JP2007191732A - 希土類−鉄系磁石合金粉とその製造方法、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石 - Google Patents

希土類−鉄系磁石合金粉とその製造方法、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】耐候性に優れ高磁気特性を有する希土類−鉄系磁石合金粉を効率的に製造しうる方法、得られる希土類−鉄系磁石合金粉、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石を提供。
【解決手段】希土類−鉄系磁石合金粗粉を燐酸が添加された有機溶媒中で湿式粉砕し、次いで固液分離することによって含液率が5〜30wt%の磁石合金粉ケーキを調製した後、引き続き、得られた磁石合金粉ケーキを磁石粉単位重量当たりの排気速度(リットル/min・kg)が4以上となる条件下で排気しながら、150〜200℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法によって提供。
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類−鉄系磁石合金粉とその製造方法、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石に関し、より詳しくは、耐候性に優れ高磁気特性を有する希土類−鉄系磁石合金粉を効率的に製造しうる方法、得られる希土類−鉄系磁石合金粉、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石に関する。
磁石合金粉末とバインダーとを混錬して成形した樹脂結合型磁石は、モーター、スピーカー、マイクロホン、小型発電機などの磁石応用機器に数多く使用されている。近年の電気、電子機器の小型化、高効率化に対応し、より高い磁気特性を示す磁石合金粉末の開発がなされている。
高い磁気特性を得るために、磁石合金粉末にSm−Co系磁石合金、Nd−Fe−B系磁石合金やSm−Fe−N系磁石合金などの希土類磁石合金が多くの用途で使用されるが、これら希土類磁石合金は、高温高湿下で錆の発生や磁気特性の低下を起こしやすいため、粉末表面に燐酸塩処理、クロム酸塩処理などの化成処理を行ったり(特許文献1参照)、亜鉛やアルミニウムを蒸着したり(特許文献2参照)、高分子皮膜を形成させたり(特許文献3参照)、金属めっきをする(特許文献4参照)などの技術が提案されている。
Sm−Fe−N系磁石合金粉末では、Zn、Sn、Cu、In、Pb等、またそれらを含む合金または化合物を粒子表面に形成させる方法(特許文献5参照)、あるいは無電解メッキ等で粒子表面に前記金属の被膜を形成させる方法(特許文献6,7参照)が提案されている。
しかし、前述の方法を適用した場合、耐酸化性が向上するものの、粉末の表面性状が荒れて磁気特性が低下することがあり、また、皮膜として充分な耐酸化性効果を得るためには数μm程度の膜厚が必要となることから、樹脂結合型磁石内での磁石合金粉末の体積分率を低下させてしまい、結果として磁気特性の低下につながっていた。また、これらの処理時に微粉末どうしの凝集も多く起こることから、異方性磁石として本来の高い磁気特性が実現できず、製造工程を複雑にしてコストに見合うだけの諸特性の改善が得られないという課題を有していた。
この問題を解決するために、有機溶媒中での湿式粉砕時に燐酸を添加し、その後加熱処理することにより高い耐候性を有する磁石合金粉を得ることも提案されている(特許文献8参照)。しかし、工業的に多量の磁石合金粉を処理しようとすると、少量処理する場合よりも磁気特性が低くなり、加熱処理時に装置内部で磁石合金粉が強固に凝集して塊状になって、これを樹脂結合型磁石用の磁石粉として使用するためには別途処理工程が必要となるなどの問題があった。
そのため、加熱処理時に乾燥装置内部で磁石合金粉が強固に凝集して塊状になるようなことがなく、製造工程を複雑にすることもなく低コストで優れた磁気特性を有する磁石合金粉の製造方法が望まれていた。
特開平1−14902号公報 特開昭64−15301号公報 特開平4−257202号公報 特開平7−142246号公報 特開平5−190311号公報 特開平5−230501号公報 特開平8−143913号公報 特開2002−124406号公報
