JP2011146417A - 樹脂結合型磁石用組成物の製造方法、得られる磁石用樹脂組成物、及び樹脂結合型磁石 - Google Patents

樹脂結合型磁石用組成物の製造方法、得られる磁石用樹脂組成物、及び樹脂結合型磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】希土類元素を含む磁石合金粉を原料とし、成形性に優れ、かつ耐食性に優れた樹脂結合型磁石用樹脂組成物の製造方法、樹脂結合型磁石用組成物、樹脂結合型磁石を提供。
【解決手段】希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉を有機溶媒中で粉砕する際、又は粉砕後に、リン酸を添加し攪拌して、磁石合金粉の表面に複合金属リン酸塩被膜を形成し、得られた磁石合金粉に、再びリン酸と有機溶媒を含む溶液を添加し攪拌して、複合金属リン酸塩被膜を積層し、次に、得られた複数層の複合金属リン酸塩被膜を有する磁石粉末に樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から選ばれるいずれか一種と、0.001〜3質量%の重金属不活性化剤及び/又は活性炭とをインテグラルブレンド法で添加し、混練することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物の製造方法などによって提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂結合型磁石用組成物の製造方法、得られる磁石用樹脂組成物、及び樹脂結合型磁石に関し、さらに詳しくは、希土類元素を含む磁石合金粉を原料とし、成形性に優れ、かつ耐食性に優れた樹脂結合型磁石用組成物の製造方法、得られる磁石用樹脂組成物、及び樹脂結合型磁石に関する。
近年、樹脂結合型磁石は、樹脂バインダーと磁石合金粉を充填して容易に製造できるため、新たな用途開拓が繰り広げられている。特に、エレクトロニクス用途で高い寸法精度や複雑形状の加工成型を要求され、この要求を満足する樹脂結合型磁石が望まれている。樹脂結合型磁石の製造方法としては、押出成形、圧縮成形、射出成形等の方法があるが、ユーザーからの軽薄短小の強い要望を満足する方法は、射出成形法が適している。
一般に、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉を、樹脂バインダーと混練して樹脂結合型磁石を製造する場合、該磁石合金粉を数μm程度に粉砕する必要がある。粉砕は不活性ガスまたは有機溶媒中で行うが、粉砕後の磁石合金粉は極めて活性であり、大気に触れると該磁石合金粉は急激に酸化が進み磁気特性を劣化させるので、粉砕後に、僅かな酸素を不活性雰囲気に導入して徐酸化する方法が良いとされている。
こうした樹脂結合型磁石の中でも、特に、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉を用いた樹脂結合型磁石は、塩水中で錆が発生しやすいため、例えば、成形体表面に熱硬化性樹脂等のコーティング膜を形成することで錆の発生を抑制したり、また、成形体表面にリン酸塩含有塗料による被覆処理を施すことで錆の発生を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上記方法で作製された磁石合金粉でも、塩水中のような腐食性の厳しい環境下では、錆の発現防止に対して十分に満足できるものではなかった。
また、粉末表面にリン酸塩処理やクロム酸塩処理などの化成処理を行うこと(例えば、特許文献2参照)、亜鉛やアルミニウムを蒸着すること(例えば、特許文献3参照)、高分子皮膜を形成すること(例えば、特許文献4参照)、さらには、金属めっきをすること(例えば、特許文献5参照)などの技術も提案されている。
これらを代表的な希土類元素を含む鉄系磁石合金粉であるSm−Fe−N系磁石合金粉末に適用すると、樹脂バインダーとの混練時の混練トルクの上昇は多少抑制できることが分かっている。このことから磁石合金粉と樹脂バインダーとの酸塩基相互作用や前記磁石合金粉からの金属イオンの影響はある程度抑制できるものの、樹脂バインダーとの混練時に磁石粉末表面の性状が荒れてしまい、肝心の磁気特性が劣化してしまうという問題がある。また、被膜として充分な耐酸化性効果を得るためには、数10μm程度の膜厚にする必要があることから、磁気特性を発現する材料の体積分率が低下し、磁気特性の低下を招いてしまう。また、被膜を形成する際に粉末同士の凝集も起こることから、磁気異方性の方向が不揃いになり、磁石成形体の磁気特性の低下が避けられないという問題もあった。
そこで、磁石合金粉を被膜処理する場合、粉砕溶媒中にリン酸を添加し、希土類や鉄のリン酸塩を合金粉表面に生成させる方法が検討されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、この方法で作製した磁石合金粉は、前述したような磁石合金粉と樹脂バインダーとの酸塩基相互作用や磁石合金粉からの金属イオンの影響はある程度抑制でき、錆の発生を多少は低減できるものの、被膜形成後の磁石合金粉をX線光電子分光装置により表面分析して評価すると、表面に金属状態の鉄が存在することがわかった。このような磁石合金粉を用いて作製した樹脂結合型磁石では、塩水中に24時間浸漬すると、錆が発生して実用性がない。
上記状況を解決するために本発明者らも種々検討し、磁石合金粉の表面に複合金属リン酸塩被膜を形成し、樹脂結合型磁石としての成形体の機械強度を改善する方法に加え、塩水中での錆の発生抑制のため、希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉を有機溶媒中で粉砕する際、又は粉砕後に、リン酸を添加し攪拌して、磁石合金粉の表面に複合金属リン酸塩被膜を形成する工程と、次いで、この磁石合金粉スラリーから溶液を分離除去した後、アルコキシシリケートを混合し攪拌し、アルコキシシリケートを加水分解して、複合金属リン酸塩被膜表面にシリケート被膜を形成する工程とを含む磁石合金粉の製造方法を提案した(例えば、特許文献7参照)。
しかしながら、この方法によれば、成形体の機械強度を改善でき、かつ塩水中の錆の発生を十分に抑制するものの、射出成形性の指標となる流動性Q値の向上が十分にはならず、そのため成形性も必ずしも満足できなかった。
その一方で、家電機器用モーター、自動車用センサーやモーターにおいて、海外で部品を組み立てるため船などによる輸送が必要であり、その使用環境、輸送環境がさらに厳しくなり、上記課題を解決できる樹脂結合型磁石がますます強く望まれている。
特開2000−208321号公報 特開平1−14902号公報 特開昭64−15301号公報 特開平4−257202号公報 特開平7−142246号公報 特開2002−8911号公報 特開2006−169618号公報
