JP2015044163A - 多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法 - Google Patents

多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透過性の低い物質の濃度が高い場合でも高い分離性能を持つゼオライト膜を提供すること、及び、ゼオライト膜による分離、濃縮において、実用上十分な処理量と分離性能を両立する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体、該ゼオライト膜複合体を用いた分離、濃縮方法を提供することにある。
【解決手段】多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を有する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法であって、多孔質支持体上にゼオライト膜を形成した後、分子内にSi原子を2以上有する材料で該ゼオライト膜を処理する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。また、この製造方法により得られた多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を用いる分離または濃縮方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は複数の成分からなる気体または液体の混合物から、透過性の高い物質を透過して分離し、透過性の低い物質を濃縮することができるものである。
従来、有機化合物を含有する気体または液体の混合物の分離、濃縮は、対象となる物質の性質に応じて、蒸留法、共沸蒸留法、溶媒抽出/蒸留法、吸着剤などにより行われている。しかしながら、これらの方法は、多くのエネルギーを必要とする、あるいは分離、濃縮対象の適用範囲が限定的であるといった欠点がある。
近年、これらの方法に代わる分離方法として、高分子膜やゼオライト膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。高分子膜、例えば平膜や中空糸膜などは、加工性に優れるが、耐熱性が低いという欠点がある。また高分子膜は、耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸といった有機化合物との接触で膨潤するものが多いため、分離、濃縮対象の適用範囲が限定的である。
また、ゼオライト膜は、通常、支持体上に膜状にゼオライトを形成させたゼオライト膜複合体として分離、濃縮に用いられている。例えば有機化合物と水との混合物を、ゼオライト膜複合体に接触させ、水を選択的に透過させることにより、有機化合物を分離し、濃縮することができる。無機材料の膜を用いた分離、濃縮は、蒸留や吸着剤による分離に比べ、エネルギーの使用量を削減できるほか、高分子膜よりも広い温度範囲で分離、濃縮を実施でき、更に有機化合物を含む混合物の分離にも適用できる。
ゼオライト膜を用いた分離法として、例えば、A型ゼオライト膜複合体を用いて水を選択的に透過させてアルコールを濃縮する方法(特許文献1)、モルデナイト型ゼオライト膜複合体を用いてアルコールと水の混合系から水を選択的に透過させてアルコールを濃縮する方法(特許文献2)や、フェリエライト型ゼオライト膜複合体を用いて酢酸と水の混合系から水を選択的に透過させて酢酸を分離・濃縮する方法(特許文献3)などが提案されている。
特開平7−185275号公報 特開2003−144871号公報 特開2000−237561号公報
多くのゼオライト膜では、混合物を構成する透過性の低い物質の濃度が高い場合に透過側への透過性の低い物質の透過が増加し、分離性能が低下するという現象が一般的に知られており、透過性の低い物質の濃度が高い場合でも高い分離性能を持つゼオライト膜の実現が望まれていた。
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点が解決された、無機材料分離膜による分離、濃縮において、実用上十分な処理量と分離性能を両立する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体、該ゼオライト膜複合体を用いた分離、濃縮方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ゼオライト膜の表面を特定の化合物で処理することにより、ゼオライト膜の分離性能が飛躍的に向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明の要旨は、次の(1)〜(3)に存する。
(1)多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を有する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法であって、多孔質支持体上にゼオライト膜を形成した後、分子内にSi原子を2以上有する材料で該ゼオライト膜を処理することを特徴とする、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
(2)上記(1)に記載の製造方法により製造された、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
(3)上記(2)に記載の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、複数の成分からなる気体または液体の混合物を接触させて、該混合物のうち透過性の高い物質を透過させることにより、該混合物から該透過性の高い物質を分離する、または、該混合物から透過性の高い物質を透過させることにより、透過性の低い物質を濃縮することを特徴とする分離または濃縮方法。
本発明によれば、複数の成分からなる気体または液体の混合物から特定の物質を分離、濃縮する際に、実用上も十分に大きい処理量を有し、かつ十分な分離性能を有するゼオライト膜をもつ多孔質支持体−ゼオライト膜複合体が提供される。このゼオライト膜複合体を、分離手段として用いることにより、十分な処理量と分離性能を両立する、複数の成分からなる気体または液体の混合物から透過性の高い物質の分離、混合物の濃縮が可能となる。
気体分離に用いた測定装置の概略図 ベーパーパーミエーション法に用いた測定装置の概略図
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法は、多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を有する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法であって、多孔質支持体上にゼオライト膜を形成した後、分子内にSi原子を2以上有する材料で該ゼオライト膜を処理することを特徴とする。
以下に、先ず、本発明の特徴となる、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜について説明する。
なお、本明細書において、無機多孔質支持体と、その上に形成されたゼオライト膜を「ゼオライト膜複合体」と言う場合があり、これを「膜複合体」と略称することがある。また、「無機多孔質支持体」を「多孔質支持体」または「支持体」と略称することがある。
<多孔質支持体>
本発明において、多孔質支持体としては、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性があり、無機の多孔質よりなる支持体(無機多孔質支持体)であれば如何なるものであってもよい。例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結
体(セラッミクス支持体)、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
これら多孔質支持体の中で、基本的成分あるいはその大部分が無機の非金属物質から構成されている固体材料であるセラミックスを焼結したものを含む無機多孔質支持体(セラミックス支持体)が好ましい。この支持体を用いれば、その一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することで界面の密着性を高める効果がある。
具体的には、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体(セラミックス支持体)が挙げられる。それらの中で、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。これらの支持体を用いれば、部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなる。
多孔質支持体の形状は、気体混合物または液体混合物を有効に分離できるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、平板状、管状のもの、または円筒状、円柱状や角柱状の孔が多数存在するハニカム状のものやモノリスなどが挙げられる。
本発明において、かかる多孔質支持体上、すなわち支持体の表面などにゼオライトを膜状に形成させる。支持体の表面は、支持体の形状に応じて、どの表面であってもよく、複数の面であってもよい。例えば、円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
多孔質支持体表面の平均細孔径は特に制限されないが、細孔径が制御されているものが好ましい。支持体表面の平均細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。平均細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になり、支持体表面の細孔の割合が増えて緻密なゼオライト膜が形成されにくくなる傾向がある。
多孔質支持体の平均厚さ(肉厚)は、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、通常7mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。支持体はゼオライト膜に機械的強度を与える目的で使用しているが、支持体の平均厚さが薄すぎるとゼオライト膜複合体が十分な強度を持たずゼオライト膜複合体が衝撃や振動等に弱くなる傾向がある。支持体の平均厚さが厚すぎると透過した物質の拡散が悪くなり透過度が低くなる傾向がある。
多孔質支持体の気孔率は、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上であり、通常70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。支持体の気孔率は、気体を分離する際の透過流量を左右し、下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、上限を超えると支持体の強度が低下する傾向がある。
多孔質支持体は、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、多孔質支持体の表面とはゼオライトを結晶化させる無機多孔質支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であってもよい。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってもよい。
<ゼオライト膜複合体>
本発明において、上記多孔質支持体上にゼオライト膜を形成させて、ゼオライト膜複合体を得る。
ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機
バインダー、ポリマーなどの有機化合物、あるいは下記詳述するようなゼオライト表面を修飾するSi原子を2以上有する材料またはその反応物などを必要に応じ含んでいてもよい。また、本発明におけるゼオライト膜は、一部アモルファス成分などを含んでいてもよい。
ゼオライト膜の厚さは特に制限されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲である。膜厚が大きすぎると透過量が低下する傾向があり、小さすぎると選択性が低下したり、膜強度が低下したりする傾向がある。
ゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それゆえ、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに、ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合が特に好ましい。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。後に述べる水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので特に好ましい。
