JP2009065027A - ヨーク一体型磁石体 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性と寸法精度に優れかつスズによるコンタミネーションのおそれが無い。
【解決手段】希土類鉄系合金磁性粉と合成樹脂バインダよりなるリング状ボンド磁石2の外周にこれと一体にリング状のバックヨーク1が設けられており、ボンド磁石2の、バックヨーク1に接していない表面が、スズを含有しない熱可塑性樹脂の射出成形層3で覆われている。バックヨーク1とボンド磁石2の端面1a,1b,2a,2b境界部には樹脂溜り11,21が形成されて、射出成形層3の端縁31が樹脂溜り11に進入してボンド磁石2の周面に沿い当該ボンド磁石2を抱持するように屈曲している。
【選択図】 図2
【解決手段】希土類鉄系合金磁性粉と合成樹脂バインダよりなるリング状ボンド磁石2の外周にこれと一体にリング状のバックヨーク1が設けられており、ボンド磁石2の、バックヨーク1に接していない表面が、スズを含有しない熱可塑性樹脂の射出成形層3で覆われている。バックヨーク1とボンド磁石2の端面1a,1b,2a,2b境界部には樹脂溜り11,21が形成されて、射出成形層3の端縁31が樹脂溜り11に進入してボンド磁石2の周面に沿い当該ボンド磁石2を抱持するように屈曲している。
【選択図】 図2
Description
本発明はヨーク一体型磁石体に関し、特に、耐食性と寸法精度に優れかつスズによるコンタミネーション(汚染)のおそれが無いボンド磁石のヨーク一体型磁石体に関する。
希土類ボンド磁石はフェライト系ボンド磁石に比べて格段に優れた磁気特性を有することから注目されているが、Nd−Fe−B系やSm−Fe−N系の原料磁性粉は純鉄を含むために錆を生じやすいという欠点がある。そこで、従来はスプレー塗装や電着塗装で磁石成形体の表面に塗膜を形成することによって錆を防止している。このうち電着塗装はスプレー塗装に比して塗膜の均一性や生産性に優れていることから多用されている。
なお、特許文献1には、水溶液中のスズの含有量を12ppm以下に抑制した電着塗料でモータ用部品の表面を電着塗装することで、HDD(ハードディスク装置)スピンドルモータ等へ使用した場合の、スズコンタミネーションによる記憶媒体の記憶破壊を防止する方法が開示されている。
特許第3644080号
ところで、近年のHDDに対する小型化、高速化の要請を背景に、HDDスピンドルモータ等に使用されるリング状ボンド磁石を備えるヨーク一体型磁石体はさらなる耐食性と寸法精度の向上、およびスズによるコンタミネーションを完全に防止することが要請されている。しかし、従来多用されている電着塗装では、電着治具で挟持した際の、ボンド磁石表面に生じる圧痕による寸法精度の低下やボンド磁石自身の変形による真円度の低下が避けられず、加えて、塗膜に含有されるスズによるコンタミネーションの発生が問題となっていた。
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、耐食性と寸法精度に優れかつスズによるコンタミネーションのおそれが無いヨーク一体型磁石体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明では、希土類鉄系合金磁性粉と合成樹脂バインダよりなるリング状ボンド磁石(2)の内周ないし外周にこれと一体にリング状のバックヨーク(1)が設けられており、ボンド磁石(2)の、少なくともバックヨーク(1)に接していない表面が、スズを含有しない熱可塑性樹脂の射出成形層(3)で覆われている。
本第1発明においては、少なくともバックヨークに接していないボンド磁石部分の表面が、スズを含有しない射出成形層で覆われているから耐食性に優れるとともに、従来の電着塗膜で覆った場合のようなボンド磁石表面の圧痕による寸法精度の低下やボンド磁石自身の変形による真円度の低下がないから寸法精度に優れている。また、スズによるコンタミネーションの発生も完全に防止することができる。
本第2発明では、上記射出成形層(3)はボンド磁石(2)のバックヨーク(1)に接していない表面のみを覆っており、バックヨーク(1)とボンド磁石(2)の端面境界部には樹脂溜り(11,21)が形成されて、射出成形層(3)の端縁(31)が樹脂溜り(11,21)に進入してボンド磁石(2)の周面に沿い当該ボンド磁石(2)を抱持するように屈曲している。
