JP2013017432A - コンブ抽出物含有組成物の製造方法、該方法で製造されたコンブ抽出物含有組成物、および該コンブ抽出物含有組成物が配合された食品 - Google Patents

コンブ抽出物含有組成物の製造方法、該方法で製造されたコンブ抽出物含有組成物、および該コンブ抽出物含有組成物が配合された食品 Download PDF

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Abstract

【課題】 食品原料として配合された場合においても、食品にコンブ風味や好ましい外観を長期間安定的に付与することができるコンブ抽出物含有組成物を開発すること。
【解決手段】 コンブ抽出物に、有機酸および/または食塩を、混合後の有機酸濃度および食塩濃度がそれぞれ2〜17.5質量%および2.5〜22質量%となるように、添加混合して混合液を調製する添加混合工程と、
当該添加混合工程で得られた混合液を濾過して濾過液を調製する濾過工程と、
を有するコンブ抽出物含有組成物の製造方法、
当該製造方法で製造されたコンブ抽出物含有組成物、並びに
当該コンブ抽出物含有組成物が配合された調味料を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コンブ抽出物を含有する組成物の製造方法、および前記製造方法によって製造されるコンブ抽出物含有組成物に関し、さらには前記組成物が配合された食品、特に調味料に関する。
コンブだしやコンブエキスなどのコンブ抽出物は、グルタミン酸などの旨み成分やマンニトールなどのコンブに特徴的な成分によって、コンブ特有の風味を有しており、だしとして、またすし酢、ぽん酢などの調味酢など各種食品の原料として、欠かすことのできない食品原料である。
コンブ抽出物は、一般に、冷水あるいは熱水による抽出、いわゆるだし取りによって製造されたり、さらに濃縮されてコンブエキスとして製造されている。また、エキス分の抽出効率を高めるために、エタノールによるエキス分の抽出も広く行われている。さらに、食塩溶液や酢酸溶液を用いたエキス分の抽出方法も提案されている。
しかしながら、前記方法で抽出された抽出物は、長期安定性に乏しく、長期保存すると、コンブ風味が低下したり、香味変化が生じたりするなど、品質的に劣化することが知られている。このため、抽出物の安定性を向上させるために、種々の方法が提案されている。
例えば、コンブ抽出物の沈澱の生成や粘度低下等を抑制するために、糖アルコールを添加する方法(特許文献1)や、特定の還元澱粉加水分解物を添加する方法(特許文献2)が提案されている。
また、魚介類の熱水抽出液に水溶性カルシウム塩を添加して、生じた凝固物を分離除去する、清澄なだしの製造方法が知られている(特許文献3)。
さらに、有機酸含有水で抽出されたコンブ抽出物にエタノールを添加した後、清澄化工程を経ることにより、清澄なコンブ抽出物を製造する方法が知られている(特許文献4)。
しかしながら、前記の方法は、いずれも抽出物としての品質安定性に関するもので、食品に風味原料としてこれらの抽出物を配合した場合、配合された食品中での安定性については十分なものではなかった。
一方、コンブ抽出物の製造方法として、抽出液に有機酸や食塩の含有水を使用する方法が知られている。
酢酸を使用する方法については、コンブ抽出液の酢酸濃度が85%〜95%および65%〜30%となるように抽出されたコンブ抽出液を混合し、その後pHを4.0〜8.0に調整することによって、香りがやや強く、苦味が弱い抽出物が得られることが知られている(特許文献5)。
食塩水で抽出する方法については、食塩濃度0.01〜10重量%の食塩水を用いて抽出する方法(特許文献6)や、だしを引く特定の時期に食塩を添加する方法(特許文献7)が知られている。
特に、特許文献7には、抽出する際に用いる水に食塩を投入するタイミングが重要であり、コンブだし抽出を行い、だし原料を分離した後に、食塩を投入した場合には、かえって香味の点で劣ることが開示されている。
有機酸の場合では、例えば特許文献8において、コンブ抽出物に有機酸を0.1〜10質量%添加する方法が開示されている。本文献には、有機酸としてアスコルビン酸を用いることによって、コンブ抽出物の不快臭の発生を抑制できることも記載されている。
しかしながら、従来は、コンブ抽出物を配合した食品における長期保存後の品質劣化を抑制する方法は知られていなかった。
すなわち、前記した方法は、いずれもコンブ抽出物自体として好ましい品質を有することを目的にしているため、抽出物自体の安定性は向上するものの、前記抽出物が配合された食品については、長期間保存した場合のコンブ風味の安定性は依然として低く、不十分なものであり、改善が望まれていた。
食品の中でも調味料、特にすし酢やぽん酢などの調味酢を含む酸性調味料においては、長期間の保存がなされた場合、依然として、品質の不安定さが大きな問題となっていた。
特開昭62−32864号公報 特開昭63−301770号公報 特開平7−31431号公報 特開2009−225777号公報 特許3136519号公報 特開2003−61609号公報 特開2005−204524号公報 特開2009−297014号公報
