JP2013200141A - 角度検出装置およびモータ駆動制御装置 - Google Patents

角度検出装置およびモータ駆動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】励磁周期の整数倍とモータの回転周期とが近接した場合、AD変換後の信号波の波形が0レベルの点を通過しないことが存在する。
【解決手段】一実施形態によれば、それぞれ励磁波を回転軸の回転角で振幅変調して得られた位相が異なる複数相の信号波をAD変換するAD変換部22と、励磁信号およびAD変換部22から複数相の信号波が入力され、励磁信号の位相をこの位相および信号波の位相間の位相差分だけ遅延させる補正部23と、その位相が補正された励磁信号RSに同期してAD変換部22からの出力信号を同期検波する検波器24と、検波器24の出力信号によって推定回転角を算出し、推定回転角をAD変換部22へ出力する角度計算部25とを備えた角度検出装置10が提供される。
【選択図】図2

Description

一実施形態は角度検出装置およびモータ駆動制御装置に関する。
車両のシステムは、レゾルバの励磁コイルへ励磁波を与える。システムは、レゾルバのsin相コイル及びcos相コイルから2つの信号波を受ける。励磁波は一定の振幅レベルを有する正弦波状の波形を持つ。信号波とは励磁波が回転角によって振幅変調されて得られる波形を持つ振幅変調波を言う。例えば2相の信号波はsinθ・sinωt、及びcosθ・sinωtである。ωは励磁波又は励磁信号の角周波数を表す。
従来、レゾルバが出力する交流信号をAD(アナログtoディジタル)変換し、交流信号の振幅がゼロの点を検出するレゾルバディジタルコンバータが知られている(例えば特許文献1、2参照)。2相の交流信号の電圧レベルがゼロレベルにクロスするゼロクロス点の時間の差を測定することにより回転角を求める回路が知られている(例えば特許文献3、4参照)。
特開2011−89885号公報 米国特許出願公開第2011/0090104号明細書 特開平09−37585号公報 特開2010−110147号公報
しかし、励磁周期の整数倍とモータの回転周期とが近接した場合、AD変換後の信号波の波形が0レベルの点を通過しないことが存在する。結果として、位相の補正値に偏りが生じ、角度検出値の誤差が増える。
一例として励磁信号のパルス信号の繰返し周波数は10kHzであり、モータの回転の角周波数が2.5kHzであるとする。励磁周期(1/10kHz)がモータ回転周期(1/2.5kHz)の4倍であるとする。レゾルバディジタルコンバータはAD変換後のディジタルの信号sinθ・sinωt及び信号cosθ・sinωtをそれぞれハイパスフィルタへ入力する。ハイパスフィルタは各信号を歪ませる。信号波の一周期のうち、ゼロクロス点として検出されるべき位相点において信号波の振幅が0レベルに届かないことが起きる。レゾルバディジタルコンバータはゼロクロス点を必ずしも検出することができない。
このような課題を解決するため、一実施形態によれば、それぞれ励磁波を回転軸の回転角で振幅変調して得られた位相が異なる複数相の信号波をアナログ/ディジタル変換するAD変換部と、励磁信号および前記AD変換部から前記複数相の信号波が入力され、前記励磁信号の位相をこの位相および前記信号波の位相間の位相差分だけ遅延させる補正部と、前記位相が補正された励磁信号に同期して前記AD変換部からの出力信号を同期検波する検波器と、前記検波器の出力信号によって推定回転角を算出し、前記推定回転角を前記AD変換部へ出力する角度計算部と、を備えたことを特徴とする角度検出装置が提供される。
また、別の一実施形態によれば、モータのステータおよびロータの何れか一方に設けられ、励磁波を印加される励磁コイルと、前記ロータおよび前記ステータの何れか他方に設けられ、それぞれ前記励磁コイルへの前記励磁波を前記ロータの回転軸の回転角で振幅変調し、位相が異なる複数相の信号波を生成する検出コイルと、前記複数相の信号波をそれぞれ、アナログ/ディジタル変換するAD変換部と、励磁信号および前記AD変換部から前記複数相の信号波が入力され、前記励磁信号の位相をこの位相および前記信号波の位相間の位相差分だけ遅延させる補正部と、前記位相が補正された前記励磁信号に同期して前記AD変換部からの出力信号を同期検波する検波器と、前記検波器の出力信号によって前記回転角を算出し、算出した前記回転角を前記AD変換部へ出力する角度計算部と、前記角度計算部が算出した前記回転角により前記モータへの駆動電流を生成するインバータ回路を制御する制御部とを備えたことを特徴とするモータ駆動制御装置が提供される。
実施の形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置を含む車両の構成例を示す図である。 実施の形態に係る角度検出装置のブロック図である。 (a)から(d)は実施の形態に係る角度検出装置に接続されるレゾルバの入力及び出力の複数の波形例をそれぞれ示す図である。 (a)は実施の形態に係る角度検出装置のAD変換部内の構成例を示す図であり、(b)は角度検出装置の角度計算部内の構成例を示す図である。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部のブロック図である。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部に用いられる2乗和平均計算部内の平均値検出部のブロック図である。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部における理想状態の信号波の位相補正を説明するための複数のタイムチャートである。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部における位相が遅れた信号波の位相補正を説明するための複数のタイムチャートである。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部における位相が進んだ信号波の位相補正を説明するための複数のタイムチャートである。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部に用いられる検出部内の立上り検出部を説明するための複数の図である。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部に用いられる検出部内の位相補正方向出力部のブロック図である。 実施の形態に係る角度検出装置の補正部に用いられる位相補正量調整部のブロック図である。 実施の形態に係る角度検出装置のAD変換部の出力波形例を示す図である。 実施形態の変形例に係る角度検出装置の補正部に用いられる検出部を説明するための複数の図である。 実施形態の変形例に係る角度検出装置の補正部に用いられる位相補正量調整部のブロック図である。
