JP2011049404A - ボンド磁石の製造方法及びボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】強磁性の磁性粉末に熱可塑性樹脂バインダを加えて混練し、得られた磁石材を射出成形により成形してボンド磁石を製造するに際し、PAI樹脂を溶媒に溶解して溶液状態とし、溶液状態のPAI樹脂で磁性粉末の粒子表面を被覆した後、溶媒を除去するとともに加熱によりPAI樹脂を重合反応させて被膜硬さを硬くし、樹脂バインダとの混練を行う。
【選択図】図1
Description
特に磁性粉末として希土類鉄系合金を用いた希土類ボンド磁石は、その高い磁気特性によりHDDスピンドルモータ,CD−ROM,DVD等のディスクの再生装置や、自動車電装モータ或いは携帯電話振動モータ等の磁石として広く用いられている。
特に磁性粉末として液体急冷法と粉砕とによって得られる鱗片状の希土類系磁性粉を用いたボンド磁石にあっては、磁性粉末を高充填することがより困難である。
図9に示しているように、磁性粉末10に対して樹脂バインダ(熱可塑性樹脂バインダ)12を添加してそれらを混練するだけの従来の製造方法の場合、樹脂バインダ12に対する磁性粉末10の親和性が低いために、混練後において磁性粉末10と樹脂バインダ12とが十分に馴染んでおらず、具体的には磁性粉末10の表面が熱可塑性樹脂バインダ12にて十分に濡れておらず(磁性粉末10の全表面に樹脂バインダ12が接触付着しておらず)、それら磁性粉末10と樹脂バインダ12との間に空隙Kが生じたり、或いは磁性粉末10と10とが直接接触してしまう。
また空隙Kの部分では樹脂バインダ12が成形品の強度に対して寄与しておらず、却って強度的な弱点部分となってしまう。
そしてこのことが成形体の強度低下をもたらす。
またこのようにして得られた成形体は高い破壊強度を有する。
特許文献1には「希土類−鉄−窒素系磁粉の表面処理方法及びそれを用いたプラスチック磁石」についての発明が示され、そこにおいて磁粉と樹脂との混練時,成形時に高温にさらされるために磁粉が製造工程中に酸化されてしまい、そのことによって磁気特性が劣化してしまう点を解決課題として、「希土類−鉄−窒素系磁粉に、リン酸系化合物のリン酸に由来するPが該磁粉100重量部に対し0.05〜3重量部の範囲となるように混合し乾燥し粒子表面をリン酸系化合物で被覆した後に、大気中又は酸素を含む雰囲気下において130〜300℃の温度範囲で加熱する」処理方法が開示されている。
この特許文献5では、有機化合物として実質的に開示されているのはTi系カップリング剤,Si系反応性モノマー,飽和脂肪酸,不飽和脂肪酸等である。
更にこれら特許文献1〜5に記載のものは何れも本発明の技術的思想を開示していない。
そしてそのことによって、粒子表面に全面に亘って樹脂バインダに対する濡れ性を付与することができ、樹脂バインダとの馴染みを良くし、高い親和性を付与する。
その時点でポリアミドイミド樹脂の被膜は本来の高耐熱性、力学的高強度を発現し、樹脂バインダと混練される。
複合材の流動性は基本的には樹脂バインダの溶融による良好な流動性によって定まり、このときに樹脂バインダの量が相対的に少なくなると、そのことによって流動性が低下する。
特にかかる磁性粉末として希土類鉄系合金の磁性粉、代表的にはNd-Fe-B系やSm-Fe-N系磁性粉を用いることができる。
従ってこのような希土類鉄系合金の磁性粉末を用いたボンド磁石に適用して本発明の効果が高い。
従ってこの場合には、従来必要とされていたボンド磁石全体に対する後工程での静電塗装等の防錆のための保護膜形成工程を省略し又は簡略化することが可能となる。
更に他の溶媒としてDMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)その他のものを用いることができる。
そしてボンド磁石をこのような構成とすることで、磁性粉の高充填化を可能としてボンド磁石に高い磁気特性を付与することができる。
図1に、本実施形態のボンド磁石の製造方法の各工程を、従来の製造方法の各工程と比較して示している。
ここでは先ず強磁性の磁性粉末に対し、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂。以下ではPAI樹脂とする)を溶媒への溶解状態即ち溶液状態で作用させて、磁性粉末の粒子表面を被覆処理する。
