JP6454555B2 - 水酸化物イオン伝導緻密膜の評価方法 - Google Patents

水酸化物イオン伝導緻密膜の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する方法に関する。
ハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)(以下、LDHともいう)は、水酸化物の層と層の間に交換可能な陰イオンを有する物質群であり、その特徴を活かして触媒や吸着剤、耐熱性向上のための高分子中の分散剤等として利用されている。特に、近年、水酸化物イオンを伝導する材料として注目され、アルカリ形燃料電池の電解質や亜鉛空気電池の触媒層への添加についても検討されている。
従来の適用分野である触媒等を考えた場合、高比表面積が必要であることから粉末状LDHでの合成及び使用で十分であった。一方、アルカリ形燃料電池などの水酸化物イオン伝導性を活かした電解質への応用を考えた場合、燃料ガスの混合を防ぎ、十分な起電力を得るためにも高い緻密性のLDH膜が望まれる。
特許文献1及び2並びに非特許文献1には配向LDH膜が開示されており、この配向LDH膜は高分子基材の表面を尿素及び金属塩を含有する溶液中に水平に浮かせてLDHを核生成させ配向成長させることにより作製されている。これらの文献で得られた配向LDH薄膜のX線回折結果はいずれも(003)面の強いピークが観察されるものである。
ところで、ニッケル亜鉛二次電池や亜鉛空気二次電池等の亜鉛二次電池は古くから開発及び検討がなされてきたものの、未だ実用化に至っていない。これは、充電時に負極を構成する亜鉛がデンドライトという樹枝状結晶を生成し、このデンドライトがセパレータを突き破って正極と短絡を引き起こすという問題があるためである。したがって、ニッケル亜鉛二次電池や亜鉛空気二次電池等の亜鉛二次電池において、亜鉛デンドライトによる短絡を防止する技術が強く望まれている。
中国登録特許公報CNC1333113号 国際公開第2006/050648号
本発明者らは、LDHの緻密なバルク体(以下、LDH緻密体という)の作製に先だって成功している。また、LDH緻密体について水酸化物イオン伝導度の評価を実施する中で、LDH粒子の層方向にイオンを伝導させることで高い伝導度を示すことを知見している。しかしながら、亜鉛空気電池やニッケル亜鉛電池等のアルカリ二次電池へ固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、LDH緻密体が高抵抗であるとの問題がある。したがって、LDHの実用化のためには薄膜化による低抵抗化が望まれる。この点、特許文献1及び2並びに非特許文献1に開示される配向LDH膜は緻密性において十分なものとはいえない。そこで、高度に緻密化されたLDH緻密膜が望まれる。特に、固体電解質セパレータとしてLDH緻密膜の適用を考えた場合、電解液中の水酸化物イオンがLDH緻密膜を通して移動しなければならない一方、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛二次電池で亜鉛デンドライト成長を引き起こすZnや亜鉛空気電池でアルカリ炭酸塩の析出を引き起こす二酸化炭素)を極力透過させないといった高度な緻密性が望まれる。また、このような高度な緻密性はLDH緻密膜に限らず、有機材料及び無機材料を問わず、水酸化物イオン伝導性を有する他の材質の緻密膜にも同様に望まれるのはいうまでもない。
本発明者らは、今般、水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面からHeガスを透過させ、そのHe透過度を評価することにより、水酸化物イオン伝導緻密膜が電池用セパレータ等の所定の用途に適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、水酸化物イオン伝導緻密膜が電池用セパレータ等の所定の用途に適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価可能な方法を提供することにある。
本発明の一態様によれば、水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する方法であって、
水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にHeガスを供給して前記緻密膜にHeガスを透過させる工程と、
単位時間あたりの前記Heガスの透過量F、前記Heガス透過時に前記緻密膜に加わる差圧P、及び前記Heガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式によりHe透過度を算出し、該He透過度に基づいて前記緻密膜の緻密性を評価する工程と、
を含む、方法が提供される。
He透過度測定系の一例を示す概念図である。 図1Aに示される測定系に用いられる試料ホルダ及びその周辺構成の模式断面図である。 Zn透過割合測定装置の一例を示す概念図である。 図2Aに示される測定装置に用いられる試料ホルダの模式断面図である。 層状複水酸化物(LDH)板状粒子を示す模式図である。 例A1で作製したアルミナ製多孔質基材の表面のSEM画像である。 例A3及びA4で測定されたHe透過度とZn透過割合の関係を示すグラフである。 例B2において試料の結晶相に対して得られたXRDプロファイルである。 例B3において観察された膜試料の表面微構造を示すSEM画像である。 例B3において観察された複合材料試料の研磨断面微構造のSEM画像である。 例B5で使用された緻密性判別測定系の分解斜視図である。 例B5で使用された緻密性判別測定系の模式断面図である。
水酸化物イオン伝導緻密膜の評価方法
本発明は、水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する方法に関する。水酸化物イオン伝導緻密膜は、好ましくは層状複水酸化物緻密膜(LDH緻密膜)であるが、これに限定されず、水酸化物イオン伝導性を有するあらゆる緻密膜であってよく、例えば水酸化物イオン伝導性を有する無機材料及び/又は有機材料を含んでなる膜であることができる。いずれにしても、水酸化物イオン伝導緻密膜は透水性を有しない程に緻密な膜であることが望まれる。この緻密膜は水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しないことで、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。前述したとおり、電池用固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、バルク形態のLDH緻密体では高抵抗であるとの問題があったが、緻密膜の形態とすることで厚みを薄くして低抵抗化を図ることができる。すなわち、緻密膜は、金属空気電池(例えば亜鉛空気電池)及びその他各種亜鉛二次電池(例えばニッケル亜鉛電池)等の各種電池用途に適用可能な固体電解質セパレータとして、極めて有用な材料となりうる。もっとも、局所的且つ/又は偶発的に透水性を有する欠陥が緻密膜に存在する場合には、当該欠陥を適当な補修剤(例えばエポキシ樹脂等)で埋めて補修することで水不透性を確保してもよく、そのような補修剤は必ずしも水酸化物イオン伝導性を有する必要はない。
