JPH1167514A - ボンド型永久磁石の製造方法と製造用原料粉末 - Google Patents

ボンド型永久磁石の製造方法と製造用原料粉末

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JPH1167514A
JPH1167514A JP9222799A JP22279997A JPH1167514A JP H1167514 A JPH1167514 A JP H1167514A JP 9222799 A JP9222799 A JP 9222799A JP 22279997 A JP22279997 A JP 22279997A JP H1167514 A JPH1167514 A JP H1167514A
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magnetic powder
magnetic
lubricant
temperature
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JP9222799A
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Hideki Matsunaga
秀樹 松永
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
Sumitomo Special Metals Co Ltd
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    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
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    • H01F41/0253Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性、耐酸化性、耐食性に優れ、かつ磁気
特性と機械的強度にも優れたボンド磁石を圧縮成形によ
り製造する。 【解決手段】 希土類・鉄系磁石材料の粉末を、ビスマ
レイミドトリアジン樹脂 0.1〜5.0 重量%からなる最内
層と、パラフィン潤滑剤 0.01 〜3.0 重量%からなる中
間層と、熱硬化性エポキシ樹脂 0.5〜10.0重量%からな
る最外層の3層で被覆した原料粉末を、両樹脂の軟化温
度以上かつ潤滑剤の融解温度以上で、最内層樹脂の硬化
開始温度未満で圧縮成形し、得られた成形体に場合によ
りビスマレイミドトリアジン樹脂を含浸させた後、加熱
して2種類の樹脂を硬化させる。硬化中にビスマレイミ
ドトリアジン樹脂中のトリアジン成分が揮発し、磁粉に
再付着するので、空隙が充填され、圧縮成形で生じた新
生破面も被覆される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性、耐酸化
性、耐食性に優れ、かつ磁気特性、機械的強度にも優れ
たボンド型永久磁石の製造方法とその製造に用いる原料
粉末とに関する。
【0002】
【従来の技術】ボンド型永久磁石 (以下、ボンド磁石と
いう) は、永久磁石材料の粉末(以下、磁粉という)を
樹脂をバインダーとして結合した磁石であり、樹脂の成
形方法を利用して製造することができる。
【0003】成形方法としては圧縮成形 (プレス成形)
、射出成形、押出成形などが可能であり、流動性をほ
とんど必要としない圧縮成形では熱硬化性樹脂 (例、エ
ポキシ樹脂、フェノール樹脂) が、流動性が必要な射出
成形や押出成形では熱可塑性樹脂 (例、ポリアミド樹
脂、ポリオレフィン樹脂) がバインダーとして利用され
ている。圧縮成形は、少ない樹脂量で結合可能であり、
磁粉の充填量が多くなるため、磁気特性に優れたボンド
磁石を製造することができる。
【0004】このボンド磁石は、磁粉を焼結して得られ
る従来の焼結型永久磁石に比べ、種々の形状の製品を高
い寸法精度で製造することが容易であるという特長を持
つ。そのため、パーソナルコンピュータなどの電子機器
向けの小型モータや小型制御装置用として近年多く用い
られ、現在ではモータや制御装置のさらなる小型化、高
性能化のために、磁気特性の向上が求められている。
【0005】最大エネルギー積や残留磁化ならびに保磁
力などの磁気特性の向上には、磁石の使用開始時の初期
値の向上だけでなく、その初期値の使用環境下における
安定性も重要である。例えば、モータの高出力化におい
ては、磁石の磁気特性の初期値の向上と共に、使用時に
発熱するため高温環境下での磁気特性の経時劣化ができ
うる限り小さいことが要求される。
【0006】そのため、(1) 原料磁粉の磁気特性を向上
させる、(2) 磁石中の磁粉の磁気配向度を増大させる、
(3) 磁石中の磁粉の体積充填率を大きくする、(4) 磁石
中の磁粉の酸化劣化、熱劣化を抑えるといった対策が採
られてきた。
【0007】(1) の磁気特性の向上手段として、希土類
・コバルト系 (=R−Co系、Rは希土類金属) や希土類
・鉄系 (=R−Fe−B系) を含む希土類系合金からなる
磁粉について、従来の等方性磁粉より高磁気特性が得ら
れる、特定の方向 (磁化容易方向) に対して高い磁気特
性を示す磁気異方性の磁粉が開発されている。
【0008】この磁気異方性の磁粉から磁石を製造する
場合、磁石の内部において各異方性磁粉の磁化容易方向
が同一方向に揃っている (配向している) ことが磁気特
性の向上を得る条件となる。この磁石中の異方性磁粉の
配向度を増大させることが上記(2) に示した対策であ
る。この配向は、成形時に磁場を印加し、各磁粉をその
磁化容易軸が磁場方向を向くように回転させることによ
り行われる。従って、成形時に個々の磁粉を回転し易く
する (即ち、粉末表面の摩擦抵抗を低くする) ような工
夫が必要である。例えば、樹脂が溶融するように温間で
圧縮成形を行う方法、潤滑剤を樹脂中に含有させる方法
が知られている。
【0009】一方、(3) の単位体積中の磁粉の充填率を
多くするには、樹脂割合を減らすか、または、圧縮成形
で作製する成形体の空隙を少なくすることが必要とな
る。しかし、ボンド磁石の成形性や機械的強度を考慮す
ると、樹脂量の低減には限界があるため、必要最低限の
樹脂割合のもとで成形体の空隙を減少させ、磁粉の充填
率を向上させる成形条件が検討されてきた。
【0010】希土類・鉄系合金の磁粉は、酸素と結合し
やすい希土類金属と鉄が主体となるため、空気中では酸
化または水酸化され易い。製造工程における磁粉の酸化
が原因で磁石が所定の磁気特性を発揮し得ないことが多
く、磁気特性が安定化せず、また特に高温環境下で使用
した場合に磁気特性の劣化が顕著であった。この酸化劣
化、熱劣化を抑制することが上記の(4) の対策である。
【0011】ボンド磁石では、磁粉をバインダーの樹脂
で被覆することにより、磁粉の酸化劣化や熱劣化を抑え
てきた。また、焼結型の磁石と同様に、最終的に磁石を
メッキおよび/または塗装により被覆して磁粉の酸化劣
化や熱劣化を防止することも行われている。
【0012】この点に関して、特開昭63−24607 号公報
には、バインダーが従来のエポキシ樹脂では、磁粉に対
するぬれ性やガスシールド性が十分でなく、希土類合金
