JP6213620B2 - 多孔質支持体―ゼオライト膜複合体およびそれを用いる分離方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの方法は、多くのエネルギーを必要とする、あるいは分離、濃縮対象の適用範囲が限定的であるといった欠点がある。
近年、これらの方法に代わる分離方法として、高分子膜やゼオライト膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。高分子膜、例えば平膜や中空糸膜などは、加工性に優れるが、耐熱性が低いという欠点がある。また高分子膜は、耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸といった有機物との接触で膨潤するものが多いため、分離、濃縮対象の適用範囲が限定的である。
膜複合体を用いてアルコールと水の混合系から水を選択的に透過させてアルコールを濃縮する方法(特許文献2)や、フェリエライト型ゼオライト膜複合体を用いて酢酸と水の混合系から水を選択的に透過させて酢酸を分離・濃縮する方法(特許文献3)などが提案されている。
本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、多孔質支持体の細孔径の分布を特定の範囲とすれば、多孔質支持体の気孔率、平均細孔径および肉厚を変えることなく、高い透過流束を達成できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
[1]多孔質支持体上にゼオライト膜を形成してなる多孔質支持体―ゼオライト膜複合体であって、該多孔質支持体の平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定により求められ、下記式(1):
(D5−D95)/D50 (1)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。)
により算出される、支持体の細孔分布を表す指標が40以下であることを特徴とする多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
[2]多孔質支持体が、表面粗度(Ra)が1.2以下となるまで表面研磨されたものであることを特徴とする上記[1]に記載の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
[3]多孔質支持体が、セラミックス支持体であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体。
[4]ゼオライト膜が、CHA型ゼオライトを含むものであることを特徴とする上記[1]乃至[3]の何れかに記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体。
[5]有機物を含む気体または液体の混合物を、上記[1]乃至[4]の何れかに記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離することを特徴とする分離方法。
[6]多孔質支持体上にゼオライト膜を形成してなる多孔質支持体―ゼオライト膜複合体であって、該多孔質支持体の平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定により求められ、下記式(2):
(logD5−logD95)/logD50 (2)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。logは常用対数を表す。)
により算出される、支持体の細孔分布を表す指標が7以下であることを特徴とする多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
[7]多孔質支持体上にゼオライト膜を形成してなる多孔質支持体―ゼオライト膜複合体であって、該多孔質支持体の平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定により求められ、下記式(2):
(logD5−logD95)/logD50 (2)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。logは常用対数を表す。)により算出される、多孔質支持体―ゼオライト膜複合体の細孔分布を表す指標が、7以下であ
ることを特徴とする多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
[8]多孔質支持体が、表面粗度(Ra)が1.2以下となるまで表面研磨されたものであることを特徴とする前記[6]または[7]に記載の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
[9]多孔質支持体が、セラミックス支持体であることを特徴とする上記[6]乃至[8]の何れかに記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体。
[10]ゼオライト膜が、CHA型ゼオライトを含むものであることを特徴とする[6]乃至[9]の何れかに記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体。
[11]有機物を含む気体または液体の混合物を、[6]乃至[10]の何れかに記載の多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離することを特徴とする分離方法。
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、多孔質支持体上にゼオライト膜を形成してなる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、該多孔質支持体の平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定により求められ、下記式(1):
(D5−D95)/D50 (1)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。)により算出される、支持体の細孔分布を表す指標(以下、「式(1)で表される細孔分布の指標」、または単に「指標(1)」ということがある。)が40以下であることに特徴を有するものである。
ライト膜を形成してなる多孔質支持体―ゼオライト膜複合体であって、該多孔質支持体の平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定により求められ、下記式(2):
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。logは常用対数を表す。)
により算出される、支持体、または多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の細孔分布を表す指標(以下、「式(2)で表される細孔分布の指標」、または単に「指標(2)」ということがある。)が7以下であることに特徴を有するものである。
