JP2019080060A - インダクタ成形用樹脂組成物および一体型インダクタ - Google Patents

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将人 吉田
勝志 山下
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勝志 山下
佑衣 高橋
Yui Takahashi
佑衣 高橋
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Abstract

【課題】成形性および製造安定性に優れたインダクタ成形用樹脂組成物を提供する。【解決手段】空芯コイル10のコイル内部に充填された磁性コア20と空芯コイル10を封止する外装部材30が一体成形された一体型インダクタを成形するためのインダクタ成形用樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂と、磁性体粉末と、磁性体粉末の含有量が、当該インダクタ成形用樹脂組成物の固形分全体に対して、50質量%以上であり、当該インダクタ成形用樹脂組成物の175℃における溶融粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、インダクタ成形用樹脂組成物および一体型インダクタに関する。
これまでインダクタを形成する技術として様々な方法が開発されてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、金型中の平角線からなる空芯コイルが埋設された状態となるように、粉末状の磁性材料を金型に充填し、5トン/cmの圧力で加圧成形し、金型から取り出した後、当該磁性材料を硬化することにより一体成形型インダクタを形成できることが記載されている(特許文献1の段落0026、0027、図1)。
特開2006−294775号公報
本発明者が検討した結果、特許文献1に記載の加圧成型による一体型インダクタにおいて、成形性および製造安定性の点で改善の余地を有することが判明した。
本発明者はさらに検討したところ、トランスファー成形を採用することにより、磁性コアおよび外装部材を形成するための樹脂組成物(インダクタ成形用樹脂組成物)中における金属フィラーを高充填化することが可能であり、これにより磁性特性を高められることを見出した。
しかしながら、特許文献1に記載の加圧成型に用いる磁性材料においては、成形時における流動性について検討がなされていない。
本発明者の知見によれば、加圧成型に用いる磁性材料をそのままトランスファー成型に適用したとしても、成形温度における流動性を適切に制御しない場合、磁性体粉末の充填率を高めると磁性材料の流動性が過度に低くなり、成形性が低下する恐れがある。
一方で、成形温度における流動性を高くし過ぎると、成形時に金型から樹脂漏れが発しし、製造安定性が低下する恐れがあることが判明した。
そこで、このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、高充填の金属フィラーを含有するインダクタ成形用樹脂組成物において、成形温度における溶融粘度を所定の数値範囲内とすることにより、樹脂組成物における成形性とともに製造安定性を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと前記空芯コイルを封止する外装部材が一体成形された一体型インダクタを成形するためのインダクタ成形用樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂と、
磁性体粉末と、
前記磁性体粉末の含有量が、当該インダクタ成形用樹脂組成物の固形分全体に対して、50質量%以上であり、
当該インダクタ成形用樹脂組成物の、175℃における溶融粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下である、インダクタ成形用樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、
空芯コイルと、
前記空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと、
前記空芯コイルを封止する外装部材と、を備えており、
前記磁性コアと前記外装部材とが、上記インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物で一体成形された、一体型インダクタが提供される。
本発明によれば、成形性および製造安定性に優れたインダクタ成形用樹脂組成物およびそれを用いた構造体が提供される。
本実施形態に係る構造体の構成を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態のインダクタ成形用樹脂組成物は、空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと空芯コイルを封止する外装部材が一体成形された一体型インダクタを成形するためのインダクタ成形用樹脂組成物である。インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物は、圧粉磁心などに代表される磁性コア(磁性素子)として用いるとともに、当該磁性コアおよび空芯コイルを封止する外装部材として用いることが可能である。
本実施形態のインダクタ成形用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、磁性体粉末と、を含むことができる。磁性体粉末の含有量は、当該インダクタ成形用樹脂組成物の固形分全体に対して、50質量%以上とすることができる。またインダクタ成形用樹脂組成物における175℃における溶融粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下とすることができる。
本発明者は、高透磁率や低磁気損失などの磁気特性に着目し、インダクタ成形用樹脂組成物中に金属フィラーとして磁性体粉末を高充填する方法について検討を深めた。その結果、熱硬化性樹脂を用いたトランスファー成形を採用することにより、インダクタ成形用樹脂組成物中の磁性体粉末の充填率(例えば、インダクタ成形用樹脂組成物の固形分全体の50質量%以上)を高められることを見出した。磁性体粉末が高充填された外装部材を実現することができるため、インダクタの磁気特性や機械的強度を向上させることが可能である。また磁性コアと外装部材とを一体形成化することにより、インダクタの磁気特性をさらに高めることが期待される。
本発明者の知見によれば、磁性体粉末の充填率を高めると、流動性が過度に低下し、未充填の発生などの成形性が低下する恐れがあることが判明した。反対に、流動性が過度に高い場合には、金型からの樹脂漏れなどの製造安定性の低下や、磁性体粉末の沈降に起因した磁気特性のバラツキが生じる恐れがあることが判明した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、高充填の磁性体粉末を含有するインダクタ成形用樹脂組成物において、成形温度における溶融粘度を所定の数値範囲内とすることにより、磁性コアと外装部材が一体成形された一体型インダクにおいて、成形性とともに製造安定性に優れたインダクタ成形用樹脂組成物を実現できることが判明した。
本実施形態の一体型インダクタは、空芯コイルと、空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと、空芯コイルを封止する外装部材と、を備えており、磁性コアと外装部材とが、上記インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物で一体成形された一体化構造を有することができる。当該一体型インダクタは、高周波回路用、電源用、一般回路用などの様々な用途に使用することが可能であるが、一例としてパワーインダクタや電圧変換用インダクタに用いることができる。本実施形態によれば、インダクタを備えるコンバータやこのコンバータを備える電力変換装置を提供できる。インダクタは、車載用、航空機用、船舶用などに使用できる。
以下、本実施形態のインダクタ成形用樹脂組成物の各成分について詳述する。
本実施形態のインダクタ成形用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物と呼称することもある)は、熱硬化性樹脂と、磁性体粉末と、を含むことができる。
<熱硬化性樹脂>
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネートエステル樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂(オキセタン化合物)、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては、具体的な一例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ビスマレイミド化合物等のマレイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ジアリルフタレート樹脂;シリコーン系樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のシアネート樹脂等のシアネートエステル樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂では、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。熱硬化性樹脂は、室温25℃において半硬化(固形)状のものを使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂は、耐熱性の観点から、例えば、エポキシ樹脂を含むことができる。上記エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含むことができる。上記エポキシ樹脂として、例えば、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上の固形のエポキシ樹脂を用いることができる。これにより、耐熱性が高く、成形に適した樹脂組成物が得られる。
