JP2023133280A - 分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガス分離に用いたゼオライト膜をより容易に再利用する。【解決手段】本発明の一態様に係る分離方法は、炭化水素化合物を含有するガスに接触させたゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む。【選択図】なし

Description

本発明は分離方法に関する。
特許文献1には、ガス分離実施後にゼオライト膜に吸着した成分を取り除くゼオライト膜複合体の再生方法が記載されている。特許文献2には、SiO/Alモル比が5以上のゼオライトを含むゼオライト膜が、多孔質支持体の表面に形成されてなる多孔質支持体-ゼオライト膜複合体に、有機物を含む気体または液体の混合物を接触させて、該混合物のうち透過性の高い物質を透過させ後に、該ゼオライト膜複合体を水に浸漬することよりゼオライト膜複合体を再生することが記載されている。
特開2021-028054号公報 特開2012-045484号公報
しかしながら、ゼオライト膜の再利用について、再生のための作業が必要であり、工程が増える観点から検討の余地がある。
本発明の一態様は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ガス分離に用いたゼオライト膜をより容易に再利用する方法を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る分離方法は、炭化水素化合物を含有するガスに接触させたゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む。
本発明の一態様によれば、ガス分離に用いたゼオライト膜をより容易に再利用できる。
混合ガスから二酸化炭素を分離する分離システムの一実施形態を示す模式図である。 ゼオライト膜を含む分離膜モジュールの一実施形態の模式図である。 ゼオライト膜を備える分離装置の一実施形態の模式図である。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において、「ゼオライト膜が無機多孔質支持体上に形成されてなるゼオライト膜複合体」を「無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体」と称することがある。また、該「無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体」を「ゼオライト膜複合体」または「膜複合体」と、「無機多孔質支持体」を「支持体」と、「CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト」を「CHA型ゼオライト」と略称することがある。
また、以下の説明において、「~」はその両端を含む数値の範囲を意味する。
<分離方法>
本発明の一態様に係る分離方法は、炭化水素化合物を含有するガスに接触させたゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む。
本発明の一態様においては、例えば、ガスの分離に使用した後のゼオライト膜を、そのまま水溶性有機化合物及び水を含む液体に対して利用すればよいため、ガスの分離に使用した後のゼオライト膜を、容易に再利用できる。例えば、炭化水素化合物を含むガスの分離に使用したゼオライト膜には、炭化水素化合物が付着するなどして、ガスの透過性能と分離性能が劣化する。しかし、このようなゼオライト膜であっても、水溶性有機化合物及び水を含む液体の分離性能を有することを本発明者らは見出した。つまり、ガスの分離性能が低下したゼオライト膜であっても、水溶性有機化合物及び水を含む液体の分離に利用できるため、ガスの分離に使用した後のゼオライト膜を容易に再利用できる。また、本発明の一態様によれば、ゼオライト膜の再利用をより促進できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12(つくる責任つかう責任)の達成に貢献できる。
<ゼオライト膜>
本発明の一態様に係る分離方法で用いるゼオライト膜は、ゼオライトを含む膜である。
ゼオライト膜に含まれるゼオライトとしては、酸素12員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含むものが好ましく、酸素10員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含むものがより好ましく、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含むものがさらに好ましく、酸素6~8員環の細孔構造を有するゼオライトを含むゼオライトを含むものが特に好ましい。ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素(骨格を構成する酸素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と酸素8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
酸素12員環以下の細孔構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AEL、AFI、AFG、AFX、ANA、ATO、BEA、BRE、CAS、CDO、CHA、CON、DDR、DOH、EAB、EPI、ERI、ESV、EUO、FAR、FAU、FER、FRA、HEU、GIS、GIU、GME、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTL、LTN、MAR、MEP、MER、MFI、MEL、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTW、MWF、MWW、NON、NES、OFF、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STI、STT、TOL、TON、TSC、UFI、VNI、WEI、YUGなどが挙げられる。
これらのうち、酸素10員環以下の細孔構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AEL、AFG、AFX、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DOH、EAB、EPI、ERI、ESV、EUO、FAR、FER、FRA、HEU、GIS、GIU、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MFI、MON、MSO、MTF、MTN、MWF、MWW、NON、NES、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STI、STT、TOL、TON、TSC、UFI、VNI、WEI、YUGなどが挙げられる。
さらに、酸素6~8員環の細孔構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AFG、AFX、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DOH、EAB、EPI、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、GIU、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MEP、MER、MON、MSO、MTF、MTN、MWF、NON、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、TOL、TSC、UFI、VNI、YUGなどが挙げられる。
このうち、酸素6~8員環構造を有するゼオライトとしては、例えば、AEI、AFG、AFX、ANA、CHA、EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MWF、PAU、RHO、RTH、SOD、TOL、UFIなどが挙げられる。
本開示のゼオライト膜複合体において、ゼオライト細孔内を分離対象の透過成分が容易に拡散でき、かつ細孔内に炭化水素が入りにくいように、ゼオライト細孔径を調整する観点において、酸素6~8員環構造を有し、細孔が三次元的に連結されている構造が好ましい。つまり、ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトの好ましい構造は、AEI、AFG、AFX、ANA、CHA、EAB、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MER、MON、MWF、PAU、RHO、RTH、SOD、TOL、TSC、UFI、VNIであり、より好ましい構造は、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、LTA、MWF、PAU、RHO、RTH、UFIであり、さらに好ましい構造は、CHA、RHO、MWFであり、特に好ましい構造はCHA又はMWFであり、最も好ましい構造はCHAである。
なお、本明細書において、ゼオライトの構造は、上記のとおり、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードで示す。
また、本発明一態様において、ゼオライト膜は、CHA型アルミノ珪酸塩であり、かつSiO/Alモル比が5以上のゼオライトを含んでもよく、このようなゼオライト膜が、無機多孔質支持体上に形成されていてもよい。SiO/Alモル比の上限値は、1000以下であることが好ましい。
本発明の別の態様においてゼオライト膜は、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含んでいてもよく、膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍未満の値を有するものであり、かつ2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の2.0倍以上4.0倍未満の値を有するものであってもよい。ここで、ピークの強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。ピーク強度の算出方法は以下同様である。また、本発明の一態様に係る分離方法で用いるゼオライト膜は、無機多孔質支持体上に形成されていてもよい。このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比の下限は、通常20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは35以上、特に好ましくは40以上である。ゼオライト膜のSiO/Alモル比の上限は、通常2000以下、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