ゼオライト膜複合体の形状は特に限定されず、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されず、例えば、管状の場合は、通常長さ2cm以上200cm以下、内径0.05cm以上2cm以下、厚さ0.5mm以上4mm以下が実用的で好ましい。
ゼオライト膜の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、用いるゼオライトの有効細孔径以上の大きさを有する気体分子とそれ以下の気体とを好適に分離することができる。なお分離に供される分子に上限はないが、分子の大きさは、通常100Å程度以下である。
尚、ゼオライトとしては、アルミノ珪酸塩であるものが好ましい。
ゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は、X線光電子分光法(XPS)のより得られる数値である。XPSは膜表面の情報を得る分析法であり、この分析法により、膜表面のSARを求めることができる。
ゼオライト 膜表面のSiO/Alモル比は、25以上であることが好ましく
、より好ましくは28以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは32以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましくは500以下である。ゼオライト 膜表面のSiO/Al
モル比が25以上であることにより膜表面の膜表面の細孔径が狭小化しており分離性能が向上すると考えられる。また、膜表面のSARが上限以下であることにより、吸着性の点で、透過度が小さくならないというメリットがある。
ゼオライト膜自体のSiO/Alモル比は、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。膜自体のSARが下限以上であることにより耐久性が向上する傾向があり、上限以下であることにより、吸着性の点で透過度が小さくならないというメリットがある。
ゼオライト膜自体のSiO/Alモル比は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られた数値である。SEM−EDXにおいて、X線の加速電圧を10kV程度として測定することにより、数ミクロンの膜のみの情報を得ることができる。ゼオライト膜は均一に形成されているので、この測定により、膜自体のSARを求めることができる。
また、本発明において、膜表面のSARは膜自体のSARより20以上大きい値であることが好ましいが、この値(膜表面のSARから膜自体のSARを差し引いた値)は、より好ましくは22以上、さらに好ましくは25以上、特に好ましくは30以上である。また、この値の上限は特に限定されないが、通常1000以下、好ましくは700以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは400以下である。
上記値(膜表面のSARから膜自体のSARを差し引いた値)が20以上であることにより、膜表面の細孔径が狭小化しており分離性能が向上すると考えられる。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含むものが好ましく、酸素6〜8員環の細孔構造を有するゼオライトを含むものがより好ましい。
ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素(骨格を構成する酸素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AFG、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DOH、EAB、EPI、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、GIU、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MON、MSO、MTF、MTN、NON、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、TOL、TSC、UFI、VNI、YUGなどが挙げられる。
酸素6〜8員環構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AFG、ANA、CHA、EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、PAU、RHO、RTH、SOD、TOL、UFIなどが挙げられる。
なお、本明細書において、ゼオライトの構造は、上記のとおり、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードで示す。
酸素n員環構造はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、酸素6員環よりも小さいゼオライトではHO分子のKinetic直径よりも細孔径が小さく、透過する気体成分や液体成分の透過度が小さくなり実用的でない場合がある。また、酸素8員環構造よりも大きい場合は細孔径が大きくなり、サイズの小さな気体成分や液体成分では分離性能が低下することがあり、用途が限定的になる場合がある。
ゼオライトのフレームワーク密度(T/1000Å)は特に制限されないが、通常17以下、好ましくは16以下、より好ましくは15.5以下、特に好ましくは15以下であり、通常10以上、好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。
フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Åあたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Sixth Revised Edition 2007 ELSEVIERに示されている。
本発明において、好ましいゼオライトの構造は、AEI、AFG、CHA、EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、PAU、RHO、RTH、SOD、TOL、UFIであり、より好ましい構造は、AEI、CHA、ERI、KFI、LEV、PAU、RHO、RTH、UFIであり、さらに好ましい構造は、CHA、LEV、RHOであり、最も好ましい構造はCH
Aである。
ここで、本発明において、CHA型のゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。これは、天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
CHA型ゼオライトのフレームワーク密度(T/1000Å)は14.5である。また、SiO/Alモル比は上記と同様である。
本発明において、ゼオライト膜複合体は、ゼオライト膜がCHA型ゼオライトを含む場合、X線回折のパターンにおいて、2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであることが好ましい。
ここで、ピークの強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)でいえば、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
また、ゼオライト膜複合体は、ゼオライト膜がCHA型ゼオライトを含む場合、X線回折のパターンにおいて、2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の2倍以上の大きさであることが好ましい。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)でいえば、通常2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、特に好ましくは8以上、もっとも好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
ここでいう、X線回折パターンとは、ゼオライトが主として付着している側の表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、膜複合体のゼオライトが主として付着している側の表面にX線が照射できるような形状なら何でもよく、膜複合体の特徴をよく表すものとして、作製した膜複合体そのままのもの、あるいは装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
ここで、X線回折パターンは、ゼオライト膜複合体の表面が曲面である場合には自動可変スリットを用いて照射幅を固定して測定してもかまわない。自動可変スリットを用いた場合のX線回折パターンとは、可変→固定スリット補正を実施したパターンを指す。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=20.8°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち20.8°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIER(以下これを、「非
特許文献1」ということがある。)によればrhombohedral settingで空間群を
Figure 2015044163
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである。
また、X線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークは、非特許文献1によればrhombohedral settingで空間群を
Figure 2015044163
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,1,1)の面に由来するピークである。
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークは、非特許文献1によればrhombohedral settingで空間群を
Figure 2015044163
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(2,0,−1)の面に由来するピークである。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,0,0)面由来のピークの強度の(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、Halil Kalipcilar et al., "Synthesis and Separation Performance of SSZ-13 Zeolite Membranes on Tubular Supports", Chem. Mater. 2002, 14, 3458-3464(以下これを、「非特
許文献2」ということがある。)よれば2未満である。
それゆえ、この比が2以上であるということは、例えば、CHA構造をhombohedral settingとした場合の(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼ
オライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,1,1)面由来のピークの強度と(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比A)は、非特許文献2によれば0.5未満である。
そのため、この比が0.5以上であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
このように、ピーク強度比A、Bのいずれかが、上記した特定の範囲の値であるということは、ゼオライト結晶が配向して成長し、分離性能の高い緻密な膜が形成されていることを示すものである。
ピーク強度比A、Bはその値が大きいほど配向の程度が強いことを示し、一般的に配向の程度が強いほど緻密な膜が形成されていることを示す。一般的には配向が強いほど分離
性能が高い傾向があるが、分離対象の混合物によっては分離性能が高くなる最適な配向の程度は異なるので分離対象の混合物によって適宜、配向の程度が最適なゼオライト膜複合体を選択して使用することが望ましい。
<ゼオライト膜複合体の製造方法>
本発明では、例えば、水熱合成により、無機多孔質支持体上にゼオライト膜を形成させた後、分子内にSi原子を2以上有する材料で該ゼオライト膜を処理することを特徴とする。
