JP2013013884A - 多孔質支持体―ゼオライト膜複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】SiO2/Al2O3モル比5以上のゼオライトを含むゼオライト膜を、水熱合成により、多孔質支持体上に形成させてゼオライト膜複合体とし、該ゼオライト膜複合体を、温度50℃以上で加熱処理した後に、温度40℃以上300℃以下の水に1時間以上浸漬することを特徴とする多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【選択図】なし
Description
近年、これらの方法に代わる分離方法として、高分子膜やゼオライト膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。高分子膜、例えば平膜や中空糸膜などは、加工性に優れるが、耐熱性が低いという欠点がある。また高分子膜は、耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸といった有機化合物との接触で膨潤するものが多いため、分離、濃縮対象の適用範囲が限定的である。
膜複合体を用いてアルコールと水の混合系から水を選択的に透過させてアルコールを濃縮する方法(特許文献2)や、フェリエライト型ゼオライト膜複合体を用いて酢酸と水の混合系から水を選択的に透過させて酢酸を分離・濃縮する方法(特許文献3)などが提案されている。
れていた。
(1)SiO2/Al2O3モル比5以上のゼオライトを含むゼオライト膜を、水熱合成により、多孔質支持体上に形成させてゼオライト膜複合体とし、該ゼオライト膜複合体を、温度50℃以上で加熱処理した後に、温度40℃以上300℃以下の水に1時間以上浸漬することを特徴とする多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
(2)前記水に含まれるSiの量が、0.01質量%以上である、上記(1)に記載の方法。
(3)前記水に更に酸を含む、上記(2)に記載の方法。
(4)前記酸が、無機酸、カルボン酸、スルホン酸のいずれかの酸である、上記(3)に記載の方法。
(5)前記酸が、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸、ギ酸、乳酸のいずれかの酸である、上記(3)又は(4)に記載の方法
(6)加熱処理が焼成である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)水への浸漬が密閉可能な加熱容器中で行われる、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)水中のOH−1イオン濃度が0.05mol/L以下である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)水中のH+イオン濃度が0.00001mol/L以上である、上記(2)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(10)水への浸漬後、更に加熱処理を行う、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)上記(1)〜(10)の何れかに記載の方法により製造されたことを特徴とする多孔質支持体―ゼオライト膜複合体。
(12)有機物を含む気体または液体の混合物を、上記(11)に記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離す
ることを特徴とする分離方法。
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法は、SiO2/Al2O3モル比5以上のゼオライトを含むゼオライト膜を、水熱合成により、多孔質支持体上に形成させてゼオライト膜複合体とし、該ゼオライト膜複合体を、温度50℃以上で加熱処理した後に、温度40℃以上300℃以下の水に1時間以上浸漬することに特徴を有するものである。
先ず、これらの発明の構成要件についてさらに詳細に説明する。なお、本明細書において、「多孔質支持体−ゼオライト膜複合体」を「ゼオライト膜複合体」または「膜複合体」と、また「多孔質支持体」を「支持体」と略称することがある。
本発明において使用される多孔質支持体としては、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性があり、無機の多孔質よりなる支持体(無機多孔質支持体)であれば如何なるものであってもよい。例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体(セラッミクス支持体)、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
具体的には、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体(セラミックス支持体)が挙げられる。それらの中で、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。これらの支持体を用いれば、部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなる。
の孔が多数存在するハニカム状のものやモノリスなどが挙げられる。
本発明において、かかる多孔質支持体上、すなわち支持体の表面などにゼオライトを膜状に形成させる。支持体の表面は、支持体の形状に応じて、どの表面であってもよく、複数の面であっても良い。例えば、円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
多孔質支持体の表面は滑らかであることが好ましく、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、多孔質支持体の表面とはゼオライトを結晶化させる無機多孔質支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であっても良い。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
本発明において、上記多孔質支持体上にゼオライト膜を形成させて、ゼオライト膜複合体を得る。
ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機化合物、あるいはゼオライト表面を修飾するシリル化剤などを必要に応じ含んでいてもよい。また、本発明におけるゼオライト膜は、一部アモルファス成分などを含んでいてもよいが、実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜が好ましい。
ゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それゆえ、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに、ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合が特に好ましい。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。
