JP7289024B1 - 射出成形用磁性樹脂組成物および磁性シールド用射出成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、上記課題は車輌のワイヤレス電力伝送システムに限定されず、磁気シールド特性が必要な用途全般に対して同様の課題が生じ得る。
[1]: 融点が100℃以上400℃以下の熱可塑性樹脂(A)、Fe-Si-Al合金からなる鱗片状の磁性粒子(B)および滑剤(C)を含む射出成形用磁性樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(A)および滑剤(C)の和と、磁性粒子(B)との質量比、
(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)が15/85~20/80であり、
前記射出成形用磁性樹脂組成物のせん断速度304s-1における溶融粘度が、熱可塑性樹脂(A)の融点以上、融点+50℃以下の温度において、6000Pa・s未満となる温度を有し、
前記射出成形用磁性樹脂組成物がシート状になるように、形成されるシートの一主面側の上方向から15MPaの圧力を均一に、熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃の温度で1分かけて前記シートを作製し、当該シートの厚み方向の切断面において、長さ0.125mm×厚み0.090mmの領域を2500倍の顕微鏡像によって画像処理したときに以下の(1)、(2)の条件を満たす射出成形用磁性樹脂組成物。
(1)前記画像処理した磁性粒子(B)の総面積が前記画像処理領域の面積の30~60%である。
(2)前記画像処理した磁性粒子(B)の個数が150~500個である。
[2]: 磁性粒子(B)の表層の少なくとも一部にケイ素化合物が被着している[1]に記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
[3]: 熱可塑性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂を含む[1]または[2]に記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
[4]: 更に、酸化防止剤(D)を含む[1]~[3]のいずれかに記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
[5]: 更に、金属不活性化剤(E)を含む[1]~[4]のいずれかに記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
[6]: 融点が100℃以上400℃以下の熱可塑性樹脂(A)、Fe-Si-Al合金からなる鱗片状の磁性粒子(B)および滑剤(C)を含む磁性樹脂組成物から形成された磁性シールド用射出成形体であって、
熱可塑性樹脂(A)および滑剤(C)の和と、磁性粒子(B)との質量比、
(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)が15/85~20/80であり、
前記磁性樹脂組成物のせん断速度304s-1における溶融粘度が、熱可塑性樹脂(A)の融点以上、融点+50℃以下の温度において、6000Pa・s未満となる温度を有し、
少なくとも一部にシート状部を有し、
前記シート状部の厚み方向の切断面において、長さ0.125mm×厚み0.090mmの領域を2500倍の顕微鏡像によって画像処理したときに以下の(3)、(4)の条件を満たす面を有する磁性シールド用射出成形体。
(3)前記画像処理した磁性粒子(B)の総面積が前記画像処理領域の面積の30~60%である。
(4)前記画像処理した磁性粒子(B)の個数が150~500個である。
[7]: 磁性粒子(B)の表層の少なくとも一部にケイ素化合物が被着している[6]に記載の磁性シールド用射出成形体。
[8]: 熱可塑性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂を含む[6]または[7]に記載の磁性シールド用射出成形体。
[9]: 前記シート状部の平均厚みが0.8~10mmである[6]~[8]のいずれかに記載の磁性シールド用射出成形体。
[10]: [1]~[5]のいずれかに記載の射出成形用磁性樹脂組成物を用いて形成した磁性シールド用射出成形体。
