について評価した。結果を表4に示す。なお樹脂バインダ内にはブロック共重合体の球状体は確認できなかった。
上記の実施例、比較例などの結果を示す表2〜4から、次のことがわかる。
まず、バインダ樹脂がポリアミド樹脂の場合について、従来例1において、V材で0.31cc/sだったQ値がリサイクルすることで0.14cc/sに低下している。また曲げ強さが91MPaから58MPaに低下している。
また曲げ強さについては、組成物をリサイクルすることによる低下が押さえられていることがわかる。実施例7のV材成形品の破断面をSEM観察したものが図1、2である。図2は図1の試料をトルエンでエッチングしたものであり、球状の孔がブロック共重合体の跡である。20点の孔の大きさを測定し平均した分散粒径は0.7μmだった。
また比較例4のように、ブロック共重合体の投入量が6質量%と、熱可塑性樹脂バインダ全体10質量%の1/2以上になると、分散粒径が5μmを超えるので、曲げ強さの低下が大きい。
これに対して、スチレン単位とブチレン単位を含むブロック共重合体を添加して混練した組成物(実施例23〜41)においては、V材とR材のQ値の変化は最も高いものでも実施例25の1.5倍に留まり、リサイクルしてもその変化が小さいことがわかる。
また曲げ強さについては、従来例ではリサイクルによりV材の6割から7割に低下しているのに対して、低下の大きい実施例23でもV材の88%に押さえられていることがわかる。
一方、比較例5〜7のように、ブレード回転数、混練時間やニーダー充填率を下げて、混練のせん断力を弱めて、分散粒径を6μm以上にしたものでは、リサイクルによってQ値が1.5倍以上に増大している。またR材の曲げ強さはV材の74%から80%と実施例ほどの抑制効果がない。なお、比較例8では、α値が大きいブロック共重合体を用いたので、樹脂バインダ内でブロック共重合体が球状体とならず、リサイクルによってQ値が1.5倍以上に増大し、R材の曲げ強さも大幅に低下した。
Claims (9)
- 磁性粉末と樹脂バインダとしてポリアミド樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂とを含むボンド磁石用組成物において、
前記樹脂バインダは、スチレン単位とブチレン単位とを構成成分として含むブロック共重合体を含有し、該ブロック共重合体が樹脂バインダ中に平均粒径0.1〜5μmの球状体として分散していることを特徴とするボンド磁石用組成物。 - 前記ブロック共重合体は、構成成分としてさらにエチレン単位を含むことを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
- 前記ブロック共重合体の含有量は、樹脂バインダ全体の1〜50質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のボンド磁石用組成物。
- 前記ブロック共重合体は、スチレン単位に対するスチレン単位以外の構成成分の質量比(α)が1〜6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のボンド磁石用組成物。
- 前記ブロック共重合体は、樹脂バインダ中、180℃以上の温度で溶融・混練されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のボンド磁石用組成物。
- 前記磁性粉末は、Sm2Fe17N3系合金、Nd2Fe14B系合金、Sm2Co17系合金、SmCo5系合金、または、フェライト磁石粉末から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
- 前記ポリアミド樹脂は、平均分子量が1000〜60000であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
- 前記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、溶融粘度が300℃において10〜1000Pa・sの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のボンド磁石用組成物を用いて、射出成形してなるボンド磁石。
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