JP2013085455A - 電力変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電力変換装置において、直流リンク電圧の脈動に起因して生ずるモータの振動や騒音を抑制する。
【解決手段】脈動成分を有する直流リンク電圧(vdc)を交流に変換して永久磁石同期電動機(7)に出力するインバータ回路(4)を設ける。ベクトル制御によってインバータ回路(4)を制御し、基本電圧ベクトルがゼロベクトル(モータ端子電圧がゼロとなる電圧ベクトル)を含まない制御状態においては、脈動に応じて永久磁石同期電動機(7)のd軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルの2つの電圧ベクトルの合成電圧ベクトル(V0)のq軸から見た位相を脈動させる制御部(5)を設ける。
【選択図】図4

Description

本発明は、入力をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換する電力変換装置に関するものである。
従来より、インバータ回路を有した電力変換装置が知られている。インバータ回路は、スイッチング制御により、直流電力を可変周波数・可変電圧の交流電力に高効率変換する回路である。
このような電力変換装置には、直流リンク部に小容量の平滑コンデンサを用いるいわゆる電解コンデンサレスインバータ回路がある(例えば特許文献1を参照)。電解コンデンサレスインバータ回路では、ダイオード整流回路の出力側に、従来の大容量の平滑コンデンサ(電解コンデンサ)に代えて、例えば数百μF程度の小容量に構成される平滑コンデンサを設けている。三相交流が全波整流されて入力される電解コンデンサレスインバータ回路では、直流リンク電圧が電源(三相交流)の6倍周波数で脈動し、基本電圧ベクトルがゼロベクトル(モータ端子電圧がゼロとなる電圧ベクトル)を含まない制御状態(以下過変調状態)のときにモータの振動、音などの不具合が発生する。そのため通常、3相の電解コンデンサレスインバータでは過変調制御を行われておらず、3相の電解コンデンサレスインバータでの電圧利用率低下、デバイス損失増加の原因となっている。
特開2002−51589号公報
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、脈動する直流をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換して永久磁石同期電動機に出力する電力変換装置において、過変調状態においても直流リンク電圧の脈動に起因して生ずるモータの振動や騒音を抑制すること、3相の電解コンデンサレスインバータにおける、電圧利用率低下、デバイス損失の増大を防ぐことにある。
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
脈動成分を有する直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換して永久磁石同期電動機(7)に出力するインバータ回路(4)と、
基本電圧ベクトルを組み合わせてスイッチングを制御するベクトル制御によって前記インバータ回路(4)を制御し、前記基本電圧ベクトルがゼロベクトル(モータ端子電圧がゼロとなる電圧ベクトル)を含まない制御状態においては、前記脈動成分に応じて前記永久磁石同期電動機(7)のd軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルの2つの電圧ベクトルの合成電圧ベクトル(V0)のq軸から見た位相を脈動させる制御部(5)と、
を備えたことを特徴とする。
この構成では、過変調状態において、インバータ回路(4)の出力の基本波成分の位相を、前記脈動に応じて変動させるので、インバータ回路(4)の直流リンク電圧脈動の影響を低減し、過変調制御を可能にすることができ、ひいては電圧利用率低下、デバイス損失の増大を防ぐことが出来る。
また、第2の発明は、
第1の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクに相関する指標、回転数の何れか一つもしくは両方に応じて、前記位相の脈動の位相を調整することを特徴とする。
この構成では、トルクに相関する指標、又は回転数に応じて、前記位相の脈動の位相が調整される。
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、連続通電期間が180度となる3相交流を出力するように、前記インバータ回路(4)の制御を行うことを特徴とする。
この構成では、各相の通電期間が180度となる3相交流を出力するインバータ回路(いわゆる6ステップインバータ)において、出力電流の脈動などの不都合による影響を小さくした上で電圧利用率の向上、デバイス損失削減することが可能になる。
また、第4の発明は
第1の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力の相電圧が180度通電となるように制御するとき、180度毎に訪れる相電圧切替えタイミングにおいて、電圧誤差を無くすようにパルス電圧を出力するキャリア周期を存在させるように、前記インバータ回路(4)の制御を行うことを特徴とする。
この構成では、挿入するパルス電圧によってインバータ回路(4)の出力電圧を調整できる。
また、第5の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の実効値が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、出力電流の実効値を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第6の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の基本波成分の実効値が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、出力電流の基本波成分の実効値を指標として、前記位相が変動させられる。
また、第7の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流のピーク値が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、出力電流のピーク値を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第8の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクを求め、該トルクの変動が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、永久磁石同期電動機(7)のトルクを指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第9の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)の力率が改善できるように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、永久磁石同期電動機(7)の出力力率を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第10の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
入力された交流を脈動する直流に変換して前記インバータ回路(4)に供給する直流供給部(2,3)を備え、
前記制御部(5)は、前記直流供給部(2,3)へ入力される電流の高調波が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、直流供給部(2,3)へ入力される電流の高調波を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
第1の発明によれば、インバータ回路(4)の出力電流の脈動を小さくするできるので、直流リンク電圧の脈動に起因して生ずる不具合を低減して過変調制御を可能にする。
第2の発明によれば、第1の発明の効果をより効果的に得ることが可能になる。