の磁粉の酸化を十分に防止できないことが指摘されてい
る。そのため、この公報に記載のボンド磁石では、バイ
ンダーとして熱硬化型ポリイミド樹脂を使用する。この
樹脂はぬれ性、ガスシールド性、および機械的強度に優
れているので、樹脂量を5重量%以下に低減でき、耐熱
性および耐酸化性に優れ、かつ磁気特性にも優れたボン
ド磁石が得られると説明されている。実施例では、ポリ
イミド樹脂としてビスマレイミドトリアジン樹脂を使用
している。
【0013】しかし、本発明者らが追試したところ、バ
インダーに上記ポリイミド樹脂 (ビスマレイミドトリア
ジン樹脂) を使用しても、エポキシ樹脂を使用した場合
に比べて、機械的強度および耐熱性、耐酸化性、耐食性
はほとんど向上せず、さらに得られたボンド磁石には欠
けや割れが見られ、製品歩留りが大幅に悪化することが
判明した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来技術の問題点を解消して、耐熱性、耐酸化性、
耐食性に優れ、かつ磁気特性と機械的強度にも優れたボ
ンド磁石を圧縮成形を利用して製造する方法とその製造
用の原料粉末とを提供することである。
【0015】本発明者らは、希土類・鉄系合金の磁粉か
らなるボンド磁石では、磁粉が製造過程、特に圧縮成形
において割れや歪みなどの損傷を受けることが原因で、
高温での磁粉の熱劣化が促進され、この損傷による磁気
特性の劣化も顕著であることを究明した。
【0016】この磁粉の損傷による影響は従来ほとんど
考慮されてこなかった。しかし、希土類・鉄系合金の磁
粉は、磁石製造過程、特に圧縮成形で損傷を受け易いの
で、成形前に磁粉表面を樹脂で被覆しても、成形後には
活性な新生破面が生じ、高温に曝されるとその部位から
熱劣化、酸化劣化を生じて磁気特性が劣化することがわ
かった。
【0017】また、圧縮成形で得られた成形体の内部に
は空隙が多く存在する。磁石表面をメッキや塗装により
被覆しても、磁石に内包された空気中の水、酸素により
磁粉の熱劣化、酸化劣化が引き起こされる。この内包空
気は、磁粉の損傷により生じた新生破面にも悪影響を及
ぼす。従って、内包空気による劣化を防止するため空隙
率を可及的に小さくすることが望まれる。空隙率の低減
は、単位体積当たりの磁粉の充填率を高くする点でも磁
気特性の向上に寄与する。
【0018】よって、本発明の具体的な課題は、希土類
・鉄系合金の磁粉からなる圧縮成形型のボンド磁石の製
造過程、特に圧縮成形において磁粉が損傷しても、磁気
特性の劣化や高温での磁粉の熱劣化を防止することがで
き、かつ、空隙率を低下させる手段を講じることにより
上記目的を達成することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者は、バインダー
として使用する熱硬化性樹脂と潤滑剤を改良し、さらに
樹脂の含浸による磁石中の空隙の低減を図り、上記課題
を解決すべく検討を重ねた。
【0020】特開昭63−24607 号公報の実施例で使用し
ているビスマレイミドトリアジン樹脂は、無水マレイン
酸と芳香族ジアミンとの反応物であるビスマレイミド
に、トリアジン骨格を持つオリゴマーとそのモノマーか
らなるトリアジン成分を配合した、熱硬化性ポリイミド
樹脂の一種である。
【0021】本発明者は、この樹脂が軟化して融解した
後、硬化前にトリアジン成分が揮発することに着目し、
この揮発性成分を含む樹脂をバインダーに使用すると、
圧縮成形時に活性な新生破面が生成しても、成形体を硬
化させるための加熱時に、硬化に先立ってこの揮発性成
分が揮発して磁粉に再付着することにより新生破面が被
覆され、かつこの再付着時に磁粉内の空隙が充填され
て、上記目的が達成されるのではないかと考えた。しか
し、揮発した成分は、磁粉の新生破面に再付着する以外
に、加熱炉の内壁などにも付着し、磁石内部の空隙がか
えって多くなることが判明した。
【0022】しかも、ビスマレイミドトリアジン樹脂を
バインダーとするボンド磁石は、磁場中で圧縮成形する
際の磁粉の配向性が低く、磁気特性が不十分である上、
耐熱性、耐酸化性、耐食性、機械的強度もほとんど向上
せず、さらに製品には割れや欠けが発生し易い。その理
由は、この樹脂の磁粉に対する接着性が低く、溶融樹脂
による磁粉間の潤滑効果が低いためではないかと考えら
れる。
【0023】圧縮成形中に磁粉が流動し易いほど、磁粉
相互間の摩擦が低減し、磁粉の充填率と配向性が向上
し、磁粉の損傷が抑制され、ボンド磁石の磁気特性が向
上する。また、活性な新生破面が少なく、耐熱性、耐酸
化性、耐食性も向上する。しかし、ビスマレイミドトリ
アジン樹脂では、溶融しても磁粉間の潤滑(摩擦低減)
効果が小さく、接着性の低さも加わり、上記の結果にな
ったものと思われる。
【0024】ビスマレイミドトリアジン樹脂を、これよ
り潤滑性が高いエポキシ樹脂との混合樹脂にして磁粉を
被覆しても、結果はほとんど変わらず、ボンド磁石の機
械的強度はかえって低下することが判明した。その原因
は、温間成形時にビスマレイミドトリアジン樹脂の硬化
反応が開始し、溶融粘度が上がって潤滑性が低下するた
めであると考えられる。
【0025】これに対し、磁粉を内層がビスマレイミド
トリアジン樹脂、外層がエポキシ樹脂となるように2層
被覆すると、ビスマレイミドトリアジン樹脂のみ、また
は両樹脂を混合して1層被覆した場合の前述した難点が
解消され、硬化前の揮発性のトリアジン成分による磁粉
新生破面の被覆による保護効果によって耐熱性、耐酸化
性、耐食性が改善され、かつ磁気特性、機械的強度、磁
粉の接着性も良好なボンド磁石が得られることを見出し
た。その理由は完全には解明されていないが、次のよう
に考えられる。
【0026】即ち、被覆を上記の2層構造とすると、外
層の不揮発性のエポキシ樹脂が、内層のビスマレイミド
トリアジン樹脂から硬化前に揮発したトリアジン成分の
逃散を阻止するため、揮発したトリアジン成分が加熱炉
の内壁などに付着するのが防止される結果、硬化前に新
生破面の被覆や空隙の充填に有効利用される。また、潤
滑性のよいエポキシ樹脂が、外層としてビスマレイミド
トリアジン樹脂とは別個に存在することにより、温間成
形中の粘度増大による潤滑性の低下が阻止され、磁粉の
損傷が抑制される。また、磁気異方性の磁粉では配向性
も向上する。さらに、内層のビスマレイミドトリアジン
樹脂は磁粉との接着性がエポキシ樹脂より低いが、内層
樹脂と磁粉との接着性は若干低くても、外層に接着性の
高いエポキシ樹脂が存在することで磁粉間の接着性が確
保され、ボンド磁石の割れや欠けも防止される。
【0027】さらに、本発明者は、上記の2種類の熱硬
化性樹脂による2層被覆の間に、中間層として潤滑剤を
介在させた3層被覆構造とすることにより、圧縮成形時
の磁粉間の摩擦が低減し、磁粉の充填率と配向度が向上
し、樹脂被覆および圧縮成形時の損傷が防止されること
を見出した。
【0028】この中間層の潤滑剤としては、融解温度が
30〜120 ℃のもの (即ち、室温では固体であり、比較的
低温で融解するもの) が最適である。室温で液体の潤滑
剤を使用すると、プレス原料粉末の凝集が起こりやす
く、流動性が悪いために金型への給粉性が悪く、成形性
が低下する。
【0029】さらに、本発明者は、上記の3層構造に被
覆した原料粉末を圧縮成形した成形体に、ビスマレイミ
ドトリアジン樹脂等の揮発性成分を含有する熱硬化性樹