本第2発明においては、射出成形層とバックヨークの端面境界部における剥がれ等の発生が射出成形層端縁のアンカー効果によって確実に防止されて耐食性がより確実に保証される。
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以上のように、本発明のヨーク一体型磁石体は、耐食性と寸法精度に優れかつスズによるコンタミネーションのおそれも無い。
(第1実施形態)
図1にはヨーク一体型磁石体の外観を示し、図2にはその断面図を示す。各図において、軟磁性材よりなる円形リング状のバックヨーク1内にはその内周に接してリング状のボンド磁石2が一体に設けられている。バックヨーク1には図2に示すように、両端開口部の内周縁全周に一定幅w1かつ一定深さdで切欠きが形成されて樹脂溜り11としてある。なお、深さdは20〜500μmとし、以下に説明する射出成形層3の厚みと略同一にする。ボンド磁石2はその筒高をバックヨーク1の筒高よりも低くして、その各端面2a,2bが、バックヨーク1の各端面1a,1bよりも上記樹脂溜りの深さdと同程度筒内へ後退して位置させられている。
図1にはヨーク一体型磁石体の外観を示し、図2にはその断面図を示す。各図において、軟磁性材よりなる円形リング状のバックヨーク1内にはその内周に接してリング状のボンド磁石2が一体に設けられている。バックヨーク1には図2に示すように、両端開口部の内周縁全周に一定幅w1かつ一定深さdで切欠きが形成されて樹脂溜り11としてある。なお、深さdは20〜500μmとし、以下に説明する射出成形層3の厚みと略同一にする。ボンド磁石2はその筒高をバックヨーク1の筒高よりも低くして、その各端面2a,2bが、バックヨーク1の各端面1a,1bよりも上記樹脂溜りの深さdと同程度筒内へ後退して位置させられている。
このようなボンド磁石2の表面は、バックヨーク1の内周に接する部分を除いて、スズを含有しない熱可塑性樹脂よりなる20〜500μm厚の射出成形層3で覆われている。射出成形層3はボンド磁石2の内周面全周から当該ボンド磁石2の両端面2a,2bを、当該成形層3の表面がバックヨーク1の両端面1a,1bと面一になるように覆い、さらにバックヨーク1の両端部内周縁の全周に形成されている樹脂溜り11に至って、ボンド磁石2を抱持するように屈曲している。
上記バックヨーク一体型磁石体は図3に示す工程で製造することができる。図3において、ステップ101で希土類合金磁性粉と熱硬化性樹脂バインダを混合する。希土類磁性粉としてはNd−Fe−B系ないしSm−Fe−N系の、平均粒径10〜100μmの磁性粉を単独であるいは組み合わせて使用する。また、熱硬化性樹脂バインダとしてはエポキシ樹脂やフェノール樹脂等が使用できる。磁性粉と熱硬化性樹脂バインダの混合物をプレス成形し(ステップ102)加熱硬化させてボンド磁石2とする(ステップ103)。このボンド磁石2をバックヨーク1内に嵌入し接着固定する(ステップ104)。
他の製造法としては、上記磁性粉をナイロン6やポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂バインダと混合した後(ステップ105)混練造粒し射出成形してボンド磁石2を得ても良い(ステップ106)。なお、バックヨーク1内にボンド磁石2を嵌入し接着固定するのに代えて、バックヨーク1を型内にインサート材として設置し、磁性粉と熱可塑性樹脂バインダの混合物を射出してバックヨーク1とボンド磁石2を一体化しても良い(ステップ107)。あるいは、磁性粉と熱可塑性樹脂バインダ、および軟質磁性材としての鉄粉と熱可塑性樹脂バインダの各混合物を2材射出成形して前者の混合物から得られるボンド磁石2に後者の混合物から得られるバックヨーク(軟磁性ボンド)1を一体化させるようにしても良い(ステップ108)。
