JP2006286903A - 希土類系ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

希土類系ボンド磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 顔料を用いて行う特許文献1(特開2004−356615号公報)に記載の希土類系ボンド磁石の製造方法を改良し、高い磁気特性と耐酸化性を示す希土類系ボンド磁石の製造方法を提供すること。
【解決手段】 有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して希土類系ボンド磁石用コンパウンドを調製し、得られた希土類系ボンド磁石用コンパウンドを所定形状に成形することを特徴とするものである。有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末を用いて希土類系ボンド磁石を製造することで、耐湿潤性や耐溶剤性を改善することができ、これにより磁気特性と耐酸化性の向上を図ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い磁気特性と耐酸化性を示すとともに、耐湿潤性や耐溶剤性に優れる希土類系ボンド磁石の製造方法に関する。
Nd−Fe−B系磁石粉末に代表されるR−Fe−B系磁石粉末などの希土類系磁石粉末を、バインダとして熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いて所定形状に成形することで製造される希土類系ボンド磁石は、樹脂バインダを含有しているために希土類系焼結磁石に比較すれば磁気特性が低くなるものの、フェライト磁石などに比べればなお十分に高い磁気特性を有しており、また、複雑形状や薄肉形状の磁石やラジアル異方性磁石を容易に得ることができるといった希土類系焼結磁石にはない特徴を持っている。従って、希土類系ボンド磁石は、特にスピンドルモータやステッピングモータなどの小型モータに多く用いられ、近年、その需要が増加している。
希土類系磁石粉末は高い磁気特性を有するが、RやFeが組成の大半を占めることから腐食や酸化を起しやすいという問題がある。そのため、希土類系ボンド磁石の製造においては、まず、希土類系磁石粉末を、溶解もしくは溶融(軟化)させた樹脂バインダと混合して磁石粉末の表面が樹脂バインダで被覆されたコンパウンドと呼ばれる粉末顆粒状原料を調製した後、このコンパウンドを射出成形や圧縮成形や押出成形し、用いる樹脂バインダによっては、必要に応じてさらに加熱して樹脂バインダを硬化させることで所定形状に成形して製品化される。しかしながら、このようにして製品化された希土類系ボンド磁石であっても、その表面に希土類系磁石粉末が露出していると、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって磁石粉末が腐食して錆が発生したり、100℃程度の大気中でも酸化が進行したりするので、例えば部品組み込み後に磁気特性の劣化やばらつきを招くことがある。また、樹脂バインダとして汎用されているエポキシ樹脂やナイロン樹脂などは水分や酸素の透過性を有する。従って、これらの樹脂を樹脂バインダに用いた希土類系ボンド磁石においては、樹脂を透過した水分や酸素で希土類系磁石粉末が腐食したり酸化したりする可能性があることを否定できない。さらに、希土類系磁石粉末が腐食や酸化を起しやすいことに鑑みれば、射出成形を行う場合には混練成形時の温度条件に配慮する必要があるし、圧縮成形を行う場合には成形後の硬化処理を不活性ガス雰囲気中や真空中で行う必要がある。
以上のような問題を解消すべく、例えば、希土類系磁石粉末の表面に、リン酸塩の被覆処理を施し、リン酸塩被膜で表面被覆された希土類系磁石粉末を用いて所定形状に成形することによる酸化劣化を防止した希土類系ボンド磁石の製造方法が以前より知られている。
しかしながら、上記の方法は、比較的低コストで高効率に希土類系磁石粉末に耐酸化性を付与することができることから、耐酸化性に優れた希土類系ボンド磁石を製造することができる方法として注目に値するものであったが、リン酸塩被膜は、リン酸塩被膜処理液成分と磁石粉末成分とが磁石粉末表面において化学反応することにより形成されるものであるため、その反応過程において、処理液中に磁石粉末の構成成分であるRやFeが溶出してしまうことで磁石粉末の表面付近(表面から深さ0.1μm程度)が変質して磁石粉末の磁気特性が劣化するという問題があった。また、このような磁石粉末を用いて所定形状に成形した希土類系ボンド磁石は、酸化による磁気特性の経時変化が大きいという問題があった。この現象は、ボンド磁石の成形時、磁石粉末の流れ性不足に起因して成形圧力により磁石粉末が割れたりし、酸化しやすい粒子破面が露出することなどによると推察されるものであった。これらの問題は、希土類系ボンド磁石に要求される高性能化の観点からは無視できない問題であり、早期に解決すべきものであった。
そこで、希土類系磁石粉末の表面に顔料を主たる構成成分とする被着層を形成することで、以上のような問題を解決し、耐酸化性と磁気特性の向上を図る方法が特許文献1において提案されている。磁石粉末の表面に形成される顔料を主たる構成成分とする被着層は、リン酸塩被膜のように、磁石粉末成分が関与する化学反応に基づいて形成されるものではなく、ナノメートルオーダーの顔料微粒子が分子間力で磁石粉末の表面に吸着して形成されるものであるので、その形成過程において、処理液中に磁石粉末の構成成分であるRやFeが溶出してしまうことで磁石粉末の表面付近が変質して磁石粉末の磁気特性が劣化するといった問題などがない。従って、顔料を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる磁石粉末を用いれば、耐酸化性に優れるとともに高い磁気特性を示すボンド磁石を製造することができる。