従来から知られている方法で抽出されたコンブ抽出物を各種調味料に配合した場合、数日程度の短期間では特に香味や外観の変化は起こらないが、2週間〜1ヶ月以上保存すると沈澱(オリ)が発生し、外観や香味が低下してしまうため、食品に配合した後も安定してコンブ風味を付与できるコンブ抽出物が求められてきた。
本発明は、食品原料として配合された場合においても、食品に好ましい外観やコンブ風味を安定的に付与することができるコンブ抽出物含有組成物を開発することを目的とする。
従来、コンブ抽出物に関しては、抽出物自体好ましい風味を有することに主眼が置かれていたが、他の食品素材と混合された食品の状態で安定的に好ましい風味を有することに着目した検討はなされてこなかった。
本発明者らは、前記課題を解決するためには、コンブ抽出物の品質の安定性を指標とする方法での改善は困難であり、実際に食品に配合し、配合された食品を用いて、抽出されたコンブ成分が安定的に風味付与できる条件を探索することが必要であると考え、従来とは異なる評価方法、すなわち、コンブ抽出物が配合された食品を用い、長期間にわたる品質変化を指標にした評価方法を採用することにした。
また、抽出方法を検討することによって、食品に添加配合した場合の安定性を向上させることも考えたが、抽出方法を変更すると、抽出物の呈味等が変化してしまい、長期保存性は向上するものの、添加配合された食品のコンブらしい風味が低下する懸念があった。
そこで、本発明者らは、抽出方法の検討ではなく、抽出されたコンブ抽出物を処理することによって、食品に添加配合しても安定してコンブ風味を付与できるようにする方法を検討することにした。
各種の処理方法について、コンブ抽出物が配合された食品中におけるコンブ風味の安定性を評価するという新たな評価方法を用いて鋭意検討した結果、意外にも、従来は前記特許文献7に示されたようにコンブ成分の抽出効率が低下するために採用されなかったような特定の条件下(すなわち、だし原料を分離した後に食塩を添加すること)で、コンブ抽出物を処理することにより製造された組成物が、食品にコンブ風味を安定的に付与できることを見出した。
そして、本発明のコンブ抽出物含有組成物は、食品に添加すると長期間安定的にコンブ風味を付与することができ、食品の中でも調味料、特に酸性調味料に好適に使用され、配合された調味料に長期間安定的にコンブ風味を付与できることを見出した。
本発明は、前記の知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、以下に関する。
[請求項1]
コンブ抽出物に、有機酸および/または食塩を、混合後の有機酸濃度および食塩濃度がそれぞれ2〜17.5質量%および2.5〜22質量%となるように、添加混合して混合液を調製する添加混合工程と、
当該添加混合工程で得られた混合液を濾過して濾過液を調製する濾過工程と、
を有するコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
[請求項2]
前記の混合液または濾過液を75〜135℃で5秒〜115分間加熱する加熱工程をさらに有する、請求項1に記載のコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
[請求項3]
有機酸が、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、および乳酸からなる群より選ばれた1種以上である、請求項1または2に記載のコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
[請求項4]
コンブ抽出物含有組成物がマンニトールを0.4〜4質量%含有する、請求項1〜3に記載のコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
[請求項5]
請求項1〜4に記載の製造方法で製造されたコンブ抽出物含有組成物。
[請求項6]
請求項5に記載のコンブ抽出物含有組成物が配合された調味料。
[請求項7]
調味料が酸性調味料である、請求項6に記載の調味料。
[請求項8]
酸性調味料が、調味酢、漬物調味液、またはドレッシングである、請求項7に記載の調味料。
[請求項9]
請求項5に記載のコンブ抽出物含有組成物を食品に添加することを特徴とする、食品へのコンブ風味付与方法。
本発明は、食品、なかでも調味料に配合された場合に安定的にコンブ風味や好ましい外観を付与できるコンブ抽出物含有組成物の製造方法、前記製造方法で製造されたコンブ含有物組成物、および前記コンブ抽出物含有組成物が配合された食品、特に調味料、とりわけ酸性調味料を提供することを可能とする。
本発明に係るコンブ抽出物含有組成物(以下、単に「組成物」と略することがある。)の製造方法は、
コンブ抽出物に有機酸および/または食塩を添加混合する添加混合工程と、
当該添加混合工程で得られた混合液を濾過する濾過工程と、
を有することを特徴とするものである。
本発明において「コンブ抽出物」は、コンブを水抽出、アルコール抽出などいかなる抽出法で抽出したものでもよく、その濃縮物、乾燥物でもよい。コンブは真昆布、利尻昆布、ラウス昆布、日高昆布、三石昆布などいかなるコンブでもよい。
ここで、コンブの水抽出物には、コンブ乾燥物を冷水あるいは熱水を用いて抽出した、いわゆるコンブだしや、食塩、各種有機酸などを含む水溶液で抽出したものも含まれる。