3モル比は、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、特に好ましくは100以下である。SiO2/Al2O3モル比が下限未満では耐久性が低下する傾向があり、上限を超えると疎水性が強すぎるため、透過流束が小さくなる傾向がある。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、好ましくは酸素6〜10員環構造を有するゼオライトを含むもの、より好ましくは酸素6〜8員環構造を有するゼオライトを含むものである。
酸素6〜10員環構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AEL、AFG、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DAC、DDR、DOH、EAB、EPI、ESV、EUO、FAR、FRA、FER、GIS、GIU、GOO、HEU、IMF、ITE、ITH、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MFI、MFS、MON、MSO、MTF、MTN、MTT、MWW、NAT、NES、NON、PAU、PHI、RHO、RRO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STF、STI、STT、TER、TOL、TON、TSC、TUN、UFI、VNI、VSV、WEI、YUGなどが挙げられる。
酸素n員環構造はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、6員環よりも小さいゼオライトではH2O分子のKinetic直径半径よりも細孔径が小さくなるため透過流束が小さくなり実用的でない場合がある。また、酸素10員環構造よりも大きい場合は細孔径が大きくなり、サイズの小さな有機化合物では分離性能が低下することがあり、用途が限定的になる場合がある。
フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Å3あたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES
Fifth Revised Edition 2001 ELSEVIERに示されている。
本発明において、ゼオライト膜複合体は、ゼオライト膜がCHA型ゼオライトを含む場合、X線回折のパターンにおいて、2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.
8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであることが好ましい。
されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)でいえば、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
ークの強度の4倍以上の大きさであることが好ましい。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表
されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)でいえば、通常4以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
また、X線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
(1,0,0)面由来のピークの強度と(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによれば2.5である。
そのため、この比が0.5以上であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
CHA型ゼオライト結晶が配向して成長している緻密なゼオライト膜は、次に述べる通
り、ゼオライト膜を水熱合成により形成する際に、例えば、特定の有機テンプレートを用い、水性反応混合液中にK+イオンを共存させることにより達成することができる。
本発明においては、水熱合成により、多孔質支持体上にゼオライト膜を形成さて、ゼオライト膜複合体を調製する。
具体的には、例えば、組成を調整して均一化した水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)を、多孔質支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱すればよい。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができるが、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性が向上する。
ゼオライトがCHA型の場合、有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンを有機テンプレートとしたとき、緻密な膜を形成し得るCHA型ゼオライトが結晶化する。また、膜が水を選択的に透過するのに十分な親水性を有するCHA型ゼオライトが生成し得るほか、耐酸性に優れたCHA型ゼオライトが得られる。
このようなアニオンを代表するものには、Cl−、Br−、I−などのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられる。
その他の有機テンプレートとしては、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキル基は、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で、最も好ましい化合物は、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。また、このカチオンが伴うアニオンは上記と同様である。
アルカリの種類は特に限定されず、通常、Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Baなどが用いられる。これらの中で、Na、Kが好ましく、Kがより好ましい。また、アルカリは2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとKを併用するのが好ましい。
SiO2/Al2O3モル比は特に限定されないが、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上である。また、通常10000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは100以下である。
特に、SiO2/Al2O3モル比がこの範囲にあるとき、緻密な膜を形成し得るCHA型ゼオライトを結晶化させることができる。また、膜が水を選択的に透過するのに十分な親水性を有するCHA型ゼオライトが生成し得るほか、耐酸性に優れたCHA型ゼオライトが得られる。
有機テンプレート/SiO2モル比が上記範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、生成したゼオライトが耐酸性に強くAlが脱離しにくい。また、この条件において、特に緻密で耐酸性のCHA型ゼオライトを形成させることができる。
CHA型ゼオライト膜を形成する場合、アルカリ金属の中でKを含む場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。その場合のKと、Kを含むすべてのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とのモル比は通常0.01以上1以下、好ましくは0.1以上1以下、さらに好ましくは0.3以上1以下である。
