JP3653852B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
希土類ボンド磁石は、希土類磁石粉末と結合樹脂(有機バインダー)との混合物(コンパウンド)を所望の磁石形状に加圧成形して製造されるものである。その成形方法には、圧縮成形法、射出成形法および押出成形法が利用されている。
【0003】
圧縮成形法は、前記コンパウンドをプレス金型中に充填し、これを圧縮成形して成形体を得、その後、結合樹脂が熱硬化性樹脂である場合にはそれを硬化させて磁石とする方法である。この方法は、他の方法に比べ、結合樹脂の量が少なくても成形が可能であるため、得られた磁石中の樹脂量が少なくなり、磁気特性の向上にとって有利である。
【0004】
押出成形法は、加熱溶融された前記コンパウンドを押出成形機の金型から押し出すとともに冷却固化し、所望の長さに切断して、磁石とする方法である。この方法では、磁石の形状に対する自由度が大きく、薄肉、長尺の磁石をも容易に製造できるという利点があるが、成形時における溶融物の流動性を確保するために、結合樹脂の添加量を圧縮成形法のそれに比べて多くする必要があり、従って、得られた磁石中の樹脂量が多く、磁気特性が低下する傾向があるという欠点がある。
【0005】
射出成形法は、前記コンパウンドを加熱溶融し、十分な流動性を持たせた状態で該溶融物を金型内に注入し、所定の磁石形状に成形する方法である。この方法では、磁石の形状に対する自由度は、押出成形法に比べさらに大きく、特に、異形状の磁石をも容易に製造できるという利点がある。しかし、成形時における溶融物の流動性は、前記押出成形法より高いレベルが要求されるので、結合樹脂の添加量は、押出成形法のそれに比べてさらに多くする必要があり、従って、得られた磁石中の樹脂量が多く、磁気特性が低下する傾向があるという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような各製造方法により製造された希土類ボンド磁石のうち、特に、圧縮成形による磁石は、磁気性能は高いものの、次のような課題を有していた。
【0007】
第1の課題として、空孔率が高く、そのため機械的強度が弱く、耐食性に劣るという欠点があり、第2の課題として、製造された希土類ボンド磁石の寸法精度が悪く、成形の安定性に欠けるという欠点がある。
【0008】
そのため、従来では、第1の課題解決のために、成形圧力が70kgf/mm2 以上という高圧成形の活用や、成形後に防食用コーティング処理を行い、第2の課題解決のために、成形後の2次加工による寸法調整や、成形時の複雑な寸法調整が行われていた。
【0009】
しかしながら、これらの方法は、磁石の製造コストの上昇や製造工程の複雑化を招き、また、これらの対策を施したにもかかわらず、満足する効果が得られず、十分な課題の解決には至っていないという問題がある。
【0010】
本発明者は、希土類ボンド磁石の製造に伴う上記欠点が生じる原因として、適切な結合樹脂の選定、成形時の温度条件や成形後の冷却条件が関連することを見い出した。すなわち、従来では、冷間成形により成形するか、あるいは温間成形であってもその成形温度が不適当であり、また、温間成形後の冷却は、成形時の加圧を解除し、常圧で行っていたことが原因であることを突き止めた。そして、このような原因を解消すべく、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、空孔率が低く、また寸法精度が高く、磁気特性に優れた希土類ボンド磁石を提供すること、およびこのような磁石を容易に得ることができる希土類ボンド磁石の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
【0013】
(1) 希土類磁石粉末を熱可塑性樹脂により結合してなる希土類ボンド磁石の製造方法であって、
前記希土類磁石粉末と前記熱可塑性樹脂とを含む組成物を前記熱可塑性樹脂が溶融状態となる第1の温度で加圧成形する工程と、
少なくとも前記第1の温度未満である第2の温度まで加圧状態で冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程を水冷により行うことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
【0014】
(2) 希土類磁石粉末を熱可塑性樹脂により結合してなる希土類ボンド磁石の製造方法であって、
前記希土類磁石粉末と前記熱可塑性樹脂とを含む組成物を前記熱可塑性樹脂が溶融状態となる第1の温度で加圧成形する工程と、
少なくとも前記第1の温度未満である第2の温度まで加圧状態で冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程を、冷却速度が2〜80℃/秒の強制冷却により行うことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
【0015】
(3) 前記第1の温度で加圧成形する工程に供される組成物は、前記希土類磁石粉末と前記熱可塑性樹脂とを含む組成物を前記熱可塑性樹脂の熱変形温度以上の温度で混練する工程を経て得られたものである上記(1)または(2)に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0016】