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点に鑑み、希土類元素を含む磁石合金粉を原料とし、成形性に優れ、かつ耐食性に優れた樹脂結合型磁石用組成物の製造方法、得られる磁石用樹脂組成物、及び樹脂結合型磁石を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉末を、まず特定量のリン酸を添加した有機溶剤中で混合粉砕して、リン酸との化学反応により生成するリン酸鉄と希土類金属リン酸塩からなる複合金属リン酸塩被膜を均一に形成させ、特定条件で熱処理することにより複合金属リン酸塩被膜し、引き続き、この磁石粉末を粉砕しない以外は同様な条件で、表面にリン酸鉄と希土類金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜を形成し、次いで、得られた複合金属リン酸塩被膜付磁石粉末と樹脂バインダーと、重金属不活性化剤及び/又は活性炭をインテグラブレンド法にて添加し、混練することにより、得られる樹脂結合型磁石用組成物の成形性が良好となり、かつ得られる樹脂結合型磁石の耐食性が改善され、錆の発生を確実に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、あらかじめ希土類元素を含む鉄系磁石合金からなる磁石粉末の表面にリン酸鉄と希土類金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜を形成した後、さらに磁石粉末の表面にリン酸鉄と希土類金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜を形成した後に、得られた複合リン酸被膜付き磁石粉末と樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から選ばれる一種と、重金属不活性化剤、活性炭から選ばれる少なくとも一種とをインテグラルブレンド法にて添加し、混練することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、重金属不活性化剤が、組成物中に、0.001〜3質量%の割合で添加されることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、活性炭は、化学式がCの活性炭素であり、かつ粒径が100μm以下のものを50質量%以上含有し、組成物中に、0.001〜3質量%の割合で添加されることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記複合金属リン酸塩被膜が、Al、Zn、Mn、Cu、又はCaから選ばれる1種以上を金属成分とする金属リン酸塩をさらに含有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、複合金属リン酸塩被膜を形成する際に、磁石合金粉の粉末重量当たり、0.1〜2mol/kgのリン酸を添加して、磁石合金粉の表面にリン酸鉄と希土類リン酸塩とを含む複合金属リン酸塩被膜を形成し、この磁石合金粉スラリーから溶液を分離除去した後に減圧下で100℃以上として熱処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明から第5の発明のいずれかの樹脂結合型磁石用組成物の製造方法により得られることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
一方、本発明の第7の発明によれば、第6の発明の樹脂結合型磁石用樹脂組成物を、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法又は射出プレス成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形して得られる樹脂結合型磁石が提供される。
本発明の製造方法によれば、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉が、安定な複合金属リン酸塩被膜によって均一に保護されるため、極めて耐食性に優れたものとなり、さらに、組成物化前に希土類元素を含む鉄系磁石合金粉に重金属不活性化剤、活性炭から選ばれる少なくとも一種をインテグラルブレンド法にて添加するので、樹脂結合型磁石用組成物の成形性が良好となる。これにより5%塩水中で長時間放置しても錆の発生が無いほど耐食性に優れる樹脂結合型磁石用組成物および樹脂結合型磁石の製造が可能となり、その工業的価値は極めて大きい。
従来の燐酸溶液による表面処理で得られた磁石粉末被膜のFe2p3/2プロファイルとこのプロファイルを波形分離したときのチャートである。 本発明により、燐酸溶液による表面処理された磁石粉末に対して、繰り返し燐酸溶液による表面処理を行って得られた磁石粉末のプロファイルとこのプロファイルを波形分離したときのチャートである。
以下、本発明の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法、得られる磁石用樹脂組成物、及び樹脂結合型磁石について詳細に説明する。
本発明の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法は、希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉を有機溶媒中で粉砕する際、又は粉砕後に、リン酸を添加し攪拌して、磁石合金粉の表面に複合金属リン酸塩被膜を形成し、得られた磁石合金粉に、再びリン酸と有機溶媒を含む溶液を添加し攪拌して、複合金属リン酸塩被膜を積層し、次に、得られた複数層の複合金属リン酸塩被膜を有する磁石粉末(以下、表面被覆磁石合金粉ともいう)に、樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から選ばれるいずれか一種と、0.001〜3質量%の重金属不活性化剤及び/又は活性炭とをインテグラルブレンド法で添加し、混練することを特徴とする。
1.表面被覆磁石合金粉
本発明に係る表面被覆磁石合金粉は、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉が、少なくとも二回のリン酸塩被膜処理、その後の熱処理によって、表面に安定な複合金属リン酸塩被膜(A)を形成したものである。
磁石合金粉は、希土類元素を含む鉄系磁石合金の粉末であれば、特に制限されない。例えば、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系などの各種磁石合金粉を使用でき、中でも希土類−鉄−窒素系の磁石合金粉が好適である。希土類元素としては、Sm、Nd、Pr、Y、La、Ce、またはGd等が挙げられ、単独若しくは混合物として使用できる。これらの中では、特にSm又はNdを5〜40原子%、Feを50〜90原子%含有するものが好ましい。希土類元素を含む鉄系磁石合金粉(粗粉)は、溶解法あるいは還元拡散法等を用いて製造される。
希土類元素を含む鉄系磁石合金粉には、フェライト、アルニコなど、樹脂結合型磁石や圧密磁石の原料となる各種磁石合金粉を混合してもよく、異方性磁石合金粉だけでなく、等方性磁石合金粉も対象となるが、異方性磁場(HA)が、4.0MA/m以上の磁石合金粉が好ましい。
また、上記磁石合金粉は、樹脂結合型磁石の原料であるため、平均粒径が8μm以下、特に5μm以下であることが望ましい。平均粒径が8μmを超えると、成形性が悪化するので好ましくない。また、圧蜜磁石の原料とすることもできる。
(A)複合金属リン酸塩被膜
