JP6439974B2 - ボンド磁石及びボンド磁石の製造方法 - Google Patents
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熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のいずれの樹脂を使用する場合も、製造工程において加熱する必要があるため、磁石粉末が高温に曝される。一般に、磁石粉末は高温になると磁気特性が低下することから、磁石が所定の磁気特性を発揮できない可能性がある。特に、希土類磁石は高温に弱く、加熱すると磁気特性が劣化し易いため、磁気特性の低下を招き易い。また、磁石粉末は高温になると酸化が促進され、磁気特性の低下を招く虞がある。
上述したように、いずれの樹脂を使用する場合も加熱する必要があるため、加熱装置が必要であったり、加熱のためのエネルギー消費が大きいなど、製造コストの増大を招く虞がある。また、加熱による磁石粉末の酸化が原因で、磁石の磁気特性が低下する虞がある。そこで、酸化を抑制するため、磁石粉末に表面処理を施したり、非酸化性雰囲気中で加熱処理することが考えられるが、それによる生産性の低下やコストの増大を招く虞がある。特に、熱硬化性樹脂を使用する場合は、キュア処理が必要であり、熱硬化に時間がかかるため、生産性が低い。
熱硬化性樹脂は一度硬化すると、二度と元の状態に戻らないため、熱硬化性樹脂を使用したボンド磁石は再利用が不可能である。よって、製品屑や不良品の磁石が発生しても、これを粉砕して再度原料として使用することはできない。また、熱硬化性樹脂の場合、製品屑や不良品から磁石粉末だけでも回収し再利用することが考えられる。しかし、磁石粉末には樹脂が強固に固着しているため、磁石粉末から樹脂を除去して磁石粉末のみを回収することは容易ではない。特許文献2には、磁石から磁石粉末を回収する方法が開示されているが、工程が複雑であり、多大な時間とコストを要することが予想される。一方、熱可塑性樹脂は繰り返し使用でき、熱可塑性樹脂を使用したボンド磁石は再利用が可能である。よって、製品屑や不良品の磁石を粉砕して再度原料として使用し、再び加熱成形することで磁石を製造することが可能である。しかし、繰り返しの加熱によって磁気特性が低下するなど、再利用し難い問題がある。
準備工程では、磁石粉末とバロプラスチックとを含有する混合物を用意する。
成形工程では、前記混合物に10MPa以上100MPa以下の圧力を印加して、前記バロプラスチックを軟化させ、前記混合物を成形する。
固化工程では、成形後、圧力を常圧に戻して、前記バロプラスチックを硬化させ、前記混合物を固化する。
本発明者は、ボンド磁石において、バロプラスチックをバインダ樹脂として使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
準備工程では、磁石粉末とバロプラスチックとを含有する混合物を用意する。
成形工程では、前記混合物に10MPa以上100MPa以下の圧力を印加して、前記バロプラスチックを軟化させ、前記混合物を成形する。
固化工程では、成形後、圧力を常圧に戻して、前記バロプラスチックを硬化させ、前記混合物を固化する。
本発明の実施形態に係るボンド磁石及びボンド磁石の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1に示すボンド磁石10は、磁石粉末11がバインダ樹脂12で結合されている。このボンド磁石10は、バインダ樹脂12がバロプラスチックであり、磁石粉末11とバロプラスチック12とを含有する。磁石粉末11は、複数の磁石粒子11pで構成されている。磁石粒子11p中の矢印は磁化容易軸(c軸)を表している。
磁石粉末11は、フェライト磁石、Fe−Al−Ni−Co系磁石、Sm−Co系(SmCo5、Sm2Co17など)磁石、Nd−Fe−B系(Nd2Fe14B)磁石、Sm−Fe−N系(Sm2Fe17N3)磁石などの磁石粉末である。中でも、Nd−Fe−B系磁石などの希土類磁石は、フェライト磁石などに比較して、磁気特性に優れることから、磁石粉末11に希土類磁石粉末を用いることで、磁石を高性能化できる。この例では、磁石粉末11が希土類磁石粉末であり、例えばNd−Fe−B系磁石粉末である。
