JP2006344768A - ボンド磁石用組成物、その製造方法、およびそれを用いたロータ磁石並びにブラシレスモータ - Google Patents

ボンド磁石用組成物、その製造方法、およびそれを用いたロータ磁石並びにブラシレスモータ Download PDF

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健二 村岡
Kunio Watanabe
邦夫 渡辺
Atsushi Kawamoto
淳 川本
Hidetoshi Yamabe
秀敏 山辺
Noritaka Murata
徳貴 村田
Kazutoshi Ishizaka
和俊 石坂
Isao Kaneko
勲 金子
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Abstract

【課題】成形不良を回避して、製品の小型化・薄肉化に対応できるボンド磁石用組成物、その製造方法、および優れた磁気特性を維持できるロータ磁石並びにブラシレスモータを提供。
【解決手段】希土類−遷移金属系磁性粉末(A)、樹脂バインダー(B)及び高分子系滑剤(C)を含有するボンド磁石用組成物であって、樹脂バインダー(B)は、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)から選ばれた1種以上を含有し、一方、高分子系滑剤(C)は、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とするボンド磁石用組成物などにより提供。
【選択図】なし

Description

本発明は、ボンド磁石用組成物、その製造方法、およびそれを用いたロータ磁石並びにブラシレスモータに関し、より詳しくは、成形不良を回避して、製品の小型化・薄肉化に対応できるボンド磁石用組成物、その製造方法、および優れた磁気特性を維持できるロータ磁石並びにブラシレスモータに関する。
フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等が、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモータなどとして組込まれ、使用されている。中でもブラシレスの永久磁石同期モータが、良好な制御性や信頼性が要求されるモータの主流になりつつあり、たとえば表面磁石型(SPM)と内部磁石型(IPM)に分類される。ここで用いられる磁石は、中型から大型の同期モータについては、ほとんどが焼結法で製造されるものであり、小型の同期モータについては熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と磁性粉とからなるボンド磁石と呼ばれるものである。ボンド磁石が用いられる理由は、焼結法で作製した磁石は、脆く、薄肉化しにくいため複雑形状への成形は困難であり、また焼結時に15〜20%も収縮するため、寸法精度を高められず、研磨等の後加工が必要で、用途面において大きな制約を受けること等がある。
ボンド磁石は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーとし、磁性粉を充填して容易に製造できるため、新しい用途開拓が繰り広げられている。特に熱可塑性樹脂をバインダーとして射出成形によって製造される射出成形磁石は、圧縮成形磁石や押出成形磁石などの他のボンド磁石に比べて形状自由度に優れ薄肉化しやすい特徴があり、小型のSPMモータやIPMモータのロータ磁石として採用されるケースが増えつつある。
射出成形磁石は、射出成形機のシリンダー内部で溶融させたボンド磁石組成物を金型に射出して製造される。金型には、所定の製品形状を持つキャビティと、スプルーあるいはランナーと呼ばれる溶融したボンド磁石用組成物を誘導する湯道が設けられている。該金型は、ボンド磁石用組成物に用いられている熱可塑性樹脂の融点以下となるように温度設定されており、射出された溶融組成物は、金型内で急速に冷却され固化し、磁石成形品として取り出される。
例えば、ポリアミド樹脂をバインダーとしたボンド磁石組成物の場合、金型温度は、80〜110℃程度に設定されることが多い。成形サイクルを短くし生産性を向上させるために、金型温度をさらに低く設定し、冷却時間を短縮することがある。また、金型に希土類焼結磁石を埋め込むことによってキャビティに配向磁界を発生させている場合には、希土類焼結磁石の温度係数α(Br)に従って配向磁界が低下するのを防ぐために、金型温度をなるべく低く設定することもある。たとえば、Nd−Fe−B焼結磁石のα(Br)は−0.11%/Kなので、金型設定温度が80℃変化すると、配向磁界が9%変わることになる。これらの場合には、金型温度が80℃未満、さらには10〜50℃に設定されることもある。
金型の設定温度が低いほど、溶融したボンド磁石用組成物がスプルーとランナーを通過する過程で急速に冷却されるため、組成物がキャビティに到達する前に、あるいはキャビティ内で充分充填される前に固化して、ショートショットと呼ばれる成形不良が起こりやすくなる。また、昨今増えてきている質量が1g未満の小型および/または薄肉のロータ磁石では、スプルー・ランナーやゲート径、またキャビティの厚みが小さいため、いっそう成形が困難になってきている。
上記課題の一つの対応策として、加熱することができるホットスプルーやホットランナーシステムを金型に組み込み、スプルー・ランナーでの固化を回避する方法があるが、金型が高価になり製品単価が上がったり、複雑な構造を持つ金型では組み込みが困難である等の課題がある。
また、射出成形機のシリンダー温度を高めて、射出される組成物の温度を十分高めておく方法も考えられるが、磁性粉末が希土類磁性粉末である場合には、高温中に置かれることで磁性粉末が酸化により特性劣化し、所望の磁石性能が得られなくなるおそれがある。
その他、組成物の溶融粘度を下げ、流動抵抗を低減することで、速やかにスプルーとランナーを通過させ充填させようという方法も提案されている。これを実現させるために、MI(メルトフローインデックス)値の高いバインダーを選定したり、滑剤などを添加したり、あるいは磁性粉末の粉体性状を調整することが行われている。
例えば、(A)単独重合ポリアミド樹脂と、(B)共重合ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのいずれかとの混合物で、(B)/(A+B)が特定範囲にあるものを樹脂バインダーとして使用することによって、コンパウンドの溶融粘度を低くし、一旦溶融したコンパウンドの固化速度を特定範囲に設定するボンド磁石用コンパウンドの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
これによれば、配向性のよい、優れた磁気特性を発揮するロータ磁石が得られるものと期待されるが、単純に組成物の溶融粘度を下げても射出成形機のシリンダー内部でバックフローが起きたり、高価な超高速射出成形機でないと効果が現れにくい等の課題があった。
また、他の問題として、金型の設定温度が通常の80〜110℃であっても、溶融した組成物が、金型のスプルーブッシュから製品キャビティまで到達する時間が長い場合には、射出充填の途中で組成物の溶融粘度が上昇して成形不良を起こすことがあった。
一方、組成物の溶融流動性を向上させ、成形物の高磁力化を図るために磁性粉の充填量を多くしても良好な溶融流動性を維持することができ、溶融時の流動性低下に基づく成形加工性の低下を抑制しうるロータ磁石を得るために、樹脂バインダーとして、熱可塑性樹脂の主材樹脂に、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を含有させた組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。また、熱可塑性樹脂からなる主材樹脂に重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を含有させた樹脂バインダーを用いたボンド磁石用組成物が提案されている(例えば、特許文献3)。
これらは、熱可塑性樹脂を主材樹脂として用い、これに重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体あるいは重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を少量添加、混合したものを樹脂バインダーとしているが、これらの樹脂バインダーでは、小型ロータ磁石の射出成形性の向上に係る課題を未だ十分には解決することはできなかった。
また、射出成形で製造されるロータ磁石は、他の部品と一体成形されることがある。ロータ磁石の形状が円筒状であって、その内周側または外周側に円柱状または円筒状の鉄や珪素鋼板などのバックヨークが配置される場合には、一体成形直後の冷却過程で磁石とバックヨークとの線膨張係数差により磁石が割れることがあった。この課題に対して、金型内に挿入するバックヨークを予め加熱する方法もあるが十分でなく、従来の組成物では対応が困難であった。さらには、モータの用途によっては、ロータ磁石がヒートサイクル試験にかけられることもあり、成形後の冷却過程で割れなかったとしても、ヒートサイクル試験条件によっては、そこで割れてしまうということがあった。
このような状況下、小型化および/または薄肉化に対応でき、かつ優れた磁気特性を維持できるロータ磁石を得ることができるボンド磁石用組成物の出現が切望されていた。
特開2001−85209号公報(特許請求の範囲) 特開2001−123067号公報(特許請求の範囲) 特開2001−240740号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、上記事情に鑑みなされたもので、成形不良を回避して、製品の小型化・薄肉化に対応できるボンド磁石用組成物、その製造方法、および優れた磁気特性を維持できるロータ磁石並びにブラシレスモータを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、溶融流動性を向上しうる樹脂バインダーとして特定のポリアミド樹脂を選定するとともに、これに特定の高分子系滑剤を含有させ、希土類磁性粉末を配合することで、良好な射出成形性を持つボンド磁石用組成物が得られ、これにより成形時に金型キャビティへの完全充填が行われる前に組成物が固化することによる成形不良を回避できることを見出し、かかるボンド磁石用組成物を用いることで、小型化および/または薄肉化に対応でき、かつ優れた磁気特性を維持できるロータ磁石が得られることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類−遷移金属系磁性粉末(A)、樹脂バインダー(B)及び高分子系滑剤(C)を含有するボンド磁石用組成物であって、樹脂バインダー(B)は、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)から選ばれた1種以上を含有し、一方、高分子系滑剤(C)は、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、磁性粉末(A)は、希土類(Nd又はSm)と遷移金属(Fe及び/又はCo)を含有することを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、数平均分子量が5,000〜50,000であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、樹脂バインダー(B)の配合量は、組成物100重量部に対して1〜50重量部であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、高分子系滑剤(C)の融点は、150℃以下であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、高分子系滑剤(C)の配合量は、ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して、0.1〜5重量部であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、ボンド磁石用組成物を溶融状態にした後、その温度を降下したとき、該組成物の粘度の増加率が大きくなり始めるときの温度(固化開始温度:Ts)と、粘度の増加率が小さくなり始めるときの温度(固化終了温度:Tf)との差ΔTが20℃以上であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、固化開始温度(Ts)が170℃以上であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
一方、本発明の第9の発明によれば、第1〜8の発明に係り、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)から選ばれた1種以上を50重量%以上含有する樹脂バインダー(B)と、オレフィンと(メタ)アクリル酸またはその酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸またはその酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなる高分子系滑剤(C)とを、溶融混合する第1の工程と、次いで得られた混合物に希土類−遷移金属系磁性粉末(A)を配合し、混練する第2の工程からなることを特徴とするボンド磁石用組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、第1の工程は、高分子系滑剤(C)の融点以上であって150℃以下の温度で行うことを特徴とするボンド磁石用組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第11の発明は、第9の発明において、第2の工程は、180〜300℃の温度で行うことを特徴とするボンド磁石用組成物の製造方法が提供される。