なかでも、マンニトールなどのコンブに特徴的な成分が含有されており、コンブ風味が良好なことから、本発明においてはコンブの冷水または熱水抽出物(コンブだし)が好適に使用される。
本発明におけるコンブの冷水または熱水抽出物は、通常、冷水または熱水に対して、1〜20%(質量ベース)のコンブ乾燥物を浸漬して抽出することによって調製でき、必要に応じてさらに濃縮を行ってもよい。このようにして得られる抽出物は、濃縮操作を行わない場合、通常、マンニトールを0.15〜3質量%含有する。
本発明のコンブ抽出物は、液状であることが好ましく、抽出物が賦形剤等を使用して粉末固形状態となっている場合は、水に溶解して用いる。
本発明のコンブ抽出物含有組成物の製造方法においては、まず、前記コンブ抽出物を添加混合工程に供する。
本発明における「添加混合工程」とは、コンブ抽出物に有機酸および/または食塩を添加し、コンブ抽出物と有機酸および/または食塩とを均一に溶解混合することにより、混合液を得る工程を指す。
添加混合工程におけるコンブ抽出物の使用量は、最終的な組成物に対して通常10〜70質量%であり、25質量%以上とすることが好ましい。
コンブ抽出物の量が25質量%より少ないと、製造される組成物のコンブ風味が弱くなり、調味料を含む各種食品に添加配合しても、十分なコンブ風味を食品に付与することができない。
添加混合工程において用いる「有機酸」としては、特に限定はないが、風味から酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、またはそれらの塩、あるいはそれらの混合物が好ましく、食品に配合した場合の香味に与える影響の小ささ等から、酢酸が特に好ましい。
有機酸としては、一般に純度の高い製品が使用されるが、本発明においては、組成物のコンブ風味等に影響を与えなければ、有機酸以外の成分を含有するものも使用できる。
本発明において「酢酸」としては、酢酸以外にも、酢酸を主成分とする食酢も使用できる。「食酢」としては、特に限定はないが、コンブ風味への影響が少ないことから、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造された酒精酢が特に好ましい。
有機酸の添加量は、最終的な組成物中の有機酸濃度が2〜17.5質量%となるように調整し、好ましくは3〜17.5質量%、さらに好ましくは4〜15質量%である。
コンブ抽出物として、コンブから有機酸を用いて抽出された抽出物を使用する場合には、抽出物中に既に有機酸が含有されているので、あらかじめ抽出物の有機酸濃度を測定し、組成物中の有機酸濃度が2〜17.5質量%の範囲内に入るように、有機酸添加量を調整する。
コンブ抽出物の有機酸濃度が17.5質量%を越える場合には、抽出物を希釈して使用する。
また、コンブ抽出物の有機酸濃度が2〜17.5質量%の範囲内にある場合には、有機酸を添加する必要はないが、4質量%より高い方が、食品に配合した場合の安定性が高まるので好ましい。そのため、有機酸濃度が4質量%以下の場合には、有機酸を添加して最終的な組成物の有機酸濃度が4質量%より高くなるように調整することが好ましい。
コンブ抽出物の有機酸濃度が2〜17.5質量%の範囲内であっても、抽出物のpHが3以上であると、香味変化や外観変化が起きやすいので、pHが3以上の場合には、有機酸を添加して最終的な組成物のpHが1.4〜2.9、好ましくは1.8〜2.7になるように調整することが好ましい。
コンブ抽出物含有組成物中の有機酸濃度が2質量%より低いと、組成物が添加配合された食品のコンブ風味が弱くなったり、また沈澱(オリ)が発生しやすくなり、外観も損なわれてしまう。
また、組成物中の有機酸濃度が17.5質量%を越えると、コンブ風味の安定性は高まるが、苦味が感じられたり、酸味が強くなって相対的にコンブ風味が弱くなったりするため、また酸味が強く感じられるようになると各種食品に配合することが困難になるため、好ましくない。
本発明における「食塩」とは、塩化ナトリウムを指すが、塩化ナトリウム以外の成分を含有するものも使用でき、精製塩や、苦り成分を含有する食塩も、好適に用いられる。
添加混合工程における食塩の添加量は、最終的な組成物中の食塩濃度が2.5〜22質量%となるように調整し、好ましくは7.5〜21であり、さらに好ましくは、12.5〜20質量%である。
コンブ抽出物の食塩濃度が22質量%を越える場合には、抽出物を希釈して使用する。
また、コンブ抽出物の食塩濃度が2.5〜22質量%の範囲内にある場合には、食塩を添加する必要はないが、12.5質量%より高い方が、食品に配合した場合の安定性が高まるので好ましい。そのため、食塩濃度が12.5質量%以下の場合には、食塩を添加して最終的な組成物の食塩濃度が12.5質量%より高くなるように調整することが好ましい。
コンブ抽出物含有組成物中の食塩濃度が2.5質量%より低いと、組成物が添加配合された食品の外観やコンブ風味は不安定となる。
また、組成物中の食塩濃度が22質量%を越えると、組成物中に食塩の結晶が析出してしまう。
本発明の添加混合工程においては、前記コンブ抽出物に、前記した有機酸および/または食塩を添加した後、混合・溶解させ、均一な混合液を得る。
ここにおいて、混合溶解方法としては特に制限はなく、撹拌などの一般的な方法が採用できる。