本発明の方法は、本来的に上記の如く緻密に構成されるべき緻密膜において、緻密性の有無、とりわけ高いレベルの緻密性の有無を評価するものである。この目的のために、本発明の方法は、水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にHeガスを供給して緻密膜にHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出して水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する工程とを含む。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時に緻密膜に加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛二次電池で亜鉛デンドライト成長を引き起こすZnや亜鉛空気電池でアルカリ炭酸塩の析出を引き起こす二酸化炭素)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。この点、水素ガスはH分子により構成されるため、ガス構成単位としてはHe原子単体の方がより小さい。そもそもHガスは可燃性ガスのため危険である。そして、上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。こうして、本発明の方法によれば、水酸化物イオン伝導緻密膜が電池用セパレータ等の所定の用途に適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価することができる。
本発明の方法においては、水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にHeガスを供給して緻密膜にHeガスを透過させる。Heガスの供給は、後続の工程でHe透過度を算出できるように、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時に緻密膜に加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを特定できるような測定系で行われるのが好ましい。そのようなHe透過度測定系の一例が図1Aに示される。図1Aに示されるHe透過度測定系10は、圧力計12と、流量計14、緻密膜が保持された試料ホルダ16と備えてなる。この測定系10において、Heガスは、圧力計12及び流量計14を介して試料ホルダ16に供給され、この試料ホルダ16に保持された緻密膜の一方の面に供給され、この緻密膜を通過し他方の面から排出される。
このように、緻密膜は、Heガスの供給に先立ち、試料ホルダ16に保持されるのが好ましい。試料ホルダ16の一例が図1A及び図1Bに示される。これらの図に示されるように、試料ホルダ16は、Heガスの試料ホルダ16内への導入を可能とするガス供給口16aと、緻密膜18の一方の面の所定領域へのHeガスの供給を可能とする密閉空間16bと、緻密膜18を透過したHeガスの排出を可能とするガス排出口16cとを備えてなる。このような構成によれば、ガス供給口16aから密閉空間16bに供給したHeガスを確実に緻密膜18に透過させてガス排出口16cから排出させることができる。したがって、単位時間あたりのHeガスの透過量Fを正確に把握することができる。しかも、この試料ホルダ16は容易に入手可能な部材を用いて簡便に構成することができる。例えば、図1Bに示される試料ホルダ16にあっては、緻密膜18(好ましくは多孔質基材20上に形成された複合材料の形態で供される)の外周に沿って接着剤22を介して、中央に開口部を有する治具24に取り付けられ、この治具24の上端及び下端にパッキン等の密封部材26a,26bを配設し、さらに密封部材26a,26bの外側から、フランジ等の開口部を有する支持部材28a,28bにより挟持された構成となっている。こうして、密閉空間16bが、緻密膜18、治具24、密封部材26a及び支持部材28aにより区画される。なお、緻密膜18が多孔質基材20上に形成された複合材料の形態で供される場合には、緻密膜18側をガス供給口16aに向けて配置するのが、Heガスの供給圧による緻密膜18の多孔質基材20からの剥離を防止する観点から好ましい。1対の支持部材28a,28bは、ガス排出口16c以外の部分からHeガスの漏れが生じないように、ネジ等の締結手段30により互いに堅く締め付けるのが好ましい。また、ガス供給口16aには所望により継手32を介して、Heガスを供給するためのガス供給管34が接続されうる。このような構成によれば簡単に組み立て及び分解が行えるため、多数の緻密膜に対して効率良くHeガス透過性の評価を行うことができる。
次いで、He透過度を算出して水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する。He透過度の算出は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時に緻密膜に加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。F、P及びSの各パラメータの単位は特に限定されないが、単位時間あたりのHeガスの透過量Fの単位をcm/min、差圧Pの単位をatm、及び膜面積Sの単位をcmとするのが好ましい。差圧PはHeガスが緻密膜を透過するような値であればよいが、差圧Pが0.001〜10atmの範囲内となるようにHeガスが供給されるのが好ましく、より好ましくは0.01〜3atm、さらに好ましくは0.01〜0.9atm、特に好ましくは0.05〜0.9atmの範囲内である。
He透過度が10cm/min・atm以下である緻密膜を二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に適したものとして認定し、所望により該認定された緻密膜を二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に供するのが好ましい。He透過度が10cm/min・atm以下である緻密膜は、電解液中においてZnの透過を極めて効果的に抑制できるため、亜鉛二次電池等の二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に用いた場合に亜鉛デンドライトの成長を効果的に抑制できるものと原理的に考えられる。緻密膜のHe透過度は10cm/min・atm以下が好ましく、より好ましくは5.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。
上記のように二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に適したものとして認定された緻密膜は、液接触下においてZnが極めて透過しにくい(あるいは殆ど透過しない)ものである。具体的には、上記認定された緻密膜は、水接触下で評価した場合における単位面積あたりのZn透過割合が10m−2・h−1以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0m−2・h−1以下より好ましくは4.0m−2・h−1以下より好ましくは3.0m−2・h−1以下、より好ましくは1.0m−2・h−1以下である。このように低いZn透過割合は、電解液中においてZnの透過を極めて効果的に抑制できることを意味する。このため、亜鉛二次電池等の二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に用いた場合に亜鉛デンドライトの成長を効果的に抑制できるものと原理的に考えられる。