(4) 前記組成物を造粒または整粒する工程を有し、該工程により得られた粒状体を前記加圧成形に供する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0017】
(5) 前記第2の温度は、前記熱可塑性樹脂の熱変形温度である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0018】
(6) 前記第1の温度と前記第2の温度との差が、20℃以上である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0019】
(7) 前記加圧状態での冷却は、前記加圧成形の際の加圧を解除することなく連続して行われる上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0020】
(8) 前記加圧成形時の成形圧力に対し、前記加圧状態での冷却時の圧力が同等またはそれ以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0021】
(9) 前記加圧成形時の成形圧力は、60kgf/mm2 以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0022】
(10) 前記組成物中の前記希土類磁石粉末の含有量が、90〜99wt%である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0023】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする希土類ボンド磁石。
【0024】
(12) 空孔率が4.5%以下である上記(11)に記載の希土類ボンド磁石。
【0025】
(13) 空孔率が4.0%以下である上記(11)に記載の希土類ボンド磁石。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石について詳細に説明する。
【0037】
まず、本発明の希土類ボンド磁石の製造方法について説明する。本発明の希土類ボンド磁石の製造方法は、主に、以下の工程を有している。
【0038】
(1)希土類ボンド磁石用組成物の製造
まず、希土類ボンド磁石用組成物(以下単に「組成物」と言う)を製造する。この組成物は、主に、希土類磁石粉末と、結合樹脂(バインダー)とで構成される。また、好ましくは酸化防止剤を含有し、必要に応じその他の添加剤が添加される。これらの各構成成分は、例えば、ヘンシェルミキサー等の混合機や撹拌機を用いて混合される。
【0039】
以下、これらの各構成成分について説明する。
【0040】
1.希土類磁石粉末
希土類磁石粉末としては、希土類元素と遷移金属とを含む合金よりなるものが好ましく、特に、次の[1]〜[4]が好ましい。
【0041】
[1] Smを主とする希土類元素と、Coを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、Sm−Co系合金と言う)。
【0042】
[2] R(ただし、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−Fe−B系合金と言う)。
【0043】
[3] Smを主とする希土類元素と、Feを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言う)。
【0044】
[4] 前記[1]〜[3]の組成のもののうち、少なくとも2種を混合したもの。この場合、混合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優れた磁気特性を容易に得ることができる。
【0045】
Sm−Co系合金の代表的なものとしては、SmCo5 、Sm2 TM17(ただしTMは、遷移金属)が挙げられる。
【0046】
R−Fe−B系合金の代表的なものとしては、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0047】
Sm−Fe−N系合金の代表的なものとしては、Sm2 Fe17合金を窒化して作製したSm2 Fe17N3 が挙げられる。
【0048】
磁石粉末における前記希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。また、前記遷移金属としては、Fe、Co、Ni等が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。また、磁気特性を向上させるために、磁石粉末中には、必要に応じ、B、Al、Mo、Cu、Ga、Si、Ti、Ta、Zr、Hf、Ag、Zn等を含有することもできる。
【0049】
また、磁石粉末の平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜100μm 程度が好ましく、1〜50μm 程度がより好ましい。また、後述するような少量の結合樹脂で成形時の良好な成形性を得るために、磁石粉末の粒径分布は、ある程度分散されている(バラツキがある)のが好ましい。これにより、得られたボンド磁石の空孔率を低減することもできる。なお、前記[4]の場合、混合する磁石粉末の組成毎に、その平均粒径が異なっていてもよい。
【0050】
磁石粉末の製造方法は、特に限定されず、例えば、溶解・鋳造により合金インゴットを作製し、この合金インゴットを適度な粒度に粉砕し(さらに分級し)て得られたもの、アモルファス合金を製造するのに用いる急冷薄帯製造装置で、リボン状の急冷薄片(微細な多結晶が集合)を製造し、この薄片(薄帯)を適度な粒度に粉砕し(さらに分級し)て得られたもの等、いずれでもよい。