本発明の製造方法においては、前記した添加混合工程の後工程として、濾過工程を実施する。
本発明における「濾過工程」とは、添加混合工程で得られたコンブ抽出物、有機酸および/または食塩の混合物を濾過して、濾過液を得る工程を指す。
ここにおいて、濾過方法としては、溶液の清澄化が行える方法であれば、特に限定はなく、自然沈降によるデカンテーション、濾過助剤を使用する濾過、フィルターやセラミックなどを用いる加圧濾過あるいは減圧濾過、限外濾過膜などを用いる膜濾過、遠心分離濾過など、一般的な固液分離方法が採用できる。なかでも、簡便性や経済性から、フィルターやセラミックなどを用いる濾過方法や、珪藻土、パーライト、セルロース、二酸化ケイ素などの濾過助剤を使用する濾過方法が特に好ましく用いられる。
本発明の製造方法においては、前記した添加混合工程および濾過工程に加えて、さらに加熱工程を有することが好ましい。加熱工程を有することにより、より長期間に渡って組成物の品質が安定するためである。
本発明における「加熱工程」とは、前記添加混合工程により得られた混合液または前記濾過工程により得られた濾過液を、加熱処理する工程を指す。
本発明において加熱工程は、濾過工程の前工程または後工程として採用される。
すなわち、添加混合工程で得られたコンブ抽出物、有機酸および/または食塩の混合物を加熱工程に供してもよいし、添加混合工程に次いで濾過工程を経て得られた濾過液を加熱工程に供してもよい。
コンブ抽出物含有組成物が添加された食品がより安定化されることから、添加混合工程、加熱工程、次いで濾過工程の順序とした方が好ましい。
加熱工程における加熱温度は、75〜135℃であり、好ましくは80〜125℃、さらに好ましくは85〜93℃である。
加熱温度が75℃より低いと、製造された組成物が添加配合された食品のコンブ風味は不安定となる。
また、加熱温度が135℃を超えると、加熱時間を短くしても、組成物の香味が劣化してしまい、また、着色してしまうため、各種食品に添加配合することが困難になる。
加熱工程における加熱時間は、前記温度範囲内において5秒〜115分間であり、好ましくは10秒〜90分間であり、さらに好ましくは10秒〜80分間である。
加熱時間が5秒より短いと、製造された組成物が添加配合された食品のコンブ風味が不安定となる。
また、加熱時間が115分間よりも長いと、加熱温度を低くしても、組成物の香味が劣化してしまい、また、着色してしまうため、各種食品に添加配合することが困難になる。
加熱工程における加熱手段は、バッチ式の加熱装置やプレートヒーターなど、通常用いられる手段を採用することができ、特に限定されないが、酸濃度および食塩濃度が高いことから、ステンレス製の容器を用いる方法が好ましい。
前記した方法、すなわち、添加混合工程と、濾過工程と、好ましくはさらに加熱工程とを有する製造方法によって、本発明のコンブ抽出物含有組成物が製造される。
本発明のコンブ抽出物含有組成物は、コンブ抽出物、有機酸、および食塩を含有する。組成物中の有機酸濃度は2〜17.5質量%であり、食塩濃度は2.5〜22質量%である。
また、コンブ抽出物として、コンブを冷水または熱水を用いて抽出した抽出物(コンブだし)を用いた場合には、組成物中にコンブだしに特徴的な成分であるマンニトールを、通常0.4〜4質量%含有する。
本発明のコンブ抽出物含有組成物のpHは、通常、3より低く、1.4〜2.9であり、好ましくは1.8〜2.8である。
本発明のコンブ抽出物含有組成物は、外観上濁りはなく、透過率(T%)は、90%以上であり、好ましくは93〜98%の範囲であり、さらに好ましくは94〜97%である。
なお、本発明において「透過率(T%)」とは、分光光度計により、測定波長660nm、1cmセルを用いて測定した透過率(T%)の値を指す。
本発明のコンブ抽出物含有組成物は、通常、液状の形状であるが、賦形剤などを使用して乾燥させて粉末化したり、増粘剤やゲル化剤などを添加してペースト状、ゲル状などの形状として利用することも可能である。
しかし、粉末化やペースト化、ゲル化の工程中や、保管中に、コンブ風味が劣化することから、液状の形状が好ましい。
本発明のコンブ抽出物含有組成物を各種食品に添加することにより、その食品にコンブ風味を付与することができる。たとえば、煮物を調理する場合に、本発明のコンブ抽出物含有組成物をだしとして配合することにより、煮物にコンブ風味を付与できる。
本発明のコンブ抽出物含有組成物を添加配合する食品には特に制限はなく、煮物、鍋物、炒め物、麺類、まぜご飯、吸い物、茶飲料など、コンブ風味を必要とする食品であればいかなる食品であってもよい。
本発明のコンブ抽出物含有組成物は、そのままでだしや旨味調味料として使用することもできるが、食品原料として各種食品の製造に使用することもできる。
本発明のコンブ抽出物含有組成物を使用して製造される食品には特に制限はなく、前記のように煮物や鍋物などの原料としても使用できるが、特に調味料の原料として好適に使用することができる。
本発明における「調味料」としては、コンブ風味を必要とする調味料であれば特に限定はなく、たれや煮物用調味液、鍋物用調味液、だし醤油など、各種調味料に使用できるが、本発明の組成物は有機酸を含有することから、有機酸が配合されている酸性調味料には特に好ましく用いられる。
