JP5599777B2 - Ddr型ゼオライト膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、DDR型ゼオライト膜の製造方法に関し、さらに詳しくは、緻密なDDR型ゼオライト膜を製造できるとともに、合成に用いる容器の損傷を防止できるDDR型ゼオライト膜の製造方法に関する。
ゼオライトは、触媒、触媒担体、吸着材等として利用されており、また、金属やセラミックスからなる多孔質基体の表面に成膜されたゼオライト膜配設体は、ゼオライトの分子篩作用を利用し、ガス分離膜や浸透気化膜として用いられるようになってきている。
ゼオライトは、その結晶構造により、LTA、MFI、MOR、AFI、FER、FAU、DDR等の多くの種類が存在する。これらの中でDDR(Deca−Dodecasil 3R)型ゼオライトは、主成分がシリカからなる結晶であり、その細孔は酸素8員環を含む多面体によって形成されているとともに、酸素8員環の細孔径は4.4×3.6オングストロームであることが知られている(W.M.Meier,D.H.Olson,Ch.Baerlocher,Atlas of zeolite structure types,Elsevier(1996)参照)。
DDR型ゼオライトは、ゼオライトの中では比較的細孔径が小さいものであり、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、エタン(C)といった低分子ガスの分子篩膜として適用できる可能性を有する。
そして、DDR型ゼオライトの製造方法としては、原料溶液中の、1−アダマンタンアミン、シリカ、水及びエチレンジアミンの含有割合を特定の割合とすることにより、短時間で緻密なDDR型ゼオライト膜を製造することが可能な製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、短時間で緻密なDDR型ゼオライト膜を製造することが可能であるという優れた効果を奏するものである。
特開2003−159518号公報
特許文献1に記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法は、DDR型ゼオライト膜を短時間で平板上に製造することが可能であるという優れた効果を奏するものである。しかし、この方法は、DDR型ゼオライト膜を、種結晶(DDR型ゼオライト粉末)の存在下で水熱合成することにより形成するものであるため、水熱合成時に存在する種結晶の影響で、得られたDDR型ゼオライト膜の緻密性が必ずしも良好ではなかった。また、この方法は、DDR型ゼオライト粒子の沈降と積層を利用してDDR型ゼオライト膜を成膜しているために、成膜可能な条件では基体以外の場所にも多量のDDR粒子の沈降が生じる。このため、沈降するDDR粒子は硬い塊となって合成容器内部に付着し、容器から除去する際に合成容器の損傷要因となるため、更なる改良が望まれていた。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、緻密なDDR型ゼオライト膜を製造できるとともに、合成に用いる容器の損傷を防止できるDDR型ゼオライト膜の製造方法を提供することを特徴とする。
本発明によって以下のDDR型ゼオライト膜の製造方法が提供される。
[1] 1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有しDDR型ゼオライト粉末を分散させた種結晶形成用原料溶液に、多孔質基体を浸漬し、水熱合成して、前記多孔質基体の表面に複数のDDR型ゼオライト結晶粒子を形成する種結晶形成工程と、前記DDR型ゼオライト結晶粒子が表面に形成された多孔質基体を、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有するとともにDDR型ゼオライト粉末を含有しない膜形成用原料溶液に浸漬し、水熱合成して、前記多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト膜を形成する膜形成工程とを有し、前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の粒子径が10μm以下であり、前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の質量が、多孔質基体の表面の単位面積(m )当たり200g/m 以下であるDDR型ゼオライト膜の製造方法。
[2] 前記種結晶形成工程を複数回行い、各回毎に、新たに調製した前記種結晶形成用原料溶液を使用する[1]に記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
[3] 前記膜形成工程を複数回行い、各回毎に、新たに調製した前記膜形成用原料溶液を使用する[1]又は[2]に記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