また、この希土類系磁石粉末を用いて製造された希土類系ボンド磁石が耐酸化性に優れるのは、磁石粉末が耐酸化性に優れることによるだけでなく、通常、ボンド磁石の成形時においては、磁石粉末の流れ性不足に起因して成形圧力により磁石粉末が割れて酸化しやすい粒子破面が生じたりすることがあるが、この希土類系磁石粉末を用いた場合には、磁石粉末の表面に形成された被着層を構成する顔料粒子が、ボンド磁石の成形時における磁石粉末の流れ性を改善する潤滑作用を発揮することで、成形圧力により磁石粉末が割れて酸化しやすい粒子破面が生じたりすることが抑制されていることにもよると推測されている。
また、希土類系ボンド磁石の成形方法として、圧縮成形方法や、圧縮成形と圧延成形を組み合わせた成形方法(例えば、F.Yamashita, Applications of Rare-Earth Magnets to the Small motor industry, pp.100-111, Proceedings of the seventeenth international workshop, Rare Earth Magnets and Their Applications, August 18-22, 2002, Newark, Delaware, USA, Edited by G.C. Hadjipanayis and M.J.Bonder, Rinton Pressを参照)などを採用した場合、通常、製造されたボンド磁石の表面には無数の空孔部が存在するが、顔料を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末を用いて製造された希土類系ボンド磁石においては、そのような空孔部を、磁石粉末の表面に形成された被着層を構成する顔料粒子が封孔するという効果があり、このこともこの希土類系磁石粉末を用いて製造された希土類系ボンド磁石が耐酸化性に優れることに寄与していると考えられている。
特開2004−356615号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法をもってしても、時として、磁気特性や耐酸化性に劣る希土類系ボンド磁石が製造される場合があり、その改善の余地が認められた。
そこで本発明は、顔料を用いて行う特許文献1に記載の希土類系ボンド磁石の製造方法を改良し、高い磁気特性と耐酸化性を示す希土類系ボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、顔料を用いて行う特許文献1に記載の希土類系ボンド磁石の製造方法において、時として、磁気特性や耐酸化性に劣る希土類系ボンド磁石が製造される場合があるのは、顔料を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末の耐湿潤性や耐溶剤性が必ずしも十分ではないことで、この希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して希土類系ボンド磁石用コンパウンドを調製する際、樹脂バインダを溶解するために用いるメチルエチルケトンなどの有機溶剤により、希土類系磁石粉末の表面から顔料を主たる構成成分とする被着層が剥がれ落ちる場合があることによることを突き止めた。そこで、この問題を解決するための方法を見出すべく、さらに検討を重ねた結果、有機顔料と有機樹脂を組み合わせ、両者を主たる構成成分とする被着層を希土類系磁石粉末の表面に形成することで、耐湿潤性や耐溶剤性の改善を図ることができることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の希土類系ボンド磁石の製造方法は、請求項1記載の通り、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して希土類系ボンド磁石用コンパウンドを調製し、得られた希土類系ボンド磁石用コンパウンドを所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することを特徴とする。
また、請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、有機顔料がフタロシアニン系顔料であることを特徴とする。
また、請求項3記載の製造方法は、請求項1または2記載の製造方法において、有機顔料の平均粒径(長径)が0.01μm〜1μmであることを特徴とする。
また、請求項4記載の製造方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法において、有機樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする。
また、請求項5記載の製造方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法において、有機樹脂のガラス転移温度が30℃〜150℃であることを特徴とする。
また、請求項6記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法において、希土類系磁石粉末の表面の被着層における有機顔料と有機樹脂の構成比が1:8〜8:1(重量比)であることを特徴とする。
また、請求項7記載の製造方法は、請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法において、希土類系ボンド磁石用コンパウンドの成形を圧縮成形により行うことを特徴とする。