脂の溶液を含浸することにより、その含浸した液状の揮
発性樹脂による新生破面の被覆や空隙の充填の効果が増
大し、耐熱性、耐酸化性、耐食性、ならびに機械的強度
がさらに向上することも見出した。
【0030】ここに、本発明により、希土類・鉄系磁石
材料の粉末を、熱硬化性樹脂(a) と揮発性成分を含む熱
硬化性樹脂(b) と潤滑剤(c) とで、樹脂(a) が最外層、
樹脂(b) が最内層、潤滑剤(c) が中間層となるように3
層被覆した粉末であって、熱硬化性樹脂(b) 中の揮発性
成分が該樹脂の硬化開始温度より低温で揮発するもので
あり、潤滑剤(c) の融解温度が30〜120 ℃の範囲である
ことを特徴とする、圧縮成形によりボンド型永久磁石を
製造するための原料粉末が提供される。
【0031】即ち、最内層の揮発性成分を含む熱硬化性
樹脂は耐熱性、耐酸化性の向上効果が大きく、最外層の
熱硬化性樹脂は接着性と溶融流動性が高く、中間層で圧
縮成形中の磁粉の磁化性を高めることにより、本発明の
目的が達成される。
【0032】好適態様にあっては、上記3層被覆の被覆
量が、被覆後の粉末重量に対する重量%で、熱硬化性樹
脂(a) が 0.5〜10.0%、揮発性成分を含む熱硬化性樹脂
(b)が 0.1〜5.0 %、潤滑剤(c) が0.01〜3.0 %であ
り、樹脂(a) と樹脂(b) と潤滑剤(c) の被覆量の合計が
1.0〜10.0%である。好ましくは、揮発性成分を含む熱
硬化性樹脂(b) は室温で固体のトリアジン樹脂またはビ
スマレイミドトリアジン樹脂であり、熱硬化性樹脂(a)
は室温で固体のエポキシ樹脂である。
【0033】本発明によれば、上記の原料粉末を圧縮成
形し、得られた成形体を加熱して2種類の熱硬化性樹脂
(a) および(b) を硬化させることを特徴とする、ボンド
型永久磁石の製造方法も提供される。
【0034】このボンド磁石の製造方法の好適態様にお
いては、圧縮成形で得られた成形体を加熱硬化させる前
に、揮発性成分を含む熱硬化性樹脂(b) の溶液を含浸さ
せ、および/または圧縮成形を、熱硬化性樹脂(a) およ
び(b) の軟化温度以上、かつ樹脂(a) の硬化開始温度未
満で樹脂(b) の揮発性成分の揮発温度未満、さらに潤滑
剤(c) の融解温度以上の温間で行う。希土類・鉄系磁石
材料が磁気異方性である場合には、圧縮成形を磁場の作
用下に行うことが好ましいのは当然である。
【0035】
【発明の実施の形態】
[磁石粉末]本発明で使用する磁粉は、永久磁石用の希土
類・鉄系合金、即ち、R (ただしRはYを含む希土類元
素の1種以上) と、Fe (Feの一部はCoで置換されていて
もよい) と、Bとを基本組成とする希土類・鉄系合金か
らなる粉末である。
【0036】合金組成は特に制限されないが、通常は、
重量%でRが25〜33%、Feが64〜74%、Bが0.8 〜1.3
%である。Feの半量までCoで置換してもよい。Rは1種
もしくは2種以上でよく、Ndおよび/またはPrを単独ま
たは他の希土類元素との混合物として使用することが好
ましい。上記以外に、Al、Cr、Mn、Mg、Si、Cu、C、N
b、Ge、Ga、W、V、Zr、Ti、Mo、Bi、Ta、Hf、P、S
等の1種または2種以上の元素を少量添加してもよい。
【0037】本発明で使用する磁粉は、磁気異方性と磁
気等方性のいずれの粉末でもよい。磁気異方性は、例え
ば 700〜900 ℃で水素化処理し、その後、減圧下で脱水
素化処理を行うことにより付与できる。別の手法とし
て、熱間後方押出加工により磁気異方性を発現させた磁
石粉末 (例えば、ゼネラルモーターズ社製のMQ-3粉末)
もあり、これも本発明に使用できる。
【0038】一般に磁気異方性の磁粉の方が磁気等方性
の磁粉より歪みが大きく損傷し易いので、本発明による
効果がより顕著に得られるが、希土類・鉄系磁石合金そ
れ自体が酸化し易く、強度も非常に高いわけではないの
で、磁気等方性の磁粉の場合にも、耐熱性、耐酸化性、
耐食性、磁気特性、機械的強度の向上という本発明によ
る効果は十分に得られる。
【0039】磁粉は、平均粒径が20μm以上であること
が望ましい。平均粒径が20μmより小さいと、保磁力、
磁石の減磁曲線の角型性等の磁気特性の劣化が見られ、
さらに、比表面積が大きくなりすぎるため、耐熱性、耐
酸化性、耐食性にとっても不利となる。磁石粉末の平均
粒径は好ましくは20〜500 μm、より好ましくは30〜30
0 μmである。
【0040】[磁粉の樹脂および潤滑剤被覆による原料
粉末の調製]本発明では、上記の希土類・鉄系合金の磁
粉に、異なる2種類の熱硬化性樹脂(a) および(b) と潤
滑剤(c) とを用いて、3層構造の被覆を施す。一方の熱
硬化性樹脂(b) は揮発性成分を含む。以下、この揮発性
成分を含む熱硬化性樹脂(b)を単に「揮発性樹脂」とい
い、他方の熱硬化性樹脂(a) を単に「熱硬化性樹脂」と
いう。揮発性樹脂と熱硬化性樹脂のいずれも、室温で固
体のものが好ましく、またそれぞれ1種または2種以上
を使用できる。潤滑剤は、融解温度が30〜120℃の範囲
のものが好ましく、これも1種または2種以上を使用で
きる。
【0041】3層被覆の最内層を構成する揮発性樹脂
は、その硬化開始温度よりも低温で揮発する成分を含む
ものであれば、その種類は特に制限されない。磁粉の表
面や熱硬化性樹脂の極性基との親和性が良い極性基を分
子内に持つ化学構造であることが好ましい。このような
揮発性樹脂の例は、トリアジン樹脂およびビスマレイミ
ドトリアジン樹脂である。中でもビスマレイミドトリア
ジン樹脂が好ましい。
【0042】トリアジン樹脂は、下記構造式(1) で示さ
れるビスフェノールAのシアン酸エステルを環化重合さ
せることにより得られる、下記構造式(2) で示されるト
リアジン骨格の反復単位を持つオリゴマー(トリアジン
オリゴマーと呼ばれる)を主成分とする樹脂である。得
られたオリゴマーがトリアジン骨格を持つため、構造式
(1) で示されるモノマー (ビスフェノールAのシアン酸
エステル) もトリアジンモノマーと呼ばれている。
【0043】
【化1】
【0044】トリアジンモノマーの環化重合の生成物
は、上記のトリアジンオリゴマーの他に、未反応のトリ
アジンモノマーも含んでいる。従って、トリアジン樹脂
は、上記のトリアジンモノマーとトリアジンオリゴマー
との混合物である。このモノマーとオリゴマーはいずれ
も揮発性である。即ち、トリアジン樹脂はそれ自体揮発
性の熱硬化性樹脂である。
【0045】ビスマレイミドトリアジン樹脂は熱硬化性
ポリイミドの1種であって、無水マレイン酸と芳香族ジ
アミンとの反応生成物であるビスマレイミドに、共重合
成分として上記のトリアジン樹脂を配合した樹脂であ
る。従って、揮発性成分 (トリアジン樹脂) を含有して
いる。通常は、ビスマレイミドよりトリアジン樹脂の方
が多量に配合される。
【0046】ビスマレイミドの形成に用いる芳香族ジア
ミンは、アニリンとホルマリンとから得られるメチレン
ジアニリンが一般的である (この場合のビスマレイミド
の構造式を次の(3) 式に示す) が、m−アミノ安息香酸
とヒドラジンとの反応により得られるm−アミノ安息香
酸ヒドラジド等の他のジアミンも使用される。芳香族ジ
アミンがメチレンジアニリンであるビスマレイミドトリ
アジン樹脂は、三菱瓦斯化学よりBTレジンなる商品名
で市販されている。
