JP4389672B2 - ボンド磁石用組成物およびボンド磁石 - Google Patents

ボンド磁石用組成物およびボンド磁石 Download PDF

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Description

本発明は、ボンド磁石用組成物およびボンド磁石に関し、さらに詳しくは、低温環境下で十分な可撓性を有し、磁石特性を維持しながら機械強度を向上することができるボンド磁石用組成物およびこれを成形してなるボンド磁石に関する。
ボンド磁石は、樹脂バインダーに磁性粉を混合分散させた組成物を加熱して溶融状態とし、射出成形、押出成形、圧縮成形、圧延成形などによって製造される永久磁石であり、雑貨からモータやセンサに至るまで様々な分野で使用されている。磁性粉には、フェライト磁石粉末、Sm−Co系、Nd−Fe−B系、Sm−Fe−N系などの希土類磁石材料粉末、アルニコや鉄クロムコバルトなどの金属磁石材料粉末などが用いられている。
ボンド磁石は、樹脂バインダーに磁性粉を混合分散させたボンド磁石用組成物を成形しているため、形状自由度や機械強度に優れ、他の部品との一体成形が可能であるといった特長を持つ。
これらのボンド磁石が使用された製品は、その用途に応じて100℃以上の高温に晒されたり、逆に−35℃以下の低温に晒されたり、さらには高温の状態と低温の状態とに交互に晒される場合があるため、このような温度差が大きい状況下でボンド磁石の使用安定性を評価するために、ヒートサイクル試験や、ヒートショック試験を行っている。ボンド磁石を他の部品(主にヨーク材)と一体成形した製品、あるいは張り合わせた製品などについて、上記試験を実施すると、熱膨張率の違いから生じる歪みや、樹脂バインダーの劣化などによって、ボンド磁石が割れたり、他の部品から剥離したりすることがあり、問題となっていた。
磁性粉と混合する樹脂バインダーには、主に、ナイロン6、ナイロン12、あるいはナイロン6−12などの共重合ポリアミドが用いられているが、上記問題を解決するために、一般的にジイソノニルアジペート、ジブチルセバケート、N−ブチルベンゼンスルホンアミドおよびε−カプロラクタムなどの可塑剤を添加する方法が用いられている。しかし、この方法においても低温での可撓性が十分ではなく、また経時劣化により可撓性が低下する問題があった。
また、ボンド磁石用組成物の溶融流動性を向上させることができ、成形物の高磁力化のために磁性粉の充填量を多くしても良好な溶融流動性を維持することができ、溶融時の流動性低下に基づく成形加工性の低下を抑制できるボンド磁石成形物を得ることを目的に、樹脂バインダーが、熱可塑性樹脂からなる主材樹脂に、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を含有させたボンド磁石用組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。また、熱可塑性樹脂からなる主材樹脂に重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を含有させた樹脂バインダーを用いたボンド磁石用組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
これらは、いずれも熱可塑性樹脂を主材樹脂として用い、これに重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体あるいは重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を少量添加、混合したものを樹脂バインダーとしているが、これらの樹脂バインダーでは、ボンド磁石の温度環境下での使用安定性に係る課題を解決することはできなかった。
このような状況下、低温での可撓性に優れ、ヒートサイクル試験、ヒートショック試験時の割れやヨーク材からの剥がれがなく、磁気特性も良好なボンド磁石用組成物の出現が切望されていた。
特開2001−123067号公報(特許請求の範囲) 特開2001−240740号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、上記事情に鑑みなされたもので、低温環境下で十分な可撓性を有し、磁石特性を維持しながら機械強度を向上することができるボンド磁石用組成物およびこれを成形してなるボンド磁石を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂からなる樹脂バインダーに磁性粉を混合分散してボンド磁石用組成物を調製する場合に、樹脂バインダーとして、特定の重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および/または重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を主たる樹脂として用いることにより、低温環境下での可撓性を効果的に向上させることができ、また成形加工性、寸法精度、機械強度などが低下するという問題を生じることなく、高磁力のボンド磁石用組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類−遷移金属系磁性粉(A)を樹脂バインダー(B)に混合し分散させたボンド磁石用組成物において、樹脂バインダー(B)は、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体および/または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体からなり、引張降伏応力が17MPa以下で、かつ引張破壊応力が40MPa以下であり、該樹脂バインダー(B)は、希土類−遷移金属系磁性粉(A)100重量部に対して1〜20重量部配合するすることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、希土類−遷移金属系磁性粉(A)は、希土類(Nd又はSm)と遷移金属(Fe及び/又はCo)を含有することを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、希土類−遷移金属系磁性粉(A)は、平均粒径が1〜10μmであることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、希土類−遷移金属系磁性粉(A)とともに、さらにフェライト磁石粉を含んでいることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体は、下記の一般式(1)で示される骨格を繰り返し単位とするブロック共重合体であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
一般式(1)
Figure 0004389672
(式中、R、Rは、同一か又は異なる炭素数6〜44の脂肪族ジアミン、及び/又は脂環族ジアミンから選ばれるジアミン残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は
芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基、Rは、炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、mは0〜70の整数、nは1〜150の整数、xは1〜100の整数である。)。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、下記の一般式(1)で示される骨格を繰り返し単位とする重合脂肪酸系ポリアミド骨格(a)と、一般式(2)で示されるポリエーテルエステルアミド骨格(b)を含有することを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
一般式(1)
Figure 0004389672
(式中、R〜R、m、n、xは前記と同じである。)
一般式(2)
Figure 0004389672
(式中、Rは、炭素数4〜60のポリオキシアルキレングリコール又はジヒドロキシ炭化水素残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基および又は炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体の1種以上から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、qは1〜20の整数である。)。
また、本発明の第7の発明によれば、第1又は6の発明において、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、重合脂肪酸系ポリアミド骨格(a)とポリエーテルエステル骨格(b)の共重合比(a):(b)が、10:90〜90:10であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1、5又は6の発明において、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、酸価が2.8以下であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1、5又は6の発明において、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、数平均分子量が6000〜12000であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、−35℃での破断伸び(ASTM D638に規定する引張試験)が1%以上であることを特徴とするボンド磁石用組成物が提供される。
一方、本発明の第11の発明によれば、第1〜10の発明のいずれかの発明に係るボンド磁石用組成物を、射出成形、圧縮成形又は押出成形のいずれかにより成形してなるボンド磁石が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第1〜10の発明のいずれかの発明に係るボンド磁石用組成物を、射出成形、圧縮成形又は押出成形のいずれかにより他の金属材料および/または無機材料部品と一体成形してなるボンド磁石が提供される。
本発明のボンド磁石用組成物によれば、樹脂バインダーとして、特定の重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および/または重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を主たる樹脂として用いているために、この組成物を成形したボンド磁石では、−35℃程度の低温環境下に晒した場合でも良好な可撓性を有し、ヒートサイクル試験、ヒートショック試験時の割れやヨーク材からの剥がれが改善される。