また、本発明の別の態様において、ゼオライト膜は、ゼオライト膜複合体は、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含んでいてもよく、X線回折のパターンにおいて2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の4倍以上の大きさであってもよい。(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比の下限は、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、12以上が更に好ましく、15以上が特に好ましく、18以上がより好ましく、21以上がさらに好ましく、25以上が最も好ましくい。ゼオライト膜のSiO/Alモル比の上限は、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、70以下であることが殊更に好ましく、60以下であることがさらに好ましく、50以下がより好ましく、40以下が最も好ましい。
本発明のさらに別の態様において、ゼオライト膜は、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含んでいてもよく、X線回折のパターンにおいて2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであってよい。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは0.5以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比が5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、12以上であることが更に好ましく、15以上が特に好ましく、18以上がより好ましく、21以上がさらに好ましく、25以上が最も好ましくい。ゼオライト膜のSiO/Alモル比の上限は、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、70以下であることが殊更に好ましく、60以下であることがさらに好ましく、50以下がより好ましく、40以下が最も好ましい。
本発明のさらに別の態様において、ゼオライト膜は、ゼオライト膜複合体は、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含んでいてもよく、X線回折のパターンにおいて2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の4倍以上の大きさで、かつ、2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであってよい。(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは0.5以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比が5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、12以上であることが更に好ましく、15以上が特に好ましく、18以上がより好ましく、21以上がさらに好ましく、25以上が最も好ましくい。ゼオライト膜のSiO/Alモル比の上限は、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、70以下であることが殊更に好ましく、60以下であることがさらに好ましく、50以下がより好ましく、40以下が最も好ましい。特に好ましい。さらに、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の別の態様に係る分離方法で用いるゼオライト膜は、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含み、無機多孔質支持体上に形成されてなるものであり、該ゼオライト膜複合体の水蒸気吸着等温線より求めた、相対圧0.8におけるゼオライト膜複合体の水吸着量が、相対圧0.2における水吸着量の2倍以上10倍以下であるものであってもよい。
また、本発明の一態様において、ゼオライト膜は、上記のとおり、透過性の高い成分を透過して分離する膜分離手段として用いられるものである。気体成分、液体成分、分離方法等に係る事項は、ゼオライト膜の説明をした後に説明する。
本発明の一態様において、ゼオライト膜は、上記のとおり特定の性質をもつゼオライトを含むものであるが、ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機物、あるいはゼオライト表面を修飾するシリル化剤などを必要に応じ含んでいてもよい。
ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよいが、好ましくは実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜である。
ゼオライト膜に含まれるCHA型アルミノ珪酸塩の割合は、通常10体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上、さらにこの好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは95%体積以上である。ゼオライト膜がCHA型アルミノ珪酸塩のみで構成されるものが、ガスの透過性、分離性において最も優れるために最も好ましい。
ゼオライト膜の厚さは特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは3.0μ以上、また、さらに好ましくは5.0μm以上、また、さらに好ましくは7.0μm以上、特に好ましくは9.0μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下の範囲である。膜厚が大きすぎると透過量が低下する傾向があり、小さすぎると選択性が低下したり、膜強度が低下したりする傾向がある。
ゼオライト膜を形成するゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それ故、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに、ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合がより好ましい。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。後に述べる水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので好ましい。
ゼオライト膜の形状は特に限定されず、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されず、例えば、管状の場合は、通常長さ2cm以上200cm以下、内径0.5cm以上2cm以下、厚さ0.5mm以上4mm以下が実用的で好ましい。
(ゼオライト)
本発明の一態様において、ゼオライト膜はCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含む。好ましくはゼオライト膜を構成するゼオライトはCHA型アルミノ珪酸塩である。アルミノ珪酸塩は、SiとAlの酸化物を主成分とするものであり、本発明の効果を損なわない限り、それ以外の元素が含まれていてもよい。
本発明の一態様において、アルミノ珪酸塩のSiO/Alモル比は特に限定されないが、通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、より好ましくは18以上、さらに好ましくは20以上、さらに好ましくは21以上、また、さらに好ましくは25以上である。上限は、通常Alが不純物程度の量であり、SiO/Alモル比としては、通常2000以下、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは200以下、殊更に好ましくは150以下である。SiO/Alモル比が前記下限未満ではゼオライト膜の緻密性が低下したり、親水性が高く水の吸着でガス透過性が低くなったり、耐酸性が弱くなったり、また耐久性が低下したりする傾向がある。SiO/Alモル比が前記上限値を超える場合では、疎水性が高くなるため、疎水的な不純物が表面に付着してガスの透過性能や水の透過性能が低下したりする傾向がある。
SiO/Alモル比は、後に述べる水熱合成の反応条件により調整することができる。
なお、SiO/Alモル比は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により得られた数値である。
(CHA型ゼオライト)
本発明の一態様において、CHA型ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは0.38×0.38nmの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
CHA型ゼオライトのフレームワーク密度(T/nm)は14.5である。また、SiO/Alモル比は上記と同様である。
ここで、フレームワーク密度(T/nm)とは、ゼオライトのnm(1000Å3)あたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth
Revised Edition 2001 ELSEVIERに示されている。
(無機多孔質支持体)
本発明の一態様において、ゼオライト膜は無機多孔質支持体上に形成されていてもよい。無機多孔質支持体は、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性がある多孔質の無機物質であれば如何なるものであってもよい。具体的には、例えば、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレスなどの焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
無機多孔質支持体の中で、セラミックス焼結体は、その一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することで界面の密着性を高める効果がある。
さらに、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体は、支持体の部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなるのでより好ましい。
