JP2013053050A - ダイヤモンド複合体およびそれから分離した単結晶ダイヤモンド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置に、幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)2以上の溝又は穴を形成した単結晶ダイヤモンド基板上に、気相エピタキシャル成長法によって単結晶ダイヤモンド膜を形成してなり、前記溝又は穴の部分が空孔として結晶内部に残っていることを特徴とするダイヤモンド複合体。
【選択図】図1
Description
すなわち、特許文献1のようにオフ角とメタン濃度を整合させる方法、特許文献2および特許文献3のようにメタン濃度を大きくしたり、特許文献4のように窒素を添加したりして、成長パラメータを2〜3あるいは3以上と大きくする方法などが報告されている。成長パラメータ(α)は(100)面の成長速度をV100とし、(111)面の成長速度をV111とした時に、α=√3xV100/V111で表される。成長パラメータを大きくすることで、(100)面の成長速度がその他の方向の成長速度より速くなり、(100)面上に(100)面以外の面方位の微小結晶粒子を消失させることを目的としている。成長パラメータの大きい条件は(100)面方位に適している方法である。
(110)面方位や(111)面方位の成長はこの条件では難しい。しかしながら、この方法によっても微細な異常粒子の成長を防ぎ、最終的に多結晶となってしまうことを防いではいるが、転移などの欠陥は引継ぎ成長してしまうことは下地の結晶を引き継ぐエピタキシャル成長の原理から十分に理解できる。そこで、周期的に溝や穴を開けてその後、溝や穴が空孔となるように上部の成長膜で埋め込まれてしまう成長方法によって、欠陥を低減させることができる。このことは、構造上は特許文献5に開示されている。
しかしながら、上記特許文献5に記載のものは上部エピタキシャル膜と基板との分離あるいは剥離を目的としたものであるので、原理に基づいて欠陥を減らしたわけではなく、そのような示唆がないので、これ以上の改善にはつながらない。
なお、本発明における「穴」とは貫通孔ではなく窪んだ状態のものを意味する。また、「溝」とは穴(窪み)が線状に形成されているものをいう。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(2)前記溝又は穴のアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド複合体。
(3)前記単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置を示すデータがX線トポグラフィー法によって得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド複合体。
(4)前記単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置を示すデータが水素プラズマあるいは酸素を含む水素プラズマでエッチピットを形成し、このエッチピットを画像処理することによって得られた欠陥位置パターンデータであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンド複合体。
(5)前記溝又は穴が、フォトマスクを用いたドライエッチングによって開けられたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
(6)前記溝又は穴が、欠陥の位置を示すデータを入力したレーザー加工機によって開けられたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
(7)前記ダイヤモンド単結晶膜の厚さが0.5〜3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイヤモンドの複合体。
(8)単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置についてのデータを入手し、このデータに基づいて前記単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置に溝又は穴を、該溝又は穴の幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)が2以上となるように形成し、次いで前記溝又は穴の部分が空孔として結晶内部に残るように、前記単結晶ダイヤモンド基板上に、気相エピタキシャル成長法によって単結晶ダイヤモンド膜を形成することを特徴とするダイヤモンド複合体の製造方法。
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載のダイヤモンド複合体における単結晶ダイヤモンド基板と単結晶ダイヤモンド膜とを分離し、単結晶ダイヤモンド膜の裏面の単結晶ダイヤモンド基板を研磨して得られたダイヤモンド単結晶。