また、Zn被膜および/または燐酸塩皮膜が均一に被覆された希土類元素を含む鉄系磁性粉と上記樹脂バインダーとを組み合せることにより、さらに耐候性等に優れたボンド磁石用組成物が得られる。さらに、これを成形して得たボンド磁石は、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器に至る幅広い分野で活用でき、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明のボンド磁石用組成物およびボンド磁石について、さらに詳しく説明する。
本発明のボンド磁石用組成物は、磁性粉(A)を、特定の重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、または重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を主たる樹脂として含有する樹脂バインダー(B)に、混合分散したものである。
1.磁性粉
磁性粉(A)としては、従来からボンド磁石に用いられている磁性粉を用いることができるが、本発明では、希土類元素と遷移金属元素を含有する希土類−遷移金属系磁性材料粉末を使用することが好ましい。
その希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)が挙げられ、一方、遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)が挙げられ、これら群のそれぞれから1種又は2種以上が選択される。
遷移金属元素では、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい希土類元素は、Nd又はSmのいずれか、遷移金属元素は、Fe又はCoのいずれかである。
希土類−遷移金属系磁性粉として、例えば、希土類−コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉末等から選ばれる一種または二種以上の混合物が挙げられる。これらの中では、特にSm又はNdを5〜40at.%、Fe及び/又はCoを50〜90at.%含有するものが好ましい。
本発明においては、Nd−Fe−Bなどの希土類−鉄−ほう素系磁性粉末と、Sm−Fe−Nなどの希土類−鉄−窒素系磁性粉末とを組み合せて用いると、磁気特性の面で得られる効果が大きい。
希土類−遷移金属系磁性粉の物性は、特に限定されるものではないが、得られるボンド磁石組成物の溶融流動性、磁性粉の配向性、充填率等の観点から、通常は平均粒径を0.05〜300μmとする。0.1〜100μmが好ましく、0.1〜10μmであることがさらに好ましい。ただし、HDDR法によって製造される異方性Nd−Fe−B系磁性粉については、平均粒径が0.1〜10μmのように小さくなると、磁気特性が低下する場合があるので、この限りではない。
また、本発明においては、要求される磁気特性に合わせて、Srフェライト、Baフェライト等のフェライト粉末、アルニコや鉄、クロム、コバルトなどの金属磁性材料粉末の磁性粉一種以上を希土類−遷移金属系磁性材料粉末に混合した粉末を用いることができる。
2.樹脂バインダー
本発明に用いる樹脂バインダー(B)は、一般式(1)で示される骨格を繰り返し単位とする重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)であるか、又はこのブロック共重合体(B−1)、若しくはそのオリゴマーに一般式(2)で示されるポリエーテルエステルを共重合させた重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)のいずれかである。
すなわち、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)の繰り返し単位は、一般式(1)で表される。
一般式(1)
Figure 0004389672
ただし、式中、R、Rは、同一か又は異なる炭素数6〜44の脂肪族ジアミン、及び/又は脂環族ジアミンから選ばれるジアミン残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基、Rは、炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、mは0〜70の整数、nは1〜150の整数、xは1〜100の整数である。
また、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、上記の一般式(1)で示される骨格を繰り返し単位とする重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(式中、R〜R、m、n、xは前記と同じ)に、下記の一般式(2)で示されるポリエーテルエステルを共重合させたものである。
一般式(2)
Figure 0004389672
式中、Rは、炭素数4〜60のポリオキシアルキレングリコール又はジヒドロキシ炭化水素残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基および又は炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体の1種以上から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、qは1〜20の整数である。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、又は重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、数平均分子量が1,000〜50,000のものが好ましく、5,000〜25,000のものがより好ましく、6,000〜12,000のものが最も好ましい。数平均分子量が6,000未満であると、溶融粘度が著しく小さくなり、成形加工中に磁性粉と分離したり、また組成物を成形したボンド磁石の強度が著しく低くなる場合があり、数平均分子量が12,000を超えた場合、成形時に十分な溶融流動性が得られなくなる。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、重合脂肪酸ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、用いられる磁性粉の種類、得られるボンド磁石組成物の溶融流動性、磁性粉の配向性等を考慮し選択すれば良い。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体は、重合脂肪酸系ポリアミド骨格のみからなる樹脂であって、その骨格には、必ず重合脂肪酸のソフトな骨格が含まれていなければならない。すなわち、重合脂肪酸のソフトな骨格が含まれていれば、芳香族環を有するか炭化水素鎖が短いジカルボン酸のハードな骨格が含まれていなくても良い。ただし、芳香族環を有するか炭化水素鎖が短いジカルボン酸のハードな骨格と、重合脂肪酸のソフトな骨格とがブロック重合している樹脂がより好ましく、骨格の組み合わせは、用いられる磁性粉の種類、得られるボンド磁石組成物の溶融流動性、磁性粉の配向性等を考慮し適宜選択すれば良い。
重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、重合脂肪酸系ポリアミドのハードな骨格(a)と、ポリエーテルエステルのソフトな骨格(b)との共重合比(a):(b)が、10:90〜90:10である樹脂を選択することが望ましい。共重合比(a):(b)は、30:70〜70:30のものが好ましい。
また、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)同士でグレードの異なるもの、あるいは重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)同士でグレードの異なるものを混合してもよい。さらには、重合脂肪酸ポリアミドブロック共重合体(B−1)と重合脂肪酸ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)とを混合して用いることも可能である。混合比率は任意であるが、(B−1):(B−2)が20:80〜50:50とすることが好ましい。
本発明で使用する重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、特開平5−320335号、特開平5−320336号公報等に詳細に記載されている方法で製造できる。
重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)は、特定の重合脂肪酸(イ)、ジカルボン酸(ロ)、およびジアミン(ハ)を混合し、重縮合して製造される。
重合脂肪酸(イ)としては、炭素数が20〜48の不飽和脂肪酸、例えば炭素数が10〜24の二重結合または三重結合を一個以上有する一塩基性脂肪酸を重合して得た重合脂肪酸が用いられる。具体例としては、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の獣植物油脂肪酸及びこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、エルカ酸等から重合した重合脂肪酸及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。
市販されている重合脂肪酸は、通常ダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とし、他に原料の脂肪酸や三量体化以上の脂肪酸を含有するが、ダイマー酸(二量体化脂肪酸)含有量が70%以上、好ましくは95%以上であり、かつ水素添加して不飽和度を下げたものが望ましい。特に、プリポール1004、プリポール1009、プリポール1010(以上ユニケマ社製)やエンポール1008(コグニス社製)等の市販品が好ましい。むろんこれらの混合物及びエステル誘導体も用いられる。
重合脂肪酸とともに用いうるジカルボン酸(ロ)としては、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体が使用される。例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらのエステル誘導体等が挙げられ、1種以上であっても良い。
