JPH0922828A - ボンド型永久磁石の製造方法 - Google Patents

ボンド型永久磁石の製造方法

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JPH0922828A
JPH0922828A JP7168702A JP16870295A JPH0922828A JP H0922828 A JPH0922828 A JP H0922828A JP 7168702 A JP7168702 A JP 7168702A JP 16870295 A JP16870295 A JP 16870295A JP H0922828 A JPH0922828 A JP H0922828A
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resin
magnet
powder
magnet powder
temperature
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JP7168702A
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Hideki Matsunaga
秀樹 松永
Nobutsugu Mino
修嗣 三野
Hideji Tsujimoto
秀治 辻本
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Hitachi Metals Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Sumitomo Special Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 密度と磁石粉末の充填率が高く、空隙率が低
く、磁気特性、機械的強度、耐熱性、耐食性 (耐酸化
性) 、寸法精度、成形性、圧縮成形原料粉末の貯蔵安定
性に優れたボンド型永久磁石を製造する。 【構成】 磁気異方性のNd−Fe−B系合金の磁石粉末
に、軟化温度40〜100 ℃のエポキシ樹脂の内層と、軟
化温度80〜150 ℃のエポキシ樹脂の外層からなる2層構
造の被覆、または軟化温度が40〜150 ℃のエポキシ樹
脂層と融解温度30〜120 ℃の潤滑剤層からなる2層構造
の被覆を施し、内層樹脂の軟化温度以上、またはエ
ポキシ樹脂の軟化温度以上で潤滑剤の融解温度以上 (い
ずれもエポキシ樹脂の硬化温度以下) の温間で磁場中に
て圧縮成形し、成形体を加熱してエポキシ樹脂を硬化さ
せ、ボンド型磁石を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂で被覆した磁石粉
末を圧縮成形した後、加熱して樹脂を固化ないし硬化さ
せることからなるボンド型永久磁石の製造方法に関す
る。より詳しくは、本発明は、高密度で磁石粉末の充填
率が高く、空隙率の小さい、磁気特性、機械的強度、耐
熱性、耐食性 (耐酸化性) 、寸法精度、および成形性に
優れたボンド型永久磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ボンド型永久磁石(以下、ボンド型磁石
という)は、ハードフェライトや希土類合金などの磁石
粉末を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル
樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリアミド樹脂、ポリ
プロピレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などの
熱可塑性樹脂をバインダーとして結合することにより、
成形を容易にした磁石である。
【0003】磁石粉末を焼結した従来の焼結型の永久磁
石に比べ、ボンド型磁石は、磁性を発現しない樹脂分を
含むため磁気特性は多少劣るが、焼結による収縮がない
ため、高い寸法精度で種々の形状の磁石が簡単に製造で
きるという特徴がある。そのため、一般家庭の各種電気
製品から大型コンピューターの周辺端末機器に至るまで
広く応用されており、特にスピンドルモーター、ステッ
ピングモーター等の小型モーターに近年多く用いられて
いる。
【0004】このボンド型磁石の成形方法としては、射
出成形、押出成形、圧縮成形(プレス成形)などが可能
である。射出成形と押出成形では、磁石粉末とバインダ
ーとの混合物が成形温度で流動しなければならないた
め、一般に熱可塑性樹脂をバインダーとして用い、バイ
ンダーの配合割合を比較的多くする必要がある。
【0005】一方、圧縮成形では流動性は必要ないた
め、バインダーとして熱硬化性樹脂が一般に使用され
る。圧縮成形によるボンド型磁石の一般的な製造におい
ては、まず原料磁石粉末と熱硬化性樹脂 (必要に応じて
硬化剤などの添加剤を含有する)とを混合して、コンパ
ウンドと呼ばれる樹脂被覆された磁石粉末を得る。この
コンパウンドを必要であれば粉砕した後、金型に充填し
てプレス機で圧縮成形して所望の形状に賦形し、成形体
を加熱して被覆樹脂を硬化させると、ボンド型磁石が得
られる。
【0006】圧縮成形は、押出成形や射出成形に比べる
と工程が多少複雑でコストが高いという欠点はあるが、
成形時に流動する必要がないため、磁石粉末の充填率を
上げる (樹脂の割合を低くする) ことが可能であり、磁
気特性がより優れたボンド型磁石を得ることができる。
【0007】しかし、近年のコンピューター、通信機器
をはじめとする電気・電子製品の小型化、高性能化の進
展はめざましく、それに対応して、ボンド型磁石のさら
なる磁気特性の向上が望まれている。そのためには、
用いる原料磁石粉末の磁気特性を向上させる、磁石中
の磁石粉末の磁気的配向度を増大させる、磁石中の磁
石粉末の体積充填率を大きくする、磁石中の磁石粉末
の酸化劣化、熱劣化を抑える、磁石製造時の磁石粉末
の損傷を抑えるといった対策が考えられる。
【0008】の磁気特性の向上手段として、希土類・
コバルト系 (=R−Co系、Rは希土類金属) や希土類・
鉄系 (=R−Fe−B系) を含む希土類系合金からなる磁
石粉末について、どの方向に磁化しても同じ磁気特性が
発現する従来の等方性磁石粉末とは異なり、特定の方向
(磁化容易方向) に対して高い磁気特性を示す磁気異方
性の磁石粉末 (以下では異方性磁石粉末という) が開発
されている。この異方性磁石粉末から磁石を製造する場
合、磁石の内部において各異方性磁石粉末の磁化容易方
向が同一方向に揃っている (配向している) ことが、磁
気特性の向上を得る条件となる。この磁石中の異方性磁
石粉末の配向度を増大させることが上記のに示した課
題である。
【0009】この配向は、一般に、成形時に磁場を印加
(即ち、磁場中で成形を行う) ことにより、各異方性磁
石粉末をその磁化容易軸が磁場方向を向くように回転さ
せることにより行われる。従って、ボンド型磁石の場合
には、成形時に個々の磁石粉末を回転しやすくする (す
なわち、粉末表面の摩擦抵抗を低くする) ような工夫が
必要である。
【0010】一方、の単位体積中の磁石粉末の充填率
を多くするには、樹脂割合を減らすか、または、圧縮成
形で作製する成形体の空隙を少なくすることが必要とな
る。しかし、ボンド型磁石の成形性、機械的強度を考慮
すると、樹脂量を少なくすることには限界があるため、
必要最低限の樹脂割合のもとで、成形体の空隙を減少さ
せ、磁石粉末の充填率を向上させる方法が検討されてき
た。
【0011】R−Fe−B系磁石は、酸素と結合しやすい
希土類元素と鉄が主体となるため、空気中において酸化
されやすく、そのまま熱硬化樹脂と混合して成形しても
所定の磁気特性を発揮しえず、磁気特性の安定化が困難
であることが経験されてきた。これには製造工程での外
気による磁石粉末の酸化の影響が関与しているものと推
測される。また、特に高温環境下で使用した場合に磁気
特性の劣化が顕著であった。この磁粉の酸化劣化、熱劣
化を抑制することが上記のの課題である。
【0012】の磁石製造時の磁石粉末の損傷 (割れや
歪み) を抑える手段については、従来ほとんど考慮され
てこなかった。しかし、特に磁気異方性のR−Fe−B系
(希土類・鉄系) 合金の磁石粉末は強度が比較的低く、
磁石製造時の樹脂被覆工程や成形工程(特に、圧力の加
わる圧縮成形中) 中に損傷し易く、磁石粉末が損傷する
と、得られたボンド型磁石の磁気特性が劣化するので、
磁石粉末の損傷抑制も磁気特性の向上にとって必要であ
ると考えられる。
【0013】〜に関しては、摩擦低減による充填率
および配向度の向上と、磁石粉末の酸化防止を図るため
に、シラン系カップリング剤や潤滑剤で磁石粉末表面を
被覆するか、あるいはこれらを熱硬化性樹脂成分に混入
しておく方法がこれまでに提案されている。
【0014】例えば、特開昭60−220920号公報に記載の
方法では、磁石粉末の表面を潤滑剤で被覆してから熱硬
