JP2012051793A - オフ角を有する単結晶基板の製造方法 - Google Patents

オフ角を有する単結晶基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】単結晶の気相合成において利用できるオフ基板の製造に際して、製造コストを削減でき、且つ同一のオフ角を有する基板を簡単かつ大量に製造することが可能な新規な方法を提供する。
【解決手段】気相合成法による半導体ダイヤモンド等のエピタキシャル成長が可能な材料であって、その表面が、エピタキシャル成長が可能な結晶面に対してオフ角を有する材料を基板として用い、該基板にイオン注入を行って、基板の表面近傍に結晶構造の変質した層を形成し、気相合成法によって該基板上に結晶成長を行い、次いで、成長した結晶層と基板とを分離させて得られた結晶層を基板として用い、該基板にイオン注入を行って、基板の表面近傍に結晶構造の変質した層を形成し、気相合成法によって該基板上に結晶成長を行い、成長した結晶層と基板とを分離させることを特徴とする、オフ角を有する単結晶基板の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、気相合成法による半導体ダイヤモンド成長のための基板等として適するオフ角を有する単結晶基板の製造方法に関する。
半導体として優れた特性を有するダイヤモンドは、高周波・高出力デバイス、紫外線発光デバイスなど半導体デバイス用の材料として期待されている。ダイヤモンド単結晶の成長は、主に高圧合成法、気相合成法などの方法によって行われており、特に、半導体グレードの高品質ダイヤモンドは、気相合成法によるダイヤモンド基板上へのホモエピタキシャル成長によって合成されている。
しかしながら、気相合成法によるダイヤモンドのエピタキシャル成長においては、多数の異常成長粒子や成長丘などの欠陥が発生し易く、これらの欠陥は、デバイス作成時に電気的な特性を劣化させる原因となる。
ダイヤモンドの気相合成法において、欠陥の発生を抑制できる方法として、例えば、(1)原料ガス中に微量の不純物成分を添加して特定の結晶面を優先的に成長させる方法、(2)特定の結晶面が優先的に配向する条件を選択する方法、(3)表面が、エピタキシャル成長が可能な結晶面に対して微小な傾斜(オフ角)を有する基板を用い、この上にステップフロー成長によってダイヤモンドを成長させる方法等がある。
上記(1)の方法では、最もよく利用される(100)面上へのダイヤモンド成長の場合、微量の不純物として窒素を添加することにより、(100)面が優先的に成長し、異常成長粒子や成長丘のない巨視的に平坦な面を得ることができることが報告されている。(例えば、非特許文献1参照)しかしながら、この方法では、成長中に結晶内に取り込まれる窒素に関連した欠陥により電気的特性が劣化することがあり、ダイヤモンドの持つ優れた電気的特性を十分に生かすことができない。
また、上記(2)の方法では、特定の結晶面が優先的に配向する成長条件が得られた場合であっても、一般的に基板として用いられる高温高圧合成法によるダイヤモンド基板は、均質性が劣り、研磨によるダメージを完全に除去することが困難であるため、このダイヤモンド基板上に気相法でダイヤモンドを成長させると、部分的に異常成長粒子や成長丘が発生し易く、巨視的に平坦な成長面を得ることが難しい。
一方、上記(3)の方法では、エピタキシャル成長が可能な結晶面に対してオフ角を有する基板を用いることによって、気相合成における結晶成長の基点となるステップの密度が高くなり、ステップフローモードでの成長が促進される。その結果、結晶成長の形態が沿面成長となり、異常成長粒子や成長丘の発生が著しく抑制され、再現性よく巨視的に平坦な成長面を得ることができる。(例えば、非特許文献2参照)
