JP2013103579A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】陸部にサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを、同時に高い次元で実現し得る空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1に、リブ状陸部及び/又はブロック状陸部2を複数有し、陸部2に複数本のサイプ5を設けた空気入りタイヤにおいて、サイプ5は、タイヤ周方向の振幅を伴ってタイヤ幅方向に延びるとともに、陸部表面Sからタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、陸部表面Sを屈曲開始位置としてタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分5aと、陸部表面側部分と異なる方向に屈曲するか、又は陸部表面側部分の変位とは異なる変位を伴ってタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部底側部分5aとを有し、複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向は、周方向に連続する同一の陸部内及び周方向に列設された同一の陸部の列内にて全て同方向である。
【選択図】図3

Description

この発明は、周方向溝によって区画されるリブ状の陸部、及び/又は、該周方向溝及び該周方向溝と交差する横溝によって区画されるブロック状の陸部を複数有し、これらの陸部に複数本のサイプを設けた空気入りタイヤに関する。
従来、雪路面上を走行するためのタイヤにおいては、雪路での制動力やトラクション性能を向上させるために、トレッド部に設けられた陸部に対してタイヤ幅方向に沿って延びる複数本のサイプを形成し、エッジ成分を設けることが行われている。かかるサイプとしては、トレッド踏面上でジグザグ状又は波形であり、且つ、深さ方向に形状が変化することなくトレッド踏面に対して垂直な切込みを入れた、二次元サイプが知られている。
ここで、エッジ効果を向上させるためには、陸部内における上記サイプ本数を増加させることが有効であるが、陸部内のサイプ本数を増やし過ぎると、陸部が細分化されて陸部剛性が低下する。その結果、スノー性能は向上する反面、陸部の接地面積が減少するために、ドライ性能及びウェット性能が低下してしまう場合がある。
そこで、特許文献1では、深さ方向においてもサイプの形状を変化させ、細分化された陸部の内壁面同士を接触させることで陸部の倒れ込みを抑制した、三次元サイプが提案されている。
しかし、三次元サイプを用いた場合、上記の通りドライ性能及びウェット性能を確保することが可能になるものの、陸部の変形が抑制されるためにエッジ効果が低下し、二次元サイプと比較すると、今度はスノー性能が低下する傾向にある。このように、二次元サイプ及び三次元サイプは二律背反の関係にあることから、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを同時に向上させることは難しかった。
これに対し、特許文献2では、トレッド部に二次元サイプ及び三次元サイプの両方を配置することを提案している。かかる構成によれば、トレッド部の全体で、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全性能を確保できることが示されている。
特開2008−49971号公報 特許第4677498号
しかしながら近年、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全性能を同時に高い次元で実現する空気入りタイヤを提供するための、更なる改善が切望されている。
そこで、本発明の目的は、陸部にサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを同時に高い次元で実現し得る空気入りタイヤを提供することにある。
発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねたところ、タイヤ回転時に、サイプにより細分化された陸部の変形が、雪路面上と、乾燥路面又はウェット路面(以下、通常路面と呼ぶ)上とで大きく異なることを発見した。そして、この陸部変形の違いを考慮してサイプ形状を工夫すれば、種々の性能、すなわちスノー性能、ドライ性能、ウェット性能を一つの陸部にて同時に確保できることを突き止めた。加えて発明者は、このようなサイプを配設した陸部を、トレッド部に適切に配置する工夫を加えることによれば、空気入りタイヤ全体として、各性能をより一層向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)トレッド部に、周方向溝によって区画されるリブ状の陸部、及び/又は、該周方向溝及び該周方向溝と交差する横溝によって区画されるブロック状の陸部を複数有し、前記陸部に複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは、タイヤ周方向の振幅を伴ってタイヤ幅方向に延びるとともに、陸部表面からタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、該陸部表面を屈曲開始位置としてタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分と、該陸部表面側部分と異なる方向に屈曲するか、又は該陸部表面側部分の変位とは異なる変位を伴ってタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部底側部分とを有し、
前記複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向は、周方向に連続する同一の前記陸部内及び周方向に列設された同一の前記陸部の列内にて全て同方向である