本発明における「酸性調味料」とは、酢酸、クエン酸、乳酸などの有機酸を含有する調味料を指し、具体的には、すし酢、ぽん酢などの調味酢、漬け物用調味液、ドレッシングなどが例示される。
本発明のコンブ抽出物含有組成物の、食品および調味料への配合量は、通常1〜50質量%であり、好ましくは2〜20質量%である。
食品および調味料に対する本発明の組成物の添加配合方法は、混合撹拌等の一般的な方法によればよく、特に限定されない。
本発明のコンブ抽出物含有組成物が配合された食品および調味料は、長期の保存性に優れる。
従来のコンブ抽出物を含む食品および調味料は、2週間〜1ヶ月以上保存すると沈澱の発生によって外観が低下したり、コンブ風味が低下してしまうことが問題であった。
しかし、本発明のコンブ抽出物含有組成物を使用した場合には、長期にわたって、コンブらしい風味を食品に付与することが可能であり、コンブ風味の立ちがよく、沈澱(オリ)も発生しないために外観も変化しないため、長期間にわたって、食品および調味料の品質を維持することが可能である。
以下に、実施例等を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等になんら限定されるものでない。
[実施例1]コンブ抽出物含有組成物およびすし酢の調製方法
(1)コンブ抽出物の調製
コンブ(道南産 真昆布乾燥品)60gを95℃の熱水1300mLに60分間浸漬して、コンブ抽出物660mLを得た。
このコンブ抽出物の有機酸濃度、食塩濃度、マンニトール濃度を以下の方法で分析した結果、有機酸濃度0.06%(W/V)、食塩濃度0.9%(W/V)、マンニトール濃度1.5%(W/V)であった。
なお、有機酸、食塩、およびマンニトールの分析は、以下の装置及び条件を用いて行った。
a.有機酸濃度
高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC−10ADVP)
測定条件:移動相(1)4mMp−トルエンスルホン酸水溶液、流速0.9mL/min
移動相(2)4mMp−トルエンスルホン酸、80μMEDTAを含む16mMBis−Tris水溶液、流速0.9mL/min
カラム:Shodex KC810P+KC−811×2(昭和電工社製)
カラム温度:50℃
検出:電気伝導度検出器
b.食塩濃度
塩分計(Electronics社製、機種SAT−210)
c.マンニトール濃度
高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC−10Ai)
測定条件:移動相0.1N NaOH、流速1.0mL/min
カラム:PCI−510(TOAディーケーケー社製)、
検出:電気化学検出器ICA−5212(TOAディーケーケー社製)
(2)コンブ抽出物含有組成物の調製
前記(1)で調製したコンブ抽出物400mLに、食酢(酢酸酸度15%(V/V))335mL、食塩150g、および水110mLを添加し、撹拌して食塩を溶解し、均一な溶液を得た。得られた溶液を濾紙濾過(東洋濾紙株式会社製No.2使用)して、濾過液を得た(試験区1のコンブ抽出物含有組成物)。
前記濾過液(試験区1のコンブ抽出物含有組成物)の一部を取り、90℃60分間加熱して、コンブ抽出物含有組成物を得た(試験区2のコンブ抽出物含有組成物)。
一方、前記(1)と同じ方法で調製したコンブ抽出物400mLに、食酢(酢酸酸度15%(V/V))335mL、食塩150g、および水110mLを添加し、撹拌して食塩を溶解し、均一な溶液を得た。得られた溶液を90℃で60分間加熱処理して加熱処理物を得て、この加熱処理物を濾紙濾過(東洋濾紙株式会社製No.2使用)に供して、濾過液を得た(試験区3のコンブ抽出物含有組成物)。
前記で得られた各コンブ抽出物含有組成物(試験区1〜3)の酢酸濃度は5質量%、食塩濃度は15質量%、マンニトール濃度は0.55質量%、pHは2.55であった。
また、前記(1)と同じ方法で調製したコンブ抽出物に、試験区1と同様に食酢、食塩および水を加えて撹拌し、均一な溶液を調製した(試験区4のコンブ抽出物含有組成物(比較例))。
さらに、前記溶液(試験区4のコンブ抽出物含有組成物)を、試験区2と同じ加熱条件で加熱してコンブ抽出物含有組成物を調製した(試験区5のコンブ抽出物含有組成物(比較例))。
前記(1)と同じ方法で調製したコンブ抽出物に、試験区1と同様に濾過工程を行ってコンブ抽出物含有組成物を調製した(試験区6のコンブ抽出物含有組成物(比較例))。
前記(1)と同じ方法で調製したコンブ抽出物に、試験区2と同じ加熱条件で加熱してコンブ抽出物含有組成物を調製した(試験区7のコンブ抽出物含有組成物(比較例))。
対照区として、前記(1)と同じ方法で調製したコンブ抽出物400mLに、水600mLを添加し、撹拌混合した液を、濾過工程または加熱工程に供さないで、そのまま用いた(対照区のコンブ抽出物含有組成物)。
前記で得られた各コンブ抽出物含有組成物(以下、「組成物」と略すこともある。)の透過率(T%)は、分光光度計(株式会社日立製作所製、機種 U−2000)を用いて測定した(測定波長660nm、1cmセル)。測定結果は下記の表1に示す。
(3)コンブ抽出物含有組成物の評価
前記各コンブ抽出物含有組成物の評価は、各組成物を用いて作製したすし酢を用いて行った。