本実施形態の樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂の硬化剤を含むことができる。硬化剤は、室温25℃において半硬化(固形)状のものを使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂がノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂を含む場合、硬化剤としては例えばヘキサメチレンテトラミン等を用いることができる。
また、上記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤として、例えば脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香族ジアミン、ジシアミンジアミドのようなアミン化合物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物のような酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂のようなポリフェノール化合物(フェノール系硬化剤)、イミダゾール化合物等を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂がマレイミド樹脂を含む場合、硬化剤としては例えばイミダゾール化合物を用いることができる。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記硬化剤は、ガラス転移温度や線膨張係数の観点から、芳香族ジアミンを含むことができる。
芳香族ジアミンとしては、一分子中に、1つ以上の芳香環構造と2つのアミノ基(−NH)を有する化合物であれば、特に限定なく用いることができる。芳香族ジアミンとして好ましくは、アミノ基が芳香環に直結している構造を有するものである。
芳香族ジアミンの選択にあたっては、融点を1つの参考とすることができる。適当な融点の芳香族ジアミンを用いることで、樹脂組成物の混練/成形の際に、芳香族ジアミンが適切に溶融する。これにより、流動性をより良好とすることができる。また、樹脂組成物をより均一に混練できることとなるため、最終的に得られる硬化物(磁性部材)の耐熱性や機械物性(強度など)を高められるとも考えられる。
具体的には、芳香族ジアミンの融点は、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
芳香族ジアミンの融点の下限値は特にないが、例えば60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
なお、芳香族ジアミンとして市販品を用いる場合、融点についてはカタログ値を採用することができる。
ちなみに、芳香族ジアミンは、常温(25℃)において固体であり、液体ではないことが好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ジアミン以外のアミン化合物を含んでもよいが、そのアミン化合物も、常温(25℃)においては固体であり、液体ではないことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、典型的には粒状やタブレット状に調製される。その調製のやりやすさや、調製により得られた粒状またはタブレット状の樹脂組成物の取り扱い性の観点などから、芳香族ジアミン(および、場合によっては芳香族ジアミン以外のアミン化合物)は、常温で固体であることが好ましい。
樹脂組成物は、芳香族ジアミンとして、以下一般式(AM)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2019080060
一般式(AM)において、
Xは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、エステル基およびこれらのうち2以上が連結された基からなる群より選択されるいずれかの基であり、
Yは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、エステル基およびこれらのうち2以上が連結された基からなる群より選択されるいずれかの基であり、
、RおよびRは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、1価の有機基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子であり、
k、lおよびmは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
nは、0以上の整数である。
XおよびYの直鎖または分岐のアルキレン基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましい。
なお、XおよびYの一部または全部が分岐のアルキレン基であることにより、芳香族ジアミンの骨格を適度に剛直とすることができる。このことは、上述の「融点」を適切とすることとも関連すると考えられる。また、芳香族ジアミンの骨格が適度に剛直であることで、硬化物(磁性部材)の耐熱性の一層の向上、機械強度の向上などの効果も得られると考えられる。
、RおよびRの1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシル基などを挙げることができる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
、RおよびRの1価の有機基の総炭素数は、それぞれ、例えば1〜30、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6である。
k、lおよびmは、それぞれ独立に、好ましくは0または1の整数である。
一態様として、k、lおよびmは、全て0である。つまり、一態様として、一般式(AM)中のベンゼン環の全ては、アミノ基以外の原子団により置換されていない。
nは、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2である。
芳香族ジアミンの具体例を以下に示す。なお、芳香族ジアミンは以下にのみ限定されるものではない。また、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどを挙げることもできる。
Figure 2019080060
芳香族ジアミンについては、市販品を用いてもよい。芳香族ジアミンは、例えば、セイカ株式会社、三井化学ファイン株式会社、富士フイルム和光純薬株式会社などから入手することができる。
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ジアミンを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
樹脂組成物中の芳香族ジアミンの量は、樹脂組成物全体を基準として、例えば0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
また、樹脂組成物中の芳香族ジアミンの量は、樹脂組成物全体を基準として、例えば1〜30体積%、好ましくは5〜25体積%である。このような数値範囲とすることにより、成形性および機械的特性を向上させることができる。
なお、組成物中の芳香族ジアミンの量は、エポキシ樹脂との関係で適切に調整されることが好ましい。
具体的には、芳香族ジアミンが有するアミノ基のモル数に対する、エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル数の比(つまり、エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル数/芳香族ジアミンが有するアミノ基のモル数)が、好ましくは1〜3、より好ましくは1.5〜2.5、さらに好ましくは1.7〜2.3である。
1つのアミノ基(−NH)は、2つのエポキシ基と反応しうる。よって、上述の比が2前後となるようにエポキシ樹脂と芳香族ジアミンの量比を調整することで、硬化時のアミノ基とエポキシ基の架橋構造がより密とすることができると考えられる。そして、硬化物(磁性部材)のガラス転移温度を高め、耐熱性を高めることができると考えられる。
なお、上述の比は、組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ当量またはエポキシ価、エポキシ樹脂の分子量(これらは通常エポキシ樹脂のカタログに示されている)、芳香族ジアミンの分子量などから計算して求めることができる。
本実施形態の硬化剤の含有量は、樹脂組成物の固形分全体100体積%に対して、例えば、5体積%〜30体積%であり、好ましくは5体積%〜25体積%である。また、本実施形態の硬化剤の含有量は、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、例えば、0.5質量%〜20質量%であり、好ましくは1質量%〜15質量%である。このような数値範囲とすることにより、成形性および機械的特性を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むことができる。これにより、樹脂組成物の成形性をより高めることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂(例えばナイロン等)、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂では、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
<磁性体粉末>
本実施形態の樹脂組成物は、磁性体粉末を含むことができる。
上記磁性体粉末は、鉄基粒子と当該鉄基粒子と異なる微小粒子とを有する混合粉末で構成することができる。
上記磁性体粉末は、平均粒子径が互いに異なる2種以上の粒子を含むことができる。これにより、磁性体粉末の充填性を高めることともに、樹脂組成物の流動性を高めることができる。
(鉄基粒子)
上記鉄基粒子に含まれる第1粒子は、軟磁性を示し、鉄の含有率が85質量%以上である粒子(軟磁性鉄高含有粒子)を用いることができる。この鉄基粒子は第1粒子および第2粒子を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