本発明の目的は、耐候性に優れ高磁気特性を有する希土類−鉄系磁石合金粉を効率的に製造しうる方法、得られる希土類−鉄系磁石合金粉、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、希土類−鉄系磁石合金の粗粉を燐酸が添加された有機溶媒中にて湿式粉砕し、得られたスラリーを固液分離して磁石合金粉の含液率を低減させ、次に、特定の含液率になった磁石合金粉ケーキを真空中で特定の条件で排気しながら加熱処理することにより、多量の磁石合金粉を効率的に処理することができ、しかも得られる磁石合金粉は、耐候性が大きく優れた磁気特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類−鉄系磁石合金粗粉を燐酸が添加された有機溶媒中で湿式粉砕し、次いで固液分離することによって含液率が5〜30wt%の磁石合金粉ケーキを調製した後、引き続き、得られた磁石合金粉ケーキを磁石粉単位重量当たりの排気速度(リットル/min・kg)が4以上となる条件下に排気しながら、150〜200℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記固液分離が、デカンタ型遠心分離機により行われることを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記加熱乾燥が、ミキサー型乾燥機中で行われることを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記加熱乾燥が、1.33×10Pa以下の真空度で行われることを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法が提供される。
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明に係る製造方法によって得られる希土類−鉄系磁石合金が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、その平均粒径が、1〜5μmであることを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉が提供される。
一方、本発明の第7の発明によれば、第5又は6の発明において、希土類−鉄系磁石合金粉を樹脂バインダーと混合してなる樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、希土類−鉄系樹脂結合型磁石用組成物を射出成形法、押出成形法、又は熱間圧縮成形法のいずれかにより成形して得られる樹脂結合型磁石が提供される。
本発明によれば、処理すべき希土類−鉄系磁石合金粗粉の量が多くても、それを湿式粉砕して得られる磁石合金粉ケーキの取り扱いが極めて容易であるため、簡便かつ効率的に微細な磁石合金粉を製造することが可能となる。しかも、得られる希土類−鉄系磁石合金粉は、粉砕時に変性することがないので、耐候性が大きく良好な磁気特性を有しており、この磁石合金粉を含む樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを成形した樹脂結合型磁石の特性も優れたものとなる。したがって、例えば、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器にいたる幅広い分野で特に有用であり、その工業的価値は大きい。
以下、本発明の希土類−鉄系磁石合金粉を製造する方法、得られる高磁気特性を有する希土類−鉄系磁石合金粉、それを用いた樹脂結合型磁石用組成物、及び樹脂結合型磁石について詳しく説明する。
1.希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法
本発明は、(1)希土類−鉄系磁石合金の粗粉を燐酸が添加された有機溶媒中で湿式粉砕し、(2)次いで、固液分離することによって含液率が5〜30wt%の磁石合金粉ケーキを調製した後、(3)引き続き、得られた磁石合金粉ケーキを磁石粉単位重量当たりの排気速度(リットル/min・kg)が4以上となる条件下に排気しながら、150〜200℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする。
(1)磁石合金粗粉の粉砕
本発明では、希土類−鉄系磁石合金粗粉を所望の粒径にするために、所定量の燐酸を添加した有機溶媒中で粉砕する。原料となる希土類−鉄系磁石合金粗粉は、希土類元素と鉄を主成分として含む磁石合金粉(以下、単に磁石粉ともいう)であれば特に制限は無い。
希土類元素としては、例えば、Sm、Gd、Tb、およびCeから選ばれる少なくとも1種の元素、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbから選ばれる少なくとも1種の元素が含まれるものが好ましい。中でもSmが含まれるものは、本発明の効果を顕著に発揮させることが可能となるので特に好ましい。Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上であると高い保磁力が得られるために好ましい。例えば希土類−鉄−ほう素系磁石合金粉末、希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末、Feの一部をCoで置換した組成の希土類−鉄−コバルト−窒素系磁石合金粉末が挙げられる。この中でも特に還元拡散法で得られたSm−Fe−N系の磁石合金粉末が適している。