また、第3の発明によれば、いわゆる6ステップインバータにおいて、電圧利用率向上とデバイス損失の削減を実現可能になる。
また、第4の発明によれば、インバータ回路(4)の出力電圧をより正確に制御できる。
また、第5から10の発明では、それぞれの指標に基づいて、基本波成分の位相変動が決定され、インバータ回路(4)の直流リンク電圧脈動による不具合が低減する。
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。 図2は、インバータ回路の出力空間ベクトル変調図である。 図3は、電圧方程式の各ベクトルの関係図である。 図4は、実施形態1における制御部の構成を説明するブロック図である。 図5は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行わずにモータを駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。 図6は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行ってモータを駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。 図7は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行わずに、図5,6の例よりもモータをより高速回転させた場合の出力電流等の波形を示す図である。 図8は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行って、図7と同回転数、同トルクでモータを駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
〈全体構成〉
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置(1)の構成を示すブロック図である。同図に示すように電力変換装置(1)は、コンバータ回路(2)、直流リンク部(3)、インバータ回路(4)、及び制御部(5)を備え、三相交流電源(6)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給するようになっている。なお、本実施形態のモータ(7)は、永久磁石同期電動機である。より具体的には、埋込磁石型モータ(以下、IPMモータともいう。IPM:Interior Permanent Magnet Motor)である。モータ(7)は、例えば空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動する。
〈コンバータ回路(2)〉
コンバータ回路(2)は、三相交流電源(6)に接続され、三相交流電源(6)が出力した三相交流を全波整流する。この例では、コンバータ回路(2)は、複数(本実施形態では6つ)のダイオード(D1〜D6)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。
〈直流リンク部(3)〉
直流リンク部(3)は、コンデンサ(3a)を備えている。コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力ノードにリアクトル(L)を介して並列接続されている。また、コンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)の入力ノード間に接続され、該コンデンサ(3a)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧(vdc))が、インバータ回路(4)に印加されている。
コンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)のスイッチング素子(後述)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。コンデンサ(3a)は、例えばフィルムコンデンサによって構成する。
コンデンサ(3a)をこのような静電容量とすることで、直流リンク部(3)が出力する直流リンク電圧(vdc)は脈動成分を有することになる。交流電源(6)は、三相交流電源なので、直流リンク電圧(vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の6倍の周波数で脈動する。この直流リンク部(3)と前記コンバータ回路(2)とで、本発明の直流供給部(2,3)の一例を構成している。
〈インバータ回路(4)〉
インバータ回路(4)は、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続されたモータ(7)に供給するようになっている。インバータ回路(4)は、複数のスイッチング素子がブリッジ結線されて構成されている。スイッチング素子(S)は、IGBT(Insulated-gate bipolar transistor)で構成されている。勿論、スイッチング素子(S)は、例えばFET(Field effect transistor)等の他の種類の半導体素子で構成してもよい。
このインバータ回路(4)は、三相交流をモータ(7)に出力するので、6個のスイッチング素子(S)を備えている。詳しくは、インバータ回路(4)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(S)と下アームのスイッチング素子(S)との中点が、それぞれモータ(7)の各相のコイル(図示は省略)に接続されている。
また、各スイッチング素子(S)には、還流ダイオード(D)が逆並列に接続されている。そして、インバータ回路(4)は、これらのスイッチング素子(S)のオンオフ動作によって、直流リンク部(3)から入力された直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして三相交流電圧に変換する。なお、このオンオフ動作の制御は、制御部(5)が行う。
〈制御部(5)〉
制御部(5)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムを含み、PWM制御モード(PWM:pulse width modulation)、過変調制御モード(後述)を適宜切り換えて前記スイッチングを制御する。過変調制御モードは、インバータ回路(4)の出力の一次成分(基本波成分ともいう)の振幅を、直流リンク電圧(vdc)よりも大きくしたい場合に選択される。
制御部(5)は、ベクトル制御によってインバータ回路(4)におけるスイッチングを制御する。図2は、インバータ回路(4)の出力空間ベクトル変調図である。図2では、3相交流を出力するインバータ回路の基本電圧ベクトルを示している。各基本電圧ベクトルは、上アームの何れのスイッチング素子(S)をオンにするかを示している。例えば、ベクトル(100)は上アームではU相のスイッチング素子(S)のみをオンにすることを示している。3相インバータ回路のPWM制御モードでは、図2の六角形の各頂点に向かう6つの基本電圧ベクトル、及び、大きさを持たない2つのゼロベクトル(000)、(111)の合計8つの基本電圧ベクトルのそれぞれに対応する8つのスイッチング状態を切替えて、所望の電圧及び位相の交流を出力する。
一方、本実施形態における過変調制御モードは、インバータ回路(4)の出力が、キャリア信号の1周期を通して、全相ハイ、或いは全相ローのパターンが現れない状態に制御するモードをいう。図2では、斜線で示した領域である。過変調制御モードでは、数キャリア周期連続して、所定のスイッチング素子(S)をオン或いはオフ状態に固定する。これにより、前記基本波成分をPWM制御モード時よりも高くすることが可能になる。
過変調制御モードでは、制御部(5)は、以下の考えに基づいて、インバータ回路(4)を制御する。
次に示す式は、IPMモータの電圧方程式である。また、図3は、電圧方程式の各ベクトルの関係図である。
Figure 2013085455