【0047】
【化2】
【0048】ビスマレイミドトリアジン樹脂とトリアジ
ン樹脂はいずれも、昇温するとまず軟化・溶融するが、
約150 ℃でトリアジンモノマーおよびトリアジンオリゴ
マーが揮発し、さらに昇温させると約170 ℃以上の温度
で硬化反応が起こる。従って、樹脂の硬化開始温度より
低温で揮発性成分が揮発する。後述するように、原料粉
末を圧縮成形した後、得られた成形体を硬化開始温度よ
り高温に加熱して被覆樹脂を硬化させる。この加熱過程
で、硬化開始前に、磁粉表面の揮発性樹脂被覆から揮発
性成分が揮発し、一部は近くにある活性な新生破面や空
隙に付着し、その間に昇温が進んで硬化開始温度に達す
ると、付着した揮発性成分は再揮発せずにその場所で硬
化樹脂になる。こうして圧縮成形中に生じた新生破面や
磁粉間の空隙にも樹脂が付着して、それらが樹脂で被覆
ないし充填される。
【0049】3層被覆の最外層を構成する熱硬化性樹脂
もその種類は特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、
フェノール樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂などが使用
できる。好ましい熱硬化性樹脂は、従来と同様にエポキ
シ樹脂である。エポキシ樹脂としては、室温で固体のビ
スフェノールA型樹脂が好ましいが、ノボラック型等の
他のエポキシ樹脂も使用できる。熱硬化性樹脂は、必要
に応じて、硬化剤、硬化促進剤と一緒に使用する。
【0050】3層被覆の中間層を構成する室温で固体の
潤滑剤は、融解温度が30〜120 ℃であれば種類は特に制
限されず、例えば炭化水素、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂
肪酸エステル、脂肪族アルコール、ポリグリコール、ポ
リグリセロール、脂肪酸塩、金属石けん、天然ワック
ス、シリコーンなどの各種の潤滑剤を使用できる。ま
た、脂肪酸以外の有機酸、脂肪酸以外の有機酸のエステ
ル、脂肪族アミンなども、室温で固体の潤滑剤として使
用できる。
【0051】潤滑剤として好ましいのは、疎水性の長鎖
アルキル基を有するものであり、磁石粉末の表面や熱硬
化性樹脂に存在する極性基との親和性が良い極性基を分
子内に有する化学構造のものがより好ましい。具体例と
しては、パラフィン、ステアリン酸、オレインアミド、
ステアリルアミン、ステアリルアルコール等が挙げられ
る。潤滑剤の融解温度は好ましくは50〜100 ℃である。
【0052】前述したように、揮発性樹脂と熱硬化性樹
脂はいずれも室温で固体のものが好ましく、さらに好ま
しくは軟化温度が40〜120 ℃、特に50〜100 ℃のもので
ある。揮発性樹脂と熱硬化性樹脂の軟化温度はいずれが
高くなってもよい。
【0053】磁粉を被覆する揮発性樹脂と熱硬化性樹脂
と潤滑剤が全て室温で固体であると、これらで被覆した
原料粉末 (コンパウンド) は流動性に富む粉体として取
り扱える。その結果、金型への粉末の充填性がよくな
り、均質な成形体が得られ、成形体中の局部的な密度の
変動が小さく、かつ製品磁石のロット間の密度バラツキ
も小さく、また、圧縮成形体の密度が増大し、磁粉充填
率が向上する。また、成形体の機械的強度が高いため、
搬送等の取り扱い時の成形体の端部や角部の欠けが生じ
にくく、寸法精度と製品歩留まりが向上する。
【0054】しかし、両樹脂の軟化温度が40℃未満また
は潤滑剤の融解温度が30℃未満では、これらが室温で液
状であるか、或いは粘着性を示すため、原料粉末が互い
に凝集または融着して流動性が低下し、金型への給粉性
が低下する傾向がある。また、気温が高い場合に、樹脂
が軟化し、原料粉末の貯蔵安定性が低下する。
【0055】両樹脂の軟化温度または潤滑剤の融解温度
が120 ℃より高くなると、圧縮成形時に金型内に投入し
た原料粉末を、両樹脂が軟化するか、または潤滑剤が融
解するまで加熱するのに時間がかかり、金型の温度調整
と磁気回路の設計が難しくなる上、磁粉の熱劣化、酸化
劣化が生じやすくなる。また、潤滑剤の融解温度が成形
温度より高くなると、圧縮成形時に潤滑剤は固体のまま
であり、潤滑性が期待するほど向上しないばかりか、製
造されたボンド磁石中に潤滑剤が粉末状態で残るため、
磁粉と樹脂との密着性が低下し、磁石の機械的強度、耐
食性、耐酸化性が低下する。
【0056】本発明の原料粉末は、最内層が揮発性樹
脂、中間層が潤滑剤、最外層が熱硬化性樹脂の3層構造
の被覆を磁粉に施したものである。それにより、隣接す
る磁粉間の熱硬化性樹脂による接着性が良くなり、磁石
の機械的強度が向上する。また、温間プレス時に成形体
から溶融した揮発性樹脂がしみ出たり、樹脂硬化時に揮
発性樹脂が磁石の外部へ飛散する現象を、最外層の熱硬
化性樹脂により防止することができる。さらに、この効
果により、揮発性樹脂が少量でも磁粉の新生破面を再被
覆できるので、目的とする磁粉の熱劣化、酸化劣化の防
止を実現できる。最内層の揮発性樹脂は、最外層の熱硬
化性樹脂に比べて軟化温度が高く、溶融流動性が低いこ
とが多く、磁粉間の潤滑性を低下させる傾向があるが、
中間層として潤滑剤を介在させることで、この潤滑性の
低下を補うことができる。
【0057】磁粉に3層構造の被覆を形成するには、例
えば次のようにすればよい。まず最内層となる揮発性樹
脂を適当な有機溶媒に溶解して低粘度の樹脂液を調製
し、磁粉と混合した後、溶剤を揮発させ最内層の樹脂層
を磁粉の表面に形成する。この最内層樹脂層の上に、中
間層となる潤滑剤を同様にして、溶液化して被覆し、中
間層の潤滑剤層を形成する。さらに、最外層となる熱硬
化性樹脂を同様にして、溶液化して被覆し、最外層の樹
脂層を形成する。中間層の潤滑剤の溶液は、最内層の樹
脂層を溶解しにくい溶媒を用いて調製する。同様に最外
層の熱硬化性樹脂の溶液は、最内層の樹脂層および中間
層の潤滑剤層を溶解しにくい溶媒を用いて調製する。最
内層、中間層および最外層のいずれも、被覆に用いる液
は、溶液に限定されるものではなく、エマルジョン、懸
濁液等の形態であってもよい。
【0058】磁粉の被覆に使用する樹脂液には、所望に
よりシラン系カップリング剤、チタネート系カップリン
グ剤、潤滑剤などの添加剤を少量配合することもでき
る。また、磁粉を予めシラン系もしくはチタネート系カ
ップリング剤で予め表面処理しておくこともできる。
【0059】被覆方法は上記の方法に限定されるもので
はなく、上記と同等の均一な樹脂被覆もしくは潤滑剤被
覆が可能な方法であれば、他の方法を採用することもで
きる。例えば、揮発性樹脂と熱硬化性樹脂および潤滑剤
のうちの1つまたは2つ以上が、加熱すると溶融粘度が
小さい融液を形成する場合には、融液を磁粉と混練する
溶融被覆法により被覆を行ってもよい。
【0060】ただし、この方法で、中間層と最外層を形
成できるのは、軟化温度または融解温度が最内層樹脂、
中間層潤滑剤、最外層樹脂の順に低くなる場合に限られ
る。即ち、最内層樹脂の軟化温度より低温で溶融被覆法
による中間層潤滑剤の被覆を行い、中間層潤滑剤の融解
温度より低温で溶融被覆法による最外層樹脂の被覆を行
う。もちろん、上記の溶液状態での被覆方法と溶融状態
での被覆方法とを組み合わせてもよい。
【0061】各樹脂と潤滑剤の被覆量は、被覆後の粉末
重量に対する重量%で、最内層の揮発性樹脂が 0.1〜5.