化性樹脂と混合することにより、圧縮成形中における磁
石粉末相互間および磁石粉末とバインダー樹脂間の摩擦
を低減させ、ボンド型磁石の密度 (粉末充填率) と磁石
粉末の配向度を向上させ、磁気特性の向上を図ってい
る。潤滑剤としては室温で液体および固体のいずれも使
用できる。熱硬化性樹脂については何も説明されていな
いが、実施例では溶媒を使用していないことから室温で
液体のエポキシ樹脂が使用されている。
【0015】この方法で得られたボンド型磁石は、潤滑
剤を用いない場合と比較して磁気特性は改善されるが、
磁石粉末と樹脂との密着性が低下するため、機械的強度
および耐食性 (耐酸化性) が低下するという問題があ
る。また、上記方法で用いる磁石粉末はR−Co系合金異
方性磁石粉末であり、R−Fe−B系合金磁石粉末に比べ
て強度が高いため、磁石製造時の磁石粉末の損傷を抑え
る効果については全く考察されていない。また、熱硬化
性樹脂が室温で液体であるため、樹脂被覆した磁石粉末
(コンパウンド) が融着して、金型へのコンパウンドの
供給 (給粉) に困難をきたす。
【0016】特開平3−74810 号公報には、シラン系カ
ップリング剤を被覆したR−Fe−B系合金磁石とを潤滑
剤を含有するエポキシ樹脂と混合して圧縮成形および加
熱硬化させたボンド型磁石が記載されている。この磁石
は等方性磁石であり、配向度の向上については考慮され
ていない。このボンド型磁石では、潤滑剤を熱硬化性樹
脂中に混入しているため、バインダーである熱硬化性樹
脂の結合力が低下し、磁石の機械的強度や耐熱性、耐食
性が低下するという問題がある。また、この方法でも磁
石粉末の損傷は考慮されていない。
【0017】上述したような少量のシラン系カップリン
グ剤や潤滑剤等による磁石粉末の表面処理では、圧縮成
形時の磁石粉末の十分な充填性、磁石粉末の高い配向
性、熱劣化・酸化劣化の抑制、および磁石粉末損傷の抑
制が十分でなく、また機械的強度が低下する可能性があ
るので、バインダー樹脂そのものによる磁石粉末間の潤
滑性を高める方法も提案されている。
【0018】例えば、特開平4−80901 号公報に記載の
方法では、R−Fe−B系合金磁石粉末を室温固体の熱硬
化性樹脂で被覆し、樹脂の軟化温度〜硬化温度の間の温
度に加温して樹脂の流動性を上げた状態で無磁場中にお
いて圧縮成形し、磁石粉末の充填率を向上させ、磁気特
性、機械的強度および耐酸化劣化性の向上を図ってい
る。この方法では、無磁場で圧縮成形を行うため、磁石
粉末の配向度の向上は全く考慮していない。また、磁石
製造時の磁石粉末の損傷を抑える手段についても全く考
察していない。
【0019】また、この特開平4−80901 号公報には、
異なる2種類の熱硬化性樹脂で磁石粉末を2層被覆する
ことが提案されている。具体的には、エポキシ価 170〜
280の (室温で液体の) エポキシ樹脂で被覆した後、エ
ポキシ価 900〜3000の (室温で固体の) エポキシ樹脂で
さらに被覆する。
【0020】逆に、特開平6−112024号公報には、希土
類系磁石粉末に室温で固体のエポキシ樹脂を被覆した
後、室温で液状の熱硬化性樹脂と混合してから無磁場で
圧縮成形することが記載されている。
【0021】これらはいずれも、液状樹脂の潤滑性付与
効果で磁石中の粉末充填率を向上させ、磁気特性の向上
を図るものである。しかし、2層被覆の樹脂の一方が液
状樹脂であると、2層被覆構造の形成が難しく、予想す
るほどの潤滑効果や粉末充填率の向上効果が得られな
い。そのため、上記の特開平4−81901 号公報でも、実
施例は全て1層被覆で、2層被覆を採用していないので
ある。また、このように液状樹脂を使用すると、樹脂被
覆した磁石粉末 (コンパウンド) の貯蔵安定性や金型へ
のコンパウンドの給粉性が低くなる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術の問題点が解消された、即ち、磁気特性、機械
的強度、耐熱性、耐食性 (耐酸化性) 、寸法精度、成形
性およびコンパウンドのの貯蔵安定性と給粉性に優れた
ボンド型磁石を、熱硬化性樹脂をバインダーとする圧縮
成形法により製造する方法を提供することである。
【0023】本発明者らは、磁気異方性のR−Fe−B系
系合金からなる磁石粉末が損傷を受け易く、この損傷に
より、得られたボンド型磁石の磁気特性が大きく低下す
ることを究明した。そのため、本発明の具体的な課題
は、この磁気異方性R−Fe−B系合金の磁石粉末を熱硬
化性樹脂で被覆し、磁場中で圧縮成形するボンド型磁石
の製造において、特に圧縮成形時の異方性磁石粉末の充
填率と配向度を高め、同時に樹脂被覆および圧縮成形時
の磁石粉末の損傷を防止することが可能な手段を採用す
ることによって、上記の目的を達成することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく、バインダーとして磁石粉末の被覆に用
いる熱硬化性樹脂の軟化温度、硬化温度、溶融流動性
(溶融粘度) が、ボンド型磁石の寸法精度、密度、磁気
特性、機械的強度、耐熱性、耐食性、さらには磁場中で
の圧縮成形時の磁石粉末の配向度、磁石粉末の損傷、コ
ンパウンドの貯蔵安定性に及ぼす影響を調査した結果、
下記の知見を得た。
【0025】圧縮成形中に被覆樹脂が液状または溶融
状態にあると、固体状態にある場合に比べて、磁石粉末
の充填率が増大し、ボンド型磁石の磁気特性が向上す
る。しかし、室温で液体の熱硬化性樹脂を用いると、得
られたコンパウンドの自由流動性が失われ、給粉に問題
を生ずるので、室温で固体の熱硬化性樹脂を用い、温間
で圧縮成形 (温間プレス) して圧縮成形中に樹脂を溶融
状態にすることが有利である。
【0026】溶融した被覆樹脂の流れ易さ (溶融流動
性) が、磁場中での温間プレス時に磁石粉末の充填率、
配向度、損傷の程度に大きく影響する。つまり、圧縮成
形時に磁石粉末が流動し易いほど、潤滑性能が高く、磁
石粉末相互間の摩擦が低減し、磁石粉末の充填率と配向
度が向上し、磁石粉末の損傷が抑制される。その結果、
磁気特性が向上し、活性な金属面の発現を抑えられるた
め、耐熱性や耐食性も向上する。また、ボンド磁石中の
空隙が低減する結果、機械的強度、耐熱性、耐食性、寸
法精度、密度が向上する。そして、この磁場中温間プレ
スによる上記効果は、特に磁気異方性のR−Fe−B系合
金磁石粉末の場合に顕著である。
【0027】軟化温度の低い熱硬化性樹脂は、ガラス
転移温度も低いので、気温が高い場合に樹脂同士の融着
が起こりやすく、コンパウンドの貯蔵安定性が悪い。ま
た、軟化温度の低い熱硬化性樹脂は、温間プレス時に加
熱した金型に融着し易いので、コンパウンドの金型への
給粉性が悪く、生産性が低下する。さらに、ガラス転移
温度の低い樹脂は、熱硬化後に樹脂の粘性的な性質であ
る伸びや剥離強度が劣るため、磁石粉末間の接着性が劣
る。しかし、軟化温度の低い熱硬化性樹脂は、軟化温度
の高い樹脂に比べて同じ温度での溶融流動性が大きいの
で、潤滑性が高く、に述べた効果を発揮させるのに有
利である。
【0028】一方、軟化温度の高い熱硬化性樹脂は、
ガラス転移温度も高く、融着しにくいので、コンパウン
ドの貯蔵安定性、金型給粉性が良いが、溶融流動性が低
いので、潤滑性が低い。また、軟化温度の高い熱硬化性
樹脂は、熱硬化後に樹脂の弾性的性質である弾性率、引
張強度、引張剪断強度が劣るが、粘性的性質は高いので
磁石粉末間の接着性は高い。
【0029】以上より、軟化温度の異なる2種類の固
体の熱硬化性樹脂を、上記およびに述べた利点が生
かされ、難点が目立たなくなるように配置して磁石粉末
を被覆することにより、上記課題を達成することができ
る。
【0030】具体的には、潤滑性が高い軟化温度の低い
熱硬化性樹脂を潤滑剤層として内層に、接着性が高い軟
化温度の高い熱硬化性樹脂を接着層として外層に配置し
た2層構造の被覆を磁石粉末表面に形成し、圧縮成形を
少なくとも軟化温度の低い熱硬化性樹脂が軟化する温間
温度で行う。内層に軟化温度の低い熱硬化性樹脂を配す
ることで、十分な潤滑性が付与され、に述べた効果と
に述べた難点が解消される。一方、外層に軟化温度の
高い熱硬化性樹脂を配することで、磁石粉末に十分な接
着性が付与され、に述べた効果が得られ、に述べた
難点が解消される。
【0031】本発明の上記課題は、室温で固体の潤滑
剤と室温で固体の熱硬化性樹脂の2層構造からなる被覆
を磁石粉末表面に形成し、圧縮成形を潤滑剤と熱硬化性
樹脂のいずれもが溶融する温間条件で行うことによって
も達成される。室温で液体の潤滑剤を使用すると、コン
パウンドの凝集が起こり易く、流動性が低下して金型へ
の給粉性が低下する。この場合には、潤滑剤と熱硬化性
樹脂がいずれも成形中に溶融するため、潤滑剤を内層と
外層のいずれに配置してもよい。
【0032】本発明により、次に述べる第1および第2
のボンド型磁石の製造方法が提供される。