直流リンク電圧(vdc)は、既述の通り、三相交流電源(6)の出力電圧の周波数6倍の周波数で脈動する。そうすると、前記電圧方程式から分かるように、インバータ回路(4)の出力電圧の大きさが、三相交流電源(6)の出力電圧の周波数6倍の周波数で脈動する。モータ(7)に印加される電圧は、d軸及びq軸電圧(vd,vq)を用いて、√(vd^2+vq^2)と表せる。モータ(7)に印加される電圧の脈動の影響で、d軸及びq軸電流(id,iq)も脈動する。そして、d軸電流(id)やq軸電流(iq)の脈動は、モータ(7)の出力トルク変動、出力電流実効値の増大の原因となる。
そこで、制御部(5)では、過変調制御モードにおいて、直流リンク電圧(vdc)の脈動に応じて、モータ(7)のd軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルの2つの電圧ベクトルの合成電圧ベクトル(V0)のq軸から見た位相(arctan(vd/vq))を変動(脈動)させる。以下では、合成電圧ベクトル(V0)の位相のことを単に電圧位相とも呼ぶ。なお、ここでの合成電圧ベクトル(V0)は、基本波成分を考慮している。また、モータ(7)の回転子の磁石のN極の向きをd軸と定義し、それよりもπ/2を前進する方向をq軸に定義する。モータ(7)の固定子(コイル)の電流、及び電圧(u,v,w)を回転子の位置(θ)に合わせて変換すると、それぞれd,q軸電流、及びd,q軸電圧となる。
図4は、実施形態1における制御部(5)の構成を説明するブロック図である。図4に示すように、制御部(5)は、直流リンク電圧検出部(51)、ゼロクロス検出部(52)、振幅・位相検出部(53)、出力パルス検出部(54)、出力電流検出部(55)、出力電圧位相調整部(56)、及びインバータ制御信号算出部(57)を備えている。
−直流リンク電圧検出部(51)、ゼロクロス検出部(52)−
直流リンク電圧検出部(51)は、直流リンク電圧(vdc)を検出し、検出結果を振幅・位相検出部(53)及びインバータ制御信号算出部(57)に出力する。ゼロクロス検出部(52)は、三相交流電源(6)の線間電圧がゼロになるタイミング(いわゆるゼロクロス)を検出し、検出結果を振幅・位相検出部(53)に出力する。
−振幅・位相検出部(53)−
振幅・位相検出部(53)は、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の位相及び振幅を算出する。直流リンク電圧(vdc)の交流成分は、三相交流電源(6)の電圧(電源電圧)の周波数の6倍の周波数を有し、前記電源電圧の位相と直流リンク電圧(vdc)の交流成分の位相とは相間関係がある。そこで、振幅・位相検出部(53)は、ゼロクロス検出部(52)によるゼロクロスの検出結果から、直流リンク電圧(vdc)の交流成分の位相を求める。
また、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の振幅は、直流リンク電圧検出部(51)が検出した直流リンク電圧(vdc)と前記ゼロクロスの検出結果から算出する。
−出力パルス検出部(54)−
出力パルス検出部(54)は、インバータ回路(4)の各相(U相、V相、W相)の電圧(相電圧(vu,vv,vw))のパルス幅を検出し、検出結果をインバータ制御信号算出部(57)に出力するようになっている。
−出力電流検出部(55)−
出力電流検出部(55)は、インバータ回路(4)の各相(U相、V相、W相)の電流(iu,iv,iw)を検出し、検出値をモータ(7)におけるd軸電流(id)とq軸電流(iq)に変換して出力電圧位相調整部(56)及びインバータ制御信号算出部(57)に出力するようになっている。
−出力電圧位相調整部(56)−
出力電圧位相調整部(56)は、d軸及びq軸電流(id,iq)(インバータ回路(4)の出力電流)の実効値(以下、出力電流実効値と呼ぶ)が、過変調制御モードにおいて小さくなるように、直流リンク電圧(vdc)の脈動に応じて、前記電圧位相を変動(脈動)させる。すなわち、過変調制御モードでは、直流リンク電圧(vdc)の脈動に合わせて、前記電圧位相を進めたり遅らせたりする。例えば、前記電圧位相を進めると、電流(iu,iv,iw)は増加し、位相を遅らせると電流(iu,iv,iw)は、減少する。
ここで、前記出力電流実効値は、√(id^2+iq^2)と表せる。d軸及びq軸電流(id,iq)の値として、出力電流検出部(55)で求めた値を使用すれば、前記出力電流実効値を算出できる。本実施形態では、制御部(5)においてフィードバック制御を行って、電圧位相を変動させる際の変動幅を探索する。
−インバータ制御信号算出部(57)−
インバータ制御信号算出部(57)は、直流リンク電圧検出部(51)の出力、出力パルス検出部(54)の出力を受け、これらの出力に基づいて、インバータ回路(4)の各スイッチング素子(S)を駆動するゲート信号(G)を生成する。例えば、過変調制御モードでは、インバータ制御信号算出部(57)は、前記電圧位相が、出力電圧位相調整部(56)で求めた振れ幅で変動するように、各スイッチング素子(S)をオン或いはオフにするタイミングを求め、各スイッチング素子(S)に対するゲート信号(G)を生成する。
〈電力変換装置(1)の動作〉
PWM制御モードにおける動作は、一般的なインバータ回路と同様である。一方、過変調制御モードでは、振幅・位相検出部(53)において、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の位相及び振幅を求める。さらに出力電圧位相調整部(56)において、前記出力電流実効値を求めるとともに、その値が現状よりも小さくなるように、新たな前記電圧位相の振幅を求める。そして、電圧位相が、直流リンク電圧(vdc)の脈動の応じ、新たな振幅で変動するように、インバータ制御信号算出部(57)によって、インバータ回路(4)のスイッチングを制御する。
図5は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行わずにモータ(7)を駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。図5における電圧位相調整波形は、出力電圧位相調整部(56)による、前記電圧位相の脈動の制御状態を示している。この例では、電圧位相調整波形がフラットであり、この電圧位相調整波形は、出力電圧位相調整部(56)によって電圧位相調整が行われていないことを示している。このように、前記電圧位相を変動(脈動)させないと、出力電流波形は、変調されて、大きなうねりを有する波形となっている。
一方、図6は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行ってモータ(7)を駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。図6に示すように、この例では電圧位相調整波形が、脈動させられて、直流リンク電圧(vdc)の脈動に合わせて、前記電圧位相を進めたり遅らせたりしている。このように前記電圧位相を脈動させることで、出力電流の波形は、図5の例のような「うねり」がなくなっている。なお、図6の例では、時刻(t1)では、直流リンク電圧(vdc)は、脈動のピークであり、そのタイミングでは、電圧位相調整波形は概ね位相が0°となっている。
また、図7は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行わずに、図5,6の例よりもモータ(7)をより高速回転させた場合の出力電流等の波形を示す図である。この場合は、モータ(7)のトルクは低下している。図7の例においても、直流リンク電圧(vdc)の脈動に応じて、前記電圧位相を変動(脈動)させないと、出力電流波形は、変調されて大きくうねった波形となる。
図8は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行って、図7と同回転数、同トルクでモータ(7)を駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。図8の例でも、電圧位相調整波形が、脈動させられて、直流リンク電圧(vdc)の脈動に合わせて、前記電圧位相を進めたり遅らせたりしている。また、電圧位相調整波形の振幅(すなわち位相の変動幅)は、図6の例よりも大きくなっている。つまり、回転数やトルクに応じて、電圧位相調整波形の振幅を適宜調整するのである。このようにして、前記電圧位相を脈動させることで、出力電流の波形には、うねりがなくなっている(図7,図8を参照)。そして、図8の例では、時刻(t1)では、直流リンク電圧(vdc)は、脈動のボトムであり、そのタイミングでは、電圧位相調整波形も概ね位相が0°となっている。すなわち、図6の例とは、電圧位相調整波形の位相が異なっている。つまり、電圧位相調整波形は、モータ(7)の回転数やトルクの変更に合わせて、振幅や位相を調整してやるのが好適である。