一方、本発明の第12の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明に係るボンド磁石用組成物を、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法又は射出プレス成形法から選ばれるいずれかの成形法を用いて成形してなるロータ磁石が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明に係るロータ磁石を用いてなるブラシレスモータが提供される。
本発明によれば、高分子系滑剤として、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーを用いていることから、低温溶融時の流動性に優れ、成形性がよく磁気特性、剛性等の機械強度及びリサイクル性に優れたボンド磁石用組成物が得られ、樹脂バインダーには、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体から選ばれた1種以上を含有するボンド磁石用組成物を用いているので、特に小型化および/または薄肉化が要求される高性能なロータ磁石を実現できる。また、本発明のロータ磁石が用いられるブラシレスモータは、小型ながら高いトルクを有しており、工業的に有用である。
以下、本発明のボンド磁石用組成物、その製造方法、およびそれを用いたロータ磁石並びにブラシレスモータについて、さらに詳しく説明する。
本発明のボンド磁石用組成物は、希土類元素と遷移金属を含有する希土類磁性粉(A)と熱可塑性の樹脂バインダー(B)及び高分子系滑剤(C)を含有するボンド磁石用組成物であって、樹脂バインダー(B)が、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)から選ばれた1種以上を含有し、高分子系滑剤(C)が、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とする。
1.希土類磁性粉(A)
希土類磁性粉としては、希土類−鉄系磁性粉末、希土類−コバルト系磁性粉末など、ボンド磁石の原料となる各種の希土類磁性粉を使用でき、特に制限されないが、高温で酸化による磁気特性低下が起こりやすい希土類元素を含有する磁性粉であれば特に効果的である。
これらは上記希土類磁性粉の混合物(ハイブリッド)でもよく、異方性磁性粉だけでなく、等方性磁性粉も対象となる。
希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)が挙げられ、これら群から1種又は2種以上が選択され、単独若しくは混合物として使用できる。希土類元素としては、Sm、Nd、Pr、Y、La、Ce、Gd等が好ましく、特にNd又はSmのいずれかが好ましい。
一方、遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)が挙げられ、これら群から1種又は2種以上が選択される。遷移金属元素では、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい遷移金属元素は、Fe又はCoのいずれかである。
尚、磁性粉の上記主成分に加えて、C、Al、Si、P、Ca、Ti、Mn、Ni、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、PtまたはAuから選択される一種以上を磁性粉に7重量%以下添加すると、磁性粉の耐熱性を高めることができる。
希土類−遷移金属系磁性粉として、希土類(Nd又はSm)と遷移金属(Fe及び/又はCo)を含有する磁性粉末が好ましく、例えば、希土類−コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉末等から選ばれる一種、または二種以上の混合物を使用でき、中でも希土類−鉄−窒素系の磁性粉が好適である。
具体的にこの磁性粉は、20〜25重量%のSm、2.1〜4.0重量%のN、残部が実質的にFeを必須元素とする遷移金属であるThZn17型の結晶構造を持つ金属間化合物であることが望ましい。Smが20重量%未満ではロータ磁石の保磁力HcJが低下し、25重量%を超えるとロータ磁石の残留磁束密度Brが低下し、一方、Nが2.1重量%未満であるか4.0重量%を超えると、ロータ磁石の保磁力HcJが低下する。残部のFeのうち、その30重量%以下をCoで置換すると、磁性粉の飽和磁化とキュリー温度が上がり、ロータ磁石の温度係数α(B)を低く抑えることができる。
また、別な磁性粉として、20〜25重量%のSm、3.5〜5.5重量%のN、1.0〜10重量%のMn、残部が実質的にFeを必須元素とする遷移金属であるThZn17型の結晶構造を持つ金属間化合物を含むものであることが望ましい。Smが20重量%未満では、ロータ磁石の保磁力HcJが低下し、25重量%を超えるとボンド磁石の残留磁束密度Brが低下し、一方、Nが3.5重量%未満であるか5.5重量%を超えると、ボンド磁石の保磁力HcJが低下する。残部のFeのうち、その30重量%以下をCoで置換すると、磁性粉の飽和磁化とキュリー温度が上がり、ロータ磁石の温度係数α(B)を低く抑えることができる。
これらの希土類−鉄−窒素系磁性粉の中でも、還元拡散法で製造された希土類−遷移金属系母合金に窒素を導入して希土類−遷移金属−窒素系磁性粉末としたものが、高性能のロータ磁石には好適である。具体的には、希土類−遷移金属系母合金主相の化学量論組成に対して0.4重量%以上過剰の希土類元素を含有する希土類−遷移金属系母合金に窒素を導入する工程と、得られた希土類−遷移金属−窒素系磁性粉末を、その主相の化学量論組成に対する希土類元素の過剰量が0.4重量%以下となるように酸性水溶液中で洗浄する工程とを含有して製造され、該希土類−遷移金属−窒素系磁性粉末中の不可避不純物である水素の含有量を0.1重量%未満とする磁性粉末が、高い飽和磁化と良好な保磁力と角形性を有するため、高性能のロータ磁石を得るには好適である。
このような磁性粉末を製造するにあたって、その主相の化学量論組成に対する希土類元素の過剰量が0.4重量%以下となるように酸性水溶液中で洗浄した希土類−遷移金属−窒素系磁性粉末を、さらに真空中または不活性ガス雰囲気中500°C以下の温度で熱処理する工程を含むと、より磁気特性に優れたロータ磁石を得ることができる。
希土類−遷移金属系磁性粉の物性は、特に限定されるものではないが、得られるボンド磁石用組成物の溶融流動性、磁性粉の配向性、充填率等の観点から、希土類−遷移金属系磁性粉の平均粒径は、1〜100μmとすることが好ましい。さらには、1〜50μmが好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
ただし、HDDR法によって製造される異方性Nd−Fe−B系磁性粉については、平均粒径を0.1〜10μmとすると磁気特性が低下する場合があるので、上記の限りではなく、10〜100μmにすることが好ましい。
また、本発明においては、要求される磁気特性に合わせて、Srフェライト、Baフェライト等のフェライト磁性粉、アルニコや鉄クロムコバルトなどの金属磁性材料粉末の磁性粉一種以上を希土類−遷移金属系磁性材料粉末に混合した粉末を用いることができる。
希土類−遷移金属系磁性粉に対するフェライト磁性粉の混合比率は、任意に設定できるが、目標とする磁気特性に対して希土類磁性粉を多めに設定すると、希土類磁性粉とフェライト磁性粉との合計量を低減できるため溶融粘度の低いボンド磁石用組成物が得られ、逆にフェライトを多めに設定すると組成物のコストパフォーマンスを高めることができる。
また、より高い磁気特性を有するロータ磁石が必要とされる場合には、上記の異方性希土類−遷移金属−窒素系磁性粉に、希土類−鉄−ほう素系または希土類−コバルト系の磁性粉を混合したハイブリッドが好適である。平均粒径が1〜10μmの希土類−遷移金属−窒素系磁性粉と、平均粒径のより大きな希土類−鉄−ほう素系または希土類−コバルト系の磁性粉を混合することによって、充填密度が高まり、組成物の流動性が向上するからである。この中でも異方性希土類−遷移金属−窒素系磁性粉とHDDR法によって製造される異方性希土類−鉄−ほう素系磁性粉とのハイブリッドが最も好適である。
本発明において、磁性粉末は、鉄と希土類元素の金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜(A−1)で被覆され、その表面にシリケート被膜(A−2)が形成されていることが好ましい。また、このシリケート被膜(A−2)の表面上には、必要によりシラン系カップリング剤などによる処理被膜(A−3)を形成することが好ましい。
(A−1)複合金属リン酸塩被膜
本発明において、磁性粉末は、その表面が鉄と希土類元素を金属成分として含む金属リン酸塩(a−1)で均一に被覆され、また、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムのいずれか1種以上を金属成分として含む金属リン酸塩(a−2)が複合化した被膜で均一に被覆されていることがより好ましい。ここで、均一に被覆されるとは、磁性粉末表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上が複合金属リン酸塩被膜で覆われていることをいう。
金属リン酸塩(a−1)は、リン酸サマリウム、リン酸鉄などであり、これは磁性粉末を構成する希土類や鉄にリン酸が反応して形成されたもので、これらが複合化した複合金属リン酸塩も含まれる。一方、金属リン酸塩(a−2)は、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸銅、リン酸カルシウム、又はこれらが2種以上複合化した金属塩などである。金属成分としては、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅およびカルシウム以外にも、クロム、ニッケル、マグネシウムなどでもよく、これらの金属リン酸塩が複合金属リン酸塩被膜に含まれていてもかまわない。
金属リン酸塩(a−1)、又はこれと金属リン酸塩(a−2)とが複合化した金属リン酸塩は、樹脂バインダーとの結合力を高め、磁性粉末の耐食性を高める成分である。金属リン酸塩(a−1)だけでも充分な耐塩水性を得ることができるが、さらに耐塩水性を高めるためには、金属リン酸塩(a−2)の金属成分、すなわちアルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムから選択された1種以上が、複合金属リン酸塩被膜(A−1)の金属成分全量に対して、30重量%以上、特に50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含まれた複合金属リン酸塩とすることが好ましい。
(A−2)シリケート被膜
本発明において、磁性粉末は、上記複合金属リン酸被膜の表面上に、シリケート被膜が形成されているものが好ましい。
このシリケート被膜は、その材料によって限定されるものではなく、シリカ粉を機械的に付着する方法、アルコキシシリケートを加水分解して被覆する方法、エチルシリケートを原料とするゾルゲル反応、又はプラズマ化学蒸着法で被覆する方法などによって得ることができるが、アルコキシシリケートを加水分解して得る方法が好適である。
アルコキシシリケートとは、アルコキシ基を有するシリケート化合物であり、具体的には、下記一般式(1)で示されるポリアルコキシポリシロキサンである。式(1)中、Rは同一あるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、nは2〜100である。
Figure 2006344768
このうち、Rが炭素数1〜3のアルキル基であり、nが2〜50のポリアルコキシポリシロキサン、さらには、Rが炭素数1〜2のアルキル基であり、nが2〜20のポリアルコキシポリシロキサンが好ましい。
上記アルコキシシリケートとしては、商品名;MKシリケートMS51(シリカ換算濃度が52重量%であるメチルシリケートオリゴマー、三菱化学(株)製)、商品名:MKシリケートMS56S(シリカ換算濃度が59重量%であるメチルシリケートオリゴマー、三菱化学(株)製)、商品名:ES40(ヒュルスジャパン社製)のようなエチルシリケートの部分加水分解縮合物などを挙げることができる。
ここに例示したシリケートオリゴマーは、ケイ素にアルコキシ基の結合したアルコキシシランを部分加水分解し、更に縮合してなるアルコキシシランのオリゴマーである。原料のアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランなど、加水分解縮合可能な基を2以上有するケイ素化合物が挙げられる。テトラアルコキシシラン、中でもテトラメトキシシランを用いれば容易にシリカ換算濃度を高くすることができる。
オリゴマー(低縮合物)を得る部分加水分解・縮合反応の際に、適宜触媒を加えることができる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸等を触媒として用いることができる。また、部分加水分解・縮合反応では、溶媒を存在させることができる。溶媒には、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等の水溶性の有機溶媒を用いることができる。溶媒の使用量は、テトラアルコキシシランに対して0.1〜10重量倍、好ましくは0.1〜1.5重量倍とする。テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合反応は、所定量の水を必要に応じて適宜攪拌しながら加えるとよい。加熱昇温して、還流状態で加水分解縮合反応を進行させる。還流温度は、溶媒の沸点に近い温度で行う。還流の反応時間は、触媒の種類にもよるが、通常0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間である。
