JP2018056337A - 希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法、その磁石粉末を用いたボンド磁石用樹脂組成物及びボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面被覆が施されて、耐候性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られる製造方法、及びボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石の製造方法を提供する。【解決手段】希土類−鉄−窒素系ボンド磁石に用いられる希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造するにあたり、希土類酸化物粉末と鉄粉末の原料粉末に還元剤粉末を所定の割合で混合し、不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得たあと、アンモニアと水素との混合気流中で窒化処理して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を対象として、湿式処理後の解砕された磁石粉末を加熱乾燥させる際に、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤を用いる。【選択図】なし
Description
本発明は、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法、ボンド磁石用樹脂組成物及びボンド磁石に関するものであり、詳しくは、表面被覆が施されて、耐候性に優れた希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られる製造方法、及びその磁石粉末を用いたボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石に関する。
従来、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石などが、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモーターやセンサーなどとして組込まれ、使用されている。これら磁石は、主に焼結法で製造されるが、脆く、薄肉化しにくいため複雑形状への成形は困難であり、また焼結時に15〜20%も収縮するため寸法精度を高められず、研磨等の後加工が必要で、用途面で大きな制約を受けている。
これに対し、ボンド磁石(樹脂結合型磁石)は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいは、硬化剤との併用によりエポキシ樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとし、これに磁石合金粉を混練し、得られたコンパウンドを磁場中成形することにより作製され、形状の自由度に優れ、複雑な形状及び一体成形が可能であるという利点を有し、磁気特性も優れた磁石として新しい用途に採用が進んでいる。
希土類元素を含む鉄系磁石合金粉を、樹脂バインダーと混練してボンド磁石を製造する場合、該磁石合金粉を150μm以下に粉砕する必要がある。粉砕は不活性ガスまたは有機溶媒中で行うが、粉砕後の磁石合金粉は極めて活性であり、大気に触れると該磁石合金粉は急激に酸化が進み磁気特性を劣化させるので、微粉砕後に、僅かな酸素を不活性雰囲気に導入して徐酸化する方法が採られている。
こうしたボンド磁石の中でも、特に、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉を用いたボンド磁石は、塩水中で錆が発生しやすいため、例えば、成形体表面に熱硬化性樹脂等のコーティング膜を形成することで発錆を抑制したり、また、成形体表面にリン酸塩含有塗料による被覆処理を施したりすることで発錆を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上記方法で作製された磁石合金粉でも、塩水中のような腐食性の厳しい環境下では、錆の抑制に対して十分に満足できるものではなかった。
また、粉末表面に燐酸塩処理した後でクロム酸塩処理を行うこと(例えば、特許文献2参照)、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどの高分子被膜を形成すること(例えば、特許文献3参照)、さらには、NiとSnの金属めっきをすること(例えば、特許文献4参照)などの技術も提案されている。
しかし、上記いずれかの方法を、例えば、Nd−Fe−B系やSm−Fe−N系ボンド磁石用合金粉末に適用すれば、耐酸化性は向上するものの、粉末表面の性状が荒れて磁気特性が劣化してしまう。また、被膜形成して充分な耐酸化性効果を得るためには、数10μm程度の膜厚にする必要があることから、磁気特性を発現する材料の体積分率が低下し、磁気特性の低下を招いてしまう。また、上記いずれかの方法では、被膜を形成する際に微粉末同士の凝集も起こることから、磁気異方性の方向が不揃いになり、磁石成形体の磁気特性の低下が避けられなかった。
そこで、希土類−鉄−窒素系ボンド磁石の耐候性の改善のために以下の技術が提案されている。
例えば、本出願人は、希土類−鉄合金の製造に還元拡散法を採用すれば、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できるので溶解法に比べてコスト的に有利とされていることから、原料粉を還元拡散熱処理して作製した合金を窒化し、得られた希土類−鉄−窒素合金の粗粉末を微粉砕しながら表面を被覆することで、耐酸化性を高める提案をしている(特許文献5参照)。
例えば、本出願人は、希土類−鉄合金の製造に還元拡散法を採用すれば、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できるので溶解法に比べてコスト的に有利とされていることから、原料粉を還元拡散熱処理して作製した合金を窒化し、得られた希土類−鉄−窒素合金の粗粉末を微粉砕しながら表面を被覆することで、耐酸化性を高める提案をしている(特許文献5参照)。
また、希土類元素を含む鉄系磁石合金粉末に、先ず、鉄と希土類元素の金属リン酸塩からなる複合金属リン酸塩被膜を形成し、次に、この複合金属リン酸塩被膜の表面に特定のシリケート被膜を形成することで、腐食環境下でも錆が発生せず、耐食性および樹脂密着性に優れる希土類元素を含む磁石合金粉が得られ、さらには、このシリケート被膜の表面上に、必要により樹脂バインダーに対して親和性のあるカップリング剤処理被膜を形成することで、その性能がより高められることも提案し、さらに耐酸化性を高めることができている(特許文献6)。
しかし、上記方法で作製した磁石合金粉は、高温高湿度の環境下では磁気特性の低下が非常に少ないものの、この磁石合金粉を用いて作製したボンド磁石を塩水中に24時間浸漬すると、赤錆の発生を多少は低減できるが完全になくすことはできなかった。また、上記方法で作製した磁石合金粉は、バインダー樹脂との界面に射出成形時の熱歪に起因する応力集中が起こりやすく、また、バインダー樹脂との親和性が不充分であり、そのためボンド磁石としての成形体の機械的強度が低く、厳しい加工を施すと破壊するなどの問題があった。
しかし、上記方法で作製した磁石合金粉は、高温高湿度の環境下では磁気特性の低下が非常に少ないものの、この磁石合金粉を用いて作製したボンド磁石を塩水中に24時間浸漬すると、赤錆の発生を多少は低減できるが完全になくすことはできなかった。また、上記方法で作製した磁石合金粉は、バインダー樹脂との界面に射出成形時の熱歪に起因する応力集中が起こりやすく、また、バインダー樹脂との親和性が不充分であり、そのためボンド磁石としての成形体の機械的強度が低く、厳しい加工を施すと破壊するなどの問題があった。
また、近年、家電機器用モーター、自動車用センサーやモーターは、海外で部品を組み立てるため船などによる輸送が必要となり、その使用環境、輸送環境がさらに厳しくなり、また機器を小型化するため、上記課題とともに磁気特性にも優れた磁石粉末が要求されていた。
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点に鑑み、表面被覆が施されて、耐候性に優れたボンド磁石用希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られる製造方法、得られた磁石粉末を用いたボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、希土類−鉄−窒素系ボンド磁石に用いられる希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造するにあたり、
希土類酸化物粉末と鉄粉末の原料粉末に還元剤粉末を所定の割合で混合し、不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得たあと、アンモニアと水素との混合気流中で窒化処理して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を対象として、湿式処理後の解砕された磁石粉末をメルカプトベンゾチアゾールが含まれる有機溶剤中で撹拌してから加熱乾燥を行うことで希土類−鉄−窒素系磁石粉末が表面被覆されて、これを含むボンド磁石の耐候性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
希土類酸化物粉末と鉄粉末の原料粉末に還元剤粉末を所定の割合で混合し、不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得たあと、アンモニアと水素との混合気流中で窒化処理して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を対象として、湿式処理後の解砕された磁石粉末をメルカプトベンゾチアゾールが含まれる有機溶剤中で撹拌してから加熱乾燥を行うことで希土類−鉄−窒素系磁石粉末が表面被覆されて、これを含むボンド磁石の耐候性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、還元拡散法による希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
希土類酸化物粉末と、鉄粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程と、
この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得る工程と、
引き続き、得られた母合金を含む反応生成物を不活性ガス雰囲気中で冷却する工程と、
その後、不活性ガスを排出してから、アンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、この気流中で反応生成物を昇温し、窒化処理して磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る工程と、
次に、該窒化処理生成物塊を水中に投入して崩壊させた後、得られたスラリーを酸洗浄と水洗浄で湿式処理して得られた磁石粗粉末を有機溶剤中で解砕して磁石粉末を得る工程と、
該磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、分離された磁石粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中で撹拌して表面被覆処理する工程と、
得られた表面被覆磁石粉末を加熱して乾燥処理する工程と、を有することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
希土類酸化物粉末と、鉄粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程と、
この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得る工程と、