具体的には、例えば、ゼオライト膜複合体は、組成を調整して均一化した水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)を、多孔質支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱することにより調製できる。
水性反応混合物としては、Si元素源、Al元素源、アルカリ源、および水を含み、さらに必要に応じて有機テンプレートを含むものが好ましい。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
Al元素源としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等を用いることができる。なお、Al元素源以外に他の元素源、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの元素源を含んでいてもよい。
ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができるが、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性、耐水蒸気性が向上する。
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成し得るものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ゼオライトがCHA型の場合、有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
具体的には、例えば、1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオン、3−キナクリジナールから誘導されるカチオン、3−exo−アミノノルボルネンから誘導されるカチオン等の脂環式アミンから誘導されるカチオンが挙げられる。これらの中で、1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンがより好ましい。1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンを有機テンプレートとしたとき、緻密な膜を形成し得るCHA型ゼオライトが結晶化する。緻密な膜となることにより、分離性能が高いCHA型ゼオライトが得られる。
1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンのうち、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンがさらに好ましい。N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンの3つのアルキル基は、通常、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で最も好ましい化合物は、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンである。
このようなカチオンは、CHA型ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられる。
その他の有機テンプレートとしては、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキル基は、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で、最も好ましい化合物は、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。また、このカチオンが伴うアニオンは上記と同様である。
水性反応混合物に用いるアルカリ源としては、有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオン、NaOH、KOHなどのアルカリ金属水酸化物、Ca(OH)などのアルカリ土類金属水酸化物などを用いることができる。アルカリの種類は特に限定されず、通常、Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Baなどが用いられる。これらの中で、Li、Na、Kが好ましく、Kがより好ましい。また、アルカリは2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとK、LiとK を併用するのが好ましい。
水性反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比は、通常、それぞれの元素の酸化物のモル比、すなわちSiO/Alモル比として表わす。SiO/Alモル比は特に限定されないが、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上である。また、通常10000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは100以下である。
SiO/Alモル比がこの範囲内にあるときゼオライト膜が緻密に生成し、分離性能が高い膜となる。更に生成したゼオライトに適度にAl原子が存在するため、Alに対して吸着性を示す気体成分や液体成分では分離能が向上する。またAlがこの範囲にある場合には耐酸性、耐水蒸気が高いゼオライト膜が得られる。
水性反応混合物中のシリカ源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiOモル比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常1以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下である。
有機テンプレート/SiOモル比が上記範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、生成したゼオライトが耐酸性、耐水蒸気性に強くなる。
Si元素源とアルカリ源の比は、M(2/n)O/SiO(ここで、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはその価数1または2を示す。)モル比で、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
CHA型ゼオライト膜を形成する場合、アルカリ金属の中でKを含む場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。その場合のKと、Kを含むすべてのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とのモル比は、通常0.01以上1以下、好ましくは0.1以上1以下、さらに好ましくは0.3以上1以下である。
水性反応混合物中へのKの添加は、前記のとおり、rhombohedral settingで空間群を
Figure 2015044163
(No.166)とした時に、CHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである2θ=9.6°付近のピーク強度と(2,0,−1)の面に由来するピークである2θ=20.8°付近のピーク強度の比(ピーク強度比B)、または、(1,1,1)の面に由来するピークである2θ=17.9°付近のピーク強度と(2,0,−1)の面に由来するピークである2θ=20.8°付近のピーク強度の比(ピーク強度比A)を大きくする傾向がある。
Si元素源と水の比は、SiOに対する水のモル比(HO/SiOモル比)で、通常10以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得る。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが緻密な膜ができやすい傾向にある。
一般的に、粉末のCHA型ゼオライトを合成する際の水の量は、HO/SiOモル比で、15〜50程度である。HO/SiOモル比が高い(50以上1000以下)、すなわち水が多い条件にすることにより、支持体上にCHA型ゼオライトが緻密な膜状に結晶化した分離性能の高いゼオライト膜複合体を得ることができる。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。
ゼオライト膜複合体を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。CHA型ゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に支持体を浸けて種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものや種結晶そのものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性よく膜複合体を製造するにはディップ法が望ましい。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水が好ましい。
分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、とくに好ましくは3質量%以下である。
分散させる種結晶の量が少なすぎると、支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に支持体上に部分的にゼオライトが生成しない箇所ができ、欠陥のある膜とな
る可能性がある。ディップ法によって支持体上に付着する種結晶の量は分散液中の種結晶の量がある程度以上でほぼ一定となるため、分散液中の種結晶の量が多すぎると、種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
支持体にディップ法あるいはスラリーの塗りこみによって種結晶を付着させ、乾燥した後にゼオライト膜の形成を行うことが望ましい。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材1mあたりの質量で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下である。
種結晶の量が下限未満の場合には、結晶ができにくくなり、膜の成長が不十分になる場合や、膜の成長が不均一になったりする傾向がある。また、種結晶の量が上限を超える場合には、表面の凹凸が種結晶によって増長されたり、支持体から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりする場合がある。何れの場合も、緻密なゼオライト膜が生成しにくくなる傾向となる。
水熱合成により支持体上にゼオライト膜を形成する場合、支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法でゼオライト膜を形成させてもよいし、水性反応混合物を攪拌させてゼオライト膜を形成させてもよい。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
加熱時間は特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、通常10日間以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下である。反応時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。反応時間が長すぎると、求めるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
ゼオライト膜形成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、この温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体を加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。また、テンプレートの焼成を目的とする場合、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、さらに好ましくは480℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下、さらに好ましくは750℃以下である。
テンプレートの焼成を目的とする場合には、加熱処理の温度が低すぎると有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離・濃縮の際の透過度が減少する可能性がある。加熱処理温度が高すぎると支持体とゼオ
ライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなることがある。