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
本発明による空気入りタイヤによれば、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを同時に高い次元で実現することが可能となる。
(2)トレッド端側に在るショルダー側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向と、該ショルダー側陸部よりもタイヤ赤道側に在るセンター側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向は、異なる方向である
ことを特徴とする前記(1)に記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、タイヤの回転方向を適切に設定して使用することにより、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能のうち、特に向上させたい性能をより効果的に向上させることが可能となる。特にセンター側陸部でスノー性能、ショルダー側陸部でドライ性能およびウェット性能をさらに向上させることが可能となる。
(3)トレッド端側に在るショルダー側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向と、該ショルダー側陸部よりもタイヤ赤道側に在るセンター側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向は、同方向である
ことを特徴とする前記(1)に記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、トレッド部の全領域においてサイプの陸部表面側部分の屈曲方向が同じとなるため、スノー性能、又はウェット性能及びドライ性能のうち、特に向上したい性能を、トレッド部の全体に亘って確保することが可能となる。
(4)トレッド部に、周方向溝及び該周方向溝と交差する横溝によって区画される複数のブロック状の陸部を有し、該陸部に複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは、タイヤ周方向の振幅を伴ってタイヤ幅方向に延びるとともに、陸部表面からタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、該陸部表面を屈曲開始位置としてタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分と、該陸部表面側部分と異なる方向に屈曲するか、又は該陸部表面側部分の変位とは異なる変位を伴ってタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部底側部分とを有し、
前記複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、同一の前記陸部内のタイヤ周方向一方側の領域とタイヤ周方向他方側の領域とで、相互に反対方向である
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
本発明による空気入りタイヤによれば、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを同時に高い次元で実現することが可能となる。
(5)前記トレッド部の全体に、前記サイプを設けた陸部が配置されることを特徴とする前記(4)に記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、サイプの陸部表面側部分の屈曲方向が相互に反対方向であるサイプを同一陸部内に有する陸部がトレッド部の全領域に配置されるため、トレッド部全体で、均等に、スノー性能、ウェット性能、ドライ性能を確保することが可能となる。
本発明によれば、陸部にサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを、同時に高い次元で実現し得る空気入りタイヤを提供することが可能となる。
本発明に従う空気入りタイヤの一例の、トレッド部の部分展開図である。 (a)は、雪路面走行時の、サイプにより細分化された陸部の変形状態を表す図であり、(b)は、通常路面走行時の、サイプにより細分化された陸部の変形状態を表す図である。 図1に示したサイプ5aの、深さ方向の状態の一例を示す断面斜視図である。 図1及び図3に示した陸部2を、直線A−Aでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 図1に示したサイプ5aの、深さ方向の状態の他の例を示す断面斜視図である。 図1及び図5に示した陸部2を、直線A−Aでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 本発明に従う空気入りタイヤの一例の、トレッド部の部分展開図である。 (a)は、図7に示す陸部2Bを、直線B−Bでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。(b)は、図7に示す陸部2Aを、直線C−Cでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 (a)は、図7に示す陸部2Bを、直線B−Bでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。(b)は、図7に示す陸部2Aを、直線C−Cでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 (a)は、図7に示す陸部2Bを、直線B−Bでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。(b)は、図7に示す陸部2Aを、直線C−Cでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 図7に示す陸部2を、直線B−Bでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 図7に示す陸部2を、直線C−Cでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。 従来例タイヤの陸部に設ける、従来の二次元サイプ及び三次元サイプを示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に従う空気入りタイヤを詳細に説明する。