本実施形態の磁性樹脂組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、熱可塑性樹脂(A)、Fe-Si-Al合金からなる鱗片状の磁性粒子(B)および滑剤(C)を含有する。熱可塑性樹脂(A)および滑剤(C)の和と、磁性粒子(B)との質量比、(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)が15/85~20/80となるように混合する。本組成物のせん断速度304s-1における溶融粘度は、熱可塑性樹脂(A)の融点以上、融点+50℃以下の温度において、6000Pa・s未満となる温度を有する。前記温度領域のいずれかにおいて6000Pa・s未満となる温度を有していればよい。高温になるにつれて溶融粘度が下がるので、通常、熱可塑性樹脂(A)の融点+50℃の温度で測定すればよい。測定装置の測定可能温度領域、或いは熱可塑性樹脂(A)の分解開始温度などの問題により、融点+50℃の温度では測定できない場合には、熱可塑性樹脂(A)の融点以上、融点+50℃未満の任意の温度で測定すればよい。本組成物は、常温で固形状の混練物である。本明細書の磁性樹脂組成物は、配合成分を混練した樹脂組成物であって、成形前の組成物をいう。成形前の組成物には、例えば、塊状、ペレット状、顆粒状の磁性樹脂組成物が含まれる。
融点=(熱可塑性樹脂1の融点)×樹脂1の配合率(質量%)+・・・+(熱可塑性樹脂nの融点)×樹脂nの配合率(質量%)
式中のnは熱可塑性樹脂の数であり、配合率は熱可塑性樹脂(A)の総質量を100質量%としたときの各樹脂の配合率である。本明細書において熱可塑性樹脂(A)を2種以上用いる場合には、前述した溶融粘度を含め、上記式より求まる値を融点とする。
なお、このシート作製温度は、下記(1)、(2)を満たす温度として規定したものであって、シートをはじめとする各種成形体の作製温度は融点以上であればよく、本組成物の各種成形温度を何ら限定するものではない。
(1)前記画像処理した磁性粒子(B)の総面積を前記画像処理領域の面積の30~60%とする。
(2)前記画像処理した磁性粒子(B)の個数を150~500個とする。
なお、これらの数値は、後述する実施例に記載の方法により得られる値をいう。
本組成物は、熱可塑性樹脂(A)を含有する。熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂が例示できる。これらのうちでも、加工性、機械物性、電気特性、耐熱性に優れる点から、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリカーボネート樹脂が特に好適である。
本組成物は、磁性粒子(B)としてFe-Si-Al合金からなる鱗片状粒子を用い、熱可塑性樹脂(A)と磁性粒子(B)が上記特定の質量比となるように配合されている。ここで、鱗片状粒子とは、鱗のような薄板状の粒子であり、フレーク形状または扁平形状の粒子をいう。その平面形状は、円形、楕円形、角形、不定形などを含み得るが、好適には、円形、楕円形である。鱗片状粒子のアスペクト比(平均粒子径D50/厚み)は、比透磁率の観点から5~100であることが好ましく、10~90であることがより好ましく、20~80であることが更に好ましい。鱗片状粒子の平均粒子径D50は、体積平均粒子径をいい、例えば、市販の粒子径分布測定装置(商品名:「LA-300」、堀場製作所製等)を用いて、100個の鱗片状粒子の粒子径およびその体積を求め、これに基づき体積で重みづけをした平均値を得ることで算出することができる。
配合する鱗片状粒子の平均厚みは、割れや欠けを防止する観点から0.5~20μmが好ましく、1~10μmがより好ましく、1~5μmが更に好適である。鱗片状粒子の平均厚みは、例えば、市販の粒子径分布測定装置を用いて、100個の鱗片状粒子の厚みをそれぞれ求め、これらの平均値を得ることで算出することができる。
また、(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)のより好ましい範囲は15/85~17/83である。
更に、磁性粒子(B)の表面改質処理により、金属イオンの発生を効果的に抑制することで、渦電流発生による磁気損失を効果的に低減できる。また、磁性樹脂組成物中の樹脂の劣化を抑制して耐熱性・耐熱老化性を改善する効果、および磁性粒子(B)の防錆を効果的に発揮させる効果が得られる。更に、磁性粒子(B)の表層への表面処理を行うことにより、比表面積の低下による磁性粒子(B)の分散性の向上効果も期待できる。