[4] 前記種結晶形成工程において使用する前記種結晶形成用原料溶液、及び前記膜形成工程において使用する前記膜形成用原料溶液の両方にエチレンジアミンが含有される[1]〜[3]のいずれかに記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
[5] 前記種結晶形成工程における水熱合成、及び前記膜形成工程における水熱合成を、100〜200℃で行う[1]〜[4]のいずれかに記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
[6] 得られるDDR型ゼオライト膜の厚さが0.1〜100μmである[1]〜[5]のいずれかに記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
[7] 1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有しDDR型ゼオライト粉末を分散させた原料溶液に、多孔質基体を浸漬し、水熱合成して、前記多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト結晶粒子を形成し、前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の粒子径が10μm以下であり、前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の質量が、多孔質基体の表面の単位面積(m )当たり200g/m 以下であるDDR型ゼオライト結晶粒子の製造方法。
本発明のDDR型ゼオライト膜の製造方法は、「種結晶形成工程」において、DDR型ゼオライト粉末を分散させた種結晶形成用原料溶液を用いて、水熱合成により多孔質基体の表面に複数のDDR型ゼオライト結晶粒子を形成し、その後、「膜形成工程」において、DDR型ゼオライト粉末を含有しない膜形成用原料溶液を用いて、水熱合成により多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト膜を形成するため、緻密なDDR型ゼオライト膜を製造できるとともに、合成に用いる容器の損傷を防止することができる。特に、「膜形成工程」において、原料溶液中にDDR型ゼオライト粉末が含有されないため、DDR型ゼオライト膜を緻密にすることができる。
本発明のDDR型ゼオライト膜の製造方法の一の実施形態において用いられる多孔質基体を模式的に示す斜視図である。 実施例13のDDR型ゼオライト膜の製造方法において、製造過程で得られる「多孔質基体の表面に形成された複数のDDR型ゼオライト結晶粒子」の顕微鏡写真である。 実施例13のDDR型ゼオライト膜の製造方法において得られたDDR型ゼオライト膜の顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
(1)種結晶形成工程:
本発明のDDR型ゼオライト膜の製造方法の一の実施形態において、種結晶形成工程は、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有しDDR型ゼオライト粉末を分散させた種結晶形成用原料溶液に、多孔質基体を浸漬し、水熱合成して、多孔質基体の表面に複数のDDR型ゼオライト結晶粒子を形成する工程である。この工程において得られたDDR型ゼオライト結晶粒子が、膜形成工程においてDDR型ゼオライト膜を形成する際の種結晶の役割を果たす。この工程は、本発明のDDR型ゼオライト結晶粒子の製造方法の一の実施形態でもある。従って、「(1)種結晶形成工程」の説明は、本発明のDDR型ゼオライト結晶粒子の製造方法の説明でもある。
(1−1)種結晶形成用原料溶液;
種結晶形成用原料溶液は、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有し、DDR型ゼオライト粉末を分散させたものであるが、エチレンジアミン及びその他添加剤を混合してもよい。1−アダマンタンアミンは、DDR型ゼオライト結晶粒子を形成するための構造規定剤である。例えば、添加剤として微量のアルミン酸ナトリウムを使用すると、DDR型ゼオライト膜を構成するSiの一部をAlで置換することもできる。このように置換することにより、形成されるDDR型ゼオライト膜に分離機能に加えて触媒作用等を付加することも可能である。種結晶形成用原料溶液の調製に際して、シリカに対する1−アダマンタンアミンの比の値(1−アダマンタンアミン/シリカ(モル比))は、0.002〜0.5が好ましく、0.002〜0.2が更に好ましい。0.002より小さいと構造規定剤である1−アダマンタンアミンが不足してDDR型ゼオライトが形成しにくいことがあり、0.5より大きいと高価な1−アダマンタンアミンの使用量が増えるため製造コスト増につながることがある。シリカに対する水の比の値(水/シリカ(モル比))は、10〜500が好ましく、10〜200が更に好ましい。10より小さいとシリカ濃度が高すぎてDDR型ゼオライトが形成し難いことがあり、500より大きいとシリカ濃度が低すぎてDDR型ゼオライトが形成し難いことがある。