図1は、本発明に従う空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」と言う)の一例のトレッド部1の部分展開図を示す。
トレッド部1は、リブ状又はブロック状の陸部2を有する。ここでは、タイヤ周方向(図1で示すY方向)に延びる周方向溝3と、これと交差してタイヤ幅方向(図1で示すX方向)に延びる横溝4によって、ブロック状陸部2が複数区画され、これらのブロック状陸部2がタイヤ周方向に列設されることによって、タイヤ幅方向に4列の陸部列をなしている。
なお、図示例では、横溝4によって区画されるブロック状の陸部を示しているが、陸部2は、周方向溝3のみによって形成される、タイヤ周方向に連続するリブであってもよい。
また、周方向溝3は、図示例では直線状であるが、例えば、ジグザグ状、鋸歯状、波状等の非直線状であってもよい。
陸部2には、タイヤ幅方向に延びるサイプ5が複数本、ここでは4本のサイプ5a〜5dが設けられている。
そして、これらのサイプ5a〜5dはそれぞれ、図1に示すように、タイヤ周方向の振幅fを伴って、ジグザグ形状を描いている。なお、ここで言うタイヤ幅方向に延びるサイプとは、タイヤ幅方向から、タイヤ周方向に対して±60°の範囲で傾斜して延在するサイプを含む意である。従って図示例では、各サイプ5a〜5dは、それぞれ全体としてタイヤ幅方向と完全に平行、すなわちタイヤ周方向に対して垂直な方向に延在しているが、例えば、トレッド中央線CLを境界に、紙面右側の領域の陸部では右肩上がりに傾斜し、紙面左側領域の陸部では左肩上がりに傾斜するようなサイプであってもよい。
また、図示例では、サイプ5はジグザグ形状であるが、サイプ5の形状は、周方向の振幅を伴ってタイヤ幅方向に延びる形状であればよく、例えば、波型であってもよい。また、1つの陸部2に対して4本のサイプ5a〜5dを設けた例を示しているが、サイプ5の本数は、2本以上であればよい。さらに図示例では、サイプ5が、陸部2の両端に開口する例を示しているが、サイプ5は、いずれか少なくとも一方の端が陸部2内で終端していてもよい。
なお、本発明で言うサイプ5とは、陸部2の接地時にサイプの溝壁の少なくとも一部が閉じる、非接地での開口幅0.3〜1.0mmの切込みのことを言う。
そして、本発明のタイヤにあっては、まず、陸部表面Sからタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、サイプ5が、陸部表面Sを屈曲開始位置として、タイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分と、陸部表面側部分と異なる方向に屈曲するか、又は陸部表面側部分の変位とは異なる変位を伴ってタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部底側部分とを有するサイプであることが肝要である。
ここで、サイプ50が形成された陸部20を有するタイヤを装着した車両を雪路面及び通常路面上で走行させた場合の、陸部の変形状態について、図2(a)、(b)を用いて説明する。陸部20は、このサイプ50によって、小陸部20aに細分化されている。
まず、車両を雪路面上で走行させた場合には、路面である雪側が変形するため、サイプにより細分化された小陸部20aは、図2(a)に示すように、踏込み側に向かって一つの凸を描く単純曲げ変形となる。一方、車両を通常路面上で走行させた場合には、路面側は変形することなく、陸部表面が路面に拘束されることになる。そうすると、タイヤ径方向内側から外側に向かっての変形状態を見た場合、サイプにより細分化された小陸部20aは、図2(b)に示すように、踏込み側に凸を描いた後に変曲点を経て、今度は蹴り出し側に向かって凸を描く、二重曲げ変形となる。このように、サイプにより細分化された小陸部20aの変形状態は、路面の状態によって全く異なる。
そこで本発明では、路面状態で異なる上記の小陸部の曲げ変形の違いを考慮し、深さ位置に応じたサイプ形状の適正配置を行うことで、種々の路面状態に対応し得る空気入りタイヤの提供を実現しようとするものである。
具体的には、小陸部20aの変形が単純曲げ変形(図2(a))となる雪路面走行時には、タイヤ回転時に路面との接触頻度の高い陸部表面近傍域に、スノー性能に効くサイプを配置する。陸部表面近傍域にかかるサイプを配置することで、細分化された小陸部20aの角部6が雪に貫入し、エッジを効果的に作用させることができるからである。一方、小陸部20aの変形が二重曲げ変形となる通常路面走行時には、陸部表面近傍よりもタイヤ径方向内側に深い領域において、小陸部20aの倒れ込み抑制に効くサイプを配置する。つまり、領域7にて、細分化された小陸部20aの内壁同士が接触することから、特に、当該領域にかかるサイプを配置することで、小陸部20aの倒れ込みが効果的に抑制される。その結果、陸部20全体の接地面積を確保し、ドライ時及びウェット時の、トラクション性能及びブレーキ性能を向上させることができるからである。
以下では、上述の曲げ変形を考慮した本発明のサイプの特徴的な構成について、2つの実施形態を示して用いて具体的に説明する。
<サイプの第一実施形態>