次に、部分加水分解縮合反応により生成したアルコールを留出させる。この方法には各種の蒸留、蒸発操作が適用できる。すなわち、常圧又は減圧下でアルコールの沸点以上に加熱して留出させる方法、又は窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを導入して留出させる方法などがある。工業的には、常圧で80〜200℃、好ましくは120〜180℃まで溶液で加熱、留去させる方法が適している。テトラアルコキシシランとしてテトラメトキシシランを用い、ポリメトキシポリシロキサンを得る場合は、この際の温度は80〜130℃、好ましくは100〜120℃である。留出時間は、特に制限はないが通常1〜5時間とする。工業的には、この範囲まで昇温した後、その温度を維持して0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間保ち、反応を完結させればよく、これにより多量の均一な生成物を効率的に得ることができる。
この反応生成物は、通常、縮合度で2〜30程度の縮合物の混合物として得られる。その一部を分離し、あるいは分離せずにそのまま用いてもよい。なお、本発明においてシリケートオリゴマーのシリカ換算濃度は、特に限定されるものではないが、52重量%以上が好ましく、特に、アルコール換算OH濃度が0.5重量%以下、特に0.1重量%以下とした場合、液の保存安定性が極めて優れたものとなる。OHを0.5重量%以下とする方法も特に限定されるものではなく、例えば、シリケートオリゴマーのOHを縮合させるか、又はエステル交換反応によりアルコキシ基とする方法で調整できる。
また、この方法で得られるシリケートオリゴマーには、通常0.5〜10%程度の、テトラアルコキシシランのモノマーが残存しているので、このモノマーを留去するのが望ましい。テトラメトキシシランのモノマーは角膜等への刺激性等の毒性を有し作業環境上好ましくないだけでなく、オリゴマーの保存安定性に影響を及ぼすことがあるからである。1重量%以下、好ましくは0.2重量%以下にまでモノマーを除去すればよい。
また、シリケートオリゴマーには、これと縮合反応し得る官能基、及び/又は加水分解により縮合反応しうる基を有する反応性有機化合物を配合して、珪素含有組成物とすることができる。反応性有機化合物とは、シリケートオリゴマーの有するアルコキシ基と互いに縮合可能な基を有する有機化合物、及び/又は加水分解によりシリケートオリゴマーの有するアルコキシ基と互いに縮合可能な基を生じうる有機化合物である。このような反応性有機化合物としては、たとえば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基等を有するものが挙げられ、その分子量は2000以下のものが好ましい。
(A−3)カップリング剤処理被膜
本発明においては、上記磁石粉末のシリケート被膜(A−2)の表面に、更に、樹脂バインダーに対して親和性のあるカップリング剤処理被膜(A−3)を形成することができる。
ここで、カップリング剤としては、磁性粉表面のシリケート被膜、更に詳しくは表面活性シラノール基(Si−OH)と縮合反応を起こすとともに樹脂と十分な親和性を有するものであれば使用でき、特に特定されるものではない。例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤のいずれかが挙げられ、このうちシラン系カップリング剤が好ましい。
本発明において、シラン系カップリング剤は、次の一般式(2)で示されるような、1〜3個の加水分解性基(アルコキシ基)と、1〜3個のアルキル基又は官能基を含有する有機シラン系化合物である。
(4−n)−Si−X(n) …(2)
式(2)中、Rは直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、或いは含酸素、含窒素又は含硫黄置換基をもつ官能基のいずれかで、Xは加水分解性基を表し、nは4未満の整数である。
ここで、アルキル基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。シクロヘキシル環、ビニル基、フェニル基を含むものでもよい。官能基とは、含酸素、含窒素又は含硫黄置換基をもつメタクリロキシアルキル、エポキシアルキル、グリシドキシアルキル、アミノアルキル、メルカプトアルキルなどである。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシなど炭素数1〜5のアルコキシが挙げられる。
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、アクリルブチルトリメトキシシラン、メタクリルプロピルトリメトキシシラン、p−[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチル−3−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチル−3−アミノプロピルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、N,N−ビス[(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]メタクリルアミド、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]メタクリルアミド、N,N’−ビス(トリメチルシリル)尿素、ジエチルトリメチルシリルアミン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジフェニルシランジオール、N−グリシジル−N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、N−グリシジル−N,N−ビス[3−(メトキシシリル)プロピル]アミン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ノナメチルトリシラザン、テトラメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン、N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]ジエチレントリアミン、N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]トリエチレンテトラミン、N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]−m−フェニレンジアミン、N−トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルシリルアジド、トリメチルシリルシアナイド、トリメチルシリルイミダゾール、N−トリメチルシリルフェニル尿素等のシラン系カップリング剤が挙げられる。
上記シラン系カップリング剤の中で、好ましいのは、炭素数3〜10の直鎖状アルキル基、又は炭素数1〜10の官能基を有するトリアルコキシ系シランである。
また、チタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリテシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、アルミニウム系カップリング剤には、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等がある。
上記のように表面被覆された磁性粉末(A)の被膜の膜厚は、平均で1〜100nm、特に10〜80nmであることが好ましい。特に、複合金属リン酸塩被膜(A−1)及びシリケート被膜(A−2)の厚さの合計、あるいは、複合金属リン酸塩被膜(A−1)、シリケート被膜(A−2)、シラン系カップリング剤処理被膜(A−3)の厚さの合計は、平均で1〜100nmであることが好ましい。平均厚さが1nm未満であると十分な耐塩水性、機械強度が得られず、一方、100nmを越えると磁気特性が低下し、また樹脂結合型磁石を作製する際には混練性や成形性が低下する。複層処理被膜の膜厚は、上記複層処理被膜で被覆された磁性粉末の断面の電子顕微鏡写真から確認することができる。
本発明においては、被膜の厚さの合計が上記の範囲内にあれば、複合金属リン酸塩被膜(A−1)、シリケート被膜(A−2)、又はシラン系カップリング剤処理被膜(A−3)の個々の厚さが制限されるものではないが、複合金属リン酸塩被膜(A−1)、及びシリケート被膜(A−2)がいずれも5〜40nmであることがさらに好ましい。
2.磁性粉末の表面被覆方法
本発明において、磁性粉末には、(1)複合金属リン酸塩被膜、(2)シリケート被膜、(3)カップリング剤処理被膜の順で表面を被覆することができる。
(1)複合金属リン酸塩被膜の形成
溶解法あるいは還元拡散法等を用いて得られた希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉は、通常平均粒径20μmを超える粉末を含んでいる。該平均粒径20μmを超える粉末を含む希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉は、磁気特性が低いので、有機溶媒中で平均粒径8μm以下に粉砕する必要がある。この粉砕の際、又は粉砕後に、リン酸を添加した後、該溶液を攪拌することで複合金属リン酸塩被膜を形成する。この際、リン酸とともに、金属化合物として、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムから選ばれた1種以上の金属の酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物を添加することができる。
先ず、平均粒径20μmを超える磁性粉末の粗粉末に、有機溶媒を加え、磁性粉末の粉砕前、あるいは粉砕中に、リン酸を添加して、攪拌を続ける。また、粉砕後の場合、なるべく粉砕から時間をおかずに添加することが望ましい。攪拌は、通常1〜180分間続行することが好ましい。リン酸を添加するのは、磁性粉末の平均粒径が8μm以下であれば、粉砕後であってもよい。
有機溶媒としては、特に制限はなく、2−メトキシエタノール、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等のいずれか1種または2種以上の混合物を用いると良い。但し、メタノールは、リン酸と速やかに反応してエステル化し、良好な被膜が形成されるのを妨げる恐れがあるので取り扱いには注意を要する。
前記の金属成分が容易に金属イオンを生成し、磁性粉末の溶解を適度に調整するためには、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド等の極性溶媒を混合することが望ましい。また、磁性粉末の溶解を促進するために、有機溶媒に水や酸を混合しても良い。
リン酸としては、金属化合物と反応して金属リン酸塩を生成するオルトリン酸をはじめ、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、直鎖状のポリリン酸、環状のメタリン酸が使用できる。また、リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムマグネシウムなども使用できる。これら化合物は、単独でも複数種を組み合わせてもよく、通常、キレート剤、中和剤などと混合して処理剤とされる。
これらのうち、オルトリン酸が好ましい性能を発揮するが、その理由は、これが上記の金属化合物と反応しやすく、希土類系金属を成分とする磁性粉末の表面に保護膜を形成しやすいためと考えられる。
リン酸は、磁性粉末の粒径、表面積等に合わせて最適量を添加するが、通常は、粉砕する磁性粉末に対して0.1〜2mol/kg(粉末重量当たり)であり、好ましくは0.15〜1.5mol/kg、さらに好ましくは0.2〜0.4mol/kgである。リン酸の添加量が0.1mol/kg未満であると、磁性粉末の表面が十分に被覆されないために耐塩水性が改善されず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性が極端に低下する。2mol/kgを超えると、磁性粉末との反応が激しく起こって磁性粉末が溶解する。リン酸の濃度は、特に制限されず、無水リン酸、50〜99%リン酸水溶液などが用いられる。
金属成分は、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムなどのイオンの供給源であり、有機溶媒に溶け金属イオンを生成する酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物などの金属化合物である。これらの金属化合物は、溶媒中でイオン化し、磁性粉末の成分である希土類金属や鉄が溶媒へ溶け出すにともない、磁性粉末の表面で反応して金属リン酸塩(a−2)が複合した被膜を形成する。そのため、鉄と希土類元素の金属燐酸塩(a−1)単独の場合に比べて、シリケート被膜などとの結合力をさらに向上することが可能となる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムイオンの供給源となり、有機溶媒に溶ける化合物であれば、特に制限されず、例えば、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウムアンモニウム、安息香酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、エチルアセト酢酸アルミニウム、ぎ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、しゅう酸アルミニウム、酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム、塩化カリウムアルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、硫化アルミニウム、フタロシアニンアルミニウム、又は酒石酸アルミニウムが例示される。特に好ましいのは、リン酸アルミニウム、あるいはリン酸水素アルミニウムである。
