JP4301222B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石 - Google Patents
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圧縮成形法は、前記コンパウンドをプレス金型中に充填し、これを圧縮成形して成形体を得、その後、加熱して結合樹脂である熱硬化性樹脂を硬化させて磁石を製造する方法である。この方法は、他の方法に比べ、結合樹脂の量が少なくても成形が可能であるため、得られた磁石中の樹脂量が少なくなり、磁気特性の向上にとって有利であるが、磁石の形状に対する自由度が小さい。
(1) 希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂と酸化防止剤と潤滑剤とを含み、前記酸化防止剤の含有量が2.0〜12.0 vol%、前記潤滑剤の含有量が0.2〜2.5 vol%である希土類ボンド磁石用組成物を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を押出成形機のシリンダ内で、前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱して溶融し、前記押出成形機のダイから押し出すとともに冷却固化する押出成形法により成形する工程と、
前記押出成形法により成形された成形体を切断する工程とを有し、
前記混練は、ニーディングディスク部の総長が20〜35cmの混練機を用いて、かつ、混練時における前記希土類ボンド磁石用組成物の温度が150〜350℃の条件で行うものであり、
前記押出成形は、前記シリンダ内での材料温度が20〜330℃、前記押出成形機からの前記混練物の押出速度が0.1〜10mm/sec、かつ、前記押出成形時における金型温度が200〜350℃の条件で行うものであり、
前記希土類磁石粉末は、Smを主とする希土類元素とFeを主とする遷移金属とNを主とする格子間元素とを基本成分とするSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末と、これよりも平均粒径が大きい他の磁石粉末とを含むものであり、
前記他の磁石粉末の平均粒径は、前記Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末の平均粒径の10.5倍以上であり、
前記希土類ボンド磁石用組成物は、前記熱可塑性樹脂としてポリアミドを含むものであることを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
まず、本発明の希土類ボンド磁石について説明する。本発明の希土類ボンド磁石は、押出成形により製造されるものであり、以下のような希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂よりなる結合樹脂とを含む。さらに、以下のような酸化防止剤を含むのが好ましい。
希土類磁石粉末は、Smを主とする希土類元素と、Feを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言う)を含む。
Sm−Fe−N系合金の代表的なものとしては、Sm2 Fe17合金を窒化して作製したSm2 Fe17N3 が挙げられる。
[1] Smを主とする希土類元素と、Coを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、Sm−Co系合金と言う)。
[2] R(ただし、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−Fe−B系合金と言う)。
希土類磁石粉末がSm−Co系合金で構成された磁石粉末([1]で示される磁石粉末)を含むものである場合、後記の表1に示すように、希土類磁石粉末中におけるその含有量は、50〜73 vol%以上であるのが好ましい。
また、希土類磁石粉末が、Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末以外の磁石粉末を含むものである場合、後記のように、Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末よりも平均粒径が大きい他の磁石粉末を含むものであるのが好ましい。これにより、前述したように、混合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優れた磁気特性を容易に得ることができるという効果が得られるとともに、粒径の小さい磁石粉末(Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末)が粒径の大きい磁石粉末の隙間に侵入するようになり、Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末を単独で用いた場合に比べて、希土類ボンド磁石における磁石粉末の密度を高めることができ、希土類ボンド磁石を、熱可塑性樹脂の含有率が低く、空孔率が小さいものとすることができる。その結果、後記の表3に示すように、希土類ボンド磁石を、より高密度で、特に優れた磁気特性、機械的強度、耐食性を有するものとすることができる。このような場合、後記の表1に示すように、Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末と併用される他の磁石粉末の平均粒径は、Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末の平均粒径の10.5倍以上であるのが好ましい。
また、希土類磁石粉末中におけるSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末の含有量は、後記の表1に示すように、24〜100 vol%以上であるのが好ましい。