図3は、図1に示したサイプ5aの、深さ方向の状態の一例を示す断面斜視図である。
サイプ5aは、上記の通り、陸部表面Sにおいて振幅fを有するジグザグ形状であり、陸部表面Sからタイヤ径方向内側に向かう深さ方向(Z方向)においては、陸部表面近傍域ではタイヤ周方向(Y方向)に、それよりも深い領域ではタイヤ幅方向(X方向)へ変位しながら屈曲して延びている。この際、サイプ5aは、陸部表面S上のジグザグ形状と同形状を維持しながら変位して、タイヤ径方向に延びている。
なお、図3は、複数本のサイプ5のうち、特にサイプ5aの断面状態を示したものであるが、全てのサイプ5が、ここで説明するサイプ形状を有する。ここでは、サイプ5a〜5dはタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に相互に平行に設けられており、全て同じサイプである。
次に示す図4は、図1及び図3に示した陸部2を、直線A−Aでタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図である。より詳細には、図1に示すように、陸部表面S上のジグザグ形状のサイプ5aの振幅の中心線Lとサイプ5aとの交点(すなわち、サイプ5aの振幅0の位置)を点Pとした場合に、陸部2を、陸部表面Sに垂直な面によって、陸部表面S上で当該点Pを通り且つ中心線Lに対し直交するようにして切断した際の、陸部2の断面図の一例を示したものである。ここで、サイプ5aの振幅の中心線Lとは、陸部表面S上で、タイヤ周方向に振幅するサイプ5aの、タイヤ周方向平均位置を表す仮想線のことを言う。
陸部2は、4本のサイプ5a〜5dによって、5つの小陸部2aに細分化されている。ここで、図4中、符号8は、陸部2を陸部表面Sと平行な面で切断した場合に、その断面上においてジグザグ形状を描くサイプ5の振幅の中心線を、タイヤ径方向に繋いでなる面(以下、サイプ中心面8と呼ぶ)を示したものである。すなわち、陸部表面S上のジグザグ形状を維持したままタイヤ径方向に延びるサイプ5の、振幅の中心線の軌道を、A−A断面上に示したものである。また、点線で示した符号9は、陸部2のA−A断面にてサイプ5a〜5dを透視した際の、サイプの屈曲点、すなわちサイプの最大振幅位置を示したものである。従って、振幅fを有するサイプ5にあっては、サイプ中心面8から点線9までの距離はfである。
そして、上述の通り、本発明のタイヤにおいて、サイプ5aは、陸部表面Sからタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、陸部表面Sを屈曲開始位置として、タイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分5aを有することを特徴としている。換言すれば、図4の断面において、サイプ中心面8が、陸部表面Sから直ぐに変位を開始して、陸部表面近傍域で紙面右方向又は左方向(図示例では、紙面右方向)に凸となるように変位し、陸部表面Sでのタイヤ周方向位置と同位置に戻ることを特徴としている。
このように、本発明のタイヤは、陸部表面近傍域において、陸部表面S上でジグザグ形状のサイプを有するだけでなく、深さ方向においても、陸部表面Sを屈曲開始位置として、サイプの長手方向に直交する向きに屈曲するサイプを有する。これにより、陸部表面Sにエッジ成分が形成され、雪路面との接地領域での制動力やトラクション性能が向上することは勿論であるが、加えて、陸部の深さ方向においても、陸部表面近傍域でスノー性能を向上させることが可能となる。つまり、接地時に雪路面に対して傾斜する面が形成されるため、サイプが開いて陸部が路面上の雪を掘り起こす際に陸部の雪への貫入量が増加するとともに、雪との接触面積及び掘り起こし量が増加されることになる。その結果、陸部表面近傍域でのスノー性能を、より一層向上させることが可能となるのである。
一方、陸部表面側部分5aよりもタイヤ径方向内側の領域では、サイプ5aは、陸部表面側部分5aと異なる方向、例えば第一実施形態で示すように、タイヤ幅方向に屈曲する陸部底側部分5aを有することを特徴としている。換言すれば、図4に示す断面において、陸部底側部分5aでは、サイプ中心面8は、紙面左右方向に変位することなく直線を描く。
通常路面走行時に陸部2に力が加わると、サイプにより細分化された小陸部2aの倒れ込みが生じるが、この場合、図2(b)を用いて既述したように、陸部表面近傍域よりも深い領域で、小陸部同士が接触することになる。従って、少なくとも当該領域でサイプ5aをタイヤ幅方向に屈曲させることによれば、隣接する小陸部2aの屈曲部分が相互に係合し、小陸部の倒れ込みを効果的に抑制することができる。その結果、陸部の接地面積が充分に確保され、通常路面走行時のトラクション性能、ブレーキ性能を向上させることが可能となる。
<サイプの第二実施形態>
図5は、図1に示したサイプ5aの、深さ方向の状態の他の例を示す断面斜視図である。
サイプ5aは、上記の通り、陸部表面Sにおいて振幅fを有するジグザグ形状であり、陸部表面Sからタイヤ径方向内側に向かう深さ方向(Z方向)においては、タイヤ周方向(Y方向)へ変位しながら屈曲して延びている。この際、サイプ5aは、陸部表面S上のジグザグ形状と同形状を維持しながら変位して、タイヤ径方向に延びている。
なお、図5は、複数本のサイプ5のうち、特にサイプ5aの断面状態を示したものであるが、全てのサイプ5が、ここで説明するサイプ形状を有する。ここでは、サイプ5a〜5dはタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に相互に平行に設けられており、全て同じサイプである。
次に示す図6は、図1及び図5に示した陸部2を、直線A−Aでタイヤ周方向に切断した際の矢視図を示すものである。より詳細には、図1に示すように、陸部2を、陸部表面Sに垂直な面によって、陸部表面S上で点Pを通り且つ中心線Lに対し直交するようにして切断した際の、陸部2の断面図の他の例を示したものである。