引き続き、得られた母合金を含む反応生成物を不活性ガス雰囲気中で冷却する工程と、
その後、不活性ガスを排出してから、アンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、この気流中で反応生成物を昇温し、窒化処理して磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る工程と、
次に、該窒化処理生成物塊を水中に投入して崩壊させた後、得られたスラリーを酸洗浄と水洗浄で湿式処理して得られた磁石粗粉末を有機溶剤中で解砕して磁石粉末を得る工程と、
該磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、分離された磁石粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中で撹拌して表面被覆処理する工程と、
得られた表面被覆磁石粉末を加熱して乾燥処理する工程と、を有することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記表面被覆処理工程において、有機溶剤中のメルカプトベンゾチアゾールの量は、投入される希土類−鉄−窒素系磁石粉末量に対して1重量%以上6重量%以下であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明または第2の発明のいずれかにおいて、前記有機溶剤が、エタノールまたは2−プロパノール(IPA)から選ばれた1種以上のアルコールを含むことを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
一方、本発明の第4の発明によれば、第1〜3の発明のいずれかのメルカプトベンゾチアゾールで表面被覆された希土類−鉄−窒素系磁石粉末と、樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有してなるボンド磁石用樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明のボンド磁石用樹脂組成物を、射出成形法、押出成形法、熱間圧縮成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなるボンド磁石が提供される。
本発明は、希土類−鉄−窒素系磁石粉末を加熱し乾燥処理する工程において、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中に磁石粉末を入れて撹拌してから加熱乾燥を行うので、メルカプトベンゾチアゾールにより磁石粉末が表面被覆される。そのため、この磁石粉末を樹脂バインダーに配合すれば高い磁気特性を維持したまま、耐候性が優れた希土類−鉄−窒素系ボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石を得ることができる。
従って、本発明によって得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末を用いたボンド磁石用樹脂組成物を成形することで、高い磁気特性を有するとともに、耐候性に優れているボンド磁石が得られる。このボンド磁石は、例えば、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器等に至る幅広い分野において極めて有用であるため、その工業的価値は非常に高く、産業の発達に大いに寄与するものである。
以下、本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法、得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末を用いた、高磁気特性を有し、耐候性に優れるボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石について詳しく説明する。
1.希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法は、還元拡散法による希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
希土類酸化物粉末と、鉄粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得る工程と、引き続き、得られた母合金を含む反応生成物を不活性ガス雰囲気中で冷却する工程と、その後、不活性ガスを排出してから、アンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、この気流中で反応生成物を昇温し、窒化処理して磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る工程と、次に、該窒化処理生成物塊を水中に投入して崩壊させた後、得られたスラリーを酸洗浄と水洗浄で湿式処理して得られた磁石粗粉末を有機溶剤中で解砕して磁石粉末を得る工程と、該磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、分離された磁石粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中で撹拌して表面被覆処理する工程と、得られた表面被覆磁石粉末を加熱して乾燥処理する工程と、を有することを特徴としている。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法は、還元拡散法による希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
希土類酸化物粉末と、鉄粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得る工程と、引き続き、得られた母合金を含む反応生成物を不活性ガス雰囲気中で冷却する工程と、その後、不活性ガスを排出してから、アンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、この気流中で反応生成物を昇温し、窒化処理して磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る工程と、次に、該窒化処理生成物塊を水中に投入して崩壊させた後、得られたスラリーを酸洗浄と水洗浄で湿式処理して得られた磁石粗粉末を有機溶剤中で解砕して磁石粉末を得る工程と、該磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、分離された磁石粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中で撹拌して表面被覆処理する工程と、得られた表面被覆磁石粉末を加熱して乾燥処理する工程と、を有することを特徴としている。
以下、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造について、工程ごとに処理の条件などを詳細に説明する。
1)希土類−鉄母合金の製造
1a)原料粉末の混合
まず、磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、ろ過後に乾燥する。
1a)原料粉末の混合
まず、磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、ろ過後に乾燥する。
本発明では、水中に酸化物粉末を分散させた後、遠心分離し、その上澄み液を使って、溶出塩素濃度を分析し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下となる混合粉末を用いるようにする。塩素イオン濃度の測定方法については、特に限定されるわけではないが、陰イオンクロマトグラフィによることができる。
鉄化合物粉末としては、酸化鉄;Fe2O3、FeO、Fe3O4、オキシ水酸化鉄;FeOOH、水酸化鉄(II);Fe(OH)2、水酸化鉄(III);Fe(OH)3が好ましく使用できる。また、塩化物出発の酸化物等を化合物として用いることもできるが、塩素が含まれるために、混合・乾燥まで行った後に、酸素含有雰囲気、例えば大気中で800℃以上の温度で焙焼することが望ましい。
これらは、後に生成される希土類−鉄母合金の粒子径を小さくするため、鉄化合物粉末の粒子径は、平均粒子径で3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。これは、平均粒子径が3μmを超えると後に生成される希土類−鉄母合金の粒子径が鉄化合物粉末の粒子径以上となるため、大きな粒子ができやすく保磁力が低下するほか、窒化処理の際に粒子内の窒化不足が起きる要因となるためである。
希土類化合物粉末としては、特に制限されないが、Sm、Gd、Tb、Ceから選ばれる少なくとも1種類の元素、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる少なくとも1種類の元素が含まれる、希土類酸化物、希土類水酸化物から選ばれる1種以上であるものが好ましい。中でもSmが含まれる希土類化合物は、本発明の効果を顕著に発揮させることが可能になるので特に好ましい。
Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類元素全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上にすることが好ましい。化合物の形態としては酸化物、水酸化物が好ましく、粒子径については固相内拡散がしやすく、不均一な拡散が起こらないように鉄化合物の粒子径より小さいことが好ましい。ただし0.1μm未満の微粉末を使用する場合は、鉄希土類複合酸化物を多く生成させる要因となるので好ましくない。
Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類元素全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上にすることが好ましい。化合物の形態としては酸化物、水酸化物が好ましく、粒子径については固相内拡散がしやすく、不均一な拡散が起こらないように鉄化合物の粒子径より小さいことが好ましい。ただし0.1μm未満の微粉末を使用する場合は、鉄希土類複合酸化物を多く生成させる要因となるので好ましくない。
混合方法としては、乾式混合、湿式混合があるが、乾式混合は細かい粉を扱うため静電気や大気中の水分などの影響によって粉体同士が凝集を起こしたり混合装置内壁に付着したりしてしまうなど、均一な混合が難しいため、湿式混合が好ましい。また、その他の方法としては、上記したように晶析による鉄と希土類の共沈粉末を製造する方法もあるが、希土類塩が非常に細かい状態で微分散しているため、水素による還元熱処理時に鉄希土類複合酸化物を多量に生成する問題が起こるため、好ましくない。
湿式混合において、希土類化合物粉末の粒子径が鉄化合物粉末の粒子径より大きい場合などは、ボールミル混合やビーズミル混合といった媒体を利用して希土類化合物粉末の粒子径を鉄化合物粉末よりも小さくする混合方法を用いることが好ましい。また、希土類化合物粉末が鉄化合物粉末の粒子径より小さい場合は、攪拌羽根を利用した攪拌混合や、粉砕されにくい大きさのボールや比重の軽いボールを使用したボールミル混合などの方法にて混合することが好ましい。
このとき、予め混合に用いる鉄化合物、希土類化合物のいずれかを水に分散させて、水溶液のpHを確認しておくことが望ましい。水溶液が酸性を示す場合は、溶媒に有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール、もしくはジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、ジエチルケトンなどが好ましいが、エタノールもしくはイソプロピルアルコールがより好ましく、かつ有機溶媒中に水分を含まないものがより好ましい。