【0051】
以上のような磁石粉末の組成物中での含有量は、90〜99wt%程度であるのが好ましく、92〜99wt%程度であるのがより好ましく、95〜99wt%程度であるのがより好ましい。磁石粉末の含有量が少な過ぎると、磁気特性(特に最大磁気エネルギー積)の向上が図れず、また、寸法精度が低下する傾向を示す。また、磁石粉末の含有量が多過ぎると、相対的に結合樹脂の含有量が少なくなり、成形性が低下する。
【0052】
2.結合樹脂(バインダー)
結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂が用いられる。結合樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には、熱硬化性樹脂を用いた場合に比べ、低空孔率の磁石を得る上で有利であるが、本発明では、後述する成形時の温度条件、冷却条件と相まって、より低い空孔率を実現することができる。
【0053】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル系樹脂等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
これらのうちでも、成形性に優れ、また機械的強度が強いことから、ポリアミドまたはその共重合体、耐熱性向上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイドを主とするもの、成形の容易性や低コストの点で、ポリオレフィンを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0055】
用いられる熱可塑性樹脂は、融点が120℃以上のものであるのが好ましく、122℃〜400℃のものであるのがより好ましく、125℃〜300℃のものであるのがさらに好ましい。融点が前記下限値未満のものであると、磁石成形体の耐熱性が低下し、十分な温度特性(磁気的または機械的)を確保することが困難となる。また、融点が前記上限値を超えるものであると、成形時の温度が上昇し、磁石粉末等の酸化が生じ易くなる。
【0056】
また、成形性をより向上させるために、用いられる熱可塑性樹脂の平均分子量(重合度)は、10000〜60000程度であるのが好ましく、12000〜35000程度であるのがより好ましい。
【0057】
以上のような結合樹脂の組成物中での含有量は、1〜10wt%程度であるのが好ましく、1〜8wt%程度であるのが好ましく、1〜5wt%程度であるのがより好ましい。結合樹脂の含有量が多過ぎると、磁気特性(特に最大磁気エネルギー積)の向上が図れず、また、寸法精度が低下する傾向を示す。また、結合樹脂の含有量が少な過ぎると、成形性が低下する。
【0058】
3.酸化防止剤
酸化防止剤は、組成物の製造の際等に、希土類磁石粉末の酸化(劣化、変質)や結合樹脂の酸化(希土類磁石粉末の金属成分が触媒として働くことにより生じる)を防止するために該組成物中に添加される添加剤である。この酸化防止剤の添加は、希土類磁石粉末の酸化を防止し、磁石の磁気特性の向上を図るのに寄与するとともに、組成物の混練時、成形時における熱的安定性の向上に寄与し、少ない結合樹脂量で良好な成形性を確保する上で重要な役割を果たしている。
【0059】
この酸化防止剤は、組成物の製造時や磁石への成形時等において揮発したり、変質したりするので、製造された希土類ボンド磁石中には、その一部が残留した状態で存在する。
【0060】
酸化防止剤としては、希土類磁石粉末等の酸化を防止または抑制し得るものであればいかなるものでもよく、例えば、アミン系化合物、アミノ酸系化合物、ニトロカルボン酸類、ヒドラジン化合物、シアン化合物、硫化物等の、金属イオン、特にFe成分に対しキレート化合物を生成するキレート化剤が好適に使用される。なお、酸化防止剤の種類、組成等については、これらのものに限定されないことは言うまでもない。
【0061】
このような酸化防止剤を添加する場合、組成物中の酸化防止剤の添加量は、0.1〜2wt%程度とするのが好ましく、0.5〜1.5wt%程度とするのがより好ましい。この場合、酸化防止剤の添加量は、結合樹脂の添加量に対し2〜150%程度であるのが好ましく、30〜100%程度であるのがより好ましい。
【0062】
なお、本発明では、酸化防止剤の添加量は、磁石粉末と結合樹脂の比率に応じて磁石粉末の酸化や樹脂成分の酸化による変質の度合が決められるので、前記範囲の下限値以下であってもよく、また、無添加であってもよいことは、言うまでもない。
【0063】
前記結合樹脂と酸化防止剤との添加量は、例えば、次のようなことに留意して決定される。
【0064】
すなわち、組成物中の結合樹脂の添加量が少な過ぎると、後述する混練の際の粘度が高くなり混練トルクが増大し、発熱により磁石粉末等の酸化が促進される傾向となるので、酸化防止剤等の添加量が少ない場合には、磁石粉末等の酸化を十分に抑制することができなくなるとともに、混練物(樹脂溶融物)の粘度上昇等により成形性が低下し、低空孔率、高機械的強度で寸法安定性に優れた磁石を得る上で不利となる。また、結合樹脂の添加量が多過ぎると、成形性は良好であるが、得られた磁石中の結合樹脂含有量が多くなり、磁気特性が低下する。
【0065】