すし酢は、市販食酢(株式会社ミツカン製、「穀物酢」、酢酸酸度4.2%)65mL、砂糖23g、食塩12gの割合で混合して混合液を作製し、次いでこの混合液95gに対して、前記の各コンブ抽出物含有組成物5gを添加して調製した。
試験区1〜5および対照区の各すし酢のマンニトール濃度は、いずれも0.0275質量%であった。
各すし酢の評価は、長期保存した場合の官能評価および沈澱(オリ)の発生によって行った。
官能評価は、各すし酢を30℃で30日間保存した後、熟練した官能検査員5名により、以下のような5段階で「コンブ風味」を評価することにより行った。
評価スコア 1:対照区より、非常に悪い
2:対照区より、悪い
3:対照区と同じ
4:対照区より、良い
5:対照区より、非常によい
また、すし酢の沈澱(オリ)の発生は、各すし酢を5℃で保存し、経時的に観察して、沈澱(オリ)が発生するまでの日数と発生した沈殿(オリ)の量を比較し、以下の5段階で評価した。
評価 ++:保存開始後2週間未満で多量の沈澱(オリ)発生。
+ :保存開始後2週間〜1ヶ月未満で多量の沈澱(オリ)発生。
± :保存開始後2週間〜1ヶ月未満で少量の沈澱(オリ)発生。
(±):保存開始後2週間〜1ヶ月未満で微量の沈澱(オリ)発生。
− :保存開始後1ヶ月継続後も沈澱(オリ)は発生しなかった。
結果を表1に示す。
Figure 2013017432
(4)結果と考察
表1から分かるように、添加混合工程のみを経て製造された組成物(試験区4)は、組成物段階での透過率(T%)が対照区に比べて顕著に向上したが、すし酢に配合された場合には、コンブ風味の維持効果が若干向上するものの、沈澱(オリ)が発生し、外観的に対照区と同様であった。
一方、添加混合工程とその後の濾過工程という2つの工程を経て製造された組成物(試験区1)は、組成物段階での透過率(T%)が試験区4とほとんど同じ値であったにもかかわらず、すし酢に配合された場合には、コンブ風味や外観の維持に顕著な効果を示した。
また、添加混合工程に加熱工程を組み合わせた方法で製造された組成物(試験区5)は、組成物段階での透過率(T%)を対照区に比べて向上させたが、添加混合工程単独の試験区4と同様に、すし酢に配合された場合には効果がなかった。
一方、添加混合工程と濾過工程からなる製造方法に、加熱工程を加えた製造方法で製造された組成物(試験区2,3)は、さらに高い効果を示した。
また、加熱工程は、濾過工程の前工程あるいは後工程のいずれにおいても高い効果を示したが、濾過工程の前工程とした場合(試験区3)の方が、コンブ風味の維持効果が高かった。
なお、濾過工程単独で製造された組成物(試験区6)は、組成物段階での透過率(T%)は対照区に比べて顕著に向上したが、すし酢に配合された場合には、コンブ風味の維持効果が若干向上するものの、沈澱(オリ)発生については、対照区と同様の低い評価であった。
また加熱工程単独で製造された組成物(試験区7)は、組成物段階での透過率(T%)は対照区に比べて大きくは向上せず、すし酢に配合しても、コンブ風味維持や沈澱(オリ)発生抑制に効果がなかった。
[試験例1]酢酸濃度および食塩濃度の影響
前記実施例1における試験区2のコンブ抽出物含有組成物の製造方法において、添加混合工程における酢酸および食塩の添加量を、組成物中の最終濃度が表2−1〜4に記載の各濃度となるように設定し、有機酸および食塩の濃度による影響を検討した。
尚、酢酸濃度1〜5%の組成物の調製においては、食酢(酢酸酸度15%(V/V))を使用し、酢酸濃度7〜20%の組成物の調製においては、食品添加物用酢酸(酢酸純度99%)を使用した。
各組成物について、前記実施例1と同様に透過率(T%)およびpHを測定した。
また、各組成物の評価は、前記実施例1と同様に、すし酢を調製して、長期保存後の「コンブ風味」の官能評価および沈澱(オリ)発生の調査を行った。
なお、官能評価は、無添加区(酢酸濃度 0質量%、食塩濃度 0質量%)を対照区として行った。
結果を表2−1〜4に示す。
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
*;苦味が感じられた。
Figure 2013017432
表2−1〜4から分かるように、食塩濃度を5質量%以上、酢酸濃度を3〜15質量%とした場合に、すし酢とした時のコンブ風味および沈澱(オリ)発生の点で良好であった。
酢酸濃度が20質量%の場合でもコンブ風味の安定性は高かったが、苦味が感じられるようになり、また組成物の酸濃度が高くなると相対的にコンブ風味が弱くなり、酸味が強く感じられるようになるので各種食品に配合することが困難になることを考慮すると、3〜15質量%が良好であった。
酢酸濃度が3質量%の場合、食塩濃度は15質量%以上とした方が、すし酢とした時のコンブ風味および沈澱(オリ)発生の点で、より良好であった。
また、酢酸濃度が5質量%および7質量%の場合には、食塩濃度は10質量%以上とした方が、すし酢とした時のコンブ風味および沈澱(オリ)発生の点で、より良好な結果であった。
一方、食塩濃度は、すし酢とした時のコンブ風味および沈澱(オリ)発生の点では5〜23質量%における評価が高かったが、23質量%の場合には、組成物の保存中に食塩の結晶が容易に析出してくるため使いにくいことを考慮すると、5〜20質量%が良好であった。
また、食塩濃度が5質量%の場合、酢酸濃度は10質量%以上とした方が、すし酢とした時のコンブ風味および沈澱(オリ)発生の点で、より良好であった。