本発明において、磁石合金粉は、その表面が鉄と希土類元素を金属成分として含む金属リン酸塩(a−1)で均一に被覆され、また、さらにアルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムのいずれか1種以上を金属成分として含む金属リン酸塩(a−2)が複合化した被膜で均一に被覆されていてもよい。
ここで、均一に被覆されるとは、磁石合金粉表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上が複合金属リン酸塩被膜で覆われていることをいう。
金属リン酸塩(a−1)は、リン酸サマリウム、リン酸鉄などであり、これは磁石合金粉を構成する希土類や鉄にリン酸が反応して形成されたもので、これらが複合化した複合金属リン酸塩も含まれる。一方、金属リン酸塩(a−2)は、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸銅、リン酸カルシウム、又はこれらが2種以上複合化した金属塩などである。金属成分としては、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅およびカルシウム以外にも、クロム、ニッケル、マグネシウムなどでもよく、これらの金属リン酸塩が複合金属リン酸塩被膜に含まれていてもかまわない。
金属リン酸塩(a−1)、又はこれと金属リン酸塩(a−2)とが複合化した金属リン酸塩は、樹脂バインダーとの結合力を高め、磁石合金粉の耐食性を高める成分である。金属リン酸塩(a−1)だけでも充分な耐塩水性を得ることができるが、さらに耐塩水性を高めるためには、金属リン酸塩(a−2)の金属成分、すなわちアルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムから選択された1種以上が、複合金属リン酸塩被膜(A)の金属成分全量に対して、30質量%以上、特に50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含まれた複合金属リン酸塩とすることが好ましい。
磁石粉末に複合金属リン酸塩被膜が均一に形成されていないと、磁石粉末の表面に金属状態の鉄が存在することになって、その後のバインダー樹脂との混練時に粘度の上昇し、コンパウンドの作製が困難になり、流動性Q値の低下、成形性の低下の原因となる。従って、この磁石粉末の複合金属リン酸塩被膜の安定性は、本発明において非常に重要な役割をもつ。
本発明に係る表面被覆磁石合金粉は、被膜中に金属状態で存在する鉄が実質的に検出されないという特徴がある。本発明において、被膜中に金属状態で存在する鉄の量は、X線光電子分光装置(XPS)により以下のようにして測定し評価する。
まず、モノクロX線源(AlKα線)でFe2p3/2スペクトルを測定する。次に、束縛エネルギー705eV〜720eVの範囲で得られたスペクトルプロファイルをXPSに内蔵されている解析ソフトウェア(スペクトラムプロセッシング)によって、シャーリー法に基づきプロファイルのベースラインを設定し、金属状態の鉄の波形P1、鉄の酸化物形態の波形P2、鉄の別の酸化物形態の波形P3の3つの波形に分離する。その後、P1、P2、P3のそれぞれの波形の面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄の波形P1の波形面積を百分率で求める。
従来のリン酸溶液による表面処理方法によって得られた磁石粉末では、被膜をX線光電子分光装置でFe2p3/2プロファイルを波形分離すると、図1のようなチャートが得られた。これまで、リン酸溶液による表面処理方法によって得られた磁石粉末には、金属状態の鉄の形態と、鉄の酸化物を含む形態の少なくとも2種類からなる被膜が形成されることが明らかになっている。図1中、金属状態の鉄の波形がP1、鉄の酸化物形態の波形がP2とP3である。鉄の酸化物形態には、FeO、Fe、Fe、FeOOHといった酸化鉄があり、その一部が希土類元素、炭素、水素との複合酸化物になっているものと考えられる。
図1のP1、P2、P3のそれぞれの波形面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄の波形P1の波形面積を求めると、面積百分率は3%を超える。このような金属状態の鉄の波形P1の百分率が2.0%を超えた磁石粉では、バインダー樹脂と混練するときのトルクが高く、得られた組成物の流動性Q値が低下し、また組成物を成形して得た樹脂結合型磁石は、機械強度が低下してしまう。
これに対して、本発明により、さらにこの粉末に対してさらにリン酸による表面処理を行うと、得られた磁石粉末は、被膜をX線光電子分光装置でFe2p3/2プロファイルを波形分離したとき、図2のようなチャートが得られる。金属状態の鉄は目視で検出されず、鉄の酸化物形態の波形P2と、P2とは異なる鉄の酸化物形態の波形P3のみからなることが分かる。金属状態の鉄の波形が消失する理由は、まだ完全には解明されないが、リン酸処理の後で熱処理し、さらに再度リン酸による表面処理を行ったことで金属状態の鉄が鉄の酸化物に変化したためと推測される。その後、同様にしてP1、P2、P3のそれぞれの波形面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄(P1)の波形面積を求めると、面積百分率は0.1%であった。
本発明では、金属状態の鉄(P1)の波形面積の割合が2.0%以下の磁石粉であるため、バインダー樹脂と混練するときのトルクが低くなり、得られた組成物の流動性Q値が上昇して、組成物を成形して得たボンド磁石の機械強度が増加する。
複合金属リン酸塩被膜の厚さは、平均で1〜100nmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜80nmであり、10〜40nmであることがより好ましい。平均厚さが1nm未満であると十分な耐塩水性、機械強度が得られず、一方、100nmを越えると磁気特性が低下し、また樹脂結合型磁石を作製する際には混練性や成形性が低下する。複合金属リン酸塩被膜膜厚は、上記複合金属リン酸塩被膜で被覆された希土類元素を含む鉄系磁石合金粉の断面の電子顕微鏡写真から確認することができる。
上記複合金属リン酸塩被膜で被覆された希土類元素を含む鉄系磁石合金粉は、樹脂結合型磁石用組成物の原料として使用され、重金属不活性化剤または活性炭とバインダー樹脂と混練される。
2.表面被覆磁石合金粉の製造方法
本発明では、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉末を、まず特定量のリン酸を添加した有機溶剤中で混合粉砕して、平均粒径を小さくするとともに、リン酸との化学反応により生成するリン酸鉄と希土類金属リン酸塩からなる複合金属リン酸塩被膜を均一に形成させた後、該磁石合金粉スラリーを固液分離し、減圧下で100℃以上として混合粉砕に用いた有機溶媒及び余剰な処理剤を揮発させ、かつ被膜に熱処理を施し、その被膜安定性を向上させ、確実に磁石粉末の表面の露出を抑制する。次に、得られた希土類元素を含む鉄系磁石合金粉末を、磁石粉末が粉砕されない以外は前記と同様な条件にて、表面にリン酸鉄と希土類金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜を形成して、更に被膜安定性と磁石表面の露出防止させた複合金属リン酸塩被膜磁石合金粉を得る。