0 %、好ましくは 0.1〜3%、より好ましくは 0.5〜2.
0 %であり、最外層の熱硬化性樹脂は 0.5〜10.0%、好
ましくは 1.0〜5.0 %、より好ましくは 1.5〜4.0 %で
り、中間層の潤滑剤は0.01〜3.0 %であり、好ましくは
0.05〜2.0 %、より好ましくは 0.1〜1.0 %である。そ
して最外層樹脂と最内層樹脂と潤滑剤の合計被覆量は
1.0〜10.0%、より好ましくは 2.0〜5.0 の範囲内であ
る。また、最外層樹脂の被覆量の方が、最内層樹脂の被
覆量より多くすることが好ましい。
【0062】揮発性樹脂の被覆量が0.1 %未満では、新
生破面の被覆が不十分となり、ボンド磁石の耐熱性が向
上しない。揮発性樹脂の配合量が5.0 %を越えると、成
形されたボンド磁石の機械的強度が低下する。
【0063】一方、熱硬化性樹脂の被覆量が0.5 %未満
では、磁粉間の結合が不十分となり、成形性が悪く、か
つ成形体およびボンド型磁石の機械的強度が著しく低下
する。熱硬化性樹脂の配合量が10%を越えると、磁粉の
充填率が小さくなり、所定の高磁気特性を発揮できなく
なる。
【0064】また、潤滑剤の被覆量が0.01%未満では、
潤滑効果が不十分となり、成形性が悪くなることがあ
る。一方、潤滑剤の被覆量が3.0 %を越えると、得られ
たボンド磁石の機械的強度が低下する。
【0065】このように、潤滑剤の配合量は、バインダ
ー樹脂に比べて少量であるが、本発明の構成のような3
層構造にすれば、バインダー樹脂による隣接粉末間の結
合力が十分に発揮されるため、潤滑剤の配合量を従来よ
りは増加することが可能となる。
【0066】[磁場中の圧縮成形]磁粉を揮発性樹脂と熱
硬化性樹脂および潤滑剤の3層で被覆した原料粉末を、
圧縮成形 (プレス成形) して成形体 (圧粉体) を得る。
各磁粉が予め2種類の樹脂と潤滑剤で均一に被覆されて
いるため、圧縮成形により、均質な成形体を得ることが
できる。
【0067】磁粉が磁気異方性である場合には、周知の
ように圧縮成形を磁場中で行う。それにより、圧縮成形
中に個々の磁粉の磁化容易方向が磁場の方向に揃い、磁
粉が配向した磁気異方性の成形体が得られる。一般に磁
気異方性のボンド磁石では、磁粉の配向度が高いほど磁
気特性が向上する。磁場の印加方法についてはこれまで
に各種の方法が提案されており、それらを適宜利用すれ
ばよい。
【0068】圧縮成形は室温で行ってもよいが、揮発性
樹脂と熱硬化性樹脂の両樹脂の軟化温度以上で、かつ熱
硬化性樹脂の硬化開始温度および揮発性樹脂の揮発性成
分の揮発温度(この揮発温度は、この樹脂の硬化開始温
度より低温である)より低温で、さらに潤滑剤の融解温
度以上の温間で行う方が好ましい。それにより、軟化し
た両樹脂および潤滑剤の潤滑効果のために、磁粉相互間
および磁粉と樹脂間の摩擦が低減し、次の(1) 〜(3) に
述べるように、磁粉の充填率と配向度が増大し、磁粉の
損傷が抑制され、磁気特性、機械的強度、耐熱性、耐酸
化性、耐食性に優れたボンド磁石が得られる。
【0069】(1) 摩擦低減により、空隙が減少し、磁粉
の充填率が向上した高密度の成形体、したがってボンド
磁石が得られる。そのため、磁気特性、機械的強度、耐
熱性、耐酸化性、耐食性が向上する。
【0070】(2) 磁粉が磁気異方性である場合には、摩
擦低減により、磁場中で圧縮成形する際に各磁粉の回転
が容易になるので、磁粉の磁化容易方向が磁場方向に揃
いやすくなり、磁粉の配向度が向上して、磁気特性が向
上する。
【0071】(3) 本発明で用いる希土類・鉄系合金の磁
粉、特に磁気異方性の磁粉は、一般に熱処理を受けてい
ることから粉末の強度が低下している。そのため被覆時
の磁粉と樹脂との混合のトルクや、圧縮成形時の圧縮圧
力により破砕・歪みを受けて損傷し易く、この磁粉の損
傷がボンド磁石の磁気特性の低下の大きな原因であるこ
とを本発明者は究明した。
【0072】樹脂が軟化する温間で圧縮成形することに
より摩擦を低減させると、圧縮成形時の磁粉の損傷が抑
制され、活性な新生破面の発現が抑えられるため、これ
らによる磁気特性の低減や、機械的強度、耐熱性、耐酸
化性、耐食性などの各種特性の劣化を避けることができ
る。この効果は磁気異方性の磁粉で特に顕著であるが、
磁気等方性の磁粉である程度得られる。
【0073】圧縮成形は、常法に従って、原料粉末をプ
レス金型に充填し、好ましくは所定の温間プレス温度に
加温し、次いで磁場の印加下に上下の押さえ治具 (パン
チ)により加圧・圧縮することにより実施できる。
【0074】金型内の原料粉末の加熱手段に特に制限は
ないが、金型を加熱して伝熱により行うことが簡便であ
る。金型の加熱手段としては、例えば抵抗加熱、油等の
熱媒による加熱、高周波加熱などが利用できる。加熱時
間を短縮するため、金型を予熱しておいてもよい。ま
た、金型内の原料粉末に通電し、その抵抗加熱により磁
性粉末を直接加熱する方法を採用できる。さらに、プレ
ス成形機の上下のパンチの一方に超音波振動を加えるこ
とにより、摩擦熱で原料粉末を直接加熱する方法も可能
である。
【0075】磁場の印加方法は、圧縮方向と平行な磁場
(縦磁場ともいう) 、これと垂直な磁場 (横磁場ともい
う) 、半径方向のラジアル配向磁場、半径方向の極配向
磁場、のいずれでもよい。磁界強度は特に制限されない
が、通常は4〜20 kOeの範囲内である。また、静磁場に
加えて、パルス磁場を印加してもよい。プレス圧力は、
2〜12 ton/cm2の範囲内が適当である。
【0076】[揮発性樹脂の含浸]圧縮成形後、脱型した
成形体は、そのまま加熱して2種類の熱硬化性樹脂を硬
化させてもよいが、その前に成形体中の空隙部に揮発性
樹脂を充填するように、成形体にこの樹脂を含浸させて
もよい。
【0077】成形体に熱硬化前に揮発性樹脂を含浸して
おくことにより、熱硬化のための加熱中に、硬化に先立
って最内層の揮発性樹脂だけでなく、含浸した揮発性樹
脂からも、その揮発性成分が揮発して磁粉に再付着する
ことにより、新生破面が被覆され、この再付着時に磁粉
内の空隙が充填されて、耐熱性、耐酸化性、耐食性、機
械的強度が向上したボンド磁石が得られる。従って、こ
れらの特性をさらに向上させたい場合には、この含浸を
行うことが好ましい。含浸させた揮発性樹脂から揮発し
た成分は、最外層に存在するエポキシ樹脂等の接着性に
優れた熱硬化性樹脂に捕捉され易いので、加熱炉の内壁
等への付着が抑制される。
【0078】この含浸は、例えば、成形体を揮発性樹脂
の溶液中に浸漬して減圧するといった方法で実施でき
る。含浸後、溶液から取り出した成形体の表面の樹脂液
を拭き取り、そのまま硬化のための加熱を行うことがで
きる。この加熱中に含浸に用いた溶媒は除去されるの
で、含浸工程において溶媒の除去は必要ないが、もちろ
ん硬化前に溶媒を除去しても構わない。
【0079】揮発性樹脂の溶液の濃度は、低いほど空隙
部へ侵入しやすい、つまり樹脂の含浸量が多くなる。し