以下、実施の形態に係る角度検出装置およびモータ駆動制御装置について、図1〜図15を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
図1は実施の形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置を含む車両の構成例を示す図である。
レゾルバディジタルコンバータ10はモータ11の回転軸の回転角をレゾルバ12からの信号を用いて検出するディジタル回路である。回転角あるいは回転角度位置とはモータ11の回転軸に取付けられたレゾルバロータ13の回転角を言う。
モータ駆動制御装置14は、2相の巻線であるcos相コイル17、sin相コイル18と、レゾルバディジタルコンバータ10と、インバータ制御部62(制御部)とを有する。モータ駆動制御装置14はモータ11への駆動電流値である指令値を求め、この指令値に応じた3相の電流をレゾルバ出力信号に基づき生成し、各相の電流を対応の3つのライン15からモータ11へ供給するためのLSI(large scale integration)あるいはプロセッサである。
モータ11はブラシレスの交流のモータである。モータ11は例えば電動パワーステアリング装置の駆動用である。
レゾルバ12はモータ11の回転角センサである。レゾルバ12はモータステータに固定されたレゾルバステータ16と、このレゾルバステータ16に設けられたcos相コイル17及びsin相コイル18と、モータロータと共に回転する上記レゾルバロータ13と、このレゾルバロータ13に設けられた励磁コイル19とを備えている。
cos相コイル17及びsin相コイル18は互いに90度の位相差をもって配置されている。励磁コイル19はモータロータ及びレゾルバロータ13と共に回転する。
励磁信号発生器20は励磁信号及び励磁パルス信号を発生させる。励磁信号とは正弦波状の波形を持つ励磁信号sinωtを言う。励磁パルス信号とは励磁信号から、励磁信号の周期と同じ繰返し周期を有するパルス信号列に変換した信号を言う。sinωtはsin(2π/T)・tを表す時間関数である。ここでπは円周率、Tは励磁信号の一周期をそれぞれ表し、tは時間を表す。また、ωTはdeg又はradで表される。
励磁信号発生器20は、励磁波を出力する励振器と、励振器の出力を増幅する増幅器と、増幅出力された励磁波の振幅レベルを制限するコンパレータとを有する。励磁信号発生器20は励振器から出力される励磁信号sinωtを励磁コイル19へ入力する。励磁信号発生器20はコンパレータから出力される励磁信号をレゾルバディジタルコンバータ10へ入力する。
モータ駆動制御装置14は、スイッチングインバータ60(インバータ回路)を制御するインバータ制御部62を備える。スイッチングインバータ60はモータ11への駆動電流を生成する。スイッチングインバータ60はそれぞれモータ11への3相の電圧を生成する複数のスイッチング素子を有する。インバータ制御部62はレゾルバディジタルコンバータ10が算出した回転角及び指令値によってスイッチングインバータ60の複数のスイッチング素子をオンオフ駆動する。更に車両のシステムは、モータ駆動電流の指令値を求める計算部61と、操舵トルク用の舵角センサ63と、ステアリングの操舵角用のトルクセンサ64と、車速用の車速センサ65とを備える。
図2はレゾルバディジタルコンバータ10のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
レゾルバディジタルコンバータ10はレゾルバ12により生成された2相のレゾルバ出力信号をポート21より受ける。2相のレゾルバ出力信号とは互いに位相がπ/2異なるsin相信号sinφ及びcos相信号cosφを言う。sin相信号sinφはsin相コイル18からのsinωt・sinθで表される。φは時間関数を、θはレゾルバディジタルコンバータ10が推定したモータ11の回転角をそれぞれ表す。cos相信号cosφはcos相コイル17からのsinωt・cosθで表される。
図3(a)〜図3(d)にレゾルバ12の入力及び出力の複数の波形例を示す。図3(a)は励磁信号sinωtの波形を示す図である。励磁信号sinωtは励磁周期Tを有する励磁波である。図3(b)は励磁信号RSの波形を示す図である。励磁信号RSは複数の矩形パルスの繰返し波形を有する。励磁信号RSは励磁周期Tを有する。図3(c)はsin相信号の波形を示す図である。図3(d)はcos相信号の波形を示す図である。
cos相信号は励磁信号sinωtをレゾルバロータ13(回転軸)の回転角θで振幅変調して得られる。cos相信号の振幅の包絡線は励磁周期Tよりも長い周期で正弦波状に変化している。
sin相信号もcos相信号の例と同様である。励磁信号RSの位相に対してcos相信号の位相は遅れる。励磁信号RSの位相に対してsin相信号の位相は遅れる。DTは位相遅れ時間を表す。
図2のレゾルバディジタルコンバータ10は、アナログのsin相信号及びcos相信号をAD変換し差分信号波sin(θ−φ)・sinωtを出力するAD変換部22と、AD変換部22からディジタルのsin相信号及びcos相信号が入力され、励磁信号発生器20から入力された励磁信号RSの位相を遅延させる位相補正部23(補正部)とを備えている。
更にレゾルバディジタルコンバータ10は、AD変換部22からの差分信号波sin(θ−φ)・sinωtを同期検波する検波器24と、検波器24からの差分信号波によって回転角θ(推定回転角)を算出する角度計算部25とを備えている。回転角θとは推定されたθの値データを言う。検波器24による検波は位相補正部23が位相を補正した励磁信号RSに同期する。角度計算部25は回転角θをAD変換部22へ与える。
AD変換部22は、第1のΔΣAD変換器26と、第1のHPF(ハイパスフィルタ)27と、第1の乗算器28とを備えている。第1のΔΣAD変換器26はアナログのsin相信号を変換し離散的なsin相信号を出力する。第1のHPF27はΔΣAD変換器26から出力される信号の高周波成分を通過させる。第1の乗算器28は、HPF27からの出力信号と、角度計算部25から入力される回転角θとを乗算する。
AD変換部22は、アナログのcos相信号用に、第2のΔΣAD変換器26、第2のHPF27及び第2の乗算器28を備えている。更にAD変換部22は、第1の乗算器28の出力から、第2の乗算器28の出力を減算する減算器29を備えている。
図4(a)は第1のΔΣAD変換器26のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
ΔΣAD変換器26は、オーバサンプリング周波数fosでアナログ信号をサンプリングしてパルス密度変調信号を出力するΔΣ変調器26aと、ΔΣ変調器26aの出力に含まれる高周波ノイズを除去するLPF(ローパスフィルタ)26bと、LPF26bの出力データを間引き、得られた16ビットデータを基準サンプリング周波数で出力するデシメーションフィルタ26cとを備えている。