軟磁性とは、保磁力が小さい強磁性のことを指し、一般的には、保磁力が800A/m以下である強磁性のことを軟磁性という。
第1粒子の構成材料としては、構成元素としての鉄の含有率が85質量%以上である金属材料が挙げられる。このように構成元素としての鉄の含有率が高い金属材料は、透磁率や磁束密度等の磁気特性が比較的良好な軟磁性を示す。このため、例えば空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと前記空芯コイルを封止する外装部材が一体成形された一体型インダクタ等に成形されたとき、良好な磁気特性を示し得る樹脂組成物が得られる。
また、この金属材料の形態としては、例えば、単体の他、固溶体、共晶、金属間化合物のような合金等が挙げられる。このような金属材料で構成された第1粒子を用いることにより、鉄に由来する優れた磁気特性、すなわち、高透磁率や高磁束密度等の磁気特性を有する樹脂組成物を得ることができる。
また、上記金属材料は、構成元素として鉄以外の元素を含んでいてもよい。鉄以外の元素としては、例えば、B、C、N、O、Al、Si、P、S、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、上記金属材料の具体例としては、例えば、純鉄、ケイ素鋼、鉄−コバルト合金、鉄−ニッケル合金、鉄−クロム合金、鉄−アルミニウム合金、カルボニル鉄、ステンレス鋼、またはこれらのうちの1種もしくは2種以上を含む複合材料等が挙げられる。
鉄基粒子の平均粒子径は、3μm超であれば特に限定されないが、4〜180μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、7〜100μmであるのがさらに好ましい。鉄基粒子の平均粒子径が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の流動性をより高めることができる。
なお、鉄基粒子の平均粒子径を上記下限値以上とすることより、第1粒子の構成材料の比重や粒子形状等によって、樹脂組成物の成形性が低下してしまうことを抑制できる。一方、鉄基粒子の平均粒子径を上記上限値以下とすることにより、第1粒子の構成材料の比重や粒子形状等によって、樹脂組成物中において鉄基粒子が沈降し易くなり、均一性が低下してしまうことを抑制できる。
また、第1粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10〜180μmであるのが好ましく、12〜150μmであるのがより好ましく、15〜100μmであるのがさらに好ましい。第1粒子の平均粒子径が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の成形性をより高めることができる。
また、第1粒子の構成材料は、結晶材料であってもよく、アモルファス材料であってもよく、粒子中でこれらが混在した材料であってもよい。
さらには、鉄基粒子には、結晶材料で構成された第1粒子と、アモルファス材料で構成された第1粒子と、が混在していてもよい。これにより、表面硬度の異なる2種類の第1粒子が混在することとなる。その結果、流動時の第1粒子同士の相互作用が最適化され、より高い流動性が確保される。
また、第1粒子の球形度は、特に限定されないが、0.60〜1.00であるのが好ましく、0.70〜1.00であるのがより好ましい。第1粒子の球形度が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の流動性をより高めることができる。
上記鉄基粒子に含まれる第2粒子は、軟磁性を示し、構成材料の組成が第1粒子とは異なる粒子(軟磁性金属粒子)を用いることができる。
第2粒子の構成材料は、第1粒子の構成材料として前述した材料から適宜選択される。
構成材料の組成が異なるとは、構成元素の含有率が1質量%以上異なる状態をいう。
このようにして構成材料の組成が第1粒子と異なる第2粒子を用いることにより、表面の化学的状態や表面硬度の異なる2種類の粒子が混在することとなる。その結果、流動時の第1粒子と第2粒子の相互作用が最適化され、より高い流動性が確保される。
また、第2粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、第1粒子の平均粒子径と異なることが好ましい。すなわち、第2粒子の平均粒子径は、第1粒子の平均粒子径より大きくてもよいが、小さいことが好ましい。これにより、比較的粒子径の大きい第1粒子を含んでいても、樹脂組成物の流動性の低下を抑えることができる。すなわち、第1粒子に由来する優れた磁気特性を確保しつつ、第2粒子によって樹脂組成物の高流動性も確保することができる。
なお、第2粒子の平均粒子径が第1粒子の平均粒子径より小さい場合、第1粒子の平均粒子径と第2粒子の平均粒子径との差は、樹脂組成物の流動性を考慮して適宜設定されるが、一例として1〜100μmであるのが好ましく、3〜80μmであるのがより好ましく、5〜60μmであるのがさらに好ましく、10〜50μmであるのが特に好ましい。これにより、樹脂組成物の流動性をより高めることができる。
上記平均粒子径の差を上記下限値以上とすることにより、流動性を高める効果を発揮させることができる。また、第1粒子と第2粒子の粒子径差が小さくなり、第2粒子が第1粒子同士の隙間を埋めるように配置されるという作用が弱くなり、磁性材料の充填性が低下してしまうことを抑制できる。一方、上記平均粒子径の差を上記上限値以下とすることにより、第1粒子の粒子径によって、第2粒子の粒子径が小さくなり過ぎて、樹脂組成物の流動性が低下してしまうことを抑制できる。
また、第2粒子の構成材料は、結晶材料であってもよく、アモルファス材料であってもよく、これらが混在した材料であってもよい。
また、第2粒子の球形度は、特に限定されないが、0.60〜1.00であるのが好ましく、0.70〜1.00であるのがより好ましい。第2粒子の球形度が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の流動性をより高めることができる。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、第2粒子を含んでもよく、含まなくてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、球状粒子を含むことができる。球状粒子として、上記の球形度を有する第1粒子や第2粒子等の鉄基粒子を用いることができる。これにより、磁性体粉末の充填性を高めつつ、樹脂組成物の流動性を向上させることができる。
また、磁性体粉末は、第1粒子や第2粒子以外のその他の軟磁性粒子、例えばNi基軟磁性粒子、Co基軟磁性粒子等を含んでいてもよい。
また、上記鉄基粒子、すなわち、第1粒子および第2粒子の少なくとも一方は、表面処理が施されていてもよい。
本実施形態において、表面処理とは、粒子表面を改質するための操作をいう。この操作としては、例えば、粒子表面をカップリング剤で処理したり、粒子をプラズマ処理したりすることが挙げられる。このような表面処理により、第1粒子および/または第2粒子の表面に官能基を結合させることが可能である。官能基は、これらの粒子表面の一部または全面を被覆することが可能である。
このような官能基としては、下記一般式(1)の官能基を用いることができる。
*−O−X−R ・・・(1)
[式中、Rは、有機基を表し、Xは、Si、Ti、Al、またはZrであり、*は、第1粒子または第2粒子を構成する原子の1つである。]
上記官能基は、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等の公知のカップリング剤による表面処理によって形成された残基であるが、シラン系カップリング剤およびチタン系カップリング剤からなる群より選択されるカップリング剤の残基であることが好ましい。これにより、磁性体粉末を樹脂組成物に配合して樹脂組成物としたとき、その流動性をより高めることができる。
また、上述したような官能基を結合させる際には、第1粒子に対する表面処理の一環としてあらかじめプラズマ処理を施すようにしてもよい。例えば、酸素プラズマ処理を施すことにより、第1粒子の表面にOH基が生じて、酸素原子を介した第1粒子とカップリング剤の残基との結合が容易になる。これにより、より強固に官能基を結合させることができる。
なお、第1粒子において第1粒子とカップリング剤の残基とが酸素原子を介して結合していることは、例えばフーリエ変換赤外分光光度計によって確認することができる。
また、上述したような表面処理は、第2粒子に施されてもよく、第1粒子と第2粒子の双方に施されてもよい。
なお、樹脂組成物の流動性を高めるという観点からは、第1粒子のみに表面処理を施すようにしてもよい。これにより、第1粒子と第2粒子とで表面の状態が相違するため、熱硬化性樹脂との相互作用においてそれぞれが異なる挙動を示し、結果的に流動性を高めることに寄与することが可能である。
また、上述した表面処理の下地には、別のコート処理が施されてもよい。かかるコート処理としては、例えば、シリコーン樹脂のような樹脂コートの他、シリカコート等が挙げられる。このようなコート処理が施されることにより、鉄基粒子の絶縁性をより高めることができる。このようなコート処理は、必要に応じて施されればよく、省略されてもよい。このコート処理は、上述した表面処理の下地としてではなく、単独で施されていてもよい。
上記鉄基粒子の体積分率は、樹脂組成物の固形分全体100体積%に対して、35体積%〜90体積%であるのが好ましく、40体積%〜85体積%であるのがより好ましい。これにより、鉄基粒子の含有率が十分に高くなるため、良好な磁気特性を有する樹脂組成物が得られる。
上記鉄基粒子の体積分率を上記下限値以上とすることにより、鉄基粒子の磁気特性によって、樹脂組成物の磁気特性が低下してしまうことを抑制できる。一方で、鉄基粒子の体積分率を前記上限値以下とすることにより、相対的に熱硬化性樹脂の体積分率が低下して、樹脂組成物の流動性が低下したり、硬化後の機械的特性が低下してしまうことを抑制できる。