一方、鉄化合物、希土類化合物のいずれかを水に分散させた水溶液がアルカリ性を示す場合は、溶媒に水、あるいは、有機溶媒を用いることができる。
原料化合物を水に分散させたときに分散溶液が酸性を示す場合に有機溶媒を用いるのは、溶媒が水の場合、例えば、希土類化合物として希土類酸化物を用いた場合、希土類酸化物の一部が水中に溶解し、その後、再析出し、微細な希土類水酸化物となって生成し、この希土類水酸化物が存在することにより、次工程の水素還元時に鉄希土類複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)が形成されるためである。さらには、この鉄希土類複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)が存在することにより、アルカリ土類金属との還元熱処理工程で大きな発熱を生じて最終的に保磁力を低下させてしまうか、もしくは、生成する希土類−鉄母合金粒子が局部的に粒成長を引き起こして、窒化処理時に粒子内部が窒化不足に陥る恐れがあるからである。
湿式混合したスラリーは、次にろ過し、乾燥させるが、乾燥方法は定置乾燥、流動乾燥、気流乾燥、攪拌乾燥、真空乾燥、振動乾燥等どの方法を用いても構わない。
得られた鉄化合物および希土類化合物からなる混合粉末においては、水に分散させたときに、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下であることを確認して用いることが必要である。これは、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%を超える混合粉末を用いると、次の水素による還元熱処理中に発生する水蒸気中に塩化水素として溶け込んだ酸性水蒸気が希土類化合物を攻撃し、溶解、加熱による分解によって鉄化合物もしくはすでに還元された鉄粉末中に希土類化合物が微分散して、鉄希土類複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成を促す方向へ急激に進むためである。
混合粉末は、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下でなければならないために、原料粉の鉄化合物、希土類化合物として塩化物は用いず、酸化物等を用いる場合でも、その原材料として塩化物出発のものは使用しないことが好ましい。なお、塩化物出発の酸化物等を化合物として用いる場合には、前記の通り、混合・乾燥まで行った後に、酸素含有雰囲気、例えば大気中で800℃以上の温度で焙焼することにより混合粉末の塩素イオン濃度を低下させることが好ましい。
上記工程で得られた前記混合粉末に対して、水素気流中で熱処理して、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成量を6重量%以下とする工程を加えることができる。
水素還元は、上記工程で作製した混合粉末を、水素気流中にて熱処理することで行われる。熱処理温度範囲としては500〜800℃が好ましい。
これは、500℃を下回ると、還元が不十分となり酸化鉄が残りやすくなるほか、還元後の結晶が不安定なため、大気に触れるとすぐに酸化して再び酸化鉄に戻ってしまうためである。熱処理温度が800℃を超えると、還元はされるが高温のため出発原料の粒子が粒成長して粒子径が大きくなってしまい、次工程の希土類−鉄母合金を得る時点では保磁力を低下させるほどまで粒子径が大きくなるためである。熱処理温度範囲は550〜700℃がより好ましい。熱処理時間は特に限定されないが、例えば1〜5時間とすることができる。また、水素流量も特に限定されないが、例えば1〜100ml/(min・g)とすることができる。
これは、500℃を下回ると、還元が不十分となり酸化鉄が残りやすくなるほか、還元後の結晶が不安定なため、大気に触れるとすぐに酸化して再び酸化鉄に戻ってしまうためである。熱処理温度が800℃を超えると、還元はされるが高温のため出発原料の粒子が粒成長して粒子径が大きくなってしまい、次工程の希土類−鉄母合金を得る時点では保磁力を低下させるほどまで粒子径が大きくなるためである。熱処理温度範囲は550〜700℃がより好ましい。熱処理時間は特に限定されないが、例えば1〜5時間とすることができる。また、水素流量も特に限定されないが、例えば1〜100ml/(min・g)とすることができる。
水素還元装置としては、定置式のマッフル炉、昇降炉、回転式のキルン、連続製造可能なプッシャー炉、ローラーハースキルンなどがあるが、回転式のキルンのようにガスの反応効率の良い装置が、短時間で還元が終了するため好ましい。定置式のマッフル炉、昇降炉でも時間をかければ水素還元は可能であるが、より好ましくは、混合粉末からの水蒸気の排出、水素ガスの浸透が遅滞なく行われるように匣鉢内の混合粉末の層厚を薄くするとか、導入ガス量を多くするとか、容器をメッシュ式にするなど様々な方法で反応効率を上げることが望ましい。
上記方法により水素還元を行うことで、得られる還元混合粉末中には、希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の量を少なくすることができる。
1b)還元拡散、および、反応生成物の冷却
次に、上記工程で得られた還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することによりTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄系母合金を得る。アルカリ土類金属量は、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であることが好ましい。
次に、上記工程で得られた還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することによりTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄系母合金を得る。アルカリ土類金属量は、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であることが好ましい。
還元拡散法は、前記したように希土類酸化物粉末と鉄粉末、Caなどのアルカリ土類金属の還元剤との混合物を不活性ガス雰囲気中、例えば900〜1180℃で加熱した後、反応生成物を湿式処理して副生したCaOおよび残留Caなどの還元剤成分を除去することによって、直接希土類−鉄系母合金粉末を得る方法である。
本発明では、鉄粉末と希土類酸化物粉末、さらには希土類鉄複合酸化物が存在する還元混合物粉末と還元剤とを混合して、反応容器に投入し、900〜1180℃の温度で熱処理することによって、希土類酸化物と他に残る酸化物原料等を還元するとともに、還元された希土類元素を鉄粉末中に拡散させてTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄母合金を生成させる。
ここで、前工程で得られた還元混合物中の各原料化合物粉末は、それぞれの粉体特性によって分離しないように還元剤とともに、均一に混合する必要がある。混合方法としては、例えばリボンブレンダー、タンブラー、S字ブレンダー、V字ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、振動ミルなどが使用できる。
還元剤としては、アルカリ土類金属が使用でき、取り扱いの安全性とコストの点で、目開き4.00mm以下に分級した粒状金属カルシウムもしくは金属マグネシウムが好ましい。上記還元剤は上記還元混合物粉末と混合するか、金属蒸気が還元混合物粉末と接触しうるように分離しておく。還元剤と還元混合物中粉末とを混合して還元拡散を行えば、反応生成物が多孔質となり、引き続き行われる窒化処理を効率的に行うことができるので好ましい。
上記還元混合物粉末や還元剤とともに、後の湿式処理工程において反応生成物の崩壊を促進させる添加物を混合することも効果的である。崩壊促進剤としては、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩や酸化物を用いることができ、還元混合物粉末などと同時に均一に混合する。ここで不活性ガスは、アルゴン、ヘリウムから選ばれた1種類以上が用いられる。
還元拡散を行う時、熱処理温度は900〜1180℃の範囲とすることが必要である。900℃未満では、拡散に要する時間が非常に長くなり、生産性に欠けるとともに、鉄粉末に対して希土類元素の拡散が不均一となり、次工程の窒化処理で得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の保磁力や角形性が低下するため好ましくない。また、1180℃を超えると、生成する希土類−鉄母合金が粒成長を起こすため、次工程の窒化処理で均一に窒化することが困難になり磁石粉末の飽和磁化と角形性、保磁力が低下する場合があり、好ましくない。また、希土類元素の蒸発量も非常に多くなり、これを補うために過剰に希土類元素が必要となり高コストにもなる。熱処理温度が900〜1180℃ではこのような現象が起きないほか、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子との混合粉末となるが、粒子同士の焼結は弱く、窒化処理後の解砕のときに結晶歪みを起こしにくいという利点もある。
ここで、還元拡散反応で得られる反応生成物は、例えば、還元剤として金属カルシウムを用いた場合には、Th2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄母合金と酸化カルシウム、未反応の余剰の金属カルシウムなどからなる塊状の混合物である。さらに粒状金属カルシウムを原料粉末に混合して還元拡散反応させた場合には、多孔質の塊状混合物となっている。
これに対して、希土類元素及び遷移金属を酸等により溶解してイオン化し、溶液状態で完全に混合し、沈殿反応により沈殿させ、粒度分布のシャープな沈殿物を得て、この沈殿物を焼成して、粒子内に希土類元素と遷移金属元素の微視的な混合がなされた金属酸化物を生成し、その後還元拡散法を用いて、粒子形状が整った均質な合金粉末を得る方法では、希土類原料として希土類金属が用いられるため、還元拡散法で用いられる希土類酸化物原料に比べて高価となる。特に、希土類元素が、優れた磁気特性をもたらすSmの場合によるコスト差は顕著である。また粒度調整で発生する不要な粉末は、製品収率を低下させ、粉末コストをさらに引き上げてしまう。また沈殿物から焼成、還元拡散する方法では、得られた合金中に存在するα−Fe相などを無くすために均質化熱処理工程が必要であり、さらに窒素を導入する前に均質化熱処理した合金を粗粉砕し、粒度調整する工程が必要となるなど粉末コストをさらに引き上げてしまうため好ましくない。
次の工程では、還元拡散反応後の反応生成物に対して、雰囲気ガスを不活性ガスとしたまま変えずに、引き続き冷却する。冷却としては、300℃以下にするのが好ましく、50〜280℃、より好ましくは100〜250℃に冷却する。冷却後の温度が300°Cを越えていると、次工程の窒化の際に反応生成物との窒化反応が急激に進んでしまい、α−Fe相を増加させてしまうことがあるので、300°Cよりも低い温度まで冷却するのが望ましい。これは、300°Cを越える温度では、反応生成物が活性であるために合金が急激に窒化されて、Th2Zn17型結晶構造を有する金属間化合物の一部がFeリッチ相とSmNとに分解するものと推測されるからである。
冷却後に、多孔質の塊状混合物である反応生成物を湿式処理しないで、雰囲気ガスを不活性ガスから、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスに変えて、次の窒化工程に移る。このとき反応生成物が大気中に曝されると、反応生成物中の活性な希土類−鉄母合金粉末が酸化されて反応性が失活し、結果として窒化の度合いをばらつかせるので、大気(酸素)に曝されないように窒化工程に持ち込むことが必要である。
2)希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造
2a)窒化処理