加熱時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥、またはテンプレートが焼成する時間であれば特に限定されず、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上である。上限は特に限定されず、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内である。テンプレートの焼成を目的とする場合の加熱処理は空気雰囲気で行えばよいが、Nなどの不活性気体や酸素を付加した雰囲気で行ってもよい。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
テンプレートの焼成を目的とする加熱処理の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
ゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換してもよい。イオン交換は、テンプレートを用いて合成した場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などの第2族元素イオン、Fe、Cuなどの遷移金属のイオン、Al、Ga、Znなどのその他の金属のイオンなどが挙げられる。これらの中で、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオン、Fe、Al、Gaのイオンが好ましい。
イオン交換は、焼成後(テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜を、NHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む水溶液、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗する方法などにより行えばよい。さらに、必要に応じて200℃〜500℃で焼成してもよい。
かくして得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(加熱処理後のゼオライト膜複合体)の空気透過量[L/(m・h)]は、通常1400L/(m・h)以下、好ましくは1000L/・BR>Im・h)以下、より好ましくは700L/(m・h)以下、より好ましくは600L/(m・h)以下、さらに好ましくは500L/(m・h)以下、特に好ましくは300L/(m・h)以下、もっとも好ましくは200L/(m・h)以下である。透過量の下限は特に限定されないが、通常0.01L/(m・h)以上、好ましくは0.1L/(m・h)以上、より好ましくは1L/(m・h)以上である。
ここで、空気透過量とは、後述するとおり、ゼオライト膜複合体を絶対圧5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[L/(m・h)]である。
<Si原子を2原子以上含む材料による処理>
続いて、形成されたゼオライトを、Si原子を2原子以上含む材料で処理をする。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物などのSi原子を2原子以上含む材料により修飾される。
例えば、ゼオライト膜表面にSi層を形成することにより、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径となり、分離性能を向上させることができると考えられる。分子内に2つ以上のSi原子を含む材料では分子内にSi原子が1つの材料よりも分子サイズが大きいことが多く、効果的に開口径を狭小化することができる。開口径をより小さくするためにSiは他のSiと例えばO原子を介して結合を形成し、Siネットワークを形成する必要があるが、分子内に2以上のSi原子を含む材料では効率的に処理が進行すると考えられる。
また、ゼオライト膜表面をSi原子を2原子以上含む材料により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が副次的に得られることがある。欠陥はゼオライトが有する細孔よりも大きなサイズであり、例えばCHA構造の膜であれば3.8Åより大きなものと考えられるが、Si−0−Si結合のSi同士の距離はTECHNO-COSMOS 2007 Mar. Vol.20によれば3.1Åであることから、欠陥をふさぐにはSi原子は2つ以上必要となる。このため分子内に2以上のSi原子を含む材料で処理をすることで、Siが1つ含まれる分子よりも効率的に欠陥がふさがると考えられる。
ここで、Si原子を2原子以上含む材料とは、2つ以上のSi原子とSi原子以外の少なくとも1つ以上の原子から構成される物質であって、それぞれの原子はいずれかの原子と化学的な結合を形成しているものである。
分子内のSi原子の数は2以上であれば特に限定されず、求められる開口径やふさぐ欠陥のサイズによって適当なものを選択すればよいが、好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上である。また通常120以下、好ましくは90以下、さらに好ましくは70以下、特に好ましくは50以下である。分子内のSiがこの範囲にあるときに効果的に開口径を狭小化し、欠陥をふさぐことができる。分子内のSi原子が少なすぎると開口径が十分に小さくならない可能性、欠陥が十分にふさがらない可能性がある。分子内のSi原子の数が多すぎると細孔入口がふさがれ、透過性の高い気体成分、液体成分の透過度が低下したりすることがある。また欠陥サイズによっては分子が大きいために欠陥内部に侵入できず、欠陥を十分にふさげないことがある。
Si原子を2原子以上含む材料の粘度は、通常0.5mPas以上、好ましくは2mPas以上、さらに好ましくは3mPasである。また、通常150mPas以下、好ましくは120mPas以下、さらに好ましくは100mPas以下、特に好ましくは80mPas以下である。粘度が低すぎると、後述のSi原子を2原子以上含む材料を少なくとも含む液体に浸漬、あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧後に加熱を行って処理する方法において、ゼオライト膜表面にSi化合物が表面に十分とどまらないことがある。粘度が高すぎる場合には引き上げ時、またはその後にゼオライト膜の上部と下部でSi化合物の付着量に差が生じ、均一な処理とならない場合がある。粘度は溶媒を加えることで、Si化合物を含む溶液として調整することが可能である。
Si原子を2原子以上含む材料として具体的には、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルプロパンジシロキサンなどのアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサンを有する有機ケイ素化合物、ヘキサメチルジシラザンのようなシラザンを有する有機ケイ素化合物、メチルシリケートオリゴマー、エチルシリケートオリゴマーなどのシリケートオリゴマー用いることができる。反応性の面、Siのネットワークを形成するという観点からアルコキシシラン、シリケートオリゴマーが好ましい。
処理(以下、表面処理という場合がある)方法は限定されるものではないが、Si原子を2原子以上含む材料(以下、Si化合物という場合がある)を含む溶液または分散液にゼオライト膜複合体を浸漬する浸漬処理、ゼオライト膜複合体にSi原子を2原子以上含む材料を含む溶液を滴下する滴下処理、あるいは噴霧する噴霧処理がある。
浸漬処理等の液体を用いた表面処理を行う場合、この表面処理に用いる液体は、表面処理の条件下でゼオライト膜複合体が処理可能な状態のものであれば特に制限されず、Si化合物に溶媒を加えた溶液であってもよく、溶媒を加えない液体であってもよく、ゾルまたはゲルであってもよい。ここで、溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよい。また、沸点以上の温度では、加圧下で液状となっているものも溶媒に含まれる。この場合の圧力は、自生圧でも加圧でもよい。さらに、表面処理用の液体には、少なくともSi化合物を含んでいればよく、その他の元素源(化合物)として、例えばAl化合物を含んでいてもよい。
浸漬処理を行う場合、処理の方法としては液に浸漬し、浸漬した液の中でSi化合物との化学的な結合を形成させてもよいし、浸漬した後にゼオライト膜を液から出して表面にSi化合物が付着した状態で化学的な結合を形成してもよいし、浸漬中、浸漬後の両方で化学的な結合の形成をしてもよい。
浸漬処理において、溶媒として水を用いる場合について説明する。
水を溶媒として用いる場合、は溶液の温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。温度が低すぎると、Si化合物と膜表面およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が不十分でSi化合物による修飾が十分に行われず膜表面の親水性が十分に向上しないことがある。温度が高すぎると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライト膜が壊れる可能性がある。
浸漬時間は、通常1時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下である。浸漬時間が短すぎると、膜表面の変化が十分に進行せず、十分な効果が得られないことがある。浸漬時間が長すぎると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライトが壊れる可能性がある。
表面処理時の圧力は特に限定されず、大気圧あるいは、密閉容器中に入れた処理溶
液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体を加えても差し支えない。
溶液中のSi化合物の含有量は、Si化合物の濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。また、Si元素の場合の濃度としては、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
溶液中には、ゼオライト表面OH基とSi化合物、Si化合物間の脱水縮合反応、アルコキシ基の加水分解反応の触媒として、酸または塩基を存在させることが好ましい。従って、溶液のpHは、通常0〜12、好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜8程度であればよい。
水中に例えば、NaOH、KOH、アミン等の塩基性物質を添加することで微量のOH−1イオンを積極的に存在させてもよく、その場合、水溶液中のOH−1イオン濃度は、通常0.01mol/l以下、より好ましくは0.005mol/l以下であり、通常0.0001mol/l以上、好ましくは0.0005mol/l以上、より好ましくは0.001mol/l以上である。水中にOH−1イオンが存在することによって、存在しない場合よりも短時間で同等の効果を得ることが可能になる。水中のOH−1イオン濃度が高すぎると、ゼオライト膜が溶解して破壊されやすくなり処理時間の厳密なコントロールが必要となる。
水溶液中に存在させる酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸などの有機酸や、硫酸、燐酸などの無機酸等が挙げられる。これらの中で、特にカルボン酸、無機酸が好ましい。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フタル酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸などが好ましく、ギ酸、酢酸、乳酸がより好ましく、酢酸が特に好ましい。無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸などが好ましく、硫酸、硝酸、燐酸がより好ましい。
水溶液中の酸性物質の濃度は、好ましくは0.01mol/l以上、より好ましくは0.05mol/l以上であり、さらに好ましくは10mol/l以下、特に好ましくは1mol/l以下である。
また、H濃度は、通常1×10−10mol/l以上、好ましくは1×10−8mol/l以上、より好ましくは1×10−7mol/l以上、特に好ましくは1×10−5mol/l以上であり、通常10mol/l以下、好ましくは5mol/l以下、より好ましくは1mol/l以下である。
濃度が上記の範囲となるように塩基性物質を共存させてもよい。塩基性物質としては、例えば、NaOH、KOH、アミン等が挙げられる。
次に、浸漬処理において、有機溶媒を用いる浸漬処理について説明する。