一方、組成物中の酸化防止剤の添加量が少な過ぎると、酸化防止効果が少なく、磁石粉末の含有量が多い場合に、磁石粉末等の酸化を十分に抑制することができなくなる。また、酸化防止剤の添加量が多過ぎると、相対的に樹脂量が減少し、成形体の機械的強度が低下する傾向を示す。
【0066】
このように、結合樹脂の添加量が比較的多ければ、酸化防止剤の添加量を少なくすることができ、逆に、結合樹脂の添加量が少なければ、酸化防止剤の添加量を多くする必要がある。
【0067】
従って、組成物中の結合樹脂と酸化防止剤との合計添加量は、1.0〜8.0wt%であるのが好ましく、2.0〜6.0wt%であるのがより好ましい。このような範囲とすることにより、成形時における成形性、磁石粉末等の酸化防止の向上に寄与し、低空孔率、高機械的強度、高磁気特性の磁石を得るのに有利となる。
【0068】
4.その他の添加剤
また、組成物には、必要に応じ、例えば、可塑剤(例えば、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸塩、オレイン酸等の脂肪酸)、潤滑剤(例えば、シリコーンオイル、各種ワックス、脂肪酸、アルミナ、シリカ、チタニア等の各種無機潤滑剤)、その他成形助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0069】
可塑剤の添加は、成形時の流動性を向上させるので、より少ない結合樹脂の添加量で同様の特性を得ることができ、また、より低い成形圧で加圧成形することを可能とする。潤滑剤の添加についても同様である。可塑剤の添加量は、0.01〜0.2wt%程度であるのが好ましく、潤滑剤の添加量は、0.05〜0.5wt%程度であるのが好ましい。
【0070】
(2)混合、混練
以上のような組成物は、前記各構成成分を混合した混合物として、または該混合物を混練した混練物として、後述する加圧成形に供される。
【0071】
混合は、混合すべき各構成成分を例えば、ヘンシェルミキサー等の混合機や撹拌機を用いて行われる。
【0072】
混練は、例えば2軸押出混練機、ロール式混練機、ニーダー等の各種混練機を用いて行われる。この混練は、常温下で行われてもよいが、好ましくは用いる熱可塑性樹脂の熱変形温度(ASTM D648 による方法で測定)以上の温度、より好ましくは用いる熱可塑性樹脂の融点以上の温度で行われる。
【0073】
例えば、結合樹脂としてポリアミド(熱変形温度145℃、融点178℃)を用いた場合には、特に好ましい混練温度は、150〜280℃程度である。また、混練時間は、結合樹脂の種類や、混練温度等の諸条件により異なるが、通常は、5〜40分程度とされる。
【0074】
このような条件で混練することにより、混練の効率が向上し、常温で混練する場合に比べてより短時間で均一に混練することができるとともに、結合樹脂の粘度が下がった状態で混練されるので、希土類磁石粉末の周囲を結合樹脂が覆うような状態となり、組成物中およびそれより製造された磁石中の空孔率の減少に寄与する。
【0075】
なお、n種類の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合、前記「用いる熱可塑性樹脂の熱変形温度(または融点)」は、例えば、次のようにして換算することができる。
【0076】
熱可塑性樹脂の合計を1重量部としたときの各熱可塑性樹脂の量をそれぞれA1 、A2 ・・・An 重量部、各熱可塑性樹脂の熱変形温度(または融点)をそれぞれT1 、T2 ・・・Tn としたとき、用いる熱可塑性樹脂の熱変形温度(または融点)は、A1 T1 +A2 T2 +・・・An Tn で表される。なお、この換算は、以下の工程において、n種類の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合にも同様とする。
【0077】
(3)造粒または整粒
前記混合物または混練物は、必要に応じ、造粒または整粒され、粒状体として成形に供される。これにより、加圧成形の作業、特に、成形金型への組成物の充填作業をより簡単に行うことができるとともに、寸法のバラツキが抑制され、寸法安定性が向上する。
【0078】
造粒または整粒の方法は、特に限定されないが、粉砕によりなされるのが好ましい。この粉砕は、例えば、ボールミル、振動ミル、破砕機、ジェットミル、ピンミル等を用いて行われる。
【0079】
また、例えば押出式造粒機のような造粒機を用いて行うこともでき、さらには、造粒機による造粒と、前記粉砕とを組み合わせて行うこともできる。
【0080】
また、粒状体の粒径の調整は、篩い等を用いて分級することにより行うことができる。
【0081】
粒状体としては、その最大粒径が成形金型のギャップ(粒状体を充填する空間)の最小寸法以下であるのが好ましく、また、その最大粒径が0.01mm以上、特に0.05mm以上であるのが好ましい。粒状体の最大粒径が成形金型のギャップの最小寸法を超えると、粒状体の金型への充填作業がし難くなり、ボンド磁石の寸法精度の向上が不十分となる。一方、粒状体の最大粒径が小さ過ぎると、得られたボンド磁石の空孔率が上昇する傾向を示す。
【0082】
また、同様の理由から、粒状体の平均粒径は、0.01〜2mm程度であるのが好ましく、0.02〜2mm程度であるのがより好ましく、0.05〜2mm程度であるのがさらに好ましい。
【0083】
このような粒状体は、粒径にある程度のバラツキがあるものでもよいが、粒径ができるだけ均一なものが好ましい。
【0084】
(4)加圧成形
