JP5051816B2 - フィリップサイト型ゼオライト複合膜及びその製造方法 - Google Patents

フィリップサイト型ゼオライト複合膜及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、ゼオライト膜に関するものであり、更に詳しくは、そのゼオライトがPHIllipsite(フィリップサイト、PHI:英文字3文字で表記)であることを特徴とするフィリップサイト型ゼオライト膜、その製造方法及び用途に関するものである。
ゼオライトは、規則的に配列したミクロ孔を有し、一般に、耐熱性が高く、化学的にも安定なものが数多く得られることから、様々な分野で利用されている。このゼオライトは、その骨格構造が、Siの一部がAlに置換したアルミノシリケートであり、分子オーダー(3−10Å程度)の細孔を有し、立体選択的な吸着作用を持つことより、モレキュラーシーブ(分子ふるい)としての機能を有する。数十種類の天然に産出するゼオライトの他に、これまでに、150種類以上のゼオライトが合成されており、固体酸触媒、分離吸着剤、及びイオン交換剤等の分野で幅広く用いられている。
このゼオライトは、可塑性に乏しいため、膜化する場合、ほとんどの場合は水熱合成法により、基板上にゼオライト膜を合成している。すなわち、大量の水とアルミニウム源、シリカ源、アルカリ金属、アミン類等の有機結晶化調整剤を適宜目的の生成物のゼオライト組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器にそれらを封じ込めて、アルミナやムライト等の多孔質基板やチューブを共存させて加熱することにより、それらの基板上にゼオライト膜を合成している。
これまでに、例えば、MFI、MEL、LTA、ANA、CHA、FAU、SOD、MOR、ERI、BEA、LTL、DDRといったゼオライト膜が合成されており、それぞれのゼオライトの性質(例えば、細孔径・親和性)から、分離対象を適宜選択している。また、先行文献には、ゼオライト種結晶を塗布した後、更に、水熱合成することにより欠陥のないゼオライト膜を合成する方法が開示されており(特許文献1)、また、これらの手法で合成されたゼオライト膜は、気体又は液体混合物からの分離・濃縮等に利用されることが開示されている(特許文献2)。
近年、ゼオライト膜の合成技術の向上により、蒸溜法に代る分離法として実用化された例として、A型ゼオライトの親水性を利用したアルコール水溶液からの水選択透過による、アルコールの濃縮方法等がある(特許文献3)。このA型ゼオライトは、耐酸性が、他の高シリカ型ゼオライトと比較して劣るため(酸と接触するとその構造が破壊される)、酸性の混合物と水の分離には使用することが困難であるという課題があった。そこで、T型ゼオライト(特許文献4)、モルデナイトやシリカライト等の高シリカ型ゼオライト膜による分離・濃縮が提案されている。
支持体上にゼオライト結晶膜を形成する場合、従来の種結晶法では、擦り付けあるいは浸漬等の方法により、支持体表面に種を付与し、その後に水熱合成によりゼオライト結晶膜を製膜する。この際、種の付与の不均一や、付与量の不適切を完全に抑制することは困難であり、更には振動や摩擦により支持体表面に付与された種結晶の脱離も起こりやすい。この結果、水熱合成後の結晶膜に欠陥が生じやすく、分離性能の低下や製膜収率の低下が生じるという問題があった。
特開2003−159518号公報 特開2003−144871号公報 特許第3431973号明細書 特開2000−042387号公報
このような状況下にあって、本発明者らは、これまでに実用化の報告がされていないPHI(フィリップサイト:酸素8員環構造を有し、3.8×3.8Å:[100], 3.0×4.3Å[010], 3.3×3.2Å[001]の細孔径)膜に着目した。本発明は、従来、合成された例がない、高耐酸性を有する親水性PHIゼオライト膜を高い成膜収率で合成し、高い透過流束を有する膜として提供することを目的とする。本発明によると、PHIゼオライト膜を合成するにあたり、通常の二次成長による製膜のために必要な種結晶の擦り付けや浸漬による基板への担持を行うことなく、1回の水熱処理により、基板上にゼオライト結晶膜を製膜することが可能である。