この場合、溶液の温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは110℃以下である。温度が低すぎると、Si化合物と膜表面およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が不十分でSi化合物による修飾が十分に行われず分離性能が十分に向上しないことがある。温度が高すぎるとゼオライト膜が壊れる可能性がある。
浸漬時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常50時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。浸漬時間が短すぎると、膜表面の変化が十分に進行せず、十分な効果が得られないことがある。浸漬時間が長すぎると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライトが壊れる可能性がある。
表面処理時の圧力は特に限定されず、必要に応じて還流条件下で大気圧行うことが
出来る。あるいは必要に応じて密閉容器中に入れた処理溶液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力下で処理を行ってもよい。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体加えても差し支えない。
用い得る有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン等の非極性溶媒、アニソール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒、および、アセトンなどの極性溶媒が挙げられる。これらの中で、トルエン、イソプロピルアルコールが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
さらに、有機溶媒を用いる場合には、水を系内に添加してもよい。添加し得る水の濃度は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
溶液中のSi化合物の含有量は、Si元素濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。また、Al化合物の含有量は、Al元素濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%
以下、より好ましくは1質量%以下である。
表面処理においては、Si化合物を少なくとも含む液体に浸漬、あるいはSi化合物を少なくとも含む液体を滴下または噴霧し、その後加熱を行って処理することもできる。この場合には溶媒を加えずに処理することも出来る。特に、Si化合物としてシリケートオリゴマーを用いる場合には、溶媒をさらに加えなくてもよい。溶媒をさらに加えない場合においてもその他の元素源(化合物)として、例えばAl化合物を含んでいてもよい。
この場合の浸漬、あるいは滴下、噴霧温度は、通常1℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは15℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下である。温度が低すぎると、Si化合物の流動性が低くなり、ゼオライト膜複合体表面に均一にSi化合物が付着せずに、修飾が部分的になることがある。温度が高すぎると、Si化合物同士の反応が早く進行し、ゼオライト膜複合体表面への付着、反応が十分進行しない場合がある。
浸漬時間は、通常0.5秒以上、好ましくは1秒以上、より好ましくは2秒以上、特に好ましくは3秒以上であり、通常10時間以下、好ましくは7時間以下、より好ましくは5時間以下、さらに好ましくは3時間以下、特に好ましくは1時間以下である。
表面処理時の圧力は特に限定されず、大気圧、あるいは密閉容器中に入れた処理溶
液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体を加えても差し支えない。
Si化合物を含む液体に浸漬後あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧に加熱処理をする場合には、ゼオライト膜複合体を、Si化合物を含む液体に浸漬する際に、管状のゼオライト膜複合体の場合、下のみあるいは上下をシリコンゴム栓やテフロン(登録商標)テープなどでふさぐことにより、支持体に多量のSi化合物が浸透するのを妨げることが望ましい。ゼオライト膜の表面のみにSi化合物を接触させ、支持体部分への浸透を防ぐことで、高い透過量を維持したまま、効率的にゼオライト膜の表面を表面処理できる。
浸漬後あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧後の加熱温度としては、通常30℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。温度がこの範囲より低い場合にはゼオライト膜表面のSi化合物による修飾が十分に固定化されない場合がある。温度がこの範囲より高い場合にはSi化合物の沸点にもよるがSi化合物が表面から揮発し修飾が十分行われなくなる場合がある。
浸漬後あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧後に加熱する際には、加熱時間は通常30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは1.5時間以上、さらに好ましくは2時間以上であり、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは15時間以下である。時間がこの範囲より短い場合にはゼオライト膜表面のSi化合物による修飾が十分に固定化されない場合がある。時間がこの範囲より長い場合には、Si化合物による修飾が十分に固定化される以上に加熱することになりエネルギー的に不利である。
浸漬後あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧後に加熱する際には、加熱する系内に水を共存させることが好ましい。水を共存させることでシリケートオリゴマーなどに含まれるアルコキシシランの加水分解が進行しやすくなり、ゼオライト膜表面の修飾が十分に行われやすくなる。
浸漬後あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧後の加熱は通常の乾燥機などで行うことも出来るし、密閉容器中に浸漬後の膜を入れて加熱してもよい。密閉容器中に浸漬後あるいはSi化合物を含む液体を滴下または噴霧後の膜を入れる際には少量の水を膜に接触しないように共存させてもよい。
かくして製造されるゼオライト膜複合体は、上記のとおり優れた特性をもつものであり、本発明の分離または濃縮方法における膜分離手段として好適に用いることができる。
<分離または濃縮方法>
本発明の分離または濃縮方法は、上記製造方法により得られた多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に、複数の成分からなる気体または液体の混合物を接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離する、または、該混合物から透過性の高い物質を透過させることにより、透過性の低い物質を濃縮することに特徴をもつものである。
本発明の分離または濃縮方法において、ゼオライト膜を備えた無機多孔質支持体を介し、支持体側又はゼオライト膜側の一方の側に複数の成分からなる気体または液体の混合物を接触させ、その逆側を混合物が接触している側よりも低い圧力とすることによって混合物から、ゼオライト膜に透過性が高い物質(透過性が相対的に高い混合物中の物質)を選択的に、すなわち透過物質の主成分として透過させる。これにより、混合物から透過性の高い物質を分離することができる。その結果、混合物中の特定の成分(透過性が相対的に低い混合物中の物質)の濃度を高めることで、特定の成分を分離回収、あるいは濃縮することができる。
分離または濃縮の対象となる混合物としては、本発明における多孔質支持体−ゼオライト膜複合体によって、分離または濃縮が可能な複数の成分からなる気体または液体の混合物であれば特に制限はなく、如何なる混合物であってもよい。
分離または濃縮の対象となる混合物が、例えば、有機化合物と水との混合物(以下これを、「含水有機化合物」と略称することがある。)の場合、通常水がゼオライト膜に対する透過性が高いので、混合物から水が分離され、有機化合物は元の混合物中で濃縮される。パーベーパレーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離または濃縮方法は、本発明の方法におけるひとつの実施形態である。パーベーパレーション法は、液体の混合物をそのまま分離膜に導入する分離または濃縮方法であるため、分離または濃縮を含むプロセスを簡便なものにすることができる。
ベーパーパーミエーション法は、液体の混合物を気化させてから分離膜に導入する分離・濃縮方法であるため、蒸留装置と組み合わせて使用することや、より高温、高圧での分離に用いることができる。またベーパーパーミエーション法は、液体の混合物を気化させてから分離膜に導入することから、供給液中に含まれる不純物や、液体状態では会合体やオリゴマーを形成する物質が膜に与える影響を低減することができる。本発明により得られる無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体はいずれの方法に対しても好適に用いることができる。
また、ベーパーパーミエーション法で高温での分離を行う場合、一般的に温度が高いほど、また混合物中の透過性の低い成分の濃度が高いほど、例えば有機化合物と水との混合物の場合、有機化合物の濃度が高いほど分離性能が低下するが、本発明により得られる無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、高温でも、混合物中の透過性の低い成分の濃度が高い場合でも高い分離性能を発現することができる。そして通常、ベーパーパーミエーション法は、液体混合物を気化させてから分離するため、通常はパーベーパレーション法よりも過酷な条件での分離となるため、膜複合体の耐久性も要求される。本発明により得られる無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、高温条件下でも分離が可能な耐久性を有しているのでベーパーパーミエーション法に好適である。
前記多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、特定の物理化学的性質を有することで、混合物中の透過性の低い成分の濃度が高い場合のみならず、透過性の低い成分の濃度が低い場合でも高い透過性能、選択性を発揮し、耐久性に優れた分離膜としての性能を持つ。例えば有機化合物と水との混合物の場合、水の濃度にかかわらず高い選択性を発揮する。すなわち、本発明の特定の物理化学的性質を有するゼオライト膜複合体は、幅広い濃度範囲の混合物の分離および濃縮に好適である。
ここでいう高い透過性能とは、十分な処理量を示し、例えば、膜を透過する物質の透過流束が、例えば含水率10質量%の酢酸と水の混合物を、90℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、0.5kg/(m・h)以上、好ましくは1kg/(m・h)以上、より好ましくは1.5kg/(m・h)以上であることをいう。透過流束の上限は特に限定されず、通常20kg/(m・h)以下、好ましくは15kg/(m・h)以下である。
また、含水率10質量%のフェノールと水の混合物を、75℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、膜を透過する物質の透過流束が、0.5kg/(m・h)以上、好ましくは1kg/(m・h)以上、より好ましくは3kg/(m・h)以上であることをいう。透過流束の上限は特に限定されず、通常30kg/(m・h)以下、好ましくは20kg/(m・h)以下である。
また、含水率30質量%の2−プロパノールまたはN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物を、70℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、1kg/(m・h)以上、好ましくは3kg/(m・h)以上、より好ましくは5kg/(m・h)以上であることをいう。透過流束の上限は特に限定されず、通常20kg/(m・h)以下、好ましくは15kg/(m・h)以下である。
また、高い透過性能をパーミエンス(Permeance、「透過度」ともいう)で表す事もで
