WO2023281779A1 - 異味抑制用の酵母エキス - Google Patents

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高博 川戸
和紘 深野
真人 東口
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    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L27/00Spices; Flavouring agents or condiments; Artificial sweetening agents; Table salts; Dietetic salt substitutes; Preparation or treatment thereof
    • A23L27/10Natural spices, flavouring agents or condiments; Extracts thereof

Abstract

【要約書】 【課題】従来よりも飲食品の異味を抑制することのできるβ-グルカン含有酵母エキスおよび該酵母エキスを用いた飲食品の風味改良方法を提供することを目的とする。 【解決手段】β-グルカン含有の酵母エキス、とりわけ分子量が1000Da~6000Daのβ-グルカンを含有する酵母エキスに従来よりも飲食品の異味をマスキングできることを見出した。

Description

異味抑制用の酵母エキス
本発明は、食品の異味をマスキングする酵母エキスに関するものである。 
飲食品を口にしたとき、我々は多様な風味を感じる。飲食品の多様な風味は、基本味と呼ばれる、味覚の質を表す基本的な要素に加え、その他の種々の要素が複合的に関与している。
風味の中には好ましくない呈味として感じられるものがある。例えば、基本味の一つである苦味は、飲食品の味を作り上げる味質の一つであり、苦味がバランスよく組み込まれた飲食品は嗜好性が高いが、苦味が強すぎると不快な感覚が口腔内に広がり、嗜好性は著しく低下する。また、酸味に関しては、さわやかな酸味は好ましい味として扱われる場合があるが、舌を刺すような刺激のある酸味は異味として扱われ、敬遠される。渋味は収斂味とも言われ、タンニン系の味である。この味も緑茶の様な嗜好品の持つ淡い渋味はある程度好まれる味として認識されるが、渋柿に代表される強い渋味は嫌味として扱われ、一般に忌避される。エグ味は、いわゆる灰汁の味で、渋味と苦味を複合したような不快味である。また、青臭味は、野菜の持つ植物臭と渋味・エグ味が複合した不快味である。茎や葉由来の植物臭や、大豆臭は青臭味の一種と考えられる。また、容器由来の風味に影響する因子として、レトルト臭がある。これは直接的には味とはいえないが、味に密接に影響する臭いであり、シンプルな素材のレトルト製品でもレトルト臭が素材に移ってしまい、食品の嫌味となってしまう。また、レトルトのトマト製品や肉製品は、レトルト臭が強調され、他の加工方法で製造されたものと明らかに異なる味になってしまう。このようなことから、レトルト臭も異味の一種として扱うことができる。
 また、この他にも、いがらっぽい味、金属味、アルカリ味等のほか、これらが混在して感じられる不快感を伴う味などは好ましくない風味、すなわち、異味として扱われることがある。 
上記のような好ましくない風味を低減するため、種々の有効成分が配合された添加剤がこれまで開発されている。例えば、特許文献1には、飲食品の苦味、渋味、酸味、青臭味、エグ味を改善する呈味改善剤として、ヘスペリジン配糖体を単独で、あるいはヘスペリジン配糖体とヘスペリジンとを組み合わせて使用することが記載されている。特許文献2には、テアニンを有効成分とする風味改善組成物が記載されている。更に、特許文献3には、塩類の苦味やエグ味、魚肉の生臭み、植物性タンパクの臭いをマスキングする効果のある酵母エキス組成物が記載されている。特許文献4には、γ-アミノ酪酸によるアミノ酸及び/又は核酸の味質改善方法が記載されている。また、特許文献5には、フラボンの一種であるオリエンチンを用いて苦味を抑制する方法が示されている。特許文献6にはメチルサリシレートを有効成分として含有する苦味抑制剤の記述がある。しかしながら、これらは植物などから抽出分離する必要があるため、より簡便に苦味抑制をする方法が求められていた。特許文献7には酵母由来ペプチドを有効成分とし、5'-リボヌクレオチド類や旨みアミノ酸類を含有する事を特徴とする苦味マスキング剤についての記述がある。特許文献8には、不快な苦味を有する一般経口製品に、ペプチド含量が5重量%以上、RNA含量が5重量%以上、遊離アミノ酸含量が4重量%以下、望ましくはさらに食物繊維含量が15重量%以上である酵母エキスを添加する方法が示されている。