磁石合金粗粉を微粉砕するための粉砕装置としては、固体を取り扱う各種の化学工業において広く使用され、種々の材料を所望の程度に粉砕できるものであれば、特に限定されない。その中でも、磁石粉の組成や粒子径を均一にしやすい点で、アトライタ、ビーズミル(以下、媒体攪拌ミルともいう)が好適である。
粉砕に用いる有機溶媒としては、特に制限はなく、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサンなどの低級炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族類、ケトン類、それらの混合物等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。
燐酸の種類は、特に制限が無く市販の燐酸を使用することができる。燐酸の添加量は、粉砕後の磁石粉の粒径、表面積等に関係するので一概には言えないが、通常は、粉砕する磁石粉に対して0.1〜2mol/kgであり、より好ましくは0.15〜1.5mol/kgであり、さらに好ましくは0.2〜0.4mol/kgとすることが好ましい。0.1mol/kg未満であると磁石粉の表面処理が十分に行なわれないために耐候性が改善されず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性が極端に低下する。2mol/kgを超えると磁石粉との反応が激しく起こって磁石粉が溶解する。
燐酸の添加方法は、特に限定されず、例えば、媒体撹拌ミル等で粉砕するに際し、溶媒の有機溶剤に燐酸を添加する。燐酸は、最終的に所望の濃度になれば良く、粉砕開始前に一度に添加しても粉砕中に徐々に添加しても良いが、粉砕で生じた新生面が直ちに処理されるように、常に溶液中に燐酸を存在させなければならない。好ましくは、粉砕末期に所望の燐酸濃度となるように粉砕溶媒の有機溶媒に燐酸を添加して粉砕する。粉砕装置には不活性ガスを供給して磁石粉末が酸化されにくい雰囲気とすることが望ましい。
この方法によれば、磁石粉末の粉砕によって凝集粒子に新生面が生じても瞬時に溶媒中の燐酸と反応し、粒子表面に安定な燐酸塩皮膜が形成される。また、その後、粉砕された磁石粉がその磁力などによって凝集しても、接触面はすでに安定化されており、解砕により腐食が生じることはない。粉砕時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、所望の燐酸濃度の粉砕溶媒内では0.1〜3時間、好ましくは0.1〜2時間とする。
これにより、粉砕後の磁石粉は、平均粒径1〜5μm、好ましくは2〜4μmになるとともに、その表面が充分な厚さの燐酸塩皮膜で均一に被覆され、安定化される。本発明においては、優れた磁気特性を引き出すために微粉化された磁石粉自体が燐酸塩皮膜で均一に被覆され、安定化されることが肝要である。
ここで、均一に被覆されるとは、通常は磁石粉表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上が燐酸皮膜で覆われることをいう。磁石粉表面を保護するために必要な燐酸塩皮膜の厚さは、通常、平均で5〜100nmである。燐酸塩皮膜の平均厚さが5nm未満であると十分な耐候性が得られず、また、100nmを越えると磁気特性が低下すると共に樹脂結合型磁石を作製する際の混練性や成形性が低下する。本発明の方法においては、磁石合金粉の粉砕時に燐酸を適量添加することで磁石粉表面にメカノケミカル的な作用で皮膜が形成されるためか、乾燥時間の短縮が可能となる。
これに対して、磁石合金粗粉の粉砕終了後に燐酸塩等の処理剤を添加しても、粉砕後の磁石粉は、磁力などによって互いに凝集しているため、磁石粉の接触面には被膜処理が行われない。こうして得られた磁石粉は、燐酸塩皮膜の形成が不十分であるため、樹脂結合型磁石時に樹脂バインダーと混練されると、凝集していた磁石粉が混練による剪断力で一部解砕され、皮膜のない活性な粉末表面が露出する。このため、斯かる磁石粉を成形して得られた樹脂結合型磁石は、実用上重要な湿度環境下で容易に腐食が生じ、磁気特性が低下する。特に、サマリウム−鉄−窒素系合金のような核発生型の保磁力発現機構を示す磁石粉では、一部にこのような領域が生じると著しく保磁力が低下してしまう。このような問題は磁石粉を圧密化した磁石についても同様である。
(2)磁石合金粉を含むスラリーの固液分離
本発明において、こうして微粉砕された磁石粉末と燐酸及び有機溶剤を含むスラリーは、次いで大部分の液体を除去するために固液分離装置に供給される。このスラリーは、固液分離装置内で処理されて、含液率が5〜30wt%の希土類−鉄系磁石合金粉ケーキとなる。
固液分離装置としては、デカンタ型遠心分離機、ヌッチェ式ろ過機や遠心ろ過機等のフィルター式ろ過機を使用できるが、フィルター式ろ過機では、ろ過性に対する粉体性状の影響が大きく、装置パラメータとして含液率を制御しにくい。また、希土類−鉄系磁石合金粉スラリーは、ろ過性が非常に悪いためにフィルターによるろ過に多大な時間がかかり、低含液率とすることが困難である。このようなことから脱液効率が高く含液率を制御しやすいデカンタ型遠心分離機の使用が好ましい。