きる。パーミエンスとは、圧力差あたりの透過流束(Pressure normalized flux)を表し、透過する物質量を膜面積と時間と水の分圧差の積で割ったものである。パーミエンスの単位で表した場合、水のパーミエンスとして、例えば含水率10質量%の酢酸と水の混合物を、90℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、通常3×10−7mol/(m・s・Pa)以上、好ましくは5×10−7mol/(m・s・Pa)以上、より好ましくは1×10−6mol/(m・s・Pa)以上である。パーミエンスの上限は特に限定されず、通常1×10−4mol/(m・s・Pa)以下、好ましくは5×10−5mol/(m・s・Pa)以下である。
また、含水率10質量%のフェノールと水の混合物を、75℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、および含水率30質量%の2−プロパノールまたはN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物を、70℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、水のパーミエンスとして、通常3×10−7mol/(m・s・Pa)以上、好ましくは5×10−7mol/(m・s・Pa)以上、より好ましくは1×10−6mol/(m・s・Pa)以上、特に好ましくは2×10−6mol/(m・s・Pa)以上である。パーミエンスの上限は特に限定されず、通常1×10−4mol/(m・s・Pa)以下、好ましくは5×10−5mol/(m・s・Pa)以下である。
選択性は分離係数により表される。分離係数は膜分離で一般的に用いられる選択性を表す以下の指標である。
分離係数=(Pα/Pβ)/(Fα/Fβ
[ここで、Pαは透過液中の主成分の質量パーセント濃度、Pβは透過液中の副成分の質量パーセント濃度、Fαは透過液において主成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度、Fβは透過液において副成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度である。]
分離係数は、例えば含水率10質量%の酢酸と水の混合物を、90℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、および例えば含水率10質量%のフェノールと水の混合物を、75℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、および例えば含水率30質量%の2−プロパノールまたはN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物を、70℃において、1気圧(1.01×10Pa)の圧力差で透過させた場合、通常2000以上、好ましくは4000以上、より好ましくは10000以上、特に好ましくは20000以上である。分離係数の上限は完全に水しか透過しない場合であり、その場合は無限大となるが、好ましくは10000000以下、より好ましくは1000000以下である。
含水有機化合物としては、適当な水分調節方法により、予め含水率を調節したものであってもよい。また、水分調節方法としては、それ自体既知の方法、例えば、蒸留、圧力スイング吸着(PSA)、温度スイング吸着(TSA)、デシカントシステムなどが挙げられる。
さらに、ゼオライト膜複合体によって水が分離された含水有機化合物から、さらに水を分離してもよい。これにより、より高度に水を分離し、含水有機化合物をさらに高度に濃縮することができる。
有機化合物としては、例えば、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸類や、スルフォン酸、スルフィン酸、ハビツル酸、尿酸、フェノール、エノール、ジケトン型化合物、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルフォンアミド、第1級および第2級ニトロ化合物などの有機酸類;メタノール、エタノール、イソプロパノール(2−プロパノール)などのアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミドなどの窒素を含む有機化合物(N含有有機化合物)、酢酸エステル、アクリル酸エステル等のエステル類などが挙げられる。
これらの中から、分子ふるいと親水性の両方の特徴を生かすことのできる有機酸と水との混合物から有機酸を分離するときに、無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の効果が際立って発現する。好ましくはカルボン酸類と水との混合物、特に好ましくは酢酸と水の分離などがより好適な例である。
また、有機酸以外の有機物と水との混合物から有機物と水を分離する場合の有機物は炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数が3以上であることがより好ましい。
これら有機酸以外の有機物の中では、特にアルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、アミドから選ばれる少なくとも一種を含有する有機化合物が望ましい。これら有機化合物の中で、炭素数が2から10のものが好ましく、炭素数が3から8のものがより好ましい。
また有機化合物としては、水と混合物(混合溶液)を形成し得る高分子化合物でもよい。かかる高分子化合物としては、分子内に極性基を有するもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどのポリオール類;ポリアミン類;ポリスルホン酸類;ポリアクリル酸などのポリカルボン酸類;ポリアクリル酸エステルなどのポリカルボン酸エステル類;グラフト重合等によってポリマー類を変性させた変性高分子化合物類;オレフィンなどの非極性モノマーとカルボキシル基等の極性基を有する極性モノマーとの共重合によって得られる共重合高分子化合物類などが挙げられる。
前記含水有機化合物としては、水とフェノールの混合物のように、共沸混合物を形成する混合物でもよく、共沸混合物を形成する混合物の分離においては、水を選択的にかつ、蒸留による分離よりも効率よく分離可能な面で好ましい。具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類と水の混合物;酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等;のエステル類と水の混合物、ギ酸、イソ酪酸、吉草酸等のカルボン酸類と水の混合物;フェノール、アニリン等の芳香族有機物と水の混合物;アセトニトリル、アクリロニトリル等の窒素含有化合物と水の混合物等が挙げられる。
さらに、含水有機化合物としては、水とポリマーエマルジョンとの混合物でもよい。ここで、ポリマーエマルジョンとは、接着剤や塗料等で通常使用される、界面活性剤とポリマーとの混合物である。ポリマーエマルジョンに用いられるポリマーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのオレフィン−極性モノマー共重合体、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂;尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;天然ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのブタジエン共重合体等のゴム等が挙げられる。また界面活性剤としては、それ自体既知のものを用いればよい。
本発明の方法において、分離または濃縮の対象となる混合物としては、混合気体であってもよく、例えば、二酸化炭素、酸素、窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1−ブテン、2-ブテン、イソブテン、六フッ
化硫黄、ヘリウム、一酸化炭素、一酸化窒素、水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。これらの気体成分のうち、パーミエンスの高い気体成分は、ゼオライト膜複合体を透過し分離され、パーミエンスの低い気体成分は供給気体側に濃縮される。
特に混合気体としては、kinetic直径が4Å以下の気体分子を少なくとも1種類含有することが好ましい。本発明によれば、特に成分の少なくとも一つにkinetic直径が4Å以下の成分を含む気体においても、透過性の高い成分の分離、または透過性の高い成分を透過させることによる透過性の低い成分の濃縮を高い分離性能で行うことが可能となる。
混合気体としては、上記成分の少なくとも2種の成分を含む。この場合、2種の成分としては、パーミエンスの高い成分とパーミエンスの低い成分の組合せが好ましい。
ここで、パーミエンス(Permeance、「透過度」ともいう)とは透過する物質量を、膜面
積と時間と透過する物質の供給側と透過側の分圧差の積で割ったものであり、単位は、[mol・(m・s・Pa)−1]である。
混合気体として具体的には、酸素を含有する混合気体、メタン及びヘリウムを含有する混合気体、二酸化炭素及び窒素を含有する混合気体などが挙げられ、空気、天然ガス、燃焼気体やコークスオーブンガス、ごみ埋め立て場から発生するランドファィルガスなどのバイオガス、石油化学工業で生成、排出されるメタンの水蒸気改質ガスなどの分離または濃縮に使用することができる。
酸素を含有する混合気体を用いる場合は、該混合気体から酸素を分離する、または、該混合気体から酸素を透過させるために使用されることが好ましい。酸素を含有する混合気体としては空気などが挙げられる。
メタン及びヘリウムを含有する混合気体を用いる場合は、該混合気体から、ヘリウムを分離する、または、該混合気体からヘリウムを透過させるために使用されることが好ましい。メタン及びヘリウムを含有する混合気体としては、天然ガスなどが挙げられる。
二酸化炭素及び窒素を含有する混合気体を用いる場合は、該混合気体から、二酸化炭素を分離する、または、該混合気体から二酸化炭素を透過させるために使用されることが好ましい。二酸化炭素及び窒素を含有する混合気体としては、燃焼気体などが挙げられる。
本発明で用いるゼオライト膜に対して、酸素は高い透過性を有する。そのため、このゼオライト膜に酸素を含有する混合気体を接触させ分離させることにより、酸素を含有する混合気体、例えば空気中の酸素濃度を高めることができ、高酸素濃度の混合気体を製造することができる。
例えば、混合気体として空気を用いた場合、酸素濃度を30%以上、さらには35%以上とすることが可能である。
また、本発明で用いるゼオライト膜に対して、ヘリウムは高い透過性を有する。そのため、このゼオライト膜に、例えばヘリウムやメタンを含有する天然ガスを接触させることにより、ヘリウムを分離することができる。
また、本発明で用いるゼオライト膜に対して、二酸化炭素は高い透過性を有する。そのため、このゼオライト膜に、例えば二酸化炭素や窒素を含有する燃焼気体を接触させることにより、二酸化炭素を分離することができる。
これら混合気体の分離や濃縮の条件は、対象とする気体種や組成等に応じて、それ自体既知の条件を採用すればよい。
混合気体の分離に用いるゼオライト膜複合体を有する分離膜モジュールの形態としては、平膜型、スパイラル型、ホロウファーバー型、円筒型、ハニカム型等が考えられ、適用対象に合わせて最適な形態が選ばれる。
その一つである円筒型分離膜モジュールを説明する。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円柱状のエンドピン3で密封されている。他端は接続部4で接続され、接続部4の他端は、耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体の内側と、透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。耐圧容器2には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体1の内側と透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープ気体9を供給する配管12が挿入されている。さらに、耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料気体(混合気体)の供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
試料気体(供給気体7)を、一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とする。気体は膜1の内外の分圧差に応じて膜1を透過し、配管11を通じて排出される。
混合気体からの気体分離温度としては、0から500℃の範囲内で行なわれる。膜の分離特性から考えると室温から100℃の範囲内が望ましい。