ΔΣAD変換器26はアナログ信号をオーバサンプリングし、必要な分解能を有するディジタル信号を生成する。例えば16ビットデータをΔΣAD変換器26は生成する。第2のΔΣAD変換器26の構成は第1のΔΣAD変換器26の構成と同じである。
図2の第1のHPF27は例えば信号の微分回路である。第1の乗算器28はsinφに回転角θの余弦関数値cosθを乗じる。第1の乗算器28は(sinθ・sinωt)・cosφを出力する。
第2のHPF27は第1のHPF27の構成と同じ構成を有する。第2の乗算器28はcosφに回転角φの正弦関数値sinφを乗じる。第2の乗算器28は(cosθ・sinωt)・sinφを出力する。
減算器29は第1の乗算器28の出力から第2の乗算器28の出力を減算する。減算器29は差分信号波sin(θ−φ)・sinωtを出力する。
減算器29による信号への物理的な演算結果は式(I)のようになる。差分信号波sin(θ−φ)・sinωtは励磁信号sinωtが回転角φ及び回転角θ間の差分信号sin(θ−φ)で振幅変調された波形を有する。
(sinθ・sinωt)・cosφ−(cosθ・sinωt)・sinφ
=(sinθ・cosφ−cosθ・sinφ)・sinωt
=sin(θ−φ)・sinωt …(I)
また、図2の位相補正部23は励磁信号RSの位相を遅延させる。位相補正部23による遅延の量はDT(図3(d)参照)である。遅延の量DTは、2相の信号波の位相及び励磁信号位相間の位相遅れ(位相差)である。
図5は位相補正部23のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
位相補正部23は、cos相信号の2乗及びsin相信号の2乗を加算して加算結果の時間平均値を計算し、励磁周期Tの半分の周期を有する2乗和平均信号を出力する2乗和平均計算部34と、2乗和平均信号の振幅が0(基準レベル)であるタイミングでの2乗和平均信号の位相を検出し、位相ズレ量を求める0点検出部35(検出部)とを備えている。
位相ズレ量とは理想的な信号波形のゼロクロス点での位相と、実際の入力信号波形のゼロクロス点での位相との位相のズレ量を言う。位相ズレ量は2乗和平均信号の一励磁周期T内の値で表される。値は−90degから+90degの範囲内である。位相補正部23は2乗和平均信号を16ビットで出力する。
更に位相補正部23は、0点検出部35により求められた位相ズレ量によって2乗和平均信号の位相を補正する位相補正量調整部36と、ポート201、202、203、204とを備えている。位相補正部23はポート202から入力される16ビットの励磁信号RSに対して位相補正量調整部36からの位相補正量情報0、+1又は−1を加算する加算器37を備える。
2乗和平均計算部34は、ポート200からのsin相信号(sinθ・sinωt)を2乗する乗算器38と、ポート201からのcos相信号(cosθ・sinωt)を2乗する乗算器39と、乗算器38の出力及び乗算器39の出力を加算する加算器40とを備えている。
加算器40の出力は16ビットにより表される。10進数によるその値は常に0に等しいか又は0よりも大きい(図5中の加算器40の出力波形参照)。2乗和平均計算部34による信号への物理的な演算結果は式(II)のようになる。
(sinθ・sinωt)+(cosθ・sinωt)
=(sinθ+cosθ)・sinωt
=sinωt=(1−cos2ωt)/2 …(II)
更に2乗和平均計算部34は加算器40の出力の時間平均値を求める平均値検出部41と、加算器40の出力から平均値検出部41の出力を減算する減算器42とを備えている。
図6は平均値検出部41のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。平均値検出部41は入力16ビットデータにより表される値の時間平均を計算する。平均値検出部41は、それぞれパラメータαを第n番目の16ビットデータに乗算する16ビットの乗算器41aと、16ビットのフリップフロップ41bとを備える(同図は1ビット分だけを表している)。nは自然数を表し、例えばサンプリング時刻に相当する。
平均値検出部41は、フリップフロップ41bからの第n−1番目の16ビットデータにパラメータ(1−α)を乗算する乗算器41cと、乗算器41aの出力及び乗算器41cの出力を加算する加算器41dとを備える。パラメータα、α−1はともに0〜1の範囲の値である。
平均値検出部41による処理は、第n番目の16ビットデータから、1サンプリング前の第n−1番目の16ビットデータの決められたパーセントの量を引く減算である。サンプリングの回数が増加すると、平均値検出部41は入力された16ビットデータを平均値に収束させる。
2乗和平均計算部34はsin相信号の2乗及びcos相信号の2乗を加算し、加算結果から加算結果の時間平均値を引く。2乗和平均計算部34は元のsin相信号の周波数の2倍の周波数で振動する2乗和平均信号を出力する(図5中の2乗和平均計算部34の出力波形参照)。
平均値検出部41は16ビットデータの初期値を与えられた後、2乗和平均信号の振幅の平均値を常に加算することを続ける。あるいは平均値検出部41は、2乗和平均信号の振幅の平均値を決められた時間間隔毎にリセットする。平均値検出部41はリセット、加算の再開を繰返してもよい。
図5の0点検出部35は2乗和平均信号の振幅がゼロクロスするタイミングを検出する。2乗和平均信号は一励磁周期T内に4つのゼロクロス点を有する。
図7(d)に理想状態における2乗和平均信号の波形例を示す。2乗和平均信号53はゼロクロス点55、56、57及び58を有する。理想状態における2乗和平均信号53のゼロクロス点55〜58の4つの位相を基準位相として0点検出部35は用いる。理想状態では位相ズレの量が0である。
図8(d)に図7(d)の基準位相よりも遅れた位相を有する2乗和平均信号53を示す。図9(d)に図7(d)の基準位相よりも進んだ位相を有する2乗和平均信号53を示す。
図7(d)では2乗和平均信号53の最初のゼロクロス点55は位相区間0、1の境界上に位置する。図8(d)ではゼロクロス点55は位相区間1、2の境界上に位置する。図9(d)ではゼロクロス点55は位相区間7、0の境界上に位置する。
図8(d)に示されるように、本来位相区間0、1の境界上に出現すべきゼロクロス点55が、1区間幅だけ遅れた位置に出現している。図9(d)に示されるように、本来位相区間0、1の境界上に出現すべきゼロクロス点55が、1区間幅だけ進んだ位置に出現している。
0点検出部35による処理はゼロクロス点55での2乗和平均信号53の位相を検出する。0点検出部35は、例えば位相区間0、1の境界上といった基準位置(励磁周期T内での位相の基準位相位置)からの位相ズレ量を励磁鋸波信号50(励磁信号)の既知の基準位相タイミングにより求める。
0点検出部35は、入力された信号波形について、検出位相が位相区間0、1の境界からの遅れ又は進みを判定する。判定結果により0点検出部35は遅れた位相を早める方向又は進んだ位相を元に戻す方向を示す補正方向情報と、補正量情報とを生成する。