Zn透過割合は、緻密膜にZnを所定時間透過させる工程と、Zn透過割合を算出する工程とを経て決定される。緻密膜へのZnの透過は、水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にZnを含有する第一の水溶液を接触させ、かつ、緻密膜の他方の面にZnを含有しない第二の水溶液又は水を接触させることにより行われる。また、Zn透過割合は、Zn透過開始前の第一の水溶液のZn濃度C、Zn透過開始前の第一の水溶液の液量V、Zn透過終了後の第二の水溶液又は水のZn濃度C、Zn透過終了後の第二の水溶液又は水の液量V、Znの透過時間t、及びZnが透過する膜面積Sを用いて、(C×V)/(C×V×t×S)の式により算出する。C、C、V、V、t及びSの各パラメータの単位は濃度C及びCの単位が揃っており且つ液量V及びVの単位が揃っているかぎり特に限定されないが、Znの透過時間tの単位をhとし、膜面積Sの単位をmとするのが好ましい。Zn透過前の第一の水溶液のZn濃度Cは0.001〜1mol/Lの範囲内であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜1mol/L、さらに好ましくは0.05〜0.8mol/L、特に好ましくは0.2〜0.5mol/L、最も好ましくは0.35〜0.45mol/Lである。また、Znの透過時間は1〜720時間とするのが好ましく、より好ましくは1〜168時間、さらに好ましくは6〜72時間、特に好ましくは12〜24時間である。このようにZn含有水溶液とZn非含有液を用いてZn透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、亜鉛二次電池で亜鉛デンドライト成長を引き起こすZnを極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を確実かつ高精度に評価することができる。そして、上述した式により定義されるZn透過割合という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。このZn透過割合は亜鉛デンドライト析出のしにくさを判断するための有効な指標となりうる。というのも、水酸化物イオン伝導緻密膜を亜鉛二次電池にセパレータとして用いた場合、緻密膜の一方の側(亜鉛負極側)の負極電解液にZnが含有されていても、他方の側の(本来Zn非含有の)正極電解液にZnが透過しなければ、正極電解液中での亜鉛デンドライトの成長は効果的に抑制されるものと原理的に考えられるためである。こうして、本態様によれば、水酸化物イオン伝導緻密膜が電池用セパレータ等の所定の用途(特に亜鉛デンドライト成長が問題となる亜鉛二次電池用途)に適した十分に高い緻密性を有するのか否かを確実かつ高精度に評価することができる。
Zn透過割合の測定においては、水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にZnを含有する第一の水溶液を接触させて、他方の面に接触させたZnを含有しない第二の水溶液又は水(以下、第二の水溶液と総称する)へとZnを透過させる。これらの水溶液との接触は、後続の工程でZn透過割合を算出できるように、Zn透過開始前の第一の水溶液のZn濃度C、Zn透過開始前の第一の水溶液の液量V、Zn透過終了後の第二の水溶液又は水のZn濃度C、Zn透過終了後の第二の水溶液又は水の液量V、及びZnが透過する膜面積Sを特定できるような測定装置で行われるのが好ましい。そのようなZn透過測定装置の一例が図2Aに示される。図2Aに示される測定装置40は、緻密膜を測定装置内に保持する試料ホルダ42と、試料ホルダ42の一方の側に設けられる第一槽44と、試料ホルダ42の他方の側に設けられる第二槽46とを備えてなる。第一槽44にはZnを含有する第一の水溶液48が緻密膜の一方の面に接触可能に収容される一方、第二槽46にはZnを含有しない第二の水溶液50が緻密膜の他方の面に接触可能に収容される。すなわち、第一槽44に収容される第一の水溶液48と第二槽46に収容される第二の水溶液50は試料ホルダ42内に保持される緻密膜によって完全に仕切られている。したがって、第一の水溶液48中に含まれるZnがどの程度の割合で緻密膜を経て第二の水溶液50に透過するのかを確実かつ高精度に評価することができる。
このように、緻密膜は、Znの透過に先立ち、測定装置40内、特に試料ホルダ42内に保持される。試料ホルダ42の一例が図2Bに示される。図2Bに示される試料ホルダ42にあっては、緻密膜52(好ましくは多孔質基材54上に形成された複合材料の形態で供される)の外周に沿って接着剤56を介して、中央に開口部を有する治具58に取り付けられた構成となっている。この治具58の両側に図2Aに示されるようにパッキン等の密封部材60a,60bを配設し、さらに密封部材60a,60bの外側から、フランジ62a,62bにより挟持された構成となっている。フランジ62aは第一槽44と一体化されているのが好ましい。同様に、フランジ62bは第二槽46と一体化されているのが好ましい。なお、緻密膜52が多孔質基材54上に形成された複合材料の形態で供される場合には、緻密膜52側をZnを含有する第一の水溶液48と接触可能に配置するのが、Zn透過性をより確実に評価できる点で好ましい。1対のフランジ62a,62bは、液漏れが生じないように、ネジ等の締結手段64により互いに堅く締め付けるのが好ましい。このような構成によれば簡単に組み立て及び分解が行えるため、多数の緻密膜に対して効率良くZn透過性の評価を行うことができる。
第一の水溶液48は、アルカリ金属水酸化物水溶液であるのが好ましく、このアルカリ金属水酸化物水溶液にZnOが溶解されてなるのが好ましい。また、第二の水溶液50は、ZnOが溶解されていないアルカリ金属水酸化物水溶液であるのが好ましく、より好ましくはZnOが溶解されていないことを除いて、第一の水溶液48と同種かつ同濃度のアルカリ金属水酸化物水溶液である。好ましいアルカリ金属水酸化物は水酸化カリウムである。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液は亜鉛二次電池等のアルカリ電池において使用される典型的な電解液であるため、かかる電解液と近い又は同等の組成の水溶液を用いることで、電池用セパレータ(特に亜鉛二次電池用セパレータ)としての使用態様に近い又は同等の条件にてZn透過性を高精度に評価することができる。また、アルカリ金属水酸化物水溶液である第一の水溶液及び第二の水溶液の両方にAlを含む化合物が溶解されてなるのが好ましく、第一及び第二の水溶液の両方に互いに同濃度で溶解されてなるのがより好ましい。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液にLDH緻密膜を接触させた場合、LDHの典型的な構成元素であるAlが水溶液中に溶出して緻密膜の劣化を招くことがあるが、Alを含む化合物を第一及び第二の水溶液に添加しておくことでそのようなAlの溶出及びそれによる緻密膜の劣化を防止することができる。このAlは、何らかの形態で電解液に溶解されていればよく、典型的には、金属イオン、水酸化物及び/又はヒドロキシ錯体の形態で電解液に溶解されうる。例えば、Alが溶解される形態としては、Al3+、Al(OH)2+、Al(OH) 、Al(OH) 、Al(OH) 、Al(OH) 2−等が挙げられる。Alを含む金属化合物の好ましい例としては、水酸化アルミニウム、γアルミナ、αアルミナ、ベーマイト、ダイアスポア、ハイドロタルサイト、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは水酸化アルミニウム及び/又はγアルミナであり、最も好ましくは水酸化アルミニウムである。Alを含む化合物は第一の水溶液及び第二の水溶液におけるAl濃度が0.001mol/L以上となるように添加するのが好ましく、より好ましくは0.01mol/L以上、さらに好ましくは0.1mol/L以上、特に好ましくは1.0mol/L以上、最も好ましくは2.0mol/L以上、3.0mol/L超、又は3.3mol/L以上である。電解液におけるAlの濃度の上限値は特に限定されず、Al化合物の飽和溶解度に達していてもよいが、例えば20mol/L以下又は10mol/L以下である。
