JP2699470B2 - 食品保存剤及びその製造方法 - Google Patents

食品保存剤及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は食品の保存剤及びその製造方法に関する。
〔従来の技術〕
生鮮食品、加工食品、飲料などにおいて、その保存性
を高めるために従来よりソルビン酸塩類やデヒドロ酢酸
塩など、いわゆる合成保存料が主として使用されてき
た。しかしながら近年、天然物指向と合いまって食品添
加物表示が義務づけられるに至り、安全でしかも表示義
務のいらない天然保存剤の開発が強く望まれる様になっ
た。このような理由から天然物素材として糖類を原料と
した保存剤の開発が種々試みられており、そのひとつに
寒天を酵素分解して得られるネオアガロオリゴ糖を利用
した食品の防腐方法が提案されている。(特開昭62−21
0974号公報) 〔発明が解決しようとする課題〕 しかしながら、これらのオリゴ糖もいまだ充分な効果
を示しているとは言えず、実際の食品中でより効果的な
糖類由来の保存剤をスクリーニングする必要がある。
〔課題を解決する為の手段〕
本発明者らは飲食品に添加してもほとんど食品の風味
を損うことなく静菌作用を示す糖類由来の保存剤を開発
すべく鋭意研究した結果、ラミナリオリゴ糖が上記条件
を満足することを見い出し本発明を完成させるに至っ
た。
すなわち、本発明は、ラミナリオリゴ糖を有効成分と
する食品保存剤及びβ−1,3グルコシル糖化合物に酵素
もしくは酸を作用せしめ、加水分解することを特徴とす
る食品保存剤の製造方法を提供するものである。
〔構成〕
本発明のラミナリオリゴ糖とは、グルコースを構成単
位とし、各々β−1,3位でグルコース(G)が結合して
連なったもので、好ましくは重合度2〜10、より好まし
くは2〜5のものであり、例えばラミナリビオース
(G2)、ラミナリトリオース(G3)、ラミナリテトラオ
ース(G4)、ラミナリペンタオース(G5)、ラミナリヘ
キサオース(G6)、ラミナリヘプタオース(G7)、ラミ
ナリオクタオース(G8)、ラミナリノナオース(G9)、
ラミナリデカンオース(G10)等が挙げられる。特に好
ましくは、ラミナリビオース、ラミナリトリオース、ラ
ミナリテトラオースが各々1〜90重量%、G5〜G10のラ
ミナリオリゴ糖0.5〜50重量%からなる組成物である。
又、この有効成分の構成単位がグルコースであること
から、急性毒性等の安全性については、全く問題ないも
のと考えられる。
本発明による食品保存剤の添加量は、飲食品の種類や
pH等によって多少異なるが、通常食品重量当たり、好ま
しくは0.1〜10重量%、特に好ましくは2〜10重量%程
度とすればよい。
次いで本発明食品保存剤の有効成分であるラミナリオ
リゴ糖即ち食品保存剤の製造方法について説明する。ラ
ミナリオリゴ糖の原料としては酵素または酸で分解され
てラミナリオリゴ糖を生成するβ−1,3グルコシル糖化
合物であればいずれでもよいが、好ましくは例えばパキ
マン、ガードラン、ラミナリン、酵母細胞壁、ここでい
う酵母とは例えばサッカロマイセス属、キャンディダ
属、ピヒア属、シゾサッカロマイセス属、トルロプシス
属、ハンゼヌラ属、などをいうものであり、さらにリュ
ウコシン(珪藻類の細胞壁)、カロース(高等植物のハ
セオラス細胞壁)、パラミロン(単細胞藻類の細胞
壁)、リケナン(コケの抽出物)、イネ科植物の種子胚
乳より得られる糖類(ここでいうイネ科植物とはイネ、
オオムギ、コムギなどを指称する)、などのβ−1,3グ
ルコシル糖化合物有物があげられる。それらのうち特に
好適なものとしては、パキマン、カードラン、及びラミ
ナリンがあげられ、これらは入手しやすい点からもより
好ましい。尚カードランとは、アルカリゲネス属細菌が
生産するβ−1,3グルコシド結合を主体とする水不溶性
のβ−グルカンであり、その懸濁液を加熱すると堅い弾
力性のある熱不可逆性のゲルを作る多糖の総称である。
(A.B.C.29,757,P65または醗酵と工業36,2,P78参照) 本発明のラミナリオリゴ糖は、上記β−1,3グルコシ
ル糖化合物を酵素または酸で加水分解することにより得
られる。酵素による分解の場合、用いる酵素としては、
市販のβ−1,3グルカナーゼ(E.C.3.2.1.6)(シグマ社
より軟体動物由来、またはペニシリウム由来のもの)や
細胞壁溶解酵素として市販されている商品名:チモリエ