なお、電圧位相調整波形の振幅や位相を決定するためには、必ずしもモータ(7)のトルクを検出する必要はない。例えば、出力電流、電圧、或いは電力など、モータ(7)のトルクに相関する指標を用いればよい。また、必ずしも、モータ(7)のトルクに相関する指標、及び回転数の両方を用いる必要はなく、何れか一方に基づいて、電圧位相調整波形振幅や位相を調整することも可能である。
〈本実施形態における効果〉
このように、前記電圧位相を制御して前記出力電流実効値が小さくなれば、インバータ回路(4)の出力電流に含まれる出力周波数以外の成分が小さくなる。また、前記出力電流実効値が小さくなれば、インバータ回路(4)の小容量化が可能になる。また、モータ(7)の損失の低減も可能になる。
〈実施形態1の変形例〉
なお、制御部(5)では、出力電流の基本波成分を抽出し、その基本波成分の実効値(以下、出力電流基本波実効値とも呼ぶ)が低減するように、前記電圧位相を制御してもよい。こうすることで、インバータ回路(4)の小容量化が可能になる。また、モータ(7)の損失の低減も可能になる。
また、制御部(5)では、出力電流のピーク値が低減するように、前記電圧位相を制御してもよい。こうすることで、パワーデバイスの小型化可能となる。
《発明の実施形態2》
実施形態2の電力変換装置(1)は、出力電流を指標とする代わりに、モータ(7)の出力トルクを指標として前記電圧位相を制御する。
モータ(7)のモータの出力トルクは、電流ベクトル(i)と電機子鎖交磁束ベクトルの外積でも求めることができる。具体的には、出力トルクは、下記の式で示すことができる。
Figure 2013085455
本実施形態の電力変換装置(1)は、出力電流を指標とする代わりに、モータ(7)の出力トルクを指標として、前記電圧位相を制御する。モータ出力トルクは、モータ電圧、電流、回転速度で定まる。そのため、電圧位相を制御すれば、トルクの制御が可能となる。具体的には、出力電圧位相調整部(56)においてフィードブック制御を行なって前記電圧位相を変動させることで実現する。
〈本実施形態の効果〉
以上のように、モータ(7)の出力トルクを制御することで、出力トルクの安定化が可能になる。その結果、モータ(7)の振動、音を抑制することが可能になる。
《発明の実施形態3》
実施形態3の電力変換装置(1)は、出力電流を指標とする代わりに、インバータ回路(4)の出力力率を指標として前記電圧位相を制御する。出力力率は、合成電圧ベクトル(V0)の位相と電流ベクトル(i)の位相との関係で定まる。そのため、前記電圧位相を制御すれば出力力率の制御が可能になる。具体的には、出力電圧位相調整部(56)においてフィードバック制御を行って前記電圧位相を変動させることで実現する。
出力力率が改善できれば、インバータ回路(4)、モータ(7)の小型化が可能になる。
《発明の実施形態4》
インバータ回路(4)への入力電流には、高調波成分が含まれる。そこで、実施形態4の電力変換装置(1)は、出力電流を指標にする代わりに、インバータ回路(4)の入力電流の高調波のレベルを指標として前記電圧位相の変動幅とタイミングを調整する。
こうすることで、電流高調波による電源への影響を低減できる。
《発明の実施形態5》
振幅・位相検出部(53)における交流成分の抽出には、電源周波数が既知である必要がある。しかしながら、この電源周波数は、ばらつく場合があるし国によって異なる。そこで、制御部(5)では、ゼロクロス検出部(52)で検出したゼロクロスの間隔をカウントすることで電源周波数を求めるようにしてもよい。
また、振幅・位相検出部(53)では、数キャリア周期先における、直流リンク部(3)の交流成分の位相、振幅を推定するようにしてもよい。制御部(5)は、既述の通り、マイクロコンピュータを備えているが、該マイクロコンピュータにおける演算では所定の時間が必要になる。この演算時間が長くなると、前記電圧位相を実際に制御するタイミングにおける交流成分の位相、振幅と、振幅・位相検出部(53)で検出した位相、振幅とのずれが大きくなる可能性がある。そこで、このように、数キャリア周期先における、直流リンク部(3)の交流成分の位相、振幅を推定するように振幅・位相検出部(53)を構成することで、前記電圧位相の制御性を向上させることが可能になる。
前述した直流リンク部(3)の交流成分の位相・振幅の検出方法は例示である。その他にも、例えば直流リンク電圧(vdc)から交流成分を抽出し、その交流成分が最小電圧となるタイミングを求めることで、該交流成分の位相及び振幅を検出してもよい。
なお、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の位相及び振幅の検出は、複数種類の方法による結果の平均を求めるなど、複数の方法を組み合わせてもよい。
《その他の実施形態》
〈1〉なお、電力変換装置(1)は、インバータ回路(4)が、いわゆる6ステップインバータとして動作するように構成してもよい。いわゆる6ステップインバータでは、各相の通電期間が180度となる交流を出力する。この制御は、制御部(5)で行えばよい。
〈2〉また、各相の通電期間が180度となる交流を出力するようにインバータ回路(4)を制御部(5)によって制御する場合には、インバータ回路(4)の出力に所定幅のパルス電圧が挿入されるように、インバータ回路(4)の制御を行うのが好ましい。例えば、インバータ回路(4)の出力の切り換わりタイミング(位相)と、キャリア信号の位相とがずれると、出力電圧に誤差を生ずる可能性がある。そこで、電圧調整用として、インバータ回路(4)から所定幅のパルスを出力させるのである。
〈3〉また、モータ(7)として用いたIPMモータは例示である。その他にも、いわゆるSPMモータ(Surface Permanent Magnet Motor)を用いてもよい。
本発明は、入力をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換する電力変換装置として有用である。
1 電力変換装置
2 コンバータ回路
3 直流リンク部
4 インバータ回路
5 制御部
7 モータ(永久磁石同期電動機)
本発明は、入力をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換する電力変換装置に関するものである。
従来より、インバータ回路を有した電力変換装置が知られている。インバータ回路は、スイッチング制御により、直流電力を可変周波数・可変電圧の交流電力に高効率変換する回路である。
このような電力変換装置には、直流リンク部に小容量の平滑コンデンサを用いるいわゆる電解コンデンサレスインバータ回路がある(例えば特許文献1を参照)。電解コンデンサレスインバータ回路では、ダイオード整流回路の出力側に、従来の大容量の平滑コンデンサ(電解コンデンサ)に代えて、例えば数百μF程度の小容量に構成される平滑コンデンサを設けている。三相交流が全波整流されて入力される電解コンデンサレスインバータ回路では、直流リンク電圧が電源(三相交流)の6倍周波数で脈動し、基本電圧ベクトルがゼロベクトル(モータ端子電圧がゼロとなる電圧ベクトル)を含まない制御状態(以下過変調状態)のときにモータの振動、音などの不具合が発生する。そのため通常、3相の電解コンデンサレスインバータでは過変調制御を行われておらず、3相の電解コンデンサレスインバータでの電圧利用率低下、デバイス損失増加の原因となっている。
特開2002−51589号公報
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、脈動する直流をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換して永久磁石同期電動機に出力する電力変換装置において、過変調状態においても直流リンク電圧の脈動に起因して生ずるモータの振動や騒音を抑制すること、3相の電解コンデンサレスインバータにおける、電圧利用率低下、デバイス損失の増大を防ぐことにある。