デカンタ型遠心分離機は、遠心力を利用した固液分離装置であって、給液パイプと、筒状のボウルと、スクリューコンベアとを具えており、スラリー供給方向の違いによって横型のものと縦型のものがあるが、本発明ではいずれも使用できる。ここで横型のデカンタ型遠心分離機の一例を示すと、横置きにされた筒状のボウルの中央付近にスラリーを供給する給液パイプと、スクリューコンベアが配置された構造の装置を挙げることができる。筒状のボウルは、その外周部が一端から他端側に向けて直径が小さくなるように設計された(縮径)すり鉢状の容器である。また、スクリューコンベアには、その外周部がボウル内面に沿うようにスクリューが形成されている。そして、ボウルとスクリューコンベアは、夫々が回転駆動装置に連繋されており、異なる速度で回転可能となっている。ボウルの縮径側は、分離した磁石粉が通過する脱液部を有しており、その先端には、含液率が低減した磁石粉を回収する磁石合金粉ケーキ排出口が形成されている。また、ボウルの他端側には、磁石粉から分離された液体を回収する液体排出口が形成されている。
スラリーは、給液パイプから供給され、スラリー吐出口からボウルとスクリューコンベアの間に形成される空間に放出される。ボウルとスクリューコンベアを、所定の差速をもって、スラリーに例えば800G以上、好ましくは1000G以上の遠心加速度が作用するように回転すると、磁石粉は、遠心力によってボウルに沈降し、あるいはスクリューコンベアに沿って滑落する。その後、スクリューコンベアの回転に伴って、磁石粉は、ボウルの縮径側に移送され、脱液部にてスラリーから分離され、磁石合金粉ケーキとして回収される。
ここで、得られる磁石合金粉ケーキの含液率を5〜30wt%、好ましくは、10〜30wt%、より好ましくは、15〜30wt%に調整することが重要である。含液率が30wt%を超えると、次の工程で加熱処理する時に磁石粉が凝集して塊状になってしまい、別途それらを解砕する処理が必要となる。加えて、加熱処理において処理時間が長くなり、生産効率が低下するので好ましくない。また、含液率が5wt%未満であると、大気中で発火したり、酸化し発熱したりして磁気特性が低下する。なお、含液率は、デカンタ型遠心分離機の遠心加速度などの操作条件を制御することで容易に調整できるが、それ以外に、脱液部の距離を適切な長さにしておくという手段もある。
上記のように磁石粉スラリーに、所定の時間、遠心力を作用させることにより、上澄みとなる液体を必要なだけ連続的に抜けるので、含液率が調節された磁石粉ケーキを得ることができる。本発明では、磁石粉末に特定量の有機溶剤が含まれているから、分離された磁石粉ケーキが、脱液部で盛り上がって固まることがなく、次の工程で乾燥を促進させることができる。
(3)磁石粉ケーキの加熱処理
次に、含液率が調整された磁石合金粉ケーキを加熱処理装置に移送し、引き続き、特定の排気速度で排気しながら、真空に保持して、特定の温度範囲で加熱処理する。
この加熱処理には、ミキサー型乾燥機、処理物静置型の箱型乾燥機などを用いることができるが、乾燥効率の点から処理物を攪拌できるミキサー型乾燥機(以下、攪拌型乾燥機ともいう)を使用することが望ましい。ミキサー型乾燥機は、処理物を攪拌しながら加熱できるために、処理物温度の均一性が高く、発生ガスの排気性がよい。
攪拌型乾燥機には、処理物を受け入れる円筒状の本体が縦型のものと横型のものがあり、加熱手段(温度調節手段)によっても多くの種類があるが、本発明では特に限定されない。
例えば、縦型の攪拌型乾燥機であれば、上部の投入口から磁石粉ケーキが投入される有底円筒状の処理槽と、処理槽内の回転軸に攪拌翼が取り付けられ、処理槽の下部に排出口が設けられている。回転軸は、処理槽内で垂直方向に延在しており、これに複数枚の攪拌翼が取り付けられている。また、処理槽内に投入されたケーキを加熱する温度調節手段が設けられており、処理槽外周のジャケット部と、このジャケット部内に各供給源からのスチーム或いは冷却水を切り換えて供給する切換弁、及びジャケット部内の冷却水等を排出する排出弁を有している。温度調節手段は、このような熱交換によるものに限らず、例えば電熱コイルによるものなどでもよい。
磁石粉ケーキを加熱処理するには、これを処理槽内に投入し回転翼を回転させ、攪拌すると同時に、特定の排気速度で加熱する。加熱の進行に伴って磁石粉ケーキから溶剤が蒸発すると共に乾燥が促進され、凝集していた磁石粉は、回転翼によって解砕される。
磁石粉の単位重量あたり排気速度(リットル/min・kg)は、4以上、好ましくは10以上、より好ましくは13以上とすることが必要である。排気速度が4未満では、磁石粉処理量を増やすに従い磁気特性が低下してしまう。これは、磁石粉と燐酸との反応により発生する水素が十分に排気されず、その結果、一部水素が磁石粉に取り込まれたままとなり、磁石合金の結晶格子間距離が変化してしまうためと考えられる。なお、磁石粉の単位重量あたり排気速度は、大きいほど好ましいが、30を超えるような排気速度を得るには装置上の制約がある。そのため、特に排気速度の好ましい範囲は、13〜30である。