上記したように還元拡散処理を行い、引き続き、冷却して得られた、前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る。
2a)窒化処理
上記したように還元拡散処理を行い、引き続き、冷却して得られた、前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る。
窒化ガスとしては、少なくともアンモニアと水素とを含有している混合ガスが必要であり、反応をコントロールするために、アルゴン、窒素、ヘリウムなどを混合することができる。窒化ガスの量は、磁石粉末中の窒素量が3.3〜3.7重量%となるに十分な量であることが好ましい。
全混合ガス圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.2〜0.6が好ましく、0.3〜0.5となるようにするのがより好ましい。アンモニア分圧が0.2未満であると、長時間かけても母合金の窒化が進まず、窒素量を3.3〜3.7重量%とすることができず、得られる磁石粉末の飽和磁化と保磁力が低下してしまう。
少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを、窒化温度である350〜500°C、好ましくは400〜480°Cで供給して、反応生成物中の希土類−鉄系母合金を窒化熱処理する。温度が350°C未満であると、反応生成物中の希土類−鉄系母合金に3.3〜3.7重量%の窒素を導入するのに長時間を要するので工業的優位性がなくなることがある一方、500°Cを超えると、主相であるSm2Fe17相が分解してα−Feが生成するので、最終的に得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が低下することがある。なお、前工程で反応生成物を冷却した冷却温度から窒化温度までは、毎分4〜10℃の速度で比較的急速に昇温することが生産効率を高める上で望ましい。また、冷却温度での保持時間は、特に必要はない。保持しても窒化に対する効果はないからである。
窒化処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、100〜300分が好ましく、140〜250分とするのがより好ましい。100分未満では、窒化が不十分になり、一方、300分を超えると窒化が進みすぎることがある。
本発明においては、窒化処理に引き続いて、さらに水素ガス、または窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で合金粉末を熱処理することが望ましい。特に好ましいのは、水素ガスで熱処理した後に窒素ガスおよび/またはアルゴンガスで熱処理をすることである。
これにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末を構成する個々の結晶セル内の窒素分布をさらに均一化することができ、角形性を向上させることができる。熱処理の保持時間は、30〜200分が好ましく、60〜250分がより好ましい。
2b)湿式処理
次に、上記工程で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る。
次に、上記工程で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る。
上記したように、窒化後の希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理することで崩壊させ、当該窒化処理生成物塊に含まれていた還元剤成分の副生成物(酸化カルシウムや窒化カルシウムなど)を希土類−鉄−窒素系磁石粉末から分離除去することができる。
窒化終了後の磁石粉末に対して湿式処理を行うのは、窒化する前に希土類−鉄系母合金を含む反応生成物を湿式処理すると、この湿式処理過程で希土類−鉄系母合金表面が酸化されて、その後の希土類−鉄系母合金の窒化の度合いをばらつかせるからである。
また、窒化後に窒化処理生成物塊を長期間大気中に放置すると、カルシウムなどの還元剤成分の酸化物が生成し除去しにくくなったり、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の表面の酸化によって、窒化が不均一になり主相の比率の低下とニュークリエーションの核の生成によって角形性が低下したりする。したがって、大気中に放置された窒化処理生成物塊は、反応容器から取り出してから2週間以内に湿式処理するのが好ましい。
湿式処理は、まず窒化処理生成物塊を水中に投入して塊を崩壊させ、デカンテーション−注水−デカンテーションを繰り返し行い、生成したCa(OH)2の多くを除去する。さらに必要に応じて、残留するCa(OH)2を除去するために、酢酸、塩酸から選ばれる1種以上を用いて酸洗浄する。このときの水溶液の水素イオン濃度はpH4〜7の範囲で実施するとよい。原料混合時に過剰に希土類元素が投入されている場合、還元拡散処理時に、過剰な希土類元素の影響で、主相であるTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄合金の周りに、希土類元素量が多く存在して飽和磁化を低下させる非磁性相が生成されている場合があり、主相の希土類元素量の好ましい範囲である23.2〜23.6重量%になるように酸洗を行い、希土類元素量が多い非磁性相を除去しておくことが好ましい。
上記酸洗浄処理の終了後には、例えば水洗し、アルコールあるいはアセトン等の有機溶媒で脱水し、不活性ガス雰囲気中または真空中で乾燥することで希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を得ることができる。
上記で得られる希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であり、上記1次粒子の長軸粒子径をSEMによって確認し測定した時、長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率は5%未満となる。長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率は、2%未満であると好ましい。これは、1次粒子で、長軸粒子径が4μm以上の粒子が増えていると、粒子断面を確認すると窒化が粒子中心部まで進んでおらず、窒化不足となっている粒子が存在することが確認されるほか、希土類−鉄−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、粒子が大きいために飽和磁化、角形性、保磁力を低下させる要因にもなるからである。
2c)解砕
上記のように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であるため、このような磁石粗粉末を溶媒とともに粉砕機に投入し解砕するにあたっては、上記1次粒子塊は粉砕せず、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕し、その後、ろ過、乾燥することが好ましい。
上記のように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であるため、このような磁石粗粉末を溶媒とともに粉砕機に投入し解砕するにあたっては、上記1次粒子塊は粉砕せず、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕し、その後、ろ過、乾燥することが好ましい。
解砕に用いる粉砕機は、固体を取り扱う各種の化学工業において広く使用され、種々の材料を粉砕するための粉砕装置であれば、特に限定されるわけではない。その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で、媒体撹拌ミルまたはビーズミルによる湿式粉砕方式によることが好適である。粉砕条件としては、上記したように、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕する程度が好ましく、一次粒子が壊れるほどの強い粉砕とならないよう適宜条件を設定すればよい。
解砕に用いる溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。粉砕後所定の目開きのフィルターを用いてろ過し、乾燥して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得るようにする。
解砕時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉末の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、0.1〜3時間、好ましくは0.1〜2時間とする。これにより、2次粒子を形成している希土類−鉄−窒素系磁石粉末が焼結している部分で各粉末の分離が進む。解砕後の磁石粉末の平均粒径は1〜5μmとなっていることが好ましく、解砕時間等の解砕条件を適宜選択して平均粒径を調整する必要がある。平均粒径は、より好ましくは2〜4μmとなることが良い。
解砕時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉末の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、0.1〜3時間、好ましくは0.1〜2時間とする。これにより、2次粒子を形成している希土類−鉄−窒素系磁石粉末が焼結している部分で各粉末の分離が進む。解砕後の磁石粉末の平均粒径は1〜5μmとなっていることが好ましく、解砕時間等の解砕条件を適宜選択して平均粒径を調整する必要がある。平均粒径は、より好ましくは2〜4μmとなることが良い。
3)磁石粉末の表面被覆処理
次に、解砕を終えた前記希土類−鉄−窒素系磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、乾燥処理の際にメルカプトベンゾチアゾールにより磁石粉末を表面被覆する。
次に、解砕を終えた前記希土類−鉄−窒素系磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、乾燥処理の際にメルカプトベンゾチアゾールにより磁石粉末を表面被覆する。
3a)固液分離
上記解砕後のスラリーは、固液分離装置内で処理して、含液率を調整する。含液率が5〜30重量%の希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキとすることが好ましい。より好ましい含液率は、10〜30重量%である。上記希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキの含液率が30重量%を超えると、次の工程で加熱乾燥処理する時に磁石粉末が凝集して塊状となってしまい、別工程としてそれらを解砕する処理が必要となることがあり、加えて、加熱乾燥処理において、処理時間が長くなり、生産効率が低下することがある。また、含液率が5重量%未満であると、希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末が大気中で発火したり、酸化が進行して発熱したりして磁気特性が低下してしまうことがある。
上記解砕後のスラリーは、固液分離装置内で処理して、含液率を調整する。含液率が5〜30重量%の希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキとすることが好ましい。より好ましい含液率は、10〜30重量%である。上記希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキの含液率が30重量%を超えると、次の工程で加熱乾燥処理する時に磁石粉末が凝集して塊状となってしまい、別工程としてそれらを解砕する処理が必要となることがあり、加えて、加熱乾燥処理において、処理時間が長くなり、生産効率が低下することがある。また、含液率が5重量%未満であると、希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末が大気中で発火したり、酸化が進行して発熱したりして磁気特性が低下してしまうことがある。