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
脈動成分を有する直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換して永久磁石同期電動機(7)に出力するインバータ回路(4)と、
基本電圧ベクトルを組み合わせてスイッチングを制御するベクトル制御によって前記インバータ回路(4)を制御し、前記基本電圧ベクトルがゼロベクトル(モータ端子電圧がゼロとなる電圧ベクトル)を含まない制御状態においては、前記脈動成分に応じて前記永久磁石同期電動機(7)のd軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルの2つの電圧ベクトルの合成電圧ベクトル(V0)のq軸から見た位相を脈動させる制御部(5)と、
を備え
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の実効値の低減、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクの脈動の低減、及び力率の向上の少なくともひとつが可能となるように、前記電圧ベクトル位相の脈動の振幅、及び直流リンク電圧(vdc)に対する位相を調整することを特徴とする。
この構成では、過変調状態において、インバータ回路(4)の出力の基本波成分の位相を、前記脈動に応じて変動させるので、インバータ回路(4)の直流リンク電圧脈動の影響を低減し、過変調制御を可能にすることができ、ひいては電圧利用率低下、デバイス損失の増大を防ぐことが出来る。
また、第2の発明は、
第1の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクに相関する指標、回転数の何れか一つもしくは両方に応じて、前記位相の脈動の位相を調整することを特徴とする。
この構成では、トルクに相関する指標、又は回転数に応じて、前記位相の脈動の位相が調整される。
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、連続通電期間が180度となる3相交流を出力するように、前記インバータ回路(4)の制御を行うことを特徴とする。
この構成では、各相の通電期間が180度となる3相交流を出力するインバータ回路(いわゆる6ステップインバータ)において、出力電流の脈動などの不都合による影響を小さくした上で電圧利用率の向上、デバイス損失削減することが可能になる。
また、第4の発明は
第1の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力の相電圧が180度通電となるように制御するとき、180度毎に訪れる相電圧切替えタイミングにおいて、電圧誤差を無くすようにインバータ回路(4)の出力に、電圧調整用として所定幅のパルス電圧を挿入することを特徴とする。
この構成では、挿入するパルス電圧によってインバータ回路(4)の出力電圧を調整できる。
また、第5の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の実効値が低減するように、前記インバータ回路(4)の出力電圧の基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、出力電流の実効値を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第6の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の基本波成分の実効値が低減するように、前記インバータ回路(4)の出力電圧の基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、出力電流の基本波成分の実効値を指標として、前記位相が変動させられる。
また、第7の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流のピーク値が低減するように、前記インバータ回路(4)の出力電圧の基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、出力電流のピーク値を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第8の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクを求め、該トルクの変動が低減するように、前記インバータ回路(4)の出力電圧の基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、永久磁石同期電動機(7)のトルクを指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第9の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)の力率が改善できるように、前記インバータ回路(4)の出力電圧の基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、永久磁石同期電動機(7)の出力力率を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
また、第10の発明は、
第1から第4の発明の何れかの電力変換装置において、
入力された交流を脈動する直流に変換して前記インバータ回路(4)に供給する直流供給部(2,3)を備え、
前記制御部(5)は、前記直流供給部(2,3)へ入力される電流の高調波が低減するように、前記インバータ回路(4)の出力電圧の基本波成分の位相を変動させることを特徴とする。
この構成では、直流供給部(2,3)へ入力される電流の高調波を指標として、基本波成分の位相が変動させられる。
第1の発明によれば、インバータ回路(4)の出力電流の脈動を小さくするできるので、直流リンク電圧の脈動に起因して生ずる不具合を低減して過変調制御を可能にする。
第2の発明によれば、第1の発明の効果をより効果的に得ることが可能になる。
また、第3の発明によれば、いわゆる6ステップインバータにおいて、電圧利用率向上とデバイス損失の削減を実現可能になる。
また、第4の発明によれば、インバータ回路(4)の出力電圧をより正確に制御できる。
また、第5から10の発明では、それぞれの指標に基づいて、基本波成分の位相変動が決定され、インバータ回路(4)の直流リンク電圧脈動による不具合が低減する。
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。 図2は、インバータ回路の出力空間ベクトル変調図である。 図3は、電圧方程式の各ベクトルの関係図である。 図4は、実施形態1における制御部の構成を説明するブロック図である。 図5は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行わずにモータを駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。 図6は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行ってモータを駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。 図7は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行わずに、図5,6の例よりもモータをより高速回転させた場合の出力電流等の波形を示す図である。 図8は、出力電圧位相調整部による電圧位相調整を行って、図7と同回転数、同トルクでモータを駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
〈全体構成〉