特に、重合性、重合脂肪酸との共重合性及び得られるポリアミド共重合体の物性などの点から、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びこれらの混合物が好ましい。
ジアミン(ハ)としては、炭素数が2〜20のジアミンが好ましく、具体的には、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4´−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンパラキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族ジアミン、炭素数20〜48の重合脂肪酸から誘導されるダイマージアミン等の脂肪族ジアミン類が挙げられる。
(イ)炭素数が20〜48の重合脂肪酸、(ロ)アゼライン酸及び/またはセバシン酸、(ハ)炭素数が2〜20のジアミンは、上記重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(B−1)の構造式を満足する割合で混合する。例えば、上記(ロ)に対する(イ)の重量比(イ)/(ロ)が0.3〜5.2で、かつ全カルボキシル基に対し全アミノ基が実質的に当量になるように混合して重縮合させることができる。(イ)/(ロ)が0.3未満であると、得られるポリアミド共重合体の可撓性が不十分であり、一方、5.2より大きくなると、柔らかすぎるだけでなく耐熱性の低下が著しくなり目的とするポリアミド共重合体が得られない場合がある。
その一例を示すと、窒素で十分に置換した反応容器に、(イ)重合脂肪酸と、(ロ)アゼライン酸及び/またはセバシン酸と、(ハ)ヘキサメチレンジアミンの三者を、上記(ロ)に対する(イ)の重量比(イ)/(ロ)が0.3〜5.2で、かつ全カルボキシル基に対し全アミノ基が実質的に当量になるように仕込み、所定量の分子量調整剤と、少量の重縮合触媒(燐酸等)の存在下で200〜280℃に昇温し、1〜3時間反応させた後、160mmHg程度の減圧下で、更に0.5〜2時間反応させることにより高分子量で可撓性に優れるポリアミド共重合体を得ることができる。分子量調整剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等のカルボキシル基含有炭化水素を用いることができる。
一方、この重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B−2)は、上記の要領で特定の重合脂肪酸(イ)、ジカルボン酸(ロ)、およびジアミン(ハ)を混合し、重縮合して得られた上記重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、またはそのオリゴマーに、ポリオキシアルキレングリコール又はジヒドロキシ炭化水素(ニ)を反応させて製造される。
ポリオキシアルキレングリコール(ニ)としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとのブロックまたはランダム共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
ジヒドロキシ炭化水素としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの他、例えばオレフィンやブタジエンを重合して末端を水酸基化し、かつその二重結合を水素
添加して得られるポリオレフィングリコールや水添ポリブタジエングリコール等を挙げることができる。
重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体のポリエーテルエステル骨格(a)と重合脂肪酸系ポリアミド骨格(b)との共重合比(a):(b)を、10:90〜90:10の間で必要特性に応じて変化させることが好ましい。特に、(a):(b)が、80:20〜50:50のものが好ましい。重合脂肪酸系ポリアミド骨格が10未満の場合、樹脂が柔らかくなり過ぎて、必要な成形体強度が得られなくなる場合があり、90を超えると成形体が脆くなる場合がある。
このようにして製造された重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体には、富士化成工業株式会社製、「PA−30R」、同「PA−30M」、同「PA−30」、同「PA−40M」、同「PA−50R」、同「PA−50M」、同「PA−60」、同「PA−160M」、同「PA−160」、同「PA−260R」、同「PA−260M」、同「PA−260」、同「PA−270M」、同「PA−280R」、同「PA−280M」、同「PA−280」などが挙げられる。
また、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体としては、富士化成工業株式会社製、「TPAE8」、同「TPAE10・C」、同「TPAE10・HP」、同「TPAE12」などが挙げられる。
これらのポリアミド共重合体は、上記の条件を満足すれば使用することができるが、樹脂単独での機械特性において、引張降伏応力が18MPa以下、好ましくは17MPa以下であり、かつ引張破壊応力が50MPa以下、好ましくは40MPa以下でなければならない。ここで、応力測定は、JIS K7162に基づき、常温の金型に射出成形し乾燥した試料について評価したものである。引張降伏応力が17MPaを超えるか、引張破壊応力が40MPaを超えると、低温での可撓性が悪化するので好ましくない。
また、これらのポリアミド共重合体は、その遊離酸の量を表す酸価が2.8以下であることが好ましい。ここで酸価は、JIS K5601−2−1に準拠し試料のポリアミド共重合体1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をもって表される。そして、具体的には、トルエン:ノルマルブタノール=2:1とした溶剤に試料を溶解し、フェノールフタレイン指示薬溶液を加えた上で0.1mol/Lの水酸化カリウムメチルアルコール溶液で滴定して求められる。
酸価が2.8を超えると、ポリアミド共重合体に含まれる遊離酸の量が多いので、混練トルクが大きくなり組成物の流動性が低下するので好ましくない。
本発明の樹脂バインダーには、本発明の目的を損なわない限り、他の樹脂を配合することができる。例えば、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6−12、4−6ナイロン、およびその変性ナイロン、ナイロン系エラストマー等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ふっ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。
これら熱可塑性樹脂の溶融粘度や分子量は、所望の機械的強度が得られる範囲内で低い方が望ましく、例えばナイロン12の場合であれば、分子量は15,000以下であることが好ましい。また原料としての形状は、パウダー、ビーズ、ペレット等、特に限定されないが、磁性粉との均一混合性から考えるとパウダー状が望ましい。
これらの中では、得られる成形体の種々の特性やその製造方法の容易性から、ナイロン12などのポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂の使用が好ましい。これら熱可塑性樹脂の2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
前記の先行特許文献は、磁石組成物全体に対して重合脂肪酸ポリアミド系樹脂を多く入れすぎると、相対的に磁粉含有率が低下するために磁気特性が低下するので好ましくないとしているが、重合脂肪酸ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体は機械特性がよいので、単独で樹脂バインダーを構成すれば、一体成形品などで、ボンド磁石とヨーク材などの部品との熱膨張率の差から生じるボンド磁石の応力割れ等の発生を抑制することができる。
3.ボンド磁石用組成物の製造方法
本発明のボンド磁石用組成物は、(1)上記磁性粉を融点が150〜500℃の金属化合物又は燐酸化合物により被覆するか、(2)カップリング剤で被覆した後、(3)樹脂バインダーを混合し、磁性粉を分散することにより製造される。
(1)磁性粉の金属化合物又は燐酸化合物による被覆
本発明の表面処理方法としては、事前に融点が150〜500℃の金属化合物又は燐酸化合物により、磁性粉に表面処理するか、磁性粉とカップリング剤で処理する。あるいは、燐酸化合物により、磁性粉に表面処理した後、さらに磁性粉をカップリング剤で処理を行う。
(金属化合物)
金属化合物としては、亜鉛(Zn)のようにそれ自身が反応後または未反応後にZn含有皮膜を形成し、かつ希土類−遷移金属系磁性粉の表面に実質的に均一に被覆しうるものであり、具体的には、Zn、錫(Sn)、インジウム(In)、鉛(Pb)などが挙げられる。
金属化合物は、希土類元素を含む鉄系磁性粉表面を保護するために磁性粉の0.1〜9.1重量%を必要とする。皮膜は、磁性粉とZnなどの金属粉末を混合し、不活性ガス中、200〜500℃で熱処理して、磁性粉表面を被覆した後、熱処理によって凝集した磁性粉を解砕することで得られる。
(燐酸化合物)
燐酸化合物としては、それ自身が反応後または未反応後に燐酸塩を形成し、かつ希土類−遷移金属系磁性粉の表面に被覆されることが重要となる。これらの条件を満足させることが可能な表面被覆用材料としては、一般に市販されている燐酸、燐酸溶液、燐酸塩溶液、これらの混合物等、および/または燐酸塩系表面処理剤を使用できる。燐酸化合物には、燐酸をはじめ、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸が含まれる。燐酸系表面処理剤としては、たとえば、燐酸系、燐酸マンガン系、燐酸亜鉛系、燐酸水素ナトリウム系、燐酸カルシウム系、有機燐酸エステル系などの有機燐酸化合物などがある。これらの燐酸化合物は、単独もしくは二種類以上で用いることが出来る。
また、燐酸アンモニウム、燐酸アンモニウムマグネシウムなど、更には磁性粉末表面でホパイト、フォスフォフェライト等を形成する燐酸亜鉛系、ショルツァイト、フォスフォフィライト、ホパイト等を形成する燐酸亜鉛カルシウム系、マンガンヒューリオライト、鉄ヒューリオライト等を形成する燐酸マンガン系、ストレンナイト、ヘマタイト等からなる燐酸鉄系などの被膜を形成する化合物が挙げられる。上記の燐酸化合物は、通常、キレート剤、中和剤等と混合して処理剤とされる。