亜鉛化合物としては、亜鉛イオンの供給源となり、有機溶媒に溶ける化合物であれば、特に制限されず、例えば、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、安息香酸亜鉛、炭酸亜鉛、エチルアセト酢酸亜鉛、ぎ酸亜鉛、水酸化亜鉛、硝酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、しゅう酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛四水和物、リン酸水素亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、塩化カリウム亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫化亜鉛、フタロシアニン亜鉛、又は酒石酸亜鉛が例示される。特に好ましいのは、酸化亜鉛、リン酸亜鉛四水和物、或いはリン酸水素亜鉛である。
マンガン化合物としては、マンガンイオンの供給源となり、有機溶媒に溶ける化合物であれば、特に制限されず、例えば、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン、塩化マンガンアンモニウム、安息香酸マンガン、炭酸マンガン、エチルアセト酢酸マンガン、ぎ酸マンガン、水酸化マンガン、硝酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オレイン酸マンガン、しゅう酸マンガン、酸化マンガン、リン酸マンガン、リン酸水素マンガン、塩化カリウムマンガン、ステアリン酸マンガン、硫化マンガン、フタロシアニンマンガン、又は酒石酸マンガンが例示される。特に好ましいのは、酸化マンガン、或いはリン酸水素マンガンである。
また、銅化合物としては、銅イオンの供給源となり、有機溶媒に溶ける化合物であれば、特に制限されず、例えば、酢酸銅、硫酸銅、塩化銅、塩化銅アンモニウム、安息香酸銅、炭酸銅、エチルアセト酢酸銅、ぎ酸銅、水酸化銅、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、しゅう酸銅、酸化銅、リン酸銅、リン酸水素銅、塩化カリウム銅、ステアリン酸銅、硫化銅、フタロシアニン銅、または酒石酸銅などが用いられる。特に好ましいのは、酸化銅(I)、或いはリン酸水素銅である。
さらに、カルシウム化合物としては、カルシウムイオンの供給源となり、有機溶媒に溶ける化合物であれば、特に制限されず、例えば、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化カルシウムアンモニウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシウム、エチルアセト酢酸カルシウム、ぎ酸カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、しゅう酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、塩化カリウムカルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫化カルシウム、フタロシアニンカルシウム、又は酒石酸カルシウムが例示される。特に好ましいのは、酸化カルシウム、或いはリン酸水素カルシウムである。
金属成分であるアルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムから選ばれた1種以上の金属の酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物は、磁性粉末の粒径、表面積等に合わせて最適量を添加するが、該磁性粉末に対して、例えば、0.01〜1mol/kg(粉末重量当たり)とする。添加量が0.01mol/kg未満であると、磁性粉末の表面が十分に被覆されないために耐塩水性が改善されず、1mol/kgを超えると磁化の低下が著しくなり、磁石としての性能が低下する。
金属成分を添加する場合、その添加時期は、いつでも良く、粉砕前に溶媒に溶かしておき、粉砕途中に一度に添加する方法、粉砕中、徐々に添加する方法などが用いられる。あるいは粉砕直後であってもよい。
これによって、溶液中に溶けだした希土類元素、鉄など磁石を構成する元素がリン酸塩を形成し、金属化合物と反応しあって、複合金属リン酸塩が磁性粉末を被覆する。この反応が完結し、充分な膜厚の被膜を形成するには、金属化合物の種類などにもよるが、1〜180分間、好ましくは3〜150分、さらに好ましくは5〜60分の攪拌(粉砕)、保持時間が必要である。
平均粒径が20μmを超える粉末を含む鉄系磁石合金粗粉は、平均粒径8μm以下、好ましくは1〜5μmまで粉砕されることが好ましい。
(2)シリケート被膜の形成
複合金属リン酸塩被膜で被覆された磁性粉末は、それが含まれたスラリーを一旦、減圧濾過した後、シリケート被膜の被覆形成処理を施すことができる。シリケート被膜の被覆形成処理の方法は、特に限定されないが、予め脱水縮合反応により高分子化されたアルコキシシリケート溶液を混合、攪拌してシリケート層を定着させる方法が好ましい。
アルコキシシリケート溶液は、アルコキシ基を有するシリケート化合物を含む処理液であり、具体的には、前記一般式(1)で示されるポリアルコキシポリシロキサンである。アルコキシシリケート溶液は、濃度が磁性粉末に対して、0.01〜5重量%となるように添加・混合することが好ましい。0.01重量%未満では磁性粉末の表面を完全に被覆することができず、5重量%を超えると被膜が厚くなりすぎて脆くなってしまう。
また、アルコキシシリケートを加水分解してシリケート被膜を形成する際に、脱水縮合反応を促進する触媒として、アルミニウムキレート化合物を添加すると、被膜形成に要する時間が大幅に短縮できるだけでなく、樹脂結合型磁石を製造したとき磁気特性を高めるという効果がある。
磁性粉末の表面に、アルコキシシリケートを加水分解してシリケート被膜を形成した後は、乾燥せずに、引き続き、カップリング剤を投入し、攪拌して、カップリング剤処理被膜を形成する方法;シリケート被膜を形成した後、特定の温度で焼き付け乾燥を行ってから、その後、カップリング剤を投入し、攪拌して、カップリング剤処理被膜を形成する方法の二通りの方法がある。
このうち、シリケート被膜を形成した後、焼付け乾燥してからシラン系カップリング剤を投入して、カップリング剤処理被膜を形成する後者の方法のほうが、強固なシリケート被膜にシラン系カップリング剤のシロキサン構造を形成させることができるので、より好ましい。
被膜形成を完全に行うためには、常に磁性粉末のスラリーを攪拌し、また、被膜形成を十分に行えるように、焼付け乾燥温度は100〜150℃にすることが好ましい。処理温度は高いほど緻密で強固な被膜が得られるが、高過ぎると磁性粉の磁気特性、特に保磁力が低下するので注意が必要である。
アルコキシシリケートは、上記複合金属リン酸被膜で表面被覆された磁性粉末の表面上に、速やかに付着し、乾燥後はシリケート被膜として強固に結合する。磁性粉表面にシリケート被膜が直接結合したとしても、その結合酸化安定性は低いが、下地に酸化安定性の高い複合金属リン酸被膜があることによって、シリケート層の結合安定性は飛躍的に向上する。また、従来、複合金属リン酸被膜は完全に緻密とは言えず、そのため腐食性イオンの透過が避けられなかったが、シリケート被膜と組み合わせると複合金属リン酸被膜欠陥部分は完全に封穴され、バリアー効果が相乗的に向上する。そのため、従来は複合金属リン酸被膜が形成されても発生することがあった錆の問題をなくすことができる。
(3)カップリング剤処理被膜の形成
次いで、上記磁性粉末のシリケート被膜に、樹脂バインダーに対して親和性のあるカップリング剤処理被膜を形成することができる。その形成に用いられるカップリング剤としては、前記のとおり、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤のいずれかが挙げられる。このうち特に好ましいのはシラン系カップリング剤である。
カップリング剤の添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、磁石粉末に対して0.01〜5重量%でよく、好ましくは0.1〜3重量%であり、0.5〜2重量%であることがより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、磁石粉末が十分に被覆されず、また5重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることが困難になる。
また、有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、2−メトキシエタノール、エタノール、メタノール又はイソプロピルアルコールから選ばれた1種以上を用いることができる。
カップリング剤により磁石粉末を被覆するには、湿式処理法や乾式処理法などが採用でき、予め単独で被覆処理してもよく、樹脂バインダー等と磁石粉末との混合時に併せて添加、処理しても良い。このときメカノフュージョン法により予め単独で被覆処理を行えば、より安定した被覆磁石粉末を得ることができる。
上記複層被膜を形成後、処理溶液と該磁性粉末は、100〜500℃の真空オーブン中で1〜30時間乾燥させることが好ましい。この時、加熱処理を不活性ガス中または真空中で行うことが好ましい。100℃未満で加熱処理を施すと、該磁性粉末の乾燥が十分進まずに、安定な表面被膜の形成が阻害される。また、500℃を超える温度で加熱処理を施すと、磁性粉末が熱的なダメージを受け、保磁力がかなり低くなるという問題がある。上記したように、この複層処理被膜の合計の膜厚は、平均で1〜100nmの厚さが好ましい。平均厚さが1nm未満であると十分な耐塩水性、機械強度が得られず、一方、100nmを越えると磁気特性が低下し、また樹脂結合型磁石を作製する際には混練性や成形性が低下してしまう。
希土類−遷移金属系磁性粉末の含有量が、組成物全体に対して70〜97重量%であることが好ましい。磁性粉末のさらに好ましい配合量は、80〜95重量%である。この配合量が70重量%未満であると、得られる磁石の磁気特性が低下する。逆に、97重量%を超えると、組成物の流動性が極端に低下して成形が困難になったり、たとえ流動性を保ち成形できても、磁性粒子の配向性が悪くなり、磁性粉末の含有率に見合った磁気特性が得られなくなったりする。また、バインダー成分が少なすぎて、磁石の機械的強度が低下し、部品として使用できなくなる。
3.樹脂バインダー(B)
本発明における樹脂バインダーは、下記の一般式(3)で示される骨格を繰り返し単位とする重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)であるか、又はこのブロック共重合体(B−1)、あるいはそのオリゴマーに下記の一般式(4)で示されるポリエーテルエステルを共重合させた重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)のいずれかを含むものである。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)は、一般式(3)で表される。
一般式(3)
Figure 2006344768
ただし、式中、R、Rは、同一か又は異なる炭素数6〜44の脂肪族ジアミン、及び/又は脂環族ジアミンから選ばれるジアミン残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基、Rは、炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、mは0〜70の整数、nは1〜150の整数、xは1〜100の整数である。
また、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、上記の一般式(3)で示される骨格を繰り返し単位とする重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(式中、R〜R、m、n、xは前記と同じ)またはそのオリゴマーに、下記の一般式(4)で示されるポリエーテルエステルを共重合させたものである。
一般式(4)
Figure 2006344768
式中、Rは、炭素数4〜60のポリオキシアルキレングリコール又はジヒドロキシ炭化水素残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基および/又は炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体の1種以上から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、qは1〜20の整数である。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、又は重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(以下、これらを重合脂肪酸系ポリ(エーテルエステル)アミドブロック共重合体、あるいは単にブロック共重合体ともいう)は、数平均分子量が5000〜50000のものが好ましく、5000〜25000のものがより好ましく、5000〜12000のものが最も好ましい。数平均分子量が5000未満であると、溶融粘度が著しく小さくなり、成形加工中に磁性粉と分離したり、また成形されたロータ磁石の強度が著しく低くなる場合があり、数平均分子量が50000を超えた場合、成形時に十分な溶融流動性が得られなくなる。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)は、重合脂肪酸系ポリアミド骨格のみからなる樹脂であるが、その骨格の中でも、芳香族環を有するか炭化水素鎖が短いジカルボン酸のハードな骨格と、重合脂肪酸のソフトな骨格とがブロック重合している樹脂が好ましい。
重合脂肪酸系ポリ(エーテルエステル)アミドブロック共重合体は、用いられる磁性粉の種類、得られるボンド磁石組成物の溶融流動性、磁性粉の配向性等を考慮し選択すれば良い。樹脂バインダーの末端にアミノ基が存在すると、非酸化状態の鉄と反応するので、磁性粉の鉄の含有量、粒径の違いに依り重合脂肪酸系ポリ(エーテルエステル)アミドブロック共重合体の種類と量を注意深く選択する。
重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、重合脂肪酸系ポリアミドのハードな骨格(a)と、ポリエーテルエステルのソフトな骨格(b)との共重合比(a):(b)が、10:90〜90:10である樹脂を選択することが望ましい。共重合比(a):(b)は、80:20〜50:50のものが特に好ましい。