更に、本発明は、気体又は液体混合物からの分離・濃縮と同時に、反応を行える触媒膜として使用できるゼオライト膜を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、高製膜収率及び高実用性のPHI膜を開発すべく鋭意検討を行った結果、有機高分子とゼオライト微粒子よりなる中空円筒状の多孔質支持体を予め形成し、そこに新たに種を付与するという操作を行うことなく、水熱合成を施すことにより、極めて高い収率で、しかも簡便に、結晶完全性の高いPHIゼオライト結晶膜を有する複合膜を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)有機高分子とゼオライト微粒子よりなる多孔質層を有する、中空円筒状の多孔質支持体の表面に、フィリップサイト(PHI)型ゼオライトの結晶層よりなるゼオライト膜が形成されていることを特徴とする複合膜。
(2)ゼオライト微粒子がフィリップサイト(PHI)型又はフォージャサイト(FAU)型のゼオライト微粒子であることを特徴とする、上記(1)に記載の複合膜。
(3)有機高分子が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリジメチルシロキサンよりなる群から選ばれたものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の複合膜。
(4)有機高分子とゼオライト微粒子よりなる多孔質層を有する、中空円筒状の多孔質支持体を、フィリップサイト(PHI)型ゼオライトの構成物質を含む原料合成液に接触させ、水熱合成を施すことにより、多孔質支持体の内表面及び外表面の少なくとも一方の表面にフィリップサイト(PHI)型ゼオライト結晶層を形成することを特徴とする複合膜の製造方法。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)現在までに報告されていないPHI膜を多孔質支持体上に合成した高耐酸性の特性を有する親水性PHIゼオライト膜を提供できる。
(2)高耐酸性の特性を有する親水性ゼオライト膜の合成方法を提供できる。
(3)本発明のPHIゼオライト膜は、例えば、耐酸性の脱水膜、分離膜、分離と反応を同時に行えるメンブレンリアクター、触媒膜等として利用できる。
(4)本発明のPHIゼオライト膜は、高い水分離性能を有し、酸性条件下での分離膜として好適に使用することができる。
(5)脱水精製プロセス、蒸留プロセスにPHIゼオライト膜による分離手段を併用することにより、熱源や設備の省コスト化が実現できる。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の複合膜は、有機高分子とゼオライト微粒子よりなる中空円筒状の多孔質支持体の、外表面及び内表面の少なくとも一方の表面に、PHIゼオライト結晶層が形成された構造である。本発明の多孔質支持体にゼオライト結晶層を製膜するためには、新たに種結晶を擦り付け等により担持させることなく、オートクレーブ中に移し、水熱合成法により多孔質支持体の表面から直接ゼオライト結晶を二次成長させることにより、極めて簡単にPHI結晶層を製膜することができる。
多孔質支持体の原料となるゼオライト微粒子は、予め水熱合成により合成したPHIゼオライト結晶の微粒子が好ましく用いられるが、FAUゼオライト結晶の微粒子あるいはこれらの混合物も原料として好適である。ゼオライト微粒子の寸法は、多孔質支持体内での均一分散性、機械的強度の観点から、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上、5μm以下である。
多孔質支持体の原料となる有機高分子は、製膜の際の水熱合成の条件で融解しないものとして、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリジメチルシロキサン等が例示される。
多孔質支持体に占めるゼオライト微粒子の有機高分子に対する重量比は、特に定める必要はないが、多孔質支持体の機械的強度の観点から、90%未満であることが望ましい。
水熱合成時に欠陥のないゼオライト結晶膜を形成するという観点から、ゼオライト結晶膜が形成される多孔質支持体の表面には、水熱合成を施す前の状態で、表面の1%以上の面積を、原料であるゼオライト微粒子が占めていることが望ましい。ゼオライト微粒子が表面を占める面積の割合に上限はない。ゼオライト微粒子は、多孔質支持体の全体に均一に分散していても良いし、表面のみに偏在していても構わない。