本発明においては、上記のようにして磁石粉に真空中、150〜200℃、好ましくは150〜180℃、より好ましくは160〜180℃の温度範囲で加熱処理を施す。150℃未満で加熱処理を施すと、磁石粉の乾燥が十分進まずに磁石粉に取り込まれた水素が十分に抜けないため磁気特性が低下し、また、200℃を超える温度で加熱処理を施すと、磁石粉が熱的なダメージを受けるためか、やはり磁気特性が低下するという問題がある。
この際、処理槽内を1.33×10Pa以下、好ましくは6.66×10Pa以下の真空度に保持することが望ましい。真空度がこれよりも小さいと、磁気特性が低下する場合がある。これは、真空度が小さい場合には加熱処理時間を長くしなければならないので、磁石粉表面の酸化が進行する影響が大きくなるためと考えられる。
加熱処理時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、なるべく短いほうが望ましい。例えば容積100リットルの攪拌型乾燥機にて磁石粉50kgを処理する場合は2時間以内、特に90分間以内とする。加熱処理時間が長くなるほど磁気特性が低下する。ただし、10分よりも短いと安定な燐酸塩皮膜が形成されない場合がある。
こうして磁石粉ケーキが解砕されて粉状化された磁石粉は、処理槽下部の排出口から搬出される。気化した溶剤類は、熱交換器によって液化及び凝縮されて凝縮液として排出され、排出された凝縮液は必要により粉砕工程で繰り返し使用され、クリーンな気体のみが大気に放出される。
2.希土類−鉄系磁石合金粉
本発明の希土類−鉄系磁石合金粉は、上記の製造方法によって得られ、表面が充分な厚さの燐酸塩皮膜で均一に被覆され、安定化された磁石合金粉である。
この磁石粉は、平均粒径が1〜5μm、好ましくは2〜4μmである。平均粒径が1μm未満では製造コストが高くなり、5μmを超えると磁気特性が低下するので好ましくない。表面が充分な厚さの燐酸塩皮膜で均一に被覆され、安定化されているため、これを樹脂と混合して樹脂結合型磁石を作製する場合、混合に伴う剪断力により粒子の凝集の一部が解砕されても皮膜のない新生面は生じず、得られた樹脂結合型磁石は極めて高い耐候性を示す。
また、得られた磁石粉の保磁力は、80℃相対湿度90%の環境下に24時間曝しても殆ど変化せず、大幅な耐候性の改善が達成される。
3.樹脂結合型磁石用組成物
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、上記希土類−鉄系磁石合金粉を樹脂バインダーと混合してなる希土類−鉄系樹脂結合型磁石用組成物である。
樹脂バインダーは、特に限定されることはなく、各種熱可塑性樹脂単体または混合物、あるいは各種熱硬化性樹脂単体あるいは混合物であり、それぞれの物性、性状等も所望の特性が得られる範囲でよく特に限定されることはない。
熱可塑性樹脂は、磁石粉のバインダーとして働くものであれば、特に制限なく、従来公知のものを使用できる。その具体例としては、6ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、前出各樹脂系エラストマー等が挙げられ、これらの単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品等が挙げられる。
これら熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、得られる樹脂結合型磁石に所望の機械的強度が得られる範囲で低い方が望ましい。また、熱可塑性樹脂の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状等、特に限定されないが、磁石粉と均一に混合される点で、パウダー状が望ましい。
熱可塑性樹脂の配合量は、磁石粉100重量部に対して、通常5〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜15重量部である。熱可塑性樹脂の配合量が5重量部未満であると、組成物の混練抵抗(トルク)が大きくなり、流動性が低下して磁石の成形が困難となり、一方、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂結合型磁石用組成物の加熱流動性等を向上させるために、各種カップリング剤、滑剤や種々の安定剤等を配合することができる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ラジカル重合反応性を有する不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂などの樹脂が挙げられる。このほかに、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂を使用できる。これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が好ましい。また、重合度や分子量に制約されないが、150℃以下の温度では液状であり、25℃における粘度が5000mPa・s以下である樹脂が成形性の面から好適である。