これらのうち、燐酸、燐酸亜鉛系、燐酸マンガン系、燐酸鉄系化合物が好ましい性能を発揮するが、その理由は、これらの金属元素が希土類系金属を成分とする磁石粉末の表面に保護膜を形成しやすいためと考えられる。これら燐酸化合物は、上記の化合物単独でも複数種を組み合せてもよい。
燐酸化合物は、湿式処理法、乾式処理法のいずれかで表面処理される。燐酸化合物の添加時期は特に限定されないが、磁性粉末の粉砕時に添加すると効果が大きい。その後、加熱乾燥させれば、より安定して磁性粉末に定着する。すなわち、表面処理溶液、磁性粉末は、プラネタリーミキサーなどにより、十分に混合撹拌(例えば40rpm、20℃、保持・撹拌時間20分間)し、最後に、100〜150℃の真空オーブン中で10〜30時間乾燥させる。
燐酸化合物の添加量は、その種類や濃度により異なるが、磁性粉末100重量部に対して0.01〜10重量部とする。添加量は0.05〜7重量部、特に0.1〜5重量部が好ましい。これによって、磁性粉末に、厚さ5〜100nm程度の燐酸塩化合物の膜を形成できる。添加量が0.01重量部未満の場合は、膜が十分に形成されず、また10重量部を超えると磁性粉末の密度が低下し、磁気特性、機械的強度が低下する。
ここで磁性粉表面を保護するために必要な燐酸塩皮膜の厚さは、通常、平均で3〜100nmである。燐酸塩皮膜の平均厚さが3nm未満であると十分な耐候性が得られず、また、100nmを越えると磁気特性が低下すると共にボンド磁石を作製する際には混練性や成形性が低下する。また、均一に被覆されているとは、通常は磁性粉表面の80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上が燐酸塩皮膜で覆われていることをいう。
本発明で著しく効果が発揮されるものは、表面に金属化合物皮膜又は平均3〜100nmの燐酸塩皮膜が均一に被覆された希土類−鉄系磁性粉である。この磁性粉は、本出願人が提案したように(特開2001−207201号公報、特開2003−7521号公報)、従来に比べて耐候性が著しく向上している。この磁性粉を、従来のナイロン6、ナイロン12、あるいはナイロン6−12などの共重合ポリアミドと混練して得られるボンド磁石用組成物は、耐候性は大幅に改善されるものの、溶融流動性や成形加工性が未だ不十分で、成形して得られた磁石は機械強度が若干低下する。ところが、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および/または重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体とを主たる樹脂バインダーとする本発明によって改善される。
また上記希土類−鉄系磁性粉の中でも、20〜25wt%のR(希土類元素)、2.1〜3.9wt%のN(窒素)、0.2〜2.0wt%のP(リン)、0.5〜5.0wt%のO(酸素)及び残部がT(遷移金属元素および不可避的不純物)であり、不可避的不純物であるH(水素)の含有量を0.3wt%以下としたThZn17型またはThNi17型結晶構造をもつ希土類−鉄−窒素(R−T−N)系磁性粉を選択した場合には、成形体の表面性状も良好で、溶融流動性、成形加工性、成形体の機械強度が改善される点でさらに効果的である。
ここで希土類元素(R)は、20〜25wt%、好ましくは23〜25wt%含有されている。Rが20wt%未満では磁性粉の残留磁化と保磁力が低下し、25wt%を超えると磁性粉の残留磁化と耐候性が低下する。N(窒素)は2.1〜3.9wt%、好ましくは2.8〜3.5wt%含有されている。Nが2.1wt%未満であるか、あるいは3.9wt%を超えると磁性粉の残留磁化と保磁力が低下するので好ましくない。
一方、燐酸塩皮膜の成分であるP(リン)の含有量は0.2〜2.0wt%、好ましくは0.3〜1.0wt%である。Pが0.2wt%未満では磁性粉の耐候性や耐熱性に劣り、2.0wt%を超えるとその残留磁化が低下するので好ましくない。また、O(酸素)は0.5〜5.0wt%、好ましくは1.0〜3.0wt%である。Oが0.5wt%未満では磁性粉表面の燐酸塩皮膜が十分に形成されていないので、耐候性や耐熱性が劣るのに加えて、表面活性が高いため大気中で取り扱ったとき発火のおそれがある。一方、5.0wt%を超えると残留磁化が低下するので好ましくない。
そして、残部が磁性粉の主成分の遷移金属元素、すなわち、FeまたはCoなどである。燐酸塩皮膜の成分として、Zn、Cu、Mnなどがさらに含まれてもよい。このようなことから、遷移金属元素としては、Feの他に、Co、Zn、Cu又はMnから選択される1種以上が含まれるものが好適といえる。さらに、不可避的に混入する任意成分のH(水素)は0〜0.3wt%、好ましくは0.1wt%以下である。Hは耐候性に悪影響を及ぼし、0.3wt%を超えると耐候性が低下すると共に、保磁力も低下するので極力排除するのが望ましい。
また、平均粒径を1〜10μmとし、成分組成を上記範囲とすることで、室温での保磁力が400kA/m以上のR−Fe−N系磁性粉末となる。ここで平均粒径が1μm未満では磁性粉の残留磁化が低下し、10μmを超えると室温での保磁力が400kA/mを下回ることがある。
一方、希土類−Fe−B系磁性粉末であれば、R−Fe−B系合金を溶解し、鋳造後に粉砕する「溶解粉砕法」、Ca還元にて直接粉末を得る「直接還元拡散法」、R−Fe−B系合金を溶解ジェットキャスターでリボン箔を得てこれを粉砕焼鈍する「急冷合金法」、R−Fe−B系合金を溶解しガスアトマイズで粉末化して熱処理する「ガスアトマイズ法」、原料金属を粉末化した後メカニカルアロイングにて微粉末化して熱処理する「メカニカルアロイ法」、R−Fe−B系合金を水素中で加熱して分解並びに再結晶させる「HDDR法」などの各種公知の方法で製造される等方性、異方性R−Fe−B系合金粉末などが利用できる。
(2)カップリング剤による被覆
金属化合物又は燐酸塩で被覆された磁性粉は、さらにカップリング剤によって被覆することができる。
(カップリング剤)
本発明においては、上記の磁性粉にシラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤の少なくとも一種を用いて表面処理を施す。この表面処理により磁性粉末の表面が被覆されることにより、高充填時の溶融流動性をより効果的に向上させることができる。
シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどがある。これらのシラン系カップリング剤も、単独もしくは混合して用いることが出来る。
アルミニウム系カップリング剤としては、アルコキシアルミニウムキレート類が挙げられる。具体的には、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどである。これらのアルミニウム系カップリング剤は、単独もしくは二種類以上で用いることが出来る。
チタネート系カップリング剤としては、一般に市販されている、たとえばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチ
タネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネートなどがある。これらの中では、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートが特に好ましい。なお、これらのチタネートカップリング剤は、単独もしくは混合して用いることが出来る。
カップリング剤は、湿式処理法、乾式処理法のいずれかで被覆処理され、その後、加熱乾燥させれば、より安定して磁性粉末に定着する。すなわち、カップリング剤溶液、磁性粉末は、プラネタリーミキサーなどにより、十分に混合撹拌(例えば40rpm、20℃、保持・撹拌時間20分間)し、最後に、100〜150℃の真空オーブン中で10〜30時間乾燥させる。
カップリング剤の添加量は、その種類や濃度により異なるが、概ね磁性粉100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜5重量部である。0.1重量部よりも少ないと、充分な溶融流動性向上や、耐環境性向上の効果が得られず、10重量部よりも多くなると成形体の密度が低下して、ボンド磁石の機械強度低下や、所望の磁気特性が得られなくなる。
本発明の表面処理方法としては、金属化合物又は燐酸化合物による表面処理工程を設けて磁性粉に被覆処理を施すか、磁性粉とカップリング剤で処理し、その後、樹脂バインダーとを混合することが好ましい。
(3)樹脂バインダーへの磁性粉の分散
最後に、上記の方法により表面処理された磁性粉は、樹脂バインダーに混合し、分散させる。
樹脂バインダー(B)の配合量は、特に制限されるものではないが、組成物100重量部に対して1〜20重量部の割合で成形方法に応じて適宜選択すれば良い。特に樹脂バインダー(B)が、1〜15重量部の割合で混合されることが好ましい。樹脂バインダー(B)が1重量部よりも少ないと磁気特性が不十分であり、20重量部よりも多いと成形性が悪化するために好ましくない。
また、本発明では上述のように磁性粉を高充填した場合に顕著な効果を奏するものであるが、本発明のボンド磁石用組成物は、磁性粉の配合量が80重量部より少ない場合でも、磁性粉の均一分散性などの点で有利である。
本発明のボンド磁石用組成物を得る場合は、必要により、下記のような添加剤、充填材を配合した後、このボンド磁石用組成物を溶融混練すれば良く、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機などを使用して行う。
(添加剤)
本発明のボンド磁石用組成物は、磁性粉、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および/または重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体で構成されるものであるが、これらに加えて、添加剤として滑剤や安定剤などを使用すると、さらに組成物の加熱流動性が向上し成形性や磁気特性が向上する。
滑剤としては、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
また、安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダード・アミン系安定剤のほか、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤等が挙げられ、これらの一種または二種以上を使うことが出来る。
