JP2013062047A - リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池及びリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池及びリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】負極活物質層との密着性を向上させる。
【解決手段】シリコン系の負極活物質層15a(15b)及びスズ系の負極活物質層15a(15b)の担持に用いられるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10であって、銅または銅合金からなる銅箔と、銅箔の少なくとも片面に粗化めっきにより付着させた粒状電着物と、を備え、粒状電着物の平均粒径は、0.4μm以上1.0μm未満であり、かつ、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の粒状電着物の個数は、銅箔の表面積100μmあたりに150個以上650個未満である。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔、それを備える負極及び電池並びにリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法に関する。
近年、リチウムイオン二次電池は、モバイル機器用途をはじめとして広く普及してきている。リチウムイオン二次電池は、正極、負極、正極と負極とを絶縁するセパレータ、及び正極と負極との間でリチウム(Li)イオンの移動を可能にする電解液から主に構成される。この構成において、Liイオンが正極材と負極材との間で出入り(インターカレーション/デインターカレーション)することで、充放電を繰り返すことができる。
正極としては、例えば帯状のアルミニウム(Al)箔等からなる正極集電箔上に、コバルト酸リチウム(LiCoO)やマンガンスピネル(LiMn)等からなる正極材(正極活物質)の層を形成したものが用いられる。また、負極としては、例えば銅箔等からなる負極集電箔上に、炭素(C)系の負極材(負極活物質)の層を形成したものが用いられる。上記電解液は電解質として機能し、主に有機溶媒を主体とする過塩素酸リチウム(LiClO)等の非水性の電解液が用いられる。また、セパレータは、正極と負極とを分離して両極の短絡を抑制するフィルムで構成される。
リチウムイオン二次電池の高容量化のため、リチウムイオン二次電池の負極活物質層には、単位重量又は単位体積あたりから取り出せるエネルギーが大きいことが要求されている。そこで、近年、放電容量の大きいシリコン(Si)、スズ(Sn)、又はこれらいずれかの元素を含有する負極活物質が提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
これらの材料には、Liイオンを吸蔵したときの体積膨張がきわめて大きいという弊害がある。したがって、繰り返し充放電サイクルを経ると、負極集電銅箔から負極活物質層が剥離・脱落し、サイクル特性、つまり、充放電の繰り返しによる放電容量の維持性が急激に低下してしまう。
そこで、負極集電銅箔と負極活物質層との密着性を向上させるため、負極集電銅箔となる銅箔等の表面に凹凸を形成する表面粗化処理が施されることがある。表面粗化処理の方法としては、粗化めっき、粗面ロールによる圧延、ブラスト処理等が知られており、これらの中でも特に粗化めっきが多用されている。この技術は、硫酸銅(CuSO)等の酸性めっき浴を用いて銅箔の表面に銅(Cu)の電着物を多数形成するものである。これにより、アンカー効果が得られ、負極活物質層との密着性が改善される。
上記特許文献1には、粗面化処理を施して凹凸を形成した銅箔に活物質であるシリコン薄膜を堆積させ、その表面にも凹凸ができることで、シリコン薄膜の銅箔からの剥離を防ぐ方法について開示されている。特許文献1によれば、放電反応によるシリコン薄膜の収縮時、シリコン薄膜内の引っ張り応力が凹凸の谷部に集中してシリコン薄膜に切れ目が形成され、これにより応力が開放されて銅箔からの剥離を防ぐことができる。
また、例えば特許文献4には、酸化銅粉の熱処理により複数の凸部を銅箔の表面に形成する方法について開示されている。このとき、酸化銅粉の粒径を5μm以上100μm未満、凸部のピッチを20μm以上100μm未満とすることで、負極活物質層であるカーボン膜との密着性を向上させることができるとある。
一方、例えば特許文献5には、Si系及びSn系活物質用リチウム二次電池負極用集電体における好適な表面形状等が具体的に定義されている。すなわち、銅電着層が粒状を呈し、かつ表面側に向かってふくらみを有し、該ふくらみ部の径が0.5μm〜5μm、好ましくは1μm〜3μm、粒子数が500,000個/mm〜1,000,000個/mm、好ましくは700,000個/mm〜900,000個/mmの密度で分布することで、活物質との密着性が向上するとある。
特開2002−083594号公報 特許第2997741号公報 特開2000−243396号公報 特開2001−273904号公報 特開2006−190514号公報
このように、上記特許文献4,5では、負極活物質層との密着性の向上を目的として、銅電着層等の粒状電着物の粒径や密度等について一定の検討がなされている。しかしながら、粒状電着物を含む負極集電銅箔の表面性状については未だ最適化されているとは言い難く、負極集電銅箔と負極活物質層との密着性には改善の余地がある。