しかしながら、上記(3)の方法では、表面欠陥の少ない気相合成ダイヤモンド膜を再現性よく製造するためには、基板の表面が特定の結晶面に対してオフ角があるように加工された基板(以下、「オフ基板」と称することがある)が必要となる。従来、オフ基板はダイヤモンド単結晶を所定のオフ角を持つように研磨することにより製造されており、研磨方法としては、主として、ダイヤモンドを高速回転する鋳鉄盤に押し当てて研磨を行うスカイフ研磨等の機械的な研磨方法が採用されている。しかしながら、オフ角のない基板(ジャスト基板)からオフ基板を得る場合には、図1に示すように研磨によってダイヤモンドを削り取る必要がある。例えば、4mm角のダイヤモンド単結晶板からオフ角3度のオフ基板を得る場合、研磨量は片面あたり約200μmとなり、両面平行に研磨する場合には約400μmが失われる。これは、一般的な半導体ウェハー約1枚分に匹敵する厚さである。現状で得られる最大サイズである10mm角ダイヤモンド単結晶板の場合には、約1mmの研磨量になる。しかも、ダイヤモンドは最も硬い材料であるため、研磨が難しく、スカイフ研磨によってこれだけのダイヤモンドを削り取り、かつ半導体グレードのダイヤモンドの気相成長に適した表面粗さの小さな研磨面を得るためには相当の時間が必要となる。さらに、機械研磨であるため加工誤差が大きく、オフ角を制御して同一のオフ角を有する基板を大量に生産することは極めて困難なのが現状である。
このように、オフ基板を研磨のみによって製造する場合、ダイヤモンドの損失が大きくなり、製造コストが跳ね上がるだけでなく、精密に制御された同一のオフ角を持つ基板を大量に製造することも難しいという問題点がある。
一方、一般に用いられる高温高圧合成のダイヤモンド基板は高価なため、これを繰り返し利用するための方法がいくつか提案されている。
Parikhらは、数MeVの高エネルギーに加速した酸素イオンをダイヤモンドにイオン注入することにより、非ダイヤモンド層を形成した後、酸素雰囲気中でアニールすることにより、基板からミクロンメータ程度の厚さを持つ単結晶膜を分離することができることを示している。(例えば、非特許文献3)この方法によると、基板はわずかに失われるものの、イオン注入後にあらかじめエピタキシャル成長膜を成長しておく、あるいは分離した膜上にさらにダイヤモンドをエピタキシャル成長することにより、エピタキシャル成長膜を分離して取り出すことができる。
また、Marchywkaらは、上記のように形成された非ダイヤモンド層を電気化学エッチングによって取り除くことにより、あらかじめイオン注入した基板上にエピタキシャル成長したダイヤモンド膜を基板から分離する方法を提案している。(例えば、特許文献1参照)
さらに、山本らは、半導体ダイヤモンド層と絶縁性ダイヤモンドの積層膜をエピタキシャル成長するか、絶縁性ダイヤモンド層にイオン注入によって導電性を付与した後、半導体ダイヤモンド層の電気化学エッチング、あるいはイオン注入層の電気化学エッチングまたは放電加工により絶縁性ダイヤモンド膜を分離して取り出す方法を提案している。(例えば特許文献2参照)
これらの方法によれば、高価な基板を研磨などによって大きく失うことなく、低コストでダイヤモンド基板を製造することができるが、いずれの方法もジャスト基板を対象とする方法である。
米国特許5,587,210 特開2005−272197号公報
"The effect of nitrogen addition during high-rate homoepitaxial growth of diamond by microwave plasma CVD", A. Chayahara, Y. Mokuno, Y. Horino, Y. Takasu, H. Kato, H. Yoshikawa, N. Fujimori, Diamond and Related Materials 13 (2004) 1954-1958 "Device-grade homoepitaxial diamond film growth", H. Okushi, H. Watanabe, S. Ri, S. Yamanaka, D. Takeuchi, Journal of Crystal Growth 237-239 (2002) 1269-1276 " Single-crystal diamond plate liftoff achieved by ion implantation and subsequent annealing", N. R. Parikh, J. D. Hunn, E. McGucken, M. L. Swanson, C. W. White, R. A. Rudder, D. 6. Malta, J. B. Posthill, R. J. Markunas, Appl. Phys. Lett. 61 (1992) 3124-3126