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得る。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが細かい結晶が生成して緻密な膜ができやすい傾向にある。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在さる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。ゼオライト膜複合体を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
種結晶の粒子径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。CHA型ゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、とくに好ましくは3質量%以下である。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材1m2あたりの質量で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下である。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
などの不活性ガスを加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
かくして得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(加熱処理後のゼオライト膜複合体)の空気透過量[L/(m2・h)]は、通常1400L/(m2・h)以下、好ましくは1000L/(m2・h)以下、より好ましくは700L/(m2・h)以下、より好ましくは600L/(m2・h)以下、さらに好ましくは500L/(m2・h)以下、特に好ましくは300L/(m2・h)以下、もっとも好ましくは200L/(m2・h)以下である。透過量の下限は特に限定されないが、通常0.01L/(m2・h)以上、好ましくは0.1L/(m2・h)以上、より好ましくは1L/(m2・h)以上である。
(温水処理)
本発明の方法においては、上記ゼオライト膜複合体を、温度40℃以上300℃以下の水に1時間以上浸漬する。なお、本明細書において、このゼオライト膜複合体の水への浸漬を「温水処理」と略称することがある。
ここで、温水処理における水とは、液状の水であって、沸点以上の温度では、加圧下で液状となっているものも含まれる。この場合の圧力は、自生圧でも加圧でもよい。
くは0.0005mol/l以上、より好ましくは0.001mol/l以上である。水中にOH−1イオンが存在することによって、存在しない場合よりも短時間で同等の効果を得ることが可能になる。水中のOH−1イオン濃度が高すぎると、ゼオライト膜が溶解して破壊されやすくなり処理時間の厳密なコントロールが必要となる。
特に水中にSi元素を含有する場合、膜に存在する欠陥が、水中に含まれるSi元素によって、一部修復されることがあるので好ましい。
これら元素の濃度は、通常0.00001質量%以上、好ましくは質量0.00005%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、さらに好ましくは0.001質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上、もっとも好ましく0.1質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
Si元素源としては例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、シリケートオリゴマー、シリカゾルなどを用いることができ、反応性の面でアルコキシシランが好ましい。
ゼオライトの構成元素となりうるSi、Al、B、P等を含む水にゼオライト膜複合体を浸漬して加熱することによって、ゼオライト膜に存在する微細な欠陥が、水中のSi、Al、B、P等を原料として修復されたり、膜の表面が前記水中に含まれる元素によって修飾されることで親水性が向上することにより、膜の性能が向上することがある。これらの元素の濃度が低すぎると、水のみの処理と効果が同等となる。これらの元素の濃度が高すぎると、ゼオライト膜複合体にアモルファスのSiO2、Al2O3などが付着し透過流束が減少する傾向がある。
水中に含まれる酸としては、特にカルボン酸、無機酸が好ましい。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フタル酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸などが好ましく、ギ酸、酢酸、乳酸がより好ましく、これらの中で特に酢酸が好ましい。無機酸としては、硫酸、硝酸、燐酸などが好ましく、この中で硫酸、燐酸が好ましい。
水中のH+濃度は通常1×10−8mol/l以上、好ましくは1×10−7mol/
l以上、より好ましくは1×10−5mol/l以上、さらに好ましくは1×10−3m
ol/l以上、特に好ましくは0.005mol/l以上、もっとも好ましくは0.01mol/l以上であり、通常10mol/l以下、好ましくは5mol/l以下、より好
ましくは1mol/l以下である。
好ましくは0.0005mol/l以上もっとも好ましくは0.001mol/l以上であり
、通常10mol/l以下、好ましくは5mol/l以下、より好ましくは1mol/l以下である。
水には、ポリビニルアルコール(PVA)、Nafion(登録商標)などの親水性を有する高分子化合物および/またはそのモノマーを含んでいてもよい。
0001質量%以上、好ましくは0.00005質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
親水性を有する高分子化合物および/またはそのモノマーを含む水に浸漬して加熱処理
することによって、ゼオライト膜上に親水性を持つ高分子の層が形成され、ゼオライト膜がより親水的になり水の透過流束が向上するほか、ゼオライト膜に存在する微細な欠陥部分が親水性の高分子でふさがれ分離性能が向上する傾向がある。この濃度が低すぎると、水のみの処理と効果が同等となる。また濃度が高すぎると、ゼオライト膜上に形成される親水性を持つ高分子の層が厚くなるため、透過流束が減少する傾向がある。
(分離方法)
本発明の分離方法は、有機化合物を含む気体または液体の混合物を、上記多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離することに特徴をもつものである。この発明において、多孔質支持体―ゼオライト膜複合体は、上記と同様のものが用いられる。また、好ましいものも上記と同様である。
ーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離・濃縮方法は、本発明の分離方法におけるひとつの実施形態である。
パーベーパレーション法は、液体の混合物をそのまま分離膜に導入する分離・濃縮方法であるため、分離・濃縮を含むプロセスを簡便なものにすることができる。