ゼロクロス点56、57、58に対する0点検出部35の処理もゼロクロス点55の例と実質同じである。
0点検出部35の構成について述べる。図5に戻って0点検出部35は、信号波形が立上り中に0レベルにクロスする立上りタイミングを検出する立上り検出部43と、信号波形が立下り中に0レベルにクロスする立下りタイミングを検出する立下り検出部44とを備える。信号波形とは2乗和平均信号53の波形を言う。
図10(a)は立上り検出部43の構成例を示す図である。立上り検出部43には例えばコンパレータ59が用いられる。コンパレータ59は例えば2本の入力端子を有する。一方の入力端子は電位0に接地される。
図10(b)はコンパレータ59へ入力される2乗和平均信号53の波形を示す図である。他方の入力端子からコンパレータ59は2乗和平均信号53を入力される。
図10(c)はコンパレータ59の出力信号例を示す図である。立上り検出部43によるゼロクロス検出のタイミングはLowからHighへの信号のポジティブエッジクロックに相当する。
立下り検出部44の構成は立上り検出部43の構成と実質同じである。立下り検出部44によるゼロクロス検出のタイミングはHighからLowへの信号のネガティブエッジクロックに相当する。立下り検出部44の動作の開始タイミングと、立上り検出部43の動作の開始タイミングとは異なる。
図5において0点検出部35は、立上り検出部43の出力側の2つの位相補正方向出力部45a、45bと、立下り検出部44の出力側の2つの位相補正方向出力部45c、45dとを備える(数字1、2、5、6及び3、4、7、0については後述する)。
図11は位相補正方向出力部45aのブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
位相補正方向出力部45aは一励磁周期Tの8等分割による位相区間の区間番号(番号)0、1、2、3、4、5、6、7と、それぞれ理想状態におけるゼロクロス位相の位置を表す基準位相位置とによって位相ズレの補正方向を出力する。
補正方向とは位相を進めるプラス方向と、位相を戻すマイナス方向とを言う。区間番号0〜7は励磁周期Tを分割して得られた8個の順番付きの位相区間である。区間番号0〜7は立上りタイミングにおける2乗和平均信号のゼロクロス位相が8個の位相区間の何れに属するかを表す。
位相補正方向出力部45aは、ディジタルの励磁信号51のディジタルの振幅レベルにより立上りタイミングのゼロクロス位相の区間番号を決定する振分け部300と、立上り又は立下りの検出パルス、区間番号0〜7及び基準位相位置によって補正方向及び位相ズレの補正量を出力する出力部301とを備える。AD変換後の励磁信号51(図7(b))は16ビットにより表されている。
位相補正方向出力部45aは、任意のゼロクロスが発生したときに、2乗和平均信号のゼロクロス点での位相が、位相区間0〜7のうちの何れかの内あるいは隣接する位相区間の境界上に位置するかを求める。位相補正方向出力部45aは位相位置を求めた後、位相補正方向及び補正量を求める。
図7(a)は各位相が基準位相位置に位置する励磁鋸波のタイムチャートである。同図の励磁鋸波信号50は図5中のポート202の出力に相当する。励磁周期Tは(1/10kHz)秒であるとする。励磁鋸波信号50は位相ズレの量の抽出処理のための元の波形である。
図7(b)は理想状態において位相を調整された後の励磁鋸波のタイムチャートである。同図の励磁鋸波51はポート203の出力に相当する。図7(c)は理想状態においてAD変換部22によるAD変換後のsin相信号のタイムチャートである。同図はポート200におけるsin相信号を示す。
図7(d)は理想状態において2乗和平均信号のタイムチャートである。2乗和平均信号53の周波数はsin相信号52の周波数の2倍である。図7(a)から図7(d)において各タイムチャートは時間軸を共有する。
また、励磁鋸波信号50はボトム値0x0000からトップ値0xffffまでの範囲の値をとる。0xは16進数を表す。励磁鋸波信号50の値は点54において0x4000である。
図8(a)から図8(d)に、位相が遅れた2乗和平均信号53の位相を補正するときの波形及び位相間の関係を示す。
図8(a)は位相が遅れた励磁鋸切信号50のタイムチャートである。図8(b)は位相遅れ状態において励磁鋸波51のタイムチャートである。図8(c)は位相遅れ状態においてsin相信号52のタイムチャートである。図8(d)は位相遅れ状態において2乗和平均信号53のタイムチャートである。
図9(a)から図9(d)に、位相が進んだ2乗和平均信号53の位相を補正するときの波形及び位相間の関係を示す。
図9(a)は位相が進んだ励磁鋸切信号50のタイムチャートである。図9(b)は位相進み状態において励磁鋸波51のタイムチャートである。図9(c)は位相進み状態においてsin相信号52のタイムチャートである。図9(d)は位相進み状態において2乗和平均信号53のタイムチャートである。
図7(a)から図9(d)の間で同じ符号は互いに実質同等な要素を表す。
位相補正方向出力部45aは加算器37からフィードバック入力される16ビットデータのうち上位3ビットによって2乗和平均信号53のゼロクロス時の信号波形の位相を求める。
遅れの図8(d)のように周期T内で最初の立上りゼロクロス点55が位相区間1、2間の境界上に位置する場合、位相補正方向出力部45aはAD変換後の励磁信号51の位相を早める。位相補正方向出力部45aによる16ビット位相データを進める量は1サンプリングレート分である。1サンプリングレートとは1区間幅に相当する時間長よりも十分短いサンプリング時間幅を指す。1サンプリングレートによって1サンプリング時間内のデータがシフトする。複数回数のシフトを繰返すことによって、図8(b)のように位相補正方向出力部45aは励磁信号51のデータを右に1区間幅動かす。
進みの図9(d)のように周期T内で最初の立上りゼロクロス点55が位相区間7、0間の境界上に位置する場合、位相補正方向出力部45aはAD変換後の励磁信号51の位相を1区間分遅くする。位相補正方向出力部45aは、16ビット位相データを1サンプリングレート分の量づつ遅らせる。複数回数のシフトを繰返すことによって、図9(b)のように位相補正方向出力部45aは励磁信号51のデータを左に1区間動かす。
位相補正方向出力部45aによる補正可能な位相ズレ量の最大量は2つの区間幅分の量である。2つの区間幅は2乗和平均信号53の位相90degに相当する。図7(d)の信号波形が2つの区間幅分の遅れ又は2つの区間幅の進みを位相補正方向出力部45aは補正する。図7(d)の位相区間0、1の境界上のゼロクロス点55が、たとえ同図の位相区間2内の終端の直前までズレたとしても、そのズレ量を位相補正方向出力部45aは補正する。
図11の振分け部300は、8個のアンドゲート205と、オアゲート206、207とを備える。8個のアンドゲート205にはそれぞれアンドゲート205間で共通の3ビットが入力される。3ビットとは16ビットの上位3ビットを言う。16ビットはAD変換後の励磁信号51の振幅がとる32767〜−32768の範囲を表す。