 しかしながら、β-グルカン含有の酵母エキス、とりわけ分子量が1000Da~6000Daのβ-グルカンを含有する酵母エキスに飲食品の異味をマスキングできることは知られていなかった。 
特開平11-318379号公報 特開平9-313129号公報 特開昭61-249362号公報 特開2004-275098号公報 特開2012-85604号公報 特開2012-95646号公報 特開2009-278917号公報 特開2015-019655号公報
本発明は、異味抑制用のβ-グルカン含有酵母エキス、および当該酵母エキスを用いた異味マスキング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、β-グルカン含有の酵母エキス、とりわけ分子量が1000Da~6000Daのβ-グルカンを含有する酵母エキスが異味をマスキングできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)β-グルカンを含有する異味抑制用の酵母エキス。
(2)前記記載のβ-グルカンが分子量1000Da~6000Daのβ-グルカンである、(1)記載の異味抑制用の酵母エキス。
(3)(1)又は(2)の酵母エキスがトルラ酵母を原料とする酵母エキス。
(4)(1)~(3)の酵母エキスの製造方法であって、製造に使用する担子菌産生酵素類が、ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus)の培養物又は培養抽出物である(1)~(3)の酵母エキスの製造方法。
(5)(1)~(3)記載のβ-グルカンを含有する異味抑制用の酵母エキスを用いた飲食品の風味改良方法。
本発明によれば、一般の食品である酵母エキスを経口製品に少量添加するだけで、その経口製品の不快な異味を抑制することができ、味にまとまりをもたせ、自然な風味を付与することができる。酵母エキスは一般の食品であり、またアレルゲン性が低いため、安全性の高い異味抑制剤を得ることができる。
本発明でいう異味とは苦味、渋味、収斂味、酸味、青臭味、エグ味、植たん味、いがらっぽい味、金属味、アルカリ味および、レトルト臭からなる群から選択される一種または二種以上のことをいう。
本発明の酵母エキスの原料として用いる酵母は、食用酵母であれば特に限定するものではなく、生酵母、公知の方法で適宜乾燥した乾燥酵母いずれでもよく、例えば、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母、清酒酵母、ビール酵母等が使用できる。より具体的には、本発明に用いる酵母として、これに限定されるものではないが、好ましくはキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)又はビール酵母、パン酵母の属するサッカロマイセス属のサッカロマイセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)を挙げることができる。本発明においては、上記酵母の1種、又は複数種の組合せであることができる。
上記食用酵母は、様々な製造業者から市販されており、本発明においてこれら市販の食用酵母を出発物質とすることもできる。また酵母を培養し、その培養菌体を出発物質とすることもできる。酵母の培養方法としては、その酵母に適した公知の手段を適宜用いてよい。
また、上記の食用酵母は、乾燥酵母であっても、水や緩衝液等の溶媒に懸濁された液状又は泥状酵母であっても、更には死滅酵母であっても生酵母であってもよく、その形態は問わない。
本発明の方法において、出発物質として、前処理を施した食用酵母を使用してもよい。
ここで、前処理とは、水、酸又はアルカリ溶液、低級アルコールなどによる洗浄、食用酵母のホモジナイズ処理などを含む。
本発明の酵母エキスは、β-グルカン含量の多い酵母を培養し、該酵母菌体を集菌、洗浄した後、熱水で酵母菌体内の酵素を失活させ、その後、核酸分解酵素や蛋白分解酵素を添加して得られる抽出物を濃縮、殺菌、乾燥することにより製造することができる。
本発明に係る方法において、上記のようにして得たβ-グルカン含有酵母エキスは、必要に応じて分離ろ過膜によりβ-グルカンを分離した画分を用いることもできる。具体的に、分画分子量60万Da以下、100Da以上、好ましくは1000Da-10000Da、より好ましくは1000Da-6000Daに分離した画分を用いるのが望ましい。