種結晶形成用原料溶液中には、エチレンジアミンを含有させることが好ましい。エチレンジアミンを添加して種結晶形成用原料溶液を調製することにより、1−アダマンタンアミンを容易に溶解することが可能となり、均一な結晶サイズのDDR型ゼオライト粉末を製造することが可能となる。1−アダマンタンアミンに対するエチレンジアミンの比の値(エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン(モル比))は、4〜35が好ましく、8〜32が更に好ましい。4より小さいと、1−アダマンタンアミンを溶かし易くするための量としては不充分であり、35より大きいと、反応に寄与しないエチレンジアミンが過剰となり製造コストがかかることがある。
また、1−アダマンタンアミンを予めエチレンジアミンに溶解することにより1−アダマンタンアミン溶液を調製することが好ましい。このように調製した1−アダマンタンアミン溶液と、シリカを含むシリカゾル溶液とを混合して調製した種結晶形成用原料溶液を用いることが、より簡便かつ完全に1−アダマンタンアミンを溶解し、均一な結晶サイズのDDR型ゼオライト粉末を製造することが可能となる。なお、シリカゾル溶液は、微粉末状シリカを水に溶解すること、又は、アルコキシドを加水分解することにより調製することができるが、シリカゾル市販品のシリカ濃度を調整して用いることもできる。
(1−2)多孔質基体;
本実施形態のDDR型ゼオライト膜の製造方法において用いる多孔質基体の形状は、特に限定されず、用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、板状、筒状、ハニカム形状、又は、モノリス形状等を好適例として挙げることができる。これらの中でも、単位体積当たりの膜面積を大きくすることが可能であるとともに、膜面積当たりのシール部分面積を小さくすることが可能であるため、モノリス形状が好ましい。なお、本実施形態にいう「モノリス形状」とは、中心軸方向に貫通する複数の貫通孔が形成された柱状を意味し、例えば、その中心軸方向に直交する断面が蓮根状になっているものをいう。以下、多孔質基体が、上記モノリス形状である場合(モノリス形状基体)について説明するが、上記のように多孔質基体の形状はこれに限定されるものではない。
多孔質基体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、所定のセラミック原料を含有する成形原料を混練し、モノリス形状の成形体が形成されるような口金を用いて押出成形し、モノリス形状の成形体を得る。その後、乾燥、焼成することによりモノリス形状の多孔質基材を得る方法を挙げることができる。
(1−3)水熱合成;
DDR型ゼオライト粉末を含有する種結晶形成用原料溶液に多孔質基体を浸漬し、水熱合成することにより多孔質基体の表面に、DDR型ゼオライト結晶粒子を形成する。水熱合成により多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト結晶粒子を形成する場合、多孔質基体の表面の中のDDR型ゼオライト結晶粒子を形成しない部分に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シールテープ等によりマスキングを施し、DDR型ゼオライト結晶粒子が形成されないようにすることが好ましい。種結晶形成用原料溶液に多孔質基体を浸漬し、DDR型ゼオライトを水熱合成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
種結晶形成用原料溶液を入れた耐圧容器等に多孔質基体を入れて、下記所定の温度で所定時間保持することにより水熱合成し、多孔質基体の表面に、DDR型ゼオライト結晶粒子を形成する。種結晶形成工程においては、水熱合成に際しての温度条件を100〜200℃とすることが好ましく、100〜150℃とすることが更に好ましい。100℃未満で水熱合成を行った場合には、DDR型ゼオライト結晶粒子を形成し難いことがあり、200℃超で水熱合成を行った場合には、DOH型ゼオライト等の、DDR型ゼオライトとは異なる結晶相が形成されることがある。