支持体の形状は、気体混合物や液体混合物を有効に分離できるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、平板状、管状のもの、または円筒状、円柱状や角柱状の孔が多数存在するハニカム状のものやモノリスなどが挙げられる。
本発明の一態様において、無機多孔質支持体の表面などにゼオライト膜を形成、好ましくはゼオライトを膜状に結晶化させる。
支持体が有する平均細孔径は特に制限されないが、細孔径が制御されているものが好ましい。細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になったり、緻密なゼオライト膜が形成されにくくなったりする傾向がある。支持体の平均細孔径は、水銀圧入法により測定できる。
支持体の表面は必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、支持体の表面とはゼオライト膜を形成させる支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であっても良い。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
また、支持体の気孔率は特に制限されず、また特に制御する必要は無いが、気孔率は、通常20%以上60%以下であることが好ましい。気孔率は、気体や液体を分離する際の透過流量を左右し、前記下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、前記上限超過では支持体の強度が低下する傾向がある。支持体の気孔率は、水銀圧入法により測定できる。
(ゼオライト膜複合体)
ゼオライト膜複合体とは、支持体の表面などにゼオライトが膜状に固着しているものであり、場合によっては、ゼオライトの一部が、支持体の内部にまで固着している状態のものが好ましい。
ゼオライト膜複合体としては、例えば、支持体の表面などにゼオライトを水熱合成により膜状に結晶化させたものが好ましい。
ゼオライト膜の支持体上の位置は特に限定されず、管状の支持体を用いる場合、外表面にゼオライト膜をつけてもよいし、内表面につけてもよく、さらに適用する系によっては両面につけてもよい。また、支持体の表面に積層させてもよいし、支持体の表面層の細孔内を埋めるように結晶化させてもよい。この場合、結晶化した膜層の内部に亀裂や連続した微細孔が無いことが重要であり、いわゆる緻密な膜を形成させることが分離性を向上させることになる。
本発明の一態様においてゼオライト膜複合体は、膜表面にX線を照射して得たX線回折のパターンにおいて、2θ=17.9°付近のピークの強度が、2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍未満、かつ、2θ=9.6°付近のピークの強度が、2θ=20.8°付近のピークの強度の2.0倍以上4.0倍未満の大きさであってもよい。
(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)でいえば、通常0.5未満、好ましくは0.45以下である。下限は特に限定されないが、通常0.001以上である。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)でいえば、通常2.0以上、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.3以上、特に好ましくは2.5以上である。上限は、通常4.0未満、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.5以下である。このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比が20以上であることが好ましく、さらに500以下であることが好ましい。
また、本発明の無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体は、ゼオライト膜複合体は、X線回折のパターンにおいて2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の4倍以上の大きさであってもよい。(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比が5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、12以上であることが特に好ましい。さらに、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体は、X線回折のパターンにおいて2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであってもよい。このとき、ゼオライト膜のSiO/Alモル比が5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、12以上であることが特に好ましい。さらに、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
ピークの強度とは前述した通り測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさし、望ましくは0.5以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
この場合、さらに、2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の4倍以上の大きさであることが好ましい。また、この場合、ゼオライト膜複合体は、X線回折のパターンにおいて2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の4倍以上の大きさであることが好ましい。(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
ここでいうX線回折パターンとは、ゼオライトが主として付着している側の表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、膜複合体のゼオライトが主として付着している側の表面にX線が照射できるような形状なら何でもよく、膜複合体の特徴をよく表すものとして、作製した膜複合体そのままのもの、あるいは装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
ここでいうX線回折パターンは、ゼオライト膜複合体の表面が曲面である場合には自動可変スリットを用いて照射幅を固定して測定してもかまわない。自動可変スリットを用いた場合のX線回折パターンとは、可変→固定スリット補正を実施したパターンを指す。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=20.8°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち20.8°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE
Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである。
また、X線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,1,1)の面に由来するピークである。
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
(No.166)
とした時にCHA構造において指数が(2,0,-1)の面に由来するピークである。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,0,0)面由来のピークの強度の(2,0,-1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、非特許文献2によれば2未満である。
そのため、この比が2.0以上4.0未満であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるように、ゼオライト結晶が中程度に配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
ここでいう中程度の配向とは、(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きに向いた結晶子が全体の結晶子に対して中程度の割合で存在するということであり、この割合は、粉末のCHA型アルミノ珪酸塩のような結晶子の向きがランダムなものよりも大きく、ピーク強度比Bが4以上のような、多くの結晶子の(1,0,0)面が表面と平行に近い向きに向いたCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜よりも低い。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,1,1)面由来のピークの強度と(2,0,-1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比A)は、非特許文献2によれば0.5未満である。
そのため、この比が0.5未満であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長している程度が低いことを意味すると考えられる。
ここでいうゼオライト結晶が配向して成長している程度が低いとは、(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きに向いたゼオライト結晶子の、全体の結晶子に対する存在割合が低いということであり、結晶子の(1,1,1)面の向きはほぼランダムであるということである。
このように、ピーク強度比A、Bが、上記した特定の範囲の値であるということは、ゼオライト結晶が中程度に配向して成長し、分離性能の高い緻密な膜が形成されていることを示すものである。
CHA型ゼオライト結晶が中程度に配向して成長している緻密なゼオライト膜は、次に述べる通り、ゼオライト膜を水熱合成法により形成する際に、例えば、特に好ましくは特定の有機テンプレートを用い、水性反応混合液中にKイオンを共存させることにより達成することができる。
また、本発明の一態様において、ゼオライト膜複合体の水蒸気吸着等温線より求めた、相対圧0.8におけるゼオライト膜複合体の水吸着量は、相対圧0.2における水吸着量の2倍以上10倍以下であることが好ましい。
ここで、吸着等温線とは、材料を一定温度にし、圧力と吸着量の変化を測定したグラフである。一般的に横軸には平衡圧力を飽和蒸気圧で割った相対圧(P/P)とし0~1の値を取る。本発明においては、相対圧0.8と相対圧0.2におけるゼオライト膜複合体への水(水蒸気)吸着量(g/g)を指標とする。