水酸化物イオン伝導緻密膜
上述のとおり、水酸化物イオン伝導緻密膜は、水酸化物イオン伝導性を有するあらゆる緻密膜であってよく、例えば水酸化物イオン伝導性を有する無機材料及び/又は有機材料を含んでなる膜であることができる。水酸化物イオン伝導性を有する無機材料は、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)で表される層状複水酸化物を含んでなるのが好ましい。すなわち、好ましい水酸化物イオン伝導緻密膜は層状複水酸化物緻密膜、すなわちLDH緻密膜(以下、LDH膜という)である。水酸化物イオン伝導緻密膜は透水性を有しない膜であることが望まれる。
LDH膜は、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)で表される層状複水酸化物(LDH)を含んでなり、好ましくはそのようなLDHから主としてなる。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO 2−が挙げられる。したがって、上記一般式は、少なくともM2+にMg2+を、M3+にAl3+を含み、An−にOH及び/又はCO 2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数ないし整数である。
LDH膜に含まれる層状複水酸化物は複数の板状粒子(すなわちLDH板状粒子)の集合体で構成され、当該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが好ましい。すなわち、LDH結晶は図3に示されるような層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記略垂直又は斜めの配向は、LDH膜にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH膜には、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、本発明者らは、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いとの知見を得ている。すなわち、LDH膜における上記略垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわちLDH膜又は多孔質基材の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH膜は層形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH膜は、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。その上、緻密化されているため、層厚方向への高い伝導度及び緻密性が望まれる電池用セパレータ等の機能膜の用途(例えば亜鉛空気電池用の水酸化物イオン伝導性セパレータ)に極めて適する。
特に好ましくは、LDH膜においてLDH板状粒子が略垂直方向に高度に配向してなる。この高度な配向は、LDH膜の表面をX線回折法により測定した場合に、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されることで確認可能なものである(但し、(012)面に起因するピークと同位置に回折ピークが観察される多孔質基材を用いた場合には、LDH板状粒子に起因する(012)面のピークを特定できないことから、この限りでない)。この特徴的なピーク特性は、LDH膜を構成するLDH板状粒子がLDH膜に対して略垂直方向(すなわち垂直方向又はそれに類する斜め方向、好ましくは垂直方向)に配向していることを示す。すなわち、(003)面のピークは無配向のLDH粉末をX線回折した場合に観察される最も強いピークとして知られているが、配向LDH膜にあっては、LDH板状粒子がLDH膜に対して略垂直方向に配向していることで(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出される。これは、(003)面が属するc軸方向(00l)面(lは3及び6である)がLDH板状粒子の層状構造と平行な面であるため、このLDH板状粒子がLDH膜に対して略垂直方向に配向しているとLDH層状構造も略垂直方向を向くこととなる結果、LDH膜表面をX線回折法により測定した場合に(00l)面(lは3及び6である)のピークが現れないか又は現れにくくなるからである。特に(003)面のピークは、それが存在する場合、(006)面のピークよりも強く出る傾向があるから、(006)面のピークよりも略垂直方向の配向の有無を評価しやすいといえる。したがって、配向LDH膜は、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されるのが、垂直方向への高度な配向を示唆することから好ましいといえる。この点、特許文献1及び2並びに非特許文献1にも開示されるLDH配向膜は(003)面のピークが強く検出されるものであり、略垂直方向への配向性に劣るものと考えられ、その上、高い緻密性も有してないものと見受けられる。
水酸化物イオン伝導緻密膜(好ましくはLDH膜)は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことで緻密膜の低抵抗化を実現できる。上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。緻密膜の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
水酸化物イオン伝導緻密膜(好ましくはLDH膜)は、少なくとも一方の側に非平坦表面構造を有していてもよい。この非平坦表面構造は隙間及び/又は起伏に富んだものであり、それによって表面積の極めて高い構造となっている。したがって、セパレータとして使用すべく電解液と接触させた場合に、電解液との界面の面積が増加し、その結果、界面抵抗を低くすることができる。そして、このような表面構造を有しつつ、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しない緻密な層構造を備えることで、電解液との界面抵抗が低いLDHセパレータを提供することが可能となる。非平坦表面構造は、緻密膜から遠ざかる方向(典型的には緻密膜に対して略垂直方向)に突出した針状粒子を含むのが好ましい。針状粒子の存在により表面積を有意に高くすることができ、それにより電解液と接触させた場合における界面抵抗をより効果的に有意に低減することができる。針状粒子の断面径は、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜0.3μmである。針状粒子の高さは0.5〜3.0μmが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。なお、本明細書において針状粒子の高さとは緻密膜の表面を基準とし、その表面から突出した部分の高さを意味する。非平坦表面構造は、空隙に富んだ開気孔性粗大粒子を含むのも好ましい。開気孔性粗大粒子の存在により表面積を有意に高くすることができ、それにより電解液と接触させた場合における界面抵抗をより効果的に低減することができる。特に好ましい開気孔性粗大粒子は、複数の針状又は板状粒子が互いに絡み合って複数の空隙を形成するように凝集してなる凝集粒子であり、この形態の凝集粒子はマリモ(毬藻)状粒子と表現することができ、表面積の増大効果に特に優れる。開気孔性粗大粒子は、緻密膜と平行方向に0.5〜30μmの直径を有するのが好ましく、より好ましくは0.5〜20μmである。開気孔性粗大粒子の高さは、0.5〜30μmが好ましく、より好ましくは1〜30μmである。なお、本明細書において開気孔性粗大粒子の高さとは緻密膜の表面を基準とし、その表面から突出した部分の高さを意味する。なお、非平坦表面構造は、針状粒子と開気孔性粗大粒子の両方を含むものであるのも好ましい。