R−Fe−B系合金の代表的なものとしては、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂が用いられる。結合樹脂として従来より用いられている例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を用いた場合には、成形時における流動性が悪いので、成形性が劣り、磁石の空孔率が増大し、機械的強度および耐食性が低いが、熱可塑性樹脂を用いた場合には、このような問題が解消される。また、熱可塑性樹脂は、その種類、共重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の選択が可能となる。
また、流動性、成形性をより向上するために、用いられる熱可塑性樹脂の平均分子量(重合度)は、10000〜60000程度であるのが好ましく、12000〜30000程度であるのがより好ましい。
酸化防止剤は、後述する希土類ボンド磁石用組成物を混練する際等に、希土類磁石粉末の酸化(劣化、変質)や結合樹脂の酸化(希土類磁石粉末の金属成分が触媒として働くことにより生じる)を防止するために該組成物中に添加される添加剤である。この酸化防止剤の添加は、希土類磁石粉末の酸化を防止し、磁石の磁気特性の向上を図るのに寄与するとともに、希土類ボンド磁石用組成物の混練時、成形時における熱的安定性の向上に寄与し、少ない結合樹脂量で良好な成形性を確保する上で重要な役割を果たしている。
すなわち、本発明の希土類ボンド磁石は、無磁場中で成形されたものの場合、磁気エネルギー積(BH)max が8MGOe以上であるのが好ましく、10MGOe以上であるのがより好ましい。また、磁場中で成形されたものの場合、磁気エネルギー積(BH)max が12MGOe以上であるのが好ましく、14MGOe以上であるのがより好ましい。
なお、本発明の希土類ボンド磁石の形状、寸法等は特に限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱状、角柱状、円筒状、円弧状、平板状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大きさも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさのものが可能である。
本発明で用いられる希土類ボンド磁石用組成物は、主に、前述した希土類磁石粉末と、前述した熱可塑性樹脂と、前述した酸化防止剤と、後述する潤滑剤とで構成される。
この場合、希土類ボンド磁石用組成物中の希土類磁石粉末の含有量(添加量)は、77.6〜82.5 vol%程度とするのが好ましく、79〜82.5 vol%程度とするのがより好ましく、80.5〜82.5 vol%程度とするのがさらに好ましい。磁石粉末の含有量が少な過ぎると、磁気特性(特に磁気エネルギー積)の向上が図れず、また、磁石粉末の含有量が多過ぎると、相対的に結合樹脂の含有量が少なくなるので、押出成形時における流動性が低下し、成形が困難または不能となる。
なお、本発明では、酸化防止剤の添加量は、前記範囲の下限値以下であってもよく、また、無添加であってもよいことは、言うまでもない。
このように、熱可塑性樹脂の添加量が比較的多ければ、酸化防止剤の添加量を少なくすることができ、逆に、熱可塑性樹脂の添加量が少なければ、酸化防止剤の添加量を多くする必要がある。
また、希土類ボンド磁石用組成物には、必要に応じ、例えば、結合樹脂を可塑化する可塑剤(例えば、ステアリン酸塩、脂肪酸)、その他成形助剤等の各種添加剤を添加することもできる。
潤滑剤の添加は、成形時の流動性を向上させるので、より少ない結合樹脂の添加量で同様の特性を得ることができ、好ましい。また、可塑剤の添加についても同様である。潤滑剤の添加量は、0.2〜2.5 vol%であるのが好ましい。また、可塑剤の添加量は、0.1〜2.0 vol%程度であるのが好ましい。
希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂と酸化防止剤と潤滑剤とを含む希土類ボンド磁石用組成物(混合物)を、単独のまたは押出成形機に付属の混練機を用いて十分に混練する。このとき、混練温度は、150〜350℃である。また、混練強さは、後述する表2に示されているように、ニーディングディスク部の総長として表すことができ、具体的には、20〜35cmとされる。
希土類ボンド磁石の横断面形状は、ダイ(内ダイおよび外ダイ)の形状の選定により決定され、薄肉のものや異形断面のものでも容易に製造することができる。また、成形体の切断長さの調整により、長尺の磁石を製造することもできる。
なお、混練条件、成形条件等は、上記範囲のものに限定されないことは、言うまでもない。
(実施例1〜4、比較例1、2)
下記組成(1)、(2)、(3)、(4)の4種の希土類磁石粉末と、下記A、B、Cの3種の熱可塑性樹脂(結合樹脂)と、酸化防止剤としてN,N−ジフェニルオキサミド(キレート化剤)と、潤滑剤として脂肪酸と、可塑剤として金属せっけんとを用意し、これらを下記表1に示す所定の組み合わせおよび量で混合し、希土類ボンド磁石用組成物を得た。
(2)Sm(Co0.604 Cu0.06Fe0.32Zr0.016)8.3 粉末(平均粒径=21μm )
(3)Sm2 Fe17N3 粉末(平均粒径=2μm )
(4)HDDR法による異方性Nd13Fe69Co11B6 Ga1 粉末(平均粒径=28μm )
A.ポリアミド(ナイロン12)、融点:175℃
B.液晶ポリマー、融点:180℃
C.ポリフェニレンサルファイド(PPS)、融点:280℃
このときの混練条件および成形条件を下記表2に示す。また、得られた磁石の形状、寸法、組成、外観(目視観察)、諸特性を下記表3に示す。