本発明の複合膜に用いられる中空円筒状の多孔質支持体の空孔率は、複合膜の透過流束の観点から10%以上、機械的強度の観点から95%以下が好ましい。より好ましくは30%以上90%以下、最も好ましくは40%以上90%以下である。
多孔質支持体の細孔径は、分離膜として使用する際に、分離する分子の移動が阻害され、透過流束が減少しない大きさが必要である。具体的には、細孔径は、透過流束の観点から、2nm以上、水熱合成時のゼオライト結晶膜を均一にするという観点から、2μm以下であることが好ましい。より好ましくは5nm以上、1μm以下である。
本発明に用いられる多孔質支持体は、中空円筒状即ち、中空糸状、管状であり、さらにレンコン状、ハニカム状の形状のものも含まれる。多孔質支持体の大きさは特に限定されないが、例えば中空糸状並びに管状の場合、外径は0.5mmから10cmの範囲が好ましく、壁の厚さは、0.05mmから2cmの範囲が好ましい。
本発明に用いられる多孔質支持体の製造方法は特に限定しないが、湿式紡糸による方法が好ましい。米国特許第4222977号明細書、特開昭62−52185号公報には、有機ポリマーと無機微粒子の混合物よりなる中空糸を湿式紡糸によって得る方法が開示されている。本発明に用いる多孔質支持体は、この方法に従い、無機微粒子としてゼオライト微粒子を用いて、湿式紡糸により得られる多孔質の中空円筒状支持体を用いることが望ましい。
湿式紡糸以外の方法による、有機ポリマーとゼオライト微粒子とよりなる多孔質支持体も、本発明における多孔質支持体として用いることができる。例えば特開平11−100283号公報には、射出成形により有機ポリマーとセラミック粒子よりなる多孔体を得る方法が開示されている。この方法に従ってセラミック粒子の代わりにゼオライト微粒子を添加することによって、本発明に用いる多孔質支持体を得ることもできる。
更にアルミナ、ムライト、ジルコニア等のセラミックス、ステンレス、アルミニウム等の金属、よりなる無機多孔体の表面に、有機高分子とゼオライト微粒子よりなる多孔質層を形成したものも、本発明での多孔質支持体として用いることができる。
本発明において、多孔質支持体の原料となるゼオライト微粒子の合成条件としては、PHI型ゼオライトの構成物質を含む原料合成液を用いる。出発原料として、水及び水酸化カリウム(又は水酸化ナトリウム)、アルミナ、コロイダルシリカ等を用いて、0.5−3NaO(又はKO):Al:2−10SiO:20−300HOのモル組成(好ましくは、2−2.5NaO(又はKO):Al:4−5SiO:80−100HO)になるように出発原料を調製する。
このアルミナ源としては、市販の活性アルミナやベーマイト、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等適当なアルミナ原料であれば使用可能である。シリカ源としては、コロイダルシリカや水ガラス、市販粉末シリカ、ヒュームドシリカ、アルコキシド等適当なシリカ原料であれば使用可能である。アルカリ源としては、KOH、NaOH等が使用できる。この出発原料を、オートクレーブ等の圧力容器内に移し、80〜200℃で3時間以上、好ましくは100〜120℃では5〜7日間、150〜200℃では4〜12時間、水熱合成することによりPHI結晶よりなるゼオライト微粒子を得ることができる。こうして得られたゼオライト微粒子を本発明の多孔質支持体の原料として用いる。
本発明においては、水熱合成法により前述の多孔質支持体にゼオライトを製膜する。
本発明の多孔質支持体表面にPHIゼオライト結晶層を形成する条件としては、2−2.5KO(又はNaO):Al:2−4SiO:80−100HOのモル組成に調整した溶液中に多孔質支持体を接触させ、150〜200℃で3−20時間水熱合成処理を行うことで、多孔質支持体表面に存在するゼオライト微粒子を直接二次成長させて膜厚2〜100μm好ましくは膜厚5〜50μm程度の連続膜とすることができる。
PHIはその骨格構造から酸素8員環を有し(3.8×3.8Å:[100], 3.0×4.3Å[010], 3.3×3.2Å[001]:Atlas of Zeolite Framework Types, IZA,Ch.Baerlocher, W.M.Meier, D.H.Olson, ELSEVIER編)、Si/Al比=1.5前後であり親水性である。PHI膜は、その3次元細孔構造と比較的小さな細孔径を有することから、低分子ガス、例えば、COとCHの分離に好適に使用することが可能である。また、Si/Al比から親水性膜であることから、水/アルコール分離にも応用できるが、特に耐薬品性がLTAやFAU型ゼオライトに比較して優れていることから、例えば、酢酸濃縮等の分離プロセスへの応用が可能である。