上記のとおり、本発明のゼオライト膜複合体は、相対圧0.2における水吸着量に対する相対圧0.8における水吸着量の比が2以上10以下の値をもつことが好ましいが、この値は、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.2以上であり、また、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。
この値は、一般的にゼオライト膜中のメソ孔への水の吸着と相関しているものであり、値が大きいほど、親水的なメソ孔容積が大きい傾向があることを意味し、値が小さいほど、親水的なメソ孔容積が小さい傾向があることを意味する。この値が大きすぎるものでは、メソ孔が多く存在する緻密度の小さい膜となり、透過量は高いが、分離性能の低い膜となる傾向があり、一方、この値が小さすぎるものではメソ孔がほとんど存在しない緻密度が高い膜となり、分離性能は高いが透過量が低い膜となる傾向がある。この値を2以上10以下とすることにより、分離性能が良好で透過量が高い膜とすることが可能となる。
<ゼオライト膜複合体の製造方法>
本発明の一態様において、ゼオライト膜の形成方法は特に制限されない。例えば、(1)支持体上にゼオライトを膜状に結晶化させる方法、(2)支持体にゼオライトを無機バインダー、あるいは有機バインダーなどで固着させる方法、(3)ゼオライトを分散させたポリマーを固着させる方法、(4)ゼオライトのスラリーを支持体に含浸させ、場合によっては吸引させることによりゼオライトを支持体に固着させる方法などの何れの方法も用いることができる。これらの方法により無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体を得ることができる。
これらの中で、無機多孔質支持体にゼオライトを膜状に結晶化させる方法が特に好ましい。結晶化の方法に特に制限はないが、支持体を、ゼオライト製造に用いる水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)中に入れて、直接水熱合成することで支持体表面などにゼオライトを結晶化させる方法が好ましい。
具体的には、例えば、組成を調整して均一化した水性反応混合物を、支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱すればよい。
水性反応混合物としては、Si元素源、Al元素源、アルカリ源および水を含み、さらに必要に応じて有機テンプレートを含むものが好ましい。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
Al元素源としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等を用いることができる。なお、Al元素源以外に他の元素源、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの元素源を含んでいてもよい。
アルカリ源として用いるアルカリの種類は特に限定されず、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
金属水酸化物の金属種は、通常Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba等が挙げられ、好ましくはNa、Kであり、より好ましくはKである。また、金属水酸化物の金属種は2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとK、あるいはLiとKを併用するのが好ましい。
具体的には、アルカリ源としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を用いることができる。
水性反応混合物に用いるアルカリ源として、次に述べる有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオンを用いることができる。
また、ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いてもよく、有機テンプレート等の有機物を用いずに合成してもよいが、ゼオライト膜の緻密化の観点からは、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上する。以下の、本発明の一態様において用いられ得るゼオライト膜の製造方法に関する説明では、一例として、有機テンプレートを用いる場合について説明する。
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩類が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
具体的には、例えば、1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオン、3-キナクリジナールから誘導されるカチオン、3-exo-アミノノルボルネンから誘導されるカチオン等の脂環式アミンから誘導されるカチオンが挙げられる。これらの中で、1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオンがより好ましい。1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオンを有機テンプレートとしたとき、緻密な膜を形成しうるCHA型ゼオライトが結晶化する。
1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオンのうち、N,N,N-トリアルキル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンがさらに好ましい。N,N,N-トリアルキル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンの3つのアルキル基は、通常、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で最も好ましい化合物は、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンである。
このようなカチオンは、CHA型ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられ、水酸化物イオンの場合には上記のようにアルカリ源として機能する。
その他の有機テンプレートとしては、N,N,N-トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキル基は、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で、最も好ましい化合物は、N,N,N-トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。また、このカチオンが伴うアニオンは上記と同様である。
水性反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比は、通常、それぞれの元素の酸化物のモル比、すなわちSiO/Alモル比として表わす。
このSiO/Al比は、上記したSiO/Al比をもつゼオライトが形成可能な比であれば特に限定されないが、通常5以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは50以上である。また上限は、通常500以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは140以下である。SiO/Al比がこの範囲にあるとき、緻密な膜を形成しうるCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを結晶化させることができる。
水性反応混合物中のシリカ源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常1以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下である。この範囲にあるとき緻密なゼオライト膜が生成しうることに加えて、生成したゼオライトが耐酸性に強くAlが脱離しにくい。また、この条件において、特に緻密で耐酸性のCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを形成させることができる。
Si元素源と金属水酸化物の比は、M(2/n)O/SiO(ここで、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはその価数1または2を示す。)モル比で、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する際、アルカリ金属の中でカリウム(K)が含まれる場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計に対するKのモル比は、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、上限は通常1以下である。
本発明の好ましい範囲で構成された水性反応混合物中へのKの添加は、前記のとおり、rhombohedral settingで空間群を
(No.166)とした時に、CHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである2θ=9.6°付近のピーク強度と指数が(2,0,-1)の面に由来するピークである2θ=20.8°付近のピーク強度の比を中程度に大きくする傾向がある。
Si元素源と水の比は、SiOに対する水のモル比(HO/SiOモル比)で、通常10以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成しうる。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが緻密な膜ができやすい傾向にある。
一般的に、粉末のCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを合成する際の水の量は、HO/SiOモル比で、15~50程度である。HO/SiOモル比が高い(50以上1000以下)、すなわち水が多い条件にすることにより、支持体の表面などにCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトが緻密な膜状に結晶化した分離性能の高いゼオライト膜複合体を得ることができる。