尚この加熱は単独の工程として行っても良いし、或いは磁性粉末とPAI樹脂及びNMPを混合して、磁性粉末の粒子をPAI樹脂で被覆処理する際に行っても良い。
或いはまた磁性粉末とPAI樹脂溶液との混合の際の加熱と、後の混練機における混練初期の加熱の両方とでPAI樹脂を重合反応させ高分子量化するようになすこともできる。
その際の加熱の温度は100℃以上とすることが望ましい。より望ましくは150℃以上、更に望ましくは170℃以上である。
一方その上限温度は260℃以下とすること、特に240℃以下とすることが望ましい。
ここでは、かかる熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12樹脂を用いる。但しPPS樹脂その他の樹脂を用いても良い。
尚、このとき必要に応じて酸化防止剤その他の添加剤を加えて混合を行っても良い。
しかる後そのペレットを用いて射出成形を行いボンド磁石成形体を得、その後これを着磁してボンド磁石とする。
この従来例においては、先ず磁性粉末に対してシラン系カップリング剤をエタノール,純水とともに加えてそれらを混合し、磁性粉末をカップリング処理する。そしてその後に加熱を行う。但しこの場合においても混合と加熱を併せて行うようにしても良い。
その後、カップリング処理した磁性粉末を冷却した後に、樹脂バインダとしてPA12樹脂を必要に応じて酸化防止剤等他の添加剤とともに加えて混合する。
以後の工程は先に説明した本実施形態と同様である。
A.実施形態
1.<磁性粉の粒径>
ここでは磁性粉としてSm-Fe-N磁性粉(SmとFeとNの組成の比率は原子比率でSm:1,Fe:7,N:1)を用いた。
ここでは磁性粉としてジェットミル粉砕した、平均粒径が12〜16μmの範囲内にある細粒(30μmアンダー)のものと、篩分けして得た150μmアンダーの粗粒のものを組み合せたものを用いた。尚それらの配合の比率は質量%で50%/50%とした。
ポリアミドイミド樹脂は、射出成形用等として成形可能な溶融粘度となるように分子量を低く設計したものが市販されている。
このものは、成形後に加熱処理(ポストキュア)することによって必要な分子量まで引き上げた上で使用することを予定して重合度が低く抑えられている。
従来このような低重合度のポリアミドイミド樹脂が様々市販されている。以下にその例を示す。尚(a)は品番を、(b)は性状を、(c)は固形分濃度(質量%)を示す。
東洋紡績(株):商品名(バイロマックス)
((a)HR-11NN,(b)液状,(c)15%),((a)HR-12N2,(b)液状,(c)30%),((a)HR-13NX,(b)液状,(c)30%),((a)HR-14ET,(b)液状,(c)25%),((a)HR-16ET,(b)液状,(c)25%),((a)HR-16NN,(b)液状,(c)14%),((a)HR-83DD,(b)液状,(c)25%)
東レ(株):商品名(TI-Polymer)
((a)TI-5013P,(b)粉末,(c)100%),((a)TI-5013EP,(b)粉末,(c)100%)
ソルヘ゛イアト゛ハ゛ンストホ゜リマース゛(株):商品名(トーロン)
((a)4000T,(b)粉末,(c)99%),((a)4000TF,(b)粉末,(c)99%),((a)AI-10,(b)粉末,(c)90%),((a)AI-30,(b)湿粉末,(c)35%),((a)AI-50,(b)湿粉末,(c)35%)
日立化成工業(株)
((a)HPC-1000EDP,(b)液状,(c)7%),((a)HPC-1000,(b)液状,(c)28%),((a)HPC-5000,(b)液状,(c)30%),((a)HPC-5010S,(b)液状,(c)30%),((a)HPC-5020,(b)液状,(c)30%),((a)HPC-5030,(b)液状,(c)32%),((a)HPC-6000,(b)液状,(c)26%),((a)HPC-6100,(b)液状,(c)30%),((a)HPC-7200,(b)液状,(c)32%),((a)HPC-9000,(b)液状,(c)21%),((a)HPC-9100,(b)液状,(c)29%)
この実施形態ではソルベイアドバンストポリマーズ(株)社のトーロンAI−10を用いた。