すなわち、本発明においては、複合金属リン酸塩被膜で被覆された希土類元素を含む鉄系磁石合金粉(表面被覆磁石合金粉)は、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉をリン酸含有溶液で次の方法により二段階で処理して製造される。
(1)鉄系磁石合金粗粉の粉砕と複合金属リン酸塩被膜の形成
希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉は、溶解法あるいは還元拡散法等を用いて得られるために、通常平均粒径20μmを超える粉末を含んでいる。そこで、希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉は、例えば平均粒径8μm以下に粉砕する必要がある。この粉砕の際、又は粉砕後に、リン酸を添加した後、該溶液を攪拌することで複合金属リン酸塩被膜を形成する。この際、リン酸とともに、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムから選ばれた1種以上の金属の酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物を添加することができる。
先ず、平均粒径20μmを超える希土類元素を含む鉄系磁石合金の粗粉末に、有機溶媒を加え、磁石合金粉の粉砕前、あるいは粉砕中に、リン酸を添加して、攪拌を続ける。また、粉砕後の場合、なるべく粉砕から時間をおかずに添加することが望ましい。攪拌は、通常1〜180分間続行することが好ましい。リン酸を添加するのは、磁石合金粉の平均粒径が8μm以下であれば、粉砕後であってもよい。
有機溶媒としては、特に制限はなく、2−メトキシエタノール、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等のいずれか1種または2種以上の混合物を用いると良い。但し、メタノールは、リン酸と速やかに反応してエステル化し、良好な被膜が形成されるのを妨げる恐れがあるので取り扱いには注意を要する。
前記の金属成分が容易に金属イオンを生成し、磁石合金粉の溶解を適度に調整するためには、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド等の極性溶媒を混合することが望ましい。また、磁石合金粉の溶解を促進するために、有機溶媒に水や酸を混合しても良い。
リン酸としては、金属化合物と反応して金属リン酸塩を生成するオルトリン酸をはじめ、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、直鎖状のポリリン酸、環状のメタリン酸が使用できる。また、リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムマグネシウムなども使用できる。これら化合物は、単独でも複数種を組み合わせてもよく、通常、キレート剤、中和剤などと混合して処理剤とされる。
これらのうち、オルトリン酸が好ましい性能を発揮するが、その理由は、これが上記の金属化合物と反応しやすく、希土類系金属を成分とする磁石合金粉の表面に保護膜を形成しやすいためと考えられる。
リン酸は、粉砕する磁石合金粉に対して0.1〜2mol/kg(粉末重量当たり)であり、好ましくは0.15〜1.5mol/kg、さらに好ましくは0.2〜0.4mol/kgである。リン酸の添加量が0.1mol/kg未満であると、磁石合金粉の表面が十分に被覆されないために耐食性が改善されず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性が極端に低下する。2mol/kgを超えると、磁石合金粉との反応が激しく起こって磁石合金粉が溶解する。リン酸の濃度は、特に制限されず、無水リン酸、50〜99%リン酸水溶液などが用いられる。
金属成分は、アルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムなどのイオンの供給源であり、有機溶媒に溶け金属イオンを生成する酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物などの金属化合物である。これらの金属化合物は、溶媒中でイオン化し、磁石合金粉の成分である希土類金属や鉄が溶媒へ溶け出すにともない、磁石合金粉の表面で反応して金属リン酸塩(a−2)が複合した被膜を形成する。そのため、鉄と希土類元素の金属リン酸塩(a−1)単独の場合に比べて、シリケート被膜などとの結合力をさらに向上することが可能となる。
具体的には、有機溶媒に溶解する化合物が使用できるので、特に制限はないが、酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物が好ましい。例えば、アルミニウム化合物としては、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウムが好ましい。亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、リン酸亜鉛四水和物、リン酸水素亜鉛が好ましい。マンガン化合物としては、酸化マンガン、リン酸水素マンガンが好ましい。銅化合物としては、酸化銅(I)、リン酸水素銅が好ましい。カルシウム化合物としては、酸化カルシウム、リン酸水素カルシウムが好ましい。
金属成分であるアルミニウム、亜鉛、マンガン、銅又はカルシウムの群からから選ばれた少なくとも1種以上の金属の酸化物、複合酸化物、リン酸塩又はリン酸水素化合物は、磁石合金粉の粒径、表面積等に合わせて適正な量を添加するが、磁石合金粉に対して、例えば、0.01〜1mol/kg(粉末重量当たり)とする。添加量が0.01mol/kg未満であると、磁石合金粉の表面が十分に被覆されないために耐食性が改善されず、1mol/kgを超えると磁化の低下が著しくなり、磁石としての性能が低下する。金属成分を添加する場合、その添加時期は、いつでも良く、粉砕前に溶媒に溶かしておき、粉砕途中に一度に添加する方法、粉砕中、徐々に添加する方法などが用いられる。あるいは粉砕直後であってもよい。
これによって、溶液中に溶けだした希土類元素、鉄など磁石を構成する元素がリン酸塩を形成し、金属化合物と反応しあって、複合金属リン酸塩が磁石合金粉を被覆する。この反応が完結し、充分な膜厚の被膜を形成するには、金属化合物の種類などにもよるが、1〜180分間、好ましくは3〜150分、さらに好ましくは5〜60分の攪拌(粉砕)、保持時間が必要である。
粒子径が20μmを超える粗大粉末を含む鉄系磁石合金粗粉は、20μmを超える粗大粒子を含まず、平均粒径8μm以下、好ましくは1〜5μmまで粉砕される。
複合金属リン酸塩被膜を形成後、リン酸塩被膜処理の際に用いた有機溶媒及び余剰な処理剤を揮発除去させるために熱処理を施す。この熱処理により格段と安定で均一な被膜を形成することができる。ここで、熱処理の条件は、減圧下で100℃以上の温度で熱処理することが重要である。熱処理の温度は、100℃〜200℃が好ましく、特に好ましいのは、120℃〜180℃である。処理時間は、特に制限はないが通常1〜5時間、好ましくは1〜3時間、さらに好ましくは1〜2時間とする。