また、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)同士でグレードの異なるもの、あるいは重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)同士でグレードの異なるものを混合してもよい。さらには重合脂肪酸ポリアミドブロック共重合体(B−1)と、重合脂肪酸ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)とを混合して用いることも可能である。
本発明で使用する重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、特開平5−320335号、特開平5−320336号公報等に詳細に記載されている方法で製造できる。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)は、特定の重合脂肪酸(イ)、ジカルボン酸(ロ)、およびジアミン(ハ)を混合し、重縮合して製造される。なお、ジカルボン酸(ロ)の混合は好ましいが、その使用を省略しても良い。
重合脂肪酸(イ)としては、炭素数が20〜48の不飽和脂肪酸、例えば炭素数が10〜24の二重結合または三重結合を一個以上有する一塩基性脂肪酸を重合して得た重合脂肪酸が用いられる。具体例としては、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の獣植物油脂肪酸、及びこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、エルカ酸等から重合した重合脂肪酸、及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。
市販されている重合脂肪酸は、通常ダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とし、他に原料の脂肪酸や三量体化以上の脂肪酸を含有するが、ダイマー酸(二量体化脂肪酸)含有量が70%以上、好ましくは95%以上であり、かつ水素添加して不飽和度を下げたものが望ましい。特に、プリポール1004、1009、プリポール1010(以上ユニケマ社製)やエンポール1008(コグニス社製)等の市販品が好ましい。これらの混合物、及びエステル誘導体も用いられる。
重合脂肪酸とともに用いうるジカルボン酸(ロ)は、炭素数6〜22の脂肪族、又は芳香族ジカルボン酸、及びこれらのエステル誘導体である。例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらのエステル誘導体等が挙げられ、1種以上であっても良い。
特に、重合性、重合脂肪酸との共重合性、及び得られるポリアミド共重合体の物性などの点から、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びこれらの混合物が好ましい。
ジアミン(ハ)としては、炭素数が2〜20のジアミンが好ましく、具体的には、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4´−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンパラキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族ジアミン、炭素数20〜48の重合脂肪酸から誘導されるダイマージアミン等の脂肪族ジアミン類が挙げられる。
この他に、カプロラクタムを配合しても良い。
(イ)炭素数が20〜48の重合脂肪酸、(ロ)アゼライン酸及び/またはセバシン酸、(ハ)炭素数が2〜20のジアミンは、上記重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)の構造式を満足する割合で混合する。例えば、上記(ロ)に対する(イ)の重量比(イ)/(ロ)が0.3〜5.2で、かつ全カルボキシル基に対し全アミノ基が実質的に当量になるように混合して重縮合させる。(イ)/(ロ)が0.3未満であると、得られるポリアミド共重合体の可撓性が不十分であり、一方、5.2より大きくなると、柔らかすぎると共に耐熱性の低下が著しく目的とするポリアミド共重合体が得られない。
その一例を示すと、窒素で十分に置換した反応容器に、(イ)重合脂肪酸と、(ロ)アゼライン酸及び/またはセバシン酸と、(ハ)ヘキサメチレンジアミンの三者を、上記(ロ)に対する(イ)の重量比(イ)/(ロ)が0.3〜5.2で、かつ全カルボキシル基に対し全アミノ基が実質的に当量になるように仕込み、所定量の分子量調整剤と、少量の重縮合触媒(燐酸等)の存在下で200〜280℃に昇温し、1〜3時間反応させた後、160mmHg程度の減圧下で更に0.5〜2時間反応させることにより、高分子量で可撓性に優れるポリアミド共重合体が得られる。分子量調整剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等のカルボキシル基含有炭化水素を用いることができる。
このようにして製造された重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)としては、富士化成工業株式会社製、「PA−30R」、同「PA−30M」、同「PA−30」、同「PA−40M」、同「PA−50R」、同「PA−50M」、同「PA−60」、同「PA−160M」、同「PA−160」、同「PA−260R」、同「PA−260M」、同「PA−260」、同「PA−270M」、同「PA−280R」、同「PA−280M」、同「PA−280」などが挙げられる。
一方、この重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、特定の重合脂肪酸(イ)、ジカルボン酸(ロ)、およびジアミン(ハ)のうち、(イ)と(ハ)の2成分、または(イ)、(ロ)、(ハ)の3成分を混合し、重縮合して得られた上記重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体のオリゴマーに、ポリオキシアルキレングリコール又はジヒドロキシ炭化水素(ニ)を反応させて製造される。
ポリオキシアルキレングリコール(ニ)としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとのブロックまたはランダム共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
ジヒドロキシ炭化水素としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの他、例えばオレフィンやブタジエンを重合して末端を水酸基化し、かつその二重結合を水素添加して得られるポリオレフィングリコールや水添ポリブタジエングリコール等を挙げることができる。
このようにして製造された重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)としては、富士化成工業株式会社製、「TPAE8」、同「TPAE10・C」、同「TPAE10・HP」、同「TPAE12」などが挙げられる。
粘度−温度依存性をゆるやかにして、射出成形性を向上させるという観点からすれば、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)のポリエーテルエステル骨格(a)と重合脂肪酸系ポリアミド骨格(b)との共重合比(a):(b)は、10:90〜90:10の間で適宜変化させることが好ましい。特に、(a):(b)が、80:20〜50:50のものが好ましい。重合脂肪酸系ポリアミド骨格(a)が10未満の場合、樹脂が柔らかくなり過ぎて、必要な成形体強度が得られなくなる場合があり、90を超えると成形体が脆くなる場合がある。
これらの重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、上記の条件を満足すれば使用することができるが、樹脂単独での機械特性において、引張降伏応力が30MPa以下、好ましくは18MPa以下、さらに好ましくは17MPa以下であり、かつ引張破壊応力が50MPa以下、好ましくは45MPa以下であることが望ましい。ここで、応力測定は、JIS K7162に基づき、常温の金型に射出成形し乾燥した試料について評価したものである。引張降伏応力が30MPaを超えるか、引張破壊応力が50MPaを超えると、低温での可撓性が悪化するので好ましくない。
また、これらのブロック共重合体は、その遊離酸の量を表す酸価が3以下であることが好ましい。ここで酸価は、JIS K5601−2−1に準拠し試料のポリアミド共重合体1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をもって表される。そして、具体的には、トルエン:ノルマルブタノール=2:1とした溶剤に試料を溶解し、フェノールフタレイン指示薬溶液を加えた上で0.1mol/Lの水酸化カリウムメチルアルコール溶液で滴定して求められる。
酸価が3を超えると、ブロック共重合体に含まれる遊離酸の量が多いので、混練トルクが大きくなり組成物の流動性が低下するので好ましくない。
本発明においては、特定のポリアミド樹脂であり、その樹脂バインダーが配合されたボンド磁石用組成物を溶融状態にしてから温度を降下した際、該組成物の粘度の増加率が大きくなり始めるときの温度(固化開始温度:Ts)と、粘度の増加率が小さくなり始めるときの温度(固化終了温度:Tf)との差、すなわちTs−Tf(ΔT)が20℃以上となる樹脂バインダーを採用することが望ましい。
一般に溶融状態にあるボンド磁石用組成物では、粘度η*は温度が低下するとともに大きくなり、特に組成物の固化過程で急激に増大するという傾向を有する。
本発明では、上記のとおり、溶融状態のボンド磁石用組成物の温度を降下させていったとき、粘度η*の増加率が大きくなり始める温度を固化開始温度Ts(℃)、η*の増大がほぼ飽和した温度を固化終了温度Tf(℃)と定義する。従来から行われてきたJIS K 7210やASTM D−1238に基づくMFR(メルトフローレイト)測定方法では十分には評価することができなかったが、本発明によるボンド磁石用組成物の評価は、一般的な射出成形装置を用いてボンド磁石用組成物を射出成形した場合の成形性により近い特性を規定することができる。
ここで固化開始温度Tsは、回転粘度計を用いて溶融粘度の温度依存性を調べることによって決定する。すなわち、本発明では、先ずMR−300ソリキッドメータ((株)レオロジー製)のパラレルプレート間にボンド磁石用組成物を配置し、不活性ガス雰囲気中、250℃に加熱して該組成物を溶融させる。このとき、パラレルプレートの直径は18mmで、ギャップは1.2mmとする。次いで、振動数1Hz、振幅0.3°でパラレルプレートを振動させ、2℃/min.で冷却しながら該組成物の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を測定し、これらから粘度η*(複素粘度)の温度変化を測定すればよい。
ここで、粘度η*は、次式で示される。
η*=(G’2+G” 2)1/2/ω (式中、ωは角振動数である。)
ここで、図1を用いてボンド磁石用組成物の粘度−温度依存性を説明する。本発明で使用できる樹脂バインダーは、この樹脂バインダーを用いて調製したボンド磁石用組成物を溶融状態にしてから温度を降下させると、図1に示す○、または△のプロットを結んだ曲線のように粘度が変化する。
この粘度増加率が小さい状態(それぞれ2本の直線が引ける)から粘度が急変し始める温度が読み取れる。この2点の間隔が広いもの、すなわち固化開始温度Tsと固化終了温度Tfとの差ΔTが20℃以上になるものは、粘度−温度依存性が緩やかなものであり、本発明で好ましく使用できる樹脂バインダーである。このようなバインダーを用いたボンド磁石用組成物は、高い剪断力下で金型内に射出されたときには過冷却状態になり、Tf以下のかなり低い温度になるまで溶融流動性を損なわないために、良好な成形性が得られるものと推測される。
本発明では、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂として前記のような市販品を用いることもできるが、重縮合させる原料投入量を変えて合成することにより、樹脂バインダーのソフトセグメント(低いガラス転移温度でエントロピー弾性を示す柔軟な構造を持つ成分)と、ハードセグメント(水素結合あるいは高ガラス転移温度相などを形成する分子間を拘束する成分)の骨格および比率を調整すれば、TsとTfとが制御されたものを得ることができる。例えばTsはハードセグメントの骨格、Tfはソフトセグメントの骨格によって左右され、TsからTfにかけての粘度上昇挙動は、それらの比率によってコントロールできる。
なお、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)は、ソフトセグメントを有しないが、ジアミンと不飽和脂肪酸の重合体が柔軟性のあるソフトセグメント的な挙動を示す。重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)の場合も、上記と同様に、重縮合させる原料投入量を変えて、樹脂バインダーのソフトセグメント(ポリエーテルエステル骨格)と、ハードセグメント(重合脂肪酸系ポリアミド骨格)の種類および比率を調整すれば、TsとTfとが制御されたものを得ることができる。
本発明で使用できる樹脂バインダーを配合した組成物は、固化開始温度Tsが170℃以上になるものが好ましい。中でも、固化開始温度Tsが190〜215℃になるものが好ましく、特に195〜210℃になるものが好適である。固化開始温度Tsが170℃未満であると、ボンド磁石の荷重たわみ強度の問題があり好ましくない。また、ΔTが20℃未満では、金型温度を低く設定した場合に成形不良が生じるため好ましくない。
このような条件に合致する樹脂バインダーの種類は、分子鎖中にソフトセグメントを有する重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体などの熱可塑性樹脂を含んだものである。