なお、本明細書において、本発明の「多孔質支持体−ゼオライト膜複合体」を単に「ゼオライト膜複合体」または「膜複合体」と、また「多孔質支持体」を単に「支持体」と略称することがある。
本発明のゼオライト膜複合体に使用される支持体としては、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性があり、無機の多孔質よりなる支持体(無機多孔質支持体)であれば如何なるものであってもよい。例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体(セラミックス支持体)、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
具体的には、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体(セラミックス支持体)が挙げられる。それらの中で、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましいものとして挙げられる。これらの支持体を用いれば、部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなる。
本発明において、多孔質支持体の表面などにゼオライトを膜状に結晶化させる。支持体の表面は、支持体の形状に応じて、どの表面であってもよく、複数の面であっても良い。例えば、円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
り好ましくは0.5mm以上であり、通常7mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。支持体はゼオライト膜に機械的強度を与える目的で使用しているが、支持体の平均厚さが薄すぎるとゼオライト膜複合体が十分な強度を持たずゼオライト膜複合体が衝撃や振動等に弱くなることがある。支持体の平均厚さが厚すぎると透過した物質の拡散が悪くなり透過流束が低くなることがある。
下記式(1): (D5−D95)/D50 (1)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径
および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。)により算出される、支持体の細孔分布を表す指標が40以下の値をもつものである。なお、水銀圧入法による細孔分布測定の詳細は実施例において述べる。
好ましくは30以下、より好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。また下限は特に制限されないが、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上である。
(logD5−logD95)/logD50 (2)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。logは常用対数を表す。)により算出される、支持体の細孔分布を表す指標が7以下の値をもつものである。
式(1)および式(2)の値は、細孔分布を表す指標である。この値が小さくなるほど、支持体の細孔分布は均一となる。細孔分布が均一であれば、気体が支持体内で拡散していく際に抵抗が小さくなるため、支持体内での拡散速度の分布も小さくなり、拡散速度が大きくなって、透過流束が向上する。支持体の細孔分布が大きいと様々な形状の流路が存在するため流体の拡散に不利となり透過流束が小さくなる。
上記のとおり、本発明において、支持体の細孔分布としては、(D5−D95)/D50が40以下であるが、D50は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。D50が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になることがあり、支持体表面の細孔の割合が増えて緻密なゼオライト膜が形成されにくくなることがある。
場合は0.48)
したがって細孔分布の実態をより正確に表すには、細孔径の常用対数をとることが望ましい。そのため細孔径の常用対数で表わされる式(2)で表される指標を用いることが望ましい。
ここで、従来、多孔質支持体―ゼオライト膜複合体を用いた水と有機化合物の混合物(以下これを「含水有機化合物」ということがある。)の分離において、透過流束に影響を与える因子としては、支持体の気孔率ε、平均細孔径d、厚さ(肉厚)lが挙げられ、これらの因子も用いて表される圧力損出係数l/(ε・d)が小さいほど、即ち気孔率が高く、平均細孔径が大きく、多孔質支持体の肉厚が薄いほど大きな透過流束が得られるとされていた(第25回ゼオライト研究発表会「講演予講集」第56頁、2009年11月)。
支持体の細孔分布を表す指標が、上記した特定の値である支持体を用いることにより、支持体の気孔率、平均細孔径、厚さ(肉厚)を変えることなく、高い透過流束をもつゼオライト膜複合体を提供し得る。
指標(1)または指標(2)が上記の値を満たす支持体を得る手段は特に限定されるものではないが、例えば支持体の製造条件を調整することにより、細孔分布の狭い支持体を製造する方法や、支持体の表面層を研磨などの方法によって除去する方法などが挙げられる。
支持体の表面層を研磨などの方法によって除去する方法では、セラミックス支持体表面の緻密な層を研磨等により除去することにより、支持体の細孔径の分布を小さくしている
。分離膜等に用いられる多孔質支持体―ゼオライト膜複合体の多孔性支持体は、通常、セラミックス支持体である。セラミックス支持体は、押出成形によって成型した後、焼成することにより製造される。そのため、表面の気孔率が内部より小さく、すなわち表面が内部より緻密になる傾向がある。したがって、無機セラミックスの表面の緻密な層を研磨等により除去することにより、支持体の細孔径の分布を小さくすることができる。
支持体表面の研磨方法はとくに限定されないが、例えば、紙やすりや、布やすり、研磨ペーストなどを用いて研磨する方法が挙げられる。紙やすりや布やすりで研磨する方法としては、これらのやすりを人力あるいは機械によって支持体に押し付けながら支持体ないしは押さえつけている箇所を移動させることで行う。
紙やすりや布やすりの砥粒の材質は特に限定されないが炭化ケイ素(SiC)が好ましい。
いずれの研磨方法を用いた場合も、膜複合体の作製以前に研磨した支持体を洗浄して乾燥させることが望ましい。洗浄の方法としては流水による洗浄、超音波洗浄機による洗浄が挙げられる。洗浄をしないと研磨によって生じた微粉が多孔質支持体の細孔に詰まり、透過流束を低下させる一因となることがある。
表面粗度(Ra)を1.2以下とする研磨以外の方法としては、酸によって支持体の表面を溶かす方法やアルカリによって支持体の表面を溶かす方法などが挙げられる。
なお、表面粗度(Ra)の測定法としては、特に限定されるものではないが、表面粗さ計を用いた測定法のような接触型の測定方法や、レーザー顕微鏡を用いた測定法のような非接触型の測定方法があり、通常、表面粗さ計を用いた測定法が用いられる。表面粗さ計を用いた表面粗度(Ra)の測定法の詳細は実施例において述べる。