また、本発明の希土類系ボンド磁石は、請求項8記載の通り、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製された希土類系ボンド磁石用コンパウンドを、所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することで製造されてなることを特徴とする。
また、本発明の希土類系ボンド磁石用コンパウンドは、請求項9記載の通り、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製されてなることを特徴とする。
また、本発明の希土類系磁石粉末は、請求項10記載の通り、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなることを特徴とする。
また、本発明の有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末の製造方法は、請求項11記載の通り、有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含む処理液と、希土類系磁石粉末を混合することで、希土類系永久磁石の表面に処理液を付着させた後、これを乾燥することを特徴とする。
また、請求項12記載の製造方法は、請求項11記載の製造方法において、処理液のpHが6.5〜10.0であることを特徴とする。
また、請求項13記載の製造方法は、請求項11または12記載の製造方法において、処理液中の有機顔料の含量が5重量%〜30重量%であることを特徴とする。
また、請求項14記載の製造方法は、請求項11乃至13のいずれかに記載の製造方法において、処理液中の有機樹脂の含量が5重量%〜40重量%(固形分として)であることを特徴とする。
また、請求項15記載の製造方法は、請求項11乃至14のいずれかに記載の製造方法において、処理液中で有機顔料を有機分散媒により均一分散させてなることを特徴とする。
また、本発明の希土類系磁石粉末被覆用処理液は、請求項16記載の通り、平均粒径(長径)が0.01μm〜1μmである有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含み、有機顔料が有機分散媒により均一分散してなることを特徴とする。
また、本発明の希土類系ボンド磁石は、請求項17記載の通り、有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製された希土類系ボンド磁石用コンパウンドを、所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することで製造されてなることを特徴とする。
また、本発明の希土類系ボンド磁石用コンパウンドは、請求項18記載の通り、有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製されてなることを特徴とする。
また、本発明の希土類系磁石粉末は、請求項19記載の通り、有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなることを特徴とする。
本発明によれば、高い磁気特性と耐酸化性を示すとともに、耐湿潤性や耐溶剤性に優れる希土類系ボンド磁石の製造方法を提供することができる。
本発明の希土類系ボンド磁石の製造方法は、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して希土類系ボンド磁石用コンパウンドを調製し、得られた希土類系ボンド磁石用コンパウンドを所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することを特徴とするものである。
(1)まず、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末は、例えば、有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含む処理液と、希土類系磁石粉末を混合することで、希土類系永久磁石の表面に処理液を付着させた後、これを乾燥することで製造することができる。
有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含む処理液は、例えば、有機分散媒により有機顔料を均一分散させてなる分散液に、有機樹脂のエマルジョンを攪拌混合することで調製することができる。処理液による希土類系磁石粉末の腐食を防止するためには、処理液のpHは、アンモニアなどで6.5〜10.0に調整することが望ましい。また、希土類系磁石粉末の表面に鉄の水酸化膜が生成することで、磁石粉末の表面に対する有機樹脂の密着性、ひいては被着層の密着性が低下することを極力回避するためには、処理液のpHは、6.5〜9.0に調整することがより望ましい。なお、調製される処理液中での有機顔料と有機樹脂の優れた分散性を確保するためには(処理液中で有機顔料が凝集したり有機樹脂が析出したりすることを回避するためには)、有機分散媒により有機顔料を均一分散させてなる分散液と有機樹脂のエマルジョンのpH自体が上記のようなpHであることが望ましい。