これらの添加剤の添加量は、樹脂バインダーの種類や磁性粉の種類などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常はボンド磁石用組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に0.1〜3重量部とすることが好ましい。
(充填剤)
さらに、本発明のボンド磁石用組成物には、マイカなどのクレイやウィスカあるいはタルク、炭素繊維、ガラス繊維など補強効果の大きな充填剤を本発明の目的を妨げない範囲で適宜添加することができる。すなわち、ボンド磁石に要求される磁気特性が比較的低く、上記磁性粉の充填量が比較的少ない場合には、ボンド磁石の機械強度が低くなりやすく、このような場合には機械強度を補うためにマイカやウィスカなどの充填剤を添加して、ボンド磁石の機械強度を補うことができる。
これらの充填剤の種類や配合量は、特に制限されるものではなく、要求されるボンド磁石の特性に応じて適宜選択すればよい。
4.ボンド磁石
このボンド磁石用組成物を射出成形、圧縮成形、押出成形、圧延成形、或いはトランスファー成形等で成形することによって、磁気特性、形状自由度のみならず、耐錆特性、機械的強度、柔軟性、耐熱性などにも優れた本発明のボンド磁石が得られる。
本発明のボンド磁石は、一体成形によって製造する場合において、製品の強度や精度が向上するだけでなく量産性が高くなり、ボンド磁石の特徴が有効に具現化される。すなわち、金属材料および/または無機材料部品と一体成形することにより、ヒートサイクル試験による割れの問題が著しく改善される。金属材料、無機材料部品とは、ヨーク材(バックヨーク)、ハブ、シャフトなどであり、その大きさ、形状などは特に限定されない。
たとえば、図1に示すようなキャビティ2、コア3を有する金型1を用いて、その内周側あるいは外周側に円柱状または円筒状の鉄や珪素鋼板などのバックヨーク(例えば鋼製リング4)を配置し、これらを一体成形して円筒状ボンド磁石10(図2または図3)を製造することができる。
ここで、ボンド磁石の外径をDo、内径をDiとしたとき肉厚をDoで割った値、(Do−Di)/2Doが2%以上である円筒状ボンド磁石を成形すると、80℃で1時間の高温保持と−30℃で1時間の低温保持を繰り返すヒートサイクル試験を50回経ても割れが生じない。このヒートサイクル試験において、80℃と−30℃の切り替わり時間は1時間である。
肉厚をDoで割った値、(Do−Di)/2Doが2%未満であると、このヒートサイクル試験条件ではボンド磁石が割れてしまう。肉厚をDoで割った値は、好ましくは3%以上であり、5%以上であることが特に好ましい。この値を3%以上とすることで、ヒートサイクル試験を200回経ても割れが生じないボンド磁石を得ることも可能となる。
上記本発明のボンド磁石用組成物を用いた成形法は、特に限定されるものではないが、射出成形法によることが好ましく、溶融流動性が優れ、高磁気特性で高機械強度が要求されている射出成形用組成物を用いることが最も効果的である。
射出成形の場合、最高履歴温度が300℃以下、好ましくは260℃以下となる条件でボンド磁石用組成物を成形する。最高履歴温度が300℃を超えると、磁気特性が低下するという問題が生じるので好ましくない。
また、成形体内部にポアなどの成形欠陥が存在すると、ヒートサイクル試験で欠陥部に応力が集中し、割れが起こりやすい。したがって、射出成形用金型のゲートとエアベントの数やそれらの配置を調整し、欠陥をなるべく少なくすることも重要である。
さらには、型締め後にエアベントなどを経由して金型キャビティ部やスプルーランナー部を減圧し、その後射出成形することで、いっそう成形欠陥を低減することができ、ヒートサイクル試験を100回経ても割れないボンド磁石を得ることができる。
ここでキャビティ部は、ゲージ圧で−0.02MPa以下、好ましくは−0.05MPa以下、さらに好ましくは−0.07MPa以下に減圧するとよい。ゲージ圧が−0.02MPaを超えると、成形体内部にポアなどの成形欠陥が生じ易くなるので好ましくない。
なお、得られた一体成形ボンド磁石の中心にロータの軸を挿入し、この一体成形品を小型モータとして用いれば、カメラ、ビデオ、OA機器、自動車、その他精密機器の性能を格段に向上させることができる。
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
使用した各種磁性粉、燐酸、カップリング剤、樹脂バインダーの成分、及びそれらを用いたボンド磁石の性能の評価方法は、下記の通りである。
(1)成分
磁性粉
・磁粉1、Sm−Fe−N系(住友金属鉱山(株)製)「商品名:SFN磁粉B」
平均粒径:2.7μm 結晶構造:ThZn17
磁粉2−1、等方性Nd−Fe−B系(マグネクエンチインターナショナル製)「商品名:MQP−B」、異方性磁場:70kOe、粒径100μm以下の粒径を33%含有。
・磁粉2−2、異方性Nd−Fe−B系(住友特殊金属(株)製)「商品名:HDDR−B」。平均粒径:69μm
・磁粉2−3、異方性Nd−Fe−B系(愛知製鋼(株)製)「商品名:MFP−12」。平均粒径:109μm
・磁粉3、Srフェライト系(戸田工業(株)製、商品名:FAN−800)
・磁粉4、Srフェライト系(戸田工業(株)製、商品名:MA−951)
燐酸表面処理剤
・85%オルト燐酸水溶液(商品名:りん酸、(関東化学(株)製))
カップリング剤
・シランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン、商品名:A−151 日本ユニカー(株)製)
・チタネートカップリング剤(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、商品名:KRTTS 味の素(株)製)
樹脂バインダー
・重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体A
オレイン酸、リノール酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンとを原料として窒素雰囲気下、190℃で反応させたポリアミドオリゴマーに、ポリオキシテトラメチレングリコール、アゼライン酸を添加し、均一になるように攪拌しながら、270℃で重合させた。融点172℃、結晶化温度158℃、MI値(230℃、21.2Nの荷重で測定)が300g/10min.である(ポリエーテルエステルアミド骨格):(重合脂肪酸系ポリアミド骨格)=60:40、数平均分子量約10,000の重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Aが得られた。JIS K7162に基づいて評価した、この樹脂バインダーの引張降伏応力は17MPa(降伏ひずみ14%)、引張破壊応力は40MPa(破壊時呼びひずみ540%)であった。また、酸価は1.7であった。
・重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体B
ポリアミドオリゴマーに対するポリオキシテトラメチレングリコールと、アゼライン酸の
配合比を変えた以外は、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Aと同様にして、融点153℃、結晶化温度122℃、230℃21.2Nの荷重で測定したMI値1600g/10min.である(ポリエーテルエステルアミド骨格):(重合脂肪酸系ポリアミド骨格)=80:20、数平均分子量約6,000の重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Bが得られた。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は11MPa(降伏ひずみ14%)、引張破壊応力は19MPa(破壊時呼びひずみ486%)であった。また、酸価は2.3であった。
・重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体C(商品名:TPAE−8 富士化成工業(株)製、数平均分子量約12,000)。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は8.5MPa(降伏ひずみ75%)、引張破壊応力は36MPa(破壊時呼びひずみ900%)であった。また、酸価は2.8であった。
・重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体D
オレイン酸、リノール酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンとを原料として、ステアリン酸とともに攪拌しながら、窒素雰囲気下、250℃で反応させることにより、融点175℃、結晶化温度131℃、230℃21.2Nの荷重で測定したMI値710g/10min.、数平均分子量約10,000である重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体Dが得られた。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は17MPa(降伏ひずみ19%)、引張破壊応力は38MPa(破壊時呼びひずみ500%)であった。また、酸価は1.2であった。
・重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体E(商品名:PA−30L 富士化成工業(株)製、数平均分子量約17,000)。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は45MPa(降伏ひずみ10%)、引張破壊応力は50MPa(破壊時呼びひずみ473%)であった。また、酸価は3.2であった。
・重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体F(商品名:PA−50R 富士化成工業(株)製、数平均分子量約5,000)。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は20MPa(降伏ひずみ15%)、引張破壊応力は34MPa(破壊時呼びひずみ300%)であった。また、酸価は3.2であった。
・重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体G(商品名:TPAE−10C 富士化成工業(株)製、数平均分子量約12,000)。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は12MPa(降伏ひずみ50%)、引張破壊応力は51MPa(破壊時呼びひずみ760%)であった。また、酸価は3.1であった。