複合材料
緻密膜(好ましくはLDH膜)は多孔質基材の少なくとも一方の表面に設けられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、緻密膜が、多孔質基材の少なくとも一方の表面に設けられた複合材料の形態で用意される。ここで、多孔質基材の表面とは、多孔質基材の概形を板として巨視的に見た場合の板面の最表面を主として指すが、多孔質基材中における微視的に見て板面最表面の近傍に存在する孔の表面をも付随的に包含しうるのはいうまでもない。
多孔質基材は、その表面にLDH膜を形成できるものが好ましく、その材質や多孔構造は特に限定されない。多孔質基材の表面にLDH膜を形成するのが典型的ではあるが、無孔質基材上にLDH膜を成膜し、その後公知の種々の手法により無孔質基材を多孔化してもよい。いずれにしても、多孔質基材は透水性を有する多孔構造を有するのが、電池用セパレータとして電池に組み込まれた場合に電解液をLDH膜に到達可能に構成できる点で好ましい。
多孔質基材は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))、及びその組合せである。これらの多孔質セラミックスを用いると緻密性に優れたLDH膜を形成しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム及び亜鉛が挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。
多孔質基材は0.001〜1.5μmの平均気孔径を有するのが好ましく、より好ましくは0.001〜1.25μm、さらに好ましくは0.001〜1.0μm、特に好ましくは0.001〜0.75μm、最も好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密なLDH膜を形成することができる。なお、本明細書において「透水性を有しない」とは、後述する例B5で採用される「緻密性判定試験」又はそれに準ずる手法ないし構成で透水性を評価した場合に、測定対象物(すなわちLDH膜及び/又は多孔質基材)の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行うことができる。この測定に用いる電子顕微鏡画像の倍率は20000倍以上であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得ることができる。測長には、電子顕微鏡のソフトウェアの測長機能や画像解析ソフト(例えば、Photoshop、Adobe社製)等を用いることができる。
多孔質基材の表面は、10〜60%の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15〜55%、さらに好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密なLDH膜を形成することができる。ここで、多孔質基材の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、多孔質基材の表面の気孔率は多孔質基材内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、多孔質基材の表面が緻密であれば多孔質基材の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、多孔質基材の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)多孔質基材の表面の電子顕微鏡画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールの電子顕微鏡画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
製造方法
LDH膜及びLDH含有複合材料は、(a)多孔質基材を用意し、(b)所望により、この多孔質基材に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、(c)多孔質基材に水熱処理を施してLDH膜を形成させることにより、好ましく製造することができる。
(a)多孔質基材の用意
多孔質基材は、前述したとおりであり、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))、及びその組合せである。これらの多孔質セラミックスを用いるとLDH膜の緻密性を向上しやすい傾向がある。セラミックス材料製の多孔質基材を用いる場合、超音波洗浄、イオン交換水での洗浄等を多孔質基材に施すのが好ましい。
上述のとおり、多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。セラミックス材料製の多孔質基材は、市販品であってもよいし、公知の手法に従って作製したものであってもよく、特に限定されない。例えば、セラミックス粉末(例えばジルコニア粉末、ベーマイト粉末、チタニア粉末等)、メチルセルロース、及びイオン交換水を所望の配合比で混練し、得られた混練物を押出成形に付し、得られた成形体を70〜200℃で10〜40時間乾燥した後、900〜1300℃で1〜5時間焼成することによりセラミックス材料製の多孔質基材を作製することができる。メチルセルロースの配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、1〜20重量部とするのが好ましい。また、イオン交換水の配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、10〜100重量部とするのが好ましい。
(b)起点物質の付着
所望により、多孔質基材に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させてもよい。このように起点物質を多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。このような起点の好ましい例としては、LDHの層間に入りうる陰イオンを与える化学種、LDHの構成要素となりうる陽イオンを与える化学種、又はLDHが挙げられる。
(i)陰イオンを与える化学種
LDHの結晶成長の起点は、LDHの層間に入りうる陰イオンを与える化学種であることができる。このような陰イオンの例としては、CO 2−、OH、SO 、SO 2−、SO 2−、NO 、Cl、Br、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。したがって、このような起点を与えうる起点物質を、起点物質の種類に応じた適切な手法で均一に多孔質基材の表面に付着させればよい。表面に陰イオンを与える化学種が付与されることで、Mg2+、Al3+等の金属陽イオンが多孔質基材の表面に吸着してLDHの核が生成しうる。このため、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質基材の表面にポリマーを付着させた後、このポリマーに陰イオンを与える化学種を導入することにより行うことができる。この態様においては、陰イオンはSO 、SO 2−及び/又はSO 2−であるのが好ましく、このような陰イオンを与える化学種のポリマーへの導入がスルホン化処理により行われるのが好ましい。使用可能なポリマーはアニオン化(特にスルホン化)可能なポリマーであり、そのようなポリマーの例として、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。特に、芳香族系ポリマーがアニオン化(特にスルホン化)しやすい点で好ましく、そのような芳香族系ポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。最も好ましいポリマーはポリスチレンである。多孔質基材へのポリマーの付着は、ポリマーを溶解させた溶液(以下、ポリマー溶液という)を多孔質基材の表面(好ましくは多孔質基材の板状概形の最表面を構成する粒子)に塗布することにより行われるのが好ましい。ポリマー溶液は、例えば、ポリマー固形物(例えばポリスチレン基板)を有機溶媒(例えばキシレン溶液)に溶解することにより容易に作製することができる。ポリマー溶液は多孔質基材の内部にまで浸透させないようにするのが、均一な塗布を実現しやすい点で好ましい。この点、ポリマー溶液の付着ないし塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。一方、スルホン化処理は、ポリマーを付着させた多孔質基材を、硫酸