この実施形態では、後に説明するPAI樹脂量とMFRとの関係を求める試験を除いて、磁性粉末に対しPAI樹脂を磁性粉末を基準として0.5質量%(2.7体積%),溶媒のNMPを1.0質量%の比率で添加し、それらを混合した。
溶媒のNMPの沸点は202℃である。このNMPは90℃辺りから揮発し始める。
5.<混合装置>
磁性粉末とPAI樹脂とを混合する混合装置として以下のものを用いた。
混合装置は日本コークス工業(株)社製のヘンシェルミキサFM10C/I(機種名)を用いた。
この混合装置はスチーム加熱式のジャケットと、通水冷却式のジャケットとを有しており、これらによって混合に際し外部加熱と外部冷却とを行った。
尚ここでは処理量を7kgとした。
ヘンシェルミキサによる混合は以下の表1に示す条件で行った。
尚この混合装置による混合処理の際の材料温度の変化とモータ負荷の変化とを図2に示した。
このとき材料温度はモータの回転数の増大によって、40℃から90℃まで上昇した。
続いて第3ステップではモータ回転数を1400(rpm)に保ったまま外部加熱を行った。
この第3ステップでは材料温度が90℃から173℃まで上昇した。
このとき材料温度は173℃から155℃まで低下した。
次に第5ステップでは、モータ回転数を700(rpm)に保ったまま外部冷却を行った。これにより材料温度は155℃から60℃まで低下した。
この第2ステップでは外部加熱を行っていないが、モータ回転数の増大による混合の発熱によって材料温度は90℃まで上昇している。
次の第3ステップにおいて、モータ負荷は時間の経過とともに低下しているが、これは外部加熱によって溶媒のNMPが揮発して失われ、材料の混合の抵抗が小さくなったことによる。
この溶媒のNMPはおよそ90℃辺りから揮発し始め、混合中の材料から失われて行く。
この第3ステップでは、モータ負荷が40分辺り(材料温度150℃辺り)で極小となり、その後モータ負荷が増大傾向に転じる。これはPAI樹脂の重合反応によってモータへの負荷が増大したものである。
図2ではPAI樹脂の重合による抵抗の増大に対して、溶媒のNMPの揮発による抵抗の減少の方が打ち勝つことによって、モータ負荷が低下傾向を示していると考えられる。
そしてその後の第5ステップでの冷却により、材料温度は急激に低下している。
即ちここでは、混合過程で磁性粉末の粒子表面を被覆したPAI樹脂被膜の短時間の加熱が一部行われている。
7.<カップリング剤等>
以下に示すシランカップリング剤をエタノール及び純水とともに磁性粉末に添加した。
尚カップリング剤,エタノール,純水はそれぞれ磁性粉末を基準としてそれぞれ下記に示す量で添加した。
・カップリング剤:東レ・ダウコーニング
Z−6011/0.5質量%
・エタノール:ソルミックス AP−7/2.5質量%
・純水:0.15質量%
磁性粉末とカップリング剤との混合は、上記と同様のヘンシェルミキサを用い、以下の表2に示す条件で混合を行った。
尚ここでは材料温度の最高値が120℃となっているが、これは溶媒としてのエタノールが120℃でほとんど飛んで除去されるため、最高温度を120℃に留めている。
9.<混練条件>
本実施形態に従ってPAI樹脂にて処理した磁性粉末及び従来例に従ってカップリング処理した磁性粉末のそれぞれについて、熱可塑性樹脂バインダ(ここではPA12樹脂を使用)との混練を以下の条件に従って行った。
尚混練機としては2軸混練機を使用した。混練機と混練条件は以下の通りである。
・2軸混練条件
・混練機:(株)池貝製 PCM-37-31-1V
・混練温度:210℃
・回転数:90rpm
・原料供給量:7.5kg/hr
またPA12樹脂の添加量は、後に示す磁性粉末とMFR,磁気特性との関係を求める試験を除いて磁性粉末の充填量が70体積%となるようにバランス配合した。
磁性粉末と母材樹脂となるPA12樹脂とを混練した複合材料(磁石材)の流動性をMFR(メルトフローレート)測定機にて測定し、流動性を調べた。
測定は以下の条件で行った。
・荷重:100kgf/cm2
・ダイ穴形状:直径φ1mm×長さL2mm
・試験温度:260℃
・予熱時間:360sec
混練後の複合材料(磁石材)を用いて射出成形試験を以下の条件で行った。
・成形体寸法:直径φ10mm×長さL7mm
・シリンダ温度:260℃
・金型温度:90℃
・射出圧:13MPa