また、上記鉄基粒子の質量分率の一例としては、各成分の比重によっても異なるものの、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、55質量%〜97質量%であるのが好ましく、60質量%〜95質量%であるのがより好ましい。これにより、体積分率の場合と同様、良好な磁気特性を有する樹脂組成物が得られる。
(微小粒子)
本実施形態の樹脂組成物は、軟磁性を示し、粒子径が3μm以下である微小粒子を含むことができる。
上記微小粒子を含む樹脂組成物は、成形時において高い流動性を示すとともに、成形時における熱硬化性樹脂の染み出しが抑制される。このため、樹脂組成物の成形性が良好になり、磁性体粉末の充填性と均一性とをより高めることができるので、成形体において良好な磁気特性が得られる。また、熱硬化性樹脂の染み出しが抑制されることによって、成形時における樹脂バリ等の発生が抑制される。加えて、熱硬化性樹脂の染み出しに伴って樹脂組成物の成分バランスが崩れてしまい、成形体の機械的特性が低下するのを防止することができる。したがって、成形不良の少ない成形体が得られる。
なお、熱硬化性樹脂の染み出しが抑制される理由としては、成形時における熱硬化性樹脂の染み出しの経路に微小粒子が詰まることにより、この経路が塞がれることが挙げられる。
また、微小粒子が含まれることにより、樹脂組成物における磁性材料の体積分率をより高めることができる。すなわち、微小粒子は隙間に入り込み易いため、その分、磁性材料の充填性が高くなる。その結果、樹脂組成物の磁気特性をさらに高めることができる。
微小粒子の構成材料としては、例えば、第1粒子の構成材料として前述した材料から適宜選択されてもよく、それ以外の軟磁性材料(例えばソフトフェライト、Ni基軟磁性材料、Co基軟磁性材料等)であってもよい。
また、微小粒子の構成材料の組成は、第1粒子や第2粒子の構成材料の組成と同じであっても異なっていてもよい。構成材料の組成が異なるとは、構成元素の含有率が1質量%以上異なる状態をいう。
このようにして構成材料の組成が第1粒子や第2粒子とは異なる微小粒子を用いることにより、樹脂組成物中において表面の化学的状態や表面硬度の異なる粒子が混在することとなる。その結果、流動時の鉄基粒子と微小粒子の相互作用が最適化され、より高い流動性が確保される。
微小粒子の粒子径は、3μm以下であれば特に限定されないが、0.1〜2.8μmの微小粒子が含まれているのが好ましい。このような粒子径は、微小粒子が熱硬化性樹脂の染み出し経路を埋めるのに必要な粒子径であって、かつ、熱硬化性樹脂の溶融物とともに流れ易い粒子径となる。
また、微小粒子の球形度は、特に限定されないが、0.30〜1.00であるのが好ましく、0.50〜1.00であるのがより好ましい。微小粒子の球形度が前記範囲内であることにより、微小粒子自体の転がりを活かして樹脂組成物の流動性を確保する一方、微小粒子が隙間等に詰まり易くなって熱硬化性樹脂の染み出しを抑制し易くなる。すなわち、樹脂組成物の流動性と、微小粒子の染み出しの抑制と、を両立させることができる。
樹脂組成物は、上述したように、粒子径3μm以下である微小粒子を含んでいればよいが、磁性体粉末における微小粒子の含有率は、鉄基粒子に対する相対比として規定される。
すなわち、微小粒子の体積分率は、鉄基粒子の5〜50体積%であるのが好ましく、7〜45体積%であるのがより好ましい。これにより、微小粒子の含有率が最適化されるため、十分な流動性を有するとともに、熱硬化性樹脂の染み出しをより確実に抑制可能な樹脂組成物が得られる。
なお、微小粒子の体積分率が前記下限値を下回ると、微小粒子がもたらす流動性向上の効果が低減するため、樹脂組成物の流動性が低下するとともに、熱硬化性樹脂の染み出しを抑制する効果も低減するおそれがある。また、微小粒子の体積分率が前記上限値を上回ると、相対的に鉄基粒子の体積分率が減少したり熱硬化性樹脂の体積分率が減少したりするため、樹脂組成物の磁気特性や流動性の低下を招くおそれがある。
また、上記微小粒子の質量分率の一例は、各成分の比重によっても異なるものの、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、5〜35質量%であるのが好ましく、8〜33質量%であるのがより好ましい。上記微小粒子の体積分率の一例は、樹脂組成物の固形分全体100体積%に対して、5体積%〜30体積%であり、好ましくは8体積%〜27体積%である。これにより、体積分率の場合と同様、十分な流動性を有するとともに、熱硬化性樹脂の染み出しをより確実に抑制可能な樹脂組成物が得られる。
上記鉄基粒子および微小粒子を含む磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、例えば、80質量%〜99.5質量%であり、好ましくは85質量%〜98.5質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜98.5質量%である。また、上記鉄基粒子および微小粒子を含む磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体100体積%に対して、例えば、40体積%〜95体積%、好ましくは60体積%〜90体積%である。これにより、磁気特性に優れた樹脂組成物の硬化物を実現することが可能である。
また、上記微小粒子の含有量は、鉄基粒子および微小粒子を含む上記磁性体粉末全体に対して、100質量%に対して、例えば、1質量%〜40質量%であり、好ましくは35質量%〜38質量%であり、さらに好ましくは5質量%〜35質量%である。これにより、微小粒子の含有率が最適化されるため、十分な流動性を有するとともに、熱硬化性樹脂の染み出しをより確実に抑制可能な樹脂組成物が得られる。
(非磁性体粉末)
本実施形態の樹脂組成物は、非磁性を示す非磁性体粉末を含むことができる。
上記非磁性体粉末は、非磁性を示し、平均粒子径が3μm以下であり、かつ、平均粒子径が鉄基粒子より小さい粉末を用いることができる。本実施形態において、非磁性とは、強磁性を有さないことを指す。
このような非磁性体粉末を含む樹脂組成物は、成形時においてより高い流動性を示すとともに、成形時における熱硬化性樹脂の染み出しがさらに抑制される。このため、樹脂組成物の成形性がより良好になり、磁性体粉末の充填性と均一性とをさらに高めることができるので、成形体においてとりわけ良好な磁気特性が得られる。また、熱硬化性樹脂の染み出しが抑制されることによって、成形時における樹脂バリ等の発生が抑制される。加えて、熱硬化性樹脂の染み出しに伴って樹脂組成物の成分バランスが崩れてしまい成形体の機械的特性が低下するのを防止することができる。したがって、成形不良の少ない成形体が得られる。
非磁性体粉末の構成材料としては、例えば、セラミックス材料、ガラス材料等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を含む材料が用いられる。このうち、セラミックス材料を含むものが好ましく用いられる。このような非磁性体粉末は、熱硬化性樹脂との親和性が高いため、樹脂組成物の流動性を維持することができる。
上記セラミックス材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、カルシア等の酸化物系セラミックス材料、窒化ケイ素、窒化アルミニウムのような窒化物系セラミックス材料、炭化ケイ素、炭化ホウ素のような炭化物系セラミックス材料等が挙げられる。また、これらの中の1種を単独で用いてもよいし、これらの中の1種を含む混合物を用いてもよい。
また、セラミックス材料は、特にシリカを含むのが好ましい。シリカは、熱硬化性樹脂との親和性が高く、絶縁性が高いため、樹脂組成物に用いられる非磁性体粉末の構成材料として有用である。
上記非磁性体粉末の構成材料の真比重は、1.0〜6.0であるのが好ましく、1.2〜5.0であるのがより好ましく、1.5〜4.5であるのがさらに好ましい。このような非磁性体粉末は、比重が小さいため、熱硬化性樹脂の溶融物とともに流動し易い。このため、成形時において熱硬化性樹脂の溶融物が成形型の隙間等に向かって流動するとき、その溶融物とともに非磁性体粉末が流れ易くなる。その結果、隙間が非磁性体粉末によって塞がれ、熱硬化性樹脂の染み出しをより確実に抑制することができる。なお、成形型の隙間とは、例えば、トランスファー成形機のプランジャーとシリンダーとの隙間(クリアランス)等が挙げられる。
上記非磁性体粉末の平均粒子径は、3μm以下であれば特に限定されないが、0.1〜2.8μmであるのが好ましく、0.5〜2.5μmであるのがより好ましい。このような粒子径は、非磁性体粉末が熱硬化性樹脂の染み出し経路を埋めるのに必要な粒子径であって、かつ、熱硬化性樹脂の溶融物とともに流れ易い粒子径となる。
また、非磁性体粉末の平均粒子径は、3μm以下であってかつ磁性体粉末の平均粒子径より小さければよいが、その差が5μm以上であるのが好ましく、10〜100μmであるのがより好ましく、15〜60μmであるのがさらに好ましい。
また、非磁性体粉末に含まれる非磁性粒子の球形度は、特に限定されないが、0.50〜1.00であるのが好ましく、0.75〜1.00であるのがより好ましい。非磁性体粉末の球形度が前記範囲内であることにより、非磁性体粉末自体の転がりを活かして樹脂組成物の流動性を確保する一方、非磁性体粉末が隙間等に詰まり易くなって熱硬化性樹脂の染み出しを抑制し易くなる。すなわち、樹脂組成物の流動性と、熱硬化性樹脂の染み出しの抑制と、を両立させることができる。
このような非磁性体粉末の体積分率は、磁性体粉末の3〜25体積%であるのが好ましく、5〜20体積%であるのがより好ましい。また、非磁性体粉末の体積分率は、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、5体積%〜10体積%であり、好ましくは6体積%〜9.5体積%である。これにより、非磁性体粉末の含有率が最適化されるため、十分な流動性を有するとともに、熱硬化性樹脂の染み出しをより確実に抑制可能な樹脂組成物が得られる。
なお、上記非磁性体粉末の体積分率を上記下限値以下とすることにより、非磁性体粉末がもたらす流動性向上の効果の低減、樹脂組成物の流動性の低下、または熱硬化性樹脂の染み出しを抑制する効果の低減を抑制することができる。また、上記非磁性体粉末の体積分率を上記上限値以下とすることにより、相対的に磁性体粉末の体積分率が減少したり熱硬化性樹脂の体積分率が減少したりすることによって、樹脂組成物の磁気特性や流動性が低下してしまうことを抑制できる。