【0033】第1の方法 磁気異方性を示す希土類・鉄系永久磁石材料からなる磁
石粉末を2種類の熱硬化性樹脂により2層構造に被覆
し、被覆した磁石粉末を磁場中で圧縮成形した後、成形
体を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させることからなるボ
ンド型永久磁石の製造方法であって、前記2層構造の樹
脂被覆の内層が40〜100 ℃の範囲の軟化温度を有する熱
硬化性樹脂からなり、外層が80〜150 ℃の範囲で、かつ
内層樹脂より高い軟化温度を有する熱硬化性樹脂からな
り、前記磁場中での圧縮成形を、内層樹脂の軟化温度以
上であって、かつ内外両層の樹脂の硬化温度よりも低温
の温間で行うことを特徴とするボンド型永久磁石の製造
方法。
【0034】第2の方法 磁気異方性を示す希土類・鉄系永久磁石材料からなる磁
石粉末を熱硬化性樹脂と潤滑剤により2層構造に被覆
し、被覆した磁石粉末を磁場中で圧縮成形した後、成形
体を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させることからなるボ
ンド型永久磁石の製造方法であって、前記熱硬化性樹脂
の軟化温度が40〜150 ℃の範囲であり、前記潤滑剤の融
解温度が30〜120 ℃の範囲であり、前記磁場中での圧縮
成形を、潤滑剤の融解温度以上かつ熱硬化性樹脂の軟化
温度以上であって、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも低温
の温間で行うことを特徴とするボンド型永久磁石の製造
方法。
【0035】
【作用】以下、本発明をその作用とともに詳しく説明す
る。
【0036】[磁石粉末]本発明で使用する磁石粉末は、
希土類・鉄系永久磁石材料、即ち、R (但し、RはYを
含む希土類元素の1種以上) と、Fe (Feの一部はCoで置
換されていてもよい) と、Bとを基本組成とするR−Fe
−B系合金からなる、磁気異方性を示す粉末である。合
金組成は特に制限されないが、通常は、重量%でRが25
〜33%、Feが64〜74%、Bが 0.8〜1.3 %である。Feの
半量まではCoで置換してもよい。Rは1種もしくは2種
以上でよく、Ndおよび/またはPrを単独または他の希土
類元素との混合物として使用することが好ましい。上記
成分以外に、Al、Cr、Mn、Mg、Si、Cu、C、Nb、Sn、G
e、Ga、W、V、Zr、Ti、Mo、Bi、Ta、Hf、P、Sなど
の1種もしくは2種以上の元素を少量添加してもよい。
【0037】磁気異方性は、例えば、 700〜900 ℃で水
素化処理し、その後減圧下で脱水素化処理を行うことに
より付与できる。また、別の手法として、熱間後方押出
加工により磁気異方性を発現させた磁石粉末 (例えば、
ゼネラルモーターズ社製のMQ-3粉末) も本発明に使用で
きる。
【0038】磁石粉末は、平均粒径が20μm以上である
ことが望ましい。磁石粉末の平均粒径が20μmより小さ
いと、保磁力、磁石の減磁極性の角型性等の磁気特性の
劣化が見られ、また比表面積が大きくなりすぎるため、
耐熱性と耐食性 (耐酸化性)にとっても不利となる。磁
石粉末の好ましい平均粒径は20〜300 μmの範囲であ
る。
【0039】[磁石粉末の被覆]本発明では、上記のR−
Fe−B系合金からなる磁気異方性の磁石粉末に、2層構
造の被覆を施す。この2層構造の被覆は、次に述べるよ
うに、第1の方法では軟化温度の異なる2種類の熱硬化
性樹脂を用いて行い、第2の方法では潤滑剤と熱硬化性
樹脂を用いて行う。
【0040】第1の方法 本発明の第1の方法においては、磁石粉末の表面に、い
ずれも室温で固体であるが、軟化温度が異なる2種類の
熱硬化性樹脂をバインダーとして用いて、内層と外層の
2層構造の樹脂被覆を形成し、コンパウンドを得る。2
種類の熱硬化性樹脂のうち、軟化温度がより低い樹脂を
内層に、より高い樹脂を外層に用い、少なくとも内層樹
脂の軟化温度以上の温度で (即ち、少なくとも内層樹脂
を軟化・溶融させた状態で) 、コンパウンドの圧縮成形
を行う。
【0041】それにより、圧縮成形中に低軟化温度の樹
脂が潤滑剤層として、ガラス転移温度が高く結合性に優
れた高軟化温度の樹脂が接着剤層として作用する。接着
剤層となる高軟化温度の樹脂を外層にすることにより、
隣接する磁石粉末間の接着性が良くなり、温間プレス時
に溶融した低軟化温度の樹脂が成形体からしみ出てくる
のを防止できる。また、予めバインダーとなる樹脂で磁
石粉末を被覆しておくことで、金型への充填などの移送
時に樹脂と磁石粉末の割合が偏ることがなく、樹脂が個
々の磁石粉末によく行き渡っているので、非常に均質な
成形体が得られる。
【0042】熱硬化性樹脂の種類は特に制限されず、エ
ポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂など各
種の樹脂を使用できる。内層と外層で別の種類の樹脂を
使用してもよく、また各層において2種以上の熱硬化性
樹脂を混合して用いてもよい。好ましい熱硬化性樹脂は
エポキシ樹脂である。熱硬化性樹脂は、必要に応じて硬
化剤、硬化促進剤と一緒に使用する。
【0043】内層には軟化温度が40〜100 ℃の熱硬化性
樹脂を使用する。低軟化温度の内層樹脂も室温で固体で
あるため、樹脂被覆した磁石粉末を流動性に富む粉体と
して取り扱うことができ、金型への給粉性が阻害されな
い。また、その上に容易に外層樹脂を被覆し、2層構造
の樹脂被覆を形成できる。
【0044】内層樹脂の軟化温度が40℃より低いと、気
温が高い場合に内層樹脂が軟化し、コンパウンドの貯蔵
安定性が低下し、また金型へのコンパウンドの給粉性が
悪くなる。一方、内層樹脂の軟化温度が100 ℃より高く
なると、圧縮成形時に金型内に投入したコンパウンドを
内層樹脂が軟化するまで加熱するのに時間がかかり、金
型を高温にするための金型の温度調整と磁気回路の設計
が難しくなる上、磁石粉末の酸化劣化が生じ易くなる。
内層樹脂の軟化温度は好ましくは40〜80℃である。
【0045】外層には軟化温度が80〜150 ℃の熱硬化性
樹脂を使用する。外層樹脂の軟化温度が80℃より低くな
ると、ガラス転移温度が40℃以下になることがあり、気
温が高い場合にコンパウンドの融着が起こり、コンパウ
ンドの貯蔵安定性が低下する。また、温間プレス時に予
熱した金型内にコンパウンドを投入する際、コンパウン
ドが金型内壁に融着して金型給粉性が悪化し、生産性が
低下する。外層樹脂の軟化温度が150 ℃より高くなる
と、温間プレス時の潤滑性が低下し、ボンド型磁石の磁
気特性が低下する。
【0046】外層樹脂は室温で固体で、しかも室温で固
体の内層樹脂より軟化温度が高く、ガラス転移温度も高
いので、コンパウンドの貯蔵時に融着が起こりにくく、
貯蔵性が高まる。また、外層が高ガラス転移温度の熱硬
化性樹脂であるため、コンパウンドの流動性が一段と向
上する。
【0047】その結果、金型へのコンパウンドの充填性
が良くなり、均質な成形体が得られ、成形体中の局部的
な密度の変動が小さく、かつ、製品磁石のロット間の密
度バラツキも小さく、また、圧縮成形体の密度が増大
し、磁石粉末の充填率が向上する。また、高ガラス転移
温度の樹脂は結合力が高いため、成形体の機械的強度が
高くなり、搬送等の取扱い時の成形体の端部や角部の欠
けが生じにくく、寸法精度と製品歩留りが向上する。
【0048】磁石粉末に2層構造の被覆を形成するに
は、まず内層になる低軟化温度の固体熱硬化性樹脂を、
低粘度液状 (例えば、適当な有機溶媒に溶解した低粘度
の樹脂溶液) の形態で磁石粉末と混合した後、溶剤を揮
発させ、内層の固体樹脂層を磁石粉末の表面に形成す
る。この樹脂層の上に、外層となる高軟化温度の熱硬化
性樹脂を同様にして被覆し、外層の固体樹脂層を形成す
る。外層樹脂の被覆に用いる樹脂液は、内層の樹脂層を
溶解しにくい溶媒を用いて調製する。内層と外層のいず
れも、被覆に用いる低粘度の樹脂液は、溶液に限定され
るものではなく、エマルジョン、懸濁液などの形態であ
ってもよい。
【0049】磁石粉末の被覆に使用する樹脂液には、所
望によりシラン系もしくはチタネート系カップリング
剤、潤滑剤などの添加剤を少量配合することもできる。
また、磁石粉末を予めシラン系もしくはチタネート系カ
ップリング剤または潤滑剤などで表面処理しておくこと
もできる。被覆方法は上記の方法に制限されるものでは
なく、上記と同等の均一な樹脂被覆が可能な方法であれ
ば、他の方法を採用することもできる。例えば、軟化温
度が低い内層樹脂を加熱して溶融させると、溶融粘度の
小さい融液が得られる場合には、内層樹脂の被覆は、加
熱して溶融状態にした樹脂 (樹脂の融液) を磁石粉末と
混練することにより行うことができる。融液が十分に低
粘度であれば、このような混練によっても均一に樹脂被
覆することができ、溶媒を使用しないため経済的であ
る。
【0050】磁石粉末に対する熱硬化性樹脂の被覆量
は、内層樹脂と外層樹脂ともに、1〜10重量%、特に1