本発明の目的は、負極活物質層との密着性を向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔、それを備える負極及び電池並びにリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、シリコン系の負極活物質層及びスズ系の負極活物質層の担持に用いられるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔であって、銅または銅合金からなる銅箔と、前記銅箔の少なくとも片面に粗化めっきにより付着させた粒状電着物と、を備え、前記粒状電着物の平均粒径は、0.4μm以上1.0μm未満であり、かつ、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の前記粒状電着物の個数は、前記銅箔の表面積100μmあたりに150個以上650個未満であるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔が提供される。
本発明の第2の態様によれば、前記粒状電着物を覆うように、ニッケル−コバルト合金めっき層、亜鉛めっき層、クロメート層がこの順に積層された防錆めっき層を備え、前記防錆めっき層の厚さが100nm未満である第1の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔が提供される。
本発明の第3の態様によれば、前記銅箔を構成する前記銅合金は、無酸素銅にジルコニウムを0.015質量%以上0.03質量%以下配合した銅合金である第1又は第2の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔が提供される。
本発明の第4の態様によれば、前記銅箔を構成する前記銅は、タフピッチ銅である第1又は第2の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔が提供される。
本発明の第5の態様によれば、第1の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔と、前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の少なくとも片面に形成されたシリ
コン系又はスズ系の負極活物質層と、前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔に接続されたタブリードと、を備えるリチウムイオン二次電池用負極が提供される。
本発明の第6の態様によれば、第5の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、リチウムイオン二次電池用正極と、前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極の間に挿入されたセパレータと、前記セパレータが間に挿入された前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極が収容され、電解液が封入された容器と、を備えるリチウムイオン二次電池が提供される。
本発明の第7の態様によれば、シリコン系の負極活物質層及びスズ系の負極活物質層の担持に用いられるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法であって、銅又は銅合金からなる銅箔を陰極として粗化めっきを施し、前記銅箔の少なくとも片面に粒状電着物を付着させる粗化めっき工程を有し、前記粗化めっき工程では、前記粒状電着物の平均粒径が、0.4μm以上1.0μm未満となり、かつ、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の前記粒状電着物の個数が、前記銅箔の表面積100μmあたりに150個以上650個未満となるよう粗化めっき条件を制御するリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法が提供される。
本発明の第8の態様によれば、前記粗化めっき工程では、前記銅箔の同一面に対して前記粗化めっきが2回以上施されるように前記粗化めっき条件を制御する第7の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法が提供される。
本発明の第9の態様によれば、前記粗化めっき工程では、前記銅箔に対する陽極の距離が次第に変化していくように前記粗化めっき条件を制御する第7の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法が提供される。
本発明によれば、負極活物質層との密着性を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の断面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の平面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の斜視断面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造工程で用いる連続めっき処理装置の概略構成図である。 図4の連続めっき処理装置が備える粗化めっき浴の一例を示す概略構成図である。 図4の連続めっき処理装置が備える粗化めっき浴の他の例を示す概略構成図である。 本発明の実施例1及び5に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の表面を観測した走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例3及び7に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の表面を観測した走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔と負極活物質層との密着性を測定する実験装置の概略図である。
上述したように、負極活物質層の担持に用いられる負極集電銅箔の表面性状については、例えば特許文献4,5にて、一定の検討がなされている。特許文献4,5によれば、負
極集電銅箔と負極活物質層との密着性を向上させるうえでは、銅電着層等の粒状電着物の粒径は、例えば数μm程度と、大きいほうが好ましいと結論づけられている。