(10)厚さが0.5〜3mmであることを特徴とする(8)に記載の単結晶ダイヤモンド。
実施形態1を図1を参照して説明する。
まず、単結晶ダイヤモンド基板1を準備し、X線トポグラフィーによって、欠陥2の位置などが分かるように基板全体を撮影する。その画像をもとに、欠陥の中心部分から所定の半径(10〜30μm)の部分が黒いパターンを作製し、データ化する。そのデータに基づいて、基板のサイズと全く同じサイズのフォトマスク3を作製する。欠陥が大きすぎて、不定形で中心が分かりにくい場合は、X線トポで欠陥を示す部分全体から所定の半径(10〜30μm)で黒いパターンを作製することもできる。この際に基板とフォトマスクとにマーキングを施して、ダイヤモンド基板とフォトマスクとを合わせることが可能なようにしておく。このフォトマスク3を用いて、フォトリソグラフィー技術でダイヤモンド上に穴4を形成する。ポジレジストを用いると、フォトマスク3の黒い部分に対応するレジストに穴が開くので、エッチングをさせることができる。しかしながら、ネガレジストであっても、工程は複雑になるがリフトオフなどを使って、欠陥をエッチングさせることができる。以上のような工程で基板の欠陥のある表面に溝あるいは穴を形成することができる。溝及び穴は幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)は2以上であり、好ましくは5以上である。
このアスペクト比が大きい場合には、欠陥の起点が激減し、基板上に成長する単結晶ダイヤモンド膜は低欠陥の高品質単結晶となる。
実施形態1と同じ方法で単結晶ダイヤモンド基板の欠陥の位置情報を入手するが、マスクを作製するのではなくて、レーザー加工機にその情報を入力し、欠陥部分のみをレーザーで加工し、溝や穴を形成する。その後、熱混酸で処理するなどの方法を用いて、グラファイト部分を除去する。その後は実施形態1と同様にしてダイヤモンド基板上に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させる。得られた単結晶基板はもとの種基板であるダイヤモンド基板の欠陥を引き継いでいない基板とすることができる。
実施形態1と同じく、単結晶ダイヤモンド基板を準備し、その後、単結晶ダイヤモンド基板の欠陥と同じ位置にエッチピットを形成する。エッチピットの形成は溶液中で行っても構わないが、水素プラズマ中や酸素を微量含む水素プラズマ中で行うと簡単で、かつ短時間でエッチピットを形成できる。その後、エッチピットの画像をコンピュータ処理して、ピットの中心位置から一定の半径で黒く塗りつぶしたパターンを作製する。半径は5μmあれば十分であるが、20〜50μmであってもかまわない。100μm以上と大きいすぎると穴を埋めるのに時間がかかり、不都合である。また1μm以下と小さすぎると、欠陥とのマスク調整がずれた場合の余裕がなく、調整に課題が残る。この画像をもとにフォトマスクを作成する。この後は実施形態1と同じ方法で、単結晶ダイヤモンド基板をエッチングして基板の欠陥のある表面に溝あるいは穴を形成する。その後、ダイヤモンド基板上にCVDダイヤモンドをエピタキシャル成長させることにより溝や穴の部分を空孔として埋め込み、ダイヤモンド基板の上面がエピタキシャル成長した単結晶ダイヤモンドと接合して、一つの基板を形成する。これにより、エピタキシャル成長した単結晶ダイヤモンドにはダイヤモンド基板の欠陥が転写されず、得られた単結晶基板は種基板であるダイヤモンド基板の欠陥を引き継いでいないものができる。
実施形態3と同じ方法で、単結晶ダイヤモンド基板の欠陥位置のデータを収集し、その後は、実施形態2と同じ方法(レーザー加工法)で溝や穴を形成し、ダイヤモンド基板上に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させる。
高圧合成の6mm角の単結晶ダイヤモンドを準備した。基板の板厚は0.5mm程度である。表面は機械研磨した。面方位は(100)面で、面方位は側面方向に約1°以内のオフである。次にX線トポグラフィーにより、欠陥の写真をとった。欠陥としては転位、積層欠陥などがあり、その個数は3.4×105cm−2であった。
このデータをもとに欠陥中心のデータを作成し、中心から10μmの部分を塗りつぶした。このデータをもとにして、フォトマスクを基板と同一サイズで作製した。このフォトマスクを使ってもとの単結晶基板に溝あるいは穴を形成した。そのときの深さはいくつかある最大の幅の2.5倍に設定し、70μmとなった。ダイヤモンドのエッチングはCF4を2%微量添加したほとんど酸素のガス中でプラズマを発生することで行った。その後、ダイヤモンドをエピタキシャルに合成し、溝や穴を埋めたが、溝や穴は空孔として残っていることが光学顕微鏡によって確認された。上記ダイヤモンドの合成は、メタンガスがメタンガス/水素ガス比で9%を導入し、窒素ガスも窒素/メタンガス比で1000ppmであり、マイクロ波パワー6kW、全圧力100Torrで行った。エピタキシャル成長した単結晶ダイヤモンド膜の上部は穴や溝もなく一枚の単結晶基板となった。