8個のアンドゲート205は相互に異なる3ビットパターンデータを入力される。3ビットパターンデータを予め位相補正方向出力部45aは記憶する。出力部301は、検出パルスの情報及びオアゲート206のオンによって回路を閉じるスイッチ208と、検出パルスの情報及びオアゲート207のオンによって回路を閉じるスイッチ209と、"プラス1"を表す信号を出力する演算器210と、"マイナス1"を表す信号を出力する演算器211とを備える。
位相補正方向出力部45b、45c、45dは位相補正方向出力部45aの構成と実質同じ構成を有する。
位相補正方向出力部45a〜45dのうち、位相補正方向出力部45a、45bは、立上り検出部43から立上り検出パルスを通知される。位相補正方向指令部45c、45dは、立下り検出部44から立下り検出パルスを通知される。
第1の位相補正方向出力部45aは立上りゼロクロス点での検出位相が位相区間1、2内(図8(d)参照)に出現する2乗和平均信号53の位相を補正するためのものである。同図のように、2乗和平均信号53は1励磁周期T内に立上りの検出点を2つ有する(ゼロクロス点55、57)。位相補正方向出力部45aは前半の位相区間1、2内のゼロクロス点55の位相ズレと、後半の位相区間5、6内のゼロクロス点57の位相ズレとの両方を、前半のゼロクロス点55の位相ズレ量を補正することによって補正する。
第2の位相補正方向出力部45bは立上りゼロクロス点での検出位相が位相区間7、0内(図9(d)参照)に出現する2乗和平均信号53の位相を補正するためのものである。同図のように、2乗和平均信号53は1励磁周期T内に立上りの検出点を2つ有する(ゼロクロス点55、57)。位相補正方向出力部45bは前半の位相区間7、0内のゼロクロス点55の位相ズレと、後半の位相区間3、4内のゼロクロス点57の位相ズレとの両方を、前半のゼロクロス点55の位相ズレ量を補正することによって補正する。
同様に、第3の位相補正方向出力部45dは立下りゼロクロス点での検出位相が位相区間3、4内(図8(d)参照)に出現する2乗和平均信号53の位相を補正するためのものである。同図のように、2乗和平均信号53は1励磁周期T内に立下りの検出点を2つ有する(ゼロクロス点56、58)。位相補正方向出力部45dは前半の位相区間3、4内のゼロクロス点56の位相ズレと、後半の位相区間7、0内のゼロクロス点58の位相ズレとの両方を、前半のゼロクロス点56の位相ズレ量を補正することによって補正する。
第4の位相補正方向出力部45cは立下りゼロクロス点での検出位相が位相区間1、2内(図9(d)参照)に出現する2乗和平均信号53の位相を補正するためのものである。同図のように、2乗和平均信号53は1励磁周期T内に立上りの検出点を2つ有する(ゼロクロス点56、58)。位相補正方向出力部45cは前半の位相区間1、2内のゼロクロス点56の位相ズレと、後半の位相区間5、6内のゼロクロス点58の位相ズレとの両方を、前半のゼロクロス点56の位相ズレ量を補正することによって補正する。
位相補正方向出力部45a、45b、45c、45dは、立上り又は立下りを識別する検出パルス(検出情報)と、立上り又は立下りのゼロクロス点の位相位置とに応じて、位相補正方向を示すコマンドを位相補正量調整部36に通知する。
図12は位相補正量調整部36のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。位相補正量調整部36は励磁信号RSの振幅レベルを表す16ビットに対応する16個のフリップフロップ212(遅延素子)と、入力側の選択部302と、各フリップフロップ212の前段側の演算回路213とを備えている。選択部302は位相ズレの補正方向及び補正量により2乗和平均信号53の位相を進めるか、又は戻すか、又は2乗和平均信号53を通過させるかを切替える。選択部302はオアゲート216、"プラス1"を表す信号を出力する演算器214、"マイナス1"を表す信号を出力する演算器215及び演算回路216を備える。演算回路213は選択部302による選択によって16ビットのフリップフロップ212の値の保持、各値のインクリメント、あるいは各値のデクリメントを実行する。
図2に戻り角度計算部25は、モータ11の角速度を算出する角速度算出部(PI[proportion integration]制御器)30と、角速度算出部30からの角速度を積分してモータ11の回転角度θを算出する回転角度算出部(積分器)31と、回転角度算出部31からの回転角度θに応じた余弦関数値cosθを第1の乗算部28へ出力するCOSテーブル32と、回転角度θに応じた正弦関数値sinθを第2の乗算器28へ出力するSINテーブル33とを備えている。
図4(b)は角速度算出部30のブロック図である。角速度算出部30は、検波器24からの制御偏差εを積分してモータ11の角速度を算出する積分器30aと、積分器30aの出力に比例要素のフィードバックゲインを挿入するための比例ゲイン調整器30bと、積分器30aの出力に比例ゲイン調整器30bの出力を加算する加算器30cとを備えている。角速度算出部30による算出は、比例ゲインの調整と積分器30aによる位相補償とを用いたPI(比例+積分)制御である。
このような構成のレゾルバディジタルコンバータ10(図1)を有する車両のシステムは、計算部61によりトルクセンサ64等から情報を収集する。インバータ制御部62はそれぞれモータ11への入力の目標電圧に対応したパルス幅を持つ3相のPWM(pulse width modulation)制御電圧信号を生成して、各電圧信号をスイッチングインバータ60へ出力する。スイッチングインバータ60はそれぞれ各PWM制御電圧信号に対応した3相の交流駆動電流を発生させ、発生した各電流をモータ11へ供給する。3相の交流駆動電流とは正弦波状の電流を言う。モータ回転軸は回転する。
システムは、励磁信号発生器20に、レゾルバディジタルコンバータ10への励磁パルス信号を加えさせる。励磁信号発生器20はレゾルバ12に励磁信号を加える。レゾルバロータ13の回転とともに励磁コイル19が回る。軸回転によりレゾルバロータ13とレゾルバステータ16との位置関係が変わる。磁界が誘起される。レゾルバ12は自身の動作によって励磁信号の位相遅延を引起こす。レゾルバ12及びレゾルバディジタルコンバータ10間の信号伝達が位相遅延を引起こす。
AD変換部22の2つのΔΣAD変換器26はsin相信号及びcos相信号をオーバサンプリングする。ΔΣAD変換器26の出力のビット数はデシメーション比に依存する。デシメーション比とはデシメーションフィルタ26cのオーバサンプリングレートと、予め決められたサンプリングレートとの比を言う。デシメーション比は16である。2つのHPF27は結果として各ΔΣAD変換器26の出力信号の波形を歪ませる。