・重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体H(商品名:PA−260 富士化成工業(株)製、数平均分子量約15,000)。JIS K7162に基づいて評価した引張降伏応力は21MPa(降伏ひずみ27%)、引張破壊応力は62MPa(破壊時呼びひずみ520%)であった。また、酸価は3.2であった。
なお、酸価は、トルエン:ノルマルブタノール=2:1とした溶剤に重合脂肪酸系ポリ(エーテル)エステルアミドブロック共重合体の試料を溶解し、フェノールフタレイン指示薬溶液を加えた上で0.1mol/Lの水酸化カリウムメチルアルコール溶液で滴定して求めた。
・ナイロン12A(商品名:3014U 宇部興産(株)製、数平均分子量約13,000)、引張降伏応力43MPa、引張破壊応力55MPa。
・ナイロン12B(商品名:A1709P ダイセルデグサ社製、数平均分子量約13,000)、引張降伏応力41MPa、引張破壊応力49MPa。
・ナイロン12C(商品名:P3012U 宇部興産(株)製、数平均分子量約13,000)、引張降伏応力50MPa。
・ナイロン6−12(商品名:7115U 宇部興産(株)製、数平均分子量約12,000)、引張降伏応力20MPa、引張破壊応力27MPa。
・ナイロン6(商品名:P1010 宇部興産(株)製、数平均分子量約15,000)、引張降伏応力75MPa、引張破壊応力65MPa。
(2)試験・評価方法
・組成分析
磁性粉の成分であるSmとPをICP発光分析法で、Nは抵抗加熱−赤外吸収法で、OとHは抵抗加熱−伝導率法で測定した。
・平均粒径
(株)日本レーザー製のHELOS&RODOSで測定した50%粒子径を平均粒径とした。
・表面皮膜厚さ
磁性粉を熱硬化性樹脂と混合して硬化させた後、FIB加工して薄片試料を作製した。透過型電子顕微鏡で磁性粉の断面観察を行い、磁性粉の表面に形成されている燐酸塩被膜の均一性を確認すると共に厚みを求めた。
・組成物流動性評価
JIS K7210に従って、φ2.1mm、長さ8mmのオリフィスを用いてシリンダー温度250℃、荷重21.6kgfで測定した。
・引張試験(−35℃)
ASTM D638に規定される形状(L:175mm、W:13mm{ツカミ部:19.5mm}、T:3mm)に射出成形し、得られた成形試験片を用い、ASTM D638に規定される引張試験に供した。
・磁気特性評価
ボンド磁石成形体を7mm方向に3350kA/mのパルス磁界で着磁後、チオフィー型自記磁束計により、試料の磁気特性(保磁力、磁化、角型性)を常温で測定し、最大エネルギー積を求めた。
(実施例1)
Sm−Fe−N系磁性粉1の100重量部に対して、1重量部のシランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン、商品名:A−151 日本ユニカー(株)製)を有機溶媒系で希釈した後、これと上記磁性粉とをプラネタリーミキサー中で40rpm、30min混合攪拌して均一な混合物にした後、最大130℃まで徐々に温度を上げて攪拌しながら十分反応させ、さらにこの状態で乾燥させて、磁性粉に表面処理を施した。
このようにして得られたSm−Fe−N系磁性粉90重量部、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Aを5重量部、及び重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Bを5重量部混合し、ラボプラストミルを用い、250℃に加熱しながら、50rpmの回転数で30分間混練することによって、ボンド磁石用組成物を得た。混練後に取り出した組成物は、空冷し、得られた組成物をプラスチック粉砕機により粉砕して成形用ペレットとした。
上記のようにして得られた成形用ペレットを用いて、シリンダー温度:200〜250℃(金型温度:80〜120℃)で7mm方向に560kA/mの配向磁場をかけながら、磁気特性評価用試験片(φ:10×7mmh)とASTM D638に規定される形状の引張試験片に射出成形した。この試験片を用い、ASTM D638に規定される引張試験(−35℃)に供し、引張り強さ、破断伸び、弾性率を測定した。
このボンド磁石の磁気特性を測定したところ、表1に示す結果が得られた。
(実施例2)
樹脂バインダーを、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体Dを7重量部、および重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Cを3重量部混合した以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例1)
樹脂バインダーを、ナイロン12A(商品名:3014U 宇部興産(株)製)8重量部、ヒドロキシステアリン酸アマイド(商品名:ダイヤミッド KH 日本化成(株)製)2重量部とした以外は実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例2)
樹脂バインダーを、ナイロン12B(商品名:A1709P ダイセルデグサ社製)8重量部、ヒドロキシステアリン酸アマイド(商品名:ダイヤミッド KH 日本化成(株)製)2重量部とした以外は実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例3)
樹脂バインダーを、ナイロン6−12(商品名:7115U 宇部興産(株)製)8重量部、ヒドロキシステアリン酸アマイド(商品名:ダイヤミッド KH 日本化成(株)製)2重量部とした以外は実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
Figure 0004389672
表1によれば、実施例1、2は、−35℃で引張り試験した場合でも、比較例1〜3に比べて引張強さ、伸びが大きく、破断伸びが、目標の1%を大きく上回っている。比較例1〜3では、低温で脆化し、引っ張り強さ、破断伸び共に低下しているものと考えられる。
(実施例3)
原料磁粉として、実施例1に用いたSm−Fe−N系磁性粉1と、Srフェライト粉末磁粉3(商品名:FAN−800 戸田工業(株)製)とを50:50で混合したハイブリッドボンド磁石用磁性粉を用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(実施例4)
実施例3の磁性粉と、実施例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例4)
実施例3の磁性粉と、比較例1の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例5)
実施例3の磁性粉と、比較例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例6)
実施例3の磁性粉と、比較例3の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
Figure 0004389672
表2によれば、Sm−Fe−N系磁性粉と、Srフェライト粉末とを混合したハイブリッドボンド磁石用磁性粉を用いた場合でも、実施例1〜2、比較例1〜3と同様の傾向の結果が得られた。実施例3、4は、−35℃で引張り試験した場合でも、比較例4〜6に比べて引張強さ、伸びが大きく、破断伸びが、目標の1%を大きく上回っている。比較例4〜6では、低温で脆化し、引っ張り強さ、破断伸び共に低下している。
(実施例5)
容器内部を窒素で置換した媒体攪拌ミルを用い、等方性Nd−Fe−B系磁性粉2−1(商品名:MQP−B マグネクエンチ社製)1kgを1.5kgのイソプロパノール中、回転数200rpmで粉砕し、磁性粉を作製した。ここで粉砕前に、燐酸を85%オルト燐酸水溶液として磁性粉1kgあたり0.30molだけ粉砕溶媒に添加している。粉砕後、磁性粉を真空中120°Cで乾燥させた。この磁性粉を用い、またカップリング剤には、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(商品名:KRTTS 味の素(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製した。シリンダー温度:200〜250℃(金型温度:80〜120℃)で配向磁場をかけずに、磁気特性評価用試験片(φ:10×7mmh)と、ASTM D638に規定される形状の引張試験片に射出成形した。その後、得られたボンド磁石を評価した。
(実施例6)
実施例5の磁性粉(表面処理済みのもの)と、実施例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例7)
実施例5の磁性粉と、比較例1の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例8)
実施例5の磁性粉と、比較例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例9)
実施例5の磁性粉と、比較例3の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し(無配向成形)、評価した。
Figure 0004389672
表3によれば、Nd−Fe−B系磁性粉を用いた場合でも、実施例1〜2、比較例1〜3と同様な傾向の結果が得られた。実施例5、6は、−35℃で引張り試験した場合でも、比較例7〜9に比べて引張強さ、伸びが大きく、破断伸びが、目標の1%を大きく上回っている。比較例7〜9では、低温で脆化し、引っ張り強さ、破断伸び共に低下している。
(実施例7)
実施例5のNd−Fe−B系磁性粉に燐酸を添加せずに粉砕し、実施例5と同様の表面処理を施し、射出成形した以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(実施例8)
実施例7の磁性粉と、実施例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にカップリング剤で表面処理し、配向磁場をかけずに射出成形し、ボンド磁石を作製して、その特性を評価した。
(比較例10)
実施例7の磁性粉と、比較例1の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例11)
実施例7の磁性粉と、比較例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例12)