本発明のフィリップサイト型ゼオライト複合膜は、高性能・高選択な液体及び気体分離膜に応用できる。特に、耐酸性の脱水膜として使用できる。また、分離と反応を同時に行える触媒膜、メンブレンリアクター等として利用できる。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(PHI型ゼオライト微粒子の作製)
イオン交換水99.0gにNaOH(和光純薬(株)製)1.53gを加えて、完全に溶解した。更に、この溶液にKOH(和光純薬(株)製)1.90gを加えて、完全に溶解するまで攪拌した。次に、アルミン酸ナトリウム(関東化学(株)製)12.6gを加えて、完全に溶解するまで攪拌した。この溶液を、CataloidSI−30(触媒化成(株)製、コロイダルシリカ、SiO:30wt%、HO:70wt%)67.0gに徐々に加えて均一なゲル溶液を得た。
このゲル溶液を室温にて約30分攪拌した後、テフロン(登録商標)内筒つきのオートクレーブ(内容積200mL)に移し、100℃で7日間水熱処理した。水熱処理後、オートクレーブ中の生成物を濾過し、イオン交換水にてpHが7程度になるまで洗浄した。生成物を100℃で24時間乾燥した後、粉末X線回折を行ったところ、PHIの回折パターン(Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites, M.M.J.Treacy and J.B.Higgins, IZA編集、ISBN 044507027, ELSEVIER p230,231(2001))と同一であった。このようにして得られたPHI結晶粒子を、乳鉢で1〜2分程度すり潰し、粒径0.5〜3μmのPHI型ゼオライト微粒子を得た。
(多孔質支持体の作成)
ポリエーテルスルホン(BASF製、Ultrason E6020P)25gにジメチルアセトアミド250gを加え、均一に溶解するまで攪拌した。ここにテトラエチレングリコール15gを添加し更に均一透明な高分子溶液が得られるまで攪拌した。この高分子溶液に、PHI型ゼオライト微粒子75gを加え、2時間攪拌することにより均一な高分子溶液スラリーを得た。
このスラリーを紡糸原液として、内径0.5mm、外形1.5mmの二重環状ノズルから内部凝固液とともに押出し、エアギャップ2cmを通過させた後、外部凝固液に浸漬し、中空円筒状の多孔体を得た。ここで内部凝固液、外部凝固液ともに水を用いた。上記方法によって紡糸後乾燥することにより、外径1.8mm、内径1.0mmの有機高分子とゼオライト微粒子よりなる中空糸が得られ、これを多孔質支持体として使用した。水銀圧入法によって求められたこの多孔質支持体の平均細孔径は0.4μm、空孔率は47%であった。
(PHI型ゼオライト結晶膜の形成)
得られた多孔質支持体の両端をテフロン(登録商標)テープで閉じた後、SUS製のオートクレーブ(内容積120cc)内にテフロン(登録商標)製の治具に固定して縦方向に設置した。水ガラス(小宗化学、3号SiO 28%,NaO 9〜10%)と塩化アルミニウム6水和物(ナカライ)をアンモニアで共沈、洗浄して調製したSi/Al=2のモル比に調製した含水酸化物をNaOH水溶液に2.5NaO:Al:4SiO:80HOのモル組成となる様に混合して調整した溶液をこのオートクレーブ内に移し、200℃で3時間半温風式オーブン内で静置して水熱処理し、PHIゼオライト複合膜を製膜した。水熱処理後オートクレーブを水冷し、多孔質支持体を取り出してイオン交換水を用いて十分に水洗した後、60℃で3時間乾燥した。
このようにして合成したPHIゼオライト複合膜をトールシール(ニラコ(株)製)で片端を封止し、もう一方の側から0.2MPaの圧力で空気を送り込み、複合膜を水の中に浸して、空気によるリーク試験を行ったところ、乾燥後の膜では空気が透過しなかった。また、得られた複合膜表面のX線回折測定(XRD)を行ったところ、PHIの回折パターンが得られたことから、複合膜表面はPHI膜のみで覆われていることが確認された。さらに複合膜表面及び断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、多孔質支持体の表面に厚さ約8−10μmのゼオライト結晶による緻密膜が確認された。これらの結果から、複合膜の表面にはPHIゼオライトによる緻密膜が形成されていることを確認した。