以下、実験例(実施例、比較例)に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実験例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
(実施例1)
無機多孔質支持体とCHA型ゼオライト膜の膜複合体は、CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで次のとおり作製した。
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。
水酸化リチウム1水和物0.29gと1mol/L−KOH水溶液13.9gと水104.0gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)1.32gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH 25質量%含有、セイケム社製)2.35gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.4gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
この反応混合物の組成(モル比)は、SiO/Al/LiOH/KOH/H
O/TMADAOH=1/0.1/0.1/0.2/100/0.04、SiO/Al=10である。
無機多孔質支持体としてムライトチューブ(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
種結晶として、SiO/Al/NaOH/KOH/HO/TMADAOH=1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で160℃、2日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用いた。 この種結晶を1質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は1.9g/mであった。
このように種結晶を付着させた支持体と、同様に種結晶を付着させた支持体2本の合計3本を、上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、静置状態で、160℃、48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後100℃で2時間以上乾燥させた。
テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は146g/mであった。
このように得たゼオライト膜複合体を、次のように表面処理した。イソプロピルアルコールにメチルシリケートオリゴマー(MKC(登録商標)シリケート、MS−51、三菱化学社製)を30質量%で混合した溶液に、上部の端面には空気孔を設けた栓をし、下部
の端面には孔のない栓をしたゼオライト膜複合体を室温で5秒程度漬けて引き上げた。その後風乾し、さらに底に水約1gを入れたテフロン(登録商標)製内筒に治具を用いて垂直に立てていれオートクレーブを密閉し、100℃で6時間加熱し、所定時間経過後、放冷した後でゼオライト膜複合体を取り出し、さらに150℃で1h加熱処理した。
このゼオライト膜複合体について、SEM−EDXにより測定したゼオライト膜自体のSiO/Alモル比は33.6、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は200であり表面のSiの割合が高いことがわかる。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて以下方法にて50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO/N、He/CHのパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO/Nのパーミエンス比は35、He/CHパーミエンス比は145であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図1に示した装置を用いて、50℃で空気の分離評価を行なった。得られた分離結果を表1に示す。分離後の酸素濃度は44%であり、高い分離性能で、高い濃度の酸素が得られることがわかった。
尚、上記実施例において、物性や分離性能等の測定は次のとおり行った。
<物性及び分離性能の測定>
(1)SEM−EDX測定
ゼオライト膜のSEM−EDX測定を、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
このSEM−EDX測定により、生成したゼオライト膜自体のSiO2/Al2O3モル比を求めた。なお、SEM−EDX測定において、X線の照射エネルギーを10kV程度とすることにより数ミクロンのゼオライト膜のみの情報を得ることができる。
(2)XPS測定
ゼオライト膜表面のXPS(X線光電子分光法)測定を、以下の条件で行った。
・装置名:PHI社製 Quantum2000
・X線源:単色化Al−Kα、出力 16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃(5μA)、イオン銃(2V)併用
・分光系:パルスエネルギー 187.85eV@ワイドスペクトル
117.40eV@ナロースペクトル(Al2p)
29.35eV@ナロースペクトル(C1s,O1s,Si
2p)
・測定領域:スポット照射(照射面積<340μmφ)
・取り出し角:45°(表面より)
このXPS測定により、生成したゼオライト膜表面のSiO/Alモル比を求めた。
(3)単成分気体透過評価
単成分気体透過試験は、図1に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料気体は、二酸化炭素(純度99.9%、高圧気体工業社製)、メタン(純度99.999%、ジャパンファインプロダクツ製)、窒素(純度99.99%、東邦酸素工業製
)、ヘリウム(純度99.99、ジャパンヘリウムセンター製)である。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円柱状のエンドピン3で密封されている。他端は接続部4で接続され、接続部4の他端は、耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体の内側と、透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。耐圧容器2には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体1の内側と透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープ気体9を供給する配管(スイープ気体導入用配管)12が挿入されている。さらに、耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図1の装置において、単成分気体透過試験を行う場合は、試料気体(供給気体7)を、一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とする。配管11から排出される排出気体10の流量を測定する。
さらに具体的には、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給気体によるパージ処理をした後、試料温度及びゼオライト膜複合体1の供給気体7側と透過気体8側の差圧を一定として、透過気体流量が安定したのちに、ゼオライト膜複合体1を透過した試料気体(透過気体8)の流量を測定し、気体のパーミエンス[mol・(m・s・Pa)−1]を算出する。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給気体の供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いる。
上記測定結果に基づき、理想分離係数αを下記式(1)により算出する。
α=(Q/Q)/(P/P) (1)
〔式(1)中、QおよびQは、それぞれ、透過性の高い気体および透過性の低い気体の透過量[mol・(m・s)−1]を示し、PおよびPは、それぞれ、供給気体である透過性の高い気体および透過性の低い気体の圧力[Pa]を示す。〕
(4)混合気体透過試験
ゼオライト膜複合体の混合気体透過試験は、図1に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料気体は、圧縮空気である。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。高温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体の内側と透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープ気体9を供給する配管12が挿入されている。さらに、耐圧容器2には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁
6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図1の装置において、試料気体(供給気体7)を、一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とする。一方、スイープ気体9を配管12から、ゼオライト膜複合体1の内側に流し、配管11から排出される排出気体(スイープ気体9の排出気体及び同伴された透過気体8)の流量を測定するとともに、排出気体を分取して気体クロマトグラフによる成分分析を行う。
このときの、ゼオライト膜複合体1を透過した各成分気体の流速を、上記のとおり測定し、気体の透過量[mol・(m・s)−1]を算出する。
上記測定結果に基づき、分離係数α’を下記式(2)により算出する。
α’=(Q’/Q’)/(P’/P’) (2)
〔式(2)中、Q’およびQ’は、それぞれ、透過性の高い気体および透過性の低い気体の透過量[mol・(m・s)−1]を示し、P’およびP’は、それぞれ、供給気体中の透過性の高い気体および透過性の低い気体の分圧[Pa]を示す。〕
(比較例1)
実施例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.7g/mであり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は140g/mであった。このように得たゼオライト膜複合体を次のように表面処理した。テトラエトキシシランに、上部の端面には空気孔を設けた栓をし、下部の端面には孔のない栓をしたゼオライト膜複合体を室温で5秒程度漬けて引き上げた。その後風乾し、さらに底に水約1gを入れたテフロン(登録商標)製内筒に治具を用いて垂直に立てていれオートクレーブを密閉し、100℃で6時間加熱し、所定時間経過後、放冷した後でゼオライト膜複合体を取り出し、さらに150℃で1h加熱処理した。
このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は23.0でありテトラエトキシシランで処理することで表面のSiの割合が増加したため値が大きくなっていると考えられる。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO/N、He/CHのパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO/Nのパーミエンス比は17、He/CHパーミエンス比は17であった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図1に示した装置を用いて、50℃で空気の分離評価を行なった。得られた分離結果を表1に示す。分離後の酸素濃度は27%であり、濃度は十分でなかった。
Figure 2015044163
(実施例2)
無機多孔質支持体CHA型ゼオライト膜複合体は、CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで次のとおり作製した。
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液10.5gと1mol/L−KOH水溶液7.0gと水100.5gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH 25質量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