しかしながら、本発明者等が鋭意研究を行った結果、粒状電着物を含む負極集電銅箔の表面性状については未だ検討の余地があることが判明した。すなわち、本発明者等は、粒状電着物の平均粒径が小さく、かつ、粒状電着物の個数の多い負極集電銅箔において、負極活物質層との密着性に優れることを見いだした。
本発明は、発明者等が見いだした上記知見に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
(1)リチウムイオン二次電池の概略構成
まずは、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の概略構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極1の平面図である。図3は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池50の斜視断面図である。
図3に示すように、リチウムイオン二次電池50は、図示しない電解液が封入された容器としての電池外挿缶5を備えている。電池外挿缶5には、タブリード16を備えたリチウムイオン二次電池用負極1(以下、単に「負極1」ともいう)と、タブリード26を備えたリチウムイオン二次電池用正極2(以下、単に「正極2」ともいう)とが、間にセパレータ3が挿入された状態で収容されている。
また、図2に示すように、負極1は、リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10(以下、単に「負極集電銅箔10」ともいう)と、例えばその両面に形成された負極活物質層15a,15bとを備える。上述のタブリード16は、負極集電銅箔10の露出領域10sに直接接続されている。リチウムイオン二次電池50及びリチウムイオン二次電池用負極1の詳細の構成については後述する。
(2)リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の構成
以下に、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10の断面図である。
図1に示すように、負極集電銅箔10は、例えば銅合金からなる銅箔としての銅合金箔11を備える。銅合金箔11は、例えば無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)にジルコニウム(Zr)クロム(Cr)、スズ(Sn)、リン(P)等を配合した銅合金等からなる高耐力性かつ高耐熱性の圧延銅箔である。より具体的には、日立電線株式会社製のHCL02Z箔(Zrを0.015質量%〜0.030質量%配合)等を用いることができる(HCLは登録商標)。
高耐力性かつ高耐熱性の圧延銅箔からなる銅合金箔11を備える負極集電銅箔10は、例えばシリコン(Si)系やスズ(Sn)系の負極活物質層15a,15bの担持に用いることができる。このような負極集電銅箔10は、Si系やSn系の負極活物質層15a,15bの充放電時の著しい体積膨張・収縮によっても塑性変形が起こり難く、また、後述の負極活物質層15a,15bの形成時の熱処理によっても軟化し難い。
また、負極集電銅箔10は、例えば銅合金箔11の両面にそれぞれ形成された純銅からなる銅(Cu)めっき層12a,12bと、その表面にそれぞれ付着した粒状電着物としての粗化粒子13a,13bと、を備える。粗化粒子13a,13bは、例えば粗化めっ
きによりCuめっき層12a,12bを介して銅合金箔11の両面に付着させた銅析出物等である。
粗化粒子13a,13bの平均粒径は、例えば0.4μm以上1.0μm未満である。また、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の粗化粒子13a,13bの個数は、例えば銅合金箔11の表面積100μmあたりに150個以上650個未満である。ここで、所定の粗化粒子13a(13b)の粒径は、係る粗化粒子13a(13b)の最も長い径(長径)と最も短い径(短径)との平均値である。
また、負極集電銅箔10は、Cuめっき層12a,12b上に、粗化粒子13a,13bを覆うように、ニッケル−コバルト(Ni−Co)合金めっき層141a,141b、亜鉛(Zn)めっき層142a,142b、クロメート層143a,143bがこの順に積層された防錆めっき層14a,14bをそれぞれ備える。防錆めっき層14a,14bのそれぞれの厚さは、例えば100nm未満である。
クロメート層143a,143bは、例えばクロメート処理により形成された3価クロム(Cr)のクロメート(クロム酸塩)からなり、クロメート処理の前処理及び防錆を目的として形成されるZnめっき層142a,142bとの置換反応によって高い防錆効果を発揮する。Ni−Co合金めっき層141a,141bは、後述の負極活物質層15a,15bの形成時の熱処理で、銅合金箔11からのCuの熱拡散によりZnめっき層142a,142bが銅合金化されることを抑制する。
以上のように、本実施形態では、負極集電銅箔10は、粗化めっきにより銅合金箔11に付着させた粗化粒子13a,13bを備える。これにより、凹凸面の空隙に材料が侵入することによるくさびのような働き(アンカー効果)によって、負極活物質層15a,15bとの密着性を向上させることができる。よって、負極活物質層15a,15bの負極集電銅箔10からの脱落を抑制することができ、サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池50を得ることができる。
また、本実施形態では、粗化粒子13a,13bの平均粒径及び単位面積あたりの個数を上記所定値としている。このように、平均粒径の小さい粗化粒子13a,13bを数多く、銅合金箔11に付着させることにより、負極集電銅箔10と負極活物質層15a,15bとの密着性をいっそう向上させ、負極活物質層15a,15bの負極集電銅箔10からの脱落を抑制することができる。