得られたPHI膜の浸透気化法による分離特性を調べた。供給液にはエタノール90wt%の水溶液を用いて、75℃で測定した結果、透過流束(Q)=2.1kg/m・h、分離係数α(HO/EtOH)=2635であった。このことから、本発明で得られたPHI膜は水選択透過膜であることが明らかとなった。
更に、耐酸性を調べる目的で、PHI種晶、FAU(フォージャサイト、Y型及びX型)を各0.5g採り、0.1Nの塩酸水溶液で85℃・1時間及び10wt%のNaOH水溶液で室温・7日間処理した後、水洗・乾燥した各種ゼオライト試料の粉末X線回折を測定したところ、PHIは、他のゼオライトに比較してピーク強度の低下やピークブロードが観察されなかったことから、耐酸性並びに耐アルカリ性に優れていることがわかった。同様にして、PHI膜が高耐酸性並びに高耐アルカリ性を有していることを確認した。
[実施例2]
ポリスルホン(Aldrich製、Mn=16000)3gにジメチルアセトアミド25.5gを加え、均一に溶解するまで攪拌した。ここにポリエチレングリコール400(和光純薬製)1.5gを添加し更に均一透明な高分子溶液が得られるまで攪拌した。この高分子溶液に、実施例1で用いたPHI型ゼオライト微粒子6gを加え、2時間攪拌することにより均一な高分子溶液スラリーを得た。
ムライトチューブ(ニッカトー(株)製、PMチューブ、Al=65%、SiO=33%、平均細孔径1.8μm、かさ密度1.70g/cc、気孔率44.7%、外径6mm、内径3mm、長さ80mm)をポリエチレングリコール#2000(関東化学製)の40%水溶液に1分間浸漬した後、60℃のオーブンにて2時間乾燥させた。このムライトチューブの両端開口部をテフロン(登録商標)テープで封止して内側に溶液が接触しないようにした上で、上記のスラリー中に10秒間浸漬し、60℃オーブンにて1分間乾燥させた後、水に3分間浸漬してポリスルホンを凝固させた。次にテフロン(登録商標)テープを取り外し、60℃の水に3時間浸漬してポリエチレングリコールを抽出した後、断面の走査型電子顕微鏡観察により、ムライトチューブの外表面には厚さ約5μmのポリスルホンとゼオライト微粒子よりなる多孔質層が形成されていた。
こうして得られた多孔質支持体を実施例1と同じ条件で水熱処理することにより、ポリスルホンとゼオライト微粒子の多孔質層の表面にPHIゼオライト結晶層が製膜されている複合膜を得た。
得られたPHI膜の浸透気化法による分離特性を調べた。供給液には実施例1と同様に、エタノール90wt%の水溶液を用いて、75℃で測定した結果、透過流束(Q)=1.4kg/m・h、分離係数α(HO/EtOH)=1675であった。このことから、本発明で得られたPHI膜は水選択透過膜であることが明らかとなった。
[実施例3]
イオン交換水70.0gにアルミン酸ナトリウム(関東化学(株)製)8.6gを加えて完全に溶解するまで攪拌した。次にイオン交換水20.0gにNaOH(和光純薬(株)製)6gを加えて完全に溶解し、前述のアルミン酸ナトリウム水溶液に添加して均一になるまで攪拌した。次にこの溶液に、Cataloid SI−30 40.0gを徐々に加えて均一なゲル溶液を得た。
このゲル溶液を室温にて約30分攪拌した後、テフロン(登録商標)内筒つきのオートクレーブ(内容積200mL)に移し、150℃で6時間水熱処理した。水熱処理後、オートクレーブ中の生成物を濾過し、イオン交換水にてpHが7程度になるまで洗浄した。
生成物を60℃で24時間乾燥した後、粉末X線回折を行ったところ、FAUの回折パターン(Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites, M.M.J.Treacy and J.B.Higgins, IZA編集、ISBN 044507027, ELSEVIER p230,231(2001))と同一であった。このようにして得られたFAU結晶粒子を、乳鉢で1〜2分程度すり潰し、粒径0.5〜3μmのFAU型ゼオライト微粒子を得た。
得られたFAU型ゼオライト微粒子を用いて、実施例1と同様に多孔質支持体を作成した後、さらに実施例1と同様に水熱合成を施すことにより、PHIゼオライト複合膜を得た。
得られたPHI膜の浸透気化法による分離特性を調べた。供給液には実施例1と同様に、エタノール90wt%の水溶液を用いて、75℃で測定した結果、透過流束(Q)=1.1kg/m・h、分離係数α(HO/EtOH)=1113であった。