有機顔料としては、フタロシアニン系顔料の他、インダンスレン系、アゾ系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサンジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドレン系、アゾメチンアゾ系、ジケトピロロピロール系の顔料などが挙げられる。有機顔料を構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末は、樹脂バインダとからなる希土類系ボンド磁石用コンパウンドに適度の粘弾性と優れた流動性を付与するとともに、被着層を構成する有機顔料が圧縮成形時に受ける応力を吸収して緩和するので磁石粉末の破砕が起こって新生破面が生成するといったことが起きにくくなる点において都合がよい。また、有機顔料の種類によっては、ボンド磁石に高抵抗性を付与することができることが期待される。中でも、フタロシアニン系顔料は、耐食性や耐熱性に優れるので、好適な有機顔料であるといえる。
有機顔料の平均粒径(長径)は、処理液中における有機顔料の均一分散性を確保するといった観点から、0.01μm〜1μmが望ましい。平均粒径が0.01μm未満であると、その製造が困難であるとともに処理液中で凝集しやすくなって取扱性に劣る一方、平均粒径が1μmを超えると、処理液中における比重が大きくなってしまって沈降してしまったりする恐れがある。
処理液中の有機顔料の含量は、5重量%〜30重量%が望ましい。含量が5重量%未満であると、十分量の有機顔料からなる被着層が希土類系磁石粉末の表面に形成されず、高い磁気特性と耐酸化性を磁石粉末に付与することができなくなる恐れがある一方、含量が30重量%を超えると、処理液中で有機顔料が凝集や沈降してしまい、その分散性が悪化する恐れがあるからである。なお、処理液中の有機顔料の含量は、より望ましくは7重量%〜25重量%である。
処理液中において有機顔料を均一分散させるために用いる有機分散媒としては、アニオン性分散媒(脂肪族系多価カルボン酸、ポリエーテルポリエステルカルボン酸塩、高分子ポリエステル酸ポリアミン塩、高分子量ポリカルボン酸長鎖アミン塩など)、非イオン性分散媒(ポリオキシエチレンアルキルエーテルやソルビタンエステルなどのカルボン酸塩やスルフォン酸塩やアンモニウム塩など)、高分子分散媒(水溶性エポキシのカルボン酸塩やスルフォン酸塩やアンモニウム塩など、スチレン−アクリル酸共重合物、ニカワなど)が、上記の目的の観点から、また、有機顔料との親和性やコストの観点などから好適に用いられる。
処理液中の有機分散媒の含量は、0.1重量%〜6重量%が望ましい。含量が0.1重量%未満であると、有機顔料の分散性が低下する恐れがある一方、含量が6重量%を超えると、処理液の粘性が高くなりすぎて取扱性に劣る恐れがあるからである。
有機樹脂のエマルジョンとしては、アクリル酸,メタクリル酸,これらのエステル(アルキルエステルやヒドロキシアルキルエステルなど)やアミドの重合物、これらを主体とし共重合可能な他の単量体(エチレンやスチレンやジビニルベンゼンなどのエチレン性単量体など)を含む共重合物(ランダム共重合物でもブロック共重合物でもよい)などのアクリル系樹脂の他、酢酸ビニル,塩化ビニル,塩化ビニリデン,エチレン,スチレン,アクリロニトリルなどの重合物、これらを主体とし共重合可能な他の単量体を含む共重合物(ランダム共重合物でもブロック共重合物でもよい)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂などのエマルジョンが挙げられる。ここで、エマルジョンとは、エマルション、ラテックス、ディスパージョン、コロイダルディスパージョンなどの総称として位置付けられる。中でもアクリル系樹脂のエマルジョンが取扱性に優れる点において好適に用いられる。なお、有機樹脂のエマルジョンは、そのイオン性がアニオン性や非イオン性であることが、調製される処理液中での有機顔料と有機樹脂の優れた分散性を確保するために(処理液中で有機顔料が凝集したり有機樹脂が析出したりすることを回避するために)望ましい。
有機樹脂のガラス転移温度は、30℃〜150℃が望ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、希土類系ボンド磁石用コンパウンドを所定形状に成形する際、硬化して被膜状態にある有機樹脂がたやすく軟化してしまうことで、磁石粉末の表面に被着層の構成成分として留まることができず、有機顔料とともに成形体の表面に押し出されてしまい、優れた磁気特性や耐酸化性の発現に寄与できなくなる恐れがある一方、ガラス転移温度が150℃を超えると、軟化が起こりにくいことで、磁石粉末の表面に被着層を薄膜状に形成することが困難になる恐れがあるからである。有機樹脂が、メチロール基やイソシアネート基やブロックイソシアネート基が導入された変性物で、加熱などによって架橋するものの場合、形成される被膜のガラス転移温度を高めることができる。
処理液中の有機樹脂の含量は、5重量%〜40重量%(固形分として)が望ましい。含量が5重量%未満であると、十分量の有機樹脂からなる被着層が希土類系磁石粉末の表面に形成されず、被着層中に有機樹脂を添加することの効果が得られなくなる恐れがある一方、含量が40重量%を超えると、処理液が表面に付着した希土類系磁石粉末が互いに強固に被着した凝集塊となりやすく、解砕が困難となり、過酷な条件下で解砕を行わなければならなくなることで、磁石粉末が割れて酸化しやすい粒子破面が生じ、酸化による磁気特性の劣化を招く恐れがあるからである。なお、処理液中の有機樹脂の含量は、より望ましくは10重量%〜30重量%である。