なお、前記の特許文献1に記載された樹脂バインダーを配合した組成物では、成形性に改善傾向が認められるものの、固化開始温度が本発明の組成物よりも低くなるたため、ΔTが狭くなり、成形品表面に荒れが残り、十分な効果は得られない。
また、前記の特許文献2、3には、磁石組成物全体に対して重合脂肪酸系ポリ(エーテルエステル)アミド系樹脂を多く入れすぎると、相対的に磁粉含有率が低下するために磁気特性が低下するので好ましくないと記載されているが、本発明に係る重合脂肪酸ポリ(エーテルエステル)アミドブロック共重合体は、機械特性がよいので、この配合量を樹脂バインダーの50重量%以上とすれば、一体成形品などで、ボンド磁石とヨーク材との熱膨張率の差から生じるロータ磁石の応力割れ等の発生を抑制できる。
上記の重合脂肪酸系ポリ(エーテルエステル)アミドブロック共重合体を主たる成分として、樹脂バインダー全体の50重量%以上を用い、これに通常のナイロン12やナイロン6などの熱可塑性樹脂を従たる成分として混合することができる。この場合、ボンド磁石用組成物のΔT(℃)が20℃以上になるものを選択することが望ましい。
従たる成分として配合しうる樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6−12、4−6ナイロン、およびその変性ナイロン、ナイロン系エラストマー等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ふっ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
これら熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、所望の機械的強度が得られる範囲内で低い方が望ましく、例えば12ナイロンの場合であれば、分子量は15,000以下であることが好ましい。また、原料としての形状は、パウダー、ビーズ、ペレット等、特に限定されないが、磁性粉との均一混合性から考えるとパウダー状が望ましい。
これらの中では、得られる成形体の種々の特性やその製造方法の容易性から、12ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂の使用が好ましい。これら熱可塑性樹脂の2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
ただし、主たる樹脂バインダーとなる重合脂肪酸系ポリ(エーテルエステル)アミドブロック共重合体に対して、これら12ナイロンなどの熱可塑性樹脂を50重量%以上配合することはできない。破断伸び、磁気特性のいずれも低下し、低温環境下での可撓性を改善できないことがある。
本発明の樹脂バインダーは、上記の(B−1)重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、及び/又は(B−2)重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の主たる樹脂に、シラン系化合物が1重量%以上、好ましくは3重量%以上となるように組合わせることができる。
(シラン系化合物)
本発明において、シラン系化合物とは、アルコキシシラン(官能基を有しないもの)、ハロゲン化シラン(クロロシランなど)、シラザンなどのように、希土類と遷移金属の合金や、その表面の無機被覆成分に対して反応性がある基を有するが、樹脂の有機成分とは反応しないか、反応性が低い珪素含有化合物を指すものとする。したがって、磁性粉の無機被覆成分に対して反応性がある基を有し、しかも樹脂の有機成分との反応性も高い珪素含有化合物(すなわち、シランカップリング剤)は除外される
シラン系化合物は、磁性粉の無機成分のみと反応するが、これに対して、シランカップリング剤を用いると、さらに樹脂バインダーの有機基とも反応するため、磁性粉と樹脂成分との密着性が高くなるので、コンパウンドの粘度が高まり、流動性も低下してしまう。該カップリング剤で表面処理することにより、充填材の配合量が多い場合などには、混練中のトルクが上昇し、磁性粉の表面の保護皮膜が剥離する、また、混練温度が上昇し、せん断発熱により、磁性粉が劣化し保磁力が低下する、さらには、射出成形時の流動性が低くなり、高温射出による磁性粉が劣化するなどの問題が生じることがある。したがって、このような場合は、カップリング剤の使用は実質的に制限される。
アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメキシシランなど挙げられる。これらシラン系化合物は、単独もしくは互いに混合して用いることが出来る。
具体的には、信越化学工業(株)製「KBM04」、同「KBM13」、同「KBM22」、同「KBM103」、同「KBM202SS」、同「KBE04」、同「KBE13」、同「KBE22」、同「KBE103」、同「KBE202」、同「KBM3063」、同「KBE3063」、同「KBM3103」、同「KBM3103C」、同「KBM7103」、同「KBM7803」、日本ユニカー(株)製、「A−137」、同「A−162」、同「A−163」、同「AZ−6177」、同「A−1230」、同「Y−11597」などが挙げられる。
ハロゲン化シランには、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、ヘプタデカフロロデシルトリクロロシランなどが挙げられる。具体的には、信越化学工業(株)製「KA13」、同「KA12」、同「KA22」、同「KA31」、同「KA103」、同「KA202」、同「KA7103」、同「KA7803」などが挙げられる。
シラザンには、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、トリメチルトリエチルジシラザン、シクロシラザン、ポリシクロシラザンなどがあり、具体的には信越化学工業(株)製「HMDS3」が例示できる。
4.高分子系滑材(C)
本発明のボンド磁石組成物に用いられる高分子系滑剤は、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種でなければならない。
オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体は、α‐オレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸または酸無水物とを公知の重合触媒を用いて重合して得られる共重合体である。α‐オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。
酸無水物としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、グルタコン酸、ハイミック酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸等の無水物が挙げられる。例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水ハイミック酸、無水テトラヒドロフタル酸及びこれらの混合物などである。
このオレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体(製品名:Aclyn201、ハネウェル社製)などが挙げられる。
また、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体の共重合体アイオノマーとしては、例えば、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸や酸無水物などとの共重合体の分子鎖間(分子鎖中のカルボキシル基間)を、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン等の金属イオンで架橋させたものである。また、その特性を損なわない限り、エチレン、アクリル酸、メタクリル酸以外の単量体が共重合したものであってもよい。具体的な共重合体アイオノマーとしては、ハネウェル社製のエチレン・アクリル酸共重合体アイオノマー(商品名:A−C504A)、デュポン社の熱可塑性樹脂(商品名:サーリン)、三井・デュポンポリケミカル社の熱可塑性樹脂(商品名:ハイミラン)等がある。
そして、ポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体は、ポリオレフィンの分子鎖を幹として、これにアクリル酸、メタクリル酸または酸無水物のいずれかが枝となって結合した構造を有するグラフト重合体である。かかるグラフト重合体を構成するポリオレフィンは、特に限定されず、公知のポリオレフィンでよい。例えばα‐オレフィン(エチレンを含む)の単独重合体;2種以上のα‐オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフト等いずれの共重合体も含み、これらの混合物であってもよい);またはオレフィン系エラストマーが挙げられる。
エチレン単独重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを用いることができる。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体に限らず、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体またはランダム共重合体を含む。共重合体の場合、エチレン含有量が20重量%以下のエチレン−プロピレン共重合体であり、上記したポリエチレンやポリプロピレンは、オレフィン系エラストマーを40重量%程度まで含んでいてもよい。
このようなグラフト重合体の具体例としては、ハネウェル社製の無水マレイン酸グラフトポリエチレン(商品名:A−C575A)などが挙げられる。
これらは、それぞれ非極性成分と極性成分の共重合体、およびそのアイオノマー、あるいは極性成分をグラフトしたポリオレフィンなど非極性成分と極性成分両方をポリマー鎖に含んでいるものである。
また、高分子系滑剤の融点は、樹脂バインダーとして使用される特定のポリアミド樹脂より低いことが望ましく、例えば150℃以下が好ましく、さらには120℃以下であることがより好ましい。高分子系滑剤の好ましい融点は、80〜110℃である。高分子系滑剤の融点が150℃を超えるものでは、樹脂バインダーへの分散性が悪く、磁性粉末の流動性を改善できない場合がある。一方、高分子系滑剤の融点が80℃未満のものでは、組成物の機械的強度が低下する場合があるので好ましくない。
高分子系滑剤の平均分子量は、使用される樹脂バインダーの平均分子量よりも小さいことが望ましく、例えば数平均分子量で10000以下、特に8000以下が好ましく、さらには5000以下であることが好ましい。特に好ましい数平均分子量は、1000〜3000である。高分子系滑剤の数平均分子量が10000を超えるものでは、樹脂バインダーへの分散性が悪く、磁性粉末の流動性を改善できない場合がある。一方、高分子系滑剤の数平均分子量が1000未満のものでは、組成物の機械的強度が低下する場合がある。
高分子系滑剤の含有量は、特に限定するわけではないが、上記樹脂バインダー100重量部に対して、0.1〜5重量部である。0.1重量部未満の場合には、流動性改善効果が不十分であるおそれがある。5重量部を超える場合には、高分子系滑剤の極性成分により吸水性が高くなり、ボンド磁石としての耐候性、特に耐湿性が低下するおそれがある。更に好ましくは、上記高分子系滑剤の含有量は、上記ポリマー100重量部に対して、0.2〜1.0重量部である。これにより、射出成形時の流動性が向上し保磁力が更に向上、また成形体の機械強度を高分子系滑剤の添加によって低下させることがない。
高分子系滑剤の形状は、塊状、粒状、粉体状のいずれも使用できるが、組成物の均一性を良くし、流動性を高めるためには、粉体状が好ましい。
本発明において、高分子系滑剤を樹脂バインダーに配合し、ボンド磁石を作製すると、射出成形時の流動性を維持したまま機械強度の高いボンド磁石成形体が得られる理由は、以下のように考えられる。
すなわち、極性成分を含む高分子系滑剤は、極性の高い磁性粉表面に強く吸着し、ポリマーマトリックスと磁性粉の結合を強化する。一方で、高分子系滑剤中の非極性成分がポリマーマトリックス中でワックス(滑り)効果を発現する。つまり溶融中はマトリックス中で磁性粉は動きやすく、冷却固化後、高分子系滑剤の極性成分の磁性粉への強い吸着により、成形体としてボンド磁石の機械強度が向上する。
このような高分子系滑剤を上記特定のポリアミド樹脂材料に添加する方法は、添加する滑剤の量が少量であっても効果が得られるため、コスト的にも有望な樹脂材料の特性改良方法である。なお、高分子系滑剤の樹脂への相溶性が不十分な場合もあり、樹脂合成時の最終段階で高分子系滑剤を投入し、樹脂バインダーと十分相溶させ、十分な親和性を与えた状態で使用することが好ましい。
ところで、通常用いられる滑剤であるワックス類、脂肪酸及び脂肪酸誘導体、グリコール類並びにポリシロキサン類は、その添加により樹脂バインダー溶融時の流動性は向上するが、成形体の機械強度が低下する。本発明における高分子系滑剤は、これら従来の滑剤の問題点を解決するものである。
(D)その他の添加剤
本発明のボンド磁石用組成物には、磁性粉末、樹脂バインダー及び高分子系滑剤以外にも、必要に応じて以下に示す各種の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
例えば、特定のポリアミド樹脂及び磁性粉末の耐熱性を向上させる目的で、熱老化防止剤、酸化防止剤等の安定剤を添加することもできる。
このような安定剤には、例えば、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等の一次酸化防止剤、イオウ系、リン系の二次酸化防止剤が挙げられ、特にリン系の二次酸化防止剤であるトリフェニルフォスファイト、例えば、トリスノニルフェニルホウファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが好ましい。