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、単結晶の気相合成において利用できるオフ基板の製造に際して、製造コストを削減でき、且つ同一のオフ角を有する基板を簡単かつ大量に製造することが可能な新規な方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の新規な知見に至った。
即ち、表面が特定の結晶面に対して所定のオフ角を有するよう精密に研磨されたダイヤモンド基板(オフ基板)を種結晶として用い、イオン注入によって、該種結晶の表面近傍に非ダイヤモンド層を形成した後、気相合成法によってダイヤモンドを成長させる方法によれば、ステップフロー成長によって、異常成長粒子や成長丘の発生が大きく抑制された良好なダイヤモンド層を形成することができ、成長したダイヤモンド層は、非ダイヤモンド層において、オフ基板から容易に分離することができる。これにより、種結晶と同一のオフ角を有するダイヤモンド基板を簡単かつ短時間に製造でき、この方法を繰り返すことによって、同一のオフ角を有するダイヤモンド基板を、簡単且つ大量に製造できる。しかも、この方法は、ダイヤモンドに限定されず、気相合成法によってエピタキシャル成長が可能な材料であれば、各種の材料に対して同様に適用可能である。
本発明は、上記した新規な知見に基づいて、更に、鋭意研究を重ねた結果完成されたものであり、下記のオフ角を有する単結晶基板の製造方法を提供するものである。
1. 気相合成法によるエピタキシャル成長が可能な材料であって、その表面が、エピタキシャル成長が可能な結晶面に対してオフ角を有する材料を基板として用い、
該基板にイオン注入を行って、基板の表面近傍に結晶構造の変質した層を形成し、
気相合成法によって該基板上に結晶成長を行い、
次いで、成長した結晶層と基板とを分離させ、
分離された結晶層を基板として用い、
該基板にイオン注入を行って、基板の表面近傍に結晶構造の変質した層を形成し、
気相合成法によって該基板上に結晶成長を行い、
成長した結晶層と基板とを分離させる
ことを特徴とする、オフ角を有する単結晶基板の製造方法。
2. 成長した結晶層と基板とを分離させる方法が、電気化学エッチング、放電加工又は熱酸化である上記項1に記載のオフ角を有する単結晶基板の製造方法。
3. オフ角を有するダイヤモンドを基板として用いる上記項1又は2に記載の単結晶基板の製造方法。
4. イオン注入によって基板表面近傍にグラファイト化した非ダイヤモンド層を形成する上記項3に記載の方法。
5. 気相合成法がプラズマCVD法であり、成長した結晶層と基板とを分離させる方法が電気化学エッチング法である上記項3又は4に記載の方法。
本発明方法によれば、従来研磨によって得られていたオフ基板を、極めて制御性よく、簡単かつ短時間に製造することができる。そして、オフ基板の製造に使用した種結晶や、得られたオフ基板を、種結晶として再度利用することができるために、オフ基板の製造枚数を飛躍的に増加することができ、低コストで大量のオフ基板の製造が可能となる。
従って、例えば、本発明方法で得られるダイヤモンド単結晶のオフ基板を用いて、気相合成法によるダイヤモンド成長を行うことによって、半導体グレードの高品質ダイヤモンドを大量且つ安価に提供することが可能となる。
従来法によるオフ基板製造工程を示す概略図。 本発明によるオフ角を有する単結晶基板の製造工程を示す概略図。
図2は、本発明によるオフ角を有する単結晶基板の製造工程を示す概略図である。以下、図2を参照して、本発明をより具体的に説明する。
オフ基板
本発明方法では、気相合成法による結晶成長を行うための種結晶(基板)として、気相合成法によるエピタキシャル成長が可能な材料であって、その表面が、エピタキシャル成長が可能な結晶面(以下、「基準結晶面」ということがある)に対して傾斜角、即ち、オフ角を有する材料(オフ基板)を用いる。この様な材料としては、例えば、ダイヤモンド、シリコン、SiC等を例示できる。
基準結晶面については、種結晶の種類に応じてエピタキシャル成長が可能な結晶面から適宜選択すればよい。例えば、半導体グレードのダイヤモンドを成長させるためには、通常、ダイヤモンド結晶の(100)面、(111)面等を基準結晶面とすることができる。
