JP2024066069A - (111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜 - Google Patents

(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜 Download PDF

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英明 山田
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Abstract

【課題】(111)面を主面とする新規な単結晶ダイヤモンド膜を提供する。【解決手段】(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜であって、前記単結晶ダイヤモンド膜は、窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3である、単結晶ダイヤモンド膜。【選択図】なし

Description

本発明は、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜に関する。
ダイヤモンドは、高絶縁破壊電界(>10MV/cm)、高速キャリア移動度(電子:4500cm2/Vs、正孔:3800cm2/Vs)、物質中最高の熱伝導率(22W/cmK)等の優れた物性を有しており、さらに、化学的安定性及び耐放射線性にも優れているため、高温・極限環境下で動作するパワーデバイス材料としての応用が期待されている。
特開2010-150069号公報
従来、ダイヤモンド膜としては、{100}を主面とするものが主として使用されている。一方、ダイヤモンド膜の用途拡大等の観点からは、(111)を主面とするダイヤモンド膜も求められる。(111)を主面とするダイヤモンドは、リン、ホウ素、窒素などの高濃度不純物制御が可能であるため、pn接合を含む電子デバイス作製に欠かせない。また、(111)面はNV中心軸の高い配向性制が可能であり、室温動作が可能な量子デバイス材料としても近年注目されている。特に、(111)を主面とするダイヤモンド膜は、n型ドーピング濃度の制御性、電子スピンの配向性制御において(100)面よりも優れており、電子デバイス、量子デバイス等への応用が期待されている。
ところが、(111)を主面とするダイヤモンド成長は、{100}を主面とする場合と比較し割れやすく、化学気相成長(CVD)法によって、(111)を主面とするダイヤモンドのバルク、厚膜を得ることは困難であることが知られている。そこで、従来法では、高圧合成したダイヤモンド結晶や{100}を主面とするCVD成長で得られたバルク結晶から、レーザーカットにより(111)面を切り出している。このため、材料のロスや、{100}を主面としたバルクCVD成長、研磨などに多くの時間を要するという問題を有する。
本発明は、(111)面を主面とする新規な単結晶ダイヤモンド膜を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板の表面に単結晶ダイヤモンド膜を成長させる際、気相合成法に用いる反応ガス中の窒素濃度を所定範囲に設定しつつ、さらに、反応ガス中のメタンガス/水素ガス比についても制御することで、(111)面を主面とする新規な単結晶ダイヤモンド膜が好適に製造されることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜であって、
前記単結晶ダイヤモンド膜は、窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3である、単結晶ダイヤモンド膜。
項2. 前記単結晶ダイヤモンド膜は、厚みが30μm以上である、項1に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
項3. 前記単結晶ダイヤモンド膜は、一方面の面積が1mm2以上である、項1又は2に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
項4. 前記単結晶ダイヤモンド膜は、自立膜である、項1~3のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
項5. 前記単結晶ダイヤモンド膜の自立膜は、厚み方向とは垂直方向に接合境界を有する、項1~4のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
項6. 前記[110]方向に欠陥が伝搬している、項1~5のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
項7. (111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程1と、
気相合成法を用いて、ダイヤモンド膜中の窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3の(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を成長させる工程2と、
を備えており、
前記工程2において、前記気相合成法に用いる反応ガス中の窒素濃度が、1×10-6~5×10-5atoms/cm3の範囲であり、かつ、前記気相合成法に用いる反応ガス中のメタンガス/水素ガス比(モル比)が、0.01未満である、単結晶ダイヤモンド膜の製造方法。
項8. 前記工程2で得られた(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を、前記単結晶ダイヤモンド基板から分離する工程3をさらに備える、項7に記載の単結晶ダイヤモンド膜の製造方法。
本発明によれば、(111)面を主面とする新規な単結晶ダイヤモンド膜を提供することができる。