本組成物は、更に、滑剤(C)を含有する。滑剤(C)を用いることにより、本組成物からシートを作製する際に、樹脂組成物の流動性を向上させ、Fe-Si-Al合金の割れや欠けを効果的に防止することができる。また、鱗片状粒子の配向性・パッキング性が向上し、高い透磁率を実現できると考えられる。これらの結果、Fe-Si-Al合金の配向性・面積率を向上させ、比透磁率をより効果的に高めることができる。更に、連続射出成形性を高めることができる。ここで「連続射出成形性」は射出成形の加工性に優れる指標の一つであり、後述する実施例で説明する特性に優れることをいう。
本組成物は、任意成分として酸化防止剤(D)を用いることができる。酸化防止剤(D)とは、樹脂の酸化劣化を防止する化合物であり、ラジカル連鎖開始防止剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤に大別される。これらのうちでも、金属イオンによる樹脂の劣化防止の観点から、ラジカル連鎖開始防止剤またはラジカル捕捉剤がより好ましい。なお、酸化防止剤(D)には、後述する金属不活性化剤(E)は含まないものとする。
本組成物は、任意成分として金属不活性化剤(E)を用いることができる。金属不活性化剤(E)とは、金属と樹脂が接触することにより発生する、樹脂の変色や劣化を抑制する化合物である。具体例としては、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール等のサリチル酸誘導体、2,2’-オキサミド-ビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)プロピオネート]等のシュウ酸誘導体、N,N’-ビス[3(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等のヒドラジド誘導体が挙げられる。金属不活性化剤(E)は一種または二種以上を併用できる。商品名としては、アデカスタブCDA-1(ADEKA社製)、アデカスタブCDA-10(ADEKA社製)、ナウガードXL-1(AccuStandard社製)などが例示できる。
更に、磁性粒子(B)として、ケイ素化合物を被着させた磁性粒子(B)を用いることによって、射出成形性を優れたものとしつつ、比透磁率をより効果的に高めることができることに加え、優れた防錆効果を得ることができる。
本組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の成分を含有していてもよい。例えば、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤、分散剤、フィラーなどが例示できる。また、潤滑剤として溶剤を添加することができる。熱溶融成形を行う際に、緻密性が高く、透磁率の高い成形体を得る観点から、実質的に溶剤を含まない磁性樹脂組成物が好ましい。実質的に溶剤を含まないとは、不可避的に含み得る溶剤以外を含まないことを意味する。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、熱可塑性樹脂(A)に該当しない熱可塑性樹脂、磁性粒子(B)に該当しない磁性粒子が含まれていてもよい。他の成分は一種または二種以上を併用することができる。
本組成物の製造方法の一例を説明する。但し、以下の製造方法に限定されるものではない。
Fe-Si-Al合金を鱗片状粒子とする方法は、公知の方法を適用できる。例えば、Fe-Si-Al系合金からなる原料粉末を、ガスアトマイズ法またはディスクアトマイズ法によって得る工程を行い、次いで、この原料粉末を扁平化する工程を行う。次いで、扁平加工された粉末を真空またはアルゴン雰囲気で、700~900℃で熱処理する工程を経て鱗片状粒子を製造できる。原料粉末には、マンガン等の微量元素が含まれていてもよい。
溶融粘度は、熱可塑性樹脂(A)の種類および磁性粒子(B)との配合比を代えることにより調整することができる。溶融粘度は、分子量が小さな熱可塑性樹脂(A)を用いたり、溶融混練時の温度を高くすることにより低下する傾向にある。
本組成物によれば、熱可塑性樹脂(A)および滑剤(C)と、磁性粒子(B)との質量比を上記範囲とし、且つ上記(1)、(2)を満たすことにより、その成形体の比透磁率を高くすることができる。比透磁率は高ければ高いほど好ましい。例えば、シート厚が1mmのときに比透磁率が150以上であることが好ましく、シート厚が3mmのときに比透磁率が100以上であることが好ましい。本組成物によれば、例えば、数kW~1MHzの周波数帯域に対して好適に利用できる。本組成物によれば、熱溶融により透磁率の高い成形体が得られるので、生産性に優れ、成形体の設計自由度が高い射出成形用磁性樹脂組成物として特に有用である。後述する実施形態のようにシート状部を有する成形体の製造に特に有用であるが、シート状部を有さない成形体にも本組成物を好適に適用できる。