不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと飽和多塩基酸及び/又は不飽和多塩基酸との重縮合反応により得られる不飽和ポリエステルと、当該エステルと共重合可能なモノマーよりなる熱硬化性樹脂である。
ここで、多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールSなどが挙げられ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
これら多価アルコール類は、一種類のみを用いても構わないし、二種類以上を混合して用いてもよい。本発明においては、分子構造の少なくとも一部にビスフェノール骨格を有する多価アルコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFなどを含有するものがより好ましい。
飽和多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸などが挙げられる。不飽和多塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これら二塩基酸類は一種類のみを用いても構わないし、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、ビニルエステル樹脂は、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを付加反応させて得ることができる。ビニルエステル樹脂の原料として用いられるエポキシ化合物は、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物でもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。本発明においては、この中でもビスフェノール骨格を有する多価アルコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFなどを少なくとも含有するものがより好ましい。
不飽和一塩基酸としては、特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルミチン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
熱硬化性樹脂には、反応開始剤として有機過酸化物を含んでいる。このほかに、可使時間を改善するためのN−オキシル類化合物や、フェノール、重合禁止剤、低収縮化剤などを配合できる。また、これらの不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などには、共重合可能なモノマーを配合することができる。共重合可能なモノマーとしては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。また、これらの共重合可能なモノマーは1種類でもよく、2種類以上を適宜混合して使用しても構わず、当該モノマーの添加量は、特に制限はない。
磁石合金粉と樹脂バインダー等を混合、混練するには各種ミキサー、ニーダー、押出機を用いることができる。
4.樹脂結合型磁石
本発明の樹脂結合型磁石は、上記の希土類−鉄系樹脂結合型磁石用組成物を射出成形法、押出成形法、又は熱間圧縮成形法のいずれかにより成形してなるものである。これらの中では、特に射出成形法、熱間圧縮成形法が好ましい。なお、射出成形法には、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、トランスファー成形法等の各種成形法が含まれる。また、成形時に磁場を印加することで異方性の樹脂結合型磁石を製造することができる。
上記の樹脂結合型磁石用組成物が熱可塑性樹脂を樹脂バインダーとする場合、樹脂の溶融温度で加熱溶融した後、所望の形状を有する磁石に成形する。射出成形法で樹脂結合型磁石を製造するには、熱可塑性樹脂と磁石合金粉を含む組成物を250℃以上の温度で溶融し、金型のキャビティー内に供給し、その後、冷却して成形体を取り出す。この場合、樹脂バインダーとしては、前記のとおり、例えば、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、液晶樹脂、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が使用可能である。また、熱硬化性樹脂と磁石合金粉を含む組成物を用いる場合は、流動性のある状態で組成物を金型のキャビティー内に供給し、その後、樹脂の熱硬化温度以上に加熱し、得られた成形体を常温で取り出す。