この熱処理が行われないか、不十分な条件で行うと、複合金属リン酸塩被膜が均一に形成されず、磁石粉末の表面に金属状態の鉄が存在することがある。
(2)鉄系磁石合金粉への複合金属リン酸塩被膜の形成
次に、得られた磁石合金粉に、再びリン酸と有機溶媒を含む溶液を添加し攪拌して、複合金属リン酸塩被膜を積層する。複合金属リン酸塩被膜の形成の具体的条件は、粉砕を行わない以外は上記(1)の工程と同様である。複合金属リン酸塩被膜が形成された、磁石合金粉の乾燥(熱処理)の具体的条件も上記(1)の工程と同様である。
3.樹脂結合型磁石用組成物の成分
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、上記の表面被覆磁石合金粉に、樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から選ばれる一種の樹脂と、重金属不活性化剤、活性炭から選ばれる一種とを配合し、所望によりその他の添加剤を配合したものである。
(1)樹脂バインダー
樹脂バインダーは、磁石粉末の結合材として働く成分であり、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいは、エポキシ樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、硬化反応型シリコーンゴムなどの熱硬化性樹脂が使用できるが、特に熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の種類は、特に制限されず、従来樹脂バインダーとして公知のものを使用できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612、芳香族系ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、前出の各樹脂系エラストマー等が挙げられ、これらの単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質による末端基変性品等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、得られるボンド磁石に所望の機械的強度が得られる範囲で、溶融粘度や分子量が低いものが望ましい。また、熱可塑性樹脂の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状等、特に限定されないが、磁石合金粉と短時間に均一に混合される点で、パウダー状が望ましい。
熱可塑性樹脂の配合量は、磁石合金粉100重量部に対して、通常5〜100重量部、好ましくは5〜50重量部とする。熱可塑性樹脂の配合量が5重量部未満であると、組成物の混練抵抗(トルク)が大きくなったり、流動性が低下して磁石の成形が困難となったりし、一方、100重量部を超えると、所望の磁気特性が得られなくなってしまう。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型フッ素樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂などが例示される。
熱硬化性樹脂であれば、その取り扱い性、ポットライフの面から2液型が有利であり、2液を混合後は、常温から200℃までの温度で硬化しうるものが好ましい。その反応機構は、一般的な付加重合型でも縮重合型であってもよい。また、必要に応じて過酸化物等の架橋反応型モノマーやオリゴマーを添加しても差し支えない。
これらは、反応可能な状態にあれば、重合度や分子量に制約されないが、硬化剤や他の添加剤等との最終混合状態で、ASTM100型レオメーターで測定した150℃における粘度が500Pa・s以下、好ましくは400Pa・s以下、特に好ましくは、100〜300Pa・sである。粘度が500Pa・sを超えると、成形時に著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招き、成形困難になるので好ましくない。一方、粘度が小さくなりすぎると、磁石粉末と樹脂バインダーが成形時に分離しやすくなるため、0.5Pa・s以上であることが望ましい。
上記熱硬化性樹脂は、磁石合金粉100重量部に対して、3〜50重量部の割合で添加される。添加量は7〜30重量部、さらには、10〜20重量部がより好ましい。3重量部未満では、著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招いて、成形困難になり、一方、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られないので好ましくない。
(2)重金属不活性化剤
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、複合金属リン酸塩被膜付磁石粉(表面被覆磁石合金粉)に樹脂バインダーと、重金属不活性化剤、又は活性炭から選ばれる一種以上がインテグラブレンド法にて添加され、混練されて樹脂結合型磁石用組成物となる。
ここで、重金属不活性化剤を配合するのは、磁石粉成分の鉄、コバルト、マンガンなどの重金属イオンにより樹脂バインダーが接触酸化劣化するのを防止するためである。重金属不活性化剤を用いれば、これら重金属イオンを吸着してポリマー中のハイドロパーオキサイドの重金属イオンによる接触分解を抑制できるものと考えられる。
本発明では、重金属不活性化剤として、ヒドラジド化合物、サリチル酸化合物、リン系酸化防止剤などを使用することができる。本発明で好適に使用できる重金属不活性化剤を例示すると、2’,3-ビス[[3-[3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド等である。これらの重金属不活性化剤は、一種単独でも二種以上組み合わせても良い。
重金属不活性化剤の添加量は、組成物量に対して、0.001〜3質量%であり、好ましくは0.01〜2質量%で、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。添加量が0.001質量%未満の場合は、その効果が十分ではなく、また、3質量%を超えると樹脂量が不足し組成物化できなくなるか、機械的強さが低下するため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることが困難となる。
インテグラブレンド法とは、添加成分を一括して添加する方法である。ただし、本発明では、これに限らず、磁石粉に対して、樹脂バインダーの一部を添加し、次に重金属不活性化剤を添加し、さらに樹脂バインダーの残部を添加する方法もインテグラブレンド法に含まれる。
(3)活性炭
本発明の樹脂結合型磁石用組成物においては、樹脂バインダーが、磁石粉成分の鉄、コバルト、マンガンなどの重金属イオンにより接触酸化劣化するのを防止するために、上記の組成・成分に加えて、化学式がCの活性炭を配合することができる。
上記活性炭として、木質系、椰子系、石炭系と主に3種類あるが、いずれの種類も用いることができる。これらの活性炭は、単独もしくは2種以上の混合して用いることもできる。