多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子は、粒子径が10μm以下であることが好ましい。10μmより大きいと、得られるDDR型ゼオライト膜の緻密性が低下することがある。多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の粒子径は、電子顕微鏡で計測した値である。また、多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の質量は、多孔質基体の表面の単位面積(m)当たり200g/m以下であることが好ましい。200g/mより多いと、DDRの膜厚が厚くなり透過量が極端に減少する可能性がある。
多孔質基体の表面に水熱合成により複数のDDR型ゼオライト結晶粒子を形成し、これを種結晶として水熱合成によりDDR型ゼオライト膜を形成する方法によれば、複雑形状の多孔質基体表面にも均一にゼオライト結晶粒子を形成することができ、これを種結晶として水熱合成することにより、DDR型ゼオライト膜を均一に成膜することができる。
種結晶形成工程は、複数回行ってもよい。この場合、種結晶形成工程を複数回行った後に、膜形成工程を行う。種結晶形成工程を複数回行う場合、一回毎(各回毎)に、新たに調製した種結晶形成用原料溶液を使用することが好ましい。
(2)膜形成工程:
本実施形態のDDR型ゼオライト膜の製造方法において、膜形成工程は、DDR型ゼオライト結晶粒子が表面に形成された多孔質基体を、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有するとともにDDR型ゼオライト粉末を含有しない膜形成用原料溶液に浸漬し、水熱合成して、多孔質基体の表面に「DDR型ゼオライト膜」を形成する工程である。多孔質基体の表面に形成されるDDR型ゼオライト膜は、多孔質基体の表面に形成された複数のDDR型ゼオライト結晶粒子が、水熱合成により膜状に成長したものである。
このように、膜形成工程においては、膜形成用原料溶液に、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水が含有され、DDR型ゼオライト粉末は含有されない。膜形成用原料溶液にDDR型ゼオライト粉末が含有されると、水熱合成を行う際に、多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト結晶粒子が膜状に成長しているところに、原料溶液中のDDR型ゼオライト粉末が付着して、その部分が塊となって膜形成を阻害するという問題が生じていた。本実施形態のDDR型ゼオライト膜の製造方法においては、膜形成用原料溶液にDDR型ゼオライト粉末が含有されないため、このような弊害を防止することができる。
膜形成工程における膜形成用原料溶液は、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有し、DDR型ゼオライト粉末を含有しないものであるが、エチレンジアミン及びその他添加剤を混合してもよい。1−アダマンタンアミンは、DDR型ゼオライト膜を形成するための構造規定剤である。例えば、添加剤として微量のアルミン酸ナトリウムを使用すると、DDR型ゼオライト膜を構成するSiの一部をAlで置換することもできる。このように置換することにより、形成されるDDR型ゼオライト膜に分離機能に加えて触媒作用等を付加することも可能である。膜形成用原料溶液の調製に際して、シリカに対する1−アダマンタンアミンの比の値(1−アダマンタンアミン/シリカ(モル比))は、0.002〜0.5が好ましく、0.002〜0.2が更に好ましい。0.002より小さいと構造規定剤である1−アダマンタンアミンが不足してDDR型ゼオライトが形成しにくいことがあり、0.5より大きいと高価な1−アダマンタンアミンの使用量が増えるため製造コスト増につながることがある。シリカに対する水の比の値(水/シリカ(モル比))は、10〜500が好ましく、10〜200が更に好ましい。10より小さいとシリカ濃度が高すぎてDDR型ゼオライトが形成しにくいことがあり、500より大きいとシリカ濃度が低すぎてDDR型ゼオライトが形成し難いことがある。
膜形成用原料溶液中には、エチレンジアミンを含有させることが好ましい。エチレンジアミンを添加して膜形成用原料溶液を調製することにより、1−アダマンタンアミンを容易に溶解することが可能となり、均一な厚さのDDR型ゼオライト膜を製造することが可能となる。1−アダマンタンアミンに対するエチレンジアミンの比の値(エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン(モル比))は、4〜35が好ましく、8〜32が更に好ましい。4より小さいと、1−アダマンタンアミンを溶かし易くするための量としては不充分であり、35より大きいと、反応に寄与しないエチレンジアミンが過剰となり製造コストがかかることがある。