安定剤は、混合工程、混練工程、成形工程のいずれの段階でも添加することができ、樹脂バインダー又は高分子系滑剤に予め添加してもよい。
本発明のボンド磁石用組成物は、鉄を含有するために特定のポリアミド樹脂との反応性の高い磁性粉末に適用する場合、例えばSmFeN系磁性粉末を用いる場合に、流動性と成形品強度が両立できるため特に有効である。
5.ボンド磁石用組成物の製造方法
本発明のボンド磁石用組成物は、必要により複合リン酸塩被膜、シリケート被膜、さらにはカップリング剤で被覆した上記磁性粉末を用意し、樹脂バインダーおよび高分子系滑材を混合してから、磁性粉末を分散することにより製造される。
すなわち、本発明のボンド磁石用組成物の製造方法は、特定の重合脂肪酸系ポリアミドを樹脂バインダーとして、これにオレフィンと(メタ)アクリル酸またはその酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸またはその酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなる高分子系滑剤を、溶融混合する第1の工程と、次いで得られた混合物に希土類−遷移金属系磁性粉末を配合し、混練する第2の工程からなることを特徴とする。
(1)樹脂バインダーと高分子系滑材の混合
まず、樹脂バインダーへ高分子系滑材を混合する。樹脂バインダーの配合量は、特に制限されるものではないが、組成物100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜50重量部とする。さらには、5〜30重量部、特に、7〜20重量部がより好ましい。樹脂バインダーが1重量部よりも少ないと著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招いて成形困難になるだけでなく、磁気特性が不十分であり、50重量部よりも多いと、所望の磁気特性が得られないので好ましくない。
高分子系滑剤の配合量は、上記樹脂バインダー100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。0.1重量部未満の場合には、流動性改善効果が不十分となるおそれがある。5重量部を超える場合には、高分子系滑剤の極性成分により吸水性が高くなり、樹脂結合型磁石としてのリサイクル性、耐候性特に耐湿性が低下するおそれがある。更に好ましくは、上記高分子系滑剤の配合量は、上記バインダー100重量部に対して、0.2〜1.0重量部である。これにより、射出成形時の流動性が向上し保磁力が更に向上、また成形体の機械強度が高分子系滑剤添加により低下しなくなる。
混合温度は、高分子系滑剤の融点以上、かつ150℃以下であればよい。混合温度が高分子系滑剤の融点未満では、樹脂バインダーへの分散が不十分であり、また150℃を超えると高分子系滑剤が分解して特性が発揮されないことがあり好ましくない。例えば80〜150℃、特に100〜120℃の範囲が好ましい。
本発明のボンド磁石用組成物を調製する際に用いられる混合機としては、特に制限がなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、ナウターミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウェットミル、ジェットミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いることができる。各成分を粉砕しながら混合する方法も有効である。
高分子系滑剤を重合脂肪酸系ポリアミド樹脂と併用することにより、極性の高い磁性粉表面へ優先吸着する官能基を有するため高分子系滑剤が磁性粉周囲を取り囲み、ポリアミド樹脂より低分子であるため溶融し易く、かつ、流動し易いため、磁性粉の混練時の分散と磁場配向を容易にする。一方で、該高分子系滑剤は機械強度を低下させない程度に十分な分子量を有しているため、射出成形後の成形体の機械強度を低下させない。これらのことから、磁気特性と機械強度に優れたボンド磁石を得ることができるものと考えられる。
(2)混練工程
高分子系滑剤を重合脂肪酸系ポリアミド樹脂と混合した後、得られた混合物に磁性粉末を混合する。本発明において、磁性粉末の配合量は、組成物全体に対して70〜97重量%であり、好ましくは80〜95重量%である。この配合量が70重量%未満であると、得られる磁石の磁気特性が低下する。逆に、97重量%を超えると、組成物の流動性が極端に低下して成形が困難になったり、たとえ流動性を保ち成形できても、磁性粒子の配向性が悪くなり、磁性粉末の含有率に見合った磁気特性が得られなくなったりする。また、バインダー成分が少なすぎて、磁石の機械的強度が低下し、部品として使用できなくなる。
また、上述のように磁性粉を高充填した場合に顕著な効果を奏するものであるが、本発明に用いるボンド磁石用組成物によれば、磁性粉の配合量が80重量部より少ない場合でも、磁性粉の均一分散性などの点で有利である。
混練工程では、こうして得られた混合物を、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いて加熱溶融しながら混練する。混練温度は、ポリアミド樹脂の融点以上であればよく、好ましくは180〜300℃の範囲であり、磁性粉末の高温酸化を防ぐためには、180〜250℃の範囲が特に好ましい。
本発明のボンド磁石用組成物は、上記で得られた混練物を、ストランド状又はシート状に押し出した後、カッティングしたもの、また、前記混練物をホットカット又はコールドカットしてブロック状とした後、冷却固化し、さらに粉砕してペレット状等としたものとして得ることができる。このようにして得られるボンド磁石用組成物は、低温流動性及び射出成形性に優れるものとなる。
6.ロータ磁石
上記のボンド磁石用組成物は、190〜280℃の温度で加熱された後、射出成形、圧縮成形、押出成形、圧延成形、或いはトランスファー成形等で成形することによって、所望の形状を有する本発明のロータ磁石に成形される。
本発明のロータ磁石の成形法としては、溶融流動性が優れ、高磁気特性で高機械強度が要求されている射出成形が最も効果的である。これにより、磁気特性、形状自由度のみならず、耐錆特性、機械的強度、柔軟性、耐熱性などにも優れたロータ磁石を得ることができる。
射出成形では、最高履歴温度が265℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下となる条件でボンド磁石用組成物を成形する。最高履歴温度が265℃を超えると、磁気特性が低下するという問題が生じるので好ましくない。
本発明のロータ磁石は、表面磁石型(SPM)、内部磁石型(IPM)モータ用のいずれにも適用でき、それらを一体成形によって製造する場合において、製品の強度や精度が向上するだけでなく量産性が高くなり、ボンド磁石の特徴が有効に具現化される。
すなわち、SPMモータ用ロータ磁石においては、金属材料および/または無機材料部品と一体成形することにより、成形後の冷却過程でボンド磁石と金属材料および/または無機材料部品との線膨張係数の差に起因するボンド磁石の割れの問題が著しく改善される。また、IPMモータ用ロータ磁石においては、ロータ内キャビティへの組成物の充填が容易になり配向不良による磁気特性低下が著しく改善される。ヒートサイクル試験による一体成形品の割れの問題が著しく改善される。金属材料、無機材料部品とは、ヨーク材(バックヨーク)、ハブ、シャフトなどであり、その大きさ、形状などは特に限定されない。
なお一体成形しない場合においても、ロータ磁石にシャフトを圧入する際の磁石の割れが、本発明のロータ磁石で著しく低減できる。
また、成形体内部にポアなどの成形欠陥が存在すると、その欠陥部に応力が集中し割れが起こりやすいので、射出成形用金型のゲートとエアベントの数やそれらの配置を調整し、欠陥をなるべく少なくすることも重要である。さらには、型締め後にエアベントなどを経由して金型キャビティ部やスプルー・ランナー部を減圧し、その後射出成形することで、いっそう成形欠陥を低減することができ、ヒートサイクル試験を100回経ても割れを生じないようにすることができる。ここでキャビティ部は、ゲージ圧で−0.02MPa以下、好ましくは−0.05MPa以下、さらに好ましくは−0.07MPa以下に減圧するとよい。
ボンド磁石用組成物が異方性の磁性粉末を含有する場合には、成形機の金型に磁気回路を組み込み、組成物の成形空間(金型キャビティ)に配向磁界がかかるようにすると、異方性のロータ磁石が製造できる。このとき配向磁界は、400kA/m以上、好ましくは800kA/m以上とすることによって高い磁気特性のロータ磁石が得られる。ボンド磁石用組成物が等方性の磁性粉末を含有する場合には、組成物の成形空間(金型キャビティ)に配向磁界をかけないで行う。
7.ブラシレスモータ
一般的にDCモータは、直流電源を用いるために整流子やブラシを必要とするが、整流子やブラシを持たないブラシレスモータもある。このブラシレスモータは、整流子やブラシを持たない代わりに、各電機子コイルに流す駆動電流のタイミングを取るべく、ホールセンサ等の磁気検出手段を要所に配置している。
上記のようにして得られるロータ磁石を小型ブラシレスモータとして用いれば、カメラ、ビデオ、OA機器、自動車、その他精密機器の性能を格段に向上させることができる。
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
使用した各種磁性粉、カップリング剤、樹脂バインダーの成分、及びそれらを用いたロータ磁石の性能の評価方法は、下記の通りである。
(1)成分
磁性粉
・磁粉1、Sm−Fe−N系(住友金属鉱山(株)製)「商品名:SFN微粉B」、平均粒径2.4μm。
・磁粉2−1、等方性Nd−Fe−B系(マグネクエンチインターナショナル製)「商品名:MQP−B」、平均粒径80μm。
・磁粉2−2、異方性Nd−Fe−B系(住友特殊金属(株)製)、「商品名:HDDR−B」、平均粒径:69μm。
・磁粉2−3、異方性Nd−Fe−B系(愛知製鋼(株)製)、「商品名:MFP−12」、平均粒径:109μm。
・磁粉3、Sm−Co系磁性粉末(信越化学工業(株)製)、平均粒径:83μm。
・磁粉4、Srフェライト系(商品名:HF−330、同和鉱業(株)製)
カップリング剤
・シランカップリング剤(アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名:SH6020、東レダウコーニング社製)
樹脂バインダー
・共重合ポリアミドA
オレイン酸、リノール酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンとを原料として、ステアリン酸と共に攪拌しながら窒素雰囲気下250℃で反応させることにより、融点192℃、結晶化温度150℃、MI値が690g/10min.、数平均分子量約11000である共重合ポリアミド(重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体)が得られた。ここでMI値は、JIS K 7210に従って測定した(230℃、21.2Nの荷重で測定。以下、同じ)。また酸価は2.5であった。
・共重合ポリアミドB
オレイン酸、リノール酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンとを原料として、ステアリン酸と共に攪拌しながら窒素雰囲気下250℃で反応させることにより、融点175℃、結晶化温度131℃、MI値710g/10min.、数平均分子量約10000である共重合ポリアミド(重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体)が得られた。また酸価は1.2であった。
・共重合ポリアミドC
オレイン酸、リノール酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンとを原料として、ステアリン酸と共に攪拌しながら窒素雰囲気下、250℃で反応させることにより、融点175℃、結晶化温度131℃、MI値460g/10min.、数平均分子量約10000である共重合ポリアミド(重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体)が得られた。また酸価は1.9であった。
・共重合ポリアミドD、重合脂肪酸系ポリアミド(商品名:PA−30L、富士化成工業(株)製)、数平均分子量約14000であり、酸価は3.2であった。
・ポリアミドエラストマーA
オレイン酸、リノール酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンとを原料として窒素雰囲気下190℃で反応させたポリアミドオリゴマーに、ポリオキシテトラメチレングリコール、アゼライン酸を添加し、均一になるよう攪拌しながら270℃で重合させた。融点171℃、結晶化温度142℃、MI値400g/10min.、数平均分子量約10000である重量比でハードセグメント40%、ソフトセグメント60%のポリアミドエラストマーA(重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)が得られた。また酸価は1.8であった。
・ポリアミドエラストマーB
ポリアミドオリゴマーに対するポリオキシテトラメチレングリコールとアゼライン酸の配合比を変えた以外はポリアミドエラストマーAと同様にして、融点153℃、結晶化温度122℃、MI値1600g/10min.、数平均分子量約6000である重量比でハードセグメント20%、ソフトセグメント80%のポリアミドエラストマーB(重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)が得られた。また酸価は2.3であった。
・ポリアミドエラストマーC
ポリアミドオリゴマーに対するポリオキシテトラメチレングリコールとアゼライン酸の配合比を変えた以外はポリアミドエラストマーAと同様にして、融点201℃、結晶化温度181℃、MI値920g/10min.、数平均分子量約10000である重量比でハードセグメント60%、ソフトセグメント40%のポリアミドエラストマーC(重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)が得られた。また酸価は2.0であった。