固液分離装置としては、ヌッチェ式ろ過機や遠心ろ過機等のフィルター式ろ過機、デカンタ型遠心分離機を使用できるが、フィルター式ろ過機では、ろ過性に対する粉体性状の影響が大きく、装置パラメータとして含液率を制御しにくい場合がある。また、希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末スラリーは、ろ過性が非常に悪いためにフィルターによるろ過に多大な時間がかかり、低含液率とすることが困難なことが多い。これらの事情を考慮して固液分離装置を選択する必要がある。
3b)表面被覆
固液分離を行った上記希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキは、メルカプトベンゾチアゾールを添加した有機溶剤中に投入し、撹拌を行い、希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末表面をメルカプトベンゾチアゾール被膜で均一に被覆する。
固液分離を行った上記希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキは、メルカプトベンゾチアゾールを添加した有機溶剤中に投入し、撹拌を行い、希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末表面をメルカプトベンゾチアゾール被膜で均一に被覆する。
本発明において用いるメルカプトベンゾチアゾールは、防錆剤などとして知られるベンゾチアゾール化合物の一種であり、メルカプト基を有し、ベンゾチアゾール特有の金属との結合力と酸化防止効果を有している。メルカプトベンゾチアゾールは、アルコキシ化されたものであってもよい。さらに、メルカプトベンゾチアゾールは純粋なものが好ましいが、類似構造を有するベンゾチアゾール系化合物が10質量%程度まで含まれていても良い。
本発明では、優れた磁気特性を引き出すために微粉化された磁石粉末自体がメルカプトベンゾチアゾール被膜で均一に被覆されることにより、酸化進行などが抑制されて安定化されることが肝要である。
用いられる有機溶剤は、特に限定されないが、エタノールまたは2−プロパノール(IPA)から選ばれた1種以上のアルコールを含むことが好ましい。
有機溶剤へのメルカプトベンゾチアゾールの添加量は、解砕後の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の粒径、表面積等に関係するので一概には言えないが、通常、投入される希土類−鉄−窒素系磁石粉末量に対して1重量%〜6重量%であり、より好ましくは1.5重量%〜5重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜4重量%とすることが好ましい。
メルカプトベンゾチアゾールの添加量が希土類−鉄−窒素系磁石粉末量に対して1重量%未満であると、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の表面被覆処理が十分に行なわれないために耐候性が改善されず、また大気中で加熱乾燥処理を行うと酸化、発熱して磁気特性が極端に低下してしまう。また、6重量%を超えると希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面の被覆量が増加し、希土類−鉄−窒素系磁石粉末中の含有量も増加するため磁気特性の低下が起きてしまう。また、耐候性の向上も飽和してしまい、被覆量を増加させる効果は得られない。
メルカプトベンゾチアゾールの添加量が希土類−鉄−窒素系磁石粉末量に対して1重量%未満であると、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の表面被覆処理が十分に行なわれないために耐候性が改善されず、また大気中で加熱乾燥処理を行うと酸化、発熱して磁気特性が極端に低下してしまう。また、6重量%を超えると希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面の被覆量が増加し、希土類−鉄−窒素系磁石粉末中の含有量も増加するため磁気特性の低下が起きてしまう。また、耐候性の向上も飽和してしまい、被覆量を増加させる効果は得られない。
上記のように投入される希土類−鉄−窒素系磁石粉末量に対してメルカプトベンゾチアゾール量が好ましい量であれば、当該希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面は充分な厚さのメルカプトベンゾチアゾール被膜で均一に被覆され、安定化される。本発明においては、優れた磁気特性を引き出すために微粉化された磁石粉末自体がメルカプトベンゾチアゾール被膜で均一に被覆され、酸化進行などが抑制されて安定化する。
ここで、均一に被覆されるとは、通常は、希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上がメルカプトベンゾチアゾール被膜で覆われることをいう。希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面を保護するために必要なメルカプトベンゾチアゾール被膜の厚さは、通常、平均で5〜100nmである。メルカプトベンゾチアゾール被膜の平均厚さが5nm未満であると、被覆効果が現れず十分な耐候性が得らない。また、被膜の平均厚さが100nmを超えると磁気特性が低下すると共にボンド磁石を作製する際の混練性や成形性が低下してしまう。
一方、メルカプトベンゾチアゾールを用いず希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面に被膜形成しないと、解砕後の希土類−鉄−窒素系合金粉末は表面被覆処理されていないので高品質の磁石粉末を製造することができない。
一方、メルカプトベンゾチアゾールを用いず希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面に被膜形成しないと、解砕後の希土類−鉄−窒素系合金粉末は表面被覆処理されていないので高品質の磁石粉末を製造することができない。
また、窒化処理後の希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕処理した後に、メルカプトベンゾチアゾール等の表面処理剤を添加しても、解砕後の磁石粉末は、磁力などによって互いに凝集しているため、当該磁石粉末の接触面には被膜処理が行われない。こうして得られた磁石粉末は、メルカプトベンゾチアゾール被膜の形成が不十分であるため、ボンド磁石用樹脂組成物作製時に樹脂バインダーと混練されると、接触、凝集していた磁石粉末が混練による剪断力で磁石粉末の一部で接触、凝集がほぐれ、被膜形成されていない活性な磁石粉末表面が露出することとなる。このため、このような希土類−鉄−窒素系磁石粉末を用いたボンド磁石用樹脂組成物を成形して得られたボンド磁石は、実用上重要な湿度環境下で容易に腐食が生じ、磁気特性が低下してしまう。特に、サマリウム−鉄−窒素系磁石合金のような核発生型の保磁力発現機構を示す磁石粉末では、一部にこのような領域が生じると著しく保磁力が低下してしまう。
メルカプトベンゾチアゾールの添加方法は、特に限定されず、例えば、有機溶剤にメルカプトベンゾチアゾールを添加すればよい。メルカプトベンゾチアゾールは、最終的に所望の濃度になれば良く、希土類−鉄−窒素系磁石粉末を有機溶剤中で撹拌する、撹拌開始前に一度に添加しても良いし、撹拌中に徐々に添加しても良い。しかし、撹拌で表面被覆処理がなされるように、常に有機溶剤中にメルカプトベンゾチアゾールを存在させなければならない。好ましくは、撹拌末期に所望のメルカプトベンゾチアゾール濃度となるように、撹拌に使用する有機溶剤にメルカプトベンゾチアゾールを添加して撹拌することが良い。撹拌装置の撹拌される液面には不活性ガスを供給して希土類−鉄−窒素系磁石粉末が酸化されにくい雰囲気とすることが望ましい。
この方法によれば、磁石粉末の解砕によって生じた接触で、凝集粒子が有機溶剤中で分散されることにより有機溶剤中に含まれるメルカプトベンゾチアゾールと反応し、有機溶剤中に実質的に酸素が含まれないことと相俟って、希土類−鉄−窒素系磁石粉末表面にメルカプトベンゾチアゾール被膜が形成される。
次に、得られた表面被覆希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末ケーキを加熱乾燥処理装置に移送し、引き続き、特定の排気速度で排気しながら、真空に保持して、あるいは不活性ガス中で、特定の温度範囲で加熱乾燥処理を行う。
この加熱乾燥処理には、ミキサー型乾燥機、処理物静置型の箱型乾燥機などを用いることができる。
この加熱乾燥処理には、ミキサー型乾燥機、処理物静置型の箱型乾燥機などを用いることができる。
本発明においては、上記のように磁石粉末に真空中又は不活性ガス中、70℃以上の温度で加熱乾燥処理を施すことが好ましく、さらに好ましくは、70℃〜100℃、より好ましくは、80℃〜90℃の温度範囲で加熱乾燥処理を施すことが良い。70℃未満で加熱乾燥処理を施すと、磁石粉末の乾燥が十分進まず、有機溶剤が磁石粉末から抜けないため磁気特性の低下につながることがあり、また、100℃を超える温度で加熱乾燥処理を施すと、メルカプトベンゾチアゾールが熱的なダメージを受け分解してしまい表面被覆効果が低下してしまい磁気特性の低下につながってしまうことがある。
加熱乾燥処理を真空中で行う場合には、処理槽内を1.33×103Pa以下、好ましくは6.66×102Pa以下の真空度に保持することが望ましい。真空度がこれよりも低真空であると、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の磁気特性が低下する場合がある。これは、真空度が低い場合には加熱乾燥処理の時間を長くしなければならないので、磁石粉末表面の酸化が一部で進行するためと考えられる。
また、加熱乾燥処理に必要な時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉末の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、なるべく短いほうが望ましい。例えば容積100リットルの攪拌型乾燥機にて磁石粉末50kgを処理する場合は2時間以内、特に90分以内とするのが好ましい。加熱乾燥処理時間が長くなるほど磁気特性が低下する。ただし、加熱乾燥処理時間が10分よりも短いと、被覆効果が十分発揮されるメルカプトベンゾチアゾール被膜が形成されない場合があり、好ましくない。
2.希土類−鉄−窒素系磁石粉末
本発明の製造方法で得られた希土類−鉄系磁石粉末は、希土類元素としてSm、Nd、Pr、Y、La、Ce、Gd、Dy、Tb、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種以上を5〜40原子%、鉄(Fe)を50〜90原子%含有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末であって、粉末表面に膜厚が5nmを超え100nm未満のメルカプトベンゾチアゾール被膜を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末である。特に好ましいのは、SmFeN系磁石粉末である。
本発明の製造方法で得られた希土類−鉄系磁石粉末は、希土類元素としてSm、Nd、Pr、Y、La、Ce、Gd、Dy、Tb、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種以上を5〜40原子%、鉄(Fe)を50〜90原子%含有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末であって、粉末表面に膜厚が5nmを超え100nm未満のメルカプトベンゾチアゾール被膜を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末である。特に好ましいのは、SmFeN系磁石粉末である。