また、1−アダマンタンアミンを予めエチレンジアミンに溶解することにより1−アダマンタンアミン溶液を調製することが好ましい。このように調製した1−アダマンタンアミン溶液と、シリカを含むシリカゾル溶液とを混合して調製した膜形成用原料溶液を用いることにより、より簡便かつ完全に1−アダマンタンアミンを溶解し、均一な厚さのDDR型ゼオライト膜を製造することが可能となる。なお、シリカゾル溶液は、微粉末状シリカを水に溶解すること、又は、アルコキシドを加水分解することにより調製することができるが、シリカゾル市販品のシリカ濃度を調整して用いることもできる。
DDR型ゼオライト結晶粒子が表面に形成された多孔質基体を膜形成用原料溶液に浸漬し、水熱合成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
膜形成用原料溶液を入れた耐圧容器等に、DDR型ゼオライト結晶粒子を表面に有する多孔質基体を入れて、下記所定の温度で所定時間保持することにより水熱合成し、多孔質基体の表面に、DDR型ゼオライト膜を形成する。膜形成工程においては、水熱合成に際しての温度条件を100〜200℃とすることが好ましく、100〜150℃とすることが更に好ましい。100℃未満で水熱合成を行った場合には、DDR型ゼオライト膜を形成し難いことがあり、200℃超で水熱合成を行った場合には、DOH型ゼオライト等の、DDR型ゼオライトとは異なる結晶相が形成されることがある。
多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト膜の厚さは、0.1〜100μmであることが好ましい。0.1μmより薄いと、DDR型ゼオライト膜の強度が低下することがある。100μmより厚いと、得られるDDR型ゼオライト膜を被処理流体が透過するときの透過速度が低くなることがある。DDR型ゼオライト膜の膜厚は、厚さ方向に沿って切断した断面の電子顕微鏡写真により測定した5ヶ所の断面位置での膜厚の平均値である。
膜形成工程は、複数回行ってもよい。膜形成工程を複数回行う場合、一回毎(各回毎)に、新たに調製した膜形成用原料溶液を使用することが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(DDR型ゼオライト粉末の作製)
「M.J.den Exter,J.C.Jansen,H.van Bekkum,Studies in Surface Science and Catalysis vol.84,Ed.by J.Weitkamp et al.,Elsevier(1994)1159−1166」に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法に基づき、DDR型ゼオライト結晶粉末を製造し、これを粉砕した。そして、粉砕したDDR型ゼオライト結晶粉末を水に分散させた後、粗い粒子を除去して、DDR型ゼオライト粉末として使用した。DDR型ゼオライト粉末(粗い粒子を除去した後のDDR型ゼオライト結晶粉末)の平均粒子径は、1μm以下であった。
(DDR型ゼオライト結晶粒子の作製(種付け))
フッ素樹脂製の100ml(ミリリットル)広口瓶に10.93gのエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後、1.719gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)(構造規定剤)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に85.0gの30質量%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学社製)と124.03gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、混合溶液を調製した。その後、混合溶液を入れた広口瓶をシェーカーにセットし、500rpmで1時間振り混ぜ、その後DDR型ゼオライト粉末を0.337質量%含むDDR型ゼオライト粉末分散液を1000μl(マイクロリットル)入れて、再度シェーカーで500rpmで5分振り混ぜ、種結晶形成用原料溶液とした。
その後、内容積100mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内に、図1に示されるような、中心軸方向に貫通する複数の貫通孔2が形成された円柱状のモノリス形状(レンコン状)の多孔質基体1を配置し、種結晶原料溶液を入れ、120℃にて24時間、加熱処理(水熱合成)を行った。加熱処理後、水洗、乾燥して、多孔質基体の表面に形成された複数のDDR型ゼオライト結晶粒子(種結晶)を得た。水熱合成は1回とした。DDR型ゼオライト結晶粒子は、多孔質基体やステンレス製耐圧容器内に塊となって固着することはなかった。尚、図1は、本発明のDDR型ゼオライト膜の製造方法の実施例において用いる多孔質基体1を模式的に示す斜視図である。
使用した多孔質基体は、底面の直径が30mm、長さ(中心軸方向の長さ)が40mmの円柱状であり、貫通孔(長さ方向に直交する断面形状が円形であり、円形の断面の直径が3mm)が37本形成されたものであった。