分離ろ過は、当業者に公知の手法に従って行えばよく、特別な手法を用いる必要はない。例えば、分離ろ過に用いる膜には、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、セラミック等を用いることができる。中でも、セラミックが好ましい。また、液を全量通過させるバッチ方式でも、液を循環させるクロスフロー方式でも良いが、クロスフロー方式の方が、膜が閉塞しにくく長期間続けて使用できるという点で望ましい。
本発明において、β-グルカン含有酵母エキスは、β-グルカンを固形分量当たり、3重量%以上、好ましくは3~10重量%含む点で特徴付けられる。
また、本発明のβ-グルカン含有酵母エキスは、上記特徴の他、食品での食感改良効果、コク味増強効果、並びに粉体の賦形剤としての物性改善効果をも有し得るものである。
したがって、上記β-グルカン含有酵母エキスは必要に応じて、さらなる処理を施すことによって、食品、健康食品、機能性素材等の各種用途に使用することができる。
β-グルカン含有酵母エキスに施し得る更なる処理として、これに限定されるものではないが、例えば濃縮処理(加熱濃縮、膜濃縮)、晶析処理、pH調整処理、乾燥(例えば恒温乾燥、減圧(真空)乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥)処理などを挙げることができる。
本発明の方法で食用酵母から得ることができるβ-グルカン含有酵母エキスは、他の成分を混合し、β-グルカン含有組成物として用いることもできる。当該β-グルカン含有組成物は、β-グルカンを、以下に限定されないが、約5重量%以上含むことができる。また、該組成物に含まれるβ-グルカン以外の成分は、例えば遊離アミノ酸やペプチド、塩分などである。
また、本発明の別の態様によれば、上記β-グルカン含有酵母エキスを飲食品へ添加する飲食品の風味改良方法が提供される。
本発明の風味改良とは、飲食品の異味を抑制し、味全体を調えることをいう。風味を改良させるための本発明のβ-グルカン含有酵母エキスの飲食品への添加量としては、好ましくは0.0001~1.5質量%となる量であり、より好ましくは0.001~1.5質量%となる量であり、さらに好ましくは0.01~1.5質量%となる量であり、さらに一層好ましくは0.025~1.0質量%となる量である。0.0025重量%より少ない添加量では明瞭な効果が認められず、また、1.0重量%より多く添加すると、酵母エキス自体の風味が感じられることがあり、またコスト面でも好ましくない。
本発明のβ-グルカン含有酵母エキスが添加される飲食品は、液体、固体、または半固体のいずれの形態のものであってもよく、例えば、飲料(例えば、コーヒー)、食酢、味噌、醤油、畜肉エキス、家禽エキス、魚介エキス、酵母エキス、蛋白質加水分解物等の天然調味料、スパイス類、ハーブ類等の香辛料、たれ、だし、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、トマトソース、ソース等の調味料、吸い物、コンソメスープ、卵スープ、ワカメスープ、フカヒレスープ、ポタージュ、味噌汁等のスープ類、麺類(そば、うどん、ラーメン、パスタ等)のつゆ、スープ、ソース類、おかゆ、雑炊、お茶漬け等の米調理食品、ハム、ソーセージ、チーズ等の畜産加工品、団子、そぼろ、かまぼこ、干物、塩辛、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、煎餅、クッキー等のスナック菓子類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー等の調理食品等、果汁・野菜汁飲料、豆乳、牛乳、乳加工品、炭酸飲料、スポーツドリンク、栄養補助飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、麦茶、雑穀茶などの各種茶飲料、焼酎、日本酒、ビール等のアルコール類等、ビタミン剤などのサプリメント等が挙げられる。本発明の風味改良剤が添加される飲食品が調味料である場合には、本発明の風味改良剤が添加された調味料を他の飲食品に添加してもよい。
本発明の風味改良方法は、本発明のβ-グルカン含有酵母エキスに関する上記記載に基づいて実施することができる。飲食品に使用可能な他の添加物の添加は、本発明のβ-グルカン含有酵母エキスの添加と同時であっても別々であってもよい。さらに、β-グルカン含有酵母エキスを飲食品に使用可能な他の添加物と混合して、飲食品へ添加してもよい。β-グルカン含有酵母エキスの飲食品へ添加は、飲食品をβ-グルカン含有酵母エキスへ添加する態様も含まれる。