〜4重量%の範囲が好ましい。一方の樹脂が1重量%未
満または10重量%超であると、2種類の樹脂被覆のバラ
ンスが崩れ、本発明の2層被覆の効果が不十分となる。
2種類の樹脂の合計被覆量は2〜12重量%、特に2〜6
重量%の範囲内が好ましい。2重量%未満では磁石粉末
の結合が不十分となって、成形性が悪く、かつ成形体お
よび磁石の機械的強度が著しく低下する。一方、樹脂合
計量が12重量%を超えると、磁石粉末の充填率が小さく
なり、所定の高磁気特性を発揮できなくなる。
【0051】第2の方法 本発明の第2の方法では、磁石粉末の表面に、いずれも
室温で固体の潤滑剤と熱硬化性樹脂からなる2層構造の
被覆を形成してコンパウンドを得る。コンパウンドの圧
縮成形は、潤滑剤の融解温度以上で、かつ熱硬化性樹脂
の軟化温度以上(即ち、潤滑剤と樹脂をいずれも溶融な
いし軟化させた状態) で行う。この場合には、潤滑剤を
使用するので、熱硬化性樹脂はバインダー、即ち、接着
剤として結合作用のみを発揮すればよい。個々の磁石粉
末は第1の方法と同様にバインダー樹脂で均一に被覆さ
れるため、圧縮成形により均質な成形体を得ることがで
きる。
【0052】第2の方法では、潤滑剤は内層と外層のい
ずれに用いてもよいが、好ましくは内層が潤滑剤、外層
が熱硬化性樹脂とする。それにより、第1の方法と同様
に、隣接する磁石粉末間の熱硬化性樹脂による接着性が
良くなり、磁石の強度が向上する。また、温間プレス時
に成形体から溶融した潤滑剤がしみ出たり、温間成形前
の金型充填時にコンパウンドが予熱された金型面に付着
する現象を防止することができる。
【0053】室温で固体の潤滑剤の種類は特に制限され
ず、例えば、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸
エステル、脂肪族アルコール、ポリグリコール、ポリグ
リセロール、脂肪酸塩、金属石けん、天然ワックス、シ
リコーンなどの各種の潤滑剤を使用できる。また、脂肪
酸以外の有機酸、脂肪酸以外の有機酸のエステル、脂肪
族アミンなども室温で固体の潤滑剤として使用できる。
【0054】潤滑剤として好ましいのは、疎水性の長鎖
アルキル基を有するものであり、磁石粉末の表面や熱硬
化性樹脂に存在する極性基との親和性が良い極性基を分
子内に有する化学構造のものがより好ましい。潤滑剤も
2種以上を組合わせて使用することができる。
【0055】第2の方法に用いる室温で固体の熱硬化性
樹脂の種類も特に制限されず、第1の方法に関して例示
したものが使用でき、好ましいのはやはりエポキシ樹脂
である。潤滑剤は融解温度は30〜120 ℃のものを使用
し、熱硬化性樹脂は軟化温度が40〜150 ℃のものを使用
する。潤滑剤の融解温度が30℃未満では、室温で液体の
潤滑剤と同様に、コンパウンドが凝集または融着して金
型への給粉性が低下する。また、熱硬化性樹脂の軟化温
度が40℃未満では、気温が高い場合に樹脂が軟化し、コ
ンパウンドの貯蔵安定性が低下し、また金型への給粉性
も悪くなる。潤滑剤の融解温度が120 ℃より高いか、熱
硬化性樹脂の軟化温度が150 ℃より高くなると、圧縮成
形時に金型内に投入したコンパウンドを潤滑剤および樹
脂が融解するまで加熱するのに時間がかかり、金型を高
温にするための金型の温度調整と磁気回路の設計が難し
くなる上、磁石粉末の酸化劣化が生じ易くなる。好まし
くは潤滑剤の融解温度が50〜100 ℃、熱硬化性樹脂の軟
化温度も50〜100 ℃である。
【0056】なお、潤滑剤の融解温度と熱硬化性樹脂の
軟化温度はいずれが高くなってもよい。即ち、第1の方
法とは異なり、内層の融解または軟化温度が外層の融解
または軟化温度より高くなってもよい。
【0057】第2の方法においても、磁石粉末を被覆す
る潤滑剤と熱硬化性樹脂が両方とも室温で固体であるた
め、被覆後の磁石粉末 (即ち、コンパウンド) を流動性
に富む粉体として取り扱える。その結果、金型へのコン
パウンドの充填性が良くなり、均質な成形体が得られ、
成形体中の局部的な密度の変動が小さく、かつ、製品磁
石のロット間の密度バラツキも小さく、また、圧縮成形
体の密度が増大し、磁石粉末の充填率が向上する。ま
た、成形体の機械的強度が高いため、搬送等の取扱い時
の成形体の端部や角部の欠けが生じにくく、寸法精度と
製品歩留りが向上する。
【0058】第2の方法における潤滑剤と熱硬化性樹脂
による磁石粉末の被覆は、第1の方法に関して説明した
のと同様に実施することができる。即ち、第1の方法で
使用する2種類の樹脂の一方を潤滑剤に変更すればよ
い。好ましくは、潤滑剤層が内層となるように磁石粉末
を最初に潤滑剤で被覆する。
【0059】また、潤滑剤と熱硬化性樹脂の一方または
両方が、加熱すると溶融粘度が小さい融液を形成する場
合には、溶媒を用いた被覆方法ではなく、加熱して溶融
状態にした融液を磁石粉末と混練する溶融混練法により
被覆を行うことができる。但し、この方法を外層の形成
に利用できるのは、外層材料の軟化または融解温度が内
層材料より低い場合に限られ、内層材料の軟化または融
解温度より低温で溶融混練法による外層の被覆を行う。
【0060】磁石粉末に対する熱硬化性樹脂の被覆量は
1〜10重量%の範囲が好ましい。熱硬化性樹脂の被覆量
が1重量%未満では、磁石粉末の結合が不十分となっ
て、成形性が悪く、かつ成形体およびボンド型磁石の機
械的強度が著しく低下する。一方、樹脂被覆量が10重量
%を超えると、磁石粉末の充填率が小さくなり、所定の
高磁気特性を発揮できなくなる。より好ましい熱硬化性
樹脂の被覆量は2〜5重量%である。
【0061】磁石粉末に対する潤滑剤の被覆量は0.01〜
5.0 重量%の範囲が好ましい。潤滑剤の被覆量が0.01重
量%未満では潤滑効果が不十分となり、成形性が悪くな
ることがある。一方、潤滑剤の被覆量が5.0 重量%を越
えると、得られたボンド型磁石の機械的強度が低下す
る。より好ましい潤滑剤の被覆量は 0.1〜2.0 重量%で
ある。潤滑剤の被覆量は、バインダーとなる熱硬化性樹
脂に比べれば少量であるが、本発明のように2層構造の
被覆にすることにより、熱硬化性樹脂による隣接磁石粉
末間の結合力が十分に発揮されるため、潤滑剤の配合量
を従来よりは増加することが可能となる。
【0062】[磁場中での温間圧縮成形]上記のように2
種類の熱硬化性樹脂または潤滑剤と熱硬化性樹脂により
2層構造の被覆を施したR−Fe−B系合金からなる磁気
異方性の磁石粉末 (コンパウンド) を、磁場中で温間圧
縮成形 (温間プレス) して成形体を作製する。この時の
温間プレスの温度は、上記の第1および第2の方法で異
なり、次に説明するように選択する。
【0063】第1の方法 内層が低軟化温度、外層が高軟化温度という、軟化温度
の異なる2種類の熱硬化性樹脂で被覆された磁石粉末
を、内層樹脂の軟化温度以上で、かつ内外両層の樹脂の
硬化温度より低温の温間で磁場中の圧縮成形を行う。成
形時に少なくとも内層樹脂が溶融し、この溶融樹脂の潤
滑効果のために、磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂
間の摩擦が低減できる。
【0064】成形温度における内層樹脂の溶融粘度は10
〜100,000 poise の範囲であることが好ましい。本発明
において、溶融粘度とは剪断速度10 sec-1での粘度を意
味する。内層樹脂の溶融粘度が10 poiseより小さいと、
プレス金型内での磁石粉末と溶融樹脂との分離が起こ
り、樹脂と磁石粉末が均一に分布した成形体が得られな
いことがある。一方、樹脂の溶融粘度が100,000 poise
より大きいと、圧縮成形時の磁石粉末相互間および磁石
粉末と樹脂間の摩擦低減効果が小さくなる。
【0065】第2の方法 潤滑剤と熱硬化性樹脂の2層で被覆された磁石粉末を、
潤滑剤の融解温度以上かつ熱硬化性樹脂の軟化温度以上
であって、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも低温の温間で
磁場中の圧縮成形を行う。この場合も、溶融した潤滑剤
と熱硬化性樹脂の潤滑効果のために、磁石粉末相互間お
よび磁石粉末と樹脂間の摩擦を低減できる。
【0066】第2の方法では、成形温度における潤滑剤
の溶融粘度が100 poise 以下であることが好ましい。潤
滑剤の溶融粘度が100 poise より大きくなると、圧縮成
形時の磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂間の摩擦低
減効果が小さくなる。
【0067】上述したように、第1および第2のいずれ
の方法においても、磁石粉末の2層構造の被覆と温間で
の圧縮成形により磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂
間の摩擦を低減できる。それにより、次の(イ) 〜(ハ) に
述べるように、磁石粉末の充填率と配向度が増大し、磁