(DDR型ゼオライト膜の作製(膜化))
フッ素樹脂製の100ml広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後、1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に98.0gの30重量%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学社製)と116.55gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、膜形成用原料溶液を調製した。尚、膜形成用原料溶液にはDDR型ゼオライト粉末を添加しなかった。その後、膜形成用原料溶液を入れた広口瓶をシェーカーにセットし、500rpmで1時間振り混ぜた。内容積100mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内に「DDR型ゼオライト結晶粒子が表面に形成された多孔質基体」を配置し、膜形成用原料溶液を入れ、150℃にて84時間(h)、加熱処理(水熱合成)を行った。加熱処理後、水洗、乾燥して、多孔質基体の表面に形成された「DDR型ゼオライト膜」を得た。
(構造規定剤の除去)
「DDR型ゼオライト膜」が形成された多孔質基体を電気炉内に入れ、空気雰囲気において、500℃で50時間(h)加熱し、DDR型ゼオライト膜の細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去し、多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト膜を得た。
膜化工程後の「DDR型ゼオライト膜」について、以下の方法で、「ヘリウム透過量測定」を行った。更に、構造規定剤除去後に得られたDDR型ゼオライト膜について、以下の方法で、「X線回折測定」及び「ガス透過試験」を行った。得られた結果を表1に示す。また、表1において、「粒子の固着」の欄は、DDR型ゼオライト膜の作製(膜化)時(膜形成工程)において、DDR型ゼオライト結晶粒子が、多孔質基体やステンレス製耐圧容器内に塊となって固着した場合を「あり」とし、固着しなかった場合を「なし」とした。
(ヘリウム(He)透過量測定)
膜化工程後のDDR型ゼオライト膜の表面(多孔質基体に接していない側の面)にHeガスを接触させ、DDR型ゼオライト膜を透過するガスの量を測定した。測定時に流したHeガスの流量とその圧力からHe透過量(L/(分・m・kPa))を算出した。「He透過量=He流量/時間/膜面積/圧力」の式で算出される値である。
(X線回折測定)
得られた構造規定剤除去後のDDR型ゼオライト膜の結晶相をX線回折測定し、DDR型ゼオライトが形成されていることを確認した。実施例1〜18及び比較例1,2のDDR型ゼオライト膜の製造方法により得られたDDR型ゼオライト膜の結晶相の評価を行ったところ、DDR型ゼオライト及び多孔質基体であるアルミナの回折ピークのみが検出された。尚、X線回折における「DDR型ゼオライトの回折ピーク」とは、International Center for Diffraction Data(ICDD)「Powder Diffraction File」に示される「Deca−dodecasil 3R」に対応するNo.38−651、又はNo.41−571に記載される回折ピークである。これにより、実施例1〜18及び比較例1,2において、DDR型ゼオライト膜が形成されていることが確認された。
(微構造観察)
電子顕微鏡により、「多孔質基体の表面に形成された複数のDDR型ゼオライト結晶粒子」及び構造規定剤除去後の「DDR型ゼオライト膜」を観察した。電子顕微鏡としては、日本電子社製、JSM−5410を使用した。
(ガス透過試験)
構造規定剤除去後のDDR型ゼオライト膜の表面(多孔質基体に接していない側の面)に二酸化炭素(CO)とメタン(CH)の混合ガス(各ガスの体積比を50:50とし、各ガスの分圧を0.3MPaとした。)を接触させ、DDR型ゼオライト膜を透過するガスの量を測定した。表1には、COの透過量「CO透過量」を記載している。更に、DDR型ゼオライト膜を透過したガスを回収し、ガスクロマトグラフを用いて成分分析を行った。そして、二酸化炭素(CO)とメタン(CH)の透過量(×10−9モル/(m・Pa・s))、及び「二酸化炭素/メタン」の分離係数αを算出した。分離係数αは「分離係数α=(透過CO濃度/透過CH濃度)/(供給CO濃度/供給CH濃度)」の式で算出される値である。表1においては、分離係数αは「CO/CH分離係数」の欄に記載している。
(実施例2〜12)