本実施形態に係る磁性シールド用射出成形体(以下、本射出成形体ともいう)は、熱可塑性樹脂(A)、Fe-Si-Al合金からなる鱗片状の磁性粒子(B)および滑剤(C)を含み、(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)が15/85~20/80となるように混合してなる磁性樹脂組成物の射出成形体である。
(3)前記画像処理した磁性粒子(B)の総面積が前記画像処理領域の面積の30~60%である。
(4)前記画像処理した磁性粒子(B)の個数が150~500個である。
なお、上記長さ0.125mm×厚み0.090mmの領域は、上記図1Cで説明したように、切断面の両端部をそれぞれ20%ずつカットした領域を測定した。ここで20%ずつカットするのは、上記(3)、(4)の測定領域を求める場合の条件であって、本磁性シールド用射出成形体として、シート状部の端部20%の領域を排除するものではなく、これらの領域の成形体も好適に用いることができる。
本組成物は、シールド特性および射出成形性に優れるので磁性シールド用射出成形体に特に好適であるが、射出成形のみならず、押出成形法などの種々の成形方法によって成形体を形成することができる。また、上述した本射出成形体は、シート状部を有する成形体の例を説明したが、シート状部を有しない射出成形体にも本組成物を好適に適用できる。本成形体をシールド用途以外の用途に利用することもできる。
本射出成形体の製造方法の一例を説明する。但し、以下の製造方法に限定されるものではない。
本組成物は上述した方法により好適に製造できる。その後、射出成形を行う。射出成形温度は熱可塑性樹脂(A)の融点以上の温度とする。射出成形時の磁性粒子(B)の割れや欠けを効果的に防止する観点から、本磁性樹脂組成物の射出成形温度において、せん断速度304s-1における溶融粘度は10000Pa・s以下の磁性樹脂組成物を用いることが好ましい。より好ましくは8000Pa・s以下であり、更に好ましくは5000Pa・s以下である。下限値は特に限定されないが、通常、1.0Pa・sである。射出温度は、熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃以上とすることが好ましい。従って、熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃の温度において、本磁性樹脂組成物のせん断速度304s-1における溶融粘度は10000Pa・s以下とすることが好ましく、8000Pa・s以下がより好ましく、5000Pa・s以下が更に好ましい。
<熱可塑性樹脂>
・(A1)ポリアミド樹脂:6-ナイロン、アミランCM-1007(東レ社製、融点:225℃)
・(A2)ポリカーボネート樹脂:PC、ユーピロンE2000(MEP社製、融点:220℃)
・(A3)スチレン樹脂:GPPS、HF77(日本ポリスチレン社製、融点:240℃)
・(A4)ポリエステル樹脂:MA-2101M(ユニチカ社製、融点:166℃)
<磁性粒子>
・(B1)センダスト:平均粒子径50μm、厚み1μm、鱗片状。
・(B2)センダスト:平均粒子径80μm、厚み1μm、鱗片状。
・(B3)センダスト:平均粒子径50μm、厚み1μm、鱗片状。TEOS処理。
・(B4)センダスト:平均粒子径50μm、厚み1μm、鱗片状。ポリシラザン処理。
・(B5)センダスト:平均粒子径50μm、球状。
・(B6)センダスト:平均粒子径50μm、厚み1μm、鱗片状。メチコン処理。
なお、平均粒子径はD50平均粒子径である。
<滑剤>
・(C1)エステル系滑剤:ペンタエリスリトールテトラステアレート
・(C2)カルボン酸アマイド系ワックス:ライトアマイド WH-215(協栄社化学社製)
・(C3)カルボン酸アマイド系ワックス:ライトアマイド WH-255(協栄社化学社製)
・(C4)脂肪酸ポリアミド系滑剤:ポリマイドS-40E (三洋化成工業社製)
<酸化防止剤>
・(D1)イルガノックス1010(BASF社製)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤。
・(D2)アデカスタブAO-80(ADEKA社製)、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤。