一方、上記非磁性体粉末の質量分率の一例は、各成分の比重によっても異なるものの、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、1質量%〜10質量%であるのが好ましく、2質量%〜5質量%であるのがより好ましい。これにより、体積分率の場合と同様、十分な流動性を有するとともに、熱硬化性樹脂の染み出しをより確実に抑制可能な樹脂組成物が得られる。
なお、鉄基粒子、第1粒子、第2粒子、または非磁性体粉末の平均粒子径は、体積平均粒子径(例えば、D50)を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、微小粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
なお、第1粒子、第2粒子、微小粒子または非磁性粒子等の粒子の球形度は、各粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像において、その面積に等しい真円を等面積円とするとき、等面積円相当径/外接円径で求めることができる。そして、任意に選択された10個以上の粒子について等面積円相当径/外接円径を算出し、その平均値を「粒子の球形度」とする。
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことができる。これにより、樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
上記硬化促進剤としては、例えば、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進させるものであればよく、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類(イミダゾール系硬化促進剤);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン、前記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
上記硬化促進剤の含有量は、例えば、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、0.01質量%〜1質量%であり、好ましくは0.05質量%〜0.8質量%である。このような数値範囲とすることにより、硬化性を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含むことができる。これにより、成形時の樹脂組成物の離型性を高めることができる。
上記離型剤としては、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックスや酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤の含有量は、例えば、樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、0.01質量%〜3質量%であり、好ましくは0.05質量%〜2質量%である。これにより、成形時における離型性を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、低応力剤を含むことができる。これにより、樹脂組成物の硬化物におけるクラックや割れなどの発生を抑制し、脆弱性を改善することができる。
上記低応力剤としては、ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、カップリング剤を含むことができる。これにより、樹脂組成物の流動性を高めることができる。
上記カップリング剤としては、上述の表面処理に用いたカップリング剤を用いることができるが、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、密着助剤、着色剤、酸化防止剤、耐食剤、染料、顔料、難燃剤等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、室温25℃において固形とすることができ、粉末状、顆粒状またはタブレット状等の所定の形状を有することができる。
次に、本実施形態の樹脂組成物の特性について説明する。
本実施形態の樹脂組成物の175℃における溶融粘度が、例えば、1Pa・s以上1000Pa・s以下であり、好ましくは2Pa・s以上800Pa・s以下であり、より好ましくは3Pa・s以上500Pa・s以下である。溶融粘度を上記上限値以下とすることにより、流動性を高め、優れた成形性を実現することができる。また、溶融粘度を上記下限値以上とすることにより、成形時に金型から樹脂漏れが発生することを抑制でき、成形時に樹脂組成物中の磁性体粉末が沈降してしまうことを抑制できる。また、磁性体粉末や非磁性体粉末の粒子表面における絶縁層の損傷を抑制することができる。
本実施形態の樹脂組成物の175℃におけるゲル化時間の下限値は、例えば、5秒以上であり、好ましくは7秒以上であり、より好ましくは10秒以上である。ゲル化時間を上記下限値以上とすることにより、成形性を高めることができる。具体的には、車載用のリアクトル等のコイル(大型の構造体)における成形性を高めることができる。
一方で、上記ゲル化時間の上限値は、例えば、300秒以下であり、好ましくは240秒以下であり、より好ましくは220秒以下である。ゲル化時間を上記上限値以下とすることにより、詳細なメカニズムは定かではないが、成形中における磁性体粉末の偏在化を抑制できると考えられるため、比透磁率にバラツキが生じることを抑制し、磁気特性を高めることが可能である。また、タクトタイムを向上させ、生産性を高めることが可能である。このため、本実施形態の樹脂組成物は、既存のトランスファー成形プロセスへの適合性が高いものとすることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が、例えば、120℃以上300℃以下であり、好ましくは125℃以上290℃以下であり、より好ましくは130℃以上280℃以下である。ガラス転移温度を上記下限値以上とすることにより、耐熱性を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、室温25℃から70℃の範囲における平均線膨張係数αが、例えば、30ppm/℃以下であり、好ましくは28ppm/℃以下であり、より好ましくは25ppm/℃以下である。これにより、室温近傍の環境下における寸法安定性を向上させることができる。なお、室温25℃から70℃の範囲における平均線膨張係数αの下限値は、特に限定されないが1ppm/℃以上としてもよい。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、270℃から290℃の範囲における平均線膨張係数αが、例えば、20ppm/℃以上80ppm/℃以下であり、好ましくは22ppm/℃以上75ppm/℃以下であり、より好ましくは25ppm/℃以上70ppm/℃以下である。平均線膨張係数αを上記上限値以下とすることにより、高温環境下における寸法安定性を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物において、熱機械分析測定前の縦方向の長さを基準長Lとし、前記硬化物を175℃で4時間保持したときの前記基準長Lからの熱膨張量をLとしたとき、L/L×100で示される寸法収縮率が、例えば、1%以下であり、好ましくは0.9%以下であり、より好ましくは0.8%以下である。これにより、耐熱性および寸法安定性を向上させることができる。なお、上記寸法収縮率の下限値は0%以上でもよい。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、周波数10Hzの動的粘弾性測定で得られるTanδのピーク温度が、例えば、120℃以上300℃以下であり、好ましくは130℃以上290℃以下であり、より好ましくは140℃以上280℃以下である。Tanδのピーク温度を上記下限値以上とすることにより、高温環境下における熱的特性を維持することができ、耐熱性を高めることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、室温25℃における貯蔵弾性率E25が、例えば、10GPa以上100GPa以下であり、好ましくは15GPa以上90GPaであり、より好ましくは20GPa以上80GPa以下である。貯蔵弾性率E25を上記下限値以上とすることにより、機械的強度を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、150℃における貯蔵弾性率E150が、例えば、1GPa以上100GPa以下であり、好ましくは3GPa以上90GPa以下であり、より好ましくは5GPa以上80GPa以下である。貯蔵弾性率E150を上記下限値以上とすることにより、高温環境下において高強度であり、形状安定性に優れた硬化物を実現できる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、室温25℃における曲げ強度が、例えば、70MPa以上1000MPa以下であり、好ましくは80MPa以上800MPa以下であり、より好ましくは90MPa以上500MPa以下である。室温25℃における曲げ強度を上記下限値以上とすることにより、機械的強度を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、室温25℃における曲げ弾性率が、例えば、10GPa以上100GPa以下であり、好ましくは12GPa以上80GPa以下であり、より好ましくは15GPa以上50GPa以下である。室温25℃における曲げ弾性率を上記下限値以上とすることにより、機械的強度を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の、100℃の熱水に24時間浸漬させたときの吸水率が、例えば、1wt%以下であり、好ましくは0.8wt%以下であり、より好ましくは0.5wt%である。これにより、耐吸水性を高めることができるため、信頼性を向上させることができる。なお、上記吸水率の下限値は特に限定されないが、例えば、0wt%以上でもよい。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物と銅との、室温25℃における線膨張係数の差が、例えば、10ppm/℃以下であり、好ましくは9ppm/℃以下であり、より好ましくは8ppm/℃以下である。これにより、銅コイルとの線膨張係数の差分を小さくすることが可能であるため、クラックや変形の発生を抑制することができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が、例えば、2W/m・K以上であり、好ましくは2.5W/m・K以上であり、より好ましくは3W/m・K以上である。これにより、放熱性に優れた硬化物を実現できる。なお、熱伝導率の上限値は、特に限定されないが、例えば、100W/m・K以下としてもよい。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物に50mT、50kHzの交流磁場を印加した際の鉄損が、例えば、500kW/m以下であり、好ましくは300kW/m以下であり、より好ましくは150kW/m以下である。これにより、低磁気損失性に優れた硬化物を実現できる。