前記(2)または(3)により得られた材料を用いて所望の磁石形状に加圧成形する。以下、代表的に圧縮成形の場合について説明すると、前期材料を圧縮成形機の金型内(ギャップ)に充填し、磁場中(配向磁場が例えば5〜20kOe 、配向方向は、縦、横、ラジアル方向のいずれも可)または無磁場中で圧縮成形する。
【0085】
この圧縮成形は、温間成形で行われる。すなわち、成形金型を加熱する等により、成形時の材料温度を、用いる熱可塑性樹脂が溶融状態となる所定の温度(第1の温度)とする。
【0086】
この第1の温度は、用いる熱可塑性樹脂の融点以上の温度、特に、融点から融点+100℃程度までの範囲の所定の温度とされるのが好ましい。
【0087】
例えば、用いる熱可塑性樹脂がポリアミド(融点:178℃)である場合、成形時における特に好ましい材料温度(第1の温度)は、180〜280℃程度とされる。
【0088】
このような温度で成形することにより、金型内での成形材料の流動性が向上し、円柱状、ブロック状のものは勿論のこと、円筒状(リング状)、平板状、湾曲板状等の薄肉部を有する形状のもの、小型のもの、長尺なものでも、低空孔率で、機械的強度が高く、良好かつ安定した形状、寸法のものを量産することができる。
【0089】
圧縮成形における成形圧力は、好ましくは60kgf/mm2 以下、より好ましくは5〜50kgf/mm2 程度、さらに好ましくは10〜40kgf/mm2 程度とされる。本発明では、前述したような第1の温度で成形を行うため、このような比較的低い成形圧力でも、前述したような長所を持つボンド磁石を成形(賦形)することができる。
【0090】
(5)冷却
加圧成形後、成形体を冷却する。この冷却は、少なくとも前記第1の温度未満である所定の温度(第2の温度)まで加圧状態で行う。以下、これを「加圧下冷却」と言う。
【0091】
このような加圧下冷却を行うことにより、低空孔率で寸法精度が高く、磁気特性に優れる希土類ボンド磁石が得られる。
【0092】
第2の温度(除圧温度)は、得られたボンド磁石の空孔率の低減および寸法精度の向上にとって、できるだけ低い温度であるのが好ましく、本発明では、用いる熱可塑性樹脂の融点またはそれ以下の温度であるのが好ましく、用いる熱可塑性樹脂の熱変形温度(軟化点)またはそれ以下の温度であるのがより好ましい。
【0093】
また、前記第1の温度と第2の温度との差は、20℃以上であるのが好ましく、50℃以上であるのがより好ましい。この温度差が大きい程、空孔率の低減および寸法精度の向上の効果が大きい。
【0094】
なお、組成物中の磁石粉末の含有量が比較的多い場合には、第2の温度をより高く設定しても低空孔率のボンド磁石を得易い。従って、例えば、組成物中の磁石粉末の含有量が例えば94wt%以上の場合には、第2の温度を、用いる熱可塑性樹脂の融点付近の温度または融点以上の温度(〜融点+10℃)としても、空孔率を低く(4.5%以下または4.0%以下)することができる。
【0095】
また、加圧下冷却は、加圧成形時の加圧を一旦解除または緩和した後、行ってもよいが、加圧成形時の加圧を解除することなく連続して行われるのが、工程の簡素化および寸法精度の向上等のために好ましい。
【0096】
また、加圧下冷却の際の圧力は、一定でも変化してもよいが、少なくとも用いる熱可塑性樹脂の融点(特に熱変形温度)までは一定に保持されているのが好ましい。加圧下冷却の際の圧力が変化する場合、例えば、圧力が連続的または段階的に増加または減少するようなパターンを含んでいてもよい。
【0097】
また、加圧下冷却の際の圧力(該圧力が経時変化する場合にはその平均圧力)は、加圧成形時の成形圧力と同等またはそれ以下であるのが好ましく、少なくとも用いる熱可塑性樹脂の融点までは加圧成形時の成形圧力と同等であるのがより好ましい。用いる熱可塑性樹脂の融点から熱変形温度までの間も加圧下で冷却する場合は、その間の圧力は、加圧成形時の成形圧力の40〜100%程度とするのが好ましく、50〜80%程度とするのがより好ましい。
【0098】
なお、本発明では、加圧下冷却の後(除圧後)に、非加圧下(常圧下)で冷却を続行してもよいことは、言うまでもない。また、非加圧下冷却を行った後、再度加圧下冷却を行ってもよい。
【0099】
加圧下冷却の際の冷却速度(冷却速度が経時変化する場合にはその平均値)は、特に限定されないが、0.5〜100℃/秒であるのが好ましく、1〜80℃/秒であるのがより好ましい。冷却速度が速過ぎると、冷却に伴う急速な収縮により、成形体内部に微細なクラックが発生し、機械的強度の低下を招くおそれがあり、また、冷却により内部応力が増大し、金型からの除材時に応力緩和によるひずみや変形が生じて、寸法精度が低下することがある。一方、冷却速度が遅過ぎると、成形のサイクルタイムが増加し、生産性が低下する。
【0100】
また、除圧後にも冷却を続行する場合、その冷却速度は特に限定されず、前記と同様の冷却速度とすることができる。
【0101】
なお、加圧下冷却の際および除圧後の冷却の際の冷却速度は、それぞれ、一定でも変化してもよい。
【0102】
なお、本工程において、冷却の方法は、例えば、強制空冷、水冷、油冷、水冷と空冷の組み合わせ等を採用することができる。
【0103】
本発明の希土類ボンド磁石は、好ましくは以上のような方法で製造されたものであり、空孔率が4.5%( vol%)以下、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%以下のものである。このように、空孔率が低い(=密度が高い)ので、機械的強度が高く、耐食性に優れ、また、寸法精度が高く、量産した場合にも寸法のバラツキが少なく、寸法安定性に優れている。さらに、磁気特性に優れ、特に、磁石粉末の組成、磁石粉末の含有量の多さ等から、等方性磁石であっても、優れた磁気特性を有する。