ース(Zymolyase)(生化学工業株式会社製)等があ
る。又粗酵素として市販されている商品名:キタラーゼ
(クミアイ化成株式会社製)やドリセラーゼ(協和醗酵
工業株式会社製)は実用的な面からより好ましい酵素で
ある。その中でも本発明ラミナリオリゴ糖生産の目的に
はキタラーゼが最も好ましい。酵素分解の反応条件など
についても特に制限はなく、好ましくは酵素添加量50〜
1,000単位/、反応温度30〜70℃、反応pH4〜8.5、反
応時間15分〜24時間を適宜調節することにより、任意の
ラミナリオリゴ糖を得ることができる。酵母細胞壁や海
草などのように夾雑物の多い原料を用いる場合は予めア
ルカリ等で除タンパク、及び酢酸などで除デンプン処理
を行うことにより反応時間の短縮が計れることはいうま
でもない。
又、酸を用いて本発明のラミナリオリゴ糖を生産する
場合、使用する酸としては、塩酸、硫酸、シュウ酸等が
ある。酸分解の条件等についても特に制限はなく、用い
る酸の種類、反応温度、酸濃度、反応時間を適宜調節す
ることにより、酵素分解と同様、任意のラミナリオリゴ
糖を得ることができる。本発明に用いるオリゴ糖の重合
度は2〜10であり、この重合度が2未満であると当然エ
ネルギーとして微生物の生育を助けるので食品保存剤と
して適当ではない。又、重合度が10を越えると粘性はさ
ほど示さないが、低温下では溶解性が悪くなり、ラミナ
リオリゴ糖を飲料等に使用する目的の場合、適当でな
い。例えば、カードランを用いてラミナリオリゴ糖を生
産する場合、カードランの濃度は1〜30%、好ましくは
5〜20%で粗酵素キタラーゼを0.01〜1%、好ましくは
0.05〜0.5%添加する。pHは2〜7、好ましくは3〜5
で反応温度は20〜70℃、好ましくは30〜50℃で反応する
ことによりラミナリオリゴ糖の混合物が得られる。酸分
解においても酵素分解と同様にラミナリオリゴ糖混合物
が得られるが、酸分解の場合適当な条件で反応すること
により、グルコースを構成単位とし、β−1,3位で結合
した重合度2〜10のオリゴ糖が任意の収量で得られる。
一方酵素分解の場合、一部転移反応を起し、例えばβ−
1,6位に結合した分岐グルコースを有したラミナリオリ
ゴ糖が生成される場合があるが、本発明における食品保
存剤は少なくともこうしたものを微量含有するものも含
むものである。
以上の様にして得られたラミナリオリゴ糖混合物は
過もしくは遠心分離等により不溶物を除去し、必要に応
じて活性炭による脱色、イオン交換樹脂又は膜を用いて
脱塩することにより精製すればよい。又活性炭カラムに
吸着させ、次いでエタノール水溶液で溶出する事によ
り、各々の重合度のラミナリオリゴ糖を純粋に取り出す
ことも可能である。この様にして精製されたラミナリオ
リゴ糖は濃縮してシロップ状とするか濃縮液をさらにス
プレードライ、凍結乾燥、真空乾燥法により粉末化にす
ればよい。ラミナリオリゴ糖の粉末は白色で水又は温湯
に対する溶解性に優れているので、高濃度のシロップに
することも可能である。
本発明では、有効成分であるラミナリオリゴ糖を単独
で飲食品中に添加しても充分なる保存効果があるが、例
えばエタノール、無水酢酸ナトリウム、有機酸(フィチ
ン酸、アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳
酸、フマル酸)、香辛料の抽出エキス等の天然物系の保
存剤もしくは合成保存剤とを併用することにより、一層
顕著な保存効果を得ることができる。特に本発明の食品
保存剤は、アミノ酸を併用することにより、より保存性
に優れたものを提供することができる。このアミノ酸を
併用する場合には、ラミナリオリゴ糖とアミノ酸との共
存物を加熱することにより、より優れた保存効果を得る
ことができ、この加熱は、通常の食品の加熱殺菌程度で
充分である。アミノ酸としては、例えばヒスチジン、メ
チオニン、バリン、スレオニン、リジン、フェニールア
ラニン、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン、
トリプトファン、シスチン、ロイシン、アルギニン等が
挙げられる。
添加される食品としては、例えば、しょう油、粉末し
ょう油、みそ、粉末みそ、もろみ、マヨネーズ、ドレッ
シング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つ