本実施形態では、たとえば樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記特性を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、磁性体粉末や非磁性体粉末を含むフィラーの含有量や、磁性体粉末として平均粒子径が互いに異なる2種の粒子を用いること等フィラーの粒度分布を適切に制御すること、磁性体粉末を表面処理することが、上記特性を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
次に本実施形態の樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、上述の熱硬化性樹脂および磁性体粉末などの原料成分を混合する工程を含むことができる。この磁性体粉末は、鉄基粒子および微小粒子を含む混合粉体を用いることができる。また、磁性体粉末やそれに含まれる鉄基粒子は上述の表面処理が実施されていてもよい。
上記表面処理工程の一例としては、第1粒子にプラズマ処理を施す工程(i)と、工程(i)でプラズマ処理が施された第1粒子とカップリング剤とを反応させる工程(ii)と、を含むことができる。
(工程(i))
まず、第1粒子にプラズマ処理を施す。このとき、第1粒子の表面に対して均一にプラズマ処理を施すことが好ましい。これにより、第1粒子の表面を活性化させ、カップリング剤を効率よく反応させることができる。均一にプラズマ処理を施すには、例えば、第1粒子を空中に分散させてプラズマ処理する方法が挙げられる。
また、プラズマ処理は、酸素プラズマ処理であるのが好ましい。これにより、第1粒子の表面に対して効率よくOH基を修飾することができる。
酸素プラズマ処理の圧力は、特に限定されないが、100〜200Paであることが好ましく、120〜180Paであることがより好ましい。
酸素プラズマ処理における処理ガスの流量は、特に限定されないが、1000〜5000mL/分であることが好ましく、2000〜4000mL/分であることがより好ましい。
酸素プラズマ処理の出力は、特に限定されないが、100〜500Wであることが好ましく、200〜400Wであることがより好ましい。
酸素プラズマ処理の処理時間は、上述した各種条件に応じて適宜設定されるが、5〜60分であることが好ましく、10〜40分であることがより好ましい。
また、酸素プラズマ処理を施す前に、さらにアルゴンプラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、第1粒子の表面にOH基を修飾するための活性点を形成することができるので、OH基の修飾をより効率よく行うことができる。
アルゴンプラズマ処理の圧力は、特に限定されないが、10〜100Paであることが好ましく、15〜80Paであることがより好ましい。
アルゴンプラズマ処理における処理ガスの流量は、特に限定されないが、10〜100mL/分であることが好ましく、20〜80mL/分であることがより好ましい。
アルゴンプラズマ処理の出力は、100〜500Wであることが好ましく、200〜400Wであることがより好ましい。
アルゴンプラズマ処理の処理時間は、5〜60分であることが好ましく、10〜40分であることがより好ましい。
(工程(ii))
次に、工程(i)でプラズマ処理が施された直後の第1粒子と上記カップリング剤とを反応させる。この方法としては、例えば、工程(i)でプラズマ処理が施された直後の第1粒子をカップリング剤の希釈溶液に浸漬したり、第1粒子にカップリング剤を直接噴霧したりする方法が挙げられる。これにより、反応がより進行し易くなり、第1粒子の表面をより改質し易くなる。なお、プラズマ処理が施された直後とは、プラズマ処理を施してから0〜24時間の範囲をいう。
カップリング剤の使用量は、第1粒子の100質量部に対して、0.05〜1質量部であるのが好ましく、0.1〜0.5質量部であるのがより好ましい。
カップリング剤と反応させるときの溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
カップリング剤の使用量は、溶媒100質量部に対して、0.1〜2質量部であるのが好ましく、0.5〜1.5質量部であるのがより好ましい。
また、カップリング剤との反応時間(例えば希釈溶液に対する浸漬時間等)は、1〜24時間であることが好ましい。
このような製造方法によれば、樹脂組成物と配合した際の流動性を高められる磁性体粉末を効率よく製造することができる。
以上により、表面処理された第1粒子や第2粒子等の鉄基粒子を含む磁性体粉末を準備することができる。
次に、磁性体粉末、熱硬化性樹脂および、必要に応じてその他の添加物を、ミキサーを用いて混合した後、ロールを用いて、例えば120℃、5分混練することにより混練物を得る。得られた混練物を冷却後粉砕することにより、粉末状の樹脂組成物(成形材料)を得ることができる。なお、その後、必要に応じて粉末状の樹脂組成物を打錠し、顆粒状、タブレット状に圧粉してもよい。これにより、トランスファー成形に適する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物を室温25℃で固形とすることにより、搬送性や保管性を高めることが可能である。
このような樹脂組成物は、例えばトランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、プレス成形法等の各種成形法により成形される。これにより、熱硬化性樹脂が溶融するとともに流動し、目的とする形状に成形される。この中でも、本実施形態の樹脂組成物は、トランスファー成形に好適に用いることができる。
その後、得られた樹脂組成物を硬化することにより、成形体(硬化物)が得られる。このような成形体は、インダクタ中の磁性コアや、磁性コアおよびコイルを封止する外装部材に使用することができる。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物で構成された外装部材を備える構造体(一体型インダクタ)の概要について図1を用いて説明する。
図1(a)は、構造体100の上面からみた構造体の概要を示す。図1(b)は、図1(a)におけるA−A’断面視における断面図を示す。
本実施形態の構造体100は、図1に示すように、コイル10および磁性コア20を備えることができる。磁性コア20は、空芯コイルであるコイル10の内部に充填されている。コイル10および磁性コア20は、外装部材30(封止部材)で封止されている。磁性コア20および外装部材30は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物で構成することができる。磁性コア20および外装部材30は、シームレスの一体部材として形成されていてもよい。
本実施形態の構造体100の製造方法としては、例えば、コイル10を金型に配置し、本実施形態の樹脂組成物を用いて、トランスファー成形等の金型成形することにより、当該樹脂組成物を硬化させて、コイル10中に充填された磁性コア20およびこれらの周囲に外装部材30を一体化形成することができる。このときコイル10は、巻線の端部を外装部材30の外部に引き出した不図示の引き出し部を有してもよい。
コイル10は、通常、金属線の表面に絶縁被覆を施した巻線を巻回した構造により構成される。金属線は、導電性の高いものが好ましく、銅、銅合金が好適に利用できる。また、絶縁被覆は、エナメルなどの被覆が利用できる。巻線の断面形状は、円形や矩形、六角形などが挙げられる。
一方、磁性コア20の断面形状は、特に限定されないが、例えば、断面視において、円形形状や、四角形や六角形などの多角形状とすることができる。磁性コア20は、本実施形態の樹脂組成物のトランスファー成形品で構成されるため、所望の形状を有することが可能である。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物によれば、成形性および高透磁率などの磁気特性に優れた磁性コア20および外装部材30を実現できるため、これらを有する構造体100(一体型インダクタ)においては、低磁気損失が期待される。また、機械的特性に優れた外装部材30を実現できるため、構造体100の耐久性や信頼性、製造安定性を高めることが可能である。このため、本実施形態の構造体100は、昇圧回路用や大電流用のインダクタに用いることができる。
以上、実施形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
<樹脂組成物の調製>
各実施例、および各比較例のそれぞれについて、次のようにして樹脂組成物を調製した。まず、表2に示す原料成分およびその配合比率に従い、各原料成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物をロール混練した後、冷却、粉砕して、打錠成形することでタブレット状の樹脂組成物を得た。
(熱硬化性樹脂)
・エポキシ樹脂1:エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、E1032H60、室温25℃で固形)