ここでいう高い透過性能とは、十分な処理量を示し、例えば、膜を透過する物質の透過流束が、例えば含水率30質量%の2−プロパノールまたはN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物を、70℃において、1気圧(1.01×105Pa)の圧力差で透過させた場合、1kg/(m2・h)以上、好ましくは3kg/(m2・h)以上、より好ましくは5kg/(m2・h)以上であることをいう。透過流束の上限は特に限定されず、通常20kg/(m2・h)以下、好ましくは15kg/(m2・h)以下である。
きる。パーミエンスとは、圧力差あたりの透過流束(Pressure normalized flux)を表し、透過する物質量を膜面積と時間と水の分圧差の積で割ったものである。パーミエンスの単位で表した場合、水のパーミエンスとして、例えば含水率30質量%の2−プロパノールまたはN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物を、70℃において、1気圧(1.01×105Pa)の圧力差で透過させた場合、通常3×10−7mol/(m2・s・Pa)以上、好ましくは5×10−7mol/(m2・s・Pa)以上、より好ましくは1×10−6mol/(m2・s・Pa)以上、特に好ましくは2×10−6mol/(m2・s・Pa)以上である。パーミエンスの上限は特に限定されず、通常1×10−4mol/(m2・s・Pa)以下、好ましくは5×10−5mol/(m2・s・Pa)以下である。
分離係数=(Pα/Pβ)/(Fα/Fβ)
[ここで、Pαは透過液中の主成分の質量パーセント濃度、Pβは透過液中の副成分の質
量パーセント濃度、Fαは透過液において主成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度、Fβは透過液において副成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度である。]
分離係数は、例えば含水率30質量%の2−プロパノールまたはN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物を、70℃において、1気圧(1.01×105Pa)の圧力差で透過させた場合、通常1000以上、好ましくは4000以上、より好ましくは10000以上、特に好ましくは20000以上である。分離係数の上限は完全に水しか透過しない場合であり、その場合は無限大となるが、好ましくは10000000以下、より好ましくは1000000以下である。
本発明の分離方法では、ゼオライト膜を透過する物質は、通常水であるため、含水率が少なくなると処理量が低下するため効率的でない。また含水率が多すぎると濃縮に必要な膜が大面積となり(膜が管状に形成されている場合は数が多くなり)経済的な効果が小さくなる。
さらに、ゼオライト膜複合体によって水が分離された含水有機化合物から、さらに水を分離してもよい。これにより、より高度に水を分離し、含水有機化合物をさらに高度に濃縮することができる。
また、有機酸以外の有機物と水との混合物から有機物と水を分離する場合の有機物は炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数が3以上であることがより好ましい。
また有機化合物としては、水と混合物(混合溶液)を形成し得る高分子化合物でもよい。かかる高分子化合物としては、分子内に極性基を有するもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどのポリオール類;ポリアミン類;ポリスルホン酸類;ポリアクリル酸などのポリカルボン酸類;ポリアクリル酸エステルなどのポリカルボン酸エステル類;グラフト重合等によってポリマー類を変性させた変性高分子化合物類;オ
レフィンなどの非極性モノマーとカルボキシル基等の極性基を有する極性モノマーとの共重合によって得られる共重合高分子化合物類などが挙げられる。
本発明の分離方法は、前記ゼオライト膜複合体を用いて、適当な分離装置を作製し、それに有機化合物を含む気体または液体の混合物を導入することにより行えばよい。これら分離装置は、それ自体既知の部材により作製することができる。
(1)X線回折(XRD)測定
ゼオライト膜のXRD測定を、以下の条件で行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Slit
)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
なお、X線は円筒管の軸方向に対して垂直な方向に照射した。またX線は、できるだけノイズ等がはいらないように、試料台においた円筒管状の膜複合体と、試料台表面と平行な面とが接する2つのラインのうち、試料台表面ではなく、試料台表面より上部にあるもう一方のライン上に主にあたるようにした。
(2)空気透過量
ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、密閉状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターで空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m2・h)]とした。マスフローメーターとしてはKOFLOC社製8300、N2ガス用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)を用いた。KOFLOC社製8300においてマスフローメーターの表示が10ml/min(20℃、1気圧換算)以下であるときはLintec社製MM−2100M、Airガス用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
ゼオライト膜のSEM−EDX測定を、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
SEM測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4100
・加速電圧:10kV
(5)パーベーパレーション法
パーベーパレーション法に用いた装置の概略図を図1に示す。図1においてゼオライト膜複合体5は真空ポンプ9によって内側が減圧され、被分離液4が接触している外側と圧力差が約1気圧になっている。この圧力差によって被分離液4中透過物質の水がゼオライト膜複合体5に浸透気化して透過する。透過した物質はトラップ7で捕集される。一方、被分離液4中の有機化合物は、ゼオライト膜複合体5の外側に滞留する。
(6)ベーパーパーミエーション法
ベーパーパーミエーション法に用いた装置の概略図を図2に示す。図2において、被分離液10は送液ポンプ11によって気化器12に所定流量で送られ、気化器12での加熱により全量が気化され、被分離ガスとなる。被分離ガスは恒温槽13内のゼオライト膜複合体モジュール14に導入され、ゼオライト膜複合体の外側に供給される。ゼオライト膜複合体モジュール14は、ゼオライト膜複合体を筐体中に納めたものである。ゼオライト膜複合体は真空ポンプ18によって内側が減圧され、被分離ガスとの圧力差が約1気圧になっている。内側の圧力は、図示はしないがピラニーゲージで測定することができる。こ
の圧力差によって被分離ガス中透過物質の水がゼオライト膜複合体14を透過する。透過した物質は透過液捕集用トラップ16で捕集される。一方、被分離ガス中の透過しなかった成分は、被分離液回収用トラップ15で液化、捕集される。
(7)XPS測定
ゼオライト膜表面のXPS(X線光電子分光法)測定を、以下の条件で行った。
・装置名:PHI社製 Quantum2000