この反応混合物の組成(モル比)は、SiO/Al/NaOH/KOH/HO/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.04、SiO/Al=15である。
無機多孔質支持体として多孔質アルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
種結晶として、SiO/Al/NaOH/KOH/HO/TMADAOH=1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で160℃、2日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用いた。この種結晶の粒径は1μm程度であった。
この種結晶を1質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は0.9g/mであった。
この種結晶を付着させた支持体を、上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、静置状態で、160℃48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。
テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は130g/mであった。
焼成後のゼオライト膜複合体の空気透過量は60L/(m・h)であった。
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。
XRDパターンから、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=3.5であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXRDに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していた。
このゼオライト膜複合体の上下をシリコンゴム栓で栓をした後に、メチルシリケートオリゴマー(MKC(登録商標)シリケート MS51、三菱化学社製、Siの数(4〜11)、SiO含有量として52.0±1.0%)にゼオライト膜複合体全体が浸漬するように浸漬した後、5秒間保持してからゼオライト膜複合体を引上げ、1時間静置した後に水を共存させた乾燥機内で、100℃で4時間加熱する表面処理を行った。
表面処理を施したゼオライト膜複合体について、SEM−EDXにより測定したゼオラ
イト膜自体のSiO/Alモル比は17、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は626.4であった。ゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は、ゼオライト膜自体のSiO/Alモル比に比べ大きいため、ゼオライト膜表面がSi化合物で修飾されていると推測される。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、ベーパーパーミエーション法により、水/イソプロパノール(IPA)混合溶液(10/90質量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体は120℃の恒温槽内に設置し、水/IPA混合溶液を1.2cm/minの流量で気化器に送液し、全量を気化させて無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体に供給した。
4時間後の透過成績は、透過流束:1.9kg/(m・h)、分離係数:198800、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.2×10−6mol/(m・s・Pa)であった。評価結果を表2に示す。
尚、上記実施例において、物性や分離性能等の測定は次のとおり行った。
<物性及び分離性能の測定>
(1)X線回折(XRD)測定 ゼオライト膜のXRD測定を、以下の条件で行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Sli
t)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
なお、X線は円筒管の軸方向に対して垂直な方向に照射した。またX線は、できるだけノイズ等が入らないように、試料台においた円筒管状の膜複合体と、試料台表面と平行な面とが接する2つのラインのうち、試料台表面ではなく、試料台表面より上部にあるもう一方のライン上に主にあたるようにした。
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE 7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
(2)空気透過量
ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、密閉状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターで空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m・h)]とした。マスフローメーターとしてはKOF
LOC社製8300、Nガス用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)を用いた。KOFLOC社製8300においてマスフローメーターの表示が10ml/min(20℃、1気圧換算)以下であるときはLintec社製MM−2100M、Airガス用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
(3)SEM測定
SEM測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4100
・加速電圧:10kV
(4)SEM−EDX測定
ゼオライト膜のSEM−EDX測定を、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
このSEM−EDX測定により、生成したゼオライト膜自体のSiO/Alモル比を求めた。なお、SEM−EDX測定において、X線の照射エネルギーを10kV程度とすることにより数ミクロンのゼオライト膜のみの情報を得ることができる。
(5)XPS測定
ゼオライト膜表面のXPS(X線光電子分光法)測定を、以下の条件で行った。
・装置名:PHI社製 Quantum2000
・X線源:単色化Al−Kα、出力 16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃(5μA)、イオン銃(10V)併用
・分光系:パルスエネルギー 187.85eV@ワイドスペクトル
58.70eV@ナロースペクトル(Na1s、Al2
p、Si2p、K2p、S2p)
29.35eV@ワイドスペクトル(C1s、O1s、S
i2p)
・測定領域:スポット照射(照射面積<340μmφ)
・取り出し角:45°(表面より)
このXPS測定により、生成したゼオライト膜表面のSiO/Alモル比を求めた。
(6)ベーパーパーミエーション法
ベーパーパーミエーション法に用いた装置の概略図を図2に示す。図2において、被分離液19は送液ポンプ20によって気化器21に所定流量で送られ、気化器21での加熱により全量が気化され、被分離ガスとなる。被分離ガスは恒温槽13内のゼオライト膜複合体モジュール14に導入され、ゼオライト膜複合体の外側に供給される。ゼオライト膜複合体モジュール14は、ゼオライト膜複合体を筐体中に納めたものである。ゼオライト膜複合体は真空ポンプ18によって内側が減圧され、被分離ガスとの圧力差が約1気圧になっている。内側の圧力は、図示はしないがピラニーゲージで測定することができる。この圧力差によって被分離ガス中透過物質の水がゼオライト膜複合体を透過する。透過した物質は透過液捕集用トラップ16で捕集される。一方、被分離ガス中の透過しなかった成分は、被分離液回収用トラップ15で液化、捕集される。
一定時間ごとに、透過液捕集用トラップ16に捕集した透過液の質量測定および組成分
析を行い、それらの値を用いて各時間の分離係数、透過流束、水のパーミエンスなどを前記の通り算出した。なお、組成分析はガスクロマトグラフにより行った。
(比較例2)
実施例2と同じ条件で無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。このゼオライト膜複合体を、脱塩水121.5gとテトラエトキシシラン(TEOS)2.5gおよび硝酸1mol/l水溶液13.5gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後にゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。表面処理に用いた処理液のpHは1.3であり、H濃度は0.05mol/l、Si含有量が0.24質量%であった。
表面処理を施したゼオライト膜複合体について、SEM−EDXにより測定したゼオライト膜自体のSiO/Alモル比は17、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は95.0であった。ゼオライト膜表面のSiO/Alモル比は、ゼオライト膜自体のSiO/Alモル比に比べ大きいため、ゼオライト膜表面がSi化合物で修飾されていると推測される。
表面処理を施した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、実施例1と同様に、ベーパーパーミエーション法により、水/イソプロパノール(IPA)混合溶液(10/90質量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
4時間後の透過成績は、透過流束:1.7kg/(m・h)、分離係数:74500、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、9.9×10−7mol/(m・s・Pa)であった。評価結果を表2に示す。
実施例2及び比較例2の結果より、本発明の製造方法により得られた多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、透過流束、分離係数、パーミエンスともに優れていること分かった。
Figure 2015044163
本発明により得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、例えば、化学プラント、発酵プラント、精密電子部品工場、電池製造工場等の、例えば含水有機化合物から水を分離し、有機化合物の回収などが必要とされる分野において、特に好適に使用できる。また、例えば、空気、天然ガス、燃焼気体やコークスオーブンガス、ごみ埋め立て場から発生するランドファィルガスなどのバイオガス、石油化学工業で生成、排出されるメタンの水蒸気改質ガスなどの分離または濃縮に使用することや、化学プラント、ゴミ処理場、自動車などの酸素を富加した高酸素濃度の気体が必要とされている分野でも好適に使用できる。
1. ゼオライト膜複合体
2. 耐圧容器
3. エンドピン
4. 接続部
5. 圧力計
6. 背圧弁
7. 供給気体
8. 透過気体
9. スイープ気体
10. 排出気体
11. 配管
12. 配管
13. 恒温槽
14. ゼオライト膜複合体モジュール
15. 被分離液回収用トラップ
16. 透過液捕集用トラップ
17. コールドトラップ
18. 真空ポンプ
19. 被分離液
20. 送液ポンプ
21. 気化器

Claims (3)

  1. 多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を有する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法であって、
    多孔質支持体上にゼオライト膜を形成した後、
    分子内にSi原子を2以上有する材料で該ゼオライト膜を処理することを特徴とする、
    多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法により製造された、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
  3. 請求項2に記載の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、複数の成分からなる気体または液体の混合物を接触させて、該混合物のうち透過性の高い物質を透過させることにより、該混合物から該透過性の高い物質を分離する、または、該混合物から透過性の高い物質を透過させることにより、透過性の低い物質を濃縮することを特徴とする分離または濃縮方法。
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