本発明で好適に使用できる活性炭は、特に限定されるものではないが、炭素のみからなる活性炭を用いれば、磁石粉成分に由来する重金属イオンを吸着してポリマー中のハイドロパーオキサイドの重金属イオンによる接触分解を抑制できるものと考えられる。活性炭には、そのマクロポア、ミクロポアに金属を含浸あるいはイオン交換させたもの、又は製造過程で金属を不純物として含有したものなどがあるが、このような活性炭では、金属がバインダーのナイロンと相互作用を起こし、組成物化したときに流動性が極端に低下するので好ましくない。
活性炭の粒径は、特に制限されないが、粒径100μm以下のものを50質量%以上含有すると効果が大きい。活性炭の表面積が大きくなり、マクロポア、ミクロポアの割合が増えるからである。粒径100μm以上のものが50質量%より多くなると、重金属イオンを吸着する表面積が減るため樹脂結合型磁石用組成物中のポリマーの分解抑制効果が減るばかりではなく、異方性の磁性粉末の配向を阻害してしまい磁気特性の低下を招くことがある。
活性炭の添加方法は、組成物化前に上記磁石合金粉にインテグラルブレンド法にて行う。添加量は、組成物量に対して、0.001〜3質量%でよく、好ましくは0.01〜2質量%であり、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。添加量が0.001質量%未満の場合は、その効果が十分ではなく、また、3質量%を超えると樹脂量が不足し組成物化できなくなったり、仮にできたとしても機械的強さが低下するため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることが困難となる。
活性炭を磁石合金粉末に添加する際、重金属不活性化剤を併用する場合は、それら合計の添加量が、組成物量に対して、0.001〜3質量%となるようにする。これによる相乗効果により、それぞれを単独で添加する場合よりも、優れた樹脂結合型磁石用組成物を得ることができる。
前記のとおり、インテグラブレンド法とは、添加成分を一括して添加する方法である。ただし、本発明では、これに限らず、磁石粉に対して、樹脂バインダーの一部を添加し、次に活性炭を添加し、さらに樹脂バインダーの残部を添加する方法もインテグラブレンド法に含まれる。
添加後の混練方法は、特に限定されず、例えば、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、或いはバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機が使用できる。
本発明では、磁石合金粉末の表面が複合金属リン酸塩被膜で覆われており、金属状態の鉄が存在しない。しかし、組成物化・ボンド磁石化時に、磁石合金粉にせん断が加わることにより磁石合金粉が擦れたり割れたりして新生面が現れる。ところが、本発明では、組成物中に重金属不活性化剤又は活性炭が添加されているので錆がほとんど発生しない。錆の発生の抑制効果は、重金属不活性化剤又は活性炭の量が増加するとともに顕著となる。これは、重金属不活性化剤が新生面の重金属とキレート化し不活性とし、あるいは活性炭が新生面の重金属イオンを吸着するためと考えられる。
(4)その他の添加剤
本発明における樹脂バインダーには、上記成分のほかに滑剤、紫外線吸収剤、難燃剤や種々の安定剤等を添加できる。
滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、流動パラフィン等のワックス類、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、弗素化合物、窒化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。これらの滑剤は、一種単独でも二種以上組み合わせても良い。該滑剤の配合量は、磁石合金粉100重量部に対して、通常0〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;蓚酸アニリド誘導体などが挙げられる。
また、安定剤としては、ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダード・アミン系安定剤のほか、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの抗酸化剤等が挙げられる。これらの安定剤も、一種単独でも二種以上組み合わせても良い。該安定剤の配合量は、磁石合金粉100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
4.樹脂結合型磁石
上記の樹脂結合型磁石用組成物は、樹脂バインダーが熱可塑性樹脂の場合、その溶融温度で加熱溶融された後、所望の形状を有する磁石に成形される。その際、成形法としては、従来からプラスチック成形加工等に利用されている射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、トランスファー成形法等の各種成形法が挙げられるが、これらの中では、特に射出成形法、射出圧縮成形法、及び射出プレス成形法等が好ましい。
一方、樹脂バインダーが熱硬化性樹脂の場合は、混合時の剪断発熱等によって硬化が進まないよう、剪断力が弱く、かつ冷却機能を有する混合機を使用することが好ましい。混合により組成物が塊状化するので、これを射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、圧延成形法、或いはトランスファー成形法等により成形する。
本発明の樹脂結合型磁石は、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉末に、鉄と希土類元素の金属リン酸塩からなる複合金属リン酸塩被膜が安定的に形成され、かつ重金属不活性化剤及び/又は活性炭が樹脂バインダーとともに添加されているので、腐食環境下でも錆が発生せず、耐食性に優れている。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、使用した材料、得られた樹脂結合型磁石用組成物および樹脂結合型磁石の評価方法は次のとおりである。
(1)材料
(i) 磁石合金粉:
Sm−Fe−N系磁石合金粉[住友金属鉱山(株)製、平均粒径:30μm]
(ii) 有機溶媒:
イソプロピルアルコール(IPA)[関東化学(株)製]
(iii)複合リン酸塩被膜の形成材料:
85%オルトリン酸水溶液[商品名:オルトリン酸水溶液、関東化学(株)製]
酸化亜鉛[関東化学(株)製]
(iv) 重金属不活性化剤:
(A)ヒドラジン誘導体[商品名:IRGANOX MD1024、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株) 製、融点226℃]
(B)サリチル酸誘導体[商品名:CDA−1、旭電化工業(株)製、融点317℃]
(C)トリス[2―t―ブチル−4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル]フォスファイト、[商品名Hostanox OSP1、(株)クラリアントジャパン製、融点214℃]
(v)活性炭