水性反応混合物中のSiO/Alモル比、種結晶を支持体に付着させる際の分散液、アルカリ源と有機テンプレートの種類、組成比を変更することで、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜の配向を制御することができる。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。ゼオライト膜複合体を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶のレーザー解析およびレーザー散乱法粒度分布測定により得られた累積分布図(体積基準、粒子径の小さいものから積算)で、50%の高さを与える直径(メジアン径:D50)は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。粒径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。
ここで、D50は以下の方法で得られる。
まず、次の方法で、一次粒子径の測定を行なう。
種結晶の粒度分布一時粒子径の測定を、以下の条件で行なう。
・装置名:レーザー回折式粒度分布計測装置SALD-2100(島津製作所社製)
・測定方式:レーザー解析およびレーザー散乱法
・測定範囲:0.03~1000μm
・光源:半導体レーザー(波長680nm、出力3mW)
・検出器:76素子変形同心円センサ、側方センサ、後方センサ(4素子)
・サンプラ:SALD-BS2
・分散溶媒:水
種結晶の粒度分布を測定するための分散液は、計測装置の超音波分散バスに水を入れて撹拌機で撹拌しながら、分散液をフローセルに循環させ、分散液を透過した光の強度が装置に表示される適正な光強度の範囲に入るように、超音波分散バス中の水に種結晶粉末または種結晶粉末を予め分散させた液を加えることで調製する。このときの分散溶媒である水の量は通常250ml、分散させる種結晶は粉末の場合、通常0.01gである。粉末の種結晶を入れる場合には、超音波を105分間かけて分散液中の種結晶の凝集を取り除いた後に測定を行なう。測定はフロー方式で行なう。
得られたデータから、一次粒子のD10、D50、D90を取得する。
次に、粒度分布測定により得られた累積分布図(体積基準、粒子径の小さいものから積算)で、50%の高さを与える直径(メジアン径)を得る。
支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させて、その分散液に支持体を浸けて表面に種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性良く膜複合体を製造するにはディップ法が望ましい。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液の種類は特に限定されないが、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が好ましい。またこれらのアルカリ種は混合されていてもよい。アルカリ濃度は特に限定されず、通常0.0001mol%以上、好ましくは0.0002mol%以上、より好ましくは0.001mol%以上、さらに好ましくは0.002mol%以上である。また、通常1mol%以下、好ましくは0.8mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.2mol%以下である。
分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
分散させる種結晶の量が少なすぎると、支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に支持体表面に部分的にゼオライトが生成しない箇所ができ、欠陥のある膜となる可能性がある。分散液中の種結晶の量が多すぎると、ディップ法によって支持体上に付着する種結晶の量がほぼ一定となるため、種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
支持体にディップ法あるいはスラリーの塗りこみによって種結晶を付着させ、乾燥した後にゼオライト膜の形成を行うことが望ましい。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材1mあたりの質量で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、さらに好ましくは8g以下である。
種結晶の量が下限未満の場合には、結晶ができにくくなり、膜の成長が不十分になる場合や、膜の成長が不均一になったりする傾向がある。また、種結晶の量が上限を超える場合には、表面の凹凸が種結晶によって増長されたり、支持体表面から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりする場合がある。何れの場合も、緻密なゼオライト膜が生成しにくくなる傾向となる。
水熱合成により支持体上にゼオライト膜を形成する場合、支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法でゼオライト膜を形成させてもよいし、水性反応混合物を攪拌させてゼオライト膜を形成させてもよい。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
加熱(反応)時間は特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上であり、通常10日間以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下である。反応時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。反応時間が長すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
ゼオライト膜形成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、この温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。また、テンプレートの焼成を目的とする場合は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、さらに好ましくは450℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下、特に好ましくは750℃以下である。
加熱処理の時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥、またはテンプレートが焼成する時間であれば特に限定されず、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上である。上限は特に限定されず、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内、特に好ましくは24時間以内である。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
焼成温度が低すぎると有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離・濃縮の際のガスの透過量が減少する場合がある。
焼成温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなることがある。
焼成時間は、昇温速度や降温速度により変動するが、有機テンプレートが十分に取り除かれる時間であれば特に限定されず、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上である。上限は特に限定されず、例えば、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内、特に好ましくは24時間以内である。焼成は空気雰囲気で行えばよいが、空気に酸素や不活性ガスを付加した雰囲気で行ってもよい。
焼成の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
ゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換しても良いし、シリル化処理を施しても良い。
イオン交換は、テンプレートを用いて合成した場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などの第2族元素イオン、Fe、Cu、Zn、Ag、Al、Ga、Laなどの遷移金属のイオンなどが挙げられる。これらの中で、プロトン、Na、Mg2+およびFe、Al、Ga、Laイオンが好ましい。
イオン交換は、焼成後(テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜を、NHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む水溶液、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗する方法などにより行えばよい。さらに、必要に応じて200℃~500℃で焼成してもよい。
シリル化処理は、ゼオライト膜複合体を、例えばSi化合物を含む溶液に浸漬して行う。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されて、上記した特定の物理化学的性質を有するものとすることができる。例えば、ゼオライト膜表面にSi-OHを多く含む層を確実に形成することで膜表面の極性が向上し、極性分子の分離性能を向上させることが出来ると考えられる。またゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が副次的に得られることがある。
シリル化処理に用いる溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよい。また溶液は酸性、塩基性であってもよく、この場合には酸、塩基によってシリル化反応が触媒される。用いるシリル化剤に制限はないが、アルコキシシランが好ましい。処理温度は通常、室温から150℃以下、処理は10分から30時間程度行えばよく、シリル化剤、溶媒種によって決めればよい。
加熱処理後のゼオライト膜複合体の空気透過量は、通常10L/(m・h)以上、好ましくは20L/(m・h)以上、より好ましくは30L/(m・h)以上、さらに好ましくは35L/(m・h)以上であり、特に好ましくは100L/(m・h)以上である。透過量の上限は特に限定されないが、好ましくは1000L/(m・h)以下、より好ましくは800L/(m・h)以下、さらに好ましくは700L/(m・h)以下である。
ここで、空気透過量とは、実施例の項で詳述するとおり、ゼオライト膜複合体を大気圧下におき、ゼオライト膜複合体の内側を5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[L/(m・h)]である。