・(D3)アデカスタブPEP-36(ADEKA社製)、ホスファイト系酸化防止剤。
<金属不活性化剤>
・(E1)アデカスタブCDA-1(ADEKA社製)、サリチル酸誘導体。
・(E2)アデカスタブCDA-10(ADEKA社製)、ヒドラジド誘導体。
・(E3)ナウガードXL-1(AccuStandard社製)、シュウ酸誘導体。
<その他>
・(F1)CB100(日本黒鉛工業製 平均粒径:80μm)
・(F2)カーボンブラック#30(三菱ケミカル製 平均粒径:30nm)
センダスト(B1)500質量部と、テトラエトキシシラン(TEOS)15質量部と、イソプロピルアルコール500質量部と、水65質量部とを混合し、25℃にて3時間攪拌した。その後、28%アンモニア水を1質量部添加し、pH9.5に調整した後、50℃にて5時間攪拌した後、120℃で3時間乾燥させ、表面がケイ素化合物で被覆されたセンダスト(B3)を得た。
センダスト(B1)500質量部と、パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NP-110)15質量部と、ジブチルエーテル100質量部とを混合し、25℃にて3時間攪拌した。その後、70℃にて5時間攪拌した後、120℃で3時間乾燥させ、表面がケイ素化合物で被覆されたセンダスト(B4)を得た。
センダスト(B1)500質量部と、メチルハイドロジェンシリコーンオイル15質量部と、イソプロピルアルコール500質量部とを混合し、25℃にて3時間攪拌した。その後、70℃にて5時間攪拌した後、120℃で3時間乾燥させ、表面がケイ素化合物で被覆されたセンダスト(B6)を得た。
センダスト(B1)500質量部と、テトラエトキシシラン(TEOS)5質量部と、イソプロピルアルコール500質量部と、水65質量部とを混合し、25℃にて3時間攪拌した。その後、28%アンモニア水を1質量部添加し、pH9.5に調整した後、50℃にて5時間攪拌した後、120℃で3時間乾燥させ、表面がケイ素化合物で被覆されたセンダスト(B7)を得た。
センダスト(B1)500質量部と、テトラエトキシシラン(TEOS)25質量部と、イソプロピルアルコール500質量部と、水65質量部とを混合し、25℃にて3時間攪拌した。その後、28%アンモニア水を1質量部添加し、pH9.5に調整した後、50℃にて5時間攪拌した後、120℃で3時間乾燥させ、表面がケイ素化合物で被覆されたセンダスト(B8)を得た。
(磁性樹脂組成物1の製造)
ポリアミド樹脂(A1)16.9%、センダスト(B1)83%および滑剤(C1)0.1%を計量し、オープンニーダーに投入した後、260℃で10分間混練した。その後、フィーダルーダーを通して、ペレタイズを行い、ペレット状の磁性樹脂組成物1を得た。そして、比透磁率、および磁性粒子(B)の面積率と個数を以下の方法により測定した。結果を表4に示す。
得られたペレット状の磁性樹脂組成物1をシート状になるように、前記シートの一主面となる方向から15MPaの圧力を均一に熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃(240℃)で1分プレスして、縦200mm・横200mm・厚み1.0mmのプレスシートを作製した。そして、シートの中央で切断面を作製し、切断面の端部20%をカットした。そして、得られた切断面において厚み0.090mm×長さ0.125mmの領域を2500倍で、ビデオマイクロスコープVHX7000(キーエンス社製、粒子解析モード)により50か所測定した後、画像処理した。そして、画像処理した磁性粒子(B)の面積率(平均値)、および画像処理した磁性粒子(B)の個数(平均値)を求めた。
得られたペレット状の磁性樹脂組成物1をシート状になるように、前記シートの一主面となる方向から15MPaの圧力を均一に熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃(240℃)で1分プレスして、縦200mm・横200mm・厚み1.0mmのプレスシートを作製した。その後、外形11.0mm、内径6.5mm、厚み1.0mmのリング形状に加工し、インピーダンスアナライザ(E4990A、KEYSIGHT社製)を用いて、周波数f=1MHz時のインダクタンスを測定し、短絡同軸管法から比透磁率を測定した。評価基準は以下の通りとした。
+++:150以上。
++:100以上150未満。
+:50以上100未満。
NG:50未満。