[実施例4]
実施例1で得られたPHI複合膜の耐酸性を調べる目的で、酸性溶液からの浸透気化法による分離特性を調べた。供給液にはエタノール90重量部に0.1Nの塩酸水溶液10重量部を混合して得られた水溶液を用いた。75℃で浸透気化による分離特性を測定した結果、測定開始から1時間後の透過流束(Q)=2.2kg/m・h、分離係数α(HO/EtOH)=2497であり、実施例1で得られた結果と殆んど同じであった。この結果より、PHI複合膜は酸性水溶液からの分離特性に優れていることが示された。
[比較例1]
実施例1において多孔質支持体の作成時にPHI型ゼオライト微粒子を加える代わりに、A型ゼオライト微粒子(水澤化学社製シルトン−B、粒径0.8μm)を用いて多孔質支持体を作成した。
得られた多孔質支持体の両端をテフロン(登録商標)テープで閉じた後、SUS製のオートクレーブ(内容積120cc)内にテフロン(登録商標)製の治具に固定して縦方向に設置し、水熱合製法により多孔質支持体表面に、A型ゼオライト結晶からなる層を形成させた。合成液は水、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを、NaO:SiO:Al:HO=2:2:1:125のモル比に配合したスラリーを用い、このスラリー入れたテフロン(登録商標)製の容器に、上記の多孔質支持体を浸漬して、この容器をオートクレーブに入れ、100℃で3時間15分、水熱合成反応を行った。
反応後、多孔質支持体を取り出し、十分水洗した後、60℃で3時間乾燥させた。乾燥後の多孔質支持体の断面を電子顕微鏡により観察したところ、合成液に接触した側の表面に厚さ約5μmの結晶層が生成しており、これを広角X線回折によって解析した結果、A型ゼオライト結晶による緻密な層が形成されていることが確認され、A型ゼオライトによる複合膜が得られた。
A型ゼオライト複合膜の耐酸性を調べるため、実施例3と同じ酸性水溶液を用いて、75℃で浸透気化による分離特性を測定した。測定開始直後の透過流束(Q)=5.2kg/m・h、分離係数α(HO/EtOH)=7850であったが、測定開始から1時間後の透過流束(Q)=7.2kg/m・hであり、分離係数α(HO/EtOH)=24しかなかった。この結果より、A型ゼオライト膜は耐酸性が低く、酸性水溶液からの分離特性が得られないのに対し、PHI複合膜は高い耐酸性が得られることが示された。
以上詳述したように、本発明は、フィリップサイト(PHI)型ゼオライト膜及びその製造方法に係るものであり、本発明により、現在までに報告されていないPHI膜を多孔質支持体に合成できることが明らかになった。本発明によれば、耐酸性、耐薬品性に優れた親水性ゼオライト膜が合成可能であり、工業的な液体及びガス分離プロセス等に採用され得るゼオライト膜を、簡便に、かつ短期間で製造することが可能である。また、石油化学工業において、分離と触媒作用を持ち合わせたメンブレンリアクターとしても応用可能である。

Claims (4)

  1. 有機高分子とゼオライト微粒子よりなる多孔質層を有する、中空円筒状の多孔質支持体の表面に、フィリップサイト(PHI)型ゼオライトの結晶層よりなるゼオライト膜が形成されていることを特徴とする複合膜。
  2. ゼオライト微粒子がフィリップサイト(PHI)型又はフォージャサイト(FAU)型のゼオライト微粒子であることを特徴とする請求項1記載の複合膜。
  3. 有機高分子が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル及びポリジメチルシロキサンよりなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の複合膜。
  4. 有機高分子とゼオライト微粒子よりなる多孔質層を有する、中空円筒状の多孔質支持体を、フィリップサイト(PHI)型ゼオライトの構成物質を含む原料合成液に接触させ、水熱合成を施すことにより、多孔質支持体の内表面及び外表面の少なくとも一方の表面にフィリップサイト(PHI)型ゼオライト結晶層を形成することを特徴とする複合膜の製造方法。
JP2006143047A 2006-05-23 2006-05-23 フィリップサイト型ゼオライト複合膜及びその製造方法 Expired - Fee Related JP5051816B2 (ja)

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