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置(1)の構成を示すブロック図である。同図に示すように電力変換装置(1)は、コンバータ回路(2)、直流リンク部(3)、インバータ回路(4)、及び制御部(5)を備え、三相交流電源(6)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給するようになっている。なお、本実施形態のモータ(7)は、永久磁石同期電動機である。より具体的には、埋込磁石型モータ(以下、IPMモータともいう。IPM:Interior Permanent Magnet Motor)である。モータ(7)は、例えば空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動する。
〈コンバータ回路(2)〉
コンバータ回路(2)は、三相交流電源(6)に接続され、三相交流電源(6)が出力した三相交流を全波整流する。この例では、コンバータ回路(2)は、複数(本実施形態では6つ)のダイオード(D1〜D6)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。
〈直流リンク部(3)〉
直流リンク部(3)は、コンデンサ(3a)を備えている。コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力ノードにリアクトル(L)を介して並列接続されている。また、コンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)の入力ノード間に接続され、該コンデンサ(3a)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧(vdc))が、インバータ回路(4)に印加されている。
コンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)のスイッチング素子(後述)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。コンデンサ(3a)は、例えばフィルムコンデンサによって構成する。
コンデンサ(3a)をこのような静電容量とすることで、直流リンク部(3)が出力する直流リンク電圧(vdc)は脈動成分を有することになる。交流電源(6)は、三相交流電源なので、直流リンク電圧(vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の6倍の周波数で脈動する。この直流リンク部(3)と前記コンバータ回路(2)とで、本発明の直流供給部(2,3)の一例を構成している。
〈インバータ回路(4)〉
インバータ回路(4)は、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続されたモータ(7)に供給するようになっている。インバータ回路(4)は、複数のスイッチング素子がブリッジ結線されて構成されている。スイッチング素子(S)は、IGBT(Insulated-gate bipolar transistor)で構成されている。勿論、スイッチング素子(S)は、例えばFET(Field effect transistor)等の他の種類の半導体素子で構成してもよい。
このインバータ回路(4)は、三相交流をモータ(7)に出力するので、6個のスイッチング素子(S)を備えている。詳しくは、インバータ回路(4)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(S)と下アームのスイッチング素子(S)との中点が、それぞれモータ(7)の各相のコイル(図示は省略)に接続されている。
また、各スイッチング素子(S)には、還流ダイオード(D)が逆並列に接続されている。そして、インバータ回路(4)は、これらのスイッチング素子(S)のオンオフ動作によって、直流リンク部(3)から入力された直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして三相交流電圧に変換する。なお、このオンオフ動作の制御は、制御部(5)が行う。
〈制御部(5)〉
制御部(5)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムを含み、PWM制御モード(PWM:pulse width modulation)、過変調制御モード(後述)を適宜切り換えて前記スイッチングを制御する。過変調制御モードは、インバータ回路(4)の出力の一次成分(基本波成分ともいう)の振幅を、直流リンク電圧(vdc)よりも大きくしたい場合に選択される。
制御部(5)は、ベクトル制御によってインバータ回路(4)におけるスイッチングを制御する。図2は、インバータ回路(4)の出力空間ベクトル変調図である。図2では、3相交流を出力するインバータ回路の基本電圧ベクトルを示している。各基本電圧ベクトルは、上アームの何れのスイッチング素子(S)をオンにするかを示している。例えば、ベクトル(100)は上アームではU相のスイッチング素子(S)のみをオンにすることを示している。3相インバータ回路のPWM制御モードでは、図2の六角形の各頂点に向かう6つの基本電圧ベクトル、及び、大きさを持たない2つのゼロベクトル(000)、(111)の合計8つの基本電圧ベクトルのそれぞれに対応する8つのスイッチング状態を切替えて、所望の電圧及び位相の交流を出力する。
一方、本実施形態における過変調制御モードは、インバータ回路(4)の出力が、キャリア信号の1周期を通して、全相ハイ、或いは全相ローのパターンが現れない状態に制御するモードをいう。図2では、斜線で示した領域である。過変調制御モードでは、数キャリア周期連続して、所定のスイッチング素子(S)をオン或いはオフ状態に固定する。これにより、前記基本波成分をPWM制御モード時よりも高くすることが可能になる。
過変調制御モードでは、制御部(5)は、以下の考えに基づいて、インバータ回路(4)を制御する。
次に示す式は、IPMモータの電圧方程式である。また、図3は、電圧方程式の各ベクトルの関係図である。
Figure 2013085455
直流リンク電圧(vdc)は、既述の通り、三相交流電源(6)の出力電圧の周波数6倍の周波数で脈動する。そうすると、前記電圧方程式から分かるように、インバータ回路(4)の出力電圧の大きさが、三相交流電源(6)の出力電圧の周波数6倍の周波数で脈動する。モータ(7)に印加される電圧は、d軸及びq軸電圧(vd,vq)を用いて、√(vd^2+vq^2)と表せる。モータ(7)に印加される電圧の脈動の影響で、d軸及びq軸電流(id,iq)も脈動する。そして、d軸電流(id)やq軸電流(iq)の脈動は、モータ(7)の出力トルク変動、出力電流実効値の増大の原因となる。
そこで、制御部(5)では、過変調制御モードにおいて、直流リンク電圧(vdc)の脈動に応じて、モータ(7)のd軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルの2つの電圧ベクトルの合成電圧ベクトル(V0)のq軸から見た位相(arctan(vd/vq))を変動(脈動)させる。以下では、合成電圧ベクトル(V0)の位相のことを単に電圧位相とも呼ぶ。なお、ここでの合成電圧ベクトル(V0)は、基本波成分を考慮している。また、モータ(7)の回転子の磁石のN極の向きをd軸と定義し、それよりもπ/2を前進する方向をq軸に定義する。モータ(7)の固定子(コイル)の電流、及び電圧(u,v,w)を回転子の位置(θ)に合わせて変換すると、それぞれd,q軸電流、及びd,q軸電圧となる。
図4は、実施形態1における制御部(5)の構成を説明するブロック図である。図4に示すように、制御部(5)は、直流リンク電圧検出部(51)、ゼロクロス検出部(52)、振幅・位相検出部(53)、出力パルス検出部(54)、出力電流検出部(55)、出力電圧位相調整部(56)、及びインバータ制御信号算出部(57)を備えている。
−直流リンク電圧検出部(51)、ゼロクロス検出部(52)−
直流リンク電圧検出部(51)は、直流リンク電圧(vdc)を検出し、検出結果を振幅・位相検出部(53)及びインバータ制御信号算出部(57)に出力する。ゼロクロス検出部(52)は、三相交流電源(6)の線間電圧がゼロになるタイミング(いわゆるゼロクロス)を検出し、検出結果を振幅・位相検出部(53)に出力する。
−振幅・位相検出部(53)−