本発明においては、前記多孔質支持体上にゼオライト膜を形成させ、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体とする。
本発明において、膜を構成するゼオライトとしては、具体的にはケイ酸塩とリン酸塩が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が、リン酸塩としては、アルミニウムと燐からな
るアルミノリン酸塩(ALPO−5などのALPOと称されるもの)、ケイ素とアルミニウムと燐からなるシリコアルミノリン酸塩(SAPO−34などのSAPOと称されるもの)、Feなどの元素を含むFAPO−5などのMeAPOと称されるメタロアルミノリ
ン酸塩、等が挙げられる。これらの中で、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩がより好ましい。
なお、本発明におけるSiO2/Al2O3モル比は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られた数値である。数ミクロンの膜のみの情報を得るために通常はX線の加速電圧を10kVで測定する。
CHA、EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、PAU、RHO、RTH、SOD、STI、TOL、UFIなどが挙げられる。
酸素n員環構造はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、6員環よりも小さいゼオライトではH2O分子のKinetic半径よりも細孔径が小さくなるため透過流束が小さくなり実用的でない場合がある。また、酸素10員環構造よりも大きい場合は細孔径が大きくなり、サイズの小さな有機物では分離性能が低下することがあり、用途が限定的になる場合がある。
ゼオライトのフレームワーク密度(T/1000Å3)は特に制限されないが、通常17以下、好ましくは16以下、より好ましくは15.5以下、特に好ましくは、15以下であり、通常10以上、好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。
一方でフレームワーク密度が小さすぎるとゼオライトの骨格構造が脆弱となり、結晶構造が壊れやすくなるため通常10以上であることが望ましい。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition
2001 ELSEVIERに示されている。
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、水銀圧入法による細孔分布測定により求められ、下記式(2):
(logD5−logD95)/logD50 (2)
(式中、D5、D50およびD95は、それぞれ、大きい細孔から積算した細孔容積の合計量が、全細孔容積の5%になるときの細孔径、全細孔容積の50%になるときの細孔径
および全細孔容積の95%になるときの細孔径を示す。logは常用対数を表す。)により算出される、多孔質支持体―ゼオライト膜複合体の細孔分布を表す指標が7以下である。
式(2)の値は、前記支持体の細孔分布を表す指標と同じであり、この値が小さくなるほど、ゼオライト膜複合体の細孔分布は均一となる。細孔分布が均一であることの効果は、支持体における上記効果と同じである。ゼオライト膜複合体の細孔分布が大きい場合、様々な形状の流路が存在するため流体の拡散に不利となり透過流束が小さくなる。
また、本発明のゼオライト膜複合体の細孔分布を表す指標として、上記式(2)で求められる指標を用いる。前記した支持体の細孔分布を表す指標について述べたように、式(2)で求められる指標の方が、細孔分布の状態をより正確に表現しているためである。
8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであることが好ましい。
ここで、ピークの強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表
されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)でいえば、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
ークの強度の4倍以上の大きさであることが好ましい。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で
表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)でいえば、通常4以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
また、X線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
(1,0,0)面由来のピークの強度と(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによれば2.5である。
そのため、この比が0.5以上であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
CHA型ゼオライト結晶が配向して成長している緻密なゼオライト膜は、次に述べる通り、オライト膜を水熱合成により形成する際に、例えば、特定の有機テンプレートを用い、水性反応混合物中にK+イオンを共存させることにより達成することができる。
本発明において、ゼオライト膜の製造方法は、ゼオライトを含む膜が形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、(1)多孔質支持体にゼオライトを膜状に結晶化させる方法、(2)多孔質支持体にゼオライトを無機バインダー、あるいは有機バインダーなどで固着させる方法、(3)ゼオライトを分散させたポリマーを固着させる方法、(4)ゼオライトのスラリーを多孔質支持体に含浸させ、場合によっては吸引させることによりゼオライトを多孔質支持体に固着させる方法などの何れの方法も用いることができる。
具体的には、例えば、組成を調整して均一化した水性反応混合物を、多孔質支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱すればよい。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができるが、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性が向上する。
ゼオライトがCHA型の場合、有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンを有機テンプレートとしたとき、緻密な膜を形成し得るCHA型ゼオライトが結晶化する。また、膜が水を選択的に透過するのに十分な親水性を有するCHA型ゼオライトが生成し得るほか、耐酸性に優れたCHA型ゼオライトが得られる。