オフ角の大きさについては、特に限定的ではなく、ステップフロー成長によって、オフ角を維持して結晶成長が可能な程度の傾斜角であればよい。例えば、ダイヤモンドの(100)面、(111)面等を基準結晶面とする場合には、オフ角は、例えば、0.05〜10度程度とすることが好ましく、0.05〜5度程度とすることがより好ましい。
オフ角の形成方法については特に限定的ではなく、例えば、常法に従って機械研磨等の方法で所定のオフ角を形成すればよい。例えば、ダイヤモンドを種結晶とする場合には、高速回転する鋳鉄盤(スカイフ盤)に押し当てて研磨を行うスカイフ研磨などの方法を採用できる。
イオン注入
次いで、オフ基板の一方の表面からイオン注入して、オフ基板の表面近傍に結晶構造が変質したイオン注入層を形成する。イオン注入法は、試料に高速のイオンを照射する方法であり、一般的には所望の元素をイオン化して取り出し、これに高電圧を印加して加速した後、質量分離して所定のエネルギーを持ったイオンを試料に照射することにより行うが、プラズマの中に試料を浸漬し、試料に負の高電圧パルスを加えることによりプラズマ中の正イオンを誘引することにより行ってもよい。注入イオンとしては、例えば炭素、酸素、アルゴン、ヘリウム、プロトンなどを用いることができる。
イオンの注入エネルギーは、一般的なイオン注入で用いられる10 keV〜10 MeV程度の範囲でよい。注入イオンは、イオンの種類とエネルギー、および試料の種類によって決まる平均深さ(飛程)を中心に一定の幅を持って分布する。試料の損傷はイオンが停止する飛程近傍が最大になるが、飛程近傍より表面側でもイオンが通過することにより一定程度の損傷を受ける。これら飛程や損傷の度合いは、SRIMコードのようなモンテカルロシミュレーションコードによって計算・予測することができる。
オフ基板にイオン注入を行うことにより、照射量がある一定量を超えると、イオンの飛程近傍より表面側で化学的変化乃至物理的変化が生じて結晶構造が変質し、変質した部分より表層部分での分離が容易となる。例えば、ダイヤモンドを種結晶とする場合には、イオンの飛程近傍より表面側で、ダイヤモンド構造が破壊されて、グラファイト化が進行する。
形成される変質部分の深さや厚さは、使用するイオンの種類、注入エネルギー、照射量などによって異なるので、これらの条件については、イオンの飛程近傍において分離可能な変質層が形成され、且つオフ基板の表面については、気相合成法によるエピタキシャル成長が可能な程度の結晶性を維持できるように決めればよい。具体的には、例えばダイヤモンドの場合、注入される原子濃度の最大値として、1x1020 atoms/cm3以上が必要であり、確実に非ダイヤモンド層を形成するためには1x1021 atoms/cm3以上であることが好ましい。また、エピタキシャル成長が可能な表面の損傷の程度は、ダイヤモンドの表面近傍に生成される空孔の量が1x1023 個/cm3以下であることが必要であり、4x1022個/cm3以下であることが好ましい。
例えば、種結晶としてダイヤモンドを用い、炭素イオンを注入エネルギー3 MeVで注入する場合には、イオンの照射量は、1x1016 ions/cm2〜1x1017ions/cm2程度とすればよい。この場合、イオンの照射量が多くなりすぎると、表面の結晶性が悪化してエピタキシャル成長が困難となり、一方、照射量が少なすぎると、非ダイヤモンド層が十分に形成されず、成長したダイヤモンド層の分離が困難となる。
気相合成法よる結晶成長
次いで、イオン注入を行ったオフ基板上に気相合成法によって単結晶を成長させる。気相合成法としては、特に限定はなく、例えば、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメント法、直流放電法などの公知の方法を適用できる。
例えば、ダイヤモンドのオフ基板を種結晶とする場合には、特に、マイクロ波プラズマCVD法によれば、高純度なダイヤモンド単結晶膜を成長させることができる。具体的な製造条件については特に限定はなく、公知の条件に従って、ダイヤモンド単結晶を成長させればよい。原料ガスとしては、例えば、メタンガスと水素ガスの混合ガスを用いることができ、更に、これに窒素ガスを加えることによって、成長速度を向上させることができる。具体的なダイヤモンド成長条件の一例を示すと、反応ガスとして用いる水素、メタン及び窒素の混合気体では、メタンは、水素供給量1モルに対して、0.01〜0.33モル程度となる比率で供給し、窒素は、メタン供給量1モルに対して、0.0005〜0.1モル程度となる比率で供給することが好ましい。また、プラズマCVD装置内の圧力は、通常、13.3〜40kPa程度とすればよい。マイクロ波としては、通常、2.45GHz、915MHz等の工業および科学用に許可された周波数のマイクロ波が使用される。マイクロ波電力は、特に限定的ではないが、通常、0.5〜5kW程度とすればよい。この様な範囲内において、例えば、基板(ダイヤモンド種結晶)の温度が900〜1300℃程度となるように各条件を設定すればよい。このような温度に基板を保つことより、イオン注入により形成した非ダイヤモンド層のグラファイト化が促進される。