有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末は、例えば、以上のようにして調製された有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含む処理液に、希土類系磁石粉末を浸漬して混合攪拌した後、処理液が表面に付着した希土類系磁石粉末を濾取してからこれを乾燥して製造することができる。処理液に希土類系磁石粉末を浸漬して混合攪拌する時間は、希土類系磁石粉末量などにも依存するが、概ね1分〜20分である。処理液が表面に付着した希土類系磁石粉末を濾取する際、減圧濾過や加圧濾過を行えば、磁石粉末の表面に顔料をより強固に吸着せしめることができる。磁気特性の劣化を招くことなく希土類系磁石粉末に耐酸化性を付与するためには、乾燥は、自然乾燥または不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガスなど)雰囲気中や真空中80℃〜120℃加熱乾燥が望ましい。加熱乾燥を採用する場合の乾燥時間は、希土類系磁石粉末量などにも依存するが、概ね20分〜2時間である。濾取した処理液が表面に付着した希土類系磁石粉末が凝集塊となっている場合には予め解砕してから乾燥することが望ましい。なお、処理液が表面に付着した希土類系磁石粉末の取得は、希土類系磁石粉末に処理液を噴霧することで行ってもよい。
以上のようにして製造される有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末の、被着層における有機顔料と有機樹脂の構成比は、1:8〜8:1(重量比)であることが望ましい。被着層における両者の構成比は、処理液における両者の構成比(有機樹脂は固形分として)によって定めることができる。構成比が1:8未満であると、有機樹脂の比率が高くなりすぎて、その製造過程において、処理液が表面に付着した希土類系磁石粉末が互いに強固に被着した凝集塊となりやすく、解砕が困難となり、過酷な条件下で解砕を行わなければならなくなることで、磁石粉末が割れて酸化しやすい粒子破面が生じ、酸化による磁気特性の劣化を招く恐れがある一方、構成比が8:1を超えると、有機顔料の比率が高くなりすぎて、被着層中に有機樹脂を添加することの効果が得られなくなる恐れがあるからである。
(2)次に、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と樹脂バインダを混練して希土類系ボンド磁石用コンパウンドを調製する。この工程は、常法、即ち、この磁石粉末と、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解した樹脂バインダを均一混合した後、有機溶剤を蒸発させることで行えばよい。前述したように、有機顔料のみを主たる構成成分とする被着層は、樹脂バインダを溶解するために用いる有機溶剤が原因で、磁石粉末の表面から剥がれ落ちる場合があるが、被着層中に有機樹脂を添加することにより、このような現象の発生を効果的に抑制することができる。ここで、樹脂バインダとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド(ナイロン66やナイロン6やナイロン12など)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂、ゴムやエストラマ、これらの変性体や共重合体や混合物(例えば、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)に熱可塑性樹脂の粉末を分散させたもの:F.Yamashita, Applications of Rare-Earth Magnets to the Small motor industry, pp.100-111, Proceedings of the seventeenth international workshop, Rare Earth Magnets and Their Applications, August 18-22, 2002, Newark, Delaware, USA, Edited by G.C. Hadjipanayis and M.J.Bonder, Rinton Pressを参照)などを用いることができる。コンパウンドにおける磁石粉末に対する樹脂バインダの配合割合は、3重量%を上限とすることが望ましい。コンパウンドを得る際には、カップリング剤や潤滑剤や硬化剤などの添加剤を通常用いられる添加量にて添加してもよい。なお、このようにして得られたコンパウンドは粉末顆粒などの形状に造粒してもよい。
(3)次に、得られた希土類系ボンド磁石用コンパウンドを所定形状に成形する。この工程は、前述したような、圧縮成形方法や、圧縮成形と圧延成形を組み合わせた成形方法によって行うことができる。例えば、圧縮成形方法を採用する場合、コンパウンドを圧縮成形することにより、磁石粉末の表面に形成された被着層を構成する有機顔料や有機樹脂が磁石粉末の粒子と粒子の間に押しやられて充填されることで、ボンド磁石の表面や内部における空孔部の発生を軽減することができる。コンパウンドの圧縮成形は、0.1GPa〜1GPaの圧力で加圧して行うことが望ましく、0.3GPa〜0.6GPaの圧力で加圧して行うことがより望ましい。圧力が0.1GPa未満であると、圧力が小さすぎてボンド磁石の高密度化を十分に図ることができないことに起因して空孔部の発生を効果的に軽減することができない恐れがある一方、圧力が1GPaを超えると、圧力が大きすぎて磁石粉末の破砕が起って新生破面が生成したりする恐れがあるからである。成形温度は、樹脂バインダの種類にも依存するが、通常、室温(20℃)〜120℃である。磁石粉末の粒子相互間や磁石粉末の粒子と樹脂バインダとの間の摩擦を低減させて高密度なボンド磁石とするため、また、磁石粉末の表面に形成された被着層を構成する有機顔料や有機樹脂の流動性を高めてこれらが磁石粉末の粒子と粒子の間に円滑に押しやられて充填されやすくするためには、成形温度は80℃〜100℃とすることが望ましい。