本発明の別の態様によれば、本発明のβ-グルカン含有酵母エキスを添加してなる飲食品が挙げられる。また、本発明の好ましい一つの態様によれば、本発明のβ-グルカン含有酵母エキスを添加してなる飲食品も挙げることができる。また、飲食品を本発明のβ-グルカン含有酵母エキスに添加してもよく、または飲食品と、本発明のβ-グルカン含有酵母エキスと混合して用いても良い。本発明のβ-グルカン含有酵母エキスが添加される飲食品および添加方法等については上記と同様である。
以下の実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は重量%を意味する。
[実施例1]
本実施例では、本発明の方法に従って、食用酵母からβ-グルカン含有酵母エキスを調製した。
担子菌産生酵素類の調製
(1)担子菌の例としてヒイロタケ(Pycnoporus coccineus)を選択し、その胞子懸濁液(10個/ml以上)2mlを種培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/ml、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖50g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、pH7.0)20mlに接種し、200ml容フラスコ中で、28℃、200rpmで48時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液2mlを主培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/l、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖80g/l、脱脂大豆粉35g/l、pH6.0)20mlに移植し、200ml容フラスコ中で28℃、200rpmで96時間培養し、主培養終了液を得た。主培養終了液を、濾紙で濾過し、得られた酵素液を真空乾燥してヒイロタケ産生酵素類の乾燥粉末を得た。
放線菌産生酵素類の調製
( 1 ) ストレプトミセス・アウレウス( Streptomyces aureus) の胞子懸濁液(10 個/ml 以上) 1 白金耳を種培地(可溶性コーンスターチ30g/l 、コーン・スティープ・リカー30g /l 、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g /l 、炭酸カルシウム3g/l 、pH7.0) 20mlに接種し、200ml容三角フラスコで28℃ 、200rpmで24時間培養し、種培養終了液を得た。
( 2 ) 得られた種培養終了液1mlを主培地( 可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー15g/l、脱脂大豆粉25g/l 、硫酸アンモニウム1g /l、硫酸マグネシウム0.5g/l 、炭酸カルシウム3g/l 、pH7.0)200mlに移植し、200ml容フラスコで28℃ 、200rpmで40時間培養し、主培養終了液を得た。
( 3 ) 得られた主培養終了液20mlを28℃ 、200rpmで3時間撹拌し、ついでイソブタノール1.6mlを加え、さらに28℃ 、200rpmで3時間撹拌して溶菌し、酵素処理液を得た。これを品温が80℃ 以下で乾燥し、放線菌産生酵素類の乾燥粉末を得た。
ろ液の調製
(調製例1)
乾燥トルラ酵母を純水に懸濁して15%懸濁液を調製し、30%苛性ソーダ溶液でpH7.7に調整した。これに、上記で得られた放線菌生産酵素粉末を加え、40℃から65℃まで5時間昇温させ、ついで65℃で3時間保持した。このときのpHは6.7~6.8であった。ついで、50℃に冷却し、20%HClでpH4.0に調整した。上記で得られた担子菌産生酵素類を添加した。50℃で12時間反応させた後、90℃で10分間加熱殺菌した。60℃に冷却した反応終了液を、0.1~0.2μmの孔径を有するセラミック膜で濾過した。残渣を3倍量の純水と共に攪拌し、再度濾過して、ろ液を上記のろ液と合わせた。30%水酸化ナトリウム溶液でpH5.5に調整し、薄膜流下式真空濃縮によりBx55~65まで濃縮した。
[実施例2]
本実施例では、上記のようにして調製した調製品に含まれる糖質成分を測定した。糖質成分の測定は、全グルコース量からのα-グルカン含量の差し引きから推定した。
糖質成分の測定