空気透過量はガス透過量に繋がる数値である。空気透過量が多いものはガス透過量も多くなるが、空気透過量が多すぎるものは分離性能が低くなる傾向にある。本発明のゼオライト膜は、上記のとおり空気透過量が適度に多く、ガス透過量が多く、かつ良好な分離性能をもつものであり、特に気体成分の分離に好適な性能をもつものである。
かくして製造されるゼオライト膜複合体は、優れた特性をもつものであり、本発明における気体混合物または液体混合物の膜分離手段として好適に用いることができる。
<炭化水素化合物を含有するガスへの接触>
本発明の一態様に係る分離方法で用いられ得るゼオライト膜は、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のものである。本発明の別の態様に係るゼオライト膜は、炭化水素化合物を含有するゼオライト膜である。
炭化水素化合物の種類は特に制限されず、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、アセチレン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン等が挙げられる。特に、炭素数が2以上の炭化水素化合物を含むガスをゼオライト膜に接触させると、ゼオライト膜のガス分離性能が低下することがある。本発明の一態様に係る分離方法は、炭素数が2以上の炭化水素化合物を含むガスを接触させたゼオライト膜の再利用方法として好適に利用できる。また、前記ガスは、炭化水素化合物以外の成分として、二酸化炭素、窒素、水素、ヘリウム等を含んでいてもよい。
例えば、本発明の一態様においては、二酸化炭素、メタン、及び、メタン以外の炭素数2以上の炭化水素化合物の混合ガスから、二酸化炭素を分離したゼオライト膜を好適に用いることができる。二酸化炭素の代わりに窒素を含む混合ガスであっても同様である。
<ガスを接触させる方法の一態様>
本発明におけるガスの接触方法としては、ゼオライト膜の露出している面に気体の混合物が接触すればよい(以下、ゼオライト膜に気体の混合物を接触させて混合物中の一部の物質を分離する方法を「ガス分離方法」ともいう。)。多孔質支持体上にゼオライト膜が形成されている場合は、ゼオライト膜の多孔質支持体側の面に気体の混合物が接触する場合であってもよい。接触方法としては、ゼオライト膜によるガスの分離、分離の前処理としてのガスへの接触、リークテスト用ガスへの接触などが挙げられる。
混合ガスの例としては、可燃性成分及び不燃性成分を含む原料ガスが挙げられ、このような原料ガスとしては、例えば、油田またはガス田から産出される天然ガスや、家畜の糞尿や、食品残渣などの有機性廃棄物を嫌気性微生物により発酵させて発生させて得るバイオガス、ランドフィルガス、温泉ガス、炭鉱ガス、天然ガスなどが例示されるが、これらに限定されない。バイオガスは、主成分がメタン(CH)であり、二酸化炭素(CO)等の不純物を含む混合ガスである。原料ガス中の可燃性成分の濃度は、飽和水蒸気分を除いた組成で、バイオガスでは30~70%(体積%。以下、本段落において同様。)、ランドフィルガスでは、採取の方法にもよるが、20%~70%、温泉ガスでは、メタン10~90%程度である。
(減圧工程)
本発明の一態様における、ゼオライト膜によるガス分離方法では、分離膜のガス排出側は、ガス供給側よりも相対的に低い圧力となっていればよく、常圧(大気圧)であってもよいし、あるいは、ガス供給側よりも低い圧力で加圧されていてもよいが、分離膜のガス排出側を減圧する減圧工程をさらに備えることが好ましい。減圧工程では、ガス排出側の圧力を、好ましくは0.095MPaA以下、より好ましくは0.08MPaA以下、さらに好ましくは0.05MPaA以下とされる。ガス排出側の圧力を所定の範囲で減圧することにより、透過対象の成分の分離係数を向上させることができ、分離膜の分離性能を引き出すことができる。
<ガス分離システム>
本発明の一態様における、ゼオライト膜によるガス分離方法では、次のガス分離システムを用いて行うこともできる。ガス分離システムは、少なくとも、分離膜に対して相対的に透過性の高い成分と相対的に透過性が低い成分を含む混合ガスから、相対的に透過性が高い成分を透過させて分離する分離システムである。ガス分離システムの一態様は、分離膜、及び、前記分離膜に供給する供給装置を備える。図1に該分離システムの具体的な構成の一例を示す。
(分離膜30)
図1に示すように、本実施形態におけるガス分離システム100は、混合ガスから相対的に透過性が高い成分を分離する分離膜30を収納した分離膜モジュール32を備える。分離膜30としては、上記のガス分離工程において説明した、ゼオライトを含む分離膜である、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜を使用することができる。
分離膜モジュール32は分離膜30を含み、分離膜に対して相対的に透過性の高い成分と相対的に透過性が低い成分を含む混合ガスから、相対的に透過性が高い成分を透過させて分離するためのモジュールである。
分離膜モジュール32が有する分離膜30の大きさ、個数は特段限定されず、分離する混合ガスの量、成分、分離膜30の種類等に応じて適宜設定できる。
この分離膜モジュール32には、必要に応じて行われる前処理を経て、混合ガスが供給される供給ライン31と、混合ガスから分離された相対的に透過性が高い成分が排出される排出ラインである配管34と、相対的に透過性が高い成分と分離された精製ガスが流出する流出ライン36とが接続されている。
供給ライン31には、混合ガスが供給される。
相対的に透過性が高い成分と分離され、相対的に透過性が高い成分の濃度が例えば予め設定された目標濃度以下、好ましくは濃度測定限界以下まで低減された精製ガスは、流出ライン36を介して下流側の液化工程へと送られる。
一方、分離膜30によって混合ガスから分離された相対的に透過性が高い成分は、排出ラインである配管34を介して外部へ排出される。この相対的に透過性が高い成分が二酸化炭素である場合は、例えば二酸化炭素貯留(Carbondioxide Captureand Storage;CCS)により地中に貯留したり、石油増進回収(Enhanced Oil Recovery;EOR)、天然ガス増進回収(Enhanced Gas Recovery;EGR)の用の圧入ガスに用いたりしてもよい。また、二酸化炭素を尿素製造プラントの原料として利用することも考えられる。この他、混合ガスが天然ガスである場合、LNGの出荷基地から離れた場所で二酸化炭素処理を行うため、二酸化炭素をパイプライン輸送してもよい。
(分離膜モジュールの一例)
混合ガスの分離に用いる分離膜モジュール32の形態としては、平膜型、スパイラル型、ホロウファイバー型、円筒型、ハニカム型等が考えられ、適用対象に合わせて最適な形態が選ばれる。
その一つである円筒型の分離膜モジュール32について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態におけるゼオライト膜へのガスの接触方法及び分離システムに用いることができる分離膜モジュール32の一実施形態である。分離膜モジュール32は、ゼオライトを含む分離膜30を有し、ゼオライトを含む分離膜30は、ステンレス製の耐圧容器35に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型の分離膜30の一端は、円形のエンドピース37で密封されている。他端は、接続部38で接続され、接続部38の他端は耐圧容器35と接続されている。円筒型の分離膜30の内側と透過気体である二酸化炭素を排出する配管34とが、接続部38を介して接続されており、配管34は、耐圧容器35の外側に伸びている。さらに、耐圧容器35に通ずるいずれかの箇所には、試料気体(混合気体)の供給側の圧力を測る圧力計33、供給側の圧力を調整する背圧弁39が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
透過対象の成分を含む混合ガスを、一定の流量で耐圧容器35と分離膜30との間に供給し、背圧弁39により供給側の圧力を一定とする。気体は分離膜30が備えるゼオライト膜の内外の分圧差に応じてゼオライト膜を透過し、配管34を通じて排出される。
(減圧装置)
ガス分離システム100は、分離膜30のガス排出側を減圧する減圧装置をさらに備えていてもよい。分離膜30のガス排出側を減圧することで、分離膜30の透過対象の成分の分離係数αを向上させることができる。減圧の程度は、上記減圧工程において記載した通りである。
<ゼオライト膜が炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後であることの確認>
本発明の一態様においては、ゼオライト膜が、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後であることを確認する工程を行なってもよい。
炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜であるか否かは、例えば次のような方法で確認することができる。例えば、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜は、接触させる前に比べて分離性能が劣化している場合があるので、接触前後の分離性能を比較してもよい。また、接触前の分離性能が不明である場合においても、当該ゼオライト膜に含まれる有機物を熱分解させて、その熱分解前後でガスの分離性能を確認してもよい。つまり、熱分解前より後の方がガスの分離性能が向上していれば、当該ゼオライト膜は炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のものであったことを確認できる。当該熱分解の条件は、前述した有機テンプレートを取り除くための焼成する条件に準ずるので、説明を繰り返さない。また、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜は、接触前より重量が増加しているため、焼成して有機物を除去した後の重量変化によっても判別可能である。焼成により有機物が除去され重量が減少することは、接触前の膜でも未焼成のものにおいて見られるが、未焼成のものは有機構造規定剤(有機アミン等)を含むので、N含有率をT‐N計やCHN分析で判別可能であり、特にN含有量が高い場合、CHN分析が適する。
炭化水素化合物を含有するゼオライト膜であることの確認も、同様の手法で行うことができる。
<液体に接触させる工程>
本発明の一態様に係る分離方法では、ゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む。