また、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の平均粒径は1〜5μmであることが望ましい。平均粒径が1μm未満では製造コストが高くなり、5μmを超えると磁気特性が低下するので好ましくない。より好ましい平均粒径は2〜4μmである。
希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、粉末表面に膜厚が5nmを超え100nm未満のメルカプトベンゾチアゾール被膜を有していることが好ましい。
膜厚が5nm以下であると酸化して逆磁区の核となるα−Feが析出し保磁力が時間の経過とともに顕著に低下する。また、被膜として希土類−鉄−窒素系磁石粉末の表面を完全に被覆することができず樹脂変性を抑える効果は十分でなく成形性を顕著に改善できない。
一方、膜厚が100nm以上になると磁気特性を発現する材料の体積分率が低下することから磁気特性の低下を招いてしまう。なお、本発明の粉末表面に形成される被膜の膜厚は、被覆処理された希土類−鉄−窒素系磁石粉末の断面の電子顕微鏡写真から確認することができる。被膜の好ましい膜厚は、10nm以上90nm以下で、より好ましい膜厚は、20nm以上80nm以下である。
膜厚が5nm以下であると酸化して逆磁区の核となるα−Feが析出し保磁力が時間の経過とともに顕著に低下する。また、被膜として希土類−鉄−窒素系磁石粉末の表面を完全に被覆することができず樹脂変性を抑える効果は十分でなく成形性を顕著に改善できない。
一方、膜厚が100nm以上になると磁気特性を発現する材料の体積分率が低下することから磁気特性の低下を招いてしまう。なお、本発明の粉末表面に形成される被膜の膜厚は、被覆処理された希土類−鉄−窒素系磁石粉末の断面の電子顕微鏡写真から確認することができる。被膜の好ましい膜厚は、10nm以上90nm以下で、より好ましい膜厚は、20nm以上80nm以下である。
本発明により得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、粉末表面に形成されるメルカプトベンゾチアゾール被膜によって優れた耐候性を発揮するが、前記の膜厚であるために磁気特性を損なうこともない。
磁石粉末調製時の試料を振動試料磁力計にて常温で測定したとき、保磁力が705kA/m以上であり、また、この試料を温度80℃相対湿度90%雰囲気中で200時間放置した後の保磁力が570kA/m以上であることが好ましい。保磁力が705kA/m未満のものは、ボンド磁石に最低限必要な特性を満たさず、温度80℃相対湿度90%雰囲気中で200時間放置した後の保磁力が570kA/mを下回るものは、耐候性が不足するので、ボンド磁石の用途が制限される。
磁石粉末調製時の試料を振動試料磁力計にて常温で測定したとき、保磁力が705kA/m以上であり、また、この試料を温度80℃相対湿度90%雰囲気中で200時間放置した後の保磁力が570kA/m以上であることが好ましい。保磁力が705kA/m未満のものは、ボンド磁石に最低限必要な特性を満たさず、温度80℃相対湿度90%雰囲気中で200時間放置した後の保磁力が570kA/mを下回るものは、耐候性が不足するので、ボンド磁石の用途が制限される。
3.ボンド磁石用樹脂組成物
本発明のボンド磁石用樹脂組成物は、上記製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末と、樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有してなる希土類−鉄−窒素系ボンド磁石用樹脂組成物である。
本発明のボンド磁石用樹脂組成物は、上記製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末と、樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有してなる希土類−鉄−窒素系ボンド磁石用樹脂組成物である。
本発明は、ボンド磁石用希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造するにあたり、還元拡散法で得られた希土類−鉄系母合金を窒化処理して希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得て、次に、得られた窒化処理生成物塊を水中に投入して崩壊させた後、得られたスラリーを湿式処理して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を有機溶剤中で解砕し、固液分離し、分離して得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を加熱乾燥させる乾燥処理する工程において、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中に前記希土類−鉄−窒素系磁石粉末を入れて撹拌してから加熱乾燥を行うことにより、メルカプトベンゾチアゾールにより磁石粉末が表面被覆される。これにより、この磁石粉末を樹脂バインダーに配合すれば、高い磁気特性を維持したまま、耐候性が優れた希土類−鉄−窒素系ボンド磁石が得られるボンド磁石用樹脂組成物を調製することができる。
ここで、原料となる上記希土類−鉄−窒素系磁石粉末には、フェライト、アルニコ、希土類−鉄−硼素系磁石粉末など、ボンド磁石や圧密磁石の原料となる公知の各種磁石粉末を混合してもよい。
ここで、原料となる上記希土類−鉄−窒素系磁石粉末には、フェライト、アルニコ、希土類−鉄−硼素系磁石粉末など、ボンド磁石や圧密磁石の原料となる公知の各種磁石粉末を混合してもよい。
樹脂バインダーは、特に限定されることはなく、各種熱可塑性樹脂単体またはその混合物、あるいは、各種熱硬化性樹脂単体あるいはその混合物であり、それぞれの物性、性状等も、希土類−鉄−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用樹脂組成物として、所望の特性が得られる範囲で適宜選択されればよく、特に限定されることはない。
熱可塑性樹脂は、磁石粉末のバインダーとして働くものであれば、特に制限なく、従来公知のものを使用できる。その具体例としては、6ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、前出各樹脂系エラストマー等が挙げられ、これらのホモ重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品等が挙げられる。
これら熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、得られるボンド磁石に所望の機械的強度が得られる範囲で低い方が望ましい。また、熱可塑性樹脂の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状等、特に限定されないが、磁石粉末と均一に混合される点で、パウダー状が望ましい。
熱可塑性樹脂の配合量は、磁石粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜15重量部である。熱可塑性樹脂の配合量が5重量部未満であると、樹脂組成物の混練抵抗(トルク)が大きくなり、流動性が低下して磁石の成形が困難となり、一方、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。本発明の目的を損なわない範囲で、ボンド磁石用樹脂組成物の加熱流動性等を向上させるために、各種カップリング剤、滑剤や種々の安定剤等を配合することができる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ラジカル重合反応性を有する不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂などの樹脂が挙げられる。このほかに、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂が使用できる。これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が好ましい。また、重合度や分子量に制約されないが、150℃以下の温度では液状であり、25℃における粘度が5000mPa・s以下である樹脂が成形性の面から好適である。
不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと飽和多塩基酸及び/又は不飽和多塩基酸との重縮合反応により得られる不飽和ポリエステルと、当該エステルと共重合可能なモノマーよりなる熱硬化性樹脂である。
ここで、多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールSなどが挙げられ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
これら多価アルコール類は、一種類のみを用いても構わないし、二種類以上を混合して用いてもよい。本発明においては、分子構造の少なくとも一部にビスフェノール骨格を有する多価アルコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFなどを含有するものがより好ましい。
飽和多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸などが挙げられる。不飽和多塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これら二塩基酸類は一種類のみを用いても構わないし、二種類以上を混合して用いてもよい。
これら多価アルコール類は、一種類のみを用いても構わないし、二種類以上を混合して用いてもよい。本発明においては、分子構造の少なくとも一部にビスフェノール骨格を有する多価アルコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFなどを含有するものがより好ましい。
飽和多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸などが挙げられる。不飽和多塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これら二塩基酸類は一種類のみを用いても構わないし、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、ビニルエステル樹脂は、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを付加反応させて得ることができる。ビニルエステル樹脂の原料として用いられるエポキシ化合物は、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物でもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。本発明においては、この中でもビスフェノール骨格を有する多価アルコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFなどを少なくとも含有するものがより好ましい。
不飽和一塩基酸としては、特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルミチン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
熱硬化性樹脂には、反応開始剤として有機過酸化物を含んでいる。このほかに、可使時間を改善するためのN−オキシル類化合物や、フェノール、重合禁止剤、低収縮化剤などを配合できる。また、これらの不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などには、共重合可能なモノマーを配合することができる。共重合可能なモノマーとしては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。また、これらの共重合可能なモノマーは1種類でもよく、2種類以上を適宜混合して使用しても構わず、当該モノマーの添加量は、特に制限はない。