比較例1における試料全体の微分干渉顕微鏡像(結晶全域に割れ)である。 比較例1における成膜後の試料の透過顕微鏡像である。 実施例1における試料全体の微分干渉顕微鏡像(全域で単結晶成長)である。 比較例2における試料全体の微分干渉顕微鏡像(多結晶化)である。 比較例2における成膜後の試料の透過顕微鏡像である。 実施例1-3及び比較例1,2で得られた試料中の不純物(N,B,H,Si)の濃度を示すグラフ(横軸がN/H(ppm)、縦軸が各不純物濃度(atoms/cm3)である。 実施例7の(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の偏光顕微鏡像である。 参考例1の高圧合成で得られた(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の偏光顕微鏡像である。 参考例2の(100)バルク結晶から切り出した、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の偏光顕微鏡像である。 参考例1の単結晶ダイヤモンド膜上に形成したエッチピットの形状である。 参考例2の単結晶ダイヤモンド膜上に形成したエッチピットの形状である。 実施例7の単結晶ダイヤモンド膜上に形成したエッチピットの形状である。 実施例8の(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の偏光顕微鏡像である。 実施例8で得られた試料をレーザー切断し、試料a及び試料bの2つに分割した様子を示す偏光顕微鏡像である。 試料a及び試料bの切断箇所を合わせて成膜した後の試料の微分干渉顕微鏡像である。 図16(a)は、当該試料の接合部のレーザー顕微鏡像であり、図16(b)はそのプロファイルである。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜であって、窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3であることを特徴としている。以下、本発明の単結晶ダイヤモンド膜について詳述する。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、単結晶ダイヤモンド基板の上に積層された状態で存在していてもよい。また、本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、基板から独立した自立膜として存在していてもよい。本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、例えば、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を用意し、単結晶ダイヤモンド基板の表面に炭素イオン注入後、所定の組成を満たすガス中において、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を成長させる工程を経ることで、好適に製造することができる。本発明の単結晶ダイヤモンド膜の製造方法の詳細については、後述する。
基板-ダイヤモンド膜積層体には、基板、ダイヤモンド膜に加えて、積層体の用途に応じて他の層が積層されていてもよい。他の層としては、特に制限されず、ダイヤモンドをパワーデバイス材料として用いる際に積層される、公知の層(例えば、電極、絶縁膜、他の半導体膜など)を設けることができる。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、単結晶ダイヤモンド基板の上に積層された状態(以下、基板-ダイヤモンド膜積層体ということがある)で存在する場合、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜が、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板の上に積層された積層構成を備えることが好ましい。基板-ダイヤモンド膜積層体において、基板の厚みについては、基板-ダイヤモンド膜積層体の用途などに応じて適宜調整すればよく、例えば、50μm~1cm程度が挙げられる。
また、本発明の単結晶ダイヤモンド膜の厚みについては、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、30μm以上、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、上限については、例えば、1000μm以下が挙げられる。本発明の単結晶ダイヤモンド膜を自立膜とする場合には、単結晶ダイヤモンド膜の厚みは、好ましくは30μm以上とする。
また、本発明の単結晶ダイヤモンド膜の一方面の面積は、好ましくは1mm2以上、より好ましくは4mm2以上、さらに好ましくは10mm2以上であり、上限については、例えば630mm2以下である。
また、本発明のダイヤモンド膜の厚みの最大値と最小値との差は、厚みの最大値の10%以下であることが好ましく、厚みの最大値の5%以下であることがより好ましく、厚みの最大値の3%以下であることがさらに好ましい。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜において、窒素の含有率は1×1017~2×1018の範囲内であればよく、好ましくは1×1017~1×1018atms/cm3、より好ましくは1×1017~5×1017atms/cm3である。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、窒素以外の不純物を含んでいなくてもよいし、窒素以外の不純物を含んでいてもよい。窒素以外の不純物としては、例えば、ホウ素、リンなどが挙げられる。