図13はAD変換部22の出力波形例を示す図である。同図は発明者がシミュレーションによって得た結果を示す。同図の波形100はディジタルsin相信号あるいはディジタルcos相信号を示す。横軸は時間、縦軸はdegを表す。波形101はモータ回転角を表す。条件は、モータ11の回転周波数は2500Hz及び励磁信号の周波数は10kHz。波形100の形状については、波形100は点105を通る縦線に関して略左右対称性を有する。波形100はそれぞれゼロにクロスしない点103、104、105、106、107を有する。2つのHPF27は波形を歪ませる。
レゾルバディジタルコンバータ10による処理は本来波形100が通るべきゼロクロス点において、波形100がゼロクロスするように、2乗和平均信号の位相を補正する。
レゾルバ12は動作の原理から、AD変換部22からの信号は式(III)で表される。
SIN相側 …K・ext(t)・sin(φ)
COS相側 …K・ext(t)・cos(φ) …(III)
ここでKは途中経路の係数を表す。ext(t)は励磁信号を表す。φはモータ軸の回転角度を表す。それぞれの2乗和を計算すると、式(IV)のように励磁信号の2乗が得られる。
[K・ext(t)・sin(φ)]+[K・ext(t)・cos(φ)]=K・ext(t) …(IV)
レゾルバディジタルコンバータ10は式(IV)により表される信号からその平均値を差し引く。レゾルバディジタルコンバータ10は減算されて得た信号のゼロクロス点と励磁の位相とを以下に詳述するように合わせることで位相を調整する。
図5において位相補正部23はポート202から、励磁信号RSを入力される。位相補正部23はポート201、202から、sin相信号、cos相信号を入力される。0点検出部35は、位相補正部23から2乗和平均信号を入力される。0点検出部35は加算器37からのAD変換後の励磁信号51の16ビット振幅データのうちの上位3ビットが入力される。
理想状態と異なり、0点検出部35は位相がずれた2乗和平均信号を受ける。0点検出部35へ入力された2乗和平均信号は、先に立上りゼロクロスを立上り検出部43によって検出される。立上り検出部43の動作の開始の後、立下り検出部44の動作が開始する。2乗和平均信号は最初に立上り検出部43によって立上りゼロクロスを検出され、その後、立下り検出部44によって立下りゼロクロスを検出される。
立上り検出部43は立上りの未知のゼロクロス点を検出する。立上りゼロクロスを検出したことを示す検出パルスを立上り検出部43は、位相補正方向指令部45a、45bに通知する。位相補正方向出力部45a、45bは検出パルスの入力を契機として、同じ上位3ビットデータを参照する。位相補正方向出力部45a、45bはゼロクロス点の位相位置が位相区間0〜7のうちの何れの区間内あるいは区間間の境界に位置するかを抽出する。
3ビットパターンが001、010、101、110のうちの何れかであると、位相補正方向出力部45aはゼロクロス点が区間番号1、2、5、6の何れかの内であり、遅れを判別する。検出パルスが示す立上り情報と、オアゲート206のオンとによってスイッチ208が回路を閉じる。位相補正方向出力部45aは16ビットの2乗和平均信号とともに位相を進めるコマンドを出力する。位相補正方向出力部45aは前半のゼロクロス点を検出すると、後半のゼロクロス点の検出タイミングにおいて、2乗和平均信号とともに位相を進めるコマンドを出力する。
また、3ビットパターンが011、100、111、000のうちの何れかであると、位相補正方向出力部45bはゼロクロス点が区間番号3、4、7、0の何れかの内であり、進みを判別する。検出パルスが示す立上り情報と、オアゲート207のオンとによってスイッチ209が回路を閉じる。位相補正方向出力部45aは16ビットの2乗和平均信号とともに位相を遅らせるコマンドを出力する。位相補正方向出力部45bは前半のゼロクロス点を検出すると、後半のゼロクロス点の検出タイミングにおいて、2乗和平均信号とともに位相を遅らせるコマンドを出力する。
立上りの例と同様に、立下り検出部44は立下りの未知のゼロクロス点を検出すると、立下りを示す検出パルスを位相補正方向指令部45c、45dに通知する。位相補正方向出力部45c、45dは上位3ビットデータを参照する。
3ビットパターンが001、010、101、110のうちの何れかであると、位相補正方向出力部45cはゼロクロス点が区間番号1、2、5、6の何れかの内であり、進みを判別する。位相補正方向出力部45cは2乗和平均信号とともに位相を遅らせるコマンドを出力する。位相補正方向出力部45cは前半のゼロクロス点を検出すると、後半のゼロクロス点の検出タイミングにおいて、2乗和平均信号とともに位相を遅らせるコマンドを出力する。
また、3ビットパターンが011、100、111、000のうちの何れかであると、位相補正方向出力部45dはゼロクロス点が区間番号3、4、7、0の何れかの内であり、遅れを判別する。位相補正方向出力部45dは2乗和平均信号とともに位相を進めるコマンドを出力する。位相補正方向出力部45dは前半のゼロクロス点を検出すると、後半のゼロクロス点の検出タイミングにおいて、2乗和平均信号とともに位相を進めるコマンドを出力する。
また、位相補正方向指令部45a〜45dによる16ビットデータは例えば4μ秒など高速なサンプリング時間でずらされる。一つの位相区間の時間幅に比べて十分短い時間を持つサンプリングレートによって0点検出部35は動作する。位相補正方向指令部45a〜45dは、位相を進める又は遅らせるためのコマンド信号をサンプリングレートにおいて出力する。
位相補正量調整部36は、サンプリング間隔で一区間幅分の16ビットデータに対して+1又は−1の処理を行う。位相補正量調整部36がサンプリングレートで出力した16ビットデータは同じサンプリングレートで加算器37に移動する。加算器37からの16ビットデータはサンプリングレートで0点検出部35に入力される。位相補正量調整部36はサンプリング間隔毎に、+1、−1の量の補正を繰返す。
0点検出部35、位相補正量調整部36及び加算器37はこれらによって形成されるループ内の処理を複数回数に亘るサンプリングにより続行する。その結果、一つの位相区間の時間長分に相当する位相補正が完了する。最大で2つの位相区間分の位相量が遅らされ、又は進められる。仮に一つの位相区間の時間長分に相当する量の位相を一括して補正することはノイズの影響によって予期しない値のジャンプを引起こす。ループ処理を複数回数に亘って位相補正量調整部36が実行し、位相を少しの量ずつシフトすることにより、2乗和平均信号の位相は理想状態の位相に近づく。
このように立上り又は立下りが検出されると、検出された位相の区間番号によって位相が補正される。抽出されたゼロクロス点での励磁信号の位相を検出し、検出位相に応じて2乗和平均信号の補正方向が得られる。繰返しループ処理が実行されることにより90度から−90度の範囲の値のズレ量の位相を持つ励磁信号が補正量も適切に補正される。励磁信号の位相のズレが調整される。