本発明では、上記した方法でマイクロ波プラズマCVD法によってオフ基板上にダイヤモンド単結晶を成長させることによって、ステップフロー成長を促進し、異常成長粒子や成長丘の発生を皆無にすることができるとともに、特に窒素を添加した場合には、成長速度が飛躍的に上昇し、基板として必要な膜厚(300μm程度)を歩留まりよく短時間のうちに成長させることができる。
結晶層の分離工程
上記した方法で気相合成法による結晶成長を行った後、形成された結晶層をオフ基板から分離する。この際、形成された結晶層は、前述したイオン注入によってオフ基板の表面近傍に形成されたイオン注入層の部分から容易に分離される。例えば、種結晶としてダイヤモンドを用いた場合には、成長したダイヤモンド層は、基板に形成されたグラファイト化した非ダイヤモンド層の部分から容易に分離される。
成長した結晶層を分離する方法については、特に限定的ではないが、例えば、前述の熱酸化、電気化学エッチング、放電加工などの方法を適用できる。
オフ基板がダイヤモンドの場合には、イオン注入によって形成される非ダイヤモンド層では、グラファイト化が進行して導電性が増加するので、電気化学エッチング法で非ダイヤモンド層をエッチング除去することによって、成長したダイヤモンド単結晶層を分離することができる。
電気化学エッチングで非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、電解液の中に2個の電極を一定間隔を置いて設置し、成長した結晶層を含むオフ基板を電解液中の電極間に置き、電極間に電圧を印加すればよい。電解液としては、純水が望ましい。電極材料は導電性を有するものであれば特に制限はないが、化学的に安定な白金、グラファイトなどの電極が望ましい。電極間隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよい。電解液の中の電界強度は通常100〜300 V/cmであればよい。
また、熱酸化で非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、酸素雰囲気中で、オフ基板を500〜900℃程度の高温に加熱し、酸化によって非ダイヤモンド層をエッチングすればよい。この際、エッチングがオフ基板内部まで進むと、結晶の外周から酸素が透過しにくくなるため、あらかじめ十分な量の酸素イオンを注入しておけば、酸素が結晶内部からも供給され、非ダイヤモンド層のエッチングをより進行させることができる。
上記した分離工程により、オフ基板(種結晶)のイオン注入層より表面側の結晶と、気相合成によって成長した結晶層が種結晶から分離される。分離された結晶の分離面のオフ角は、種結晶のオフ角と同一となり、種結晶と同一のオフ角を有する基板、即ちオフ基板が複製される。
成長した結晶層を分離した基板は、イオン注入に伴い一定の損傷を受けているものの、そのまま、オフ基板として、再度結晶成長に用いることが可能であり、さらにこの面をスカイフ研磨等の研磨を行って仕上げ研磨して、イオン注入による変質層を取り除いてもよい。仕上げ研磨の量は、注入層の厚さと同程度であり、通常数μm以下であるため、極めて短時間のうちに取り除くことができる。
種結晶は再びオフ基板として同様のプロセスに用いることができ、基板の厚さ÷注入層の深さで決まる回数だけ繰り返し再利用することができる。また、複製したオフ基板からも同様のプロセスによって同一のオフ角を持つ基板を複製することができる。この結果、オフ基板の製造枚数を飛躍的に増大させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
種結晶(オフ基板)として、表面が(100)面から3.2度のオフ角があるように研磨された4×4×0.4 mm3の高温高圧合成Ibダイヤモンド基板を用い、下記の方法によって、マイクロ波CVD法によるダイヤモンド成長を行った。