射出成形法においては、一般に、金属被膜を付与しない希土類−鉄系磁石合金粉を使用した場合、磁石合金粉と特定の樹脂バインダーとを混練して射出成形する際に混練トルクが高くなり、成形が困難となることがあるが、本発明の希土類−鉄系磁石合金粉を使用した場合は、問題なく成形することができる。そして、本発明においては、優れた磁気特性を引き出すために微粉化された磁石粉自体が燐酸塩皮膜で均一に被覆され、安定化されているため、磁石粉が高温に晒されても磁気特性を損なうことはない。
樹脂バインダーは、各構成成分を含めた状態で、磁石粉100重量部に対して、2〜50重量部の割合で添加されるが、3〜20重量部、さらには10〜15重量部添加することが好ましい。樹脂バインダーの添加量が磁石粉100重量部に対して2重量部未満の場合は、著しい成形体強度の低下や成形時の流動性の低下を招く。また、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。
また、圧縮成形法により成形を行う場合には、溶剤等で液状化した熱硬化性樹脂を本発明の磁石合金粉と攪拌しながら混合して得られる樹脂結合型磁石用組成物を用いる。樹脂バインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂等ほか、不飽和ポリエステルやビニルエステルなども使用可能である。樹脂バインダーの使用量は、本発明の希土類−鉄系磁石合金粉に対して、通常、0.5〜15重量%であり、好ましくは、0.7〜10重量%である。樹脂バインダーが多すぎると、得られる樹脂結合型磁石の磁気特性が不満足なものとなり、また、少なすぎると樹脂結合型磁石の強度が不満足なものとなる。
なお、組成物がNd−Fe−B系磁石粉のような希土類−鉄系磁石合金粉を含む場合、磁場をかけずに成形することにより等方性の樹脂結合型磁石を製造することもできる。
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例や比較例に用いた希土類−鉄系磁石合金粉やそれを用いた成形体の評価方法は、以下の通りである。
(1)得られた希土類−鉄系磁石合金粉の状態
磁石粉を回収する際に、磁石粉の凝集の有無、乾燥機内壁への固着、大気に曝した際の発熱の有無を観察した。
(2)磁気特性
得られた希土類−鉄系磁石合金粉を60℃、90%RHの恒温槽で100時間放置し、放置前後の磁気特性を直流自記磁束計にて測定した。また、成形体について80℃、90%RHの恒温槽で100時間放置し、放置前後の磁気特性を同様に測定した。
(実施例1)
Sm−Fe−N磁石合金粗粉(住友金属鉱山(株)製、平均粒径20μm)を150kg用意し、粉砕装置(媒体攪拌ミル、三井鉱山(株)製)に入れ、85%濃度水溶液燐酸が磁石合金粗粉に対し0.3mol/kgの濃度で添加された2−プロパノール中で平均粒径が3μmになるまで粉砕した。次に、粉砕後の磁石粉を含んだスラリーをろ過装置(デカンタ型遠心分離機、タナベウィルテック社製)に移送して固液分離し、含液率を15wt%に調整した。
その後、脱液された磁石粉ケーキを乾燥装置(ミキサー型乾燥機、タナベウィルテック社製)に供給し、排気速度を13リットル/min・kgとして装置内を排気して、1.33×10Pa以下の真空度に保持し、160〜180℃で6時間乾燥させて磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
得られた磁石粉を2ton/cmの圧力にて直径Φ10mm、高さ7mmに成形して接着剤を含浸させ、室温にて硬化させることで磁石粉評価用成形体を得た。磁石粉を60℃、90%RHの恒温槽で100時間放置し、放置前後の磁気特性を直流自記磁束計にて測定した。結果を表1に示す。
一方、得られた磁石粉にポリアミド樹脂8重量部を混合し、押出機にて190〜210℃で混練してペレット化した。これをシリンダー温度210〜220℃、金型温度100〜110℃にてφ20×13mmの円柱状成形体を、13mm方向に1.6MA/m(20kOe)の配向磁界をかけながら射出成形して、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得た。この成形体については、80℃、90%RHの恒温槽で100時間放置し、放置前後の磁気特性、すなわち成形体の放置前後の保磁力、角形性の目安となるHk(減磁曲線上の0.9Brの点から4πI=0に平行な直線をひき、減磁曲線と交わった点の減磁界をさす。)を同様に測定した。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
磁石粉ケーキの含液率が26wt%となるように調整した以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
磁石粉ケーキを排気速度4.4リットル/min・kgにて乾燥させた以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