商品名:クラレコールYP、クラレケミカル株式会社製、平均粒径15〜20μm
(vi)樹脂バインダー(ナイロン樹脂):
ナイロン12(商品名:ダイアミドZ9005、ダイセル・デグサ(株)製)
(2)評価方法
得られた樹脂結合型磁石用組成物および樹脂結合型磁石について、以下の方法を用いてその成形性および耐食性について評価を行った。
(2−1)複層処理被膜の合計膜厚
複合リン酸塩被膜の形成された磁石合金粉を切断し、断面の電子顕微鏡写真を撮影し、目視にて被膜の合計膜厚を測定した。
(2−2)磁石合金粉の表面分析
得られた複層処理被膜で被覆された希土類元素を含む鉄系磁石合金粉は、X線光電子分光装置の表面分析により磁石合金粉の構成元素である鉄が、金属状態で存在しているかを調べ、検出されなければ、被膜処理が十分になされたと判断し良好とした。
具体的には、被膜処理した磁石粉を導電性テープに密に固定して、X線光電子分光装置(XPS、VG Scientific社製 ESCALAB220i−XL)で状態分析した。鉄の状態分析としてFe2p3/2のスペクトルに注目し、分析面積をφ0.6mmとして試料表面の平均的な情報が得られるようにした。束縛エネルギー705eV〜720eVの範囲で得られたFe2p3/2スペクトルプロファイルを、前記XPSに内蔵されている解析ソフトウェアであるスペクトラムプロセッシングによって、シャーリー法に基づきプロファイルのベースラインを設定し、金属状態の鉄の波形P1、鉄の酸化物形態の波形P2、鉄の別の酸化物形態の波形P3の3つの波形に分離し、この後、P1、P2、P3の各波形面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄の波形P1の波形面積を百分率で求めた。
波形分離は、前記スペクトラムプロッセッシングに初期値として、P1については中心値707.4eV及び半値幅1.06eV、P2については中心値711.2eV及び半値幅3.02eV、P3については中心値713.0eV及び半値幅5.3eVを入力し、この後はソフトウェア内部で以下の処理が実行される。即ち、分離された波形の合成波形と実際に測定された波形について束縛エネルギーにおける強度の差を算出し、この差が最小となるように前記の中心値と半値幅を求め、この中心値と半値幅に対応するP1、P2、P3の各々の波形面積の合計に対する金属状態の鉄の波形P1の面積の百分率を、前記のスペクトラムプロッセッシングが算出する。
(2−3)流動性(メルトインデックスMI法)
作製した樹脂結合型磁石用組成物をプラスチック粉砕機により粉砕して、成形用ペレットとした。東洋精機(株)製メルトインデクサーを用い、測定温度250℃、荷重:21.6kgで、ダイスウェル:直径20mmx厚さ8mmの中を所定重量のコンパウンドが通過する所要時間から、流動性Q値(cm/sec)を評価した。この流動性Q値が大きいほど流動性が高く、射出成形性が良好である。
(2−4)射出成形性
上記得られたペレットを型締め圧50トンのインラインスクリュー式射出成形機に投入し、シリンダー温度210〜230℃、金型温度50〜70℃として7mm方向に配向磁界をかけながら、直径10mm×厚さ15mmの円柱状希土類系磁石を作製した。この際に、成形品に充填不足、フローマーク、ジェッティング等の不良が出るか、判定を行った。いずれの不良も発生しない場合を良好とした。
(2−5)耐食性
得られた樹脂結合型磁石用組成物を、200℃のラボプラストミル中で30分混練し、空冷後、各組成物をプラスチック粉砕機により粉砕して、それぞれ成形用ペレットとした。得られたペレットを射出成形機にて、15mm方向に配向磁界をかけながら、直径10mm×厚さ15mmの円柱状希土類系磁石を製造した。
これを5%NaCl水溶液中に成形体のおよそ半分までつかるようにして浸漬後、室温にて24時間放置し、錆の発生の有無を実体顕微鏡にて観察した。
[実施例1〜11]
還元磁石合金粉(住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石合金粉、平均粒径30μm)1kgを、1.5kgの有機溶媒のイソプロピルアルコール(関東化学(株)製)に対し、表3に示した割合で85%リン酸水溶液(関東化学(株)製)混合し、容器内部を窒素で置換した媒体攪拌ミル中、回転数200rpmで2時間粉砕し、平均粒径3μmの磁石合金粉を作製した。但し、実施例2のみ、オルトリン酸水溶液に関東化学(株)製酸化亜鉛も添加した。
次に、得られたスラリーをろ過し、ろ過物をミキサーへ投入し、攪拌しながら真空中100℃に保持して2時間乾燥して、複合金属リン酸被膜を形成した。
次に、得られた磁石合金粉に新たに有機溶媒とリン酸水溶液を用意して、粉砕しない以外は同じ条件で再度複合金属リン酸被膜を形成し、複合金属リン酸被膜付磁石合金粉を得た。得られた複層処理被膜の合計膜厚は、磁石合金粉の断面の電子顕微鏡写真から測定した。また、被膜表面をXPSによりFe分析した。実施例2は、Znを複合金属リン酸塩被膜の金属成分に対し、5.0質量%含有していた。
次に、得られた磁石合金粉と、樹脂バインダーとして、ナイロン12を磁粉体積率が60%となるように添加し、さらに重金属不活性化剤を表1に示したとおり、インテグラルブレンド法で添加し、ラボプラストミルで混練して、樹脂結合型磁石用組成物を得た。
その後、得られた樹脂結合型磁石用組成物を使用して、230℃にて射出成形して樹脂結合型磁石を作製した。また、得られた樹脂結合型磁石用組成物の流動性Q値、射出成形性、樹脂結合型磁石の耐食性を評価した。その結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
実施例1と同じ還元磁石合金粉を使用し、有機溶剤とリン酸水溶液での混合粉砕処理を一度施すのみとして複合金属リン酸被膜を形成し、その後、重金属不活性化剤を添加しないか、添加量を表1に示した量とした以外は、同様にして樹脂結合型磁石用組成物を得た。また、実施例1と同様にして樹脂結合型磁石を得た。
[比較例5〜6]
添加する重金属不活性化剤の添加量を本発明外の表1に示した量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂結合型磁石用組成物を得て、樹脂結合型磁石を成形した。
このようにして得た比較例1〜6の樹脂結合型磁石用組成物、および樹脂結合型磁石について、実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2011146417
「評価」
表1から、実施例1〜11は、本発明により磁石合金粉に複合金属リン酸被膜を二層形成し、その後、重金属不活性化剤をナイロンとインテグラルブレンド法で添加・混練した樹脂組成物を射出成形し、樹脂結合型磁石を得たものであるが、従来品(比較例1)に比べて、流動性Q値は向上し、成形性も良好となり改善される。また、再リン酸処理により従来品に見られたX線光電子分光装置による表面分析による金属状態の鉄が存在しない。しかも、重金属不活性化剤の添加効果により錆がほとんど観察されなくなった。錆の発生の抑制効果は、重金属不活性化剤の増加とともに顕著となっている。これは、組成物化・ボンド磁石化時に磁石合金粉にせん断力がかかり磁石合金粉の擦れや割れが生じて、新生面が現れるが、新生面の金属イオンを重金属不活性化剤がキレート化し不活性とするためではないかと考えられる。