ゆ、めんつゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレ
ールー、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調
味料、みりん、新みりん、テーブルシラップ等の各種の
調味料、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅ
う、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、ゼリー、カ
ステラ、飴等の各種和菓子、食パン、フランスパン、ク
ロワッサン、菓子パン、調理パン等のパン類、ビスケッ
ト、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリ
ーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフ
ル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チュー
インガム、キャラメル、キャンデー等の各種洋菓子、果
実のシロップ漬、水蜜等のシロップ類、フラワーペース
ト、ピーナッツペースト、フルーツペースト等のペース
ト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの
果実、野菜の加工食品類、ラーメン、そば、うどん、き
しめん、ギャーザ皮等の麺類又は小麦練製品、福神漬、
千枚漬、らっきょう漬等の漬物類、ハム、ソーセージ等
の畜肉製品類、食肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、
チクワ、天ぷら等の魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、さき
するめ、ふぐのみりん干等の各種珍味類、のり、山菜、
するめ、小魚、貝等で製造されるつくだ煮類、煮豆、ポ
テトサラダ、コンブ巻等のそう菜食品、魚肉、畜肉、果
実、野菜のビン詰、缶詰類、合成酒、果実酒、洋酒等の
酒類、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲
料、乳酸菌飲料等の清涼飲料水、プリンミックス、ホッ
トケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席
しるこ等即席飲食品等の各種飲食物が挙げられる。
〔発明の効果〕
本発明による食品保存剤はグルコースを構成成分とし
た糖類であることにより、安全性はもちろんのこと、食
品添加物としての表示の必要性がない。従って、保存性
の高い無添加表示製品といった食品分野においての保存
剤としてすこぶる有用である。
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発
明はこれに限定されるべきものでないことはいうまでも
ない。文中「%」及び「部」は特に断わりのない限り重
量基準であるものとする。
〔実施例1〕 食品保存剤の製造 ラミナリオリゴ糖の調製を以下のように行った。5
容ビーカーに粗カードラン(和光純薬工業(株)製)を
400g入れ、0.05Mクエン酸緩衝液(pH5.0)の4.0で懸
濁状態にした。次いでビーカーを45℃に保った恒温槽内
に移し、キタラーゼ(クミアイ化成製)を4g添加して撹
拌しながら12時間反応させた。反応終了後、反応液は90
℃で15分間加熱処理を行い、酸素を失活後、急冷した。
その後冷却遠心分離機にて5000r.p.mで10分間遠心分離
を行い未反応カードランを除去した。得られた上清液中
には高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、グル
コース1.2%、ラミナリビオース2.6%、ラミナリトリオ
ース2.0%、ラミナリテトラオース1.0%、その他のラミ
ナリオリゴ糖の0.9%が含まれていた。この上清液を活
性炭3700mlを充填させた5容ガラスカラムに通して糖
類を吸着させ、続いて10の水を流すことによりグルコ
ースを溶出させた。次いで30%のエタノールを流すこと
によりG2以上のラミナリオリゴ糖を溶出した。これをエ
バポレーターにより濃縮し、凍結乾燥させ食品保存剤を
得た。このものは爽やかな甘味を有した白色粉末で、そ
の組成比はラミナリビオース27.1%、ラミナリトリオー
ス50.3%、ラミナリテトラオース12.4%、その他のラミ