・ X線源:単色化Al−Kα、出力 16kV−34W(X線発生面積170μmφ)・ 帯電中和:電子銃(5μA)、イオン銃(10V)併用
・ 分光系:パルスエネルギー 187.85eV@ワイドスペクトル
58.70eV@ナロースペクトル(Na1s、Al2p、Si2p、K2p、S2p)
29.35eV@ワイドスペクトル(C1s、O1s、Si2p)
・測定領域:スポット照射(照射面積<340μmφ)
取り出し角:45°(表面より)
(比較例1)
無機多孔質支持体CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで次のとおり作製した。
1mol/L−NaOH水溶液10.5gと1mol/L−KOH水溶液7.0gと水100.5gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
無機多孔質支持体として、多孔質アルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用いた。この種結晶の粒径は1μm程度であった。
この種結晶を1質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は2.2g/m2であった。
テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は130g/m2であった。
XRDパターンから、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=3.5であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXRDに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
SEM−EDXにより測定した、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により70℃の水/N−メチル−2−ピロリドン混合溶液(30/70重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
(実施例1)
比較例1と同じ条件で作製した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を、脱塩水が約150g入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、120℃で5時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取りだした。以下、この処理を「温水処理1」という。
3時間後の透過成績は、透過流束:7.8kg/(m2・h)、分離係数:25100、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、5.7×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
無機多孔質支持体としてニッカトー社製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を用いた以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
焼成後のゼオライト膜複合体の空気透過量は50L/(m2・min)であった。
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。
付近のピークの強度)=2.0であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXRDに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
短冊状に切断した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していた。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により70℃の水/N−メチル−2−ピロリドン混合溶液(30/70重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
(実施例2)
比較例2と同じ条件で作製した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体に、例2と同様に温水処理1を施した。
重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
3時間後の透過成績は、透過流束:4.3kg/(m2・h)、分離係数:25100、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、3.1×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した以外は比較例2と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
53.5重量%含有、アルドリッチ社製)1.68gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これにTMADAOH水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.99gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)13.2gを加えて2時間撹拌して調製した。
焼成後のゼオライト膜複合体の重量と支持体の重量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は90g/m2であった。
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。
XRDパターンから、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°
付近のピークの強度)=0.7であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXR
Dに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
(実施例3)
比較例3と同じ条件で作製した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体に、処理時間を6時間とした以外は実施例1と同様の条件で温水処理を施した。以下、この処理を「温水処理2」という。
5時間後の透過成績は、透過流束:5.7kg/(m2・h)、分離係数:2000、透過液中の水の濃度:99.95重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、3.6×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表1に示す。
(参考例1)
比較例2と同じ条件で作製した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を比較例1と同様に行った。
(参考例2)
比較例2と同じ条件で作製した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を、0.1mol/lのKOH水溶液が約150g入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、70℃で2時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取りだした。以下、この処理を「アルカリ処理」という。