磁石合金粉末と樹脂バインダー等を混合、混練するには各種ミキサー、ニーダー、押出機を用いることができる。
磁石合金粉末と樹脂バインダー等を混合、混練するには各種ミキサー、ニーダー、押出機を用いることができる。
4.ボンド磁石
本発明に係るボンド磁石は、上記の希土類−鉄−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用樹脂組成物を射出成形法、押出成形法、熱間圧縮成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなるものである。これら成形法の中では、特に射出成形法、熱間圧縮成形法が好ましい。なお、射出成形法には、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、トランスファー成形法等の各種成形法が含まれる。また、成形時に磁場を印加することで異方性のボンド磁石を製造することができる。
本発明に係るボンド磁石は、上記の希土類−鉄−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石用樹脂組成物を射出成形法、押出成形法、熱間圧縮成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなるものである。これら成形法の中では、特に射出成形法、熱間圧縮成形法が好ましい。なお、射出成形法には、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、トランスファー成形法等の各種成形法が含まれる。また、成形時に磁場を印加することで異方性のボンド磁石を製造することができる。
上記のボンド磁石用樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を樹脂バインダーとする場合、熱可塑性樹脂の溶融温度で加熱溶融した後、所望の形状を有する磁石に成形する。射出成形法では、熱可塑性樹脂と希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末を含む樹脂組成物を250℃以上の温度で溶融し、金型のキャビティー内に供給し、その後、冷却して成形体を取り出す。この場合、樹脂バインダーとしては、前記のとおり、例えば、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、液晶樹脂、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が使用可能である。また、熱硬化性樹脂を樹脂バインダーとするボンド磁石用樹脂組成物を用いる場合は、流動性のある状態で組成物を金型のキャビティー内に供給し、その後、熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上に加熱し、得られた成形体を常温で取り出す。
射出成形法においては、一般に、表面被膜を付与しない希土類−鉄−窒素系磁石粉末を使用した場合、磁石合金粉末と特定の樹脂バインダーとを混練して射出成形する際に混練トルクが高くなり、成形が困難となることがあるが、本発明で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末を使用した場合は、問題なく成形することができる。そして、本発明においては、優れた磁気特性を引き出すために微粉化された磁石粉末自体がメルカプトベンゾチアゾール被膜で均一に被覆され、安定化されているためである。
樹脂バインダーは、各構成成分を含めた状態で、磁石粉末100重量部に対して、2〜50重量部の割合で添加されるが、3〜20重量部、さらには10〜15重量部添加することが好ましい。樹脂バインダーの添加量が磁石粉末100重量部に対して2重量部未満の場合は、著しい成形体の機械的強度の低下や成形時の流動性の低下を招く。また、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。
また、圧縮成形法により成形を行う場合には、溶剤等で液状化した熱硬化性樹脂を本発明で得られた磁石合金粉末と攪拌しながら混合して得られるボンド磁石用樹脂組成物を用いる。樹脂バインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂等ほか、不飽和ポリエステルやビニルエステルなども使用可能である。樹脂バインダーの使用量は、本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末100重量部に対して、通常、0.5〜15重量%であり、好ましくは、0.7〜10重量%である。樹脂バインダーが多すぎると、得られるボンド磁石の磁気特性は十分高特性のものとはならず、また、少なすぎると成形性が低下するとともに、ボンド磁石の機械的強度として十分な特性が得られない。
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例や比較例により得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末の評価方法は、以下の通りである。
[保磁力評価]
作製した希土類−鉄−窒素系磁石粉末試料を、温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間または200時間放置した後に、保磁力を振動試料型磁力計にて常温で測定した。
作製した希土類−鉄−窒素系磁石粉末試料を、温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間または200時間放置した後に、保磁力を振動試料型磁力計にて常温で測定した。
(実施例1)
酸化サマリウム粉末1976g、鉄粉4221g、カルシウム801.5gを混合して1150℃で270分間還元拡散処理を行い、さらに水素気流中で室温、20時間保持して還元拡散反応生成物を得た。その後、得られた還元拡散反応生成物をアンモニアガス4.7L/min、水素ガス9.3L/minの混合ガスを供給して、450℃において、350分間窒化処理を行い、窒化処理生成物塊を得た。
得られたSm−Fe−N合金粉末を含む窒化処理生成物塊を、水中に投入し崩壊させた後、酢酸を加えて4重量%酢酸溶液とした。その後、得られた窒化処理生成物を含む溶液を撹拌してスラリーを得た後、酸洗浄と水洗浄を行い水酸化カルシウム、酸化カルシウムを除去し、Sm−Fe−N磁石粗粉末を得た(平均粒径は20μmであった)。得られたSm−Fe−N磁石粗粉末をエタノール溶液中に入れてスラリー化し、媒体撹拌ミルを用いて解砕処理を行った。
次に、解砕後のSm−Fe−N磁石粉末を含んだスラリーをろ過装置に移送して固液分離し、含液率を15重量%に調整した。Sm−Fe−N磁石粉末に対して、メルカプトベンゾチアゾールを2重量%含むエタノール中に、Sm−Fe−N磁石粉末を投入し撹拌を行い表面被覆処理し、その後、表面被覆処理された磁石粉末ケーキを乾燥装置に供給し、1.33×103Pa以下の真空度に保持し、80℃〜90℃で温度制御し2時間乾燥させて表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り、30nmであった。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の耐候性を上記の評価方法で評価した。表1に示す通り、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、727kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ710kA/m、590kA/mであった。
酸化サマリウム粉末1976g、鉄粉4221g、カルシウム801.5gを混合して1150℃で270分間還元拡散処理を行い、さらに水素気流中で室温、20時間保持して還元拡散反応生成物を得た。その後、得られた還元拡散反応生成物をアンモニアガス4.7L/min、水素ガス9.3L/minの混合ガスを供給して、450℃において、350分間窒化処理を行い、窒化処理生成物塊を得た。
得られたSm−Fe−N合金粉末を含む窒化処理生成物塊を、水中に投入し崩壊させた後、酢酸を加えて4重量%酢酸溶液とした。その後、得られた窒化処理生成物を含む溶液を撹拌してスラリーを得た後、酸洗浄と水洗浄を行い水酸化カルシウム、酸化カルシウムを除去し、Sm−Fe−N磁石粗粉末を得た(平均粒径は20μmであった)。得られたSm−Fe−N磁石粗粉末をエタノール溶液中に入れてスラリー化し、媒体撹拌ミルを用いて解砕処理を行った。
次に、解砕後のSm−Fe−N磁石粉末を含んだスラリーをろ過装置に移送して固液分離し、含液率を15重量%に調整した。Sm−Fe−N磁石粉末に対して、メルカプトベンゾチアゾールを2重量%含むエタノール中に、Sm−Fe−N磁石粉末を投入し撹拌を行い表面被覆処理し、その後、表面被覆処理された磁石粉末ケーキを乾燥装置に供給し、1.33×103Pa以下の真空度に保持し、80℃〜90℃で温度制御し2時間乾燥させて表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り、30nmであった。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の耐候性を上記の評価方法で評価した。表1に示す通り、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、727kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ710kA/m、590kA/mであった。
(実施例2)
表面被覆処理において、Sm−Fe−N磁石粉末に対して、メルカプトベンゾチアゾールを4重量%含むとした以外は、実施例1と同様な方法で、表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り、50nmであった。
また、得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉の耐候性を実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、707kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ693kA/m、577kA/mであった。
表面被覆処理において、Sm−Fe−N磁石粉末に対して、メルカプトベンゾチアゾールを4重量%含むとした以外は、実施例1と同様な方法で、表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り、50nmであった。
また、得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉の耐候性を実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、707kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ693kA/m、577kA/mであった。
(比較例1)
実施例1と同様に、酸化サマリウム粉末1976g、鉄粉4221g、カルシウム801.5gを混合して1150℃で270分間還元拡散処理を行い、さらに水素気流中で室温、20時間保持して還元拡散物を得た。その後、得られた還元拡散反応生成物をアンモニアガス4.7L/min、水素ガス9.3L/minの混合ガスを供給して、450℃において、350分間窒化処理して、窒化処理生成物塊を得た。
得られたSm−Fe−N合金粉末を含む窒化処理生成物塊を、水中に投入し崩壊させた後、酢酸を加えて4重量%酢酸溶液とした後、撹拌してスラリーを得た後、酸洗浄と水洗浄を行い水酸化カルシウム、酸化カルシウムを除去し、Sm−Fe−N磁石粗粉末を得た(平均粒径は20μmであった)。