(例えば濃硫酸)、発煙硫酸、クロロスルホン酸、無水硫酸等のスルホン化可能な酸に浸漬すればよく、他のスルホン化技術を用いてもよい。スルホン化可能な酸への浸漬は室温又は高温(例えば50〜150℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜14日間である。
本発明の別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、陰イオンを与える化学種を親水基として含む界面活性剤で多孔質基材の表面を処理することにより行うことができる。この場合、陰イオンがSO 、SO 2−及び/又はSO 2−であるのが好ましい。そのような界面活性剤の典型的な例として、陰イオン界面活性剤が挙げられる。陰イオン界面活性剤の好ましい例としては、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。スルホン酸型陰イオン界面活性剤の例としては、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルキル2Na、ポリスチレンスルホン酸Na、ジオクチルスルホコハク酸Na、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。硫酸エステル型陰イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルNaが挙げられる。多孔質基材の界面活性剤での処理は、多孔質基材の表面に界面活性剤を付着させることができる手法であれば特に限定されず、界面活性剤を含む溶液を多孔質基材に塗布する、又は界面活性剤を含む溶液に多孔質基材を浸漬することにより行えばよい。界面活性剤を含む溶液への多孔質基材の浸漬は、溶液を撹拌しながら室温又は高温(例えば40〜80℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜7日間である。
(ii)陽イオンを与える化学種
LDHの結晶成長の起点は、層状複水酸化物の構成要素となりうる陽イオンを与える化学種であることができる。このような陽イオンの好ましい例としては、Al3+が挙げられる。この場合、起点物質が、アルミニウムの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物及びヒドロキシ錯体からなる群から選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物であるのが好ましい。したがって、このような起点を与えうる起点物質を起点物質の種類に応じた適切な手法で均一に多孔質部材の表面に付着させればよい。表面に陽イオンを与える化学種が付与されることで、LDHの層間に入りうる陰イオンが多孔質基材の表面に吸着してLDHの核が生成しうる。このため、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質部材にアルミニウム化合物を含むゾルを塗布することにより行うことができる。この場合、好ましいアルミニウム化合物の例として、ベーマイト(AlOOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、及び非晶質アルミナが挙げられるが、ベーマイトが最も好ましい。アルミニウム化合物を含むゾルの塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。
本発明の別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、少なくともアルミニウムを含む水溶液中で、多孔質基材に水熱処理を施して多孔質基材の表面にアルミニウム化合物を形成させることにより行うことができる。多孔質基材の表面に形成させるアルミニウム化合物は好ましくはAl(OH)である。特に、多孔質基材(特にセラミックス製多孔質基材)上のLDH膜は成長初期段階で結晶質及び/又は非晶質Al(OH)が生成する傾向があり、これを核としてLDHが成長しうる。そこで、このAl(OH)を予め水熱処理により多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、同じく水熱処理を伴う工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。本態様においては、工程(b)及び後続の工程(c)を同一の密閉容器内で連続的に行ってもよいし、工程(b)及び後続の工程(c)をこの順で別々に行ってもよい。
工程(b)及び工程(c)を同一の密閉容器内で連続的に行う場合には、後述する工程
(c)で用いる原料水溶液(すなわちLDHの構成元素を含む水溶液)をそのまま工程(b)に用いることができる。この場合であっても、工程(b)における水熱処理を密閉容器(好ましくはオートクレーブ)中、酸性ないし中性のpH域(好ましくはpH5.5〜7.0)にて50〜70℃という比較的低温域で行うことにより、LDHではなく、Al
(OH)の核形成を促すことができる。また、Al(OH)の核形成後、核形成温度での保持又は昇温により、尿素の加水分解が進むことで原料水溶液のpHが上昇していくため、LDHの成長に適したpH域(好ましくはpH7.0超)で工程(c)にスムーズに移行することができる。
一方、工程(b)及び工程(c)をこの順で別々に行う場合には、工程(b)と工程(c)とで異なる原料水溶液を用いるのが好ましい。例えば、工程(b)では、Al源を主として含む(好ましくは他の金属元素を含まない)原料水溶液を用いてAl(OH)の核形成を行うのが好ましい。この場合、工程(b)における水熱処理を工程(c)とは別の密閉容器(好ましくはオートクレーブ)中、50〜120℃で行えばよい。Al源を主として含む原料水溶液の好ましい例としては、硝酸アルミニウムと尿素を含み、マグネシウム化合物(例えば硝酸マグネシウム)を含まない水溶液が挙げられる。Mgを含まない原料水溶液を用いることでLDHの析出を回避してAl(OH)の核形成を促すことができる。
本発明の更に別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質基材の表面にアルミニウムを蒸着した後に、水溶液中で、該アルミニウムを水熱処理によりアルミニウム化合物に変換することにより行うことができる。このアルミニウム化合物は好ましくはAl