(4)最後に、樹脂バインダとして熱硬化性樹脂を用いる場合、得られた成形体を加熱硬化することで希土類系ボンド磁石とする。成形体の加熱硬化は常法に従って行えばよく、例えば、不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガスなど)雰囲気中や真空中140℃〜200℃にて1時間〜5時間の条件で行えばよい。
本発明の希土類系ボンド磁石の製造方法が適用される希土類系磁石粉末は、特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよいが、本発明によれば、平均粒径(長径)が小さい希土類系磁石粉末、例えば、平均粒径が80μm〜100μm程度の、希土類系磁石合金を水素中で加熱して水素を吸蔵させた後、脱水素処理し、次いで冷却することによって得られる磁気的異方性のHDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)磁石粉末(特公平6−82575号公報参照)などに対しても、磁気特性の劣化を引き起すことなく優れた耐酸化性を付与することができるとともに、優れた耐湿潤性や耐溶剤性を付与することができる。なお、希土類系磁石粉末は、予め、自体公知の方法によって酸洗や脱脂や洗浄などの前処理が施されたものであってもよい。
なお、有機樹脂のみを主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末を用いて製造される希土類系ボンド磁石は、本発明の有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末を用いて製造される希土類系ボンド磁石と比較して、磁気特性や耐酸化性が勝るものではないが(とはいえ特許文献1に記載の有機顔料のみを主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末を用いて製造される希土類系ボンド磁石と同等程度の磁気特性や耐酸化性を有する)、耐湿潤性や耐溶剤性は同等程度に優れたものである。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例は、高周波溶解によって組成:Nd12.8原子%,Dy1.0原子%,B6.3原子%,Co14.8原子%,Ga0.5原子%,Zr0.09原子%,残部Feの鋳隗を作製し、アルゴンガス雰囲気中で1100℃×24時間焼鈍したものを酸素濃度0.5%以下のアルゴンガス雰囲気中で粉砕して平均粒径100μmの粉砕粉としてからこれを0.15MPaの水素ガス加圧雰囲気中で870℃×3時間の水素化熱処理を行い、その後、減圧(1kPa)アルゴンガス流気中で850℃×1時間の脱水素処理を行ってから冷却して製造したHDDR磁石粉末(平均結晶粒径0.4μm)を用いて行った。
実施例1:有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末の製造
(1)20重量%の有機分散媒(分子量8500、酸価200、ガラス転移温度85℃のスチレン−アクリル酸共重合物)を、4.4重量%のアンモニア水(28%)と75.6重量%のイオン交換水に対し、60℃、3時間攪拌混合し、有機分散媒により有機顔料を均一分散させてなる分散液を調製するための有機分散媒水溶液を調製した。この有機分散媒水溶液25重量%と水50重量%の混合液に、有機顔料であるフタロシアニン系顔料として銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)25重量%を、室温で攪拌しながら徐々に加え、さらに攪拌を3時間続けて均一なスラリーとした。その後、媒体分散機を用いてスラリー中の銅フタロシアニン顔料を微粒子化し、得られたスラリー68重量%と水32重量%を室温で混合し、銅フタロシアニン顔料の含量が17重量%であるpHが8.5の分散液を調製した。得られた分散液中に均一分散している銅フタロシアニン顔料の平均粒径を遠心沈降法により測定したところ0.1μmであった。
(2)(1)で調製した有機分散媒により銅フタロシアニン顔料を均一分散させてなる分散液50重量%と、アクリル系樹脂のエマルジョン50重量%を、室温で攪拌混合して、銅フタロシアニン顔料とアクリル系樹脂のエマルジョンを含む処理液を調製した(処理液中の有機分散媒の含量は1.7重量%)。ここで、処理液は、それぞれ組成などが異なる3種類のアクリル系樹脂エマルジョンを用いて調製した。なお、いずれの処理液も、1ヶ月放置後も、銅フタロシアニン顔料の凝集やアクリル系樹脂の析出が起こらない、両者が均一に分散した安定性に優れるものであった。3種類のアクリル系樹脂のエマルジョン(アクリル系樹脂エマルジョンA〜アクリル系樹脂エマルジョンC)の詳細と、得られた処理液のpHと処理液中に含まれる銅フタロシアニン顔料の含量とアクリル系樹脂の含量(固形分として)を表1に示す。
Figure 2006286903
(3)(2)で調製した処理液50mlにHDDR磁石粉末50gを室温で3分間浸漬して混合攪拌した後、処理済磁石粉末を水流アスピレータを用いて30秒間減圧濾過を行って濾取し、その後、真空中100℃で1時間加熱乾燥した。得られた凝集塊を乳鉢で解砕することで、銅フタロシアニン顔料とアクリル系樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる藍色のHDDR磁石粉末を製造した。
実施例2:実施例1で製造した有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末を用いた希土類系ボンド磁石の製造とその特性