上記方法により得たプレスシート片を熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)にて、ドライエアー雰囲気下、40℃~500℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で加熱し、熱重量減少を測定し、耐熱性を評価した。評価基準は以下の通りである。なお、上記測定で得られた重量減衰曲線において、重量変化の開始点温度における接線と、重量減少速度(%/℃)が最大となる温度における接線との交点の温度を分解開始温度とする。
+++:分解開始温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+50℃以上である。
++:分解開始温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+50℃未満、+40℃以上である。
+:分解開始温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+40℃未満、+20℃以上である。
NG:分解開始温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+20℃未満である。
上記方法により得たプレスシート片を送風乾燥機にて150℃で10日間、加熱処理を行った。加熱前のプレスシートに対する衝撃強度に対し、以下の式を用いて加熱試験後の衝撃強度を求め、保持率を求めた。衝撃強度は、振り子式衝撃試験機を使用し、JIS K 7111:1996に基づいて求めた。
保持率[%]=t1/t0*100
式中のt0は加熱前のプレスシートの衝撃強度であり、t1は加熱後のプレスシートの衝撃強度である。
評価基準は以下の通りである。
+++:保持率が80%~100%。
++:保持率が50%以上、80%未満。
+:保持率が50%未満。
NG:保持率の算出不可。
磁性樹脂組成物のプレスシート片を、純水を満たした容量50mLのガラス容器に入れ、90℃の恒温槽中に24時間放置した。その後、目視にて磁性粒子(B)の錆を観察した。評価基準は以下の通りである。
+++:錆の発生が認められない。
++:錆の発生は認められないが、表面の光沢感がなくなり曇る磁性粒子(B)がある。
+:僅かに錆の発生が認められる磁性粒子(B)があるが、全面がわずかに褐色を帯びる程度である。
NG:錆の発生が認められる磁性粒子(B)があり、全面が黄褐色に変色している。
実施例1の熱可塑性樹脂(A)、磁性粒子(B)、滑剤(C)を表1、2に記載された原料および配合量に変更し、実施例1と同様に行うことでそれぞれ磁性樹脂組成物2~38を作製し、実施例1と同様の方法によりプレスシートを作製し、それぞれ比透磁率、および磁性粒子(B)の面積率と個数等を測定した。評価結果を表4に示す。なお、表面処理したセンダスト(B3)等の配合量は、表層の被着層の質量を含まないFe-Si-Al合金からなる鱗片状粒子の質量である。以下同様とする。
(磁性樹脂組成物39の製造)
熱可塑性樹脂(A)16.5%、センダスト(B1)83%および滑剤(C)0.5%を計量し、加圧ニーダーに投入した後、260℃で10分間混練した。その後、フィーダルーダーを通して、ペレタイズを行い、ペレット状の磁性樹脂組成物39を得た。それ以外の方法は、実施例1と同様にプレスシートを作製し、比透磁率、および磁性粒子(B)の面積率と個数等を測定した。
(磁性樹脂組成物40、41の製造)
表3に記載された原料および配合量に変更し、比較例1と同様に加圧ニーダーで磁性樹脂組成物40、41を作製した。その後、実施例1と同様にプレスシートを作製し、比透磁率、および磁性粒子(B)の面積率と個数等を測定した。
(磁性樹脂組成物42~45の製造)
表3に記載された原料および配合量に変更し、実施例1と同様にオープンニーダーにて磁性樹脂組成物42~45を作製した。その後、実施例1と同様にプレスシートを作製し、比透磁率、磁性粒子(B)の面積率と個数等を測定した。
各例の磁性樹脂組成物の溶融粘度を溶融粘度測定装置(東洋精機製作所製、キャピログラフ1C)にて測定した。測定温度は、熱可塑性樹脂(A)の融点+50℃の温度にて、せん断速度304s-1の条件における本組成物の溶融粘度を求めた。
+++:3000Pa・s未満となる温度を有する。
++:上記+++に該当せず、4500Pa・s未満となる温度を有する。
+:上記++に該当せず、6000Pa・s未満となる温度を有する。
NG:6000Pa・s未満となる温度を有しない。