ナリオリゴ糖10.2%からなるものであった。
試験例 1. 実施例1で得られたラミナリオリゴ糖の静菌スペクト
ルについて試験した結果を表−1に示した。
(試験方法) プレートにトリプトソイブイヨン寒天培地(pH7.0)1
0mlを入れ、プレート当り終濃度2%,5%,10%になるよ
うにラミナリオリゴ糖を均一に溶解して固化後各検定菌
を接種し、30℃で4日間培養した。
表−1より、プレート試験においては、ラミナリオリ
ゴ糖はグラム陽性菌に対して強い静菌作用を示し、酵母
に対してはやや弱いという結果であった。
試験例 2. ラミナリオリゴ糖の重合度と静菌活性の強さとの関係
について試験した結果を表−2に示した。
(試験方法) プレートにトリプトソイブイヨン寒天培地(pH7.0)1
0mlを入れ、プレートあたり10%になるように各糖鎖の
ラミナリオリゴ糖を均一に溶解し、固化後、検定菌を接
種し、30℃で4日間培養した。
表−2の結果より、ラミナリオリゴ糖の重合度は2〜
4が最も静菌活性が強く、重合度5以上はやゝ弱くなる
という結果であった。
試験例 3. ラミナリオリゴ糖とアミノ酸を共存下で加熱した場合
にみられる静菌効果について調べた結果を表−3に示し
た。
静菌効果はラミナリオリゴ糖と共存するアミノ酸の種
類と関係し、またバリン、メチオニンとの共存下ではグ
ラム陰性菌に対して強い静菌効果を示し、フェニールア
ラニンとの共存下ではグラム陽性菌に対して強い静菌効
果のあることが認められた。
(試験方法) ラミナリオリゴ糖0.5gと各アミノ酸0.1gを試験管に入
れ、蒸留水を1ml加えた後120℃で15分間オートクレーブ
を行った。それに別殺菌したブイヨン寒天培地9mlを入
れて撹拌後シャーレに流して固化した。その後検定菌を
塗布して30℃で培養し、3日目、6日目のコロニー数を
比較した。
応用例 1. ラミナリオリゴ糖を添加した食パンを表−4に示した
組成で各8個ずつ試作し、室温にて保存した。静菌効果
の判定は青カビが発生するまでの日数で表わした。
無添加の食パンに青カビが発生するのは3日目であっ
たが、ラミナリオリゴ糖を添加した食パンは12日目であ
った。またラミナリオリゴ糖添加食パンの色感、味など
は無添加に比べほとんど差は見られなかった。
応用例 2. ラミナリオリゴ糖を添加した餅を表−5に示した組成
で各8個ずつ試作し、室温にて保存した。静菌効果の判
定は青カビが発生するまでの日数で表わした。
無添加餅は2日目で青カビの発生が認められ、3日目
でほとんど全体がカビで覆われたが、ラミナリオリゴ糖
を添加した餅は3日目で小さなコロニーが出現し、8日
目で試験した餅すべてに小さな青カビのコロニーが認め
られた。しかしながらそれ以後もコロニーの拡がりは認
められなかった。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】β−1,3グルコシル糖(以下ラミナリオリ
    ゴ糖と称す)を有効成分とする食品保存剤。
  2. 【請求項2】ラミナリオリゴ糖の重合度が2〜10である
    ことを特徴とする請求項1の食品保存剤。
  3. 【請求項3】ラミナリオリゴ糖の添加量が食品重量あた
    り0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1の食
    品保存剤。
  4. 【請求項4】β−1,3グルコシル糖化合物に酵素もしく
    は酸を作用せしめ加水分解することを特徴とする食品保
    存剤の製造方法。
  5. 【請求項5】β−1,3グルコシル糖化合物が、カードラ
    ン、パキマン、酵母細胞壁、海草、及び担子菌の子実体
    抽出物又は培養物から選ばれた1種以上であることを特
    徴とする請求項4の食品保存剤の製造方法。
  6. 【請求項6】ラミナリオリゴ糖とアミノ酸とからなる食
    品保存剤。
  7. 【請求項7】アミノ酸がヒスチジン、メチオニン、バリ
    ン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、アラニ
    ン、グリシン、セリン、イソロイシン、トリプトファ
    ン、シスチン、ロイシン、アルギニンから選ばれる1種
    以上であることを特徴とする請求項6の食品保存剤。
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