また、本実施形態では、粗化粒子13a,13bを覆う防錆めっき層14a,14bの厚さを例えば100nm未満としている。これにより、粗化粒子13a,13bの粒径の大幅な増大を抑制しつつ、防錆効果を得ることができる。つまり、防錆めっき層14a,14bを設けても、負極活物質層15a,15bとの密着性に影響を及ぼす負極集電銅箔10の粗化形状が適正に保たれるので、負極活物質層15a,15bとの密着性を維持することができる。
(3)リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法
次に、図1、及び図4〜6を参照しながら、リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池50の製造工程で用いる連続めっき処理装置100の概略構成図である。図5は、図4の連続めっき処理装置100が備える粗化めっき浴の一例を示す概略構成図である。図6は、図4の連続めっき処理装置100が備える粗化めっき浴の他の例を示す概略構成図である。
(圧延工程)
まず、例えば高耐熱性の銅合金等を圧延し、図1に示す銅箔としての銅合金箔11を製造する。すなわち、例えば日立電線株式会社製のHCL02Z箔のように、Zrを含有する銅合金箔11を形成する場合には、無酸素銅にZrを0.015質量%〜0.030質量%配合し、溶解鋳造してケークを製作する。次に、このケークを熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍とを繰り返しながら所定厚さまで圧延し、溶剤による洗浄で圧延油を除去して高耐力性かつ高耐熱性の銅合金箔11を得る。
(前処理工程)
次に、図4に示す連続めっき処理装置100にて、銅合金箔11をコイル・ツー・コイルで搬送しながら、銅合金箔11に粗化めっき、防錆めっき等を施して、図1に示す各層を形成する。前処理工程では、各層の形成に先駆け、銅合金箔11に対して前処理を施す。
すなわち、まずは、連続めっき処理装置100の送出機111と巻取機112とに掛け渡すように銅合金箔11を装着する。次に、送出機111から銅合金箔11を脱脂浴121、酸洗浄浴122へと順次送り出す。脱脂浴121では、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ溶液を用いて陰極電解脱脂を行い、銅合金箔11の両面に対して脱脂を施す。酸洗浄浴122では、例えば硫酸(HSO)等の酸性溶液を用い、銅合金箔11の両面に対して酸洗浄を施す。
(粗化めっき工程)
次に、銅合金箔11を陰極として粗化めっきを施し、銅合金箔11の例えば両面に、粒状電着物としての粗化粒子13a,13bを付着させる。
この粗化めっき工程では、上述のように、平均粒径の小さい粗化粒子13a,13bを数多く付着させる必要がある。しかしながら、粗化粒子を微細なままに留めつつ均一な粗化面を得ることは、通常のめっきによる手法では困難である。また、上述のような銅合金箔11を製造する圧延工程等により、銅合金箔11の表面には、微小な傷や荒れが残留していることがある。このような微小な傷や荒れによる凹凸の影響で、粗化粒子の粒径や分布の均一性が更に悪化する場合がある。
そこで、本実施形態では、以下の手法により粗化めっきを行うことで、平均粒径の小さい粗化粒子13a,13bを、均一性よく銅合金箔11の表面に分布させる。
すなわち、引き続き連続めっき処理装置100にて銅合金箔11をコイル・ツー・コイルで搬送しながら、銅合金箔11を下地めっき浴123、粗化めっき浴124a〜125bへと順次送り出し、銅合金箔11の両面に対して粗化めっきを施す。
下地めっき浴123では、例えば硫酸銅(CuSO)や硫酸(HSO)を主成分とする酸性めっき液を用いて数A/dmの電流密度で電解し、銅合金箔11の両面にCuめっき層12a,12bをそれぞれ形成する。
このように、前処理工程を経た銅合金箔11の表面に電解Cuめっき法によりCuめっき層12a,12bを形成することで、圧延工程での傷や荒れを覆って銅合金箔11の表面を平坦化することができる。よって、後述の粗化めっき浴124a〜125bでの処理において傷や荒れの影響が低減され、銅合金箔11に付着させる粗化粒子13a,13bの粒径や分布が均一に整い易くなる。
続いて、粗化めっき浴124a,125a、及び粗化めっき浴124b,125bでは、粗化めっき浴124a〜125bの限界電流密度を超えた電流値、すなわち、所謂やけ
めっきとなる電流値で電解して銅合金箔11の片面ずつをそれぞれ2回に亘って処理し、粒状の銅析出物からなる粗化粒子13a,13bをそれぞれの面に付着させる。
具体的には、図5に示すように、粗化めっき浴124aにて、液中に配置されたシンカーロール124zを経由させつつ、銅合金箔11に通電する通電ロール124x及び銅合金箔11を液中から引き出すアッパーロール124yで銅合金箔11の搬送を制御しながら、銅合金箔11の一方の面、例えばCuめっき層12aが形成された面に陽極124eを平行に対向させ、例えば硫酸銅(CuSO)や硫酸(HSO)を主成分とする酸性めっき液124qを用いて数十A/dmの電流密度で電解する。
次に、粗化めっき浴124aと同様の構成を備える粗化めっき浴125aにて、銅合金箔11の同一面、つまり、Cuめっき層12aが形成された面に、粗化めっき浴124aでの処理と略同様の処理を繰り返す。このときの電流密度は、粗化めっき浴124aでの電流密度と同等、若しくはそれより小さい値とすることが望ましい。
また、粗化めっき浴124b,125bにて、銅合金箔11の他方の面、例えばCuめっき層12bが形成された面に、粗化めっき浴124b,125bが備える図示しない陽極を平行に対向させ、例えば上記粗化めっき浴124a,125aと同様の条件で、2回に亘って処理する。
以下の表1に、粗化めっき工程における具体的な条件を例示する。なお、粗化めっき浴124a〜125bでの処理においては、表中に示した酸性めっき液中にCu以外の金属元素、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)等を添加することが望ましい。
