JP4841388B2 - 分離膜用アルミナ質基体管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
従来の技術では精密に整粒された電融アルミナを使用することが多いが、コストが高くなるという欠点があり、また高い透水量を有する基体管は、気孔径や気孔率が高い反面、基体管の表面の状態が悪く、製膜性に劣ったり、濾過を行う際に目詰まりが発生する等の欠点があった。しかしながら、本発明によれば、安価なアルミナ原料粉体を粉砕、分散させ、ある特定の範囲内の粒度分布に調整し、アルミナ純度をある特定の範囲内とした粉体を用いて、ある特定の範囲内の坏土かたさに調整することにより、気孔径及び気孔率が高く、基体管の表面が滑らかで、高い濾過能力を有する分離膜用アルミナ質基体管が得られるのである。
本発明でいう無機分離膜用アルミナ質基体管として優れた特性とは、高い気体透過性及び透水性を有し、曲げ強さ等の機械的特性に優れ、耐食性に優れることを言う。また、良好な製膜性とは製膜した膜表面にクラックやピンホールがなく、滑らかな表面状態を実現できることを言う。
本発明の第2は、(f)外径Φ12mm、内径Φ9mm、長さ100mmのチューブを用いて、25℃のイオン交換水を液圧1kgf/cm2で透水させた時の純水透過流速が50m3/m2/day以上である請求項1記載の分離膜用アルミナ質基体管に関する。
本発明の第3は、Al2O3含有量が99重量%以上であるアルミナ結晶粒子、SiO 2 、及び、珪石、長石、粘土よりなる群から選ばれた少なくとも1種の添加剤を用いて、Al2O3含有量を83〜94重量%となるように配合・混合し、平均粒子径が4〜12μm、粒度分布変動係数が40〜60の範囲になるように粉砕・乾燥し、ついで少なくともバインダー及び水を添加し、場合によっては気孔形成剤を添加し、ゴム硬度計による坏土のかたさが30〜60の範囲になるように混合・混練し、押出成形した後1200〜1500℃で焼成することを特徴とする請求項1〜2いずれか記載の分離膜用アルミナ質基体管の製造方法に関する。
本発明の分離膜用アルミナ質基体管においては、Al2O3を83〜94重量%、好ましくは85〜92重量%含有していることが必要である。Al2O3含有量が83重量%未満の場合は、アルミナ結晶粒子界面にガラス相が多くなったり、第2相が析出しやすくなり、機械的特性や耐食性の低下をきたすので好ましくない。Al2O3含有量が94重量%を超えるとAl2O3以外の成分量が少なくなり、アルミナ結晶粒子界面のガラス相の量が少なくなって焼結性が低下し、曲げ強さなどの機械的特性の低下原因となるので好ましくない。
尚、本発明においてはSiO2の含有量(ホ)が5〜14重量%、とくに6〜12重量%であることが好ましい。またアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物(珪石、長石、粘土などが、この供給源である)の含有量(へ)が1〜4重量%であることが好ましい。SiO2含有量が5%未満の場合は、SiO2とアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物が反応して形成するガラス相量が低下し、焼結性が低下するため好ましくない。SiO2含有量が14重量%を超える場合は、上記Al2O3の含有量が低下し、耐食性が低下するため好ましくない。また、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物量が1重量%を下回ると、SiO2と形成するガラス相量が低下するため好ましくなく、4重量%を超える場合は逆にガラス相量が増加し、Al2O3の結晶粒界のガラス相量が多くなり、気孔を消滅させてしまうため、気孔径が小さくなったり、透水量が低下するため好ましくなく、また耐食性の低下につながるため好ましくない。
本発明の分離膜用アルミナ質基体管においては、バブルポイント法で測定した貫通モード径が0.3〜0.8μm、好ましくは0.5〜0.8μmであることが必要である。なお、貫通モード径とは、貫通している気孔径の中の最大頻度径を指す。本発明においては、ASTM F316−70に準拠し、媒体としてフッ素系不活性溶液を用いて測定する。バブルポイント法で測定した貫通モード径が0.3μm以下の場合は、フィルターとしての濾過精度は向上するが、透水量の低下をきたすので好ましくない。また0.8μmを超える場合は、透水量が向上する反面、気孔径の増大に伴い、基体管表面が粗くなったり、曲げ強さなどの機械的特性に低下をきたすので好ましくない。
本発明の分離膜用アルミナ質基体管においては、最大細孔径が1〜2μm以下、好ましくは1〜1.5μmである。最大細孔径が2μmを超える場合は、透水量は高くなるが、濾過精度の低下をきたし、濾過による浄化や分離が不十分となるので、好ましくない。また1μm以下の場合は、気孔径分布が狭くなり、濾過精度は向上するが、透水量が低下するため好ましくない。
本発明の分離膜用アルミナ質基体管において、水銀圧入法により測定した気孔径が1μm未満の場合は、製膜時の種結晶が均一に塗布されず、膜厚の不均一性が生じるので好ましくない。また、3μmを越える場合、基体管表面の気孔に種結晶が入りすぎてしまい、製膜後の膜の不均一性の低下や、膜表面にピンホールの発生などが起こるので好ましくない。