DDR型ゼオライト結晶粒子の作製(種付け)時のDDR型ゼオライト粉末分散液のDDR粉末濃度、水熱合成の温度、時間及び回数を表1に示すように変え、「DDR型ゼオライト膜」の作製(膜化)時の水熱合成の温度、時間及び回数を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にしてDDR型ゼオライト膜を作製した。実施例1と同様にして、「粒子の固着」の有無を確認し、膜化工程後のDDR型ゼオライト膜の「ヘリウム(He)透過量測定」、構造規定剤除去後のDDR型ゼオライト膜の「X線回折測定」及び「ガス透過試験」を行った。「X線回折測定」を除く結果を表1に示す。表1の「基材長さ」の欄には、「DDR型ゼオライト膜が形成される多孔質基体」の中心軸方向長さが示されている。
(実施例13〜18)
「DDR型ゼオライト膜が形成される多孔質基体」の中心軸方向長さを160mmとし、「種付け」及び「膜化」において「内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器」を用い、DDR型ゼオライト結晶粒子の作製(種付け)時のDDR型ゼオライト粉末分散液のDDR粉末濃度、水熱合成の温度、時間及び回数を表1に示すように変え、「DDR型ゼオライト膜」の作製(膜化)時の水熱合成の温度、時間及び回数を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にしてDDR型ゼオライト膜を作製した。実施例1と同様にして、「粒子の固着」の有無を確認し、膜化工程後のDDR型ゼオライト膜の「ヘリウム(He)透過量測定」、構造規定剤除去後のDDR型ゼオライト膜の「X線回折測定」及び「ガス透過試験」を行った。「X線回折測定」を除く結果を表1に示す。
また、実施例13のDDR型ゼオライト膜の製造方法において、DDR型ゼオライト膜を製造する過程で得られる「多孔質基体の表面に形成された複数のDDR型ゼオライト結晶粒子」を上記の方法で「微構造観察」し、DDR型ゼオライト結晶粒子の状態を確認した。得られた電子顕微鏡写真を図2に示す。図2より、多孔質基体11の表面に複数のDDR型ゼオライト結晶粒子12が形成されていることがわかる。図2は、実施例13のDDR型ゼオライト膜の製造方法において、製造過程で得られる「多孔質基体の表面に形成された複数のDDR型ゼオライト結晶粒子」の顕微鏡写真である。また、実施例13のDDR型ゼオライト膜の製造方法において得られたDDR型ゼオライト膜を「微構造観察」し、DDR型ゼオライト膜の状態を確認した。「微構造観察」により得られた電子顕微鏡写真を図3に示す。図3より、DDR型ゼオライトが結晶化して緻密な膜を形成し、多孔質基体の表面が緻密なDDR型ゼオライト膜により被覆されていることがわかる。図3は、実施例13のDDR型ゼオライト膜の製造方法において得られたDDR型ゼオライト膜の電子顕微鏡写真である。
(比較例1)
フッ素樹脂製の100ml(ミリリットル)広口瓶に10.93gのエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後、1.719gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に85.0gの30質量%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学社製)と124.03gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、混合溶液を調製した。その後、混合溶液を入れた広口瓶をシェーカーにセットし、500rpmで1時間振り混ぜ、その後DDR型ゼオライト粉末を0.337質量%含むDDR型ゼオライト粉末分散液を1000μl(マイクロリットル)入れて、再度シェーカーで500rpmで5分振り混ぜ、膜形成用原料溶液を調製した。内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内にDDR型ゼオライト結晶粒子が形成されていない多孔質基体を配置し、膜形成用原料溶液を入れ、135℃にて96時間(h)、加熱処理(水熱合成)を行った。加熱処理後、水洗、乾燥して、多孔質基体の表面に形成された「DDR型ゼオライト膜」を得た。尚、使用した多孔質基体は、底面の直径が30mm、長さ(中心軸方向の長さ)が160mmの円柱状であり、貫通孔(長さ方向に直交する断面形状が円形であり、円形の断面の直径が3mm)が37本形成されたものであった。実施例1と同様にして、「粒子の固着」の有無を確認し、膜化工程後の「ヘリウム(He)透過量測定」、構造規定剤除去後の「X線回折測定」及び「ガス透過試験」を行った。「X線回折測定」を除く結果を表1に示す。
(比較例2)
水熱合成の温度、時間を表1に示すように変えた以外は、比較例1と同様にしてDDR型ゼオライト膜を作製した。実施例1と同様にして、「粒子の固着」の有無を確認し、膜化工程後の「ヘリウム(He)透過量測定」、構造規定剤除去後の「X線回折測定」及び「ガス透過試験」を行った。「X線回折測定」を除く結果を表1に示す。