図3のステップ109では、バックヨーク1を一体に設けたボンド磁石2の表面に、既述のようにスズを含有しない熱可塑性樹脂を射出して所定厚の射出成形層3でボンド磁石2を覆う。これは図4(1)に示すように突き出しピン41を備えた移動型(下型)4のキャビティ42内に、バックヨーク1を一体に設けたボンド磁石2を設置し、図4(2)に示すように、下型4上に固定型(上型)5を衝合させて、この時生じる、閉鎖されたキャビティ42空間内に上型のランナ51からゲート52を経て上記熱可塑性樹脂を射出して射出成形層3を形成する。この場合の熱可塑性樹脂としてはナイロン12、ナイロン6、PPS等が使用できる。このようにして製造されたバックヨーク一体型磁石体をHDD用スピンドルモータに使用する場合には、ボンド磁石2に着磁した後(図3のステップ110)ロータハブ内に組み込んで接着固定する(図3のステップ111)。
以上の工程で製造されたヨーク一体型磁石体は、バックヨーク1内周に接していないボンド磁石2部分の表面が全て、所定厚(20〜500μm)の、スズを含有しない射出成形層3で覆われているから耐食性に優れるとともに、従来の電着塗膜で覆った場合のようなボンド磁石表面の圧痕による寸法精度の低下やボンド磁石自身の変形による真円度の低下がないから寸法精度に優れている。また、スズによるコンタミネーションの発生も完全に防止することができる。特に本実施形態では、バックヨーク1の両端開口部の内周縁全周に樹脂溜り11を形成して、ここに、射出された樹脂を流入させるようにしたから、ボンド磁石2の内周面と端面を覆う射出成形層3の端縁31(図2)が、ボンド磁石2の外周面に沿って当該ボンド磁石2を抱持するように屈曲している。これにより、射出成形層3とバックヨーク1の境界部における剥がれ等の発生が上記端縁31のアンカー効果によって確実に防止されて耐食性がより確実に保証される。なお、射出成形層3はボンド磁石2の全周に形成しても良い。
熱可塑性樹脂により射出成形層3を形成するのに図5に示すようなフィルムゲート53を使用すると良い。フィルムゲート53は上型5のランナ51に連通し、上型5と下型4の衝合面において、キャビティ空間42の内周上端全周に内側方から開口している。このようなゲート53を使用すると、射出跡は射出成形層3の内周上端に沿って形成できるので、図4のように射出成形層端面にゲート52を形成させる場合に較べて、成形後の端面の起伏が少なく、モータへの組み付けに際しての寸法精度をさらに向上させることができる。
(第2実施形態)
図6に示すようにバックヨーク1の両端開口部に臨むボンド磁石2の外周全周に、一定幅w2かつ一定深さdで切欠きを形成してバックヨーク1内周との間に樹脂溜り21を形成するようにしても上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
図6に示すようにバックヨーク1の両端開口部に臨むボンド磁石2の外周全周に、一定幅w2かつ一定深さdで切欠きを形成してバックヨーク1内周との間に樹脂溜り21を形成するようにしても上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
なお、本発明は、バックヨーク1がボンド磁石2の外周側に位置する構造に限られず、ボンド磁石2の内周側にバックヨーク1が位置する構造のヨーク一体型磁石体にも適用することができる。
1…バックヨーク、1a,1b…端面、11…樹脂溜り、2…ボンド磁石、2a,2b…端面、21…樹脂溜り、3…射出成形層。
Claims (2)
- 希土類鉄系合金磁性粉と合成樹脂バインダよりなるリング状ボンド磁石の内周ないし外周にこれと一体にリング状のバックヨークが設けられており、前記ボンド磁石の、少なくとも前記バックヨークに接していない表面が、スズを含有しない熱可塑性樹脂の射出成形層で覆われていることを特徴とするヨーク一体型磁石体。
- 前記射出成形層は前記ボンド磁石の前記バックヨークに接していない表面のみを覆っており、前記バックヨークと前記ボンド磁石の端面境界部には樹脂溜りが形成されて、前記射出成形層の端縁が前記樹脂溜りに進入して前記ボンド磁石の周面に沿い当該ボンド磁石を抱持するように屈曲している請求項1に記載のヨーク一体型磁石体。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110517 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20110927 |