調製品の糖質成分含量の測定は、以下のようにして行った。調製品0.1gに、2N塩酸1000μLを加え3時間煮沸して多糖を酸加水分解した。本酸加水分解処理によって遊離したグルコース量は、日立製作所製高速液体クロマトグラフィーAS-2000型で測定した。尚、カラムはSCR-101H(島津社製)を使用し、検出は示差屈折率検出器を用い、移動相液は4mM硫酸を使用した。これとは別に0.1gを、0.08Mリン酸緩衝液(pH4.5)990μLで溶解した後、10μLのアミログルコシダーゼ(シグマ社製 A9913)を添加し、60℃で30分間処理した。本酵素処理によって遊離したグルコース量は、日立製作所製高速液体クロマトグラフィーAS-2000型で測定した。尚、カラムはSCR-101H(島津社製)を使用し、検出は示差屈折率検出器を用い、移動相液は4mM硫酸を使用した。酸加水分解処理によって得られたグルコース含量の値から、酵素処理によって得られたグルコース含量の値を差し引いて、目的の糖質成分の含量とした。
結果
酸加水分解処理とアミログリコシダーゼ処理をそれぞれ行ったところ、それぞれグルコースの生成が確認された。前者の方が後者よりも生成量が多くなった。調製品は、酵母の酵素処理液を精密濾過し、得られたろ液に由来する画分であることから、調製品中の糖質はアミログリコシダーゼにより分解を受けないβ-グルカンと考えられた。調製品のβ-グルカン含量は5.2%であった。
[実施例3]
(調製例2)
 サンプルには上記調製例1で得られた濃縮液を分画分子量6000Da以上、1000Da-6000Da、1000Da以下に分離ろ過膜(旭化成ケミカルズ社製、マイクローザUF)および透析膜(REPLIGEN社製、Biotech CE)で分離した画分もそれぞれ用いた。分画したサンプルの添加量は、分画時の回収率から算出し、調製例1で得られた濃縮液0.1%を添加するときの相当量を添加した。
[実施例3]
 市販の穀物酢希釈溶液に、調製例1および調製例2で得られた調製品を0.1%、0.041%それぞれ添加して溶解させた(試験区1)。溶解させたものついて、酸味の強さについて官能評価した。なお、何も添加していないものを比較対象として用いた。
 官能評価は10名の熟練したパネルにより行った。上記を添加しない市販の穀物酢希釈溶液をコントロールとし、以下に示す7点尺度法にて評価を行った。各パネルの評点の平均を図1に示す。
 7点:非常に向上している
 6点:向上している
 5点:やや向上している
 4点:コントロールと同程度
 3点:やや低下している
 2点:低下している
 1点;非常に低下している

図1の符号説明
1:コントロール、
2:調整例2(1000Da~6000Da) 0.041%添加
3:調整例1:0.1%添加、
縦軸は、官能評価点(7段階評価)を示す。
  図1に示されるとおり、β-グルカンを含有する酵母エキスは、対照と比較して明らかに酸味において有意な抑制効果を示すことが明らかになり、さらにその活性中心は分子量1000Da-6000Daの画分にあることが確認された。このような効果は分画分子量6000Da以上、1000Da以下の画分には認められなかった。また、グルカナーゼ(スミチームTG(新日本化学社製))を当該酵母エキスに作用させたところ、抑制効果が減少したことから、1000Da~6000Daのβ-グルカンが活性の中心であることが推定された。
[実施例4]
 市販の煮物調味液に、調製例1で得られた調製品を0.05%添加して溶解させた(試験区2)。溶解させたものついて、官能評価したところ、主に先味に感じる酢カドと中味以降に感じる酸味が穏やかなり、甘うま味が付与されていた。
[実施例5]
 市販のポテトサラダに、調製例1で得られた調製品を0.1%添加した(試験区3)。添加したものついて、官能評価したところ、ツンとした酸味を抑制させマイルドな風味になっており、自然な厚みとうま味が付与されていた。
[実施例6]
 市販の肉団子(鶏もも)に、調製例1で得られた調製品を0.3%添加した(試験区4)。添加したものついて、官能評価したところ、ツンと感じる先味の酸味と、中味以降に感じる 酸味が穏やかなっており、鶏肉の甘うま味が強められていた。
[実施例7]
 市販の鶏そぼろに、調製例1で得られた調製品を0.2%添加した(試験区5)。添加したものついて、官能評価したところ、甘みとうま味により鶏肉の風味が強化・持続され、植たんの風味が抑制されていた。
[実施例8]
 市販の鍋つゆ(塩化カリウム配合)に、調製例1で得られた調製品を0.1%添加した(試験区6)。添加したものついて、官能評価したところ、主に先味~中味にかけて感じる塩化カリウム由来のエグ味が抑えられ、味にまとまりがあった。
[実施例9]
 市販のキャベツ用調味液に、調製例1で得られた調製品を0.2%添加した(試験区7)。添加したものついて、官能評価したところ、全体的な旨味が付与され、先のキャベツ特有の青臭さが抑えられていた。
[実施例10]