【0104】
本発明の希土類ボンド磁石は、磁石中での希土類磁石粉末の含有量が、92〜99wt%程度であるのが好ましく、94〜99wt%程度であるのがより好ましく、96〜99wt%程度であるのがより好ましい。磁石粉末の含有量が少な過ぎると、磁気特性(特に最大磁気エネルギー積)の向上が図れず、また、寸法精度が低下する傾向を示す。また、磁石粉末の含有量が多過ぎると、相対的に結合樹脂の含有量が少なくなり、成形性が低下する。
【0105】
無磁場中で成形された本発明の希土類ボンド磁石の場合、最大磁気エネルギー積(BH)max が好ましくは6MGOe以上、より好ましくは8MGOe以上であり、磁場中で成形された本発明の希土類ボンド磁石の場合、最大磁気エネルギー積(BH)max が12MGOe以上、より好ましくは13MGOe以上である。
【0106】
なお、本発明の希土類ボンド磁石の形状、寸法等は特に限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱状、角柱状、円筒状、円弧状(かわら状)、平板状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大きさも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさのものが可能である。
【0107】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【0108】
(参考例1)
下記の磁石粉末と結合樹脂(熱可塑性樹脂)と添加剤とを混合し、該混合物を混練し、該混練物を造粒(整粒)して粒状体を得、該粒状体を成形機の金型内に充填して無磁場中で圧縮成形(温間成形)し、成形時の加圧状態を同圧で維持しつつ冷却して、結合樹脂の固化により磁石粉末同士が結合された希土類ボンド磁石(サンプルNo. 1〜6)を製造した。
【0109】
Nd−Fe−B系磁石粉末:Nd12.0Fe77.8Co4.3 B5.9 、97wt%
ポリアミド樹脂(PA12):融点178℃、熱変形温度145℃、1.6wt%
酸化防止剤:ヒドラジン系酸化防止剤1.4wt%
混合:ヘンシェルミキサーを用いて混合。
【0110】
混練:2軸押出混練機により混練。混練温度150〜250℃、スクリュー回転数100〜250rpm 。
【0111】
造粒(整粒):混練物を粉砕し、平均粒径1mmの粒に調整。
【0112】
成形:組成物(粒状体)を金型に投入後、金型を下記表1に示す温度(第1の温度)に加熱したところでパンチで加圧。
【0113】
成形圧力10kgf/mm2 。
【0114】
冷却:加圧状態を維持しつつ冷却し、100℃(第2の温度)で圧力を抜
いてサンプルを取り出した。
【0115】
冷却方法は空冷。
【0116】
加圧下冷却での冷却速度0.5℃/秒
成形品形状:円柱形状(φ10mm×高さ7mm)および平板形状(20mm角×厚さt3.0mm)。
【0117】
得られた希土類ボンド磁石について、磁気性能(磁束密度Br、保磁力iHc 、最大磁気エネルギー積(BH)max )、密度、空孔率、機械的強度を調べたところ、下記表1に示す次の通りであった。
【0118】
なお、表1中の各測定項目の評価は、以下の方法に従った。
【0119】
磁気性能:40kOe でパルス着磁した後、最大印加磁場25kOe で直流磁気測定機により測定。
【0120】
密度:アルキメデス法(水中法)により測定。
【0121】
空孔率:秤量組成と成形体の密度の測定値から算出。
【0122】
機械的強度:打ち抜きせん断試験により測定。試験機は(株)島津製作所製オートグラフを用い、円形ポンチ(外径3mm)により剪断速度1.0mm/minで行った。
【0123】
試料には平板形状の磁石を使用。
【0124】
【表1】
【0126】
(実施例1)
下記表2に示す磁石粉末と結合樹脂(熱可塑性樹脂)と添加剤とを混合し、該混合物を混練し、該混練物を造粒(整粒)して粒状体を得、該粒状体を成形機の金型内に充填して無磁場中で圧縮成形(温間成形)し、成形時の加圧状態を同圧で維持しつつ冷却して、結合樹脂の固化により磁石粉末同士が結合された希土類ボンド磁石(サンプルNo. 7〜31)を製造した。
【0127】
磁石粉末:粉末1〜5、各96.0wt%
ポリアミド樹脂(PA12):融点178℃、熱変形温度145℃、2.55wt%
酸化防止剤:ヒドラジン系酸化防止剤1.4wt%
他の添加剤:高級脂肪酸(ステアリン酸)0.05wt%
混合:ヘンシェルミキサーを用いて混合。
【0128】
混練:2軸押出混練機により混練。混練温度150〜250℃、スクリュー回転数100〜250rpm 。
【0129】
造粒(整粒):混練物を粉砕と分級により平均粒径0.5mmの粒に調整。
【0130】
成形:組成物(粒状体)を金型に投入後、230℃(第1の温度)に加熱したところでパンチで加圧。成形圧力15kgf/mm2 。
【0131】
冷却:加圧状態を維持しつつ冷却し、下記表3に示す温度(第2の温度)で圧力を抜いてサンプルを取り出した。
【0132】
冷却方法は空冷。
【0133】
加圧下冷却での冷却速度2℃/秒
成形品形状:リング形状(外径φ20mm×内径φ18mm×高さ10mm)。