例えば、ダイヤモンド膜にホウ素元素やリン元素などの窒素以外の不純物を含有させる場合に、気相合成法よってダイヤモンド膜を形成する際に、炭素源となるガス(メタンなど)と共に、ホウ素源となるガス(トリメチルボロン、ホスフィン(PH3)など)を共存させることにより、ダイヤモンド膜に窒素以外の不純物を含有させることができる。ダイヤモンド膜中の窒素以外の不純物濃度としては、例えば1×1018~1×1022cm-3程度の範囲、好ましくは1×1019~1×1021cm-3程度の範囲、さらに好ましくは1×1020~1×1021cm-3程度の範囲が挙げられる。なお、ダイヤモンド膜における窒素以外の不純物の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定した値である。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、マイクロ波CVD法、熱フィラメントCVD法等の気相合成法によって製造することができる。なお、金属フィラメントを利用した熱フィラメントCVD法によってダイヤモンド膜を形成すると、金属フィラメントを構成する金属がダイヤモンド膜中に含まれ、金属がドープされたダイヤモンド膜となる。すなわち、本発明の基板-ダイヤモンド膜積層体において、ダイヤモンド膜には、通常、フィラメントに由来する金属が含まれる。一方、マイクロ波CVD法では、ダイヤモンド膜に金属元素は含まれない。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜中に金属元素が含まれる場合、金属元素の濃度としては、特に制限されないが、例えば1×1018~1×1022cm-3程度の範囲、好ましくは1×1019~1×1022cm-3程度の範囲、さらに好ましくは1×1019~1×1021cm-3程度の範囲が挙げられる。なお、ダイヤモンド膜における金属元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定した値である。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜の自立膜は、例えば、厚み方向とは垂直方向に接合境界を有するものとすることができる。このような接合境界は、(111)面を主面とする複数の単結晶ダイヤモンド膜を接合する際に形成されるものである。
また、本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、例えば[110]方向に欠陥が伝搬している。後述する本発明の単結晶ダイヤモンド膜の製造方法を利用して単結晶ダイヤモンド膜を製造した場合、[110]方向に欠陥が伝搬している単結晶ダイヤモンド膜を製造することができる。なお、エッチピット形状による判別により、高圧合成ダイヤモンド膜とCVD成長ダイヤモンド膜との区別に関し、CVD成長ダイヤモンド膜のうち、(100)バルクから{111}結晶を切り出した試料と、{111}上でCVD成長により作製した試料とを見分けるのは難しい。この場合、後述の実施例3に示すような偏光顕微鏡像との組み合わせにより判別が可能である。また、(100)CVD成長では転位は(100)方向に、(111)CVD成長では転位は(110)方向に伝搬する特長がある。X線トポグラフィや共焦点ラマン分光法、TEM等により転位線の伝搬方向を可視化することで区別が可能である。(111)CVD成長での転位伝搬については、XRTについては"*S. Masuya and M. Kasu, “Dislocations in chemical vapor deposition (111) single crystal diamond observed by synchrotron x-ray topography and their relation with etch pits,” Diam. Relat. Mater. 90, 40 (2018)."、TEMについては"*D. Araujo, E. Bustarret, A. Tajani, P. Achatz, M. Gutierrez, A. J. Garcia, and M. P. Villar, “Comparison of the crystalline quality of homoepitaxially grown CVD diamond layer on cleaved and polished substrates,” Phys. Status Solidi A207, 2023 (2010)."及び" Confocal Raman * K. Ichikawa, S. Koizumi, T. Teraji et al., J. Appl. Phys. 132, 025302 (2022)"の各文献を参照することができる。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜の製造方法は、本発明の単結晶ダイヤモンド膜を製造できる方法であれば、特に制限されない。本発明の単結晶ダイヤモンド膜の製造方法の好適な例を以下に説明する。
本発明の単結晶ダイヤモンド膜は、以下の工程1及び2を備え得る方法により、好適に製造することができる。
工程1:(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を用意する。
工程2:気相合成法を用いて、ダイヤモンド膜中の窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3の(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を成長させる。
ここで、工程2において、気相合成法に用いる反応ガス中の窒素濃度は、1×10-6~5×10-5atoms/cm3の範囲であり、かつ、気相合成法に用いる反応ガス中のメタンガス/水素ガス比(モル比)は、0.01未満とする。気相合成法に用いる反応ガスの組成をこのように制御することで、本発明の単結晶ダイヤモンド膜を好適に製造することが可能となる。