振幅・位相検出部(53)は、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の位相及び振幅を算出する。直流リンク電圧(vdc)の交流成分は、三相交流電源(6)の電圧(電源電圧)の周波数の6倍の周波数を有し、前記電源電圧の位相と直流リンク電圧(vdc)の交流成分の位相とは相間関係がある。そこで、振幅・位相検出部(53)は、ゼロクロス検出部(52)によるゼロクロスの検出結果から、直流リンク電圧(vdc)の交流成分の位相を求める。
また、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の振幅は、直流リンク電圧検出部(51)が検出した直流リンク電圧(vdc)と前記ゼロクロスの検出結果から算出する。
−出力パルス検出部(54)−
出力パルス検出部(54)は、インバータ回路(4)の各相(U相、V相、W相)の電圧(相電圧(vu,vv,vw))のパルス幅を検出し、検出結果をインバータ制御信号算出部(57)に出力するようになっている。
−出力電流検出部(55)−
出力電流検出部(55)は、インバータ回路(4)の各相(U相、V相、W相)の電流(iu,iv,iw)を検出し、検出値をモータ(7)におけるd軸電流(id)とq軸電流(iq)に変換して出力電圧位相調整部(56)及びインバータ制御信号算出部(57)に出力するようになっている。
−出力電圧位相調整部(56)−
出力電圧位相調整部(56)は、d軸及びq軸電流(id,iq)(インバータ回路(4)の出力電流)の実効値(以下、出力電流実効値と呼ぶ)が、過変調制御モードにおいて小さくなるように、直流リンク電圧(vdc)の脈動に応じて、前記電圧位相を変動(脈動)させる。すなわち、過変調制御モードでは、直流リンク電圧(vdc)の脈動に合わせて、前記電圧位相を進めたり遅らせたりする。例えば、前記電圧位相を進めると、電流(iu,iv,iw)は増加し、位相を遅らせると電流(iu,iv,iw)は、減少する。
ここで、前記出力電流実効値は、√(id^2+iq^2)と表せる。d軸及びq軸電流(id,iq)の値として、出力電流検出部(55)で求めた値を使用すれば、前記出力電流実効値を算出できる。本実施形態では、制御部(5)においてフィードバック制御を行って、電圧位相を変動させる際の変動幅を探索する。
−インバータ制御信号算出部(57)−
インバータ制御信号算出部(57)は、直流リンク電圧検出部(51)の出力、出力パルス検出部(54)の出力を受け、これらの出力に基づいて、インバータ回路(4)の各スイッチング素子(S)を駆動するゲート信号(G)を生成する。例えば、過変調制御モードでは、インバータ制御信号算出部(57)は、前記電圧位相が、出力電圧位相調整部(56)で求めた振れ幅で変動するように、各スイッチング素子(S)をオン或いはオフにするタイミングを求め、各スイッチング素子(S)に対するゲート信号(G)を生成する。
〈電力変換装置(1)の動作〉
PWM制御モードにおける動作は、一般的なインバータ回路と同様である。一方、過変調制御モードでは、振幅・位相検出部(53)において、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の位相及び振幅を求める。さらに出力電圧位相調整部(56)において、前記出力電流実効値を求めるとともに、その値が現状よりも小さくなるように、新たな前記電圧位相の振幅を求める。そして、電圧位相が、直流リンク電圧(vdc)の脈動の応じ、新たな振幅で変動するように、インバータ制御信号算出部(57)によって、インバータ回路(4)のスイッチングを制御する。
図5は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行わずにモータ(7)を駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。図5における電圧位相調整波形は、出力電圧位相調整部(56)による、前記電圧位相の脈動の制御状態を示している。この例では、電圧位相調整波形がフラットであり、この電圧位相調整波形は、出力電圧位相調整部(56)によって電圧位相調整が行われていないことを示している。このように、前記電圧位相を変動(脈動)させないと、出力電流波形は、変調されて、大きなうねりを有する波形となっている。
一方、図6は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行ってモータ(7)を駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。図6に示すように、この例では電圧位相調整波形が、脈動させられて、直流リンク電圧(vdc)の脈動に合わせて、前記電圧位相を進めたり遅らせたりしている。このように前記電圧位相を脈動させることで、出力電流の波形は、図5の例のような「うねり」がなくなっている。なお、図6の例では、時刻(t1)では、直流リンク電圧(vdc)は、脈動のピークであり、そのタイミングでは、電圧位相調整波形は概ね位相が0°となっている。
また、図7は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行わずに、図5,6の例よりもモータ(7)をより高速回転させた場合の出力電流等の波形を示す図である。この場合は、モータ(7)のトルクは低下している。図7の例においても、直流リンク電圧(vdc)の脈動に応じて、前記電圧位相を変動(脈動)させないと、出力電流波形は、変調されて大きくうねった波形となる。
図8は、出力電圧位相調整部(56)による電圧位相調整を行って、図7と同回転数、同トルクでモータ(7)を駆動した場合の出力電流等の波形を示す図である。図8の例でも、電圧位相調整波形が、脈動させられて、直流リンク電圧(vdc)の脈動に合わせて、前記電圧位相を進めたり遅らせたりしている。また、電圧位相調整波形の振幅(すなわち位相の変動幅)は、図6の例よりも大きくなっている。つまり、回転数やトルクに応じて、電圧位相調整波形の振幅を適宜調整するのである。このようにして、前記電圧位相を脈動させることで、出力電流の波形には、うねりがなくなっている(図7,図8を参照)。そして、図8の例では、時刻(t1)では、直流リンク電圧(vdc)は、脈動のボトムであり、そのタイミングでは、電圧位相調整波形も概ね位相が0°となっている。すなわち、図6の例とは、電圧位相調整波形の位相が異なっている。つまり、電圧位相調整波形は、モータ(7)の回転数やトルクの変更に合わせて、振幅や位相を調整してやるのが好適である。
なお、電圧位相調整波形の振幅や位相を決定するためには、必ずしもモータ(7)のトルクを検出する必要はない。例えば、出力電流、電圧、或いは電力など、モータ(7)のトルクに相関する指標を用いればよい。また、必ずしも、モータ(7)のトルクに相関する指標、及び回転数の両方を用いる必要はなく、何れか一方に基づいて、電圧位相調整波形振幅や位相を調整することも可能である。
〈本実施形態における効果〉
このように、前記電圧位相を制御して前記出力電流実効値が小さくなれば、インバータ回路(4)の出力電流に含まれる出力周波数以外の成分が小さくなる。また、前記出力電流実効値が小さくなれば、インバータ回路(4)の小容量化が可能になる。また、モータ(7)の損失の低減も可能になる。
〈実施形態1の変形例〉
なお、制御部(5)では、出力電流の基本波成分を抽出し、その基本波成分の実効値(以下、出力電流基本波実効値とも呼ぶ)が低減するように、前記電圧位相を制御してもよい。こうすることで、インバータ回路(4)の小容量化が可能になる。また、モータ(7)の損失の低減も可能になる。
また、制御部(5)では、出力電流のピーク値が低減するように、前記電圧位相を制御してもよい。こうすることで、パワーデバイスの小型化可能となる。
《発明の実施形態2》
実施形態2の電力変換装置(1)は、出力電流を指標とする代わりに、モータ(7)の出力トルクを指標として前記電圧位相を制御する。
モータ(7)のモータの出力トルクは、電流ベクトル(i)と電機子鎖交磁束ベクトルの外積でも求めることができる。具体的には、出力トルクは、下記の式で示すことができる。
Figure 2013085455
本実施形態の電力変換装置(1)は、出力電流を指標とする代わりに、モータ(7)の出力トルクを指標として、前記電圧位相を制御する。モータ出力トルクは、モータ電圧、電流、回転速度で定まる。そのため、電圧位相を制御すれば、トルクの制御が可能となる。具体的には、出力電圧位相調整部(56)においてフィードブック制御を行なって前記電圧位相を変動させることで実現する。