  植たん(大豆お肉ミンチタイプ)、塩、上白糖、加工デンプンからなる粒状大豆たん白ベースを調製し、該粒状大豆たん白ベース30gを100mlの湯で溶解させ、大豆たん白スープを調製した。該大豆たん白スープに、調製例2で得られた分画分子量6000Da以上の画分、1000Da-6000Daの画分および調製例1で得られた調製品を0.064%、0.082%および0.2%それぞれ添加して溶解させた(試験区8)。溶解させたものついて、植物蛋白の風味、エグ味および苦味について官能評価した。なお、何も添加していないものを比較対象として用いた。官能評価は実施例3と同様に行った。
  図2に示されるとおり、β-グルカンを含有する酵母エキスは、対照と比較して明らかに植物蛋白の風味、エグ味および苦味において有意な抑制効果を示すことが明らかになり、さらにその活性中心は分子量1000Da-6000Daの画分にあることが確認された。このような効果は分画分子量6000Da以上、1000Da以下の画分には認められなかった。また、グルカナーゼ(スミチームTG(新日本化学社製))を当該酵母エキスに作用させたところ、抑制効果が減少したことから、1000Da~6000Daのβ-グルカンが活性の中心であることが推定された。 

図2~5の符号説明
1:コントロール(無添加区)、
2:調製例2分画物(分子量6000以上)
3:調製例2分画物(分子量1000~6000)
4:調製例1
縦軸は、官能評価点(7段階評価)を示す。



[実施例11]
  市販の鍋つゆ(0.5%塩化カリウム配合)に、調製例2で得られた分画分子量6000Da以上の画分、1000Da-6000Daの画分および調製例1で得られた調製品を0.032%、0.041%および0.1%それぞれ添加して溶解させた(試験区10)。溶解させたものついて、塩化カリウムのエグ味について官能評価した。なお、何も添加していないものを比較対象として用いた。官能評価は実施例3と同様に行った。
  図3に示されるとおり、β-グルカンを含有する酵母エキスは、対照と比較して明らかに塩化カリウムのエグ味において有意な抑制効果を示すことが明らかになり、さらにその活性中心は分子量1000Da-6000Daの画分にあることが確認された。このような効果は分画分子量6000Da以上、1000Da以下の画分には認められなかった。また、グルカナーゼ(スミチームTG(新日本化学社製))を当該酵母エキスに作用させたところ、抑制効果が減少したことから、1000Da~6000Daのβ-グルカンが活性の中心であることが推定された。 
[実施例12]
  市販の鍋つゆ(1.0%塩化カリウム配合)に、調製例2で得られた分画分子量6000Da以上の画分、1000Da-6000Daの画分および調製例1で得られた調製品を0.032%、0.041%および0.1%それぞれ添加して溶解させた(試験区11)。溶解させたものついて、塩化カリウムの苦味について官能評価した。なお、何も添加していないものを比較対象として用いた。官能評価は実施例3と同様に行った。
  β-グルカンを含有する酵母エキスは、対照と比較して明らかに塩化カリウムの苦味において有意な抑制効果を示すことが明らかになり、さらにその活性中心は分子量1000Da-6000Daの画分にあることが確認された。このような効果は分画分子量6000Da以上、1000Da以下の画分には認められなかった。また、グルカナーゼ(スミチームTG(新日本化学社製))を当該酵母エキスに作用させたところ、抑制効果が減少したことから、1000Da~6000Daのβ-グルカンが活性の中心であることが推定された。 
以上記載したごとく、本発明によれば、風味改良効果が高い、飲食品の異味を抑制するβ-グルカン含有酵母エキスを得ることができる。
実施例3における本願の効果 実施例10における本願の効果 植物蛋白の風味 実施例10における本願の効果 エグ味 実施例10における本願の効果 苦味 実施例11における本願の効果

Claims (5)

  1. β-グルカンを含有する異味抑制用の酵母エキス。
  2. 前記記載のβ-グルカンが分子量1000Da~6000Daのβ-グルカンである、請求項1記載の異味抑制用の酵母エキス。
  3. 請求項1又は2の酵母エキスがトルラ酵母を原料とする酵母エキス。
  4. 請求項1~3の酵母エキスの製造方法であって、製造に使用する担子菌産生酵素類が、ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus)の培養物又は培養抽出物である酵母エキスの製造方法。
  5. 請求項1~3記載のβ-グルカンを含有する異味抑制用の酵母エキスを用いた飲食品の風味改良方法。
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