【0134】
【表2】
【0135】
なお、表2中の平均粒径は、F.S.S.S.測定(Fisher Sub-Sieve Sizer)により行った。
【0136】
得られた希土類ボンド磁石について、密度、空孔率、真円度(寸法精度)を調べたところ、下記表3、表4に示す次の通りであった。
【0137】
なお、表3、表4中の各測定項目の評価は、以下の方法に従った。
【0138】
密度:参考例1と同様。
【0139】
空孔率:参考例1と同様。
【0140】
真円度:成形品の外径を10点測定し、その測定値の最大値、最小値から下式より算出。
【0141】
真円度=(最大値−最小値)/2
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
表3、表4に示すように、各組成の磁石粉末について、冷却時の除圧温度が低くなるに従って、得られたボンド磁石の密度が増加し、空孔率が低減し、また、サンプルの除材時の変形が生じ難くなり、真円度(寸法精度)が向上する傾向を示す。冷却時の除圧温度が用いた熱可塑性樹脂の融点以下の温度、特に熱変形温度以下の温度である場合には、極めて高い真円度(寸法精度)が得られている。
【0145】
(実施例2)
下記の磁石粉末と下記表5に示す結合樹脂(熱可塑性樹脂)と添加剤とを混合し、該混合物を混練し、該混練物を造粒(整粒)して粒状体を得、該粒状体を成形機の金型内に充填して磁場中で圧縮成形(温間成形)し、成形時の加圧状態を同圧で維持しつつ冷却して、結合樹脂の固化により磁石粉末同士が結合された希土類ボンド磁石(サンプルNo. 32〜62)を製造した。
【0146】
磁石粉末:Sm(Co0.672 Fe0.22Cu0.08Zr0.028 )8.35、96.5wt%
熱可塑性樹脂:2.3wt%
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤1.2wt%
混合:ヘンシェルミキサーを用いて混合。
【0147】
混練:2軸押出混練機により混練。混練温度は表5参照。
【0148】
スクリュー回転数100〜250rpm 。
【0149】
造粒(整粒):混練物を粉砕と分級により平均粒径0.5mmの粒に調整。
【0150】
成形:組成物(粒状体)を金型に投入後、金型を表5に示す成形温度(第1の温度)に加熱したところでパンチで加圧。
【0151】
成形圧力10kgf/mm2 。
【0152】
加圧直前にラジアル磁場(配向磁場15kOe )を印加。
【0153】
冷却:加圧状態を維持しつつ冷却し、下記表6〜表8に示す温度(第2の温度)で圧力を抜いてサンプルを取り出した。
【0154】
冷却方法は水冷。
【0155】
加圧下冷却での冷却速度10℃/秒
成形品形状:リング形状(外径φ30mm×内径φ27mm×高さ5mm)。
【0156】
【表5】
【0157】
なお、表5中の熱変形温度は、下記のASTM D648 による方法で測定した。
【0158】
ASTM D648 :試験片の両端を油浴中で支え、中央の荷重棒を通じて4.6 kgf/cm2 の曲げ応力をかけ、油温を2℃/分で昇温し、撓みが0.254mmに達した温度を測定。
【0159】
得られた希土類ボンド磁石について、密度、空孔率、真円度(寸法精度)を調べたところ、下記表6、表7、表8に示す次の通りであった。
【0160】
なお、表6、表7、表8中の各測定項目の評価は、前記参考例1、実施例1と同様の方法に従った。
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
【表8】
【0164】
表6〜表8に示すように、各組成の熱可塑性樹脂について、冷却時の除圧温度が低くなるに従って、得られたボンド磁石の密度が増加し、空孔率が低減し、真円度(寸法精度)が向上する傾向を示す。冷却時の除圧温度が用いた熱可塑性樹脂の融点以下の温度、特に熱変形温度以下の温度である場合には、極めて高い真円度(寸法精度)が得られている。
【0165】
また、表6〜表8中に示す各サンプルについて、前記と同様の方法で磁気性能を調べたところ、いずれも、磁束密度Brが7.0kG以上、保磁力iHc が7kOe 以上、最大磁気エネルギー積(BH)max が13MGOe以上と、高い値を示した。
【0166】
(実施例3)
磁石粉末と結合樹脂(熱可塑性樹脂)と添加剤とを下記表9に示す組成で混合し、該混合物を混練し、該混練物を造粒(整粒)して粒状体を得、該粒状体を成形機の金型内に充填して無磁場中で圧縮成形(温間成形)し、成形時の加圧状態を融点までは同圧で、それ以後は圧力を50%程度まで減少させながら冷却して、結合樹脂の固化により磁石粉末同士が結合された希土類ボンド磁石(サンプルNo. 63〜80)を製造した。
【0167】
磁石粉末:Nd12.0Fe77.8Co4.3 B5.9
ポリアミド樹脂(PA12):融点178℃、熱変形温度145℃、
酸化防止剤:ヒドラジン系酸化防止剤
混合:ヘンシェルミキサーを用いて混合。
【0168】
混練:2軸押出混練機により混練。混練温度100〜250℃、
スクリュー回転数100〜250rpm 。
【0169】
造粒(整粒):混練物を粉砕と分級により平均粒径0.5mmの粒に調整。
【0170】
成形:組成物(粒状体)を金型に投入後、金型を220℃(第1の温度)に加熱したところでパンチで加圧。成形圧力20kgf/mm2 。
【0171】
冷却:加圧状態(圧力は経時的に減少)を維持しつつ冷却し、下記表10、表11に示す温度(第2の温度)で圧力を完全に抜いてサンプルを取り出した。