〈本実施形態の効果〉
以上のように、モータ(7)の出力トルクを制御することで、出力トルクの安定化が可能になる。その結果、モータ(7)の振動、音を抑制することが可能になる。
《発明の実施形態3》
実施形態3の電力変換装置(1)は、出力電流を指標とする代わりに、インバータ回路(4)の出力力率を指標として前記電圧位相を制御する。出力力率は、合成電圧ベクトル(V0)の位相と電流ベクトル(i)の位相との関係で定まる。そのため、前記電圧位相を制御すれば出力力率の制御が可能になる。具体的には、出力電圧位相調整部(56)においてフィードバック制御を行って前記電圧位相を変動させることで実現する。
出力力率が改善できれば、インバータ回路(4)、モータ(7)の小型化が可能になる。
《発明の実施形態4》
インバータ回路(4)への入力電流には、高調波成分が含まれる。そこで、実施形態4の電力変換装置(1)は、出力電流を指標にする代わりに、インバータ回路(4)の入力電流の高調波のレベルを指標として前記電圧位相の変動幅とタイミングを調整する。
こうすることで、電流高調波による電源への影響を低減できる。
《発明の実施形態5》
振幅・位相検出部(53)における交流成分の抽出には、電源周波数が既知である必要がある。しかしながら、この電源周波数は、ばらつく場合があるし国によって異なる。そこで、制御部(5)では、ゼロクロス検出部(52)で検出したゼロクロスの間隔をカウントすることで電源周波数を求めるようにしてもよい。
また、振幅・位相検出部(53)では、数キャリア周期先における、直流リンク部(3)の交流成分の位相、振幅を推定するようにしてもよい。制御部(5)は、既述の通り、マイクロコンピュータを備えているが、該マイクロコンピュータにおける演算では所定の時間が必要になる。この演算時間が長くなると、前記電圧位相を実際に制御するタイミングにおける交流成分の位相、振幅と、振幅・位相検出部(53)で検出した位相、振幅とのずれが大きくなる可能性がある。そこで、このように、数キャリア周期先における、直流リンク部(3)の交流成分の位相、振幅を推定するように振幅・位相検出部(53)を構成することで、前記電圧位相の制御性を向上させることが可能になる。
前述した直流リンク部(3)の交流成分の位相・振幅の検出方法は例示である。その他にも、例えば直流リンク電圧(vdc)から交流成分を抽出し、その交流成分が最小電圧となるタイミングを求めることで、該交流成分の位相及び振幅を検出してもよい。
なお、直流リンク電圧(vdc)に含まれる交流成分の位相及び振幅の検出は、複数種類の方法による結果の平均を求めるなど、複数の方法を組み合わせてもよい。
《その他の実施形態》
〈1〉なお、電力変換装置(1)は、インバータ回路(4)が、いわゆる6ステップインバータとして動作するように構成してもよい。いわゆる6ステップインバータでは、各相の通電期間が180度となる交流を出力する。この制御は、制御部(5)で行えばよい。
〈2〉また、各相の通電期間が180度となる交流を出力するようにインバータ回路(4)を制御部(5)によって制御する場合には、インバータ回路(4)の出力に所定幅のパルス電圧が挿入されるように、インバータ回路(4)の制御を行うのが好ましい。例えば、インバータ回路(4)の出力の切り換わりタイミング(位相)と、キャリア信号の位相とがずれると、出力電圧に誤差を生ずる可能性がある。そこで、電圧調整用として、インバータ回路(4)から所定幅のパルスを出力させるのである。
〈3〉また、モータ(7)として用いたIPMモータは例示である。その他にも、いわゆるSPMモータ(Surface Permanent Magnet Motor)を用いてもよい。
本発明は、入力をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換する電力変換装置として有用である。
1 電力変換装置
2 コンバータ回路
3 直流リンク部
4 インバータ回路
5 制御部
7 モータ(永久磁石同期電動機)

Claims (10)

  1. 脈動成分を有する直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして所定周波数、及び所定電圧の出力交流に変換して永久磁石同期電動機(7)に出力するインバータ回路(4)と、
    基本電圧ベクトルを組み合わせてスイッチングを制御するベクトル制御によって前記インバータ回路(4)を制御し、前記基本電圧ベクトルがゼロベクトル(モータ端子電圧がゼロとなる電圧ベクトル)を含まない制御状態においては、前記脈動成分に応じて前記永久磁石同期電動機(7)のd軸電圧ベクトルとq軸電圧ベクトルの2つの電圧ベクトルの合成電圧ベクトル(V0)のq軸から見た位相を脈動させる制御部(5)と、
    を備えたことを特徴とする電力変換装置。
  2. 請求項1の電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクに相関する指標、回転数の何れか一つもしくは両方に応じて、前記位相の脈動の位相を調整することを特徴とする電力変換装置。
  3. 請求項1又は請求項2の電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、連続通電期間が180度となる3相交流を出力するように、前記インバータ回路(4)の制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
  4. 請求項1の電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力の相電圧が180度通電となるように制御するとき、180度毎に訪れる相電圧切替えタイミングにおいて、電圧誤差を無くすようにパルス電圧を出力するキャリア周期を存在させるように、前記インバータ回路(4)の制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
  5. 請求項1から請求項4の何れかの電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の実効値が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする電力変換装置。
  6. 請求項1から請求項4の何れかの電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流の基本波成分の実効値が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする電力変換装置。
  7. 請求項1から請求項4の何れかの電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記インバータ回路(4)の出力電流のピーク値が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする電力変換装置。
  8. 請求項1から請求項4の何れかの電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)のトルクを求め、該トルクの変動が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする電力変換装置。
  9. 請求項1から請求項4の何れかの電力変換装置において、
    前記制御部(5)は、前記永久磁石同期電動機(7)の力率が改善できるように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする電力変換装置。
  10. 請求項1から請求項4の何れかの電力変換装置において、
    入力された交流を脈動する直流に変換して前記インバータ回路(4)に供給する直流供給部(2,3)を備え、
    前記制御部(5)は、前記直流供給部(2,3)へ入力される電流の高調波が低減するように、前記基本波成分の位相を変動させることを特徴とする電力変換装置。
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