サイプ5aは、第一実施形態と同様に、陸部表面Sからタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、陸部表面Sからタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分5aを有することを特徴としている。かかる構成によれば、上述の通り、雪路での制動力やトラクション性能を向上させることができるとともに、陸部の雪への貫入量及び掘り起こし量が増加されるため、スノー性能をより一層向上させることができる。
そして第二実施形態では、陸部表面側部分5aよりもタイヤ径方向内側の領域において、サイプ5aが、陸部表面側部分5aの変位mとは異なる変位nを伴ってタイヤ周方向に屈曲する陸部底側部分5aを有することを特徴としており、かかる点が、第一実施形態と異なる。換言すれば、図4に示す断面において、陸部表面近傍域よりもタイヤ径方向内側の領域でのサイプ中心面8が、陸部表面側部分5aと同様に紙面左右方向に屈曲する形状を描き、且つ、陸部底側部分5aのタイヤ周方向への変位nが、陸部表面側部分5aのタイヤ周方向への変位mと異なることを特徴としている。かかる構成によっても、小陸部2aの倒れ込み時に、小陸部同士が相互に接触する領域で屈曲部分同士が係合するため、第一実施形態と同様に、小陸部の倒れ込みを効果的に抑制することができる。その結果、陸部の接地面積が充分に確保され、通常路面走行時のトラクション性能、ブレーキ性能を向上させることが可能となる。
この際、陸部底側部分5aのタイヤ周方向への変位nは、陸部表面側部分5aのタイヤ周方向への変位mよりも大きい(m<n)ことが好ましい。これにより、小陸部2a同士の噛み合い程度、すなわち陸部同士の支え合い効果を大きくすることができるからである。
なお、第一実施形態及び第二実施形態において、サイプ5は、図3及び図5に示すように、サイプ幅方向両端におけるサイプ深さが、サイプ幅方向中央におけるサイプ深さよりも浅いことが好ましい。このように陸部2の幅方向両端においては深さの浅いサイプを設けることによれば、陸部剛性を確保して、陸部の倒れ込みを抑制し、通常路面走行時におけるドライ性能及びウェット性能をより向上させることが可能となる。しかも、陸部の幅方向両端には陸部表面側部分が設けられているため、雪路面走行時におけるスノー性能も、同時に確保することができるからである。
また、サイプの最大深さHは、周方向溝深さの60〜90%であり、陸部表面側部分5aの深さHは、サイプの最大深さHの20〜40%であることが好ましい。
かかる範囲に陸部表面側部分5aを配置することで、この陸部部分が雪路面走行時に雪に貫入し易くなるため、陸部表面近傍域におけるサイプの機能を十分に発揮することができ、スノー性能を向上させることができるからである。一方、図2(b)に示したように、サイプにより細分化された小陸部同士は、陸部の深い領域にて接触し合う。従って、陸部表面Sからサイプの最大深さHの20〜40%よりも深い領域に陸部底側部分5aを配置することにより、陸部の倒れ込みを十分に抑制し、ドライ性能及びウェット性能の向上を図ることができるからである。このように、陸部表面側部分5aを上記範囲に配置することで、陸部表面側部分5a及び陸部底側部分5aの両者の機能を最も効率的に発揮させることが可能となる。
また、サイプ5aにおいて、陸部表面側部分5aは、図3及び図4に示すように、1つの屈曲点を有することが好ましい。
このように、陸部表面近傍域において、サイプ5aを一回のみ大きく屈曲させた場合、雪へ貫入する陸部表面側部分5aの、路面に対する抵抗力が大きくなる。その結果、陸部の雪への貫入量及び掘り起こし量が増加し、スノー性能のさらなる向上を図ることが可能となる。
また、図4に示すように、陸部表面側部分5aのサイプ中心面8の、陸部表面S上における起点と屈曲点とのタイヤ周方向変位mは、陸部表面側部分5aの深さ距離Hの0.2〜0.4倍であることが好ましい。
陸部表面側部分5aの屈曲程度を上記の範囲とすることで、小陸部2aの雪への貫入量及び掘り起こし量が増加する。その結果、スノー性能を一層向上することができるからである。
そして、本発明の空気入りタイヤにあっては、上述の特徴的なサイプを有することに加えて、さらに、陸部表面側部分のタイヤ周方向への屈曲方向を考慮した上で、このサイプを陸部に配設することを特徴としている。
以降では、複数の陸部を有するトレッド部における、サイプの配設パターンについて、幾つかのパターン例を示しつつ具体的に説明する。
なお、ここで示す空気入りタイヤの例では、図1で示したのと同様に、ブロック状の陸部がタイヤ周方向に列設されて陸部列をなし、タイヤ幅方向に4列の陸部列が配列されている(図7参照)。また、この空気入りタイヤは、タイヤの正回転時に図7に示す矢印方向を回転方向とするタイヤである。また、各陸部に設けられるサイプは、タイヤ周方向に屈曲する陸部表面側部分及びタイヤ幅方向に屈曲する陸部底側部分からなる、図3及び図4に示した、第一実施形態のサイプである。
<第一配設パターン>
第一配設パターンでは、まず、複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、周方向に列設された陸部の同一陸部列内で全て同方向となるように、サイプ5が、陸部2に対して配設されることが肝要である。すなわち、図7の陸部2をタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図(図8(a)、(b))において、サイプ中心面8が、陸部表面近傍域にて、紙面左側又は右側のどちらか一方向のみに屈曲することが肝要である。
そして、第一配設パターンでは、トレッド部1に配置される複数の陸部2のうち、トレッド端TE側に在る陸部をショルダー側陸部Rとし、該ショルダー側陸部Rよりもタイヤ赤道線CL側に在る陸部をセンター側陸部Rとした場合に、ショルダー側陸部Rのサイプの陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向と、センター側陸部Rのサイプの陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、異なる方向である。