このように、銅合金箔11の同一面に対して略同様の条件にて粗化めっきを2回施すように粗化めっき条件を制御することで、粗化粒子13a,13bを小さいままに留め、かつ、粗化粒子13a,13bが均一性よく分布する粗化形態を作り出すことができる。
なお、例えば粗化めっき浴を更に複数設け、銅合金箔11の同一面に対する粗化めっきを2回以上の多数回、施すこととしてもよい。或いは、図6に示す粗化めっき浴224aを用いた場合、銅合金箔11の同一面に対する粗化めっきを1回とすることも可能である。
具体的には、図6に示すように、銅合金箔11に対する陽極224eの距離が、銅合金箔11の搬送方向に対して次第に広がるよう、銅合金箔11の一方の面に陽極224eを斜めに対向させて電解する。これにより、銅合金箔11が酸性めっき液124q中を進むにしたがって電流密度が低下し、上記2回以上の粗化めっきと同様の効果が得られる。なお、図6とは逆に、銅合金箔11に対する距離が次第に狭まるように陽極を対向させてもよい。
このように、銅合金箔11に対する陽極224eの距離が次第に変化していくように粗化めっき条件を制御することで、粗化めっき中に、銅合金箔11に対する電流密度を変化させることができ、平均粒径が小さく、均一性よく分布した粗化粒子13a,13bが得られる。
以下の表2に、粗化めっき浴224aを用いた粗化めっき工程における具体的な条件を例示する。この場合においても、酸性めっき液中にCu以外の金属元素を添加することが望ましい。
(防錆めっき工程)
続いて、上述のように粗化めっきを施した銅合金箔11の例えば両面に、粗化粒子13a,13bを覆うように、Ni−Co合金めっき層141a,141b、Znめっき層142a,142b、クロメート層143a,143bがこの順に積層された防錆めっき層14a,14bを、全体の厚さがそれぞれ100nm未満となるよう形成する。
すなわち、引き続き連続めっき処理装置100にて銅合金箔11をコイル・ツー・コイルで搬送しながら、銅合金箔11を、Ni−Co合金めっき浴126、Znめっき浴127、クロメート処理浴128へと順次送り出し、銅合金箔11の例えば両面に電解めっきによる防錆めっきを行う。
Ni−Co合金めっき浴126では、銅合金箔11の両面にNi−Co合金めっき層141a,141bをそれぞれ形成する。めっき液としては、例えば硫酸ニッケル(NiSO)を主成分とし、錯化剤及びpH緩衝剤となるクエン酸(C(OH)(COOH))を添加したものを用いる。
Znめっき浴127では、Ni−Co合金めっき層141a,141b上にZnめっき層142a,142bをそれぞれ形成する。めっき液としては、例えば硫酸亜鉛(ZnSO)を主成分とし、錯化剤及びpH緩衝剤となるクエン酸三ナトリウム(Na(CO(COO))を添加したものを用いる。
クロメート処理浴128では、硝酸クロム(Cr(NO)、硝酸(HNO)を主成分とするクロメート化成処理液(3価クロム化成処理液)を用いたクロメート処理により、3価クロム(Cr)を含むクロメート層143a,143bを、Znめっき層14
2a,142b上にそれぞれ形成する。クロメート層143a,143b中のCrの被着量は、質量換算でそれぞれ0.1μg/cm以上2.0μg/cm以下の範囲内とすることが望ましい。
以下の表3に、防錆めっき工程における具体的な条件を例示する
(乾燥工程)
粗化めっき、防錆めっき等が施された銅合金箔11を、連続めっき処理装置100が備える乾燥機130により乾燥した後、巻取機112で巻き取る。
以上により、銅合金箔11と、銅合金箔11の両面に粗化めっきにより付着させた粗化粒子13a,13bと、を備え、粗化粒子13a,13bの平均粒径が0.4μm以上1.0μm未満であり、かつ、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の粗化粒子13a,13bの個数が銅合金箔11の表面積100μmあたりに150個以上650個未満であるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10が製造される。
(4)リチウムイオン二次電池用負極の製造方法
次に、図2に示す構成を備えるリチウムイオン二次電池用負極1の製造方法について説明する。
(負極活物質層の形成工程)
まずは、負極集電銅箔10にスラリーを塗布して負極活物質層15a,15bを形成する方法について説明する。係る工程は、例えばコイル・ツー・コイル方式の連続ラインにより、負極集電銅箔10にスラリーを塗布するアプリケータ等の装置を用いて行う。
具体的には、例えば負極活物質、バインダ溶液、及び必要に応じて導電助剤を混練したスラリーを、負極集電銅箔10の両面に塗布して略均一の厚みに均して圧着し、例えば70℃〜130℃で数分間〜数十分間、乾燥する。
スラリーに含まれる負極活物質としては、例えばSnやSi等の合金、或いは化合物等の粉末を用いることができる。個々の粉末の直径は、例えば数μm〜数十μmである。また、バインダ溶液としては、ポリイミド(PI)等のイミド系樹脂やその他の樹脂の前駆体等の溶液を用いることができる。このとき、負極活物質をできるだけ多く混入させるため、バインダ溶液は少量とすることが望ましい。具体的には、乾燥工程等を経た後に負極
集電銅箔10上に残る不揮発性成分のうち、バインダ成分が1%程度となる分量とする。
上述のように、特許文献4,5では、粒状電着物等の粒径は、例えば数μm程度と、大きいほうが好ましいとされていた。しかしながら、負極活物質に対するバインダ溶液が少量であるので、粒状電着物の粒径が大きく、表面の凹凸が深いと、バインダ溶液が奥まで到達できない。よって、充分なアンカー効果が得られず、密着性が低下する場合がある。
本実施形態においては、粗化粒子13a,13bの平均粒径を例えば1.0μm未満としている。これにより、負極集電銅箔10の表面の凹凸にバインダ溶液を充分に浸透させてアンカー効果を得ることができ、負極活物質層15a,15bとの密着性を向上させることができる。一方で、粗化粒子13a,13bの平均粒径を例えば0.4μm以上としているので、粒径が小さすぎることによるアンカー効果の低減も抑制される。