(OH)である。特に、Al(OH)に変換することで、これを核としてLDHの成長を促進させることができる。そこで、このAl(OH)を水熱処理により多孔質基材の表面に均一に形成させた後に、同じく水熱処理を伴う工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。アルミニウムの蒸着は物理蒸着及び化学蒸着のいずれであってもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。また、アルミニウムの変換のための水熱処理に用いる水溶液は、既に蒸着により与えられているAlと反応してAl(OH)を生成可能な組成であればよく、特に限定されない。
(iii)起点としてのLDH
結晶成長の起点は、LDHであることができる。この場合、LDHの核を起点としてLDHの成長を促すことができる。そこで、このLDHの核を多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、LDHを含むゾルを多孔質部材の表面に塗布することにより行うことができる。LDHを含むゾルは、LDHを水等の溶媒に分散させて作製したものであってよく、特に限定されない。この場合、塗布はスピンコートにより行われるのが好ましい。スピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。
本発明の別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質基材の表面にアルミニウムを蒸着した後に、アルミニウム以外のLDHの構成元素を含む水溶液中で、(蒸着された)アルミニウムを水熱処理によりLDHに変換することにより行うことができる。アルミニウムの蒸着は物理蒸着及び化学蒸着のいずれであってもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。また、アルミニウムの変換のための水熱処理に用いる原料水溶液は、既に蒸着により与えられているAl以外の成分を含む水溶液を用いて行えばよい。そのような原料水溶液の好ましい例として、Mg源を主として含む原料水溶液が挙げられ、より好ましくは、硝酸マグネシウムと尿素を含み、アルミニウム化合物(硝酸アルミニウム)を含まない水溶液が挙げられる。Mg源を含むことで、既に蒸着により与えられているAlとともにLDHの核を形成することができる。
(c)水熱処理
LDHの構成元素を含む原料水溶液中で、多孔質基材(所望により起点物質が付着されうる)に水熱処理を施して、LDH膜を多孔質基材の表面に形成させる。好ましい原料水溶液は、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を所定の合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる。尿素が存在することで尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し(例えばpH7.0超、好ましくは7.0を超え8.5以下)、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。原料水溶液に含まれるマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度(Mg2++Al3+)は0.20〜0.40mol/Lが好ましく、より好ましくは0.22〜0.38mol/Lであり、さらに好ましくは0.24〜0.36mol/L、特に好ましくは0.26〜0.34mol/Lである。このような範囲内の濃度であると核生成と結晶成長をバランスよく進行させることができ、配向性のみならず緻密性にも優れたLDH膜を得ることが可能となる。すなわち、マグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度が低いと核生成に比べて結晶成長が支配的となり、粒子数が減少して粒子サイズが増大する一方、この合計濃度が高いと結晶成長に比べて核生成が支配的となり、粒子数が増大して粒子サイズが減少するものと考えられる。
好ましくは、原料水溶液に硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムが溶解されており、それにより原料水溶液がマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンに加えて硝酸イオンを含んでなる。そして、この場合、原料水溶液における、尿素の硝酸イオン(NO )に対するモル比(尿素/NO )が、2〜6が好ましく、より好ましくは4〜5である。
多孔質基材は原料水溶液に所望の向きで(例えば水平又は垂直に)浸漬させればよい。多孔質基材を水平に保持する場合は、吊るす、浮かせる、容器の底に接するように多孔質基材を配置すればよく、例えば、容器の底から原料水溶液中に浮かせた状態で多孔質基材を固定としてもよい。多孔質基材を垂直に保持する場合は、容器の底に多孔質基材を垂直に設置できるような冶具を置けばよい。いずれにしても、多孔質基材にLDHを略垂直方向又はそれに近い方向(すなわちLDH板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに)に成長させる構成ないし配置とするのが好ましい。
原料水溶液中で、多孔質基材に水熱処理を施して、LDH膜を多孔質基材の表面に形成させる。この水熱処理は密閉容器(好ましくはオートクレーブ)の中、60〜150℃で行われるのが好ましく、より好ましくは65〜120℃であり、さらに好ましくは65〜100℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。水熱処理の上限温度は多孔質基材
(例えば高分子基材)が熱で変形しない程度の温度を選択すればよい。水熱処理時の昇温速度は特に限定されず、例えば10〜200℃/hであってよいが、好ましくは100〜200℃/hである、より好ましくは100〜150℃/hである。水熱処理の時間はLDH膜の目的とする密度と厚さに応じて適宜決定すればよい。
水熱処理後、密閉容器から多孔質基材を取り出し、イオン交換水で洗浄するのが好ましい。
上記のようにして製造されたLDH膜は、LDH板状粒子が高度に緻密化したものであり、しかも伝導に有利な略垂直方向に配向したものである。すなわち、LDH膜は、典型的には、高度な緻密性に起因して透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない。また、LDH膜を構成するLDHが複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが典型的である。したがって、十分なガスタイト性を有する緻密性を有するLDH膜を亜鉛空気電池等の電池に用いた場合、発電性能の向上が見込めると共に、従来適用できなかった電解液を用いる亜鉛空気電池の二次電池化の大きな障壁となっている亜鉛デンドライト進展阻止及び二酸化炭素侵入防止用セパレータ等への新たな適用が期待される。また、同様に亜鉛デンドライト進展が実用化の大きな障壁となっているニッケル亜鉛電池にも適用が期待される。
ところで、上記製造方法により得られるLDH膜は多孔質基材の両面に形成されうる。このため、LDH膜をセパレータとして好適に使用可能な形態とするためには、成膜後に多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削るか、あるいは成膜時に片面にはLDH膜が成膜できないような措置を講ずるのが望ましい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例A1
本例では、多孔質基材上に層状複水酸化物(LDH)膜を形成したLDH含有複合材料試料として試料A1〜A10を以下のようにして作製した。
(1)多孔質基材の作製