5時間後の透過成績は、透過流束:3.0kg/(m2・h)、分離係数:200、透過液中の水の濃度:99.40重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.9×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表2に示す。
膜の一部が変質したと推測される。
(比較例4)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、生成した膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であった。得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(5/95重量%)から水を選択的に透過させる分離を実施例1と同様に行った。
(実施例4)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。この無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM−EDXによって測定した結果17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であった。
温水処理3を施した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比をXPSにより測定した結果109.8であった。
温水処理3を行う前の無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理3を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加していた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
5時間後の透過成績は、透過流束:0.92kg/(m2・h)、分離係数:17900、透過液中の水の濃度:99.89重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.2×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
(実施例5)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。この無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM−EDXによって測定した結果17であった。この無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(TEOS)2.5gおよび酢酸1.62gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後
に支持体−ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。以下、この処理を「温水処理4」という。温水処理4に用いた処理液のpHは2.9であり、H+濃度は0.001mol/l、Si含有量が0.24質量%であった。
温水処理4を行う前の無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理4を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は大きくなっていた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
5時間後の透過成績は、透過流束:1.2kg/(m2・h)、分離係数:210000、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.7×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
(比較例5)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、生成した膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であった。得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を比較例1と同様に行った。
(実施例6)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。この無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM−EDXによって測定した結果17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であった。
温水処理5を施した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比をXPSにより測定した結果90.0であった。
温水処理5を行う前の無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのS
iO2/Al2O3比に比べ温水処理5を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加していた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
5時間後の透過成績は、透過流束:1.7kg/(m2・h)、分離係数:99000、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.3×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
比較例5と実施例6の比較から「温水処理5」によって分離係数が50倍に向上したことが分かる。
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水134gと日産化学製コロイダルシリカ スノーテックス40:1.8gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で21時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。以下、この処理を「温水処理6」という。温水処理6の、Si含有量は0.25質量%であった。
5時間後の透過成績は、透過流束:2.3kg/(m2・h)、分離係数:91000、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.6×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。
比較例5と実施例7の比較から「温水処理6」によって分離係数が48倍に向上したことが分かる。
比較例1と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、生成した膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は32.4であった。得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により75℃の水/フェノール混合溶液(10/90重量