その他の有機テンプレートとしては、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキル基は、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で、最も好ましい化合物は、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。また、このカチオンが伴うアニオンは上記と同様である。
アルカリの種類は特に限定されず、通常、Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Baなどが用いられる。これらの中で、Na、Kが好ましく、Kがより好ましい。
また、アルカリは2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとKを併用するのが
好ましい。
SiO2/Al2O3比は特に限定されないが、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上である。また、通常10000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは100以下である。
特に、SiO2/Al2O3比がこの範囲にあるとき、緻密な膜を形成し得るCHA型ゼオライトを結晶化させることができる。また、膜が水を選択的に透過するのに十分な親水性を有するCHA型ゼオライトが生成し得るほか耐酸性に優れたCHA型ゼオライトが得られる。
このモル比が上記範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、生成したゼオライトが耐酸性に強くAlが脱離しにくい。また、この条件において、特に緻密で耐酸性のCHA型ゼオライトを形成させることができる。
CHA型ゼオライト膜を形成する場合、アルカリ金属の中でKを含む場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。その場合のKと、Kを含むすべてのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とのモル比は通常0.01以上1以下、好ましくは0.1以上1以下、さらに好ましくは0.3以上1以下である。
通常10以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得る。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが細かい結晶が生成して緻密な膜ができやすい傾向にある。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。ゼオライト膜複合体を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
種結晶の粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。粒径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常20μm以下、好ましくは、15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材1m2あたりの質量
で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下である。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
反応時間が長すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
上、更に好ましくは480℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下、特に好ましくは750℃以下である。焼成温度が低すぎると有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離濃縮の際の透過流束が減少する可能性がある。焼成温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなることがある。
上限は特に限定されず、例えば、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内、最も好ましくは24時間以内である。焼成は空気雰囲気で行えばよいが、酸素を付加した雰囲気で行ってもよい。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
かくして得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(加熱処理後のゼオライト膜複合体)の空気透過量[L/(m2・h)]は、通常1400L/(m2・h)以下、好ましくは1000L/(m2・h)以下、より好ましくは700L/(m2・h)以下、より好ましくは600L/(m2・h)以下、さらに好ましくは500L/(m2・h)以下、特に好ましくは300L/(m2・h)以下、もっとも好ましくは200L/(m2・h)以下である。透過量の下限は特に限定されないが、通常0.01L/(m2・h)以上、好ましくは0.1L/(m2・h)以上、より好ましくは1L/(m2・h)以上である。
本発明のゼオライト膜複合体は、上記のとおり優れた特性をもつものであり、本発明の分離方法における膜分離手段として好適に用いることができる。
本発明の分離方法は、有機物を含む気体または液体の混合物を、前記多孔質支持体―ゼオライト膜複合体に接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離する
ことに特徴を有するものである。この発明において、多孔質支持体―ゼオライト膜複合体は、前記と同様のものが用いられる。また、好ましいものも前記と同様である。
前記多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を分離膜として用いることにより、実用上も十分な処理量をもち、十分な分離性能をもつ膜分離が可能となる。
ここで、十分な処理量とは、膜を透過する物質の透過流束が1kg/(m2・h)以上であることをいう。また十分な分離の性能とは、次式で表される分離係数が100以上であること、あるいは透過液中の主成分の濃度が95質量%以上であることをいう。
[ここで、Pαは透過液中の主成分の質量パーセント濃度示し、Pβは透過液中の副成分
の質量パーセント濃度を示し、Fαは透過液において主成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度を示し、Fβは透過液において副成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度を示す。]
さらに具体的には、透過流束は、例えば、含水率30質量%の2−プロパノールと水の混合物を70℃において、1気圧(1.01×105Pa)の圧力差で透過させた場合、1kg/(m2・h)以上、好ましくは3kg/(m2・h)以上、より好ましくは、5kg/(m2・h)以上であることをいう。透過流束の上限は特に限定されず、通常20kg/(m2・h)以下、好ましくは15kg/(m2・h)以下である。