磁石粉ケーキを150〜170℃の温度範囲にて乾燥させた以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
乾燥機内の真空度を6.66×10Pa以下に保持した以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
ヌッチェ式ろ過機を用いて磁石粉ケーキの含液率が50wt%になるように調整した以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉の凝集が多くあり、また、乾燥機内壁への固着も多かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
磁石粉ケーキの含液率を4wt%となるように調整した以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かったが、大気に曝した際に発熱した。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
磁石粉ケーキを120〜140℃の温度範囲にて乾燥させた以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
磁石粉ケーキを200〜210℃の温度範囲にて乾燥させた以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例5)
磁石粉ケーキを排気速度2リットル/min・kgにて乾燥させた以外は、実施例1と同様な方法で、磁石粉を製造した。磁石粉を回収したときの状態では、磁石粉の凝集は無く、また、乾燥機内壁への固着も無かった。また、大気に曝した際の発熱も無かった。
実施例1と同様にして、得られた磁石粉を用い、磁石粉評価用成形体と、樹脂結合型磁石用組成物評価用成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 2007191732
「評価」
実施例1〜5では、所定の処理条件で磁石粉を含むスラリーを固液分離し、特定の含液率となった磁石粉ケーキを所定の処理条件で排気しながら加熱乾燥しているので、得られた磁性粉、および樹脂結合型磁石成形体は、その放置前後の保磁力、角形性の目安となるHkに大きな変化は無く、良好な磁気特性を維持していた。
これに対して、比較例1は固液分離後の含液率が大きすぎたので、磁石粉の乾燥時に凝集・固着が生じた。比較例2は、固液分離後の含液率が小さすぎたので、大気に晒した際に発熱した。比較例3では、加熱温度が低すぎたので、磁石粉で保磁力、Hkの低下が認められ、樹脂結合型磁石でもHkの減少が認められた。また、比較例4,5では、加熱温度が高すぎるか、排気速度が低すぎたので、磁石粉および樹脂結合型磁石ともに保磁力、Hkの低下が認められた。

Claims (8)

  1. 希土類−鉄系磁石合金粗粉を燐酸が添加された有機溶媒中で湿式粉砕し、次いで固液分離することによって含液率が5〜30wt%の磁石合金粉ケーキを調製した後、引き続き、得られた磁石合金粉ケーキを磁石粉単位重量当たりの排気速度(リットル/min・kg)が4以上となる条件下に排気しながら、150〜200℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法。
  2. 前記固液分離が、デカンタ型遠心分離機により行われることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法。
  3. 前記加熱乾燥が、ミキサー型乾燥機中で行われることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法。
  4. 前記加熱乾燥が、1.33×10Pa以下の真空度で行われることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄系磁石合金粉の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られる希土類−鉄系磁石合金粉。
  6. その平均粒径が、1〜5μmであることを特徴とする請求項5に記載の希土類−鉄系磁石合金粉。
  7. 請求項5又は6に記載の希土類−鉄系磁石合金粉を樹脂バインダーと混合してなる樹脂結合型磁石用組成物。
  8. 請求項7に記載の希土類−鉄系樹脂結合型磁石用組成物を射出成形法、押出成形法、又は熱間圧縮成形法のいずれかにより成形して得られる樹脂結合型磁石。
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JP2017212353A (ja) * 2016-05-26 2017-11-30 住友金属鉱山株式会社 ボンド磁石用磁石合金粉の製造方法

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