本発明における液体に接触させる工程の一態様について説明する。ここに例示する方法は、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜を用いる方法である。具体的には、当該ゼオライト膜の一方に、水溶性有機化合物を含む液体の混合物を接触させ、その逆側を混合物が接触している側よりも低い圧力とすることによって混合物から当該ゼオライト膜に透過性がある物質(混合物中の透過性が高い物質)を選択的に透過させる。これにより、混合物から透過性の高い物質を分離することができる。そしてその結果、水溶性有機化合物を含む混合物中の特定の水溶性有機化合物(混合物中の透過性が低い物質)の濃度を高めることで、特定の水溶性有機化合物を分離回収、あるいは濃縮する方法である。具体的に言えば、水と水溶性有機化合物の混合物の場合、ゼオライト膜が含むゼオライトの種類によっては、水がゼオライト膜に対する透過性が高いので、混合物から水と水溶性有機化合物とが分離され、水溶性有機化合物は元の混合物中で濃縮される。パーベーパレーション、ベーパーパーミエーションと呼ばれる分離・濃縮方法はひとつの形態である。
本発明の一態様において用いるゼオライト膜複合体の形状は特に限定されるものでなく、前述の炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜をそのまま用いればよい。炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜としては、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後に、加熱その他の処理を行った後に、炭化水素化合物を含有するガスに接触させたものであってもよい。その他の、ゼオライト膜に関する構成も、前述の炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜をそのまま用いればよく、特に制限されないが、以下に、本発明の一態様として、液体の分離に好ましい構成を例に説明する。
本発明の一態様におけるゼオライト膜複合体の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、例えば、CHA型ゼオライトの有効細孔径3.8Å以上の大きさを有する気体分子または液体分子とそれ以下の気体または液体分子との分離に好適に使用される。なお分離に供される分子に上限はないが、分子の大きさは通常、100Å以下程度である。
また、本発明の一態様において用いるゼオライト膜複合体のもう一つの分離機能は親水性の差を利用した分離である。ゼオライトの種類にもよるが、一般にはゼオライト骨格中Alが一定量含有されることにより、親水的性質が現れる。CHA型ゼオライト膜の結晶化条件を制御すれば結晶中のSiO/Alモル比を制御することは可能である。このような親水性膜を用いれば水溶性有機化合物と水の混合溶液から水分子を選択的に膜透過させることにより水溶性有機化合物を分離、濃縮することができる。すなわち、有機酸類/水、アルコール類/水、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類/水、アルデヒド類/水、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類/水、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミドなどの窒素を含む有機化合物(N含有有機物)/水、酢酸エステル等のエステル類/水等の、水溶性有機化合物と水の混合水溶液から水を選択的に透過して水溶性有機化合物を分離、濃縮することができる。この場合に水溶性有機化合物と水との混合物における水の含有量は特に制限は無く、A型ゼオライトでは構造が壊れてしまう高い水含有量、例えば20重量%以上の水含有量の混合物においても構造が壊れることなく高い選択率と透過流束を実現することができる。
また、有機酸/水以外の系においても、有機酸や無機酸が存在していても耐酸性が高いので使用することができる。
本発明の一態様におけるゼオライト膜複合体により分離可能な水溶性有機化合物の例としては、酢酸、プロピオン酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸類や、スルフォン酸、スルフィン酸、ハビツル酸、尿酸、フェノール、エノール、ジケトン型化合物、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルフォンアミド、第1級および第2級ニトロ化合物などの有機酸や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミドなどの窒素を含む有機化合物(N含有有機物)、酢酸エステル等のエステル類などがあげられる。
本発明の一態様においては、ゼオライト分離膜をガスに接触させる態様によっては、当該ゼオライト分離膜の液体分離性能を調整、変更等することが可能である。例えば、後述の実施例に示すように、ガスに接触させることによって、選択性を向上させることができる。これは、ゼオライト分離膜の表面、細孔内、欠陥、粒界等に炭化水素化合物が付着することによる影響と考えられる。換言すれば、本発明の一態様に係る分離方法は、ガスを接触させることにより液体の分離性能を調整する工程を含むともいえる。
本発明の一態様では、無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体を用いると分離膜として、好ましくは浸透気化分離膜として機能し有機物を含む気体または液体の混合物から特定の化合物を分離し、さらに濃縮する、実用上も十分な処理量をもち十分な分離の性能も十分な膜分離が可能となる。ここでいう十分な処理量とは膜を透過する物質の透過流束が1kg/(m・h)以上であることをいう。また十分な分離の性能とは膜分離で一般的に用いられる分離の性能を表す、分離係数=(Pα/Pβ)/(Fα/Fβ)[ここでPαは透過液中の主成分の重量パーセント濃度、Pβは透過液中の副成分の重量パーセント濃度、Fαは透過液において主成分となる成分の被分離混合物中の重量パーセント濃度、Fβは透過液において副成分となる成分の被分離混合物中の重量パーセント濃度]が100以上であることあるいは透過液中の主成分の濃度が90重量%以上であることをいう。
次に、本発明の一態様における液体を分離する工程を行なうための装置の一例について、図3を用いて説明する。図3は、液体分離装置200の構成を示す図である。
液体分離装置200は、スターラー51、ヒーター52、耐圧容器54、撹拌子53、安全弁56、圧力計57、透過液捕集用トラップ58、コールドトラップ59、真空ポンプ60を備えている。被分離液は、ヒーター52が取り付けられた耐圧容器54に格納される。耐圧容器54に格納されている被分離液は、スターラー51及び撹拌子53によって撹拌される。ゼオライト膜複合体55は、耐圧容器54内の被分離液に接触した状態で保持される内に入れられる。また、耐圧容器54は、機器を異常圧力から守るための安全弁56を備え、圧力計57により耐圧容器54内の圧力を測定できる。また、ゼオライト膜複合体55と透過液捕集用トラップ58とを接続する管にも圧力計57が設けられており、当該管内の圧力を測定できる。
ゼオライト膜複合体55は、真空ポンプ60によって内側が減圧され、耐圧容器54に格納されている被分離液が接触している外と圧力差が生じる。例えば、被分離液がアルコールと水との混合物である場合、当該圧力差によって被分離液中の水が、選択的にゼオライト膜複合体55に浸透気化して透過する。透過した物質は透過液捕集用トラップ58で捕集される。一方、アルコールはゼオライト膜複合体55の外側に滞留する。なお、コールドトラップ59によって、透過液に含まれる水およびアルコールが真空ポンプ60内に混入することを防止できる。
<まとめ>
以上のように本発明の態様1は、炭化水素化合物を含有するガスに接触させたゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む。
本発明の態様2は、前記炭化水素化合物は、炭素数が2以上の炭化水素化合物である、態様1に記載の分離方法。
本発明の態様3は、前記ガスは、二酸化炭素及び窒素のうち少なくとも一方と、メタンとを含み、前記炭化水素化合物として、メタン以外の炭化水素化合物を含む、態様1又は態様2に記載の分離方法。
本発明の態様4は、前記液体の水の含有量は、水を10質量%以上、20質量%以下である、態様1又は2に記載の分離方法。
本発明の態様5は、炭化水素化合物を含有するゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む、分離方法。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
〔測定方法〕
以下の実験例において、測定は次の通り実施した。
<X線回折(XRD)測定>
X線回折(XRD)測定は以下の条件および操作方法に基づき行った。
(装置)
株式会社リガク製 RINT-UltimaIII
(光学系仕様)
縦型ゴニオメーター D990825A03
入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (フレキシブル光学系、5°)
Divergence Slit (可変スリット)
受光側:モノクロメータ
長尺スリット
Niスリット
X線出力(CuKα):40kV、30mA
操作軸θ/2θ
走査範囲(2θ):3.0-50.0°
スキャン幅:0.01°
スキャン速度:1.0~1.5°/min
ピーク強度比は、測定値からバックグラウンドの値を引いてから、それぞれのピーク強度の比として算出した。
<SiO/Alモル比の測定>
ゼオライト膜複合体のゼオライト膜のSiO/Alモル比の測定は以下の条件および操作方法に基づき行った。
任意の一部分の断面を切り出しクロスセクションポリッシャーにて作製した平滑面を、倍率5000倍でSEM観察して得た3視野の像において、それぞれ2領域(膜に平行に横長の領域で、横幅2~5μm×縦幅0.5~2μmの範囲で、膜表面および支持体からそれぞれ1μm以上離した領域)からゼオライト膜のSiO/Alモル比を求めた。
測定条件は下記の通りである。
装置: SEM:JSM-7900F(日本電子社製)
EDX:ULTim MAX(Oxford社製)
測定条件: 加速電圧:6kV(2次電子像、EDXマッピング)
解析ソフト:AZtec Live(Oxford社製)
<膜厚>
ゼオライト膜複合体のゼオライト膜の膜厚の測定は以下の条件および操作方法に基づき行った。
任意の一部分の断面を切り出し、クロスセクションポリッシャーにて作製した平滑面を、倍率2000倍でSEM観察して得た2~6視野の像を用いて、ゼオライト膜の表面から多孔質支持体表面の距離の算術平均値を測定した。
低倍率で、多孔質支持体とゼオライト膜の界面が目視で水平になるよう取得画像の傾きを設定し、1μm間隔で、ゼオライト膜表面から多孔質支持体に向かって引いた垂線の長さの算術平均を算出して、膜厚とした。垂線の末端は、多孔質支持体表面から支持体内部方向へ向かう垂線上に初めて多孔質支持体の粒子が現れる部位とした。
多孔質支持体とゼオライト膜の界面を明らかにするため、二次電子像とEDX像を重畳して表示させてから、上記の膜厚算出に用いた。
測定条件は下記の通りである。