かし、溶液中の溶媒量が増大すると、成形体の表面にあ
るバインダー樹脂成分が溶出し、磁粉が脱離する可能性
があり、これは磁気特性の低下、および寸法精度や磁気
内での特性のバラツキを生じるので好ましくない。そこ
で、含浸時に使用する溶媒量を可能な限り少量とする
か、成形体中のバインダー成分を溶解しにくい溶媒を樹
脂含浸用に選択することが好ましい。
【0080】成形体の空隙に揮発性樹脂を充填できる方
法であれば、含浸処理以外の方法、例えば真空蒸着法も
可能であるが、生産性の点から実際的ではない。
【0081】[樹脂の熱硬化]圧縮成形で得られた成形体
を、場合により上記のように揮発性樹脂で含浸処理した
後、適当な加熱設備 (例、加熱炉) に移して加熱し、揮
発性樹脂と熱硬化性樹脂の両者を熱硬化させると、ボン
ド磁石が得られる。この加熱条件は、揮発性樹脂と熱硬
化性樹脂が完全に硬化するように、樹脂種や硬化剤、硬
化促進剤の種類に応じて選択する。加熱雰囲気は、磁粉
の酸化を防ぐために、真空あるいは不活性ガスなどの無
酸素雰囲気とすることが好ましい。得られたボンド磁石
は、必要により、常法により塗装やメッキなどの表面処
理を施してもよい。
【0082】この加熱により、磁粉を被覆している2種
類の樹脂と潤滑剤はいずれも一旦軟化して溶融し、流動
するため、空隙がある程度は樹脂と潤滑剤で充填され
る。さらに昇温すると、揮発性樹脂からはその硬化が起
こる前に揮発性成分が揮発し、揮発した成分が磁粉に再
付着する際に圧縮成形時の磁粉の粉砕で生じた新生破面
にも付着するため、新生破面が被覆され、新生破面によ
る熱劣化や酸化劣化が防止され、ボンド磁石の耐熱性、
耐酸化性、耐食性が向上する。また、この際にも空隙の
充填も起こるので、空隙率は一層低下する。この充填作
用は、特に成形体を上記のように含浸処理した場合によ
り顕著となる。
【0083】そのため、本発明の方法で製造されるボン
ド磁石は、空隙率が5.0 体積%以下、好ましくは3.0 体
積%以下、特に好ましくは2.0 体積%以下である。空隙
率の低下により、高い残留磁化(Br)が得られ、機械的強
度が向上する。さらに、空隙中の酸素や空隙を通路とし
てボンド磁石に侵入する酸素、水に起因する磁粉の熱劣
化、酸素劣化も抑制される。
【0084】なお、本発明において、空隙率は次式によ
り算出される値である。 [(理論密度−実測密度) /理論密度] ×100(%) ここで、理論密度とは空隙が全くない磁性粉末と被覆樹
脂だけから成る磁石の密度の計算値である。
【0085】
【実施例】本発明の効果を実施例により実証する。実施
例および比較例中、%および部は特に指定のない限り、
重量%および重量部である。なお、実施例で使用した材
料、磁粉の被覆方法、ボンド磁石の作製方法および試験
方法は次の通りである。
【0086】[磁粉]Nd:28%、Co:10%、Ga:1%、
B:1%、Zr:0.1 %、残部:Feの組成を持つNd−Fe−
B系合金を、 700〜900 ℃の水素ガス中に保持して、Nd
の水素化物、Fe2B、Feに分解する。次にこの温度領域で
水素圧を下げ、Ndの水素化物から水素を解離させ、微細
なNd2Fe14B結晶体からなる磁粉を作製した。得られた磁
粉を、分級して、粒度分布が38〜300 μm (平均粒径12
5 μm) の磁気異方性のNd−Fe−B系合金の磁粉を調製
した。
【0087】別に溶融合金の急冷凝固により磁気等方性
のNd−Fe−B系合金粉末を調製した。合金組成および粒
度分布は上記と同じであった。
【0088】[揮発性樹脂]揮発性樹脂 (溶融被覆用) 三菱瓦斯化学社よりBTレジン BT2100 として市販され
ている、室温で固体のビスマレイミドトリアジン樹脂
(軟化温度80℃) をそのまま使用した。この揮発性樹脂
のトリアジン含有率 (ビスマレイミドを含む樹脂全量に
対するトリアジンモノマーおよびオリゴマーの合計量)
は90%、軟化温度は約80℃、揮発成分の揮発温度は約15
0 ℃、硬化開始温度は約170 ℃である。
【0089】揮発性樹脂 (溶液被覆および含浸用) 三菱瓦斯化学社よりBTレジン BT2060Bとして市販され
ている、室温で固体のビスマレイミドトリアジン樹脂70
%をメチルエチルケトン30%に溶解して使用した。この
揮発性樹脂の軟化温度、揮発成分の揮発温度、および硬
化開始温度は上記と同じである。
【0090】[熱硬化性樹脂]熱硬化性樹脂 (溶融被覆用) 室温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (軟化温
度60℃) 100 部と変性アミン系硬化剤25部を60℃で溶融
混練して用いた。このエポキシ樹脂の軟化温度は60℃、
硬化開始温度は120 ℃である。
【0091】熱硬化性樹脂 (溶液被覆用) 室温で固体のクレゾールノボラック系エポキシ樹脂 (軟
化温度60℃) 30%とフェノール樹脂系硬化剤7%をメチ
ルエチルケトン63%に溶解し、25℃での粘度が5cps の
低粘度液状のエポキシ樹脂溶液を得た。このエポキシ樹
脂の軟化温度と硬化開始温度は上記熱硬化性樹脂とほ
ぼ同じである。
【0092】[潤滑剤]室温で固体のパラフィン (融解温
度68〜70℃) を潤滑剤として用いた。この潤滑剤の被覆
は溶融被覆法で行った。
【0093】[被覆方法]溶融被覆法 (揮発性樹脂、熱硬化性樹脂、潤滑剤) 磁粉を所定割合の樹脂または潤滑剤と混合し、80℃ (揮
発性樹脂の場合) または70℃ (潤滑剤の場合) または
60℃ (熱硬化性樹脂の場合) に加熱して、樹脂または
潤滑剤の溶融状態で混練した。
【0094】3層被覆の場合は、最初に80℃で揮発性樹
脂と溶融混練した後、70℃まで冷却して潤滑剤と溶融
混練し、さらに60℃まで冷却して熱硬化性樹脂と溶融
混練した。
【0095】溶液被覆法 (揮発性樹脂、熱硬化性樹脂
) 磁粉を所定割合の樹脂または潤滑剤の溶液と混合し、室
温で溶媒を蒸発させた後、乳鉢で粉砕した。本実施例で
は、揮発性樹脂と熱硬化性樹脂の溶液を同じ溶媒を
用いて調製したため、3層被覆および2層被覆の場合に
は、最内層の形成のみに溶液被覆法を採用した。
【0096】比較例では、揮発性樹脂または熱硬化性樹
脂で1層被覆するか、あるいは潤滑剤を添加しないで揮
発性樹脂と熱硬化性樹脂で2層被覆した。いずれの場合
も、被覆作業の終了後、最後に乳鉢で粉末を解砕して、
被覆作業中に固着した粉末をほぐした。
【0097】[ボンド磁石の作製方法]圧縮成形 上記のように樹脂被覆した磁粉 (原料粉末) を、圧縮成
形機の金型に充填した後、磁粉が磁気異方性である場合
には10 kOeの横磁場の印加下に、磁粉が磁気等方性であ
る場合には磁場を印加せずに、圧力6ton/cm2 で80℃で
温間圧縮成形した。
【0098】揮発性樹脂の含浸 圧縮成形後、脱型した成形体の一部については、揮発性
樹脂の溶液中に浸漬し、減圧下におくことで、成形体
の空隙中に存在する空気と樹脂を置換して含浸を行っ