バインダ樹脂12は、硬質から軟質への圧力誘起変態を有するバロプラスチックであり、加圧下で固相(相分離)状態から溶融(相溶)状態に転移する。バロプラスチック12は、硬質成分と軟質成分との重合体を含有する。重合体の硬質成分としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリ(ヘキシルメタクリレート)から選択される少なくとも1種が挙げられる。重合体の軟質成分としては、例えば、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)及びポリ(カプロラクトン)から選択される少なくとも1種が挙げられる。硬質成分と軟質成分の組み合わせとしては、例えば、ポリスチレンとポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)とポリ(エチルアクリレート)、ポリスチレンとポリ(エチルヘキシルアクリレート)などの組み合わせが挙げられる。バロプラスチック12は、硬質成分と軟質成分とのブロック共重合体であることが好ましい。
ボンド磁石10には、潤滑剤(図示せず)が添加されていてもよい。潤滑剤が添加されていることで、成形工程において磁石粉末11とバロプラスチック12間、及び磁石粉末11(磁石粒子11p)間の摩擦を低減でき、磁石の密度(磁粉比率)が向上する。また、潤滑剤によって、金型との焼き付きを低減したり、成形後に磁石を金型から取り出す際に金型との摩擦を低減でき、成形性が向上する。更に、潤滑剤が添加されていることで、製造過程で磁場を印加して磁石粉末11を配向させる際に、磁石粉末11(磁石粒子11p)が回転して配向し易く、配向度を高めることができる。
ボンド磁石の製造方法は、準備工程と、成形工程と、固化工程とを備える。以下、図2を参照して、ボンド磁石の製造方法の一例を説明する。
準備工程は、磁石粉末11とバロプラスチック12とを含有する混合物を用意する工程である(図2の1段目、2段目参照)。図2に示す例では、磁石粉末11とバロプラスチック12とを所定の割合で配合し(図2の1段目)、これを混合機200で混合して、原料となる磁石粉末11とバロプラスチック12との混合物を作製する(図2の2段目)。図2に示す磁石粉末11は、異方性磁石粉末であり、磁石粒子11p中の矢印は磁化容易軸(c軸)を表している。混合機200には、例えばボールミル、V型混合機などの各種混合機・ミキサーなどを使用できる。
成形工程は、混合物に圧力を印加して、バロプラスチック12を軟化させ、混合物を成形する工程である(図2の3段目、4段目参照)。図2に示す例では、圧縮成形機300によって混合物を加圧成形する場合を例に説明する。圧縮成形機300は、上パンチ31と下パンチ32及び筒状のダイ33を有する金型30を備える。そして、磁石粉末11とバロプラスチック12との混合物を金型30内に充填する。
固化工程は、成形後、圧力を常圧に戻して、バロプラスチック12を硬化させ、混合物を固化する工程である。除圧することで、バロプラスチック12が相分離し、加熱しなくても常温で硬化して固化する。固化後、金型30から取り出すことで、磁石粉末11とバロプラスチック12とを含有するボンド磁石10が完成する(図2の5段目参照)。
図3に示す例では、原料となる磁石粉末11とバロプラスチック12との混合物として、ボンド磁石10を粉砕した粉砕粉15を用意する(図3の1段目、2段目参照)。粉砕は、例えばジョークラッシャー、ブラウンミル、ピンミル、ディスクミル、ジェットミル、ボールミル、などの公知の粉砕機を使用できる。
図2に示す製造方法と同様に、粉砕粉15を金型30内に充填し、成形前に、粉砕粉15に磁場を印加して磁場配向処理を行う(図3の3段目参照)。これにより、粉砕粉15中の磁石粒子11pの磁化容易軸が磁場の印加方向に揃うように粉砕粉15が回転し、磁石粉末11を配向させる。複数の磁石粒子11pが結合した状態の粉砕粉15の場合、個々の磁石粒子11pの磁化容易軸が揃っているため、磁場の影響を受け易く、粉砕粉15中の磁石粒子11pの磁化容易軸が磁場の印加方向に揃うように粉砕粉15が回転し易い。
成形後、固化工程を行う(図3の5段目参照)。固化工程は、図2に示す製造方法と同様であり、説明を省略する。
製造条件を変更してボンド磁石の試料を製造し、そのボンド磁石について評価した。
上記した磁石粉末と、バロプラスチック粉末と、潤滑剤とを混合して、原料となる混合物を作製した。バロプラスチック粉末の配合量は混合物全体の1.5質量%、潤滑剤の添加量は混合物全体の0.05質量%とした。バロプラスチック粉末の平均粒度(D50)は、15μmである。