実施例7の磁性粉と、比較例3の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
Figure 0004389672
表4の実施例7〜8と、表3の実施例5〜6とを比較した場合、燐酸処理の有無で引張強さや破断伸びに差が生じ、燐酸処理品の方が高い特性を示していることが分かる。それに対して未処理品は有意な差は見られない。
(参考例1)
Srフェライト粉末磁粉4(商品名:MA−951 戸田工業(株)製)を磁性粉に用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(参考例2)
参考例1の磁性粉と、実施例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(参考例3)
参考例1の磁性粉と、比較例1の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(参考例4)
参考例1の磁性粉と、比較例2の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(参考例5)
参考例1の磁性粉と、比較例3の樹脂バインダーを用いた以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
Figure 0004389672
表5によれば、Srフェライト磁性粉を用いた場合でも、実施例1〜2、比較例1〜3と同様な傾向の結果が得られた。参考例1〜2は、−35℃で引張り試験した場合でも、参考例3〜5に比べて引張強さ、伸びが大きく、破断伸びが、目標の1%を大きく上回っている。参考例3〜5では、低温で脆化し、引っ張り強さ、破断伸び共に低下している。
(実施例9)
樹脂バインダーを、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体Dを10重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例13)
実施例1の磁性粉を用い、樹脂バインダーをナイロン12C(P3012U 宇部興産(株)製)5.7重量部、酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD 1024 チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)2.9重量部、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Cを1.4重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例14)
実施例1の磁性粉を用い、樹脂バインダーをナイロン12C(商品名:P3012U 宇部興産(株)製)5.7重量部、酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD 1024 チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)2.9重量部、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(商品名:PA−30L 富士化成工業(株)製)1.4重量部とした以外は実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例15)
実施例1の磁性粉を用い、樹脂バインダーをナイロン6(商品名:P1010 宇部興産(株)製)14.8重量部、酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD 1024 チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.5重量部、重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Cを0.5重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例16)
実施例1の磁性粉を用い、樹脂バインダーをナイロン6(商品名:P1010 宇部興産(株)製)14.8重量部、酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD 1024 チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.5重量部、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体(商品名:PA−30L 富士化成工業(株)製)0.5重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
Figure 0004389672
表6によれば、実施例9では、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を単独で樹脂バインダーとして用いても機械強度、磁気特性ともに優れた結果が得られている。これに対して、比較例13、14のようにナイロン12に重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体体または重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合を少量添加した場合、あるいは比較例15、16のようにナイロン6に重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック、または共重合体重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を少量添加することによって、破断伸びが改善される傾向にあるが、目標値には到達できないことが分かる。
(比較例17)
原料磁粉として、実施例1で用いたSm−Fe−N系磁性粉1(90重量部)を用い、樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体F(商品名:PA−50R 富士化成工業(株)製)10重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。この結果を表7に示す。
(比較例18)
原料磁粉として、実施例1に用いたSm−Fe−N系磁性粉1(90重量部)を用い、樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体G(商品名:TPAE−10C 富士化成工業(株)製)10重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。この結果を表7に示す。
(比較例19)
原料磁粉として、実施例1に用いたSm−Fe−N系磁性粉1(90重量部)を用い、樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体H(商品名:PA−260 富士化成工業(株)製)10重量部とした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。この結果を表7に示す。
Figure 0004389672
表7によれば、比較例17では、引張降伏応力が18MPaを超える重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体を樹脂バインダーとして用いており、比較例18では、引張破壊応力が50MPaを超える重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を樹脂バインダーとして用いており、また比較例19では、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合が引張降伏応力、引張破壊応力ともに本発明の条件を満たしていないために、いずれも目標値には到達できないことが分かる。また、いずれも樹脂バインダーの酸価が3を超えるため、組成物の流動性が低い値にとどまっている。
(実施例10)
Sm−Fe−N系磁性粉1と、異方性Nd−Fe−B系磁粉2−2(商品名:HDDR−B 住友特殊金属(株)製)とを40:60で混合したハイブリッドボンド磁石用磁性粉100重量部に対して、0.5重量部のシランカップリング剤で表面処理し、得られたハイブリッドボンド磁石用磁性粉93重量部と、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体D(7重量部)を200℃で混練し、さらに配向磁界を1600kA/mとした以外は、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、評価した。
(実施例11)
磁粉2−2の代わりに磁粉2−3(商品名:MFP−12 愛知製鋼(株)製)を用い、実施例10と同様にしてシランカップリング剤で表面処理したハイブリッドボンド磁石用磁性粉を用意した。このハイブリッド磁石用磁性粉を95重量部、樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体A3重量部,重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体B2重量部を実施例10と同様にして混合・混練しボンド磁石を作製し、評価した。
(実施例12)
実施例10のハイブリッド磁石用磁性粉を95.5重量部,樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体D4.5重量部とした以外は,実施例10と同様にしてボンド磁石を作製し、評価した。
(実施例13)
Sm−Fe−N系磁性粉と異方性Nd−Fe−B系磁粉2−2(商品名:HDDR−B 住友特殊金属(株)製)の混合比を30:70とし,得られたハイブリッドボンド磁石用磁性粉を95重量部,重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体Dを5重量部とした以外は,実施例10と同様にしてボンド磁石を作製し、評価した。
(実施例14)
Sm−Fe−N系磁性粉と異方性Nd−Fe−B系磁粉2−2(商品名:HDDR−B 住友特殊金属(株)製)の混合比を50:50とし,得られたハイブリッドボンド磁石用磁性粉を95重量部,樹脂バインダーとして重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体Cを1.5重量部,重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体Dを3.5重量部とした以外は,実施例10と同様にしてボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例20)