た。含浸後、溶液から取り出した成形体の表面の樹脂液
を拭き取り、引きつづき熱硬化処理を行った。
【0099】樹脂の熱硬化 脱型し、場合により揮発性樹脂による含浸処理を行った
成形体を、真空中またはArガス中で175 ℃に120 分間加
熱して被覆樹脂を硬化させ、ボンド磁石のサンプルを得
た。磁石サンプルの形状は、長さ100 mm、幅10mm、厚さ
5mmの短冊形状と、10mm立方の立方形状の2種類とし
た。
【0100】[試験方法]ボンド磁石の磁気特性、曲げ強
度、耐熱性について、次の要領で評価した。
【0101】(1) 磁気特性 10mm立方のボンド磁石サンプルを用い、これを40 kOeで
着磁後、BHトレーサーにより残留磁化(Br)、保磁力(iH
c) 、減磁曲線の角型性(Hk)ならびに最大エネルギー積
[(BH)max] を測定した。減磁曲線の角型性(Hk)は、磁化
が残留磁化(Br)の90%になる時の磁界(H) の大きさを意
味し、磁粉の損傷が大きいほどHkが低下することが判明
しているので、磁粉の損傷度の指標となる。
【0102】なお、磁粉の配向度は次式により算出し
た。
【0103】
【数1】
【0104】式中、Br(//) は圧縮成形時のプレス方向
と平行方向のBrであり、Br(⊥) は圧縮成形時のプレ
ス方向と垂直方向のBrである。
【0105】(2) 曲げ強度 100 mm×10mm×5mmのボンド磁石サンプルを用いて、JI
S K7203 の硬質プラスチックスの曲げ試験方法に準じて
行った。支点間距離は75mm、試験速度は2mm/分で行
い、結果より曲げ破壊強度を算出した。
【0106】(3) 耐熱性 10mm立方のボンド磁石サンプルを120 ℃ (成形体を揮発
性樹脂で含浸処理しない場合) または140 ℃ (成形体を
揮発性樹脂で含浸処理した場合) の大気雰囲気に1000時
間放置し、1000時間後の試験片の磁気特性を測定し、減
磁曲線の角型性Hkの低下率で耐熱性を評価した。
【0107】(実施例1)本実施例は、圧縮成形により得
られた成形体を、揮発性樹脂による含浸処理を行わず
に、熱硬化させることによりボンド磁石を作製する例を
示す。これらのボンド磁石の構成 (磁粉の異方性の有
無、被覆の構成および各層の被覆量<被覆後の粉末重量
に対する%>) を表1に、試験結果を表2に示す。な
お、耐熱性試験の試験温度は120 ℃である。
【0108】試験No.1〜4 (実施例) 磁気異方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂、中間層のパラフィン、最外層のエポキシ樹脂
を、いずれも溶融被覆法により順に3層被覆した原料粉
末からボンド磁石を作製した。
【0109】試験No.5〜8 (実施例) 磁気異方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂を溶液被覆法で、中間層のパラフィンと最外層の
エポキシ樹脂の両者を溶融被覆法により、順に3層被覆
した原料粉末からボンド磁石を作製した。
【0110】試験No.9〜11 (比較例) 磁気異方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂と最外層のエポキシ樹脂を、いずれも溶融被覆法
により順に2層被覆した原料粉末からボンド磁石を作製
した。
【0111】試験No.12 〜14 (比較例) 磁気異方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂を溶液被覆法で、最外層のエポキシ樹脂を溶融被
覆法で、順に2層被覆した原料粉末からボンド磁石を作
製した。
【0112】試験No.15 (比較例) 磁気異方性の磁粉にエポキシ樹脂を溶融被覆法により1
層被覆した原料粉末からボンド磁石を作製した。
【0113】試験No.16 (比較例) 磁気異方性の磁粉にビスマレイミドトリアジン樹脂を溶
融被覆法により1層被覆した原料粉末からボンド磁石を
作製した。
【0114】試験No.17 〜19 (比較例) 磁気異方性の磁粉に、ビスマレイミドトリアジン樹脂と
エポキシ樹脂との混合物を溶融被覆法により1層被覆し
た原料粉末からボンド磁石を作製した。
【0115】試験No.20 〜22 (比較例) 磁気異方性の磁粉に、ビスマレイミドトリアジン樹脂と
エポキシ樹脂との混合物を溶液被覆法により1層被覆し
た原料粉末からボンド磁石を作製した。
【0116】試験No.23 〜25 (実施例) 磁気等方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂、中間層のパラフィン、最外層のエポキシ樹脂
を、いずれも溶融被覆法により順に3層被覆した原料粉
末からボンド磁石を作製した。
【0117】試験No.26 〜28 (比較例) 磁気異方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂と最外層のエポキシ樹脂を、いずれも溶融被覆法
により順に2層被覆した原料粉末からボンド磁石を作製
した。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】表1および表2から明らかな通り、本発明
に従って希土類・鉄系合金からなる磁粉を、揮発性樹脂
と熱硬化性樹脂と潤滑剤の3層で被覆した原料粉末を用
いて、磁場中で温間プレス成形すると、3層の樹脂の合
計被覆量が5%程度までであるにもかかわらず、耐熱
性、耐酸化性が改善されたボンド磁石が得られる。
【0121】また、このボンド磁石は、磁粉の充填率が
大きく、空隙率が小さく、かつ磁粉の配向度も大きく、
磁石粉末の損傷が抑えられているので、磁気特性と機械
的強度も大きく向上した。なお、以上の効果は、磁粉が
磁気異方性である場合だけでなく、磁気等方性の磁粉の
場合にも得られた。
【0122】(実施例2)本実施例の試験No.1〜3 と試験
No.7〜9 は、圧縮成形により得られた成形体を揮発性樹
脂により含浸処理した後、熱硬化させることによりボン
ド磁石を作製する例を示し、試験No.4〜6と試験No. 10
〜12はこの含浸処理を行わなかった例を示す。
【0123】なお、被覆に用いた揮発性樹脂と熱硬化性
樹脂は、いずれもの溶融被覆用のものであった。これ
らのボンド磁石の構成 (磁粉の異方性の有無、被覆の構
成および各層の被覆量<被覆後の粉末重量に対する%
>、含浸処理の有無) を表3に、試験結果を表4に示
す。なお、含浸処理するとボンド磁石の耐熱性が向上す
るため、耐熱性試験の温度は140 ℃と高くした。
【0124】試験No.1〜3 磁気異方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂、中間層のパラフィン、最外層のエポキシ樹脂
を、いずれも溶融被覆法により順に3層被覆した原料粉
末を圧縮成形し、得られた成形体に揮発性樹脂溶液を含
