JP4433068B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石 - Google Patents
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Description
圧縮成形法は、前記コンパウンドをプレス金型中に充填し、これを圧縮成形して成形体を得、その後、加熱して結合樹脂である熱硬化性樹脂を硬化させて磁石を製造する方法である。この方法は、他の方法に比べ、結合樹脂の量が少なくても成形が可能であるため、得られた磁石中の樹脂量が少なくなり、磁気特性の向上にとって有利であるが、磁石の形状に対する自由度が小さい。
(1) スクリュー式混練機を用いて、希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂と酸化防止剤と潤滑剤とを含み、前記酸化防止剤の含有量が2.0〜12.0 vol%、前記潤滑剤の含有量が0.2〜2.5 vol%である希土類ボンド磁石用組成物を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を射出成形機の射出シリンダ内で、前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱して溶融し、前記射出成形機の金型内に注入する射出成形法により磁石形状に成形する工程とを有し、
前記混練は、ニーディングディスク部の総長が25〜35cmの混練機を用いて、かつ、混練時における前記希土類ボンド磁石用組成物の温度が150〜350℃の条件で行うものであり、
前記希土類磁石粉末は、Smを主とする希土類元素とFeを主とする遷移金属とNを主とする格子間元素とを基本成分とするSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末(A)と、これよりも平均粒径が大きい他の磁石粉末とを含むものであり、
前記他の磁石粉末として、Sm−Co系合金で構成された磁石粉末(B)、および/または、HDDR法により製造され、R−Fe−B系合金で構成された磁石粉末(C)を含むことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
(11) 希土類ボンド磁石は、磁場中で成形されたものであり、磁気エネルギー積(BH)max が10MGOe以上である上記(4)ないし(9)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
まず、本発明の希土類ボンド磁石について説明する。本発明の希土類ボンド磁石は、射出成形により製造されるものであり、以下のような希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂よりなる結合樹脂とを含む。さらに、以下のような酸化防止剤を含むのが好ましい。
希土類磁石粉末は、Smを主とする希土類元素と、Feを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言う)を含む。
Sm−Fe−N系合金の代表的なものとしては、Sm2 Fe17合金を窒化して作製したSm2 Fe17N3 が挙げられる。
希土類磁石粉末は、上記のSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末と、以下の[1]、[2]の組成のもののうち少なくとも1種とを混合したものであってもよい。この場合、混合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優れた磁気特性を容易に得ることができる。
[2] R(ただし、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−Fe−B系合金と言う)。
R−Fe−B系合金で構成された磁石粉末は、後記のような異方性を有するものであるのが好ましい。また、R−Fe−B系合金で構成された磁石粉末は、後記のようなHDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)法により製造されたものであるのが好ましい。
また、希土類磁石粉末がR−Fe−B系合金で構成された磁石粉末([2]で示される磁石粉末)を含むものである場合、後記の表1に示すように、希土類磁石粉末中におけるその含有量は、7〜14 vol%であるのが好ましい。
また、希土類磁石粉末が、Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末(A)の他に、他の磁石粉末としてのSm−Co系合金で構成された磁石粉末(B)と、他の磁石粉末としてのR−Fe−B系合金で構成された磁石粉末(C)とを含むものである場合、各磁石粉末の含有量は、重量比で(C)、(A)、(B)の順に大きくなるものであるのが好ましい。
また、希土類磁石粉末中におけるSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末の含有量は、後記の表1に示すように、14〜100 vol%以上であるのが好ましい。
R−Fe−B系合金の代表的なものとしては、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂が用いられる。結合樹脂として従来より用いられている例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を用いた場合には、成形時における流動性が悪いので、成形性が劣り、磁石の空孔率が増大し、機械的強度および耐食性が低いが、熱可塑性樹脂を用いた場合には、このような問題が解消される。また、熱可塑性樹脂は、その種類、共重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の選択が可能となる。