石粉末の損傷が抑制され、磁気特性、機械的強度、耐熱
性および耐食性 (耐酸化性) に優れたボンド型磁石が得
られる。
【0068】(イ) 磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂
間の摩擦を低減すると、空隙が少なく、磁石粉末の充填
率が向上した高密度の成形体、従ってボンド型磁石が得
られる。その結果、ボンド型磁石の磁気特性、機械的強
度、耐熱性および耐食性 (耐酸化性) が向上する。
【0069】(ロ) 磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂
間の摩擦が低減すると、磁場中での圧縮成形時に各磁石
粉末の回転が容易になるので、個々の磁石粉末の磁化容
易方向が磁場方向に揃い易くなり、磁石粉末の配向度が
向上する。これも磁気異方性永久磁石の磁気特性の向上
に寄与する。
【0070】(ハ) 本発明で用いる磁気異方性のR−Fe−
B系合金磁石粉末は、磁気異方性発現のために一般に熱
処理を受けているため、磁石粉末の強度が低下してい
る。そのため、被覆時の磁石粉末と熱硬化性樹脂 (およ
び潤滑剤) との混合のトルクや、圧縮成形時の圧縮圧力
により破砕・歪みを受けて損傷し易い。この磁石粉末の
損傷が、磁気異方性R−Fe−B系ボンド型磁石の磁気特
性の低下の大きな原因であることを本発明者らは究明し
た。
【0071】本発明では、磁石粉末相互間および磁石粉
末と樹脂間の摩擦が少ないため、溶融混練法による被覆
時や圧縮成形時に磁石粉末の損傷が抑制され、この磁石
粉末の損傷が少ないことが、磁気特性や、さらには機械
的強度、耐熱性、耐食性、寸法精度などの各種特性の向
上に大きく寄与する。換言すると、本発明による2層構
造の被覆と温間圧縮成形による磁気特性や他の特性の向
上効果は、磁石粉末が磁気異方性のR−Fe−B系合金粉
末である場合に顕著に得られるのである。
【0072】磁気等方性のR−Fe−B系合金磁石粉末
や、磁気異方性であってもSm−Co系合金の磁石粉末で
は、粉末の強度が高く、ボンド型磁石製造工程中の磁石
粉末の損傷が起こりにくく、損傷による磁気特性の劣化
も生じにくい。そのため、本発明のような2層構造の被
覆と温間圧縮成形を採用しても、冷間圧縮成形または1
層の樹脂被覆の場合に比べて、磁気特性や他の特性の向
上効果は非常に小さくなる。
【0073】なお、第1の方法において、内層樹脂と一
緒に外層樹脂も溶融するように、温間での圧縮成形温度
を外層樹脂の軟化温度以上で、かつ内外両層の樹脂の硬
化温度より低い温度に設定することができる。それによ
り、磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂間の摩擦がさ
らに低減し、上記(イ) 〜(ハ) の効果がより強まる。そう
ではなく、内層樹脂のみが溶融するように、圧縮成形温
度を内層樹脂の軟化温度以上で、外層樹脂の軟化温度よ
り低温に設定してもよい。この場合には、コンパウンド
を予熱された金型に投入する際に、コンパウンドの金型
内壁への融着が起こらず、金型への給粉性が向上するの
で、生産性が高まる。
【0074】圧縮成形は、コンパウンドをプレス金型に
充填し、所定の温間プレス温度に加温し、次いで磁場の
印加下に加圧して圧縮することにより行われる。金型内
のコンパウンドの加熱手段に特に制限はないが、金型を
加熱して伝熱により行うことが簡便である。金型の加熱
手段としては、抵抗加熱、油などの熱媒体による加熱、
高周波加熱方式などが利用できる。この場合、加熱時間
を短縮するために、金型を予熱しておいてもよい。ま
た、金型内のコンパウンドに通電して、磁石粉末の抵抗
加熱によりコンパウンドを直接加熱することもでき、或
いは圧縮成形機の上下の押さえ治具 (パンチ) から超音
波振動を加えることにより、コンパウンドを直接加熱す
る方法も可能である。
【0075】圧縮成形は常法により行えばよいが、金型
の周囲から磁場を印加して、圧縮成形を磁場中で行うこ
とにより、個々の磁石粉末の磁化容易方向が1方向に揃
った(即ち、配向した) 磁気異方性の成形体を得ること
ができる。本発明では、樹脂(潤滑剤) が溶融している
状態で圧縮成形しているので、磁石粉末間の摩擦が著し
く低減され、磁場の作用下での磁石粉末の回転が容易に
起こり、配向度の高い成形体を得ることができる。
【0076】磁場の印加方向は、圧縮方向と平行な平行
磁場 (縦磁場ともいう) と、これと垂直な垂直磁場 (横
磁場ともいう) と、ラジアル・極配向磁場のいずれでも
よい。磁界強度は特に制限されないが、通常は6〜20 k
Oeの範囲である。プレス圧力は2〜10 ton/cm2の範囲が
適当である。
【0077】[熱硬化]圧縮成形後、脱型した成形体を加
熱設備に移してさらに加熱し、バインダーの熱硬化性樹
脂を熱硬化させて、ボンド型磁石を得る。加熱条件は、
熱硬化性樹脂(第1の方法の場合には2種類の熱硬化性
樹脂) が完全に熱硬化するように、樹脂種や硬化剤、硬
化促進剤の種類に応じて選択する。加熱雰囲気は、磁石
粉末の酸化を防ぐために、真空中あるいは不活性ガス中
などの無酸素雰囲気とすることが好ましい。得られたボ
ンド型磁石は、必要により、常法によって塗装やメッキ
などの表面処理を施す。
【0078】本発明の方法で製造されるボンド型磁石
は、空隙率が8.0 体積%以下、好ましくは5.0 体積%以
下、特に好ましくは3.0 体積%以下である。即ち、空隙
が減少し、磁石粉末の充填率、従って磁気特性が向上し
たボンド型磁石を本発明により製造することができる。
空隙率が8.0 体積%を超えると、高い残留磁束密度(Br)
が得られず、また機械的強度が減少する。さらに、空隙
率が8.0 体積%を超えると、空隙中の酸素や、空隙を通
路としてボンド型磁石内に侵入する酸素、水に起因する
磁石粉末の酸化劣化が生じやすく、磁気特性の劣化を生
ずる。
【0079】なお、本発明において、空隙率は理論密度
(空隙が全くなく、磁石粉末と樹脂だけから成る磁石の
密度の計算値) と実測密度から、次式により算出される
値である。
【0080】
【数1】
【0081】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。実施例中、%および部は特に指定しない限り重量%
および重量部である。実施例で使用した磁石粉末、熱硬
化性樹脂 (いずれもエポキシ樹脂) 、および潤滑剤、な
らびに実施例で採用した磁石粉末の被覆方法、磁場中で
の圧縮成形・硬化方法 (即ち、ボンド型磁石の作製方
法) 、および得られたボンド型磁石の試験方法について
次にまとめて説明する。
【0082】[磁石粉末]磁気異方性Nd−Fe−B系合金粉末 Nd:28%、Co:10%、Ga:1%、B:1%、残部Feから
なる組成のNd−Fe−B系合金のインゴットを 700〜900
℃の水素ガス中に保持して、Ndの水素化物、Fe2B、Feに
分解した。次にこの温度領域で水素圧を下げ、Ndの水素
化物から水素を解離させ、微細なNd2Fe14B結晶体からな
る磁石粉末を得た。この磁石粉末をさらに機械的に微粉
砕し、分級して、粒度分布が38〜425 μm (平均粒径 2
00μm)の磁気異方性のNd−Fe−B系合金 (NdFeBとも
表記する) の磁石粉末を調製した。
【0083】等方性Nd−Fe−B系合金粉末 (比較用) Nd:28.2%、Co:10.0%、B:1.0 %、残部Feからなる
組成のNd−Fe−B系合金を溶製した後、得られた溶湯を
超急冷法でリボン状試料にし、各試料を機械的に粉砕
し、分級して、粒度分布が38〜300 μm (平均粒径 150
μm) の磁気等方性のNd−Fe−B系合金の磁石粉末を調
製した。
【0084】磁気異方性Sm−Co系合金粉末 (比較用) Sm:5.1 %、Fe:13.7%、Cu:4.0 %、Zr:1.0 %、残
部Coからなる組成のSm−Co合金のインゴットを、1160℃
にて50時間均質化処理した後、機械的に微粉砕し、分級
して、粒度分布が38〜212 μm (平均粒径 100μm) の
磁気異方性のSm−Co系合金の磁石粉末を調製した。
【0085】[熱硬化性樹脂]エポキシ樹脂 室温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (軟化温
度68℃) 30%と硬化剤10%を有機溶媒のメチルエチルケ
トン60%に溶解し、25℃での粘度が10 cpsの低粘度液状
のエポキシ樹脂溶液として使用する。
【0086】エポキシ樹脂 室温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (軟化温
度98℃) 30%と硬化剤10%をアセトンとメタノールの
1:4混合溶媒60%に溶解し、25℃での粘度が10cpsの
低粘度液状のエポキシ樹脂溶液として使用する。
【0087】エポキシ樹脂 (比較用) 室温で液体の分子量380 のビスフェノールA型エポキシ