%)から水を選択的に透過させる分離を比較例1と同様に行った。3時間後の透過成績は
、透過流束:5.8kg/(m2・h)、分離係数:700、透過液中の水の濃度:98.78重量%、フェノールの濃度は1.22重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、2.9×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。
比較例1と同じ条件で作製した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製に処理温度を100℃、処理時間を19時間とした以外は実施例1と同様の条件で温水処理を施した。以下、この処理を「温水処理7」という。
温水処理7を施した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により75℃の水/フェノール混合溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を比較例1と同様に行った。3時間後の透過成績は、透過流束:5.8kg/(m2・h)、分離係数:3200、透過液中の水の濃度:99.72重量%、
フェノールの濃度は0.28重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、3.0×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。
比較例1と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、生成した膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は32.4であった。
。
温水処理8を行う前の無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理8を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加していた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
3時間後の透過成績は、透過流束:5.2kg/(m2・h)、分離係数:75000、透過液中の水の濃度:99.99重量%、フェノールの濃度は0.01重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、2.7×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
また比較例6と実施例9の比較から、「温水処理8」によってSi元素存在下で温水処理をしたことにより、分離係数が100倍に向上したことが分かる。
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体に温水処理7を施した。温水処理7を施した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により75℃の水/フェノール混合溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を比較例1と同様に行った。3時間後の透過成績は、透過流束:3.6kg/(m2・h)、分離係数:90000、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.8×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を、脱塩水130gとテトラエトキシシラン(TEOS)2.5gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で24時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を取り出し、脱塩水で洗浄した。洗浄後の支持体−ゼオライト膜複合体に、乾燥処理として大気中170℃で1時間の熱処理を施した
。以下この処理を「温水処理9」という
この温水処理9を施した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、ベーパーパーミエーション法により、水/酢酸混合溶液(10/90wt%)から水を選択的に透過させる分離を行った。無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体は130℃の恒温槽内に設置し、水/酢酸混合溶液を0.8cm3/minの流量で気化器に送液し、全量を気化させて無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体に供給した。1.5時間後の透過成績は、透過流束:0.61kg/(m2・h)、分離係数:7800、透過液中の水の濃度:99.89重量%であった。水のパーミエンスで表すと、3.4×10−7mol/(m2・s・Pa)であった。
2 湯浴
3 撹拌子
4 被分離液
5 ゼオライト膜複合体
6 ピラニゲージ
7 透過液捕集用トラップ
8 コールドトラップ
9 真空ポンプ
10 被分離液
11 送液ポンプ
12 気化器
13 恒温槽
14 ゼオライト膜複合体モジュール
15 被分離液回収用トラップ
16 透過液捕集用トラップ
17 コールドトラップ
18 真空ポンプ
Claims (12)
- SiO2/Al2O3モル比5以上のゼオライトを含むゼオライト膜を、水熱合成により、多孔質支持体上に形成させてゼオライト膜複合体とし、該ゼオライト膜複合体を、温度50℃以上で加熱処理した後に、温度40℃以上300℃以下の水に1時間以上浸漬することを特徴とする多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
- 前記水に含まれるSiの量が、0.01質量%以上である、請求項1に記載の方法。
- 前記水に更に酸を含む、請求項2に記載の方法。
- 前記酸が、無機酸、カルボン酸、スルホン酸のいずれかの酸である、請求項3に記載の方法。
- 前記酸が、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸、ギ酸、乳酸のいずれかの酸である、請求項3または4に記載の方法。
- 加熱処理が焼成である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 水への浸漬が密閉可能な加熱容器中で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 水中のOH−1イオン濃度が0.05mol/L以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 水中のH+イオン濃度が0.00001mol/L以上である、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 水への浸漬後、更に加熱処理を行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする多孔質支持体―ゼオライト膜複合体。
- 有機物を含む気体または液体の混合物を、請求項11に記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離することを特徴とする分離方法。
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