本実施形態において、銅合金箔11上の粗化粒子13a,13bを所定の分布とすることで、負極活物質層15a,15bとの密着性が向上する点についても、このようなバインダ溶液の挙動から説明することができる。すなわち、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の粗化粒子13a,13bの個数を、例えば銅合金箔11の表面積100μmあたりに150個以上とすることで、粗化粒子13a,13b同士の間隔が広すぎることによるアンカー効果の低減が抑制される。また、上記粗化粒子13a,13bの個数を650個未満とすることで、粗化粒子13a,13b同士の間隔が狭くなりすぎずにバインダ溶液を充分に浸透させることができ、アンカー効果の低減が抑制される。
このように、本実施形態においては、負極集電銅箔10との負極活物質層15a,15bの密着性を向上させて脱落を抑制することができ、サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池50を得ることができる。
次に、例えば赤外線加熱炉等を用い、スラリーが圧着された負極集電銅箔10に対し、高温かつ長時間の熱処理を施す。上記熱処理は、タブリード16と溶接される負極集電銅箔10の露出面の酸化を抑制するため、例えばアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気下で行う。これにより、例えばイミド系樹脂の前駆体等からなるバインダ成分のイミド化反応が進行して固化し、負極集電銅箔10の両面に、負極活物質及びイミド化されたバインダ成分を含む負極活物質層15a,15bが形成される。
本実施形態では、負極集電銅箔10の備える銅合金箔11を、例えば高耐力性かつ高耐熱性の圧延銅箔としている。これにより、上記のような高温かつ長時間の熱処理においても、銅合金箔11の軟化が抑制され、或いは軟化が起きても比較的高耐力が維持される。
また、本実施形態では、銅合金箔11とZnめっき層142a,142bとの間にNi−Co合金めっき層141a,141bを設けている。これにより、上記熱処理においても、Znめっき層142a,142bへのCuの拡散及び銅合金化を抑制することができる。
(タブリードの溶接工程)
次に、図2を参照しながら、負極集電銅箔10にタブリード16を溶接する方法について説明する。
図2に示すように、両面に負極活物質層15a,15bが形成された負極集電銅箔10は、少なくとも片面或いは両面の一端に、負極活物質層15a,15bが形成されていない露出領域10sを有する。リチウムイオン二次電池50が備える電池外挿缶5と電気的接続を取るため、この負極集電銅箔10の露出領域10sにタブリード16を溶接する。
すなわち、負極集電銅箔10の露出領域10sと、例えばNi又はNiめっき銅等からなるタブリード16とを重ね合わせ、例えば超音波溶接機にて、所定の加圧力、負荷エネルギーを加えつつ、所定の負荷時間で溶接処理を行う。これにより、負極集電銅箔10とタブリード16とが溶接される。
以上により、リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔10と、負極集電銅箔10の例えば両面に形成されたSi系又はSn系の負極活物質層15a,15bと、負極集電銅箔10に接続されたタブリード16と、を備えるリチウムイオン二次電池用負極1が製造される。
(5)リチウムイオン二次電池の製造方法
次に、図3を参照しながら、リチウムイオン二次電池50の製造方法について説明する。ここでは、図3に示す円筒型のリチウムイオン二次電池50を例にとって説明するが、リチウムイオン二次電池は、角型、ラミネート型等、他の形態を有していてもよい。
まず、リチウムイオン二次電池用負極1とリチウムイオン二次電池用正極2とをセパレータ3を介して重ね合わせ、図示しない巻芯に巻き取った捲回体4を製作する。正極2は、リチウムイオン二次電池用正極集電金属箔と、正極集電金属箔の例えば両面に形成された正極活物質層と(いずれも図示せず)、正極集電金属箔に接続されたタブリード26と、を備える。正極集電金属箔を構成する金属は、例えばAlやその他の金属等である。正極活物質層は、例えばLiを含む金属複合酸化物等からなる。セパレータ3は、例えば多孔質の樹脂フィルム等からなる。
次に、容器としての電池外挿缶5に、図示しない下部絶縁板と、捲回体4とをこの順に収容する。続いて、図示しないマンドレル(芯金)を捲回体4の中心に挿入し、図示しない上部絶縁板を電池外挿缶5に収容した後に、電池外挿缶5に溝6を形成(溝入れ)する。この後、乾燥を行って電池外挿缶5内の水分を飛ばす。電池外挿缶5内が充分に乾燥したら、図示しない電解液を注入する。次に、電池外挿缶5の溝6近傍にガスケット7を装着し、負極1のタブリード16を電池外挿缶5に、正極2のタブリード26をキャップ8の備える端子8tにそれぞれ溶接し、キャップ8を電池外挿缶5にクリンプ(圧着)して電解液を封入する。
以上により、セパレータ3が間に挿入されたリチウムイオン二次電池用負極1及びリチウムイオン二次電池用正極2が収容され、電解液が封入された電池外挿缶5を備えるリチウムイオン二次電池50が製造される。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、銅合金箔11の具体例として日立電線株式会社製のHCL02Z箔を挙げたが、銅合金からなる圧延銅箔はこれに限定されない。日立電線株式会社製品の中からさらにいくつかの具体例を示すと、HCL64T(Crを0.20質量%〜0.30質量%、Snを0.23質量%〜0.27質量%、Znを0.18質量%〜0.26質量%、それぞれ配合)、HCL305(Niを2.2質量%〜2.8質量%、Siを0.3質量%〜0.7質量%、Znを1.5質量%〜2.0質量%、Pを0.015質量%〜0.06質量%、それぞれ配合)等が挙げられる(HCLは登録商標)。また、これらのほか、純銅に、銀(Ag)、Sn、Fe等を添加した銅合金箔も用いることができる。