エポキシ樹脂とフェノール系硬化剤を重量比率で100:3の割合でメチルエチルケトンに溶解して樹脂液を調製した。実施例1で製造した銅フタロシアニン顔料とアクリル系樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなるHDDR磁石粉末と樹脂液を、このHDDR磁石粉末と樹脂液の合計重量に対する樹脂液の重量の比率が3%となるように均一混合した後、メチルエチルケトンを常温で蒸発させて粉末顆粒状の希土類系ボンド磁石用コンパウンドを得た。得られた希土類系ボンド磁石用コンパウンドを、圧縮成形(100℃温間磁場中成形、Hex=0.96MA/m、0.6GPa)し、得られた成形体を150℃のアルゴンガス雰囲気中で1時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させて、寸法が縦12.0mm×横7.6mm×高さ7.4mmで密度が5.9g/cm3のボンド磁石を製造した。
こうして製造されたボンド磁石に対し、大気中150℃で100時間加熱する加熱試験を行い、試験前に対する試験後における酸化による重量増加率を測定した。また、こうして製造されたボンド磁石に対して着磁を行った後、温度80℃×相対湿度90%の高温高湿度下と120℃大気中に1000時間放置し、それぞれについて、試験前(放置前)に対する試験後(放置後)における磁束劣化率(不可逆減磁率)を測定した。さらに、その後、再着磁を行い、試験前に対する再着磁後における磁束劣化率(永久減磁率)を測定した。これらの結果を、実施例1において、銅フタロシアニン顔料とアクリル系樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなるHDDR磁石粉末を製造するために用いた、HDDR磁石粉末自体を用いて製造したボンド磁石について同様の測定を行った結果と、実施例1の(1)で調製した有機分散媒により銅フタロシアニン顔料を均一分散させてなる分散液を用いて製造した、銅フタロシアニン顔料を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなるHDDR磁石粉末を用いて製造したボンド磁石について同様の測定を行った結果とあわせて、表2と表3に示す。
Figure 2006286903
Figure 2006286903
表2と表3から明らかなように、処理液の違いにより程度の差はあるが、HDDR磁石粉末の表面に有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を形成することで、製造されるボンド磁石の耐酸化性と磁気特性が向上することがわかった。有機顔料のみを主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる磁石粉末を用いてボンド磁石を製造した場合、コンパウンドを調製する際、磁石粉末の表面に形成された被着層が剥がれ落ちることに起因して、樹脂液が徐々に藍色に変色していく現象が認められたが、有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる磁石粉末を用いてボンド磁石を製造した場合、樹脂液には何らの変化も認められなかった。従って、この違いが、ボンド磁石の耐湿潤性や耐溶剤性の違いとなって現れ、ひいては、耐酸化性と磁気特性の違いに結びついているものと考えられた。3種類の処理液を用いて製造されたボンド磁石の中でも、とりわけ、処理液Cを用いて製造されたボンド磁石は、優れた磁気特性と耐酸化性を示した。これは、磁石粉末の表面に形成した被着層の構成成分として用いた耐熱性に優れるアクリル系樹脂(架橋成分の存在により形成される被膜が3次元骨格化しガラス転移温度を高めることで耐熱性などに寄与していると考えられる)が、磁石粉末の表面に強固に吸着して優れた耐湿潤性や耐溶剤性を発揮したことに加え、ボンド磁石の製造過程における熱の影響を最小限に抑えたことによるものと考えられた。また、微細な銅フタロシアニン顔料がボンド磁石の内部の間隙を埋めてボンド磁石を密なものとし、また、磁石粉末の表面に緻密な被着層が形成されたことで、ボンド磁石に成形された後にあっても、磁石粉末の表面に水や酸素といった腐食起因物質が到達しにくくなったためであると推定された。
処理液Cを用いて製造されたボンド磁石が優れた耐湿潤性や耐溶剤性を有することを、処理液Cについての以下の実験により確かめた。
処理液C中に、アルミニウム片(縦20mm×横20mm×厚み2mm)を浸漬し、すぐに引き上げた後、100℃で大気中20分間乾燥することで、アルミニウム片の表面に銅フタロシアニン顔料とアクリル系樹脂を主たる構成成分とする被膜を形成した。その後、このアルミニウム片をメチルエチルケトンに24時間浸漬し、引き上げた後、外観を観察した。その結果、被膜が湿潤することで膨潤し、アルミニウム片の表面から剥がれ落ちるといった現象は見られず、この被膜は耐湿潤性や耐溶剤性に優れることがわかった。
一方、実施例1の(1)で調製した有機分散媒により銅フタロシアニン顔料を均一分散させてなる分散液中に、アルミニウム片(縦20mm×横20mm×厚み2mm)を浸漬し、すぐに引き上げた後、100℃で大気中20分間乾燥することで、アルミニウム片の表面に銅フタロシアニン顔料を主たる構成成分とする被膜を形成した。その後、このアルミニウム片をメチルエチルケトンに24時間浸漬し、引き上げた後、外観を観察した。その結果、被膜は湿潤することで膨潤し、アルミニウム片の表面から剥がれ落ちたことから、この被膜は耐湿潤性や耐溶剤性に劣ることがわかった。
以上の結果は、コンパウンドを調製する際、磁石粉末と混合した樹脂液にどのような変化が認められるかという上記の分析結果と一致するものであった。