工程1において、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板としては、例えば、公知の方法で製造したものを利用することができるし、市販品を利用することもできる。
工程1と工程2との間に、前記単結晶ダイヤモンド基板の表面に炭素イオン注入を行う工程1-2を設けてもよい。炭素イオン注入は、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板の表面に成長した本発明の単結晶ダイヤモンド膜を分離しやすくするための工程である。工程1-2における、単結晶ダイヤモンド基板の表面に炭素イオン注入についても公知の方法を採用することができる。炭素イオン注入は、例えば、次のようにして行うことができる。
炭素イオン注入法は、試料に高速の炭素イオンを照射する方法であり、一般的には所望の元素をイオン化して取り出し、これに電圧を印加して電界により加速した後、質量分離して所定のエネルギーを持ったイオンを試料に照射することにより行うが、プラズマの中に試料を浸漬し、試料に負の高電圧パルスを加えることによりプラズマ中の正イオンを誘引するプラズマイオン注入法により行ってもよい。本発明においては、注入イオンとして、炭素を用いる。
イオンの注入エネルギーは、一般的なイオン注入で用いられる10keV~10MeV程度の範囲でよい。注入イオンは、イオンの種類とエネルギー、およびイオン注入される材料の種類によって決まる注入深さ(飛程)を中心に一定の幅を持って分布する。試料の損傷はイオンが停止する飛程近傍が最大になるが、飛程近傍より表面側でもイオンが通過することにより一定程度の損傷を受ける。これら飛程や損傷の度合いは、SRIMコードのようなモンテカルロシミュレーションコードによって計算・予測することができる。尚、SRIMコードは、例えば、 The Stopping and Range of Ions in Matter, James F. Ziegler, JochenP. Biersack, Matthias D. Ziegler, http://www.srim.org/index.htm#HOMETOP等からダウンロードして利用できる。
ダイヤモンド単結晶基板にイオン注入を行うことにより、照射量がある一定量を超えると、イオンの飛程近傍より表面側で結晶構造が変質し、ダイヤモンド構造が破壊されて非ダイヤモンド層が形成される。
形成される非ダイヤモンド層の深さや厚さは、使用するイオンの種類、注入エネルギー、照射量、イオン注入される材料の種類などによって異なるので、これらの条件については、イオンの飛程近傍において分離可能な非ダイヤモンド層が形成されるように決めればよい。通常は、注入されたイオンの原子濃度が最も高い部分について、原子濃度が1×1020atoms/cm3程度以上であることが好ましく、確実に非ダイヤモンド層を形成するためには1×1021atoms/cm3程度が好ましい。
例えば、炭素イオンを注入エネルギー3MeVで注入する場合には、イオンの照射量は、1×1016ions/cm2~1×1017ions/cm2程度とすればよい。この場合、イオンの照射量が多くなりすぎると、表面の結晶性が悪化し、一方、照射量が少なすぎると、非ダイヤモンド層が十分に形成されず、表層部分の分離が困難となる。
工程2においては、気相合成法を用いて、ダイヤモンド膜中の窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3の(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を成長させる。
気相合成法としては、限定はされないが、前述の通り、マイクロ波CVD法が好ましい。気相合成法において、通常、キャリアガスとしては水素、原料ガスとしては、好ましくはメタンを用い、さらに窒素を所定量含ませる。
工程2において、気相合成法に用いる反応ガス中の窒素濃度は、1×10-6~5×10-5atoms/cm3の範囲とし、好ましくは1×10-6~3×10-5atoms/cm3、より好ましくは1×10-6~2×10-5atoms/cm3とする。
また、工程2において、気相合成法に用いる反応ガス中のメタンガス/水素ガス比(モル比)は、0.01未満とし、好ましくは0.008以下、より好ましくは0.006以下とする。
工程2で得られた(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を、単結晶ダイヤモンド基板から分離する工程3を行うことにより、本発明の単結晶ダイヤモンド膜は自立膜とすることができる。
工程3における、単結晶ダイヤモンド基板からの単結晶ダイヤモンド膜の分離は、単結晶ダイヤモンド層を成長させた後、工程1-2の炭素イオン注入によって形成した非ダイヤモンド層をエッチングし、非ダイヤモンド層から表層部分を分離することで行うことができる。表層部分の単結晶ダイヤモンドが分離されて、本発明の単結晶ダイヤモンド膜の自立膜を取得することができる。この方法によれば、成長したダイヤモンド層の切断、研磨という煩雑な工程が不要であり、作業工程を簡略化でき、更に、研磨の際のダイヤモンド結晶の破壊を回避することができる。
非ダイヤモンド層より表層部分を分離する方法については、特に限定的ではないが、例えば、電気化学エッチング、熱酸化、放電加工などの方法を適用できる。
電気化学エッチングによって非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、電解液の中に2個の電極を、一定間隔を置いて設置し、非ダイヤモンド層を形成した単結晶ダイヤモンド基板を電解液中の電極間に置き、電極間に直流電圧を印加する方法を採用できる。電解液としては、純水が望ましい。電極材料は導電性を有するものであれば特に制限はないが、化学的に安定な白金、グラファイトなどの電極が望ましい。電極間隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよい。電解液の中の電界強度は通常100~300V/cm程度であればよい。