樹脂85%と硬化剤15%を混合し、25℃での粘度が150 po
ise の低粘度の混合液して使用する。
【0088】エポキシ樹脂 室温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (軟化温
度68℃) 80%と硬化剤20%を70℃で溶融混練し、比較的
低温で溶融可能で、低粘度の溶融体を形成する混合物と
して使用する。
【0089】エポキシ樹脂 室温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (軟化温
度68℃) 30%と硬化剤7%を有機溶媒のメチルエチルケ
トン63%に溶解し、25℃での粘度が5cps の低粘度液状
のエポキシ樹脂溶液として使用する。
【0090】エポキシ樹脂 室温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂 (軟化温
度98℃) 80%と硬化剤20%を100 ℃で溶融混練し、100
℃で溶融可能な低粘度の溶融体を形成する混合物として
使用する。
【0091】[潤滑剤]潤滑剤 室温で固体のステアリン酸 (融解温度:57〜61℃) 。潤滑剤 室温で固体のオレイン酸アミド (融解温度:68〜74℃)
潤滑剤 室温で固体のステアリン酸エチル (融解温度:30〜39
℃) 。潤滑剤 (比較用) 室温で液体の流動パラフィン。
【0092】磁石粉末のエポキシ樹脂または潤滑剤によ
る被覆方法としては、次に説明する溶液混合法または溶
融混練法を採用した。 [被覆方法]溶液混合法 被覆材料がエポキシ樹脂である場合、磁石粉末とエポキ
シ樹脂溶液を、磁石粉末に対して樹脂固形分 (樹脂+硬
化剤) が所定割合となるように混合し、室温で溶媒を蒸
発させた後、得られた混合物を乳鉢で粉砕する。被覆材
料が潤滑剤である場合には、潤滑剤をエタノールに溶解
した潤滑剤の溶液を用いて、上記と同様に被覆を行う。
【0093】溶融混練法 被覆材料がエポキシ樹脂である場合、磁石粉末と硬化剤
を混合したエポキシ樹脂を、磁石粉末に対して樹脂量
(樹脂+硬化剤) が所定割合となるように混合し、必要
であれば樹脂が溶融状態になるように加熱して、磁石粉
末を溶融状態の樹脂と混練した後、混練物を乳鉢で粉砕
する。潤滑剤の被覆の場合には、磁石粉末に対する潤滑
剤量が所定割合となるように混合した後、同様に混練お
よび粉砕を行う。
【0094】[ボンド型磁石の作製方法]エポキシ樹脂ま
たはエポキシ樹脂と潤滑剤とで被覆した磁石粉末 (コン
パウンド) を、金型に充填した後、10 kOeの横磁場の印
加下に、圧力6ton/cm2 で圧縮成形した (加圧時間20秒
間) 。圧縮成形時の樹脂温度は表1に示すように設定し
た。脱型後、得られた成形体をArガス中で150 ℃に60分
間加熱して、バインダーのエポキシ樹脂を硬化させ、ボ
ンド型磁石サンプルを得た。各磁石サンプルの形状は、
長さ100 mm、幅10 mm 、厚さ5mmの短冊形状と10 mm 立
方の立方形状の2種類であり、それぞれ複数個を作製し
た。
【0095】得られたボンド型磁石サンプルの密度を測
定し、上記の (数1) に従って空隙率を算出した。ま
た、磁石粉末の充填率を次式に従って密度より算出し
た。
【0096】
【数2】
【0097】[試験方法]圧縮成形と熱硬化により得られ
たボンド型磁石について、(1) 磁気特性、(2)曲げ強
度、(3) 耐熱性、(4) 耐湿性、(5) 成形体の微粉発生
量、(6) 外観検査、(7) 寸法・形状について評価し、ま
た圧縮成形時に(8) 金型への給粉性を判定した。さらに
一部の実施例では(9) コンパウンドの貯蔵安定性も判定
した。評価方法を次に述べる。
【0098】(1) 磁気特性 10 mm 立方のボンド型磁石サンプルを用い、これを40 k
Oeで着磁後、BHトレーサーにより残留磁束密度(Br)、保
磁力(iHc) 、減磁曲線の角型性(Hk)ならびに最大エネル
ギー積(BHmax) を測定した。ここで、減磁曲線の角型性
(Hk)は、磁化が残留磁束密度(Br)の90%になる時の磁界
Hの大きさを意味し、磁石粉末の損傷が大きいほどHkが
低下することが判明しているので、磁石粉末の損傷度の
指標となる。
【0099】また、磁石粉末の配向度を次式により定義
し、算出した。式中、Br(//)は圧縮成形時の配向方向と
平行方向のBr、 Br(⊥) は圧縮成形時の配向方向と垂直
な方向のBrである。
【0100】
【数3】
【0101】(2) 曲げ強度 100 mm×10 mm ×5mmのボンド型磁石サンプルを用い
て、JIS K7203 の硬質プラスチックの曲げ試験方法に準
じて行った。支点間距離は75 mm 、試験速度は2mm/分
で行い、測定結果より曲げ破壊強度を算出した。
【0102】(3) 耐熱性 10 mm 立方のボンド型磁石サンプルを120 ℃の雰囲気内
に1000時間放置した。1000時間後の試験片の磁気特性を
測定し、減磁曲線の角型性Hkの低下率により耐熱性を評
価した。
【0103】(4) 耐湿性 10 mm 立方のボンド型磁石サンプルを80℃に予熱した
後、80℃、相対湿度90%の雰囲気内に24時間放置した。
24時間後の試験片表面の錆発生状況を目視により観察
し、錆発生数を計数して、次の基準で評価した。 ○:錆発生なし、 ×:錆発生数3〜5個/cm2
【0104】(5) 微粉発生量 圧縮成形で得られた熱硬化前の10 mm 立方の成形体をメ
チルエチルケトン中に浸漬して、成形体からエポキシ樹
脂を溶解除去し、残った磁石粉末をふるいにより粒度別
に分級し、粒度<38μmの微粉の発生量を測定した。こ
の微粉発生量により磁石粉末の損傷度を評価した。つま
り、原料の磁石粉末に含まれない粒度<38μmの微粉の
発生量が多いほど、磁石粉末の損傷が大きいと評価され
る。
【0105】(6) 外観検査 100 mm×10 mm ×5mmの短冊形状と10mm立方の立方形状
のボンド型磁石サンプルに欠けや割れなどがないかを外
観検査した。 ○:割れ、欠けなし、 ×:割れ、欠けの存在する磁石あり。
【0106】(7) 寸法・形状測定 100 mm×10 mm ×5mmの短冊形状と10mm立方の立方形状
のボンド型磁石サンプルの寸法・形状を測定した。 ○:寸法精度±50μm以内で、形状に歪みなし ×:寸法精度±50μm以上、または形状に歪みが存在す
る磁石あり。
【0107】(8) 金型への給粉性 圧縮成形した10 mm 立方のボンド型磁石サンプルの重量
バラツキで給粉性を評価した。 ○:重量の偏差が±0.5 g以内 ×:重量の偏差が±0.5 gを越える。
【0108】(9) コンパウンドの貯蔵安定性 コンパウンドを35℃の雰囲気に2週間放置した時の融着
程度で評価した。 ○:コンパウンドの融着が生じない ×:コンパウンドの融着が生じる。
【0109】
【実施例1〜3および比較例1〜17】本実施例では、本
発明の第1の方法に従って、室温で固体で軟化温度の異
なる2種類のエポキシ樹脂により磁気異方性のNd−Fe−
B系合金磁石粉末を2層構造に被覆した後、上記のよう
にして温間での磁場中圧縮成形と加熱による樹脂の硬化
によりボンド型磁石を作製した。比較例では、圧縮成形
が冷間、エポキシ樹脂の1層被覆、一方のエポキシ樹脂
が室温で液体、或いは磁石粉末が磁気等方性のNd−Fe−
B系合金磁石粉末であった。各実施例および比較例の詳
細は次の通りである。
【0110】実施例1〜3 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、室温で固体
のエポキシ樹脂を被覆量 (磁石粉末に対するエポキシ
樹脂+硬化剤の固形分割合、以下同じ) が1.5%になる
ように溶液混合法により被覆した後、さらに軟化温度が
より高いエポキシ樹脂を被覆量が1.5 %になるように
溶液混合法で被覆して、内層が低軟化温度のエポキシ樹
脂、外層が高軟化温度のエポキシ樹脂という2層構造の
樹脂被覆を有する磁石粉末からなるコンパウンドを得
た。
【0111】外層に用いるエポキシ樹脂は、内層のエ
ポキシ樹脂を溶解しにくいように、溶解性の低い溶媒
を用いた樹脂溶液としているが、外層の被覆時には溶液
混合と乾燥を手早く行うことが好ましい。
【0112】このコンパウンドを用いて、圧縮成形時の
樹脂温度を変化させて、上記のように磁場中での温間圧
縮成形と成形体の加熱を行い、ボンド型磁石サンプルを
作製した。圧縮成形時に、実施例1では内層と外層の両
方のエポキシ樹脂が軟化溶融し、実施例2、3では内層
樹脂のみが軟化溶融した。
【0113】比較例1 磁場中での圧縮成形を室温 (冷間) で行った以外は、実
施例1〜3と同様にボンド型磁石を作製した。
【0114】比較例2〜3 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、エポキシ樹
脂を被覆量が3.0 %になるように溶液混合法により被
覆して、1層のエポキシ樹脂で被覆されたコンパウンド