参考例1:
実施例1と実施例2における処理液Cのかわりにアクリル系樹脂エマルジョンCを用い、実施例1と実施例2と同様にしてボンド磁石を製造した。製造されたボンド磁石は、実施例1と実施例2で製造されたボンド磁石と比較して、磁気特性や耐酸化性が勝るものではないが、実施例1の(1)で調製した有機分散媒により銅フタロシアニン顔料を均一分散させてなる分散液を用いて実施例1と実施例2と同様にして製造されたボンド磁石と同等程度の磁気特性や耐酸化性を有していた。
アクリル系樹脂エマルジョンC中に、アルミニウム片(縦20mm×横20mm×厚み2mm)を浸漬し、すぐに引き上げた後、100℃で大気中20分間乾燥することで、アルミニウム片の表面にアクリル系樹脂を主たる構成成分とする被膜を形成した。その後、このアルミニウム片をメチルエチルケトンに24時間浸漬し、引き上げた後、外観を観察した。その結果、被膜が湿潤することで膨潤し、アルミニウム片の表面から剥がれ落ちるといった現象は見られず、この被膜は耐湿潤性や耐溶剤性に優れることがわかった。
本発明は、高い磁気特性と耐酸化性を示すとともに、耐湿潤性や耐溶剤性に優れる希土類系ボンド磁石の製造方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (19)

  1. 有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して希土類系ボンド磁石用コンパウンドを調製し、得られた希土類系ボンド磁石用コンパウンドを所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することを特徴とする希土類系ボンド磁石の製造方法。
  2. 有機顔料がフタロシアニン系顔料であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 有機顔料の平均粒径(長径)が0.01μm〜1μmであることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
  4. 有機樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 有機樹脂のガラス転移温度が30℃〜150℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 希土類系磁石粉末の表面の被着層における有機顔料と有機樹脂の構成比が1:8〜8:1(重量比)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 希土類系ボンド磁石用コンパウンドの成形を圧縮成形により行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製された希土類系ボンド磁石用コンパウンドを、所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することで製造されてなることを特徴とする希土類系ボンド磁石。
  9. 有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製されてなることを特徴とする希土類系ボンド磁石用コンパウンド。
  10. 有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなることを特徴とする希土類系磁石粉末。
  11. 有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含む処理液と、希土類系磁石粉末を混合することで、希土類系永久磁石の表面に処理液を付着させた後、これを乾燥することを特徴とする有機顔料と有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末の製造方法。
  12. 処理液のpHが6.5〜10.0であることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
  13. 処理液中の有機顔料の含量が5重量%〜30重量%であることを特徴とする請求項11または12記載の製造方法。
  14. 処理液中の有機樹脂の含量が5重量%〜40重量%(固形分として)であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 処理液中で有機顔料を有機分散媒により均一分散させてなることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の製造方法。
  16. 平均粒径(長径)が0.01μm〜1μmである有機顔料と有機樹脂のエマルジョンを含み、有機顔料が有機分散媒により均一分散してなることを特徴とする希土類系磁石粉末被覆用処理液。
  17. 有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製された希土類系ボンド磁石用コンパウンドを、所定形状に成形し、必要に応じて得られた成形体を加熱硬化することで製造されてなることを特徴とする希土類系ボンド磁石。
  18. 有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなる希土類系磁石粉末と、樹脂バインダを混練して調製されてなることを特徴とする希土類系ボンド磁石用コンパウンド。
  19. 有機樹脂を主たる構成成分とする被着層を表面に有してなることを特徴とする希土類系磁石粉末。
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