これらのうちでも、射出成形における成形性の向上がより顕著であり、また機械的強度が強いことから、ポリアミド、耐熱性向上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイドを主とするものが好ましく、ポリアミド、液晶ポリマーを主とするものが特に好ましい。
また、流動性、成形性をより向上するために、用いられる熱可塑性樹脂の平均分子量(重合度)は、10000〜60000程度であるのが好ましく、12000〜30000程度であるのがより好ましい。
酸化防止剤は、後述する希土類ボンド磁石用組成物を混練する際等に、希土類磁石粉末の酸化(劣化、変質)や結合樹脂の酸化(希土類磁石粉末の金属成分が触媒として働くことにより生じる)を防止するために該組成物中に添加される添加剤である。この酸化防止剤の添加は、希土類磁石粉末の酸化を防止し、磁石の磁気特性の向上を図るのに寄与するとともに、希土類ボンド磁石用組成物の混練時、成形時における熱的安定性の向上に寄与し、少ない結合樹脂量で良好な成形性を確保する上で重要な役割を果たしている。
このような本発明の希土類ボンド磁石において、空孔率は、2 vol%以下であるのが好ましく、1.5 vol%以下であるのがより好ましい。空孔率が大き過ぎると、磁石粉末の組成、含有量、熱可塑性樹脂の組成等の他の条件によっては、磁石の機械的強度および耐食性が低下するおそれがある。
すなわち、本発明の希土類ボンド磁石は、無磁場中で成形されたものの場合、磁気エネルギー積(BH)max が6MGOe以上であるのが好ましく、7MGOe以上であるのがより好ましい。また、磁場中で成形されたものの場合、磁気エネルギー積(BH)max が10MGOe以上であるのが好ましく、12MGOe以上であるのがより好ましい。
なお、本発明の希土類ボンド磁石の形状、寸法等は特に限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱状、角柱状、円筒状、円弧状、平板状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大きさも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさのものが可能である。
本発明で用いられる希土類ボンド磁石用組成物は、主に、前述した希土類磁石粉末と、前述した熱可塑性樹脂と、前述した酸化防止剤と、後述する潤滑剤とで構成される。
この場合、希土類ボンド磁石用組成物中の希土類磁石粉末の含有量(添加量)は、67.6〜75.5 vol%程度とするのが好ましく、69.5〜75.5 vol%程度とするのがより好ましく、71.5〜75.5 vol%程度とするのがさらに好ましい。磁石粉末の含有量が少な過ぎると、磁気特性(特に磁気エネルギー積)が低下し、また、磁石粉末の含有量が多過ぎると、相対的に結合樹脂の含有量が少なくなるので、射出成形時における流動性が低下し、成形が困難または不能となる。
また、希土類ボンド磁石用組成物中の酸化防止剤の添加量は、2.0〜12.0 vol%程度であるのが好ましく、3.0〜10.0 vol%程度であるのがより好ましい。
一方、希土類ボンド磁石用組成物中の酸化防止剤の添加量が少な過ぎると、酸化防止効果が少なく、磁石粉末の含有量が多い場合に、磁石粉末等の酸化を十分に抑制することができなくなる。また、酸化防止剤の添加量が多過ぎると、相対的に樹脂量が減少し、成形体の機械的強度が低下する傾向を示す。
また、希土類ボンド磁石用組成物には、必要に応じ、例えば、結合樹脂を可塑化する可塑剤(例えば、ステアリン酸塩、脂肪酸)、その他成形助剤等の各種添加剤を添加することもできる。
潤滑剤の添加は、成形時の流動性を向上させるので、より少ない結合樹脂の添加量で同様の特性を得ることができ、好ましい。また、可塑剤の添加についても同様である。潤滑剤の添加量は、0.2〜2.5 vol%であるのが好ましい。また、可塑剤の添加量は、0.1〜2.0 vol%程度であるのが好ましい。
希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂と酸化防止剤と潤滑剤とを含む希土類ボンド磁石用組成物(混合物)を混練機を用いて十分に混練する。このとき、混練温度は、150〜350℃である。また、混練強さは、後述する表2に示されているように、ニーディングディスク部の総長として表すことができ、具体的には、25〜35cmとされる。
その後、成形体を冷却固化し、所望の形状、寸法の希土類ボンド磁石を得る。このとき、冷却時間は、5〜30秒程度が好ましい。
なお、混練条件、成形条件等は、上記範囲のものに限定されないことは、言うまでもない。
(実施例1〜4、比較例1、2)
下記組成(1)、(2)、(3)、(4)の4種の希土類磁石粉末と、下記A、B、Cの3種の熱可塑性樹脂(結合樹脂)と、ヒドラジン系酸化防止剤とを用意し、これらを下記表1に示す所定の組み合わせおよび量で混合し、希土類ボンド磁石用組成物を得た。
(2)Sm(Co0.604 Cu0.06Fe0.32Zr0.016)8.3 粉末(平均粒径=22μm )
(3)Sm2 Fe17N3 粉末(平均粒径=2μm )
(4)HDDR法による異方性Nd13Fe69Co11B6 Ga1 粉末(平均粒径=30μm )