これに対して、リン酸処理を1回しか施さなかった比較例1〜4は、流動性Q値が低下するだけでなく、X線光電子分光装置による表面分析から金属状態の鉄が検出された。これらの磁石合金粉を用いたボンド磁石は、耐塩水性試験の結果、錆が多く観察された。リン酸処理が不十分であり、かつ磁石合金粉に混練・成形といったせん断により更に新生面が現れ錆を抑制でなかったと考えられる。
重金属不活性化剤を用いないか少量用いた比較例1、5は、磁石合金粉に混練・成形といったせん断により更に新生面が現れ錆を抑制でなかったと考えられ、比較例4、6のように多量に用いた場合は、樹脂量が不足して組成物化ができなかった。
[実施例12〜18]
還元磁石合金粉(住友金属鉱山(株)製Sm−Fe−N系磁石合金粉、平均粒径30μm)1kgを、1.5kgの有機溶媒のイソプロピルアルコール(関東化学(株)製)に対し、表3に示した割合で85%リン酸水溶液(関東化学(株)製)混合し、容器内部を窒素で置換した媒体攪拌ミル中、回転数200rpmで2時間粉砕し、平均粒径3μmの磁石合金粉を作製した。但し、実施例13のみ、オルトリン酸水溶液に関東化学(株)製酸化亜鉛も添加した。
次に、得られたスラリーをろ過し、ろ過物をミキサーへ投入し、攪拌しながら真空中100℃に保持して2時間乾燥して、複合金属リン酸被膜を形成した。
次に、得られた磁石合金粉に新たに有機溶媒とリン酸水溶液を用意して、粉砕しない以外は同じ条件で再度複合金属リン酸被膜を形成し、複合金属リン酸被膜付磁石合金粉を得た。得られた複層処理被膜の合計膜厚は、磁石合金粉の断面の電子顕微鏡写真から測定し、X線光電子分光装置によりFeを表面分析した。実施例13は、Znを複合金属リン酸塩被膜の金属成分に対し、5.0質量%含有していた。
次に、得られた磁石合金粉と、樹脂バインダーとして磁粉体積率が60%となるように、ナイロン12を添加し、さらに活性炭としてクラレコールYP(クラレケミカル株式会社製:平均粒径15〜20μm)をインテグラルブレンド法で表1に示した量を添加し、ラボプラストミルで混練して、樹脂結合型磁石用組成物を得た。その後、得られた樹脂結合型磁石用組成物を使用して、230℃にて射出成形して樹脂結合型磁石を作製した。また、得られた樹脂結合型磁石用組成物それぞれの流動性Q値、射出成形性、樹脂結合型磁石の耐食性を評価した。その結果を表2に示す。
[比較例7〜10]
磁石合金粉を有機溶剤とリン酸水溶液で一度粉砕処理を施すのみとして複合金属リン酸被膜を形成し、その後の活性炭の添加量を表2に示した量とした以外は、実施例12と同様にして樹脂結合型磁石用組成物を得た。また、実施例12と同様にして樹脂結合型磁石を得た。その結果を表2に示す。
[比較例11〜12]
添加する活性炭の添加量を表2に示した量とした以外は、実施例12と同様にして樹脂結合型磁石用組成物を得た。また、実施例12と同様にして樹脂結合型磁石を得た。
このようにして得た比較例7〜12の樹脂結合型磁石用組成物、および樹脂結合型磁石について、実施例12と同様に評価して、その結果を表2に示す。
Figure 2011146417
「評価」
表2から、実施例12〜18は、本発明により磁石合金粉に複合金属リン酸被膜を二層形成し、その後、活性炭をナイロンとインテグラルブレンド法で添加・混練した樹脂組成物を射出成形し、樹脂結合型磁石を得たものであるが、従来のリン酸処理を1回施したものに比べて、流動性Q値は向上し、成形性も良好となり改善されることが分かる。また、本発明の方法で再度リン酸処理を施すと、複合金属リン酸被膜が確実に形成され、活性炭の添加効果と相俟って、従来法のものに見られたX線光電子分光装置により表面を分析したとき、実質的に金属状態の鉄が検知されず、耐食性が著しく改善され、錆の発生が見られなくなることが分かる。錆の発生の抑制効果は、活性炭の増加とともに顕著となり、これは、組成物作成時・射出成形時に磁石合金粉にかかるせん断による磁石合金粉の擦れや割れが抑制され、磁石粉末表面の金属イオンを活性炭が吸着したためと考えられる。
これに対して、表2から、比較例7〜10ではリン酸処理を1回しか施さなかったため、複合金属リン酸被膜が不十分であったか、磁石合金粉に混練・射出成形時にせん断により更に磁石合金粉表面に新生面が現れ、錆が多量に発生してしまったと考えられる。
なお、活性炭が少ないか多量に用いた比較例11や12の場合は、樹脂量が不足し組成物化ができなかった。
本発明によれば、磁石合金粉の表面に安定な二層の複合金属リン酸塩被膜で均一に保護されているので、極めて耐食性に優れており、しかも、重金属不活性化剤及び/又は活性炭が添加されているので、本発明の樹脂結合型磁石用樹脂組成物、それを成形した樹脂結合型磁石も極めて耐食性に優れている。そのため、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモーターやセンサーなどの部品として組込んで使用することができる。

Claims (7)

  1. 希土類元素を含む鉄系磁石合金粗粉を有機溶媒中で粉砕する際、又は粉砕後に、リン酸を添加し攪拌して、磁石合金粉の表面に複合金属リン酸塩被膜を形成し、得られた磁石合金粉に、再びリン酸と有機溶媒を含む溶液を添加し攪拌して、複合金属リン酸塩被膜を積層し、次に、得られた複数層の複合金属リン酸塩被膜を有する磁石粉末に樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から選ばれるいずれか一種と、0.001〜3質量%の重金属不活性化剤及び/又は活性炭とをインテグラルブレンド法で添加し、混練することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物の製造方法。
  2. 前記リン酸の添加量が、磁石合金粉の粉末重量当たり、それぞれ0.1〜2mol/kgであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法。
  3. 複合金属リン酸塩被膜を形成した後、この磁石合金粉スラリーから溶液を分離除去し、減圧下、100℃以上の条件で熱処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法。
  4. 前記活性炭は、化学式がCの活性炭素であり、かつ粒径が100μm以下のものを50質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法。
  5. 前記複合金属リン酸塩被膜が、Al、Zn、Mn、Cu、又はCaから選ばれる1種以上を金属成分とする金属リン酸塩をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかの製造方法により得られる樹脂結合型磁石用組成物。
  7. 請求項6に記載の樹脂結合型磁石用樹脂組成物を、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法又は射出プレス成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなる樹脂結合型磁石。
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