まず、1.5 MVタンデム型加速器を用いて、注入エネルギー3 MeV、照射量2 × 1016 ions/cm2で種結晶に炭素イオンを注入した。注入イオンの飛程をモンテカルロシミュレーションコードによって計算したところ約1.6μmであった。この照射により、ダイヤモンド基板の色は薄い黄色から黒色に変化し、非ダイヤモンド層が形成されていることが確認できた。
この基板を市販のマイクロ波プラズマCVD装置にセットし、水素ガスをCVDチャンバーに導入し、マイクロ波電力を印加してプラズマを発生させた。水素ガス流量500 sccm、圧力24 kPaで基板温度が1130℃になるようにマイクロ波電力を約1.7 kWに設定し、30分間保持した。この工程は水素プラズマにダイヤモンド基板を曝すことによって表面のクリーニングを行うとともに、CVDチャンバー内の温度などの条件を安定化するためのものである。
次いで、CVDチャンバーにメタンガスを60 sccm、窒素ガスを0.6 sccm導入し、ダイヤモンドの成長を開始した。成長中、ダイヤモンド基板の温度が1130℃に維持されるようにマイクロ波電力を調節した。メタンガス導入後、360分間保持することによって結晶成長を行い、その後、メタンガスを止めることによって成長を終了させた。
上記方法でダイヤモンド単結晶を成長させた後、基板側面のイオン注入層の周りに堆積したダイヤモンドをレーザー切断で除去し、次の方法で電気化学エッチングを行った。
まず、純水を入れたビーカの中に2本の離れた白金電極を約1 cmの間隔を隔てて設置し、その電極間に、ダイヤモンド結晶を成長させた基板を置いた。電極間に直流340 Vの電圧を印加し、12時間放置したところ、基板とダイヤモンド成長層が分離した。
分離したダイヤモンド成長層の膜厚をマイクロメータで計測したところ、370μmであり、成長膜厚とほぼ一致した。また、X線回折により分離した面のオフ角を測定した結果、種結晶と同じ3.2度のオフ角を有し、オフ基板として利用できるものであった。
種結晶(オフ基板)として、表面が、(100)面から2.6度のオフ角があるように研磨された4×4×0.4 mm3の高温高圧合成Ibダイヤモンド基板を用い、実施例1と同様の方法によって、イオン注入及びマイクロ波CVD法によるダイヤモンド成長を行った。
ダイヤモンド単結晶を成長させた後、実施例1と同様にして、基板側面のイオン注入層の周りに堆積したダイヤモンドをレーザー切断で除去し、電気化学エッチングを行って、基板とダイヤモンド成長層とを分離させた。
分離したダイヤモンド成長層の膜厚をマイクロメータで計測したところ、360μmであり、成長膜厚とほぼ一致した。また、X線回折により分離した面のオフ角を測定した結果、種結晶とほぼ同じ2.5度のオフ角を有し、オフ基板として利用できるものであった。

Claims (5)

  1. 気相合成法によるエピタキシャル成長が可能な材料であって、その表面が、エピタキシャル成長が可能な結晶面に対してオフ角を有する材料を基板として用い、
    該基板にイオン注入を行って、基板の表面近傍に結晶構造の変質した層を形成し、
    気相合成法によって該基板上に結晶成長を行い、
    次いで、成長した結晶層と基板とを分離させ、
    分離された結晶層を基板として用い、
    該基板にイオン注入を行って、基板の表面近傍に結晶構造の変質した層を形成し、
    気相合成法によって該基板上に結晶成長を行い、
    成長した結晶層と基板とを分離させる
    ことを特徴とする、オフ角を有する単結晶基板の製造方法。
  2. 成長した結晶層と基板とを分離させる方法が、電気化学エッチング、放電加工又は熱酸化である請求項1に記載のオフ角を有する単結晶基板の製造方法。
  3. オフ角を有するダイヤモンドを基板として用いる請求項1又は2に記載の単結晶基板の製造方法。
  4. イオン注入によって基板表面近傍にグラファイト化した非ダイヤモンド層を形成する請求項3に記載の方法。
  5. 気相合成法がプラズマCVD法であり、成長した結晶層と基板とを分離させる方法が電気化学エッチング法である請求項3又は4に記載の方法。
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