を得た。このコンパウンドを用いて、被覆したエポキシ
樹脂の軟化温度より高温の温間 (比較例2) または冷
間 (比較例3) で磁場中での圧縮成形を行い、樹脂を硬
化させてボンド型磁石サンプルを作製した。
【0115】比較例4〜5 被覆樹脂としてエポキシ樹脂を使用した以外は、比較
例2〜3と同様にして、1層のエポキシ樹脂で被覆され
たコンパウンドからボンド型磁石サンプルを作製した。
但し、エポキシ樹脂の軟化温度が高いため、温間の圧
縮成形時にもエポキシ樹脂被覆は軟化しなかった。
【0116】比較例6〜7 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、エポキシ樹
脂を被覆量が1.5 %になるように溶液混合法により被
覆して内層の樹脂層を形成した後、さらに室温で液体の
エポキシ樹脂を被覆量が1.5 %になるように溶融混練
法で被覆して外層の樹脂層を形成し、2層構造のエポキ
シ樹脂で被覆された磁石粉末からなるコンパウンドを得
た。
【0117】このコンパウンドを用いて、エポキシ樹脂
の軟化温度より高温の温間 (比較例6) または冷間
(比較例7) で磁場中での圧縮成形を行い、樹脂を硬化
させてボンド型磁石サンプルを作製した。
【0118】比較例8〜9 内層と外層のエポキシ樹脂を逆にした以外は、比較例6
〜7と同様にボンド型磁石サンプルを作製した。即ち、
内層が溶融混練法で形成された室温で液体のエポキシ樹
脂の被覆であり、外層が溶液混練法で形成されたエポ
キシ樹脂の被覆であり、被覆量は1.5 %づつであっ
た。
【0119】比較例10〜12 内層と外層のエポキシ樹脂を逆にした以外は、実施例1
〜3と同様にボンド型磁石サンプルを作製した。但し、
内層は溶融混練法で形成された室温で固体のエポキシ樹
脂の被覆であり、外層は溶融混練法で形成された室温
で固体でより軟化温度が低いエポキシ樹脂の被覆であ
り、被覆量は1.5 %づつであった。この場合、比較例10
では内層と外層の両方のエポキシ樹脂が軟化溶融し、比
較例11、12では外層樹脂のみが軟化溶融した。
【0120】比較例13〜17 磁石粉末として、磁気等方性のNd−Fe−B系合金磁石
粉末を使用した以外は実施例1〜3および比較例1〜2
と同様にボンド型磁石サンプルを作製した。但し、圧縮
成形は磁場を印加せずに行った。
【0121】以上の実施例および比較例で使用した磁石
粉末と被覆したエポキシ樹脂の種類、エポキシ樹脂の軟
化温度、圧縮成形時の樹脂温度、圧縮成形時の内外両層
の樹脂の溶融粘度、金型への給粉性とコンパウンドの貯
蔵安定性を表1に、その他の試験結果とボンド型磁石の
密度、空隙率、磁石粉末の充填率を表2にまとめて示
す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】上記の試験結果から明らかな通り、本発明
の第1の方法に従って、軟化温度の異なる樹脂で2層構
造に被覆した磁気異方性のR−Fe−B系合金磁石粉末
を、少なくとも低軟化温度の内層樹脂が軟化するように
温間で磁場中の圧縮成形を行ってボンド型磁石を作製し
た実施例1〜3では、磁石粉末の充填率が大きく、空隙
率が小さく、かつ磁石粉末の配向度が大きく、磁石粉末
の損傷が抑えられた。その結果、磁気特性、機械的強
度、耐熱性、耐食性 (耐酸化性) 、外観、寸法精度、成
形性および圧縮成形原料粉末の貯蔵安定性のいずれにも
優れたボンド型磁石が得られた。
【0125】これに対し、磁石粉末は同じであるが、被
覆樹脂の種類または圧縮成形温度が異なる比較例1〜12
のボンド型磁石では、いずれかの特性を満たすことがで
きなかった。例えば、低軟化温度の室温で固体のエポキ
シ樹脂で磁石粉末を1層被覆し、この被覆が溶融する温
間条件下で磁場中の圧縮成形を行った比較例2では、実
施例に匹敵する高性能のボンド型磁石が得られたが、コ
ンパウンドの金型への給粉性と貯蔵安定性が悪く、工業
的製造には適用しにくい。室温で液体のエポキシ樹脂を
内層か外層に用いた比較例6〜9でも同様の傾向があ
り、しかもこの場合には磁石粉末の損傷の程度がやや大
きくなり、磁石の外観や寸法精度が不良となった。ま
た、実施例と同じように2層被覆した磁石粉末を冷間で
磁場中圧縮成形した比較例1では、磁石粉末の損傷の程
度が非常に大きく、配向度が低く、かつ潤滑性が不足し
て空隙が大きいボンド型磁石となったため、磁石の各種
特性がすべて劣化した。
【0126】以上より、本発明の効果を得るには、実施
例で採用したような磁石粉末の2層被覆と温間での圧縮
成形という二つの要件をいずれも満たす必要があること
がわかる。
【0127】また、比較例13〜15のように、磁気等方性
のNd−Fe−B系合金磁石粉末を使用して、本発明と同様
に軟化温度の異なる樹脂で2層構造に被覆し、温間で磁
場中の圧縮成形を行っても、同じ被覆粉末を磁場中で冷
間圧縮成形した比較例16、或いは1層被覆して磁場中で
温間圧縮成形した比較例17に比べて、各種特性の向上幅
が小さくなった。磁気等方性のNd−Fe−B系合金磁石粉
末は、もともと損傷しにくいため、本発明のような手段
を講じなくても、空隙の少ないボンド型磁石が得られる
ことが理由であると考えられる。しかし、磁気等方性の
Nd−Fe−B系合金磁石粉末では、磁気特性が著しく劣っ
たボンド型磁石しか得られない。
【0128】即ち、磁石粉末の2層構造の樹脂被覆と磁
場中の温間圧縮成形を組合わせた本発明の第1の方法に
よる磁気特性や他の特性の向上効果は、磁石粉末が磁気
異方性のR−Fe−B系合金の粉末である場合に顕著であ
り、他の磁石粉末では効果が著しく小さくなることがわ
かる。
【0129】
【実施例4〜9および比較例18〜38】本実施例では、本
発明の第2の方法に従って、室温で固体の潤滑剤と室温
で固体のエポキシ樹脂により磁気異方性のNd−Fe−B系
合金磁石粉末を2層構造に被覆した後、潤滑剤とエポキ
シ樹脂の両方が溶融する温間条件下で磁場中の圧縮成形
を行い、成形体を加熱して樹脂を熱硬化させ、ボンド型
磁石を作製した。比較例では、圧縮成形が冷間、潤滑剤
が室温で液体、被覆がエポキシ樹脂のみ、或いは磁石粉
末が磁気異方性のSm−Co系合金磁石粉末であった。各実
施例および比較例の詳細を次に述べる。
【0130】実施例4〜5 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、潤滑剤
(実施例3) または潤滑剤 (実施例4) を、被覆量
(潤滑剤固形分の被覆量、以下同じ) が0.5 %になるよ
うに溶融混練法で被覆した後、エポキシ樹脂を被覆量
が2.5 %になるように溶融混練法で被覆して、内層が潤
滑剤、外層がエポキシ樹脂という2層構造に被覆された
磁石粉末からなるコンパウンドを得た。
【0131】このコンパウンドを用いて、80℃で磁場中
の圧縮成形を行い、成形体を加熱してボンド型磁石サン
プルを作製した。圧縮成形中に潤滑剤とエポキシ樹脂は
両方とも溶融状態にあった。
【0132】実施例6 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、エポキシ樹
脂を被覆量が2.5 %になるように溶融混練法で被覆し
た後、潤滑剤を被覆量が0.5 %になるように溶融混練
法で被覆して、内層がエポキシ樹脂、外層が潤滑剤とい
う2層構造に被覆された磁石粉末からなるコンパウンド
を得た。
【0133】このコンパウンドを用いて、80℃で磁場中
の圧縮成形を行い、成形体を加熱してボンド型磁石サン
プルを作製した。圧縮成形中に潤滑剤とエポキシ樹脂は
両方とも溶融状態にあった。
【0134】実施例7〜9 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、エポキシ樹
脂を被覆量が2.5 %になるように溶液混合法で被覆し
た後、潤滑剤、またはを被覆量が0.5 %になるよ
うに溶液混合法で被覆して、内層がエポキシ樹脂、外層
が潤滑剤という2層構造に被覆された磁石粉末からなる
コンパウンドを得た。
【0135】このコンパウンドを用いて、80℃で磁場中
の圧縮成形を行い、成形体を加熱してボンド型磁石サン
プルを作製した。圧縮成形中に潤滑剤とエポキシ樹脂は
両方とも溶融状態にあった。
【0136】比較例18〜23 磁場中での圧縮成形を、80℃の温間ではなく、25℃の室
温 (冷間) で行った以外は、実施例4〜9と同様にボン
ド型磁石サンプルを作製した。即ち、磁気異方性のNd−
Fe−B系合金磁石粉末に、内層が潤滑剤、外層がエポキ
シ樹脂 (比較例18〜19) または内層がエポキシ樹脂、外
層が潤滑剤 (比較例20〜23) からなる2層構造の被覆を
形成したが、圧縮成形を潤滑剤とエポキシ樹脂がいずれ
も固体のままである温度で行った。
【0137】比較例24〜25 磁気異方性のNd−Fe−B系合金磁石粉末に、室温で固体
のエポキシ樹脂を被覆量が2.5 %になるように溶液混
合法で被覆した後、室温で液体の潤滑剤を被覆量が0.