)の場合、混合物中の含水率は、通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
本発明の分離方法では、ゼオライト膜を透過する物質は、通常水であるため、含水率が少なくなると処理量が低下するため効率的でない。また含水率が多すぎると濃縮に必要な膜が大面積となり(膜が管状に形成されている場合は数が多くなり)経済的な効果が小さくなる。
さらに、ゼオライト膜複合体によって水が分離された含水有機化合物から、さらに水を分離してもよい。これにより、より高度に水を分離し、含水有機化合物をさらに高度に濃縮することができる。
また、有機酸以外の有機物と水との混合物から有機物と水を分離する場合の有機物は炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数が3以上であることがより好ましい。
これら有機酸の有機物の中では、特にアルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、アミドから選ばれる少なくとも一種を含有する有機化合物が望ましい。これら有機化合物の中で、炭素数が2から10のものが好ましく、炭素数が3から8のものがより好ましい。
前記含水混合物としては、水とフェノールの混合物のように、共沸混合物を形成する混合物でもよく、共沸混合物を形成する混合物の分離においては、水を選択的にかつ、効率よく分離可能な面で好ましい。
ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのオレフィン−極性モノマー共重合体、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂;尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;天然ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのブタジエン共重合体等のゴム等が挙げられる。また界面活性剤としては、それ自体既知のものを用いればよい。
本発明の分離方法は、前記ゼオライト膜複合体を用いて、適当な分離装置を作製し、それに有機化合物を含む気体または液体の混合物を導入することにより行えばよい。これら分離装置は、それ自体既知の部材により作製することができる。
なお、以下の実施例及び比較例において、物性や分離性能等の測定は、次のとおり行った。
(1)表面粗度の測定
多孔質支持体の表面粗度(Ra)は、東京精密社製の表面粗さ計SURFCOM 1400Dを用いて、以下の条件で測定した。
算出規格:JIS‘94規格
測定長さ:4mm
カットオフ波長:0.8mm
測定倍率:×5000
多孔質支持体、およびゼオライト膜複合体の細孔分布は、マイクロメリテックス社製のオートポアIV 9520型を用いて、減圧下(50μmHg以下)で10分間減圧処理を施した後、0.53psia(細孔径404μm相当)から60000psia(細孔径0.0036μm相当)までの水銀圧入法圧入曲線を測定することにより求めた。
また得られたD5、D50、D95の常用対数を求め、細孔分布を表す指標(2)(logD5−logD95)/logD50を算出した。
ゼオライト膜のXRD測定を、以下の条件で行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE 7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
SEM測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4100
・加速電圧:10kV
(5)空気透過量
ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、密閉状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターで空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m2・h)]とした。マスフローメーターとしてはKOFLOC社製8300、N2ガス用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)
を用いた。KOFLOC社製8300においてマスフローメーターの表示が10ml/m
in(20℃、1気圧換算)以下であるときはLintec社製MM−2100M、Airガス用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
ゼオライト膜のSEM−EDX測定を、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
パーベーパレーション法に用いた装置の概略図を図1に示す。図1において、ゼオライト膜複合体5は真空ポンプ9によって内側が減圧され、被分離液4が接触している外側と圧力差が約1気圧になっている。この圧力差によって被分離液4中透過物質の水がゼオライト膜複合体5に浸透気化して透過する。透過した物質はトラップ7で捕集される。一方、被分離液4中の有機化合物は、ゼオライト膜複合体5の外側に滞留する。
の組成分析を行い、それらの値を用いて各時間の分離係数、透過流束、水のパーミエンスなどを前記のとおり算出した。なお、組成分析はガスクロマトグラフにより行った。透過開始から約5時間程度で透過流束や分離係数が安定してくるので、結果は、特に明記しない限り、5時間後の値である。
多孔質支持体上にゼオライト膜を、水熱合成法により形成することにより多孔質支持体―ゼオライト膜複合体を作製し、その分離性能を測定した。
(多孔質支持体の準備)
ニッカトー社製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を、80mmの長さに切断した後、外表面を#1000の紙やすりを用いて表面粗度(Ra)が1.0となるまで研磨した。研磨後の支持体の厚みは1.4mmであった。
水銀圧入法による細孔分布測定により得られた多孔質支持体1の水銀圧入法圧入曲線を図2に示す。多孔質支持体1の全細孔容積は0.252ml/g、D50は1.63μm、D5は8.41μm、D95は0.68μm、(D5−D95)/D50は4.75、(logD5−logD95)/logD50は5.16であった。
水熱合成用の反応混合物として以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液10.5gと1mol/L−KOH水溶液7.0gと水100.4gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH25質量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用の反応混合物とした。
この反応混合物の組成(モル比)は、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.04、SiO2/Al2O3=15であった。