射出成形機(東芝機械社製IS-100F型、最大射出成形圧力200MPa)を用いて、各例の磁性樹脂組成物に対して270℃で射出成形を行い、縦100mm×横100mm×厚み3mmの直方体形状の磁性シールド用成形体1~45を作製した。金型は縦100mm×横100mm×厚み3mmの直方体を用い、ゲート径は1mm×3mm、金型締め圧力は50tとした。各例の射出成形時にかかる磁性樹脂組成物への圧力は、後述するヒケ等が生じずに、成形できる最小圧力で行った。
上記磁性シールド用成形体1~45の中央で切断面を作製し、切断面の端部20%をカットした。そして、得られた切断面を2500倍の視野角(厚み0.090mm×長さ0.125mmの領域)をビデオマイクロスコープVHX7000(キーエンス社製、粒子解析モード)により50か所測定した後、画像処理した。そして、画像処理した磁性粒子(B)の面積率(平均値)、および画像処理した磁性粒子(B)の個数(平均値)を求めた。
各例の磁性樹脂組成物に対し、前記射出成型機で100mm×100mm×3mm(厚み)の平板の成形を連続的に行った。射出成型圧力が最大射出成型圧力の90%以下の範囲にて、ヒケ等の問題なく連続成形できた最大個数(=最大ショット数)を求めた。なお、本明細書において「ヒケ等」とは射出成形品表面に発生する凹凸や気泡の発生、充填不足による成形不良のことを指し、目視により判断した。
+++:100ショット以上。
++:100ショット未満、30ショット以上。
+:30ショット未満、5ショット以上。
NG:5ショット未満。
上記連続射出成形性の評価1と同様の方法により連続射出成形を実施し、磁性シールド用成形体の成形時昇温の度合を評価した。具体的には、1ショット行った後の初期材料温度と10ショット連続成形した後の材料温度を測定し、初期温度に対する10ショット後の材料温度の温度上昇率を求めた。評価基準は以下の通りとした。
+++:1%以下
++:1%越え、5%以下。
+:5%越え、10%以下。
NG:10%越え。
前記射出成形機を用いて、270℃で各例の磁性樹脂組成物の射出成形を行い、縦80mm×横200mm×厚み1.5mmの直方体形状の磁性シールド用成形体を作製した。金型は縦80mm×横200mm×厚み1.5mmの直方体を用い、ゲート径は1mm×1.5mm、金型締め圧力は50tとした。前述したヒケ等が生じずに、成形できる最小圧力となるように、各例の磁性樹脂組成物に対して射出成形圧力を変えて成形を行い、流動性評価用の射出成形体1a~45aを得た。評価基準は以下の通りとした。なお、最大射出成形圧力は、通常、100~500MPaであり、好ましくは150~400MPaである。
+++:射出成形圧力が最大射出成形圧力の50%未満で射出成形してもヒケ等なく成形ができる。
++:射出成形圧力が最大射出成形圧力の50%未満ではヒケ等が生じるが、50%以上、75%未満であればヒケ等なく成形ができる。
+:射出成形圧力が最大射出成形圧力の50%以上、75%未満で射出成形するとヒケ等が生じるが、75%以上、95%未満であればヒケ等なく成形ができる。
NG:射出成形圧力が最大射出成形圧力の75%以上、95%未満で射出成形するとヒケ等が生じるが、95%以上で射出成形するとヒケ等が生じずに成形できる、或いは成形することができない。
磁性シールド用成形体1~45を外形11.0mm、内径6.5mm、厚み3.0mmのドーナツ状に加工し、インピーダンスアナライザ(E4990A、KEYSIGHT社製)を用いて、周波数f=1MHz時のインダクタンスを測定し、短絡同軸管法から比透磁率を測定した。比透磁率は、以下の評価基準により評価した。評価結果を表5、7に示す。
+++:150以上。
++:100以上150未満。
+:50以上100未満。
NG:50未満。
実施例2,11,15,19のプレスシート片の初期、90℃の温水中に6時間浸漬した後、90℃の温水中に24時間浸漬した後の比透磁率をそれぞれ求め、比透磁率の保持率を求めた結果を図5に示す。
図5中の実施例2は、表面処理を行っていない磁性粒子(センダスト(B1))を用いた例であり、実施例11は、磁性粒子(センダスト(B3))100質量部に対し、TEOSを3質量部用いた例である。実施例15はポリシラザン処理した磁性粒子(センダスト(B4))を用いた例であり、実施例19はメチコン処理を行った磁性粒子(センダスト(B6))を用いた例である。同図に示すように、磁性粒子(B)の表面処理を行うことにより、比透磁率の保持率が高められることが確認された。また、磁性粒子(B)の表面処理により防錆効果が認められた。