また、電気化学エッチングによって非ダイヤモンド層を取り除く方法において、交流電圧を印加してエッチングを行う方法によれば、例えば、多数の単結晶ダイヤモンド基板をモザイク状に並べた場合であっても、非ダイヤモンド層においてエッチングが結晶の内部にまで極めて速く進行し、非ダイヤモンド層より表面側のダイヤモンドを短時間に分離することが可能となる。
交流電圧を印加する方法についても、電極間隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよいが、通常、印加電圧を電極間隔で割った電解液の中の電界強度は通常50~10000V/cm程度とすることが好ましく、500~10000V/cm程度とすることがより好ましい。
交流としては、商用の周波数60または50Hzの正弦波交流を用いるのが簡単であるが、同様の周波数成分を有すれば、波形は特に正弦波に限られるものではない。
電解液として用いる純水は、比抵抗が高い(即ち、導電率が低い)ほうが高電圧を印加できるので都合がよい。一般の超純水装置を用いて得られる超純水は、18MΩ・cm程度という十分に高い比抵抗を有するので、電解液として好適に使用できる。
また、熱酸化で非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、酸素雰囲気中で500~900℃程度の高温に加熱し、酸化によって非ダイヤモンド層をエッチングすればよい。さらに、グラファイト化が進んだ非ダイヤモンド層は導電性があるため、放電加工により切断(エッチング)することもできる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1-3及び比較例1-2(ダイヤモンド膜の作製)>
マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、(111)単結晶ダイヤモンド基板上に単結晶ダイヤモンドを製膜した。気相中の窒素/水素比を変化させた複数の試料を作製し、2次イオン質量分析法(SIMS)により、膜中の不純物濃度を定量した。
(成膜条件および成膜結果)
下記に成膜条件を示す。
基板:(111)単結晶ダイヤモンド
全圧:140Torr(1.9×104Pa)
マイクロ波出力:5kW
キャリアガス:水素
原料ガス:メタン
メタン/水素ガス比:0.6%
窒素/水素ガス比:0ppm,15ppm,30ppm,50ppm,100ppm(表1参照)
基板温度:1100~1150℃
窒素/水素比の一覧および、成長後の表面形態のまとめを表1に示す。成長膜厚は、50~100μmであった。窒素を添加しない比較例1では、成長後に図1,2に示すように、試料全域で割れが見られた。微量に窒素を添加した、実施例1-3では図3-5に示すように、試料全域で単結晶が得られた。窒素の添加量をさらに増加させた比較例2では、成長中に図6,7に示すように試料表面が荒れ、多結晶化した。これらの実験結果から、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の厚膜を作製するために適切な窒素濃度範囲が存在することが明らかとなった。
(不純物濃度の測定)
実施例1-3及び比較例1-2の試料について、それぞれ、SIMS分析により得られた窒素、ホウ素、水素、シリコンの濃度の窒素/水素比依存性を図6に示す。窒素/水素比の増加に伴い、膜中の窒素濃度が増加した。割れ、多結晶化した比較例1,2では、全域で単結晶が成長した実施例1-3と比較し、高い水素濃度を示した。
(分析条件)
測定装置:CAMECA IMS-7f
一次イオン種:Cs+
一次加速電圧:15.0kV
検出領域:30(μmφ)
分析核種:窒素、ホウ素、水素、シリコン
Figure 2024066069000001
<実施例4-6(ダイヤモンド膜(自立基板)の作製)>
実施例1-3で得られた各試料について、特開2010-150069号公報に記載された方法を利用し、単結晶ダイヤモンド基板からエピ層を分離し、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の自立膜(ダイヤモンド基板に積層されていない独立した膜)を作製した。実施例4-6で得られた単結晶ダイヤモンド膜は、割れのない自立膜であった。これらの結果と、実施例1-3の不純物濃度の定量結果から、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を製膜する際、窒素濃度については1×1017atoms/cm3<[N]<2×1018atoms/cm3の関係とし、水素濃度については[H]<1×1018atoms/cm3の関係とすることが、自立膜を得るために適した条件であることが分かった。
<実施例7及び参考例1-2>
実施例7として、実施例1と同様に作製した(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の偏光顕微鏡像を図7に示す。また、参考例1として、高圧合成で得られた(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド(TISNCM社製)の偏光顕微鏡像を図8に示す。また、参考例2として、(100)バルク結晶から切り出した、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の偏光顕微鏡像を図9に示す。図7~9に示されるように、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の製法が異なることで、それぞれ特徴的なパターンが見られた。実施例7の単結晶ダイヤモンド膜(自立膜)には、十字状の偏向パターンが見られる点で、参考例1,2の従来手法で作製された単結晶ダイヤモンド膜と異なっていた。このような偏光パターンの違いから、単結晶ダイヤモンド膜の製法の相違を判断することが可能である。