樹脂バインダーを,ナイロン12Aを4重量部,ヒドロキシステアリン酸アマイド1重量部とした以外は実施例11と同様にしてボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例21)
樹脂バインダーを,ナイロン6−12を3.6重量部,ヒドロキシステアリン酸アマイド0.9重量部とした以外は実施例12と同様にしてボンド磁石を作製し、評価した。
(比較例22)
樹脂バインダーを,ナイロン12Bを4重量部,ヒドロキシステアリン酸アマイド1重量部とした以外は実施例14と同様にしてボンド磁石を作製し、評価した。
Figure 0004389672
表8によれば、Sm−Fe−N系磁性粉と,異方性Nd−Fe−B系磁性粉とを混合したハイブリッドボンド磁石用磁性粉を用いた場合でも,実施例1〜2,比較例1〜3と同様な傾向の結果が得られた。実施例10〜14は,−35°Cで引っ張り試験した場合でも,比較例20〜22に比べて引張強さ,伸びが大きく,破断伸びが、目標の1%を上回っている。比較例20〜22では、低温で脆化し、引っ張り強さ、破断伸び共に低下している。
(実施例15)
図1に示す直径Dcが20mmのコア3と、直径Doが48mm、高さHが14mmのキャビティ2を有する金型1に、外径Diで、内径Dcが20mm、高さHが14mmの鉄製リング4を挿入し、これらによって構成される空間に実施例1で得たボンド磁石用組成物を1点サイドゲートから射出成形することによって、図2に示す鉄製リング4を一体成形した外周48mm、高さ14mm、肉厚が(Do−Di)/2mmのボンド磁石10を製造した。このとき、金型温度は35℃、ノズル温度は245℃に設定した。鉄製リングの外径Diを47mmから38mmまで4通りに変えて一体成形し、得られたボンド磁石10個をヒートサイクル試験にかけて、割れが発生した個数を確認した。ヒートサイクル試験条件は、80℃で1時間保持と−30℃で1時間保持とし、切り替わり時間1時間、サイクル数50回とした。Do=48mmとして、(Do−Di)/2Doを計算し、その結果を表9に示す。
Figure 0004389672
(実施例16)
実施例4で得られたボンド磁石用組成物を用いた以外は実施例15と同様にして、一体成形ボンド磁石のヒートサイクル試験を行った。結果を表10に示す。
Figure 0004389672
(実施例17)
実施例5で得られたボンド磁石用組成物を用いた以外は実施例15と同様にして、一体成形ボンド磁石のヒートサイクル試験を行った。結果を表11に示す。
Figure 0004389672
(実施例18)
実施例9で得られたボンド磁石用組成物を用いた以外は実施例15と同様にして、一体成形ボンド磁石のヒートサイクル試験を行った。結果を表12に示す。なお、Di=43mmの一体成形ボンド磁石については、さらに試験を継続し、ヒートサイクル回数を200回まで行った後の割れ個数が2個だった。
Figure 0004389672
(実施例19)
実施例10で得られたボンド磁石用組成物を用いた以外は実施例15と同様にして、一体成形ボンド磁石のヒートサイクル試験を行った。結果を表13に示す。
Figure 0004389672
(比較例23)
比較例2で得られたボンド磁石用組成物を用いた以外は実施例15と同様にして、一体成形ボンド磁石のヒートサイクル試験を行った。結果を表14に示す。Di=47、46、43mmの一体成形磁石については、射出成形後室温で1時間以内に10個すべてが割れてしまい、ヒートサイクル試験にかけることすらできなかった。
Figure 0004389672
(比較例24)
比較例6で得られたボンド磁石用組成物を用いた以外は実施例15と同様にして、一体成形ボンド磁石のヒートサイクル試験を行った。結果を表15に示す。Di=47、46mmの一体成形ボンド磁石については、射出成形後室温で1時間以内に10個すべてが割れてしまい、ヒートサイクル試験にかけることすらできなかった。
Figure 0004389672
実施例15〜19から、本発明のボンド磁石において、肉厚が外径Doの2%以上の場合にヒートサイクル試験で割れにくく、2%未満になると割れやすくなることが分かる。また比較例では、一体成形ボンド磁石をヒートサイクル試験にかける前に割れてしまうものがあり、ヒートサイクル試験したものでも50サイクルまで割れずに持つものは少ないことが分かる。
(実施例20)
金型エアベントを通してキャビティ内を−0.07MPaに減圧後に射出成形した以外は、実施例13と同様にして一体成形ボンド磁石を製造し、そのヒートサイクル試験を行った。結果を表16に示す。なお、Di=43mmの一体成形磁石については、さらに試験を継続し、ヒートサイクル回数を200回まで行ったが、その後の割れ個数は0個だった。
Figure 0004389672
磁石用組成物を鉄製リングと一体成形して、円筒状ボンド磁石を製造するための金型を示す斜視図である。 内周側に鉄製リングを一体成形した円筒状ボンド磁石を示す斜視図である。 外周側に鉄製リングを一体成形した円筒状ボンド磁石を示す斜視図である。
符号の説明
1 金型
2 キャビティ
3 コア
4 鋼製リング
10 ボンド磁石

Claims (12)

  1. 希土類−遷移金属系磁性粉(A)を樹脂バインダー(B)に混合し分散させたボンド磁石用組成物において、
    樹脂バインダー(B)は、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体および/または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体からなり、引張降伏応力が17MPa以下で、かつ引張破壊応力が40MPa以下であり、該樹脂バインダー(B)は、希土類−遷移金属系磁性粉(A)100重量部に対して1〜20重量部配合するすることを特徴とするボンド磁石用組成物。
  2. 希土類−遷移金属系磁性粉(A)は、希土類(Nd又はSm)と遷移金属(Fe及び/又はCo)を含有することを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  3. 希土類−遷移金属系磁性粉(A)は、平均粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  4. 希土類−遷移金属系磁性粉(A)とともに、さらにフェライト磁石粉を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
  5. 重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体は、下記の一般式(1)で示される骨格を繰り返し単位とするブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
    一般式(1)
    Figure 0004389672
    (式中、R、Rは、同一か又は異なる炭素数6〜44の脂肪族ジアミン、及び/又は脂環族ジアミンから選ばれるジアミン残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基、Rは、炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、mは0〜70の整数、nは1〜150の整数、xは1〜100の整数である。)
  6. 重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、下記の一般式(1)で示される骨格を繰り返し単位とする重合脂肪酸系ポリアミド骨格(a)と、一般式(2)で示されるポリエーテルエステルアミド骨格(b)を含有することを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用組成物。
    一般式(1)
    Figure 0004389672
    (式中、R〜R、m、n、xは前記と同じである。)
    一般式(2)
    Figure 0004389672
    (式中、Rは、炭素数4〜60のポリオキシアルキレングリコール又はジヒドロキシ炭化水素残基であり、Rは、炭素数6〜22の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の1種以上から選ばれるジカルボン酸残基および又は炭素数20〜48のダイマー酸を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体の1種以上から選ばれる重合脂肪酸残基を表し、qは1〜20の整数である。)
  7. 重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、重合脂肪酸系ポリアミド骨格(a)とポリエーテルエステル骨格(b)の共重合比(a):(b)が、10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1又は6に記載のボンド磁石用組成物。
  8. 重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、酸価が2.8以下であることを特徴とする請求項1、5又は6に記載のボンド磁石用組成物。
  9. 重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体または重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、数平均分子量が6000〜12000であることを特徴とする請求項1、5又は6に記載のボンド磁石用組成物。
  10. −35℃での破断伸び(ASTM D638に規定する引張試験)が1%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のボンド磁石用組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のボンド磁石用組成物を、射出成形、圧縮成形又は押出成形のいずれかにより成形してなるボンド磁石。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のボンド磁石用組成物を、射出成形、圧縮成形又は押出成形のいずれかにより他の金属材料および/または無機材料部品と一体成形してなるボンド磁石。
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