実施例1〜18のDDR型ゼオライト膜の製造方法においては、多孔質基体の表面に「DDR型ゼオライト膜」を形成する際に、DDR型ゼオライト結晶粒子が塊となって多孔質基体やステンレス製耐圧容器内に固着することがなかった。そして、成膜不良がなく緻密なDDR型ゼオライト膜を得ることができた。また、合成容器の損傷も見られなかった。これに対し、比較例1,2のDDR型ゼオライト膜の製造方法においては、DDR型ゼオライト結晶粒子が塊となって多孔質基体やステンレス製耐圧容器内に多量に沈降し、塊状の型ゼオライト結晶粒子の固着によるDDR型ゼオライト膜の細孔の閉塞が発生した。
また、実施例1〜18のDDR型ゼオライト膜の製造方法においては、膜化工程後の「DDR型ゼオライト膜」の「ヘリウム透過量測定」におけるヘリウムの透過量が測定限界以下となり、欠陥のない「DDR型ゼオライト膜」が得られていることがわかる。これに対し、比較例1,2のDDR型ゼオライト膜の製造方法においては、膜化工程後の「DDR型ゼオライト膜」の「ヘリウム透過量測定」におけるヘリウムの透過量が大きいため、「DDR型ゼオライト膜」に欠陥が生じていることがわかる。
本発明のDDR型ゼオライト膜の製造方法は、DDR型ゼオライト膜の製造に好適に用いることができる。
1,11:多孔質基体、2:貫通孔、12:DDR型ゼオライト結晶粒子、13:DDR型ゼオライト膜。

Claims (7)

  1. 1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有しDDR型ゼオライト粉末を分散させた種結晶形成用原料溶液に、多孔質基体を浸漬し、水熱合成して、前記多孔質基体の表面に複数のDDR型ゼオライト結晶粒子を形成する種結晶形成工程と、
    前記DDR型ゼオライト結晶粒子が表面に形成された多孔質基体を、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有するとともにDDR型ゼオライト粉末を含有しない膜形成用原料溶液に浸漬し、水熱合成して、前記多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト膜を形成する膜形成工程とを有し、
    前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の粒子径が10μm以下であり、前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の質量が、多孔質基体の表面の単位面積(m )当たり200g/m 以下であるDDR型ゼオライト膜の製造方法。
  2. 前記種結晶形成工程を複数回行い、各回毎に、新たに調製した前記種結晶形成用原料溶液を使用する請求項1に記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
  3. 前記膜形成工程を複数回行い、各回毎に、新たに調製した前記膜形成用原料溶液を使用する請求項1又は2に記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
  4. 前記種結晶形成工程において使用する前記種結晶形成用原料溶液、及び前記膜形成工程において使用する前記膜形成用原料溶液の両方にエチレンジアミンが含有される請求項1〜3のいずれかに記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
  5. 前記種結晶形成工程における水熱合成、及び前記膜形成工程における水熱合成を、100〜200℃で行う請求項1〜4のいずれかに記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
  6. 得られるDDR型ゼオライト膜の厚さが0.1〜100μmである請求項1〜5のいずれかに記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法。
  7. 1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有しDDR型ゼオライト粉末を分散させた原料溶液に、多孔質基体を浸漬し、水熱合成して、前記多孔質基体の表面にDDR型ゼオライト結晶粒子を形成し、
    前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の粒子径が10μm以下であり、前記多孔質基体の表面に形成されたDDR型ゼオライト結晶粒子の質量が、多孔質基体の表面の単位面積(m )当たり200g/m 以下であるDDR型ゼオライト結晶粒子の製造方法。
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