従来例では、励磁周期Tの整数倍とモータ11の回転周期とが近接した場合、AD変換後の波形が“0”点を必ずしも通過しないという技術的課題が存在する。その結果、補正値に偏りが生じ、その結果角度検出値の誤差が増えることがある。レゾルバディジタルコンバータ10及びモータ駆動制御装置14によれば、入力信号の2剰和の位相と、励磁信号の位相とを調整することで、角度検出値の誤差が解消され、技術的課題が克服される。
例えば励磁周期(1/10kHz)がモータ11の回転周期(1/2.5kHz)の4倍であると、図13のように、ディジタルsin相信号、ディジタルcos相信号はHPF27によって歪む。ディジタルsin相信号、ディジタルcos相信号を使った位相補正は精度が低い。実施形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置によれば、ディジタルsin相信号及びディジタルcos相信号をそれぞれ2乗し、2乗和平均信号のゼロクロス点を使うため、精度が向上する。
(変形例)
0点検出部35の代わりの別のゼロクロス点の検出部を実施形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置は用いても良い。変形例に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置は、以下に特に断らない限り、それぞれレゾルバディジタルコンバータ10及びモータ駆動制御装置14と実質同じ構成を有する。
図14(a)は変形例に係る角度検出装置に用いられる検出部のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
位相遅れ時間測定部46(検出部)は位相遅れ時間DTを測定する。位相遅れ時間測定部46はゼロクロスタイミングでの2乗和平均信号の位相を検出し、位相ズレ量を求める。
図5、図14(a)に示されるように、位相遅れ時間測定部46は、加算器40(図5)の出力からの2乗和平均信号のゼロクロス点を検出する他の0点検出部46aと、0点検出部46aからの検出信号及びポート202(図5)からの励磁信号RSを入力されるカウンタ46bとを備える。位相遅れ時間測定部46は、励磁信号RSの立上りのタイミングからカウンタ46bによる計数を開始させる。位相遅れ時間測定部46は立上りタイミングの検出信号又は立下がりタイミングの検出信号によりカウンタ46bに計数を止めさせる。
図14(b)は励磁信号RSのタイムチャートである。図14(c)は2乗和平均信号波形のタイムチャートである。図14(d)はカウンタ46bの動作のクロックのタイムチャートである。図14(e)はカウンタ46bの値のタイムチャートである。既述の符号は同じ要素を表す。
カウンタ46bの初期値は0x0000であるとする。励磁信号RSの立上りによりカウンタ46bは計数を開始する。カウンタ46bはクロックの入力によって値を増やすことを続ける。カウンタ46bは0点検出部46bから、検出信号により、16ビットのディジタルデータによって表される振幅レベルが0になったことを通知される。カウンタ46bは計数を止める。計数値4をDTとして位相遅れ時間測定部46は出力する。
位相遅れ時間測定部46は、励磁信号RSを元の信号として使い、2乗和平均信号のゼロクロス点47を直接検出する。位相遅れ時間測定部46は高い精度で位相ズレ量を検出することができる。
また、位相補正量調整部36の代わりの別の位相補正量調整部を実施形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置は用いても良い。
図15は変形例に係る角度検出装置に用いられる位相補正量調整部のブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
位相補正量調整部48は、位相遅れ時間測定部46が求めた位相遅れ時間DTに応じた位相ディレイ(位相差)で励磁信号RSを遅らせ、遅延した励磁信号RSを検波器24(図2)へ出力する。
位相補正量調整部48は、互いに直列に多段接続されたそれぞれ16ビット分のフリップフロップDを有するレジスタ回路(多段ディレイ部)48bと、区間番号0〜7に応じて複数のフリップフロップDのうちの1又は複数のフリップフロップDを選択する切替え回路(タップ切替部)48aとを備える。16個のフリップフロップDとは、16ビットで表される励磁信号を、パラレルtoシリアル変換した得られたシリアルの16ビットの励磁信号を表すフリップフロップDを言う。
レジスタ回路48bは、先頭のフリップフロップDから励磁信号RSを入力される。レジスタ回路48bは励磁信号RSを順次遅延させる。レジスタ回路48bは複数のタップを有する。タップとは各フリップフロップDの出力を言う。
切替え回路48aは、位相遅れ時間測定部46からの位相遅れ時間DTの大きさに応じてレジスタ回路48bの複数のタップを切替え選択して、同期信号を生成する。切替え回路48aは、選択したフリップフロップDから補正後の励磁信号を出力させる。
位相遅れ時間DTにより、励磁信号RSの位相のズレ量が位相補正量調整部48に知らされる。位相遅れ時間DTにより複数個のディレイ素子のうちの遅延に必要な個数が選択される。結果的に選択されたフリップフロップDの個数が位相補正量を表す。励磁信号の位相のズレ量が補正される。検波器24へ同期検波用の補正後の励磁信号が入力される。
図12の位相補正量調整部36と位相補正量調整部48とを比べると、位相補正量調整部36は遅延素子を直列に接続していない点で、遅延素子を直列に接続している位相補正量調整部48と異なる。位相補正量調整部36の回路は位相補正量調整部48の回路よりもより簡素である。直列の遅延素子の接続無しの位相補正量調整部36の回路規模はその接続付きの位相補正量調整部48の回路規模よりもより小さい。
(その他)
各ブロック図は例示である。
上記実施形態はベストモードの開示であるが、レゾルバディジタルコンバータ10は立上り検出部43及び立下り検出部44の一方だけを使ってゼロクロス点を検出してもよい。レゾルバディジタルコンバータ10は、立上りクロス点55、57だけ、あるいは立下りクロス点56、58だけを検出してもよい。
立上り検出部43及び立下り検出部44の両方を有するレゾルバディジタルコンバータ10による位相検出の精度は、それらの一方のみを有するレゾルバディジタルコンバータ10によるそれよりも高い。
上記説明では、ゼロクロス点は2乗和波形の振幅レベルとして電圧値0を用いていたが、ゼロクロス点の代わりに予め決められた電圧値を用いても良い。ゼロクロス点以外の電圧値を使って実施した実施品に対して本実施形態に係る角度検出装置の優位性は何ら損なわれるものではない。
上記説明では、cosφ信号及びsinφ信号の2相であったが、3相又は4相以上の信号波を実施形態に係る角度検出装置は用いてもよい。sinφ、cosφの振幅は1であったが、言うまでもなく1と異なる振幅でもよい。