多孔質支持体へのゼオライト膜形成に先立ち、以下の通り、多孔質支持体1に種結晶を付着させた。
種結晶として、TMADAOH水溶液(TMADAOH25質量%含有、セイケム社製)を用いて、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.1のゲル組成で、160℃、2日間水熱合成をして結晶化させたものを、ろ過、水洗、乾燥して得られたCHA型ゼオライトを用いた。この種結晶の粒径は2μm程度であった。
この種結晶を3質量%水中に分散させたものに、上記多孔質支持体1を所定時間浸した後、100℃で5時間以上乾燥させて種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は1g/m2であった。
種結晶を付着させた多孔質支持体1を、上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、静置状態で、160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後、100℃で5時間以上乾燥させ
た。
水銀圧入法による細孔分布測定により得られた多孔質支持体―ゼオライト膜複合体1の水銀圧入法圧入曲線から得られた細孔分布を表す指標(2) logD5−logD95)/logD50 は4.01であった。
生成したゼオライト膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。
XRDパターンから、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=1.4であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXRDに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
短冊状に切断したゼオライト膜複合体1をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していることが分かった。
SEM−EDXにより測定した、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。
上記で作製した多孔質支持体−ゼオライト膜複合体1を用いて、パーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50質量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
その結果、透過流束は5.8kg/(m2・h)、分離係数は700、透過液中の水の濃度は99.86質量%であった。水のパーミエンスは3.6×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。
使用する紙やすりを#800として、湿式で研磨し、表面粗度(Ra)が1.3となるまで滑らかにした以外は、実施例1と同様の材料と方法で、多孔質支持体2を準備した。研磨後の多孔質支持体2の厚みは1.4mmであった。
水銀圧入法による細孔分布測定により得られた多孔質支持体2の水銀圧入法圧入曲線を図2に示す。多孔質支持体2の全細孔容積は0.263ml/g、D50は1.72μm、D5は72.39μm、D95は0.70μm、(D5−D95)/D50は41.57、(logD5−logD95)/logD50は8.50であった。
m2・h)であった。水銀圧入法による細孔分布測定により得られた多孔質支持体―ゼオ
ライト膜複合体2の水銀圧入法圧入曲線から得られた細孔分布を表す指標(2)、 (logD5−logD95)/logD50 は12.97であった。
XRDパターンから、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=2.1であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXRDに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
その結果、透過流束は4.0kg/(m2・h)、分離係数は600、透過液中の水の濃度は99.83質量%であった。水のパーミエンスは、2.6×10−6mol/(m2・s・Pa)であった。
ゼオライト膜の質量は実施例1の多孔質支持体1とほぼ同じでありゼオライト膜の厚さもほぼ同じだと考えられるが、(logD5−logD95)/logD50が7以上であり、実施例1に比べ細孔分布が広いものである。比較例1では、細孔分布が広い支持体を使用したために支持体の厚さやゼオライト膜の厚さが同じでも透過流束が低いと考えられる。
2 湯浴
3 撹拌子
4 被分離液
5 多孔質支持体―ゼオライト膜複合体
6 ピラニゲージ
7 透過液捕集用トラップ
8 コールドトラップ
9 真空ポンプ
Claims (5)
- 無機多孔質支持体上にゼオライト膜を形成してなる無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、無機多孔質支持体の平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、表面粗度(Ra)が0.4以上、1.2以下であり、ゼオライト膜を構成するゼオライトは、SiO 2 /Al 2 O 3 モル比が5以上であり、酸素6〜8員環構造を有するゼオライトを含む、
ことを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。 - 透過流束が1kg/(m2・h)以上である、請求項1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
- 無機多孔質支持体上にゼオライト膜を形成してなる無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法であって、平均厚さが0.1mm以上7mm以下であり、表面粗度(Ra)が0.4以上、1.2以下である無機多孔質支持体上に、水熱合成により、SiO 2 /Al 2 O 3 モル比が5以上であり、酸素6〜8員環構造を有するゼオライトを膜状に結晶化させることを特徴する、無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
- 水熱合成に用いる水性反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比(SiO2/Al2O3モル比)が5以上である、請求項3に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
- ゼオライト膜を構成するゼオライトが酸素8員環構造を有するゼオライトを含む、請求項3または4に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
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