ショルダー側陸部Rとは、少なくともトレッド端側に在る陸部、図7に示す例では、陸部2Aと同じ陸部列を構成する陸部の全てと、陸部2Dと同じ陸部列を構成する陸部の全てのことである。一方、センター側陸部Rとは、ショルダー側陸部Rよりもタイヤ赤道寄りに在る陸部、図7に示す例では、陸部2Bと同じ陸部列を構成する陸部の全てと、陸部2Cと同じ陸部列を構成する陸部の全てのことである。
ここで、スノー性能は、発進加速性が重要であるため、トレッドセンター領域での陸部剛性が大きく影響する。一方、ドライ性能及びウェット性能は、制動性が重要であるため、トレッドショルダー領域での陸部剛性が大きく影響する。従って、この第一配設パターンに従うサイプの配置によれば、センター領域では特にスノー性能を向上させ、一方、ショルダー領域では、特にドライ性能及びウェット性能を向上させることが可能となる。
そして、このような性能の向上は、特に、センター側陸部Rでは、陸部2Bをタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図B−Bにおいて、図8(a)に示すように、陸部表面側部分の屈曲方向がタイヤ回転方向と反対側となるように、すなわち蹴り出し側となるように、サイプ5を配置した場合に顕著である。一方、ショルダー側陸部Rでは、陸部2Aをタイヤ周方向に切断した際の矢視図断面C−Cにおいて、図8(b)に示すように、陸部表面側部分の屈曲方向がタイヤ回転方向側となるように、すなわち踏込み側となるようにサイプ5を配置した場合に顕著である。
この配置によれば、スノー性能に効くセンター領域では、タイヤの正回転時の踏込み時に、陸部表面側部分のサイプが開いてエッジが路面の雪を掘り起こすとともに、陸部の雪への貫入量が増加する。一方、ドライ性能及びウェット性能に効くショルダー領域では、陸部表面側部分の屈曲凸部が踏込み側となるため、制動入力時の浮き上がり変形が抑制され、接地面積を確保することが可能となるからである。
なお、図7では、最もトレッド端側の陸部のみをショルダー側陸部Rとし、中央2列の陸部をセンター側陸部Rとする例を示したが、例えばトレッド部に陸部列が5列ある場合には、トレッド端側の陸部列の陸部をショルダー側陸部Rとし、中央3列の陸部をセンター側陸部Rとする場合や、中央1列の陸部のみをセンター側陸部Rとし、その他の陸部をショルダー側陸部Rとするようにしてもよい。
また、図7では、陸部2がブロック状の陸部である場合を示したが、当該第一配設パターンは、陸部2がリブ状の陸部である場合にも適用できる。この場合には、すなわち、複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、周方向に連続する同一のリブ状陸部内で全て同方向となるように、サイプ5が、陸部2に対して配設されることが肝要である。
<第二配設パターン>
第二配設パターンでは、第一配設パターンと同様に、まず、複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、周方向に列設された陸部の同一陸部列内で全て同方向となるように、サイプ5が、陸部2に対して配設されることが肝要である。
そして、第二配設パターンでは、トレッド部1に配置される複数の陸部2のうち、トレッド端TE側に在る陸部をショルダー側陸部Rとし、該ショルダー側陸部Rよりもタイヤ赤道線CL側に在る陸部をセンター側陸部Rとした場合、ショルダー側陸部Rのサイプの陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向と、センター側陸部Rのサイプの陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、同じ方向である。
すなわち、第二配設パターンでは、トレッド部1におけるサイプ5の各陸部表面側部分の屈曲方向が、全て、同一方向となっている。
かかる配設パターンによれば、トレッド部の全領域においてサイプの陸部表面側部分の屈曲方向が同じとなるため、スノー性能、又はドライ性能及びウェット性能のうち、特に向上したい性能を、トレッド部の全体に亘って確保することが可能となる。
従って、センター側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向がタイヤ回転方向側となり(図9(a))、ショルダー側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向もタイヤ回転方向側となるように(図9(b))サイプを配置した場合には、特に、ドライ性能及びウェット性能を向上させることができる。
なぜなら、トレッド部の全領域に亘って、陸部表面側部分の屈曲凸部の制動入力時の浮き上がり変形が抑制され、接地面積を一層確保することが可能となるからである。
反対に、センター側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向がタイヤ回転方向と反対側であり(図10(a))、且つ、ショルダー側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向もタイヤ回転方向と反対側となるように(図10(b))サイプを配置した場合には、特に、スノー性能を向上させることができる。
トレッド部の全領域に渡って、陸部が路面に接地する際、陸部表面側部分のサイプが開いてエッジが路面の雪を掘り起こすとともに、陸部の雪への貫入量が増加することになるからである。
なお、図7では、陸部2がブロック状陸部である場合を示したが、当該第二配設パターンは、陸部2がリブ状の陸部である場合にも適用できる。この場合には、複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、全てのリブ状陸部内で同方向となるように、サイプ5が、陸部2に対して配設されることが肝要である。