食塩濃度が10質量%の場合には、酢酸濃度は5質量%以上とした方が、すし酢とした時のコンブ風味および沈澱(オリ)発生の点で、より良好であった。
前記の良好な範囲の組成物の透過率(T%)は、92.6〜96.6%であった。
また、前記の良好な範囲の組成物のpHは、1.98〜2.73であった。
[試験例2]加熱工程における加熱温度および加熱時間の影響
前記実施例1における試験区2のコンブ抽出物含有組成物の製造方法において、加熱工程における加熱温度および加熱時間を表3−1〜3および表4−1〜3に記載の各値に設定し、加熱条件の影響を検討した。
各組成物について、前記実施例1と同様に透過率(T%)およびpHを測定した。
また、各組成物の評価は、前記実施例1と同様に、すし酢を調製して、長期保存後の「コンブ風味」の官能評価および沈澱(オリ)発生の調査を行った。
なお、官能評価は、非加熱区(加熱時間0分)を対照区として行った。
結果を表3−1〜3、および表4−1〜3に示す。
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
表3−1〜表3−4は、70℃〜100℃の間の加熱温度での加熱時間の影響を調べた結果を示すものである。
すし酢とした場合にコンブ風味維持および沈澱(オリ)が発生しない点で良好な加熱時間は、80℃、90℃、および100℃の各温度において、それぞれ60〜90分、45〜75分、15〜60分であった。また、この時の組成物の透過率(T%)は、いずれもほぼ94%前後であった。
しかしながら、70℃では、90分加熱しても、沈澱(オリ)の発生は抑制できなかった。
なお、80℃〜100℃の各温度にて、前記範囲よりも加熱時間を長くすると、組成物自体が褐変しはじめ、すし酢とした場合におけるコンブ風味は低下した。
表4−1〜表4−3は、110℃〜140℃の間の加熱温度での加熱時間の影響を調べた結果を示すものである。
すし酢とした場合にコンブ風味維持および沈澱(オリ)が発生しない点で良好な加熱時間は、110℃、120℃、130℃各温度において、それぞれ60〜300秒、5〜300秒、5〜60秒であった。また、この時の組成物の透過率(T%)は、いずれも94%前後であった。
なお、前記各温度にて、前記範囲よりも加熱時間を長くすると、組成物自体が褐変しはじめ、すし酢とした場合におけるコンブ風味は低下した。
[試験例3]添加混合工程で用いる有機酸の種類の検討
前記実施例1における試験区3のコンブ抽出物含有組成物の製造方法において、添加混合工程で添加する酢酸の代わりに、有機酸としてクエン酸、リンゴ酸、または乳酸を、組成物あたり5質量%添加したこと以外は、実施例1と同様にコンブ抽出物含有組成物を製造した。
各組成物について、前記実施例1と同様に透過率(T%)およびpHを測定した。
また、各組成物の評価は、前記実施例1と同様に、すし酢を調製して、長期保存後の「コンブ風味」の官能評価および沈澱(オリ)発生の調査を行った。
なお、官能評価は、無添加区を対照区として行った。
結果を表5−1〜4に示す。
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
Figure 2013017432
表5−1〜4から分かるように、クエン酸、リンゴ酸、および乳酸を用いた場合でも、いずれも酢酸と同様に、すし酢とした場合のコンブ風味の維持や沈澱(オリ)発生の抑制といった効果が得られたが、コンブ風味の維持の点で特に酢酸が良好な結果を示した。
[実施例2]コンブ抽出物含有組成物が配合されたすし酢及びそれを用いた酢飯
調味酢の一つとして、前記実施例1に記載の試験区3のコンブ抽出物含有組成物を用いて、前記実施例1と同様な方法ですし酢を作製した(本発明のすし酢)。
対照区として、試験区3のコンブ抽出物含有組成物を、前記実施例1に記載の対照区のコンブ抽出物含有組成物にかえて、酸度及び食塩の最終濃度が本発明のすし酢と同一になるように調整したすし酢を作製した(対照区のすし酢)。
作製した各すし酢は、実施例1と同様に、長期保存後の「コンブ風味」および外観について、5段階で官能評価を行った。
さらに、30℃で30日間保存した各すし酢90mLを、炊飯米1000gに対して加え、酢飯を調製した。この酢飯についても、上記と同様に「コンブ風味」に関して官能評価を行った。
その結果、本発明のすし酢におけるコンブ風味は、対照区の評点を3点とした場合の評点が5点となり、対照区と比較して立ちの良いコンブの香りが感じられ、顕著に風味がよかった。
また、外観については、対照区ではやや濁りが見られたのに対し、本発明のすし酢は透明感があり、沈澱(オリ)は発生しなかった。
本発明のすし酢を用いて作製した酢飯におけるコンブ風味は、対照区の評点を3点とした場合の評点が4.4点となり、対照区と比較してコンブの香り立ちが感じられた。
[実施例3]コンブ抽出物含有組成物が配合されたぽん酢醤油
調味酢の一つとして、ぽん酢醤油について検討した。
濃口醤油60mL、市販食酢(株式会社ミツカン製、「穀物酢」、酢酸酸度4.2%)30mL、およびユズ果汁30mLの混合液に、前記実施例1に記載の試験区3のコンブ抽出物含有組成物6mLを添加して、ぽん酢醤油を作製した(本発明のぽん酢醤油)。