装置:
SEM:JSM-7900F(日本電子社製)
EDX:ULTim MAX(Oxford社製)
加速電圧:6kV
画像生成用解析ソフト:AZtec Live(Oxford社製)
画像処理ソフト:ImageJ
<ゼオライト膜複合体の作製>
[実施例1]
WO2010/098473を参考に、脱塩水に25%KOH水溶液、1N-NaOH水溶液を加え、水酸化アルミニウムを添加して溶解させ透明溶液とした。さらに有機テンプレートとして20質量%N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」と称する。)水溶液を加えたのち、コロイダルシリカを加えて撹拌し、水性反応混合物とした。
無機多孔質支持体として、多孔質アルミナチューブを用いた。
種結晶として、CHA型ゼオライトを用いた。この種結晶を上記支持体に付着させた。
種結晶を付着させた支持体を、上記水性反応混合物の入った反応缶に垂直方向に浸漬して、反応缶を密閉し、静置状態で、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後にゼオライト膜複合体を水性反応混合物から取り出し、洗浄後、乾燥させた。
ゼオライト膜複合体をXRDで測定した。ゼオライト膜複合体のゼオライト膜のXRDパターンから、CHA型ゼオライトが生成していることがわかった。また(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=1.4、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.56であった。
[実施例2]
WO2013/125660を参考に、水性反応混合物の組成を変更し、実施例1に記載の手法と同様の手法で、ゼオライト膜複合体を得た。
得られたゼオライト膜複合体を上記の条件でXRD測定した。ゼオライト膜複合体のゼオライト膜のXRDパターンから、CHA型ゼオライトが生成していることがわかった。また(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=3.1、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.45であった。
ゼオライト膜複合体のゼオライト膜の膜厚を上記の方法により測定したところ、4.5μmであった。
ゼオライト膜複合体のゼオライト膜のSiO/Alモル比を上記の方法により測定したところ、42であった。
<ガス接触後の液体分離性能の評価>
実施例1及び2のゼオライトについて、まず、液体分離試験を行なって、液体分離性能を確認した後、ガス分離性能が低くなるまでガスと接触させるガス接触試験を行ない、次に、再度液体分離試験を行なって、液体分離性能を評価した。
[1回目の液体分離試験]
実施例1で得られた多孔質支持体-ゼオライト膜複合体を長さ8cmに切断したものを使用して、パーベーパレーション法により130℃の水/イソプロパノール(IPA)溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
パーベーパレーション法には、前述した図3に示す液体分離装置200を用いた。真空ポンプ60によってゼオライト膜複合体55の内側を減圧することによって、耐圧容器54に格納されている被分離液が接触している外との圧力差を約5気圧とした。20~60分ごとに、透過液捕集用トラップ58に捕集された透過液の重量、透過液中の水の濃度、供給液中の水の濃度を測定した。透過液の重量から算出して得た透過流束(g/mh)と、当該透過流束に対応する供給液中の水の濃度の対数平均とをプロットした。より具体的には対数平均は次の通り算出した。
具体的には、液体分離試験において、透過液の捕集を、第1ステップ、第2ステップ、・・・第nステップ(最終ステップ)と、n回実施することとした。
そして、Ln Feed_1(wt.%)を次の通り算出する。
Ln Feed_1(wt.%)=(C0-C1)/LN(C0/C1)
(LN( )は自然対数である。)
ここで、C0及びC1は以下の通りである。
C0:透過液捕集の第1ステップでの開始時の供給液中水濃度(wt.%)
=仕込み組成水濃度(wt.%)
C1:透過液捕集の第1ステップでの終了時の供給液中水濃度(wt.%)
=透過液捕集の第2ステップでの開始時の供給液中水濃度(wt.%)
同様に、Ln Feed_2(wt.%)を次の式を用いて算出する。
Ln Feed_2(wt.%)=(C1-C2)/LN(C1/C2)
ここで、C2は以下の通りである。
C2:透過液捕集の第2ステップでの終了時の供給液中水濃度(wt.%)
=透過液捕集の第3ステップでの開始時の供給液中水濃度(wt.%)
この計算を第1ステップから第nステップ(最終ステップ)までの各透過液捕集ステップで実施した。
次に、対数平均が5%に最も近い5%前後の各1点(計2点)から、5%のときの透過流束の近似値を算出した。
また、同様にして、供給液中の水の濃度が5%のときの、透過液中の水の濃度の近似値を算出した。また、水のイソプロパノールに対する分離係数αは次の式を用いて算出した。
α=(透過液中の水濃度/IPA濃度)/(供給液中の水濃度/IPA濃度)
例えば、「実施例1 1回目」では、透過液中水濃度が99.6wt.%であり、Ln(対数平均)供給液中水濃度=5%での近似値であるので、α=(99.6/(100-99.6))/(5/95)=4731となる。
[ガス接触試験]
実施例1及び2にゼオライト膜複合体に対して、前述した図2に模式的に示す装置を用いて、ガス接触試験を行った。以下、分離膜30は、各実施例のゼオライト膜複合体である。また、試料ガスとして、水素(H)(堀場エステック社製水素発生器OPGU-2200使用)、窒素(N)(東邦酸素工業社製、純度99.99%以上)、二酸化炭素(CO)(液化炭酸ガス、東邦酸素工業社製、純度99.5%以上)、メタン(CH)(圧縮純メタンガスG1グレード、大陽日酸JFP株式会社製、純度99.999%以上)、ヘリウム(He)(ジャパンヘリウムセンター社製、純度99.995%以上)、プロパン(C)(液化プロパンガス、住友精化株式会社製、純度99.5%以上)を用いた。
ガス接触試験は、図2に示す分離膜モジュール32を用いた。分離膜モジュール32において、分離膜30を透過した透過ガス40を、配管に接続されている流量計(図示せず)にて測定した。また、水分及び空気等の成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給ガスによるパージ処理を行なった。試料温度及び分離膜30の供給ガスX側と透過ガス40側の差圧を一定として、透過ガス流量が安定した後に、分離膜30を透過した試料ガス(透過ガス40)の流量を測定することで、ガスのパーミエンス[mol・(m・s・Pa)-1]を算出した。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給ガスの供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いた。
(前処理)
まず、前処理として、140℃で、供給ガスXとしてCOを耐圧容器35と分離膜30との円筒の間に導入して、圧力を約0.02MPaに保ち、分離膜30の円筒の内側を0.1MPaとして、COの透過量が安定するまで乾燥した。
(1回目のガス接触試験)
次に、水素、窒素、二酸化炭素、メタン、ヘリウムを、それぞれ100%の単成分で、この順で、供給した。条件は、供給ガス圧0.1MPa、透過ガス圧0.00MPa、温度140℃とした。それぞれのガスについてパーミエンスを算出した。
(プロパン接触処理)
次に、供給ガスを二酸化炭素からプロパンに変更し、供給ガス圧0.3MPa、透過ガス圧0.3MPa、温度140℃の条件で、分離膜30の内外表面にプロパンを供給して供給側および透過側の雰囲気をプロパンに置換した。引き続き、供給ガス圧0.3MPa、透過ガス圧0.3MPa、温度140℃の条件で、分離膜30の内外表面にプロパンを2時間供給した。
(2回目のガス接触試験)
1回目のガス接触試験と同じ条件で、二酸化炭素、メタンを、それぞれ100%の単成分で、この順で、供給した。それぞれのガスについてパーミエンスを算出した。
[2回目の液体分離試験]
1回目の液体分離試験と同じ条件で、パーベーパレーション法により130℃の水/イソプロパノール(IPA)溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を行ない、透過流束等を算出した。
<結果>
以上の結果を表1に示す。なお、1回目のガス接触試験のCOの透過係数に対する2回目のガス接触試験のCOの透過係数の割合を算出して、COの透過係数維持率(%)とした。また、1回目の液体分離試験のQw(g/mh)に対する2回目の液体分離試験のQw(g/mh)の割合を算出して、Qw維持率(%)を算出した。なお、表1において、Qtは透過液全体の透過流束であり、Qwは透過液中の水の透過流束であり、Qaは透過液中のIPAの透過流束である。
表1に示すように、ガス接触試験の前後におけるQw維持率が高かったことから、本発明の一態様によれば、ガス接触試験によってガス分離性能が低下したゼオライト膜を用いても、液体分離に好適に使用できることが示された。よって、本発明によれば、ガス分離に用いたゼオライト膜をより容易に再利用することが示された。
本発明の一態様によれば、炭化水素化合物を含有するガスに接触させた後のゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する用途に容易に再利用できる。
30 分離膜、31 供給ライン、32 分離膜モジュール、33 圧力計、34 配管、35 耐圧容器、36 流出ライン、37 エンドピン、38 接続部、39 背圧弁、40 透過ガス、x 供給ガス、y 非透過ガス、51 スターラー、52 ヒーター、53 撹拌子、54 耐圧容器、55 ゼオライト膜複合体、56 安全弁、57 圧力計、58 透過液捕集用トラップ、59 コールドトラップ、60 真空ポンプ

Claims (5)

  1. 炭化水素化合物を含有するガスに接触させたゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む、分離方法。
  2. 前記炭化水素化合物は、炭素数が2以上の炭化水素化合物である、請求項1に記載の分離方法。
  3. 前記ガスは、二酸化炭素及び窒素のうち少なくとも一方と、メタンとを含み、
    前記炭化水素化合物として、メタン以外の炭化水素化合物を含む、請求項1又は2に記載の分離方法。
  4. 前記液体の水の含有量は、水を10質量%以上、20質量%以下である、請求項1又は2に記載の分離方法。
  5. 炭化水素化合物を含有するゼオライト膜により、水溶性有機化合物及び水を含む液体を分離する工程を含む、分離方法。
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