尚、水銀圧入法はJIS R 1655に準拠するが、測定条件の規定はなく、試料室にサンプルを入れて、水銀を気孔の中に入れていき、水銀が入ったときの圧力から気孔径を計算するものである。
本発明の分離膜用アルミナ質基体管において、セラミックフィルターとしての気孔率が35%以上、好ましくは40%以上であることが必要である。気孔率が35%以下の場合は、貫通気孔量が低下し、透水能力が低下するので好ましくない。尚、気孔率の測定はアルキメデス法(JIS R 1634に準拠)により行う。気孔率の上限は60%程度である。
本発明の分離膜用アルミナ質基体管において、セラミックフィルターの表面粗さが、1.5μm以下、好ましくは1.2μm以下であることが必要である。本発明においては、表面粗さはJIS B 0601−1994に準拠し、レーザー顕微鏡を用いて測定する。従来の表面粗さは線上表面の粗さを計測した度数であるが、本発明で言う表面粗さとは、100μm×100μmの面積の表面粗さを求めたものである。これにより、線上の表面粗さよりも、測定領域を広げることにより、より正確な表面粗さを求めることができる。また、表面粗さは基体管の表面の滑らかを示す度数であるが、本発明では、表面粗さが、基体管への製膜性や濾過精度に影響を与える。例えば上記のゼオライト膜の他に、アルミナ等の膜を形成させる場合に、アルミナ粉体を分散させたスラリーをディップコーティングするが、基体管表面の表面粗さを適切な範囲内にすることで、ピンホール等の欠陥がなく、均一で密着性の高い膜を形成することができる。表面粗さが1.5μmを超える場合は、基体管表面の凹凸が大きくなり、製膜性の低下、目詰まりの原因や濾過精度が低下するため好ましくない。下限は0.3μm程度である。
本発明において、外径Φ12mm、内径Φ9mm、長さ100mmのチューブを用いて、25℃のイオン交換水を液圧1kgf/cm2で透水させた時の純水透過流速が50m3/m2/day以上、好ましくは60m3/m2/day以上有することが必要である。純水透過流速が50m3/m2/day未満の場合は、透水能力が低くなり、好ましくない。
尚、本発明では純水透過流速は外径Φ12mm、内径Φ9mm、長さ100mmのチューブをサンプルに用いて、25℃のイオン交換水により1kgf/cm2の液圧をかけた時の時間当たりの透水量とチューブの表面積から下式より求めたものである。
以上のことから、本発明の分離膜用アルミナ質基体管は、様々な被濾過物に広く対応可能である。
純度が99.6重量%のアルミナ原料粉体に、珪石、長石及び粘土を用いてSiO2含有量が表1の組成となるように配合し、水を用いて湿式で粉砕・分散させ、乾燥した。乾燥した粉体の平均粒子径及び粒度分布変動係数を表1に示す。尚、実施例5は細かい原料と粗い原料を粉砕・分散後に1:1の比率で混合したもので、比較例5には細かい原料と粗い原料を2:8の比率で混合したものである。また、比較例6には従来の整粒された電融アルミナを使用した。これらの粉体にバインダーとしてメチルセルロースと水とを混合・混練し、押出成形用の坏土を得た。得られた坏土はゴム硬度計(株式会社テクロック製 GS−701N)にて、かたさを測定した。測定結果を表1に示す。作製した押出成形用坏土を用いて、チューブを押出成形し、得られた成形体を1180〜1620℃で焼成して、外径Φ12mm、内径Φ9mm、長さ100mmの基体管を得た。
得られた基体管の特性を表2に示す。
Claims (3)
- (a)Al2O3の含有量が83〜94重量%、SiO 2 の含有量が5〜14重量%、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物の含有量が1〜4重量%からなり、
(b)バブルポイント法で測定した貫通モード径が0.3〜0.8μm、(c)最大細孔径が1〜2μm、(d)その気孔率が35%以上、(e)表面粗さが1.5μm以下であることを特徴とする分離膜用アルミナ質基体管。 - (f)外径Φ12mm、内径Φ9mm、長さ100mmのチューブを用いて、25℃のイオン交換水を液圧1kgf/cm2で透水させた時の純水透過流速が50m3/m2/day以上である請求項1記載の分離膜用アルミナ質基体管。
- Al2O3含有量が99重量%以上であるアルミナ結晶粒子、SiO 2 、及び、珪石、長石、粘土よりなる群から選ばれた少なくとも1種の添加剤を用いて、Al2O3含有量を83〜94重量%となるように配合・混合し、平均粒子径(イ)が4〜12μm、粒度分布変動係数(ロ)が40〜60の範囲になるように粉砕・乾燥し、ついで少なくともバインダー及び水を添加し、ゴム硬度計による坏土のかたさ(ハ)が30〜60の範囲になるように混合・混練し、これを押出成形した後、焼成温度(ニ)1200〜1500℃で焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載の分離膜用アルミナ質基体管の製造方法。
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