・ポリアミドエラストマーD、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(商品名:TPAE8、富士化成工業(株)製)、数平均分子量約12000。また酸価は2.8であった。
・ 共重合ナイロン(商品名:グリロンC、エムス・ジャパン(株)製)、数平均分子量約14000。
・ポリアミド12A(商品名:3014U 宇部興産(株)製)、引張降伏応力43MPa、引張破壊応力55MPa、数平均分子量約13000。
・ポリアミド12B(商品名:A1709P、ダイセルヒュルス(株)製)、数平均分子量約13000。
高分子系滑剤
・高分子系滑剤A エチレン・アクリル酸共重合体(商品名:Aclyn201、ハネウェル社製、融点102°C)
・高分子系滑剤B エチレン・アクリル酸共重合体アイオノマー(商品名:A−C504A、ハネウェル社製、融点105°C)
・高分子系滑剤C 無水マレイン酸グラフトポリエチレン(商品名:A−C575A、ハネウェル社製、融点105°C)
(2)試験・評価方法
・固化温度
MR−300ソリキッドメータ((株)レオロジー製)のパラレルプレート間に組成物を配置し、不活性ガス雰囲気中、250℃に加熱して組成物を溶融させた。パラレルプレートの直径は18mmで、ギャップは1.2mmとした。振動数1Hz、振幅0.3°でパラレルプレートを振動させ、2℃/min.で冷却しながら、組成物の粘度η*の温度変化を測定した。粘度η*の増加率が大きくなり始める温度を固化開始温度Ts(℃)、η*の増大がほぼ飽和した温度を固化終了温度Tf(℃)とした。
・組成物流動性評価
JIS K7210に従って、φ2.1mm、長さ8mmのオリフィスを用いてシリンダー温度250℃、荷重21.6kgfで測定した。
・磁石特性
210〜240℃で組成物をφ20×13mmの円柱状に射出成形した。金型キャビティには13mm方向に1600kA/mの配向磁界をかけた。なお、磁粉2−1のNd−Fe−B系磁性粉末については等方性磁性粉であるため、配向磁界をかけずに成形した。得られたボンド磁石を3200kA/mでパルス着磁し、B−Hループトレーサで最大エネルギー積(BH)max.を測定した。
・ロータ磁石の射出成形
型締力70tの油圧射出成形機で、次の3種類の形状のロータ磁石を成形した。
ロータ磁石A:外径50mm、内径43mm、高さ40mm、外周8極、内径側に積層珪素鋼板を組み込んだ一体成形磁石
ロータ磁石B:外径23mm、内径21mm、高さ5mm、内周12極
ロータ磁石C:外径2mm、内径1mm、高さ3mm、外周4極、
金型にはNd−Fe−B系焼結磁石を組み込み、キャビティに配向用磁界を発生させた。また金型温度は冷却水を循環させて50℃とした。圧力50%、速度20%に設定し、成形温度を220〜280℃の範囲で調整し、得られたロータ磁石をパルス着磁して、表面磁束密度ピーク値を測定した。表面磁束密度ピーク値が0.09(T)以上であれば良好と言える。
なお、ロータ磁石Aについては、成形品10個をヒートサイクル試験にかけて、割れが発生した個数を確認した。ヒートサイクル試験条件は、80℃1時間保持と−30℃1時間保持で切り替わり時間1時間、サイクル数50回とした。
また、ロータ磁石Cについては、成形品10個に直径1mmのステンレスシャフトを圧入し、割れが発生した個数を確認した。
[実施例1〜24]
まず、アミノプロピルトリメトキシシランをエタノール水溶液中に溶解させて、磁性粉とミキサー混合した。攪拌を続けながら100℃で加熱乾燥し、表面処理した磁性粉を得た。次に、熱可塑性樹脂バインダー(主たる樹脂:共重合ポリアミド又はポリアミドエラストマー)と高分子系滑剤とをV型ブレンダーに投入し、110°Cで15分間混合した。熱可塑性樹脂バインダー中に高分子系滑剤が均一に分散した後、この樹脂バインダーに上記磁性粉を配合しラボプラストミルを用いて200℃で混練し、得られた混練物をプラスチック粉砕器で粉砕した。粉砕した混練物を射出成形機に投入し、射出成形磁石を製造した。
用いた磁性粉、熱可塑性樹脂バインダー、高分子系滑剤とそれらの配合、得られた混練物の固化開始温度Ts、固化終了温度Tf、それらの差ΔT、φ20×13mm射出成形磁石の(BH)max、ロータ磁石の種類、成形温度とパルス着磁後の表面磁束密度ピーク値を表1〜3、表6に示す。ロータ磁石AとCについては、それぞれヒートサイクル試験と圧入試験の結果(割れが発生した個数)も同表に示している。
[比較例1〜17]
上記実施例1〜24と同様にして、表面処理した磁性粉を得た。次に、得られた磁性粉と熱可塑性樹脂バインダー(主たる樹脂:ポリアミド12A又はポリアミド12B)とを高分子系滑剤を配合せずに、ラボプラストミルを用いて200℃で混練し、得られた混練物をプラスチック粉砕器で粉砕した。粉砕した混練物を射出成形機に投入し、射出成形磁石を製造した。
用いた磁性粉、熱可塑性樹脂バインダーとそれらの配合(組成)、得られた混練物の固化開始温度Ts、固化終了温度Tf、それらの差ΔT、φ20×13mm射出成形磁石の(BH)max、ロータ磁石の種類、成形温度とパルス着磁後の表面磁束密度ピーク値を表4〜6に示す。ロータ磁石AとCについては、それぞれヒートサイクル試験と圧入試験の結果(割れが発生した個数)も同表に示している。
Figure 2006344768
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[従来例1]
実施例1のSm−Fe−N系磁性粉末91.2重量%と、ナイロン12B(商品名:A1709P、ダイセルヒュルス(株)製)4.0重量%と、共重合ナイロン(商品名:グリロンC、エムス・ジャパン(株)製)4.0重量%と、酸化防止剤のN,N−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン0.4重量%と、滑剤のm−キシリレンビスステアリン酸アミド0.4重量%とを混合し、ラボプラストミルを用いて230℃で混練した。
得られた混練物の固化開始温度Ts、固化終了温度Tf、それらの差ΔT、φ20×13mm射出成形磁石の(BH)max、ロータ磁石の種類、成形温度、パルス着磁後の表面磁束密度ピーク値とヒートサイクル試験の結果(割れが発生した個数)を表7に示す。
[従来例2]
実施例1のSm−Fe−N系磁性粉末91.2重量%と、ナイロン12A(商品名:3014U、宇部興産(株)製)5.1重量%と、重合脂肪酸系ポリアミドエラストマー(商品名:TPAE8、富士化成工業(株)製)1.3重量%と、酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD1024、チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)2.4重量%とを混合し、高分子系滑剤を配合せずに、ラボプラストミルを用いて230℃で混練した。
得られた混練物の固化開始温度Ts、固化終了温度Tf、それらの差ΔT、φ20×13mm射出成形磁石の(BH)max、ロータ磁石の種類、成形温度、パルス着磁後の表面磁束密度ピーク値とヒートサイクル試験の結果(割れが発生した個数)を表7に示す。
[従来例3]
実施例1のSm−Fe−N系磁性粉末91.2重量%と、ナイロン12A(商品名:3014U、宇部興産(株)製)5.1重量%と、重合脂肪酸系ポリアミド(商品名:PA−30L、富士化成工業(株)製)1.3重量%と、酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD1024、チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)2.4重量%とを混合し、高分子系滑剤を配合せずに、ラボプラストミルを用いて230℃で混練した。
得られた混練物の固化開始温度Ts、固化終了温度Tf、それらの差ΔT、φ20×13mm射出成形磁石の(BH)max、ロータ磁石の種類、成形温度、パルス着磁後の表面磁束密度ピーク値とヒートサイクル試験の結果(割れが発生した個数)を表7に示す。
Figure 2006344768
表1〜7より分かるように、実施例では樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリアミドを50重量%以上含み、高分子系滑剤を含有している。また、このボンド磁石用樹脂組成物のΔTは20℃以上であり、この組成物を用いると、成形温度220〜280℃の温度範囲で良好な表面磁束密度ピーク値を有し、割れのないロータ磁石が得られている。一方、比較例では高分子系滑剤を含まず、かつ樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリアミドを含まないか、含んでも50重量%未満である。しかも、そのボンド磁石用樹脂組成物のΔTは20℃未満であり、この組成物を用いると高い成形温度が必要で、得られたロータ磁石の表面磁束密度ピーク値が低く、ヒートサイクル試験やシャフト圧入試験で割れが生じた。
また、公知技術を参考にして製造した従来例のロータ磁石でも、高分子系滑剤を含まず、樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリアミドを含まないか、その含有量が50重量%未満であるボンド磁石用樹脂組成物を用いている。そして、組成物のΔTが20℃未満であるため、表面磁束密度ピーク値が低く、かつヒートサイクル試験で割れが生じた。
なお、実施例3など本実施例の中には、従来例や比較例に比べて固化終了温度Tfの高いものがある。Tfが高いものは、低いものに比べて射出後の早い段階で組成物の溶融粘度が上昇し、成形性が悪くなるように思えるが、必ずしもそのようになっておらず、良好な特性のロータ磁石が得られる。詳細な理由は不明であるが、本発明のΔTが20℃以上である性質を有する組成物を用いたロータ磁石では、射出成形の極めて急速な冷却速度で樹脂バインダーが過冷却状態となり、Tf以下の温度でも溶融状態を保つためではないかと推測される。
本発明のロータ磁石は、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器に至る幅広い分野で活用でき、その工業的価値は極めて大きい。
ボンド磁石用組成物の粘度η*の温度依存性を表すグラフである。

Claims (13)

  1. 希土類−遷移金属系磁性粉末(A)、樹脂バインダー(B)及び高分子系滑剤(C)を含有するボンド磁石用組成物であって、
    樹脂バインダー(B)は、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)から選ばれた1種以上を含有し、一方、高分子系滑剤(C)は、オレフィンと(メタ)アクリル酸または酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸または酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とするボンド磁石用組成物。
  2. 磁性粉末(A)は、希土類(Nd又はSm)と遷移金属(Fe及び/又はCo)を含有することを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  3. 重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、数平均分子量が5,000〜50,000であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  4. 樹脂バインダー(B)の配合量は、組成物100重量部に対して1〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  5. 高分子系滑剤(C)の融点は、150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  6. 高分子系滑剤(C)の配合量は、ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して、0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  7. ボンド磁石用組成物を溶融状態にした後、その温度を降下したとき、該組成物の粘度の増加率が大きくなり始めるときの温度(固化開始温度:Ts)と、粘度の増加率が小さくなり始めるときの温度(固化終了温度:Tf)との差ΔTが20℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  8. 固化開始温度(Ts)が170℃以上であることを特徴とする請求項7に記載のボンド磁石用組成物。
  9. 樹脂バインダー(B)と、オレフィンと(メタ)アクリル酸またはその酸無水物との共重合体、その共重合体アイオノマー、及びポリオレフィンへの(メタ)アクリル酸またはその酸無水物のグラフト重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなる高分子系滑剤(C)とを、溶融混合する第1の工程と、次いで得られた混合物に希土類−遷移金属系磁性粉末(A)を配合し、混練する第2の工程からなることを特徴とするボンド磁石用組成物の製造方法。
  10. 第1の工程は、高分子系滑剤(C)の融点以上であって150℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項9に記載のボンド磁石用組成物の製造方法。
  11. 第2の工程は、180〜300℃の温度で行うことを特徴とする請求項9に記載のボンド磁石用組成物の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載のボンド磁石用組成物を、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法又は射出プレス成形法から選ばれるいずれかの成形法を用いて成形してなるロータ磁石。
  13. 請求項12に記載のロータ磁石を用いてなるブラシレスモータ。
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