欠陥としては転位欠陥が主として、若干残っていたが、その個数は2.8×102cm-2であった。
上記条件で、溝あるいは穴のアスペクト比を5にすることによっても目的の表面が一枚の単結晶を得ることができた。
裏面を種基板を研磨で削り、エピタキシャル成長した単結晶ダイヤモンド膜のみとすることで複合体ではなく、1枚の単結晶にすることもできた。
実施例1と同じ方法で基板を準備した。
次いで、次の条件の酸素原子を含む水素プラズマ処理でエッチピットを形成した。
(条件)
装置 : 縦型石英管タイプのマイクロ波励起のプラズマ装置
雰囲気 : 水素ガス200sccm、CO2ガス1sccm、全圧力60Torr、
パワー : 500W
基板温度 : 800℃
光学顕微鏡で形成されたエッチピットの写真を撮り、データをコンピューターで解析し、エッチピットの中心位置を示すマッピングデータを得た。欠陥としては転位、積層欠陥などがあり、その個数は8.5x104cm−2であった。
中心位置からの半径を種々変えて、円形状に塗りつぶしたデータとすることもできた。中心から10μmの部分を塗りつぶした。このデータをもとにして、もとに実施例1と同じ方法でマスクを作製し、実施例1と同様にしてエッチングとダイヤモンド基板上へのCVDダイヤモンドのエピタキシャル成長を行い、同様の複合体および単結晶を作製することができた。欠陥としては転位欠陥が主として、若干残っていたが、その個数は1.3x102cm−2であった。
Claims (10)
- 単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置に、幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)2以上の溝又は穴を形成した単結晶ダイヤモンド基板上に、気相エピタキシャル成長法によって単結晶ダイヤモンド膜を形成してなり、前記溝又は穴の部分が空孔として結晶内部に残っていることを特徴とするダイヤモンド複合体。
- 前記溝又は穴のアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド複合体。
- 前記単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置を示すデータがX線トポグラフィー法によって得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンド複合体。
- 前記単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置を示すデータが水素プラズマあるいは酸素を含む水素プラズマでエッチピットを形成し、このエッチピットを画像処理することによって得られた欠陥位置パターンデータであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンド複合体。
- 前記溝又は穴が、フォトマスクを用いたドライエッチングによって開けられたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
- 前記溝又は穴が、欠陥の位置を示すデータを入力したレーザー加工機によって開けられたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
- 前記ダイヤモンド単結晶膜の厚さが0.5〜3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
- 単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置についてのデータを入手し、このデータに基づいて前記単結晶ダイヤモンド基板上の欠陥の位置に溝又は穴を、該溝又は穴の幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)が2以上となるように形成し、次いで前記溝又は穴の部分が空孔として結晶内部に残るように、前記単結晶ダイヤモンド基板上に、気相エピタキシャル成長法によって単結晶ダイヤモンド膜を形成することを特徴とするダイヤモンド複合体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のダイヤモンド複合体における単結晶ダイヤモンド基板と単結晶ダイヤモンド膜とを分離し、単結晶ダイヤモンド膜の裏面の単結晶ダイヤモンド基板を研磨して得られたダイヤモンド単結晶。
- 厚さが0.5〜3mmであることを特徴とする請求項8に記載の単結晶ダイヤモンド。
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