5 %になるように混練して、内層がエポキシ樹脂、外層
が潤滑剤という2層構造に被覆された磁石粉末からなる
コンパウンドを得た。
【0138】このコンパウンドを用いて、室温 (比較例
24) または80℃ (比較例25) で磁場中の圧縮成形を行っ
たあと、成形体を加熱し、ボンド型磁石サンプルを作製
した。圧縮成形中に潤滑剤は液体状態に、エポキシ樹脂
は固体状態 (比較例24) または溶融状態 (比較例25) に
あった。
【0139】比較例26〜37 磁石粉末として、R−Fe−B系合金でなく、Sm−Co系合
金からなる磁気異方性の磁石粉末を使用した。この磁石
粉末を用いた以外は実施例4〜9に記載の方法と同様に
して、室温で固体の潤滑剤と室温で固体のエポキシ樹脂
の2層構造に磁石粉末を被覆し、得られたコンパウンド
から、80℃の温間での磁場中圧縮成形と成形体の加熱に
よりボンド型磁石を作製した (比較例26〜31) 。
【0140】別に、比較例18〜23と同様に、上記の2層
構造に被覆したSm−Co系合金磁石粉末からなるコンパウ
ンドを室温で磁場中圧縮成形し、成形体を加熱してボン
ド型磁石サンプルを作製した (比較例32〜37) 。比較例
26〜27および比較例32〜33では内層が潤滑剤、外層がエ
ポキシ樹脂であり、比較例28〜31および比較例34〜37で
は内層がエポキシ樹脂、外層が潤滑剤である。
【0141】比較例38 磁石粉末として、Sm−Co系合金からなる磁気異方性の磁
石粉末を使用し、室温で固体のエポキシ樹脂を被覆量
が3.0 %になるように溶液混合法で被覆して、エポキシ
樹脂1層で被覆された磁石粉末からなるコンパウンドを
得た。このコンパウンドを用いて室温で磁場中圧縮成形
を行った後、成形体を加熱し、ボンド型磁石サンプルを
作製した。
【0142】以上の実施例および比較例で使用した磁石
粉末と被覆した潤滑剤およびエポキシ樹脂の種類、圧縮
成形温度、圧縮成形時の潤滑剤とエポキシ樹脂の溶融粘
度、金型への給粉性と磁石粉末の損傷性 (微粉発生率)
を表3に、その他の試験結果とボンド型磁石の密度、空
隙率、磁石粉末の充填率を表4にまとめて示す。
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】上記の試験結果から明らかな通り、本発明
の第2の方法に従って、磁気異方性のR−Fe−B系合金
磁石粉末に室温で固体の潤滑剤と室温で固体の熱硬化性
樹脂の2層構造の被覆を施し、磁場中での圧縮成形を潤
滑剤と樹脂の両方が溶融するように温間で行ってボンド
型磁石を作製した実施例4〜9でも、第1の方法と同様
に、磁石粉末の充填率が大きく、空隙率が小さく、かつ
磁石粉末の配向度が大きく、磁石粉末の損傷が抑えられ
た。その結果、磁気特性、機械的強度、耐熱性、耐食性
(耐酸化性) 、外観、寸法精度、成形性および圧縮成形
原料粉末の貯蔵安定性のいずれにも優れたボンド型磁石
が得られた。
【0146】これに対し、同じ磁石粉末に同じ潤滑剤と
エポキシ樹脂の2層被覆を施しても、磁場中での圧縮成
形を冷間で行った比較例18〜24では、磁石粉末の損傷の
程度が大きく、配向度が低く、かつ潤滑性が不足して空
隙が大きいボンド型磁石となったため、空隙が大きいボ
ンド型磁石となり、保磁力以外の磁石の各種特性がすべ
て劣化した。また、潤滑剤が室温で液体であった比較例
24、25では、コンパウンドの金型への給粉性が悪く、工
業的製造においては問題を生ずる。
【0147】以上より、本発明の効果を得るには、実施
例で採用したような潤滑剤と熱硬化性樹脂による磁石粉
末の2層被覆と温間での圧縮成形という二つの要件をい
ずれも満たす必要があることがわかる。
【0148】また、磁気異方性のSm−Co系合金磁石粉末
を使用して、本発明と同様に室温で固体の潤滑剤と熱硬
化性樹脂を2層に被覆し、温間で磁場中の圧縮成形を行
った比較例26〜31では、同じ被覆粉末を磁場中で冷間圧
縮成形した場合 (比較例32〜37) 、或いは1層樹脂被覆
して磁場中で温間圧縮成形した場合 (比較例37) に比べ
て、各種特性の向上幅が小さくなった。さらに、磁気異
方性のSm−Co系合金磁石粉末では、本発明と同様の2層
被覆と温間磁場中圧縮成形を起こっても、磁気特性に劣
ったボンド型磁石しか得られない。
【0149】即ち、本発明の第2の方法の場合にも、磁
石粉末の上記2層構造の樹脂被覆と磁場中の温間圧縮成
形を組合わせた本発明の方法による磁気特性や他の特性
の向上は、磁石粉末が磁気異方性のR−Fe−B系合金の
粉末である場合に顕著であり、他の磁石粉末では効果が
著しく小さくなることが分かった。
【0150】
【発明の効果】本発明によれば、磁気異方性のR−Fe−
B系合金磁石粉末に対して、軟化温度が異なる2種類の
熱硬化性樹脂 (第1の方法) または潤滑剤と熱硬化性樹
脂 (第2の方法) を用いて2層構造の被覆を施し、得ら
れたコンパウンドを内層の熱硬化性樹脂 (第1の方法)
または潤滑剤と熱硬化性樹脂 (第2の方法) が溶融する
ような温間条件下で磁場中にて圧縮成形して、ボンド型
磁石を製造することにより、下記の効果を得ることがで
きる。
【0151】(1) 金型充填時の磁石粉末の流動性が向上
し、金型に充填した時の充填密度が向上する。しかも、
圧縮成形中も磁石粉末相互間および磁石粉末と樹脂間の
摩擦が低減されるため、得られたボンド型永久磁石の密
度が増大し、磁場印加時の磁石粉末の回転も容易にな
る。また、圧縮成形時に磁石粉末に対して割れ、歪みな
どの損傷が生じにくくなる。その結果、磁石粉末間の空
隙が少なく、磁石粉末の充填率が高いボンド型永久磁石
が得られ、磁石粉末配向度も向上するので、磁気特性が
向上する。さらに磁石粉末の損傷が抑制され、これが磁
気特性の著しい向上をもたらす。
【0152】(2) 磁石粉末が完全に樹脂で結合され、し
かも磁石粉末間の空隙が少なく、高密度で充填されるた
め、ボンド型永久磁石の機械的強度が向上し、割れや欠
けが生じにくく、寸法精度と製品歩留りが向上する。
【0153】(3) 磁石粉末の表面が熱硬化性樹脂で均一
に被覆されるので、成形および加熱硬化中の磁石粉末の
酸化が防止され、磁石粉末の酸化による磁気特性の低下
を抑制される。また、得られたボンド型永久磁石におい
ても、磁石粉末の表面が樹脂で均一に被覆されているこ
とから、使用時に高温高湿の環境下に曝された場合も磁
石粉末の酸化防止作用が持続し、耐熱性および耐食性が
良好となる。
【0154】(4) コンパウンドの表面が室温で固体の熱
硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と潤滑剤により均一に被
覆されているので、コンパウンドの凝集がなく、圧縮成
形時の金型への給粉性が良好で、成形性に優れる。
【0155】(5) 第1の方法では、外層樹脂の軟化温度
が高く、従ってガラス転移温度も高いため、室温で長時
間放置しても、コンパウンドの融着が起こらず、貯蔵安
定性が良好である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻本 秀治 大阪府三島郡島本町江川2丁目15−17 住 友特殊金属株式会社山崎製作所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気異方性を示す希土類・鉄系永久磁石
    材料からなる磁石粉末を2種類の熱硬化性樹脂により2
    層構造に被覆し、被覆した磁石粉末を磁場中で圧縮成形
    した後、成形体を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させるこ
    とからなるボンド型永久磁石の製造方法であって、 前記2層構造の樹脂被覆の内層が40〜100 ℃の範囲の軟
    化温度を有する熱硬化性樹脂からなり、外層が80〜150
    ℃の範囲で、かつ内層樹脂より高い軟化温度を有する熱
    硬化性樹脂からなり、前記磁場中での圧縮成形を、内層
    樹脂の軟化温度以上であって、かつ内外両層の樹脂の硬
    化温度よりも低温の温間で行うことを特徴とするボンド
    型永久磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 圧縮成形温度における前記内層樹脂の剪
    断速度10 sec-1での溶融粘度が10〜100,000 poise の範
    囲である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 磁気異方性を示す希土類・鉄系永久磁石
    材料からなる磁石粉末を熱硬化性樹脂と潤滑剤により2
    層構造に被覆し、被覆した磁石粉末を磁場中で圧縮成形
    した後、成形体を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させるこ
    とからなるボンド型永久磁石の製造方法であって、 前記熱硬化性樹脂の軟化温度が40〜150 ℃の範囲であ
    り、前記潤滑剤の融解温度が30〜120 ℃の範囲であり、
    前記磁場中での圧縮成形を、潤滑剤の融解温度以上かつ
    熱硬化性樹脂の軟化温度以上であって、熱硬化性樹脂の
    硬化温度よりも低温の温間で行うことを特徴とするボン
    ド型永久磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 圧縮成形温度における前記潤滑剤の剪断
    速度10 sec-1での溶融粘度が100 poise 以下である請求
    項3記載の方法。
JP7168702A 1995-07-04 1995-07-04 ボンド型永久磁石の製造方法 Withdrawn JPH0922828A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6387293B1 (en) 1998-07-21 2002-05-14 Seiko Epson Corporation Composition for rare earth bonded magnet use, rare earth bonded magnet and method for manufacturing rare earth bonded magnet
JP2010262996A (ja) * 2009-04-30 2010-11-18 Hitachi Metals Ltd 希土類系永久磁石およびその製造方法
JP2014116589A (ja) * 2012-12-11 2014-06-26 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd 電子部品及び電子部品の製造方法

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