また、上述の実施形態では、銅箔として銅合金箔11を用いたが、タフピッチ銅からなる圧延銅箔を用いることも可能である。また、銅箔は、タフピッチ銅又は銅合金等からなる電解銅箔等であってもよい。タフピッチ銅からなる圧延銅箔や、タフピッチ銅又は銅合金等からなる電解銅箔は、例えば負極の製造工程に含まれる熱処理が比較的緩やかな場合等に好適である。
また、上述の実施形態では、負極集電銅箔10の両面に負極活物質層15a,15bを形成する構成としたが、負極活物質層は負極集電銅箔の少なくとも片面に形成されていればよく、この場合、Cuめっき層、粗化粒子、防錆めっき層等も、銅合金箔或いは銅箔等の少なくとも片面に形成されていればよい。
本発明の実施例に係るリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の負極活物質層との密着性の評価結果について以下に説明する。
(1)負極集電銅箔の製作
まずは、以下に述べる手順に従い、実施例1〜8及び比較例1〜4に係る負極集電銅箔を製作した。
評価に用いる銅合金箔を、上述の実施形態と同様の手法により製作した。
次に、上述の実施形態と同様の手法を用い、コイル・ツー・コイル方式の連続ラインにより、上記銅合金箔に対して、電解脱脂、酸洗浄、粗化めっき、防錆めっき等を施して負極集電銅箔を製作した。このとき、粗化めっきの条件変更等を行って、後に示すように粗化粒子の平均粒径及び分布を種々変化させ、それぞれ実施例1〜4及び比較例1〜2とした。また、粗化粒子の平均粒径及び分布を同様に変化させた負極集電銅箔のセットをそれぞれ実施例5〜8及び比較例3〜4とした。
(2)負極集電銅箔の測定
上記のように製作した実施例1〜8及び比較例1〜4に係る負極集電銅箔に対し、以下に述べる手順に従って各種評価を行った。
(粗化粒子の粒径及び分布の測定)
上記防錆めっきを行う前に、粗化めっき後の銅合金箔のうちの一部について、その表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観測した写真から、銅合金箔に付着させた粗化粒子の平均粒径及び銅合金箔上の個数を測定した。
具体的には、それぞれの銅合金箔の表面の10μm×10μmの領域を1μm×1μmの碁盤目状に区切り、碁盤目の各交点の位置に存在する粗化粒子の粒径を測定し、その平均を粗化粒子の平均粒径とした。それぞれの粗化粒子の粒径は、上述のように、長径と短径との平均値とした。
また、それぞれの銅合金箔の表面の10μm×10μmの領域内に存在する粗化粒子のうち、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の粗化粒子の個数を数え、銅合金箔の表面積100μmあたりの個数とした。
上記測定に用いたSEM写真の一部を図7及び図8に示す。図7は実施例1及び5に係る負極集電銅箔の表面のSEM写真であり、図8は実施例3及び7に係る負極集電銅箔の表面のSEM写真である。
(負極活物質層との密着性測定)
上述の実施形態に係るSi系の負極活物質層15a,15bを模して、上記クロメート処理後の実施例1〜4及び比較例1〜2に係る負極集電銅箔上にSiを含む混合物を形成した。すなわち、ポリイミド(PI)の前駆体であるポリアミド酸を10質量%含有するN−メチルピロリドン(NMP)溶液に、非晶質Si粉末及びグラファイト(C)粉末を均一に分散させたスラリーを調合した。NMP溶液、非晶質Si粉末、グラファイト粉末の混合比は、重量比で10:85:5とした。このスラリーを、上記負極集電銅箔上に200μm厚さに塗布し、大気中にて100℃で30分乾燥して溶剤を蒸発させた後、赤外線加熱炉によりArガス雰囲気下にて400℃で10時間の熱処理を施して固化させた。
また、Sn系の負極活物質層15a,15bを模して、上記クロメート処理後の実施例5〜8及び比較例3〜4に係る負極集電銅箔上に、非晶質Si粉末の換わりに酸化スズ(SnO)粉末を用い、上記と同様の手法でSnを含む混合物を形成した。
上記のように、Si混合物及びSn混合物をそれぞれ形成した実施例1〜4及び比較例1〜2に係る負極集電銅箔、実施例5〜8及び比較例3〜4に係る負極集電銅箔に対し、図9に示す実験装置300で各混合物との密着性を測定し、その結果を模式的な負極活物質層との密着性とした。
具体的には、幅15mmに切り出した負極集電銅箔30の各混合物が形成された面を外側にして、図9に示すSUS棒310に巻き付けた。この負極集電銅箔30の一方の端に重り320を取り付け、50重量グラム(gf)の荷重を加えたうえで、他方の端を一定速度で引き下げた後の各混合物の状態を観察した。
このとき、負極集電銅箔30を巻き付けるSUS棒310の直径を15mmから3mmまで縮小していくと、巻き付け径が小さくなるにつれ、各混合物の状態が、(1)微細な亀裂が発生、(2)亀裂が大きくなり亀裂の数も増加、(3)混合物が剥離・脱落、のように変化していく。したがって、例えば肉眼で亀裂が確認できなかったSUS棒310の最小径を、その負極集電銅箔の負極活物質層に対する密着性の目安とすることができる。
実際の負極活物質層が形成された負極においては、係る最小径が6mm以上となる負極に、密着性の不足による負極活物質層の剥離等が認められることがわかっている。そこで、本実施例では、最小径が5mm以下の場合を許容値内とし、負極活物質層との密着性を定量的に評価した。
(3)負極集電銅箔の評価結果
上記の測定による評価結果を表4及び表5に示す。表4は、実施例1〜4及び比較例1〜2に係る負極集電銅箔とSi混合物との密着性を示す評価結果である。表5は、実施例5〜8及び比較例3〜4に係る負極集電銅箔とSn混合物との密着性を示す評価結果である。
Si混合物を形成した比較例1、及びSn混合物を形成した比較例3は、いずれも所定面積あたりの粗化粒子の個数が所定範囲外となっている。このため、いずれにおいてもSUS棒310の最小径は許容値を超える7mmとなり、密着性が不充分という結果であった。