本発明の磁性樹脂組成物および成形体は、磁気シールド特性が必要な用途全般に対して好適に利用できる。例えば、磁界共鳴方式の非接触送電を利用したワイヤレス電力伝送システムの受電コイル側の磁性シールドシートとして好適に利用できる。また、VHF帯の電波を利用するアンテナに搭載する磁性シールドシートとして好適に利用できる。また、本発明の磁性樹脂組成物は、基材にマイクロストリップライン等のパターンを形成して用いることも可能である。
50:シート、50a:シート、51a:主面、51a:主面、52:切断面、
53:磁性粒子(B)、54:熱可塑性樹脂(A)、
60:シート状の磁性シールド用射出成形体、60a:シート、
61a:主面、61b:主面、62:切断面
Claims (10)
- 融点が100℃以上400℃以下の熱可塑性樹脂(A)、Fe-Si-Al合金からなる鱗片状の磁性粒子(B)および滑剤(C)を含む、成形前の射出成形用磁性樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(A)および滑剤(C)の和と、磁性粒子(B)との質量比、
(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)が15/85~20/80であり、
前記射出成形用磁性樹脂組成物のせん断速度304s-1における溶融粘度が、熱可塑性樹脂(A)の融点以上、融点+50℃以下の温度において、6000Pa・s未満となる温度を有し、
前記射出成形用磁性樹脂組成物がシート状になるように、形成されるシートの一主面側の上方向から15MPaの圧力を均一に、熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃の温度で1分かけて前記シートを作製し、当該シートの厚み方向の切断面において、長さ0.125mm×厚み0.090mmの領域を2500倍の顕微鏡像によって画像処理したときに以下の(1)、(2)の条件を満たす射出成形用磁性樹脂組成物。
(1)前記画像処理した磁性粒子(B)の総面積が前記画像処理領域の面積の30~60%である。
(2)前記画像処理した磁性粒子(B)の個数が150~500個である。 - 磁性粒子(B)の表層の少なくとも一部にケイ素化合物が被着している請求項1に記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂を含む請求項1または2に記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
- 更に、酸化防止剤(D)を含む請求項1~3のいずれかに記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
- 更に、金属不活性化剤(E)を含む請求項1~4のいずれかに記載の射出成形用磁性樹脂組成物。
- 融点が100℃以上400℃以下の熱可塑性樹脂(A)、Fe-Si-Al合金からなる鱗片状の磁性粒子(B)および滑剤(C)を含む磁性樹脂組成物から形成された磁性シールド用射出成形体であって、
熱可塑性樹脂(A)および滑剤(C)の和と、磁性粒子(B)との質量比、
(熱可塑性樹脂(A)+滑剤(C))/磁性粒子(B)が15/85~20/80であり、
前記磁性樹脂組成物のせん断速度304s-1における溶融粘度が、熱可塑性樹脂(A)の融点以上、融点+50℃以下の温度において、6000Pa・s未満となる温度を有し、
少なくとも一部にシート状部を有し、
前記シート状部の厚み方向の切断面において、長さ0.125mm×厚み0.090mmの領域を2500倍の顕微鏡像によって画像処理したときに以下の(3)、(4)の条件を満たす面を有する磁性シールド用射出成形体。
(3)前記画像処理した磁性粒子(B)の総面積が前記画像処理領域の面積の30~60%である。
(4)前記画像処理した磁性粒子(B)の個数が150~500個である。 - 磁性粒子(B)の表層の少なくとも一部にケイ素化合物が被着している請求項6に記載の磁性シールド用射出成形体。
- 熱可塑性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂を含む請求項6または7に記載の磁性シールド用射出成形体。
- 前記シート状部の平均厚みが0.8~10mmである請求項6~8のいずれかに記載の磁性シールド用射出成形体。
- 請求項1~5のいずれかに記載の射出成形用磁性樹脂組成物を用いて形成した磁性シールド用射出成形体。
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