<第三配設パターン>
次に示す第三配設パターンでは、まず、複数本のサイプの各陸部表面側部分の屈曲方向が、一つのブロック状の陸部内のタイヤ周方向一方側の領域とタイヤ周方向他方側の領域とで、相互に反対方向となるように、サイプ5が、陸部2に対して配設されることが肝要である。
図11及び図12は、陸部2Aをタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図C−C、又は陸部2Bをタイヤ周方向に切断した際の矢視断面図B−Bを示したものである。図11を用いて具体的に説明すれば、陸部2をタイヤ周方向に等分されるように幅方向で切断した際に、タイヤ周方向一方側の陸部表面近傍域のサイプ中心面8は紙面右側に屈曲し、タイヤ周方向他方側のサイプ中心面8は紙面左側に屈曲する。すなわち、陸部表面側部分の屈曲凸部が陸部2の中央に向かう構成となっている。または、図12に示すように、陸部表面側部分の屈曲凸部が陸部2のタイヤ周方向両端側に向かう構成となっている。
かかる配設パターンによれば、同一陸部内に、陸部表面側部分の屈曲方向が相互に反対方向であるサイプ5が設けられているため、一つの陸部で、スノー性能、ウェット性能、ドライ性能の全ての性能を均等に確保することが可能となる。
そして、特に、図12のように、陸部表面側部分の屈曲凸部が陸部のタイヤ周方向両端側に向かう構成とすることによって、入力入側の小ブロック群より入力出側の小ブロック群が各性能に及ぼす寄与が大きくなり、この場合、スノー路面では入力出側のエッヂが雪に貫入しやすくなり、ドライ・ウェット路面では、入力出側の浮き上がり変形が抑制されることになるため、スノー性能、ウェット性能、ドライ性能を均等に、より一層向上させることができる。
そして、第三配設パターンでは、トレッド部1の全体に、図11又は図12で示したサイプを有する陸部2が配置されることが好ましい。
かかる構成によれば、トレッド部1の全領域で、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを均等に、確保することが可能となるからである。
次に、本発明に従う発明例タイヤ1〜5と、従来技術に従う従来例タイヤを試作して、各タイヤのスノー性能、ドライ性能、ウェット性能についての評価を行った。
具体的には、発明例タイヤ1〜5は、サイズが195/65R15、適用リム6J×15、適用内圧200kPaの図7に示したトレッドパターン並びに図3及び図4に示した前記第一実施形態のサイプを有する乗用車用ラジアルタイヤである。
発明例タイヤ1は、前記第一配設パターンに従って、トレッド部全体にサイプを配設した空気入りタイヤである。この際、センター側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向は、タイヤ回転方向と反対側となるように、すなわち蹴り出し側となるようにサイプを配設している(図8(a))。一方、ショルダー側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向がタイヤ回転方向側となるように、すなわち踏込み側となるようにサイプを配設している(図8(b))。
なお、陸部表面側部分5aの深さH=2.0mm、サイプ最大深さH=7.0mmであり、陸部表面側部分5aのサイプ中心面の変位m=0.5mm、陸部底側部分5aのサイプ中心面の変位n=0mmである。
発明例タイヤ2は、前記第二配設パターンに従って、トレッド部全体にサイプを配設した空気入りタイヤである。この際、センター側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向及びショルダー側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向は、両方とも、タイヤ回転方向側となるように(図9(a)、(b))サイプを配設している。その他の構成は、発明例タイヤ1と同様である。
発明例タイヤ3は、発明例タイヤ2と同様に、前記第二配設パターンに従って、トレッド部全体にサイプを配設した空気入りタイヤである。この際、センター側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向及びショルダー側陸部Rの陸部表面側部分の屈曲方向は、両方とも、タイヤ回転方向と反対側となるように(図10(a)、(b))サイプを配設している。その他の構成は、発明例タイヤ1と同様である。
発明例タイヤ4は、前記第三配設パターンに従って、トレッド部全体にサイプを配設した空気入りタイヤである。この際、一つの陸部に対し、サイプの陸部表面側部分の屈曲方向がそれぞれ陸部2の中央に向かうように、複数本のサイプを配設している(図11)。その他の構成は、発明例タイヤ1と同様である。
発明例タイヤ5は、発明例タイヤ4と同様に、前記第三配設パターンに従って、トレッド部全体にサイプを配設した空気入りタイヤである。この際、一つの陸部に対し、サイプの陸部表面側部分の屈曲方向がそれぞれ陸部2のタイヤ周方向両端側に向かうように、複数本のサイプを配設している(図12)。その他の構成は、発明例タイヤ1と同様である。
一方、従来例タイヤは、センター側陸部Rに、陸部踏面上でジグザグ状であり、タイヤ径方向に直線状に延びる図13(a)に示す従来の二次元サイプを配設し、ショルダー側陸部Rに、陸部踏面上でジグザグ状であり、且つ、タイヤ径方向では、陸部表面近傍域では直線状に延び、それよりも深い領域ではタイヤ幅方向へ変位する、図13(b)に示す従来の三次元サイプを配設した、乗用車用ラジアルタイヤである。その他の構成は、発明例タイヤと同様である。
これらの発明例タイヤ1〜5、従来例タイヤを、それぞれ車両に装着し、各種評価試験を行った。この際、発明例タイヤ1〜3については、各領域の陸部表面側部分のタイヤ周方向への屈曲方向が、タイヤの回転方向に対して上述の配置となるように、車両に装着した。