バロプラスチック粉末の配合量(含有量)を表1に示すように変更した以外は、試料No.1−1のボンド磁石と同様にして、試料No.1−2〜1−5のボンド磁石を製造した。
加圧成形時の成形圧力を表1に示すように変更した以外は、試料No.1−1のボンド磁石と同様にして、試料No.2−1〜2−4のボンド磁石を製造した。
潤滑剤の添加量を表1に示すように変更した以外は、試料No.1−1のボンド磁石と同様にして、試料No.3−1〜3−4のボンド磁石を製造した。
試料No.4では、試料No.1−1と同じ条件で製造したボンド磁石を粉砕して粉砕粉を用意した。そして、この粉砕粉を原料として用いた以外は、試料No.1−1と同様に磁場中成形して、試料No.4のボンド磁石を製造した。
試料No.5では、上記した磁石粉末と、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂とを混合して、原料となる混合物を作製した。試料No.5では、フェノール樹脂の配合量を1.5質量%とし、潤滑剤を添加していない。そして、この混合物を試料No.1−1と同じ条件で磁場中成形した後、Arガス雰囲気中で160℃×3時間のキュア処理を行って、試料No.5のボンド磁石を製造した。
試料No.6−1,6−2では、上記した磁石粉末と、熱可塑性樹脂であるナイロン12とを混合して、原料となる混合物を作製した。試料No.6−1,6−2では、ナイロン12の配合量を1.5質量%とし、潤滑剤を添加していない。そして、試料No.6−1では、この混合物をArガス雰囲気中で試料No.1−1と同じ条件で磁場中成形して、ボンド磁石を製造した。他方、試料No.6−2では、加圧成形時の成形温度を200℃に変更した以外は、試料No.6−1と同様にして、ボンド磁石を製造した。
磁石密度(体積%)は、下記式により算出して求めた。
式:[(A−B)/(C−B)]×100
A:ボンド磁石の密度。ボンド磁石の実際の寸法及び重量を測定し、重量/体積で算出した値。
B:バインダ樹脂の真密度。樹脂のみ固化し、重量/体積で算出した値。
C:磁石粉末の真密度。磁石粉末の組成より算出した値。
残留磁化(T)は、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いてB−H曲線を測定し、このB−H曲線から求めた。
11 磁石粉末(希土類磁石粉末)
11p 磁石粒子
12 バインダ樹脂(バロプラスチック)
15 粉砕粉
200 混合機
300 圧縮成形機
30 金型
31 上パンチ 32 下パンチ 33 ダイ
34 磁場印加装置
Claims (6)
- 磁石粉末がバインダ樹脂で結合されたボンド磁石であって、
前記バインダ樹脂がバロプラスチックであるボンド磁石。 - 前記バロプラスチックは、硬質成分と軟質成分との重合体を含有し、
前記重合体の硬質成分として、ポリスチレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリ(ヘキシルメタクリレート)から選択される少なくとも1種を含有し、
前記重合体の軟質成分として、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)及びポリ(カプロラクトン)から選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載のボンド磁石。 - 前記バロプラスチックの含有量が、0.5質量%超2.0質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のボンド磁石。
- 潤滑剤が添加されており、
前記潤滑剤の添加量が、0.1質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のボンド磁石。 - 磁石粉末とバロプラスチックとを含有する混合物を用意する準備工程と、
前記混合物に10MPa以上100MPa以下の圧力を印加して、前記バロプラスチックを軟化させ、前記混合物を成形する成形工程と、
成形後、圧力を常圧に戻して、前記バロプラスチックを硬化させ、前記混合物を固化する固化工程と、を備えるボンド磁石の製造方法。 - 成形前及び成形中の少なくとも一方において、前記混合物に0.5T以上の磁場を印加する磁場配向処理を施す請求項5に記載のボンド磁石の製造方法。
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