対照区として、試験区3のコンブ抽出物含有組成物を、前記実施例1に記載の対照区のコンブ抽出物含有組成物にかえて、酸度及び食塩の最終濃度が本発明のぽん酢醤油と同一になるように調整したぽん酢醤油を作製した(対照区のぽん酢醤油)。
このぽん酢醤油を30℃で30日間保存後、実施例1と同様に「コンブ風味」について官能評価を行った。
その結果、本発明のぽん酢醤油は、対照区の評点を3点とした場合の評点が3.8点であり、コンブ風味だけでなく、ユズ風味の立ちが良かった。
なお、ぽん酢醤油はユズ果汁由来の濁りがあるため、外観において、対照区との間で顕著な違いは見られなかった。
[実施例4]コンブ抽出物含有組成物が配合された漬物調味液及びそれを用いた漬物
市販食酢(株式会社ミツカン製、「穀物酢」、酢酸酸度4.2%)50mLと清酒50mLの混合液に、砂糖250gおよび食塩50gを添加してよく混合し、砂糖および食塩を溶解させた後に、前記実施例1に記載の試験区3のコンブ抽出物含有組成物20mLを添加して、漬物調味液を作製した(本発明の漬物調味液)。
対照区として、試験区3のコンブ抽出物含有組成物を、前記実施例1に記載の対照区のコンブ抽出物含有組成物にかえて、酸度及び食塩の最終濃度が本発明の漬物調味液と同一になるように調整した漬物調味液を作製した(対照区の漬物調味液)。
この漬物調味液を30℃で30日間保存すると、対照区では濁りが見られたのに対し、本発明の漬物調味液は透明感があり、沈殿(オリ)は発生しなかった。
また、30℃で30日間保存した各調味液に、大根、きゅうり、にんじんを合計量で1Kg漬け込んで、一晩冷蔵して漬物を製造し、実施例1と同様に「コンブ風味」についての官能評価に供した。
その結果、本発明の漬物は、対照区の評点を3点とした場合の評点が4.0点であり、コンブ風味の立ちがよく、さっぱりと感じられた。
[実施例5]コンブ抽出物含有組成物が配合されたドレッシング及びそれを用いたサラダ
市販食酢(株式会社ミツカン製、「穀物酢」、酢酸酸度4.2%)25mL、サラダ油25mL、醤油40mLをよく混合し、これに七味唐辛子0.1gおよび前記実施例1に記載の試験区3のコンブ抽出物含有組成物4mLを添加して、ドレッシングを作製した(本発明のドレッシング)。
対照区として、試験区3のコンブ抽出物含有組成物を、前記実施例1に記載の対照区のコンブ抽出物含有組成物にかえて、酸度及び食塩の最終濃度が本発明のドレッシングと同一になるように調整したドレッシングを作製した(対照区のドレッシング)。
作製したドレッシングを30℃で30日間保管した後、実施例1と同様に「コンブ風味」についての官能評価に供した。
官能評価は、細切りにしたレタスおよびキャベツからなるサラダ100gに、長期保管したドレッシング15mLを混合したものについて行った。
その結果、本発明のドレッシングを添加したサラダは、対照区の評点を3点とした場合の評点が4.0点であり、コンブ風味の立ちがよく、コンブ風味が十分に感じられ、また野菜臭さがマスキングされていた。
なお、本実施例で作製したドレッシングは醤油の色が濃いため、外観において、対照区との間で顕著な差は見られなかった。
本発明によれば、食品、特に調味料に配合することにより、長期にわたってその食品に安定的にコンブ風味および好ましい外観(沈殿発生の抑制)を付与することができるコンブ抽出物含有組成物を提供することができる。
したがって、本発明は、食品、特に調味料の製造技術における貢献が期待される。

Claims (9)

  1. コンブ抽出物に、有機酸および/または食塩を、混合後の有機酸濃度および食塩濃度がそれぞれ2〜17.5質量%および2.5〜22質量%となるように、添加混合して混合液を調製する添加混合工程と、
    当該添加混合工程で得られた混合液を濾過して濾過液を調製する濾過工程と、
    を有するコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
  2. 前記の混合液または濾過液を75〜135℃で5秒〜115分間加熱する加熱工程をさらに有する、請求項1に記載のコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
  3. 有機酸が、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、および乳酸からなる群より選ばれた1種以上である、請求項1または2に記載のコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
  4. コンブ抽出物含有組成物がマンニトールを0.4〜4質量%含有する、請求項1〜3に記載のコンブ抽出物含有組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜4に記載の製造方法で製造されたコンブ抽出物含有組成物。
  6. 請求項5に記載のコンブ抽出物含有組成物が配合された調味料。
  7. 調味料が酸性調味料である、請求項6に記載の調味料。
  8. 酸性調味料が、調味酢、漬物調味液、またはドレッシングである、請求項7に記載の調味料。
  9. 請求項5に記載のコンブ抽出物含有組成物を食品に添加することを特徴とする、食品へのコンブ風味付与方法。
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