・保圧:13MPa
図3は、磁性粉末の充填量とMFRとの関係を、図4は磁性粉末の充填量と磁気特性(BHmax)との関係を、図5はPAI樹脂の添加量とMFRとの関係をそれぞれ示している。
尚図3の試験では、磁性粉末の添加量を種々変えてMFRとの関係を調べている。
同様に図4の試験においても、磁性粉末の添加量を種々変えて磁気特性との関係を調べている。
その結果実施形態のものは、図4に示しているように磁性粉末を少なくとも70体積%まで高充填することが可能であり、且つそのような高充填によって高い磁気特性が得られている。また磁性粉末の添加量の増大に比例して磁気特性が高まっている。
これに対し従来例のものは、実施形態のものに比べて磁気特性が低く、また磁性粉末の充填可能量が64体積%までであって、それよりも高充填すると成形不能となって、磁気特性そのものを測定することができなかった。
尚この図5の結果は、磁性粉末の添加量を70体積%としたものについての試験結果である。
この図6では、処理温度を高めることによってMFRの値が高くなり且つ高い値で安定する傾向を示している。
これは、処理温度が高くなることで磁性粉末表面の被膜のPAI樹脂がより重合進行して被膜硬さが硬くなり、磁性粉末とポリアミド12樹脂とを2軸混練機に投入して高い剪断力の下で混練を行っても被膜が磁性粉末の粒子表面から剥れず、流動性が高く確保されることを表している。
ここではPAI樹脂の粉末をバッチ炉を使用して表3及び図7に示す各温度に加熱及び保持した後、溶媒のNMPに溶解し、その溶液をビスコメイト粘度計「VM−10A」で測定して粘度変化を測定し、重合度の変化を追跡試験した結果を示したものである。
尚、加熱温度は100℃〜10℃おきに200℃まで変化させ、また加熱保持時間を15分とした。
またPAI樹脂の溶媒に対する溶解濃度は、PAI樹脂を1質量%添加した濃度とした。
その粘度の測定結果が表3及び図7に示してある。
尚加熱温度を230℃及び240℃としたものにおいてはPAI樹脂が溶媒に完全に溶解せずに、ゲル状の物質となって液中に漂う状態であった。
但し図8中(A)は従来例のものを、(B)のものは実施形態のものをそれぞれ表している。
またこれら(A),(B)において、(イ)は倍率250倍のSEM写真を、(ロ)は倍率3000倍のSEM写真をそれぞれ示している。
この写真の結果からも、実施形態の場合には磁性粉の粒子表面にPAI樹脂の被膜が形成されることによって、粒子表面と母材樹脂との親和性、結合力が高まっていることが見て取れる。
結果が表4に示してある。
尚具体的な条件は基本的に上記した条件である。
ここでは実施例と併せて、磁性粉末をカップリング処理したものについても同様の試験を比較例として行っている。
結果を表5に示している。
この比較例の場合、磁性粉末の充填量が高過ぎるために複合材の流動性が実質的に得られず、また射出成形ができないことによって磁気特性の測定は行えなかった。
Claims (4)
- 強磁性の磁性粉末に熱可塑性樹脂バインダを加えて混練し、得られた磁石材を射出成形により所定形状に成形してボンド磁石を製造するボンド磁石の製造方法であって、
後の加熱により重合反応して分子量増大する低重合度のポリアミドイミド樹脂を溶媒に溶解して溶液状態とし、該溶液状態のポリアミドイミド樹脂で前記磁性粉末の粒子表面を被覆した後、該溶媒を除去するとともに加熱により前記ポリアミドイミド樹脂を重合反応させて、該粒子表面のポリアミドイミド樹脂の被膜硬さを硬くし、前記樹脂バインダとの混練を行うことを特徴とするボンド磁石の製造方法。 - 請求項1において、前記ポリアミドイミド樹脂を、前記磁性粉末を基準として0.3〜0.7質量%添加して混合し、前記ポリアミドイミド樹脂の被膜を該磁性粉末の粒子表面に形成することを特徴とするボンド磁石の製造方法。
- 請求項1,2の何れかにおいて、前記加熱の温度を100℃以上とすることを特徴とするボンド磁石の製造方法。
- 強磁性の磁性粉末に熱可塑性樹脂バインダを加え、混練にて得られた磁石材を所定形状に成形してなるボンド磁石であって、
前記磁性粉末の粒子表面には、該表面を被覆するポリアミドイミド樹脂の被膜が形成してあることを特徴とするボンド磁石。
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