・エポキシ樹脂2:エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YL6810、室温25℃で固形)
・エポキシ樹脂3:ビフェニルアラルキル型構造を含むエポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000、25℃で固形)
(硬化剤)
・フェノール樹脂1:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−HF−3、室温25℃で固形)
・芳香族ジアミン1:2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(セイカ株式会社製、BAPP、25℃で固形、融点128℃)
・芳香族ジアミン2:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(セイカ株式会社製、TPE−R、25℃で固体、融点116℃)
(離型剤)
・離型剤1:合成ワックス(クラリアントケミカルズ(株)製、エステルワックスWE−4)
(硬化促進剤)
・イミダゾール系硬化促進剤1:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製、キュアゾール2PZ−PW)
(磁性体粉末)
・鉄基粒子1:アモルファス磁性粉(エプソンアトミックス(株)製、KUAMET6B2、平均粒子径50μm、球形度0.85)
・鉄基粒子2:合金鋼粉末(大同特殊鋼(株)製、DAPMSC5、平均粒子径10μm、球形度0.80)
・鉄基粒子3:アモルファス磁性粉(エプソンアトミックス(株)製、KUAMET6B2(鉄基粒子1とは分級の篩の目が異なるもの)、平均粒子径25μm、球形度0.88)
微小粒子1:カルボニル鉄粉(BASF社製、CIP−HQ、平均粒子径2μm、球形度0.90)
Figure 2019080060
(非磁性体粉末)
・非磁性粒子1:シリカ(SO−25R、アドマテックス(株)製、平均粒子径0.5μm、球形度0.92)
・非磁性粒子2:シリカ(SO−32R、アドマテックス(株)製、平均粒子径1.5μm、球形度0.93)
Figure 2019080060
実施例1において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して70体積%であり、微小粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して8体積%である。実施例2において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して55体積%であり、微小粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して23体積%である。実施例3において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して70体積%であり、非磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して8体積%である。
実施例4において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して70体積%である。実施例5において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して70体積%である。実施例6において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して65体積%である。
比較例1において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して50体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して41体積%であり、微小粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して9体積%である。比較例2において、磁性体粉末の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して78体積%であり、鉄基粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して55体積%であり、微小粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して23体積%である。
Figure 2019080060
<樹脂組成物の評価>
上記実施例・比較例で得られた樹脂組成物について、以下の評価項目に基づいて評価を行った。評価結果を表2,3に示す。表3中の「−」は未測定を示す。
(溶融粘度(175℃))
直径0.5mm、長さ10mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所社製CFT−500D)を使用し、測定温度175℃、荷重40kgfの条件下で、得られた樹脂組成物を投入して測定した最低粘度の、3回の平均値を175℃における溶融粘度(Pa・s)とした。評価結果を表2に示す。
(ゲル化時間)
ゲル化時間は、以下のようにして求めた。175℃に設定したホットプレート上に、得られた樹脂組成物3gを置いてゲル化するまでの時間を測定してゲル化時間(秒)とした。評価結果を表2に示す。
(成形性)
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、小構造:15mm×4mm×4mmおよび、大構造:50mm×50mm×10mmのそれぞれの成形品を作製し、得られた成形品の外観を目視で確認し、下記の評価基準に基づいて、材料未充填の有無を確認した。評価結果を表2に示す。
<成形性の評価基準>
上記の成形品を3個作製し、3個の成形品における材料未充填の有無を評価した。
○:3個中3個の成形品に材料未充填がない
△:3個中1個あるいは2個の成形品に材料未充填がある
×:3個中3個の成形品に材料未充填がある
(成形時の金型からの樹脂漏れ)
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、小構造:15mm×4mm×4mmおよび大構造:50mm×50mm×10mmの成形品を作製し、成形後の金型を目視で確認し、下記の評価基準に基づいて、樹脂漏れの有無を確認した。評価結果を表2に示す。
<成形時の金型からの樹脂漏れ評価基準>
○:小構造および大構造の成形時に、金型上に樹脂漏れがない
×:小構造および大構造の成形時に、金型上に樹脂漏れがある
比較例1の樹脂組成物は成形時に樹脂漏れが生じるために、比較例2の樹脂組成物は成形不良のために、以降の各種評価を実施することができなかった。
また、比較例2において、鉄基粒子3を100wt%に対して、他の成分(エポキシ樹脂1,フェノール樹脂1,硬化促進剤1の合計)2.5wt%を配合したものを比較例3とし、比較例2において、鉄基粒子2を100wt%に対して、他の成分(エポキシ樹脂1,フェノール樹脂1,硬化促進剤1の合計)2.5wt%を配合したものを比較例4とした。これらの比較例3、4のいずれも、測定温度175℃においてフローしないため、高化式フローテスターを用いて溶融粘度を算出できなかったため、比較例2よりも溶融粘度が高いものに相当すると判断した。
(ガラス転移温度(Tg)、平均線膨張係数α1(25−70℃)、平均線膨張係数α2(270−290℃))
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、15mm×4mm×4mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そして、得られた試験片に対して、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃〜400℃、昇温速度5℃/分の条件下で、ガラス転移温度(℃)、25−70℃における平均線膨張係数α1(ppm/℃)、270−290℃における平均線膨張係数α2(ppm/℃)を測定した。評価結果を表3に示す。
(寸法収縮率)
得られた樹脂組成物を用いて、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で作製した試験片に対して、JIS K 6911に準じて、寸法収縮率の測定を行った。このとき、熱機械分析測定前の縦方向の長さを基準長Lとし、試験片を175℃で4時間保持したとき基準長Lからの熱膨張量をLとしたとき、寸法収縮率をL/L×100とした。評価結果を表3に示す。
(tanδのピーク温度、貯蔵弾性率(25℃)、貯蔵弾性率(150℃))
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、50mm×10mm×1mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そして、得られた試験片に対して、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製、DMA100)を用いて、測定温度範囲0℃〜300℃、昇温速度5℃/分、周波数10Hzの条件下での動的粘弾性測定により、tanδのピーク値における温度(℃)、25℃における貯蔵弾性率(GPa)、150℃における貯蔵弾性率(GPa)を測定した。評価結果を表3に示す。
(曲げ強度(25℃))
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そして得られた試験片の25℃における曲げ強度(MPa)をJIS K 6911に準拠して測定した。評価結果を表3に示す。
(曲げ弾性率(25℃))
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そして得られた試験片の25℃における曲げ弾性率(GPa)をJIS K 6911に準拠して測定した。評価結果を表3に示す。
(吸水率)
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形装置(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、直径50mmΦ×厚さ4mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そして得られた試験片を100℃、24時間で煮沸処理して、下記の式で算出される吸水率(wt%)を測定した。評価結果を表3に示す。