スノー性能は、車両を雪路面上に設置し、車両の静止状態からアクセルを全開にし、50m走行するまでの時間(加速タイム)を計測する、雪上加速試験を行うことにより評価した。ウェット性能は、車両をウェット路面上に設置し、初速度80km/hの状態からフルブレーキをかけた場合に静止状態になるまでの制動距離を計測する、ウェット制動試験を行うことにより評価した。ドライ性能は、車両をドライ路面上に設置し、初速度100km/hの状態からフルブレーキをかけた場合に静止状態になるまでの制動距離を計測する、ドライ制動試験を行うことにより評価した。
結果を表1に示す。いずれも、従来例タイヤでの計測値を100(基準)として指数で表した値であり、数値が大きくなるほど、各性能が向上していることを示す。
Figure 2013103579
表1の結果から、発明例タイヤ1〜5はいずれも、従来例タイヤと比較して、スノー性能、ウェット性能、ドライ性能の全てが向上することが分かった。
中でも、発明例タイヤ1は、スノー性能、ウェット性能、ドライ性能の全てが格段に向上することが分かった。
また、発明例タイヤ2は、特に、ドライ性能及びウェット性能を顕著に向上できることが分かった。発明例タイヤ3は、特に、スノー性能を顕著に向上できることが分かった。
さらに、発明例タイヤ4及び5は、スノー性能、ウェット性能、ドライ性能の全てを、均等に向上できることが分かった。
この発明によれば、陸部にサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、スノー性能、ドライ性能、ウェット性能の全てを、同時に高い次元で実現し得る空気入りタイヤを提供することが可能となった。
1 トレッド部
2 陸部
2a 小陸部
3 周方向溝
4 横溝
5 サイプ
5a 陸部表面側部分
5a 陸部底側部分
6 小陸部2aの角部
7 陸部2の陸部表面近傍域よりも深い領域
8 サイプ中心面
9 サイプの最大振幅位置
P 陸部表面S上の中心線Lとサイプ3との交点
S 陸部表面
L サイプの振幅の中心線
f 最大振幅
m 陸部表面側部分3aのタイヤ周方向変位
n 陸部底側部分3aのタイヤ周方向変位

Claims (5)

  1. トレッド部に、周方向溝によって区画されるリブ状の陸部、及び/又は、該周方向溝及び該周方向溝と交差する横溝によって区画されるブロック状の陸部を複数有し、前記陸部に複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、
    前記サイプは、タイヤ周方向の振幅を伴ってタイヤ幅方向に延びるとともに、陸部表面からタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、該陸部表面を屈曲開始位置としてタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分と、該陸部表面側部分と異なる方向に屈曲するか、又は該陸部表面側部分の変位とは異なる変位を伴ってタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部底側部分とを有し、
    前記複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向は、周方向に連続する同一の前記陸部内及び周方向に列設された同一の前記陸部の列内にて全て同方向である
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. トレッド端側に在るショルダー側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向と、該ショルダー側陸部よりもタイヤ赤道側に在るセンター側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向は、異なる方向である
    ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. トレッド端側に在るショルダー側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向と、該ショルダー側陸部よりもタイヤ赤道側に在るセンター側陸部のサイプの陸部表面側部分の屈曲方向は、同方向である
    ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. トレッド部に、周方向溝及び該周方向溝と交差する横溝によって区画される複数のブロック状の陸部を有し、該陸部に複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、
    前記サイプは、タイヤ周方向の振幅を伴ってタイヤ幅方向に延びるとともに、陸部表面からタイヤ径方向内側に向かう深さ方向において、該陸部表面を屈曲開始位置としてタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部表面側部分と、該陸部表面側部分と異なる方向に屈曲するか、又は該陸部表面側部分の変位とは異なる変位を伴ってタイヤ周方向に向かって屈曲する陸部底側部分とを有し、
    前記複数本のサイプの各陸部表面側部分のタイヤ周方向に向かう屈曲方向が、同一の前記陸部内のタイヤ周方向一方側の領域とタイヤ周方向他方側の領域とで、相互に反対方向である
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  5. 前記トレッド部の全体に、前記サイプを設けた陸部が配置されることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
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