一方、Si混合物を形成した実施例1〜4、及びSn混合物を形成した実施例5〜8は、いずれも粗化粒子の平均粒径及び所定面積あたりの粗化粒子の個数が所定範囲内となっている。このため、いずれにおいてもSUS棒310の最小径は許容値内の5mm以下となり、密着性の向上がみられた。
また、Si混合物を形成した比較例2、及びSn混合物を形成した比較例4は、いずれも粗化粒子の平均粒径が所定範囲外となっている。このため、いずれにおいてもSUS棒310の最小径は許容値を超える6mmとなり、密着性が不充分という結果であった。
以上の結果から、粗化粒子の平均粒径が0.4μm以上1.0μm未満であり、かつ、粒径が0.2μm以上1.5μm未満の粗化粒子の個数が銅合金箔の表面積100μmあたりに150個以上650個未満とすることで、負極活物質層との密着性が向上することがわかった。
1 リチウムイオン二次電池用負極
2 リチウムイオン二次電池用正極
3 セパレータ
4 捲回体
5 電池外挿缶(容器)
6 溝
7 ガスケット
8 キャップ
8t 端子
10 リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔
11 銅合金箔(銅箔)
12a,12b Cuめっき層
13a,13b 粗化粒子(粒状電着物)
14a,14b 防錆めっき層
15a,15b 負極活物質層
16,26 タブリード
50 リチウムイオン二次電池
141a,141b Ni−Co合金めっき層
142a,142b Znめっき層
143a,143b クロメート層

Claims (9)

  1. シリコン系の負極活物質層及びスズ系の負極活物質層の担持に用いられるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔であって、
    銅または銅合金からなる銅箔と、
    前記銅箔の少なくとも片面に粗化めっきにより付着させた粒状電着物と、を備え、
    前記粒状電着物の平均粒径は、
    0.4μm以上1.0μm未満であり、かつ、
    粒径が0.2μm以上1.5μm未満の前記粒状電着物の個数は、
    前記銅箔の表面積100μmあたりに150個以上650個未満である
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔。
  2. 前記粒状電着物を覆うように、ニッケル−コバルト合金めっき層、亜鉛めっき層、クロメート層がこの順に積層された防錆めっき層を備え、
    前記防錆めっき層の厚さが100nm未満である
    ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔。
  3. 前記銅箔を構成する前記銅合金は、無酸素銅にジルコニウムを0.015質量%以上0.03質量%以下配合した銅合金である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔。
  4. 前記銅箔を構成する前記銅は、タフピッチ銅である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔。
  5. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の少なくとも片面に形成されたシリコン系又はスズ系の負極活物質層と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅箔に接続されたタブリードと、を備える
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  6. 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、
    リチウムイオン二次電池用正極と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極の間に挿入されたセパレータと、
    前記セパレータが間に挿入された前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極が収容され、電解液が封入された容器と、を備える
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  7. シリコン系の負極活物質層及びスズ系の負極活物質層の担持に用いられるリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法であって、
    銅又は銅合金からなる銅箔を陰極として粗化めっきを施し、前記銅箔の少なくとも片面に粒状電着物を付着させる粗化めっき工程を有し、
    前記粗化めっき工程では、
    前記粒状電着物の平均粒径が、
    0.4μm以上1.0μm未満となり、かつ、
    粒径が0.2μm以上1.5μm未満の前記粒状電着物の個数が、
    前記銅箔の表面積100μmあたりに150個以上650個未満となるよう粗化めっき条件を制御する
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法。
  8. 前記粗化めっき工程では、
    前記銅箔の同一面に対して前記粗化めっきが2回以上施されるように前記粗化めっき条件を制御する
    ことを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法。
  9. 前記粗化めっき工程では、
    前記銅箔に対する陽極の距離が次第に変化していくように前記粗化めっき条件を制御する
    ことを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用負極集電銅箔の製造方法。
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