浸処理してから、樹脂の熱硬化を行って、ボンド磁石を
作製した。
【0125】試験No.4〜6 含浸処理を行わなかった点を除いて、試験No.1〜3と同
様に磁気異方性のボンド磁石を作製した。
【0126】試験No.7〜9 磁気等方性の磁粉に、最内層のビスマレイミドトリアジ
ン樹脂、中間層のパラフィン、最外層のエポキシ樹脂
を、いずれも溶融被覆法により順に3層被覆した原料粉
末を圧縮成形し、得られた成形体に揮発性樹脂を含浸処
理してから、樹脂の熱硬化を行って、ボンド磁石を作製
した。
【0127】試験No.10 〜12 含浸処理を行わなかった点を除いて、試験No.7〜9と同
様に磁気等方性のボンド磁石を作製した。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】表3および表4から明らかな通り、本発明
に従って希土類・鉄系合金からなる磁粉を揮発性樹脂と
熱硬化性樹脂と潤滑剤の3層で被覆した原料粉末の圧縮
成形により得られた成形体を、熱硬化前に揮発性樹脂で
含浸処理してボンド磁石を作製すると、含浸処理しなか
ったボンド磁石に比べて、耐熱性と曲げ破壊強度がさら
に向上した。この向上は、含浸された揮発性樹脂により
磁粉内の空隙が充填されたことに基づくものであり、磁
石の空隙率が大きく向上し、磁石密度もいくらか向上し
た。その結果、耐熱性に加えて、耐食性や耐酸化性も向
上する。この効果は磁粉が磁気異方性と磁気等方性のい
ずれの場合にも認められた。
【0131】なお、実施例2では、表4に示す含浸処理
しなかった試験No.4〜6および10〜12の耐熱性や空隙率
の結果が、同じく含浸処理していない実施例1の表2に
示す結果より悪くなっているが、これはバインダー (樹
脂+潤滑剤) の総量が、実施例1では表1に示すように
3.5 %、実施例2では表3に示すように3.0 %と相違す
るためである。バインダーの総量が多い実施例1の方
が、ボンド磁石の空隙率が小さく、耐熱性が良好とな
る。含浸処理すると、このようにバインダー総量が少な
いため空隙率や耐熱性が低下するのを防止することがで
きる。
【0132】
【発明の効果】本発明によれば、希土類・鉄系合金磁粉
に対して、硬化反応の開始前に揮発する成分を含む熱硬
化性樹脂からなる最内層と、温間圧縮成形中の磁粉間の
潤滑性の優れた潤滑剤からなる中間層と、接着性に優れ
た通常の熱硬化性樹脂からなる最外層という3層構造の
被覆を施した原料粉末を、好ましくは温間で圧縮成形
し、得られた成形体に好ましくは揮発性樹脂を含浸させ
た後、加熱して上記2種類の樹脂を硬化させてボンド磁
石を製造することにより、下記の効果を得ることができ
る。
【0133】(1) 圧縮成形時に生じた磁粉の活性な新生
破面を、樹脂硬化時に揮発性樹脂が被覆することによ
り、磁粉の熱劣化、酸化劣化を防止できるため、ボンド
磁石の耐熱性、耐酸化性、耐食性が向上する。また、原
料磁粉の表面が揮発性樹脂と熱硬化性樹脂で均一に被覆
されているので、成形および加熱硬化中の磁粉の酸化が
防止され、磁粉の酸化による磁気特性の低下を抑制でき
る。得られたボンド磁石においても、磁粉の表面が樹脂
で均一に被覆されていることから、使用時に高温高湿の
環境下に曝された場合も、磁粉の酸化防止作用が持続
し、耐熱性および耐食性が良好となる。
【0134】(2) 圧縮成形時に磁粉相互間および磁粉と
樹脂間の摩擦が低減されるため、得られたボンド磁石の
密度が増大すると共に、圧縮成形時に磁粉に対して割
れ、歪みなどの損傷が生じにくくなる。その結果、磁粉
間の空隙が少なく、磁粉の充填率が高いボンド磁石が得
られる。また、磁気異方性の磁粉では、摩擦低減により
磁場中での圧縮成形時の磁粉が回転が容易となって、磁
粉配向度が向上する。以上の結果、磁気特性が向上す
る。
【0135】(3) 少量の樹脂被覆量で原料磁粉が完全に
樹脂で結合され、しかも磁粉間の空隙が少なく、高密度
で充填されるため、ボンド磁石の機械的強度が向上し、
割れ、カケも生じにくく、寸法精度と製品歩留まりが向
上する。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類・鉄系磁石材料の粉末を、熱硬化
    性樹脂(a) と揮発性成分を含む熱硬化性樹脂(b) と潤滑
    剤(c) とで、樹脂(a) が最外層、樹脂(b) が最内層、潤
    滑剤(c) が中間層となるように3層被覆した粉末であっ
    て、熱硬化性樹脂(b) 中の揮発性成分が該樹脂の硬化開
    始温度より低温で揮発するものであり、潤滑剤(c) の融
    解温度が30〜120 ℃の範囲であることを特徴とする、圧
    縮成形によりボンド型永久磁石を製造するための原料粉
    末。
  2. 【請求項2】 3層被覆の被覆量が、被覆後の粉末重量
    に対する重量%で、熱硬化性樹脂(a) が 0.5〜10.0%、
    揮発性成分を含む熱硬化性樹脂(b) が 0.1〜5.0 %、潤
    滑剤(c) が0.01〜3.0 %であり、樹脂(a) と樹脂(b) と
    潤滑剤(c) の被覆量の合計が 1.0〜10.0%である、請求
    項1記載の原料粉末。
  3. 【請求項3】 揮発性成分を含む熱硬化性樹脂(b) が、
    室温で固体のトリアジン樹脂またはビスマレイミドトリ
    アジン樹脂である、請求項1または2記載の原料粉末。
  4. 【請求項4】 熱硬化性樹脂(a) が室温で固体のエポキ
    シ樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の
    原料粉末。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載
    の原料粉末を圧縮成形し、得られた成形体を加熱して2
    種類の熱硬化性樹脂(a) および(b) を硬化させることを
    特徴とする、ボンド型永久磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載
    の原料粉末を圧縮成形し、得られた成形体に揮発性成分
    を含む熱硬化性樹脂(b) の溶液を含浸させた後、加熱し
    て2種類の熱硬化性樹脂(a) および(b) を硬化させるこ
    とを特徴とする、ボンド型永久磁石の製造方法。
  7. 【請求項7】 圧縮成形を、熱硬化性樹脂(a) および
    (b) の軟化温度以上、かつ樹脂(a) の硬化開始温度未満
    で樹脂(b) の揮発性成分の揮発温度未満、さらに潤滑剤
    (c) の融解温度以上、の温間で行う請求項5または6に
    記載の方法。
  8. 【請求項8】 希土類・鉄系磁石材料が磁気異方性であ
    り、圧縮成形を磁場の作用下に行う請求項5ないし7の
    いずれか1項に記載の方法。
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