得られたSm−Fe−N磁石粗粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを2重量%含むエタノール中に投入し媒体撹拌ミルを用いて解砕処理を行った。
次に、解砕後のSm−Fe−N磁石粉末を含んだスラリーをろ過装置に移送して固液分離し、含液率を15重量%に調整した。エタノール中に、Sm−Fe−N磁石粉末を投入し撹拌を行い、得られた磁石粉末ケーキを乾燥装置に供給し、1.33×103Pa以下の真空度に保持し、80℃〜90℃で温度制御し2時間乾燥させて表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り5nmであった。
また、得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉の耐候性を実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、832kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、Sm−Fe−N磁石粉の酸化が急激に進行したものと判断され、測定できなかった。
実施例1と同様に、酸化サマリウム粉末1976g、鉄粉4221g、カルシウム801.5gを混合して1150℃で270分間還元拡散処理を行い、さらに水素気流中で室温、20時間保持して還元拡散物を得た。その後、得られた還元拡散反応生成物をアンモニアガス4.7L/min、水素ガス9.3L/minの混合ガスを供給して、450℃において、350分間窒化処理して、窒化処理生成物塊を得た。
得られたSm−Fe−N合金粉末を含む窒化処理生成物塊を、水中に投入し崩壊させた後、酢酸を加えて4重量%酢酸溶液とした後、撹拌してスラリーを得た後、酸洗浄と水洗浄を行い水酸化カルシウム、酸化カルシウムを除去し、Sm−Fe−N磁石粗粉末を得た(平均粒径は20μmであった)。
得られたSm−Fe−N磁石粗粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを2重量%含むエタノール中に投入し媒体撹拌ミルを用いて解砕処理を行った。
次に、解砕後のSm−Fe−N磁石粉末を含んだスラリーをろ過装置に移送して固液分離し、含液率を15重量%に調整した。エタノール中に、Sm−Fe−N磁石粉末を投入し撹拌を行い、得られた磁石粉末ケーキを乾燥装置に供給し、1.33×103Pa以下の真空度に保持し、80℃〜90℃で温度制御し2時間乾燥させて表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り5nmであった。
また、得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉の耐候性を実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、832kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、Sm−Fe−N磁石粉の酸化が急激に進行したものと判断され、測定できなかった。
(比較例2,3)
表面被覆処理におけるメルカプトベンゾチアゾールの添加量を0.5重量%、7重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り、比較例2では2nmであり、比較例3では100nmであった。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の耐候性を上記の評価方法で評価した。表1に示す通り、比較例2では、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、750kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ558kA/m、143kA/mであった。
また、比較例3では、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、700kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ650kA/m、600kA/mであった。
表面被覆処理におけるメルカプトベンゾチアゾールの添加量を0.5重量%、7重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、メルカプトベンゾチアゾール被膜の膜厚は、表1に示す通り、比較例2では2nmであり、比較例3では100nmであった。
得られた表面被覆Sm−Fe−N磁石粉末の耐候性を上記の評価方法で評価した。表1に示す通り、比較例2では、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、750kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ558kA/m、143kA/mであった。
また、比較例3では、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、700kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ650kA/m、600kA/mであった。
(比較例4)
0.3mol/kg燐酸を含むエタノール中で表面被覆処理を行う以外は、実施例1と同様な方法で、燐酸被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた燐酸被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、燐酸被膜の膜厚は、表1に示す通り、10nmであった。
得られた燐酸被覆Sm−Fe−N磁石粉末の耐候性を上記の評価方法で評価した。表1に示す通り、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、717kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ694kA/m、183kA/mであった。
0.3mol/kg燐酸を含むエタノール中で表面被覆処理を行う以外は、実施例1と同様な方法で、燐酸被覆Sm−Fe−N磁石粉末を得た。
得られた燐酸被覆Sm−Fe−N磁石粉末の、燐酸被膜の膜厚は、表1に示す通り、10nmであった。
得られた燐酸被覆Sm−Fe−N磁石粉末の耐候性を上記の評価方法で評価した。表1に示す通り、耐候性試験前の保磁力iHc(kA/m)は、717kA/mであった。温度80℃相対湿度90%雰囲気中で24時間、200時間放置した後の保磁力iHcは、それぞれ694kA/m、183kA/mであった。
(評価)
表1に示す実施例1、2の評価結果から明らかなように、解砕された磁石粉末を充分な量のメルカプトベンゾチアゾール被膜により表面被覆したSm−Fe−N磁石粉末では、耐候性が向上している。
表1に示す実施例1、2の評価結果から明らかなように、解砕された磁石粉末を充分な量のメルカプトベンゾチアゾール被膜により表面被覆したSm−Fe−N磁石粉末では、耐候性が向上している。
これに対して、比較例1では、解砕中、すなわちSm−Fe−N磁石粗粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを2重量%含むエタノール中に投入し解砕処理を行うと同時に、メルカプトベンゾチアゾール被膜により表面被覆している。Sm−Fe−N磁石粉末は、解砕中の表面被覆では、被覆効果が十分に得られておらず、耐候性評価で酸化が進行してしまい、保磁力測定ができなかった。
実施例1と同条件で解砕後の磁石粉末にメルカプトベンゾチアゾールを添加するが、その量が本発明の範囲からはずれた比較例2(0.5重量%)比較例3(7重量%)では、所期の効果が得られなかった。すなわち、メルカプトベンゾチアゾールの添加量が少ないと表面被覆が十分にできておらず、200時間放置後の保磁力の劣化が顕著であり、耐候性は十分でないことが分かった。一方、メルカプトベンゾチアゾールの添加量が多い比較例3では、実施例1、2とほぼ同様の耐候性を示したが、初期保磁力が低く、被覆量が多くなり、磁石特性に悪影響が出てきていることが分かった。
メルカプトベンゾチアゾール被膜に替えて、燐酸被膜を形成した比較例4では、表面被覆効果が得られておらず、比較例2と同様、200時間放置後の保磁力の劣化が顕著であり、耐候性は十分でなかった。
メルカプトベンゾチアゾール被膜に替えて、燐酸被膜を形成した比較例4では、表面被覆効果が得られておらず、比較例2と同様、200時間放置後の保磁力の劣化が顕著であり、耐候性は十分でなかった。
本発明により得られるボンド磁石は、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモーターやセンサーなどとして組込んで使用できる。また電子機器の小型化を目的に薄型あるいは微小な磁石部品を適用するために本発明のボンド磁石が活用できる。また、家電機器用モーター、自動車用センサーやモーターは、海外で部品を組み立てるため船などによる輸送が必要となり、その使用環境、輸送環境がさらに厳しくなっているが、磁石粉末にメルカプトベンゾチアゾールを含む表面被覆がなされているため、充分な耐候性を有しており適用可能性が高い。
Claims (5)
- 還元拡散法による希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
希土類酸化物粉末と、鉄粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程と、
この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散処理して希土類−鉄系母合金を得る工程と、
引き続き、得られた母合金を含む反応生成物を不活性ガス雰囲気中で冷却する工程と、
その後、不活性ガスを排出してから、アンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、この気流中で反応生成物を昇温し、窒化処理して磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る工程と、
次に、該窒化処理生成物塊を水中に投入して崩壊させた後、得られたスラリーを酸洗浄と水洗浄で湿式処理して得られた磁石粗粉末を有機溶剤中で解砕して磁石粉末を得る工程と、
該磁石粉末を含んだスラリーを固液分離し、分離された磁石粉末を、メルカプトベンゾチアゾールを含む有機溶剤中で撹拌して表面被覆処理する工程と、
得られた表面被覆磁石粉末を加熱して乾燥処理する工程と、
を有することを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。 - 前記表面被覆処理工程において、有機溶剤中のメルカプトベンゾチアゾールの量は、投入される希土類−鉄−窒素系磁石粉末量に対して1重量%以上6重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 前記有機溶剤が、エタノールまたは2−プロパノール(IPA)から選ばれた1種以上のアルコールを含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のメルカプトベンゾチアゾールで表面被覆された希土類−鉄−窒素系磁石粉末と、樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有してなるボンド磁石用樹脂組成物。
- 請求項4に記載のボンド磁石用樹脂組成物を、射出成形法、押出成形法、熱間圧縮成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなるボンド磁石。
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- 2016-09-29 JP JP2016190817A patent/JP2018056337A/ja active Pending
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