なお、表3中の機械的強度は、別途に外径15mm、高さ3mmの試験片を無磁場で、表2に示す条件で押出成形し、この試験片を用い剪断打ち抜き法により評価した。
また、表3中の耐食性は、得られた希土類ボンド磁石に対し、恒温恒湿槽により80℃、90%RHの条件で加速試験を行い、錆びの発生までの時間により、◎、○、△、×の4段階で評価した。
表1に示す各希土類ボンド磁石用組成物をスクリュー式混練機を用いて、十分に混練し、コンパウンドを製造した後、該コンパウンドを用い、射出成形機により射出成形して、希土類ボンド磁石を製造した。
このときの混練条件および成形条件を下記表3に示す。また、得られた磁石の形状、寸法、組成、外観(目視観察)、諸特性を下記表6に示す。
磁石粉末(1)とエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)とを下記表1に示す比率で混合し、この混合物を室温下で混練し、得られたコンパウンドにより下記表3に示す条件で圧縮成形(プレス成形)し、この成形体を150℃で1時間熱処理して樹脂硬化を行い、希土類ボンド磁石を得た。
得られた磁石の形状、寸法、組成、外観(目視観察)、諸特性を下記表3に示す。
なお、表3中の機械的強度は、別途に外径15mm、高さ3mmの試験片を無磁場で、表3に示す条件で圧縮成形し、この試験片を用い剪断打ち抜き法により評価した。また、耐食性の評価は、前記と同様にして行った。
これに対し、比較例1の希土類ボンド磁石は、希土類磁石粉末の含有量が多過ぎるため、希土類ボンド磁石用組成物の混練が不能であった。
また、比較例3では、射出成形に必要な流動性が確保できないため、射出成形が不能であった。
また、比較例4では、磁石の外面に樹脂がしみ出すという異常が発生した。
特に、これらの特性は、射出成形により製造された希土類ボンド磁石よりも優れている。
Claims (11)
- 希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂と酸化防止剤と潤滑剤とを含み、前記酸化防止剤の含有量が2.0〜12.0 vol%、前記潤滑剤の含有量が0.2〜2.5 vol%である希土類ボンド磁石用組成物を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を押出成形機のシリンダ内で、前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱して溶融し、前記押出成形機のダイから押し出すとともに冷却固化する押出成形法により成形する工程と、
前記押出成形法により成形された成形体を切断する工程とを有し、
前記混練は、ニーディングディスク部の総長が20〜35cmの混練機を用いて、かつ、混練時における前記希土類ボンド磁石用組成物の温度が150〜350℃の条件で行うものであり、
前記押出成形は、前記シリンダ内での材料温度が20〜330℃、前記押出成形機からの前記混練物の押出速度が0.1〜10mm/sec、かつ、前記押出成形時における金型温度が200〜350℃の条件で行うものであり、
前記希土類磁石粉末は、Smを主とする希土類元素とFeを主とする遷移金属とNを主とする格子間元素とを基本成分とするSm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末と、これよりも平均粒径が大きい他の磁石粉末とを含むものであり、
前記他の磁石粉末の平均粒径は、前記Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末の平均粒径の10.5倍以上であり、
前記希土類ボンド磁石用組成物は、前記熱可塑性樹脂としてポリアミドを含むものであることを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 - 前記希土類ボンド磁石用組成物中の前記希土類磁石粉末の含有量が、77.6〜82.5 vol%である請求項1に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記希土類ボンド磁石用組成物中の前記熱可塑性樹脂と前記酸化防止剤との合計含有量が、15.0〜22.4 vol%である請求項1または2に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする希土類ボンド磁石。
- 空孔率が2 vol%以下である請求項4に記載の希土類ボンド磁石。
- 前記他の磁石粉末の平均粒径は、21〜28μmである請求項4または5に記載の希土類ボンド磁石。
- 前記希土類磁石粉末中における前記Sm−Fe−N系合金で構成された磁石粉末の含有量は、24〜100 vol%以上である請求項4ないし6のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 前記他の磁石粉末として、Smを主とする希土類元素とCoを主とする遷移金属とを基本成分とするSm−Co系合金で構成された磁石粉末を含む請求項4ないし7のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 前記希土類磁石粉末中における前記Sm−Co系合金で構成された磁石粉末の含有量は、50〜73 vol%以上である請求項8に記載の希土類ボンド磁石。
- 無磁場中で成形された場合の磁気エネルギー積(BH)max が8MGOe以上である請求項4ないし9のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
- 磁場中で成形された場合の磁気エネルギー積(BH)max が12MGOe以上である請求項4ないし10のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
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