A.ポリアミド(ナイロン12)、融点:175℃
B.液晶ポリマー、融点:180℃
C.ポリフェニレンサルファイド(PPS)、融点:280℃
得られたコンパウンドを用い、射出成形機により下記表2に示す成形条件で射出成形して、希土類ボンド磁石を得た。得られた磁石の形状、寸法、組成、外観(目視観察)、諸特性を下記表3に示す。
また、表3中の耐食性は、得られた希土類ボンド磁石に対し、恒温恒湿槽により80℃、90%RHの条件で加速試験を行い、錆びの発生までの時間により、◎、○、△、×の4段階で評価した。
磁石粉末(1)とエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)とを下記表1に示す比率で混合し、この混合物を室温下で混練し、得られたコンパウンドにより下記表2に示す条件で圧縮成形(プレス成形)し、この成形体を150℃で1時間熱処理して樹脂硬化を行い、希土類ボンド磁石を得た。得られた磁石の形状、寸法、組成、外観(目視観察)、諸特性を下記表3に示す。
なお、表3中の機械的強度は、別途に外径15mm、高さ3mmの試験片を無磁場で、表2に示す条件で圧縮成形し、この試験片を用い剪断打ち抜き法により評価した。また、耐食性の評価は、前記と同様にして行った。
これに対し、比較例1の希土類ボンド磁石は、希土類磁石粉末の含有量が多過ぎるため、希土類ボンド磁石用組成物の混練が不能であった。
また、比較例3では、磁石の外面に樹脂がしみ出すという異常が発生した。
上記のように、本発明によれば、磁石の形状や寸法に対する自由度が広く、寸法精度が高く、成形サイクルが短く、量産に適するという射出成形の利点を享受しつつ、少ない結合樹脂量で、成形性、耐食性に優れ、機械的強度が高く、磁気特性に優れた希土類ボンド磁石を提供することができる。
Claims (11)
- スクリュー式混練機を用いて、希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂と酸化防止剤と潤滑剤とを含み、前記酸化防止剤の含有量が2.0〜12.0 vol%、前記潤滑剤の含有量が0.2〜2.5 vol%である希土類ボンド磁石用組成物を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を射出成形機の射出シリンダ内で、前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱して溶融し、前記射出成形機の金型内に注入する射出成形法により磁石形状に成形する工程とを有し、
前記混練は、ニーディングディスク部の総長が25〜35cmの混練機を用いて、かつ、混練時における前記希土類ボンド磁石用組成物の温度が150〜350℃の条件で行うものであり、
前記希土類磁石粉末は、Smを主とする希土類元素とFeを主とする遷移金属とNを主とする格子間元素とを基本成分とするSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末(A)と、これよりも平均粒径が大きい他の磁石粉末とを含むものであり、
前記他の磁石粉末として、Sm−Co系合金で構成された磁石粉末(B)、および/または、HDDR法により製造され、R−Fe−B系合金で構成された磁石粉末(C)を含むことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 - 前記希土類ボンド磁石用組成物中の前記希土類磁石粉末の含有量が、67.6〜75.5 vol%である請求項1に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記希土類ボンド磁石用組成物中の前記熱可塑性樹脂と前記酸化防止剤との合計含有量が、24.5〜32.4 vol%である請求項1または2に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする希土類ボンド磁石。
- 空孔率が2 vol%以下である請求項4に記載の希土類ボンド磁石。
- 前記他の磁石粉末の平均粒径は、22〜30μmである請求項4または5に記載の希土類ボンド磁石。
- 前記希土類磁石粉末中における前記Sm−Co系合金で構成された磁石粉末の含有量は、69〜79 vol%以上である請求項4ないし6のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 前記R−Fe−B系合金で構成された磁石粉末は、異方性を有するものである請求項4ないし7のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 前記希土類磁石粉末中における前記R−Fe−B系合金で構成された磁石粉末の含有量は、7〜14 vol%である請求項4ないし8のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 希土類ボンド磁石は、無磁場中で成形されたものであり、磁気エネルギー積(BH)max が6MGOe以上である請求項4ないし9のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 希土類ボンド磁石は、磁場中で成形されたものであり、磁気エネルギー積(BH)max が10MGOe以上である請求項4ないし9のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
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