((111)自立膜成膜条件)
基板:(111)単結晶ダイヤモンド
全圧:140Torr(1.9×104Pa)
マイクロ波出力:5kW
キャリアガス:水素
原料ガス:メタン
メタン/水素ガス比:0.6%
窒素/水素ガス比:10ppm
基板温度:1150℃
(111)単結晶ダイヤモンドに工程1-2の方法で、炭素イオンを注入、上記条件で成膜後、分離する工程3により自立膜とした。
(100)バルク結晶から切り出した、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の作製方法
((100)バルク成膜条件)
基板:(100)単結晶ダイヤモンド
全圧:140Torr(1.9×104Pa)
マイクロ波出力:5kW
キャリアガス:水素
原料ガス:メタン
メタン/水素ガス比:7.5%
窒素/水素ガス比:30ppm
基板温度:1100℃
上記の成長条件で3mm厚の単結晶を成長した後、レーザーカット、研磨により(111)を主面とする単結晶を作製した。
さらに、実施例7及び参考例1-2で得られた単結晶ダイヤモンド膜は、水素/酸素混合プラズマによる基板のエッチングにより分類することが可能である。下記に示す条件で、単結晶ダイヤモンド膜をエッチングした。
(エッチング条件)
水素ガス流量:500sccm
酸素:3sccm
容器内圧力:120Torr
マイクロ波出力:3kW
基板温度:900℃
エッチング時間:60min
参考例1、参考例2、及び実施例7の単結晶ダイヤモンド膜上に形成したエッチピットの形状を、それぞれ図10,図11,及び図12に示す。いずれも三角形状のピットが観察された。参考例1(図10)の高圧合成基板では、三角形状のピットに加え、成長セクターに起因した積層欠陥がエッチングにより現れた。また、三角形状のピットは三回対称の形状、(112)方向につぶれた形状の2種類が観察された。参考例2(図11)及び実施例7(図12)の単結晶ダイヤモンド膜では、三角形状のピットが観察され、いずれも(112)方向に尾を引くような形状が観察された。
<実施例8>
以下の手順により、単結晶同士の接合境界を有する、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を作製した。初めに実施例1,4と同様の方法で、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の自立膜を作製した。試料全域の微分干渉顕微鏡像を図13に示す。成長条件は下記の通りである。
(成膜条件)
基板:(111)単結晶ダイヤモンド
全圧:140Torr(1.9×104Pa)
マイクロ波出力:5kW
キャリアガス:水素
原料ガス:メタン
メタン/水素ガス比:0.6%
窒素/水素ガス比:10ppm
基板温度:1150℃
次に図14に示すように、得られた試料をレーザー切断し、試料a及び試料bの2つに分割した。分割した試料の切断箇所を合わせるように配置し、自立膜と同じ成膜条件にて20時間成膜を行った。図15は、試料a及び試料bの切断箇所を合わせて成膜した後の試料の微分干渉顕微鏡像である。また、図16(a)は、当該試料の接合部のレーザー顕微鏡像であり、図16(b)はそのプロファイルである。試料a及び試料bは連続した領域となっており、自立膜の膜厚に相当する窪みは見られなかった。以上の結果から、(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜の自立膜同士は、製膜により接合できることを確認した。

Claims (8)

  1. (111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜であって、
    前記単結晶ダイヤモンド膜は、窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3である、単結晶ダイヤモンド膜。
  2. 前記単結晶ダイヤモンド膜は、厚みが30μm以上である、請求項1に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
  3. 前記単結晶ダイヤモンド膜は、一方面の面積が1mm2以上である、請求項1又は2に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
  4. 前記単結晶ダイヤモンド膜は、自立膜である、請求項1又は2に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
  5. 前記単結晶ダイヤモンド膜の自立膜は、厚み方向とは垂直方向に接合境界を有する、請求項1又は2に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
  6. 前記[110]方向に欠陥が伝搬している、請求項1又は2に記載の単結晶ダイヤモンド膜。
  7. (111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程1と、
    気相合成法を用いて、ダイヤモンド膜中の窒素の含有率が1×1017~2×1018atms/cm3の(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を成長させる工程2と、
    を備えており、
    前記工程2において、前記気相合成法に用いる反応ガス中の窒素濃度が、1×10-6~5×10-5atoms/cm3の範囲であり、かつ、前記気相合成法に用いる反応ガス中のメタンガス/水素ガス比(モル比)が、0.01未満である、単結晶ダイヤモンド膜の製造方法。
  8. 前記工程2で得られた(111)面を主面とする単結晶ダイヤモンド膜を、前記単結晶ダイヤモンド基板から分離する工程3をさらに備える、請求項7に記載の単結晶ダイヤモンド膜の製造方法。
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