上記説明では、励磁コイル19が廻っており、sin相コイル17及びcos相コイル18が固定されていた。磁界を誘導する側と、磁界を誘導される側とは相対的に逆に配置されてもよい。実施形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置は、励磁コイル19を固定し、sin相コイル17及びcos相コイル18が廻る配置を用いても良い。
上記説明では、励磁周期(1/10kHz)とモータ11の回転周期(1/2.5kHz)との比が、1:4である場合の例であった。ΔΣAD変換器26から出力される信号波の振幅が0レベルになるタイミングにおいて励磁信号の位相と、モータ11の回転角の位相との関係は1:4の場合に限られない。例えば整数j、kを使って表すと、励磁周期のj倍と、モータ11の回転周期のk倍とが一致する場合、励磁信号がゼロクロスし、モータ11の回転角がゼロクロスする。この整数j、kのペアの関係の場合でも、実施形態に係る角度検出装置及びモータ駆動制御装置は上記例と同等の効果を奏することができる。
レゾルバディジタルコンバータ10の機能は主にASIC(application specific integrated circuit)、あるいはFPGA(field−programmable gate array)により実現される。レゾルバディジタルコンバータ10内の信号入力ポートやAD変換部22にはアナログ回路が用いられる。上記説明でのアルゴリズム演算はゲート素子を使った信号への物理的な演算である。
上記説明では、AD変換部22が差分信号波sin(θ−φ)・sinωtを出力し、検波器24がこの差分信号波sin(θ−φ)・sinωtに励磁信号RSを掛け合わせて差分信号sin(θ−φ)を出力した。レゾルバディジタルコンバータ10はAD変換部22内のHPF27の出力信号に対して同期検波を行ってもよい。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…レゾルバディジタルコンバータ(実施の形態に係る角度検出装置)、11…モータ、12…レゾルバ、13…レゾルバロータ、14…モータ駆動制御装置(実施の形態に係るモータ駆動制御装置)、15…ライン、16…レゾルバステータ、17…cos相コイル、18…sin相コイル、19…励磁コイル、20…励磁信号発生器、21…ポート、22…AD変換部、23…位相補正部(補正部)、24…検波器、25…角度計算部、26…ΔΣAD変換器、26a…ΔΣ変調器、26b…LPF、26c…デシメーションフィルタ、27…HPF、28…乗算器、29…減算器、30…角速度算出部(PI制御器)、31…回転角度算出部(積分器)、32…COSテーブル、33…SINテーブル、34…2乗和平均計算部、35…0点検出部(検出部)、36…位相補正量調整部、37…加算器、38,39…乗算器、40…加算器、41…平均値検出部、41a,41c…乗算器、41b…フリップフロップ、41d…加算器、42…減算器、43…立上り検出部、44…立下り検出部、45a,45b,45c,45d…位相補正方向出力部、46…位相遅れ時間測定部(検出部)、47…ゼロクロス点、48…位相補正量調整部、48b…タップ付き多段ディレイ部、48a…タップ切替部、50…励磁鋸波信号、51…AD変換後の励磁信号、52…sin相信号、53…2乗和平均信号、54…点、55,56,57,58…ゼロクロス点、59…コンパレータ、60…スイッチングインバータ(インバータ回路)、61…計算部、62…インバータ制御部(制御部)、63…舵角センサ、64…トルクセンサ、65…車速センサ、100,101…波形、103,104,105,106…点、201、202、203、204…ポート、205…アンドゲート、206,207…オアゲート、208,209…スイッチ、210,211,214,215…演算器、212…フリップフロップ(遅延素子)、213,216…演算回路、301…出力部、302…選択部。

Claims (5)

  1. それぞれ励磁波を回転軸の回転角で振幅変調して得られた位相が異なる複数相の信号波をアナログ/ディジタル変換するAD変換部と、
    励磁信号および前記AD変換部から前記複数相の信号波が入力され、前記励磁信号の位相をこの位相および前記信号波の位相間の位相差分だけ遅延させる補正部と、
    前記位相が補正された励磁信号に同期して前記AD変換部からの出力信号を同期検波する検波器と、
    前記検波器の出力信号によって推定回転角を算出し、前記推定回転角を前記AD変換部へ出力する角度計算部と、を備えたことを特徴とする角度検出装置。
  2. 前記補正部は、
    cos相信号波の2乗およびsin相信号波の2乗を加算して加算結果の時間平均値を計算し、前記信号波の励磁周期の半分の周期を有する2乗和平均信号を出力する2乗和平均計算部と、
    前記2乗和平均信号の振幅が基準レベルであるタイミングでの前記2乗和平均信号の位相を検出し、前記励磁周期内での前記位相の基準位相位置からのズレ量を前記励磁信号により求める検出部と、
    前記ズレ量によって前記位相を補正する位相補正量調整部とを備えることを特徴とする請求項1記載の角度検出装置。
  3. 前記検出部は、
    前記2乗和平均信号が立上り中に前記基準レベルにクロスする立上りタイミングおよび前記2乗和平均信号が立下り中に前記基準レベルにクロスする立下りタイミングのうちの少なくとも何れか一方を検出することを特徴とする請求項2記載の角度検出装置。
  4. 前記位相補正量調整部は、
    前記励磁信号の振幅レベルを表す複数ビットに対応する複数の遅延素子と、
    位相ズレの補正方向および前記位相ズレの補正量により前記2乗和平均信号の位相を進めるか、又は戻すか、又は前記2乗和平均信号を通過させるかを切替える選択部と、
    前記選択部による選択によって前記複数の遅延素子の値の保持、各値のインクリメント、あるいは各値のデクリメントを実行する演算回路とを備えたことを特徴とする請求項2記載の角度検出装置。
  5. モータのステータおよびロータの何れか一方に設けられ、励磁波を印加される励磁コイルと、
    前記ロータおよび前記ステータの何れか他方に設けられ、それぞれ前記励磁コイルへの前記励磁波を前記ロータの回転軸の回転角で振幅変調し、位相が異なる複数相の信号波を生成する検出コイルと、
    前記複数相の信号波をそれぞれ、アナログ/ディジタル変換するAD変換部と、
    励磁信号および前記AD変換部から前記複数相の信号波が入力され、前記励磁信号の位相をこの位相および前記信号波の位相間の位相差分だけ遅延させる補正部と、
    前記位相が補正された前記励磁信号に同期して前記AD変換部からの出力信号を同期検波する検波器と、
    前記検波器の出力信号によって前記回転角を算出し、算出した前記回転角を前記AD変換部へ出力する角度計算部と、
    前記角度計算部が算出した前記回転角により前記モータへの駆動電流を生成するインバータ回路を制御する制御部とを備えたことを特徴とするモータ駆動制御装置。
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