【0172】
冷却方法は水冷。
【0173】
加圧下冷却での冷却速度50℃/秒
成形品形状:かわら形状(外周曲率半径R8mm×内周曲率半径r7mm×120°×高さ8mm)。
【0174】
【表9】
【0175】
得られた希土類ボンド磁石について、密度、空孔率、真円度(寸法精度)および磁気特性(最大磁気エネルギー積(BH)max )を調べたところ、下記表10、表11に示す次の通りであった。
【0176】
なお、表10、表11中の各測定項目の評価は、前記参考例1、実施例1と同様の方法に従った。
【0177】
【表10】
【0178】
【表11】
【0179】
表10、表11に示すように、磁石粉末の各含有量について、冷却時の除圧温度が低くなるに従って、得られたボンド磁石の密度が増加し、空孔率が低減し、真円度(寸法精度)が向上する傾向を示す。冷却時の除圧温度が用いた熱可塑性樹脂の融点以下の温度、特に熱変形温度以下の温度である場合には、極めて高い真円度(寸法精度)が得られている。
【0180】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、温間成形の後、所定温度まで加圧状態で冷却を行うので、低空孔率で、機械的強度が高く、また、寸法精度が高く、成形性、磁気特性に優れた希土類ボンド磁石を提供することができる。この場合、熱可塑性樹脂を溶融状態として加圧成形するので、比較的低い成形圧力で上記特性の希土類ボンド磁石を製造することができ、製造が容易である。
【0181】
特に、冷却時における第2の温度(除圧温度)が、用いる熱可塑性樹脂の融点以下の温度、さらには熱変形温度以下の温度である場合や、第1の温度と所定温度以上乖離している場合には、空孔率が極めて低くかつ寸法精度が極めて高い希土類ボンド磁石を提供することができる。
【0182】
また、温間成形に先立ち、希土類ボンド磁石用組成物の加温下での混練や造粒(整粒)を行う場合には、上記諸特性がより向上する。
Claims (13)
- 希土類磁石粉末を熱可塑性樹脂により結合してなる希土類ボンド磁石の製造方法であって、
前記希土類磁石粉末と前記熱可塑性樹脂とを含む組成物を前記熱可塑性樹脂が溶融状態となる第1の温度で加圧成形する工程と、
少なくとも前記第1の温度未満である第2の温度まで加圧状態で冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程を水冷により行うことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 - 希土類磁石粉末を熱可塑性樹脂により結合してなる希土類ボンド磁石の製造方法であって、
前記希土類磁石粉末と前記熱可塑性樹脂とを含む組成物を前記熱可塑性樹脂が溶融状態となる第1の温度で加圧成形する工程と、
少なくとも前記第1の温度未満である第2の温度まで加圧状態で冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程を、冷却速度が2〜80℃/秒の強制冷却により行うことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 - 前記第1の温度で加圧成形する工程に供される組成物は、前記希土類磁石粉末と前記熱可塑性樹脂とを含む組成物を前記熱可塑性樹脂の熱変形温度以上の温度で混練する工程を経て得られたものである請求項1または2に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記組成物を造粒または整粒する工程を有し、該工程により得られた粒状体を前記加圧成形に供する請求項1ないし3のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記第2の温度は、前記熱可塑性樹脂の熱変形温度である請求項1ないし4のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記第1の温度と前記第2の温度との差が、20℃以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記加圧状態での冷却は、前記加圧成形の際の加圧を解除することなく連続して行われる請求項1ないし6のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記加圧成形時の成形圧力に対し、前記加圧状態での冷却時の圧力が同等またはそれ以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記加圧成形時の成形圧力は、60kgf/mm2 以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 前記組成物中の前記希土類磁石粉末の含有量が、90〜99wt%である請求項1ないし9のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
- 請求項1ないし10のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする希土類ボンド磁石。
- 空孔率が4.5%以下である請求項11に記載の希土類ボンド磁石。
- 空孔率が4.0%以下である請求項11に記載の希土類ボンド磁石。
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