吸水率=(煮沸処理後の試験片の重量増加分/煮沸処理前の試験片の重量)×100
(熱伝導率)
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、幅10mm、厚み1mm、長さ10mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そしてレーザーフラッシュ法を用いて、得られた試験片の厚み方向における熱伝導率(W/mk)を測定した。評価結果を表3に示す。
(鉄損(50mT,50kHz))
得られた樹脂組成物を低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、外径27mmΦ、内径15mmΦ、厚み3mmのリング状成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、リング状試験片を作製した。得られたリング状試験片に対してBHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bm:50mT、測定周波数:50kHzにおけるヒステリシス損Wh(kW/m)及び渦電流損We(kW/m)を測定し、ヒステリシス損Wh+渦電流損Weを鉄損(kW/m)として算出した。評価結果を表3に示す。
実施例1〜6の樹脂組成物は、比較例1の樹脂組成物と比べて、成形時に樹脂漏れが抑制されており、製造安定性に優れることが判明した。詳細なメカニズムは定かでないが、溶融粘度が低すぎる比較例1において、成形時に金型から樹脂漏れが発生するため、特に大構造の成形過程において、大量の樹脂漏れが発生するものと考えられる。
実施例1〜6の樹脂組成物は、比較例2の樹脂組成物と比べて、大構造における成形性に優れることが判明した。ここで、上記成形性の評価項目において、大構造は、車載用リアクトル等のコイルにおいて、大型の磁性コアや外装部材における成形性を評価する指標、小構造は、半導体パッケージを封止する小型の封止部材における成形性を評価する指標を表す。詳細なメカニズムは定かでないが、溶融粘度が高すぎる比較例2において、成形材料の流動距離が短くなるため、成形サイズに制約が生じ、結果として、大構造の成形過程においても未充填が発生するものと考えられる。
また、実施例1〜6の樹脂組成物は、機械的強度、耐吸水性、高温環境下における特性、低磁気損失性などのリアクトル(コイル)における、磁性コアおよび外装部材の要求特性を備えるものであることが分かった。したがって、実施例1〜6の樹脂組成物(インダクタ成形用樹脂組成物)により、空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと空芯コイルを封止する外装部材が一体成形(トランスファー成型)することにより、製造安定性とともに、低磁気損失や機械的強度に優れた構造体(一体型インダクタ)が得られることが分かった。また、実施例1〜6の樹脂組成物を用いたトランスファー成形において、線径:1.6mmφの丸線の空芯コイルに変形は生じないことが判明した。
100 構造体
10 コイル
20 磁性コア
30 外装部材

Claims (25)

  1. 空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと前記空芯コイルを封止する外装部材が一体成形された一体型インダクタを成形するためのインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    熱硬化性樹脂と、
    磁性体粉末と、
    前記磁性体粉末の含有量が、当該インダクタ成形用樹脂組成物の固形分全体に対して、50質量%以上であり、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の、175℃における溶融粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が、120℃以上300℃以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、室温25℃から70℃の範囲における平均線膨張係数αが、30ppm/℃以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、270℃から290℃の範囲における平均線膨張係数αが、20ppm/℃以上80ppm/℃以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物において、熱機械分析測定前の縦方向の長さを基準長Lとし、前記硬化物を175℃で4時間保持したときの前記基準長Lからの熱膨張量をLとしたとき、L/L×100で示される寸法収縮率が、1%以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、周波数10Hzの動的粘弾性測定で得られるTanδのピーク温度が、120℃以上300℃以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、室温25℃における貯蔵弾性率E25が、10GPa以上100GPa以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、室温25℃における曲げ強度が、70MPa以上1000MPa以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、室温25℃における曲げ弾性率が、10GPa以上100GPa以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物の、100℃の熱水に24時間浸漬させたときの吸水率が、1wt%以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    当該インダクタ成形用樹脂組成物の硬化物と銅との、室温25℃における線膨張係数の差が、10ppm/℃以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記熱硬化性樹脂の硬化剤を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  14. 請求項13に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記硬化剤が、フェノール系硬化剤または芳香族ジアミンを含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  15. 請求項1から14のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    離型剤を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  16. 請求項1から15のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記磁性体粉末が、平均粒子径が互いに異なる2種の粒子を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  17. 請求項1から16のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記磁性体粉末の含有量が、当該インダクタ成形用樹脂組成物の固形分全体に対して、90質量%以上である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  18. 請求項1から17のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記磁性体粉末が、平均粒子径が3μm以下である微小粒子を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  19. 請求項18に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記微小粒子の含有量は、前記磁性体粉末全体に対して、1質量%以上40質量%以下である、インダクタ成形用樹脂組成物。
  20. 請求項1から19のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記磁性体粉末が、3μm超180μm以下の平均粒子径であり、鉄の含有率が85質量%以上である鉄基粒子を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  21. 請求項1から20のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    前記磁性体粉末が、球状粒子を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  22. 請求項1から21のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    低応力剤を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  23. 請求項1から22のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    カップリング剤を含む、インダクタ成形用樹脂組成物。
  24. 請求項1から23のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物であって、
    トランスファー成形に用いる、インダクタ成形用樹脂組成物。
  25. 空芯コイルと、
    前記空芯コイルのコイル内部に充填された磁性コアと、
    前記空芯コイルを封止する外装部材と、を備えており、
    前記磁性コアと前記外装部材とが、請求項1から24のいずれか1項に記載のインダクタ成形用樹脂組成物の硬化物で一体成形された、一体型インダクタ。
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