ベーマイト(サソール社製、DISPAL 18N4−80)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ベーマイト):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、1150℃で3時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。
得られた多孔質基材について、画像処理を用いた手法により、多孔質基材表面の気孔率を測定したところ、24.6%であった。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して多孔質基材表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われた。なお、図4に多孔質基材表面のSEM画像を示す。
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ約0.1μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
(2)多孔質基材の洗浄
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
(3)ポリスチレンスピンコート及びスルホン化
試料A1〜A6についてのみ、以下の手順により多孔質基材に対してポリスチレンスピンコート及びスルホン化を行った。すなわち、ポリスチレン基板0.6gをキシレン溶液10mlに溶かして、ポリスチレン濃度0.06g/mlのスピンコート液を作製した。得られたスピンコート液0.1mlを多孔質基材上に滴下し、回転数8000rpmでスピンコートにより塗布した。このスピンコートは、滴下と乾燥を含めて200秒間行った。スピンコート液を塗布した多孔質基材を95%硫酸に25℃で4日間浸漬してスルホン化した。
(4)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO =4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(5)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(4)で作製した原料水溶液と上記(3)でスルホン化した多孔質基材(試料A1〜A6)又は上記(2)で洗浄した多孔質基材(試料A7〜A10)を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70〜75℃で168〜504時間水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜の形成を行った。このとき、水熱処理の条件を適宜変更することにより、様々な緻密性を有する10種類の配向膜を作製した。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.0〜2.0μmであった。こうして、LDH含有複合材料試料(以下、複合材料試料という)として試料A1〜A10を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとしての形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
例A2:膜試料の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料の結晶相を測定してXRDプロファイルを得る。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。その結果、膜試料A1〜A10のいずれも層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。
例A3:He透過測定
He透過性の観点から膜試料A1〜A10の緻密性を評価すべくHe透過試験を以下のとおり行った。まず、図1A及び図1Bに示されるHe透過度測定系10を構築した。He透過度測定系10は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計12及び流量計14(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ16に供給され、この試料ホルダ16に保持された緻密膜18の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
試料ホルダ16は、ガス供給口16a、密閉空間16b及びガス排出口16cを備えた構造を有するものであり、次のようにして組み立てた。まず、緻密膜18の外周に沿って接着剤22を塗布して、中央に開口部を有する治具24(ABS樹脂製)に取り付けた。この治具24の上端及び下端に密封部材26a,26bとしてブチルゴム製のパッキンを配設し、さらに密封部材26a,26bの外側から、フランジからなる開口部を備えた支持部材28a,28b(PTFE製)で挟持した。こうして、緻密膜18、治具24、密封部材26a及び支持部材28aにより密閉空間16bを区画した。なお、緻密膜18は多孔質基材20上に形成された複合材料の形態であるが、緻密膜18側がガス供給口16aに向くように配置した。支持部材28a,28bを、ガス排出口16c以外の部分からHeガスの漏れが生じないように、ネジを用いた締結手段30で互いに堅く締め付けた。こうして組み立てられた試料ホルダ16のガス供給口16aに、継手32を介してガス供給管34を接続した。
次いで、He透過度測定系10にガス供給管34を経てHeガスを供給し、試料ホルダ16内に保持された緻密膜18に透過させた。このとき、圧力計12及び流量計14によりガス供給圧と流量をモニタリングした。Heガスの透過を1〜30分間行った後、He透過度を算出した。He透過度の算出は、単位時間あたりのHeガスの透過量F(cm/min)、Heガス透過時に緻密膜に加わる差圧P(atm)、及びHeガスが透過する膜面積S(cm)を用いて、F/(P×S)の式により算出した。Heガスの透過量F(cm/min)は流量計14から直接読み取った。また、差圧Pは圧力計12から読み取ったゲージ圧を用いた。なお、Heガスは差圧Pが0.05〜0.90atmの範囲内となるように供給された。得られた結果は表1及び図5に示されるとおりであった。
例A4:Zn透過試験
Zn透過性の観点から膜試料A1〜A10の緻密性を評価すべく、Zn透過試験を以下のとおり行った。まず、図2A及び図2Bに示されるZn透過測定装置40を構築した。Zn透過測定装置40は、L字状の開口管で構成される第一槽44にフランジ62aが一体化されたフランジ付き開口管(PTFE製)と、L字状の管で構成される第二槽46にフランジ62bが一体化されたフランジ付き開口管(PTFE製)とをフランジ62a,62bが対向するように配置し、その間に試料ホルダ42を配置し、試料ホルダ42に保持された緻密膜の一方の面から他方の面にZnが透過可能な構成とした。
試料ホルダ42の組み立て及びその装置40への取り付けは、次のようにして行った。まず、緻密膜52の外周に沿って接着剤56を塗布して、中央に開口部を有する治具58(ABS樹脂製)に取り付けた。この治具58の両側に図1Aに示されるように密封部材60a,60bとしてシリコーンゴム製のパッキンを配設し、さらに密封部材60a,60bの外側から、1対のフランジ付き開口管のフランジ62a,62bで挟持した。なお、緻密膜52は多孔質基材54上に形成された複合材料の形態であるが、緻密膜52側が(Znを含有する第一の水溶液48が注入されることになる)第一槽44に向くように配置した。フランジ62a,62bをその間で液漏れが生じないように、ネジを用いた締結手段64で互いに堅く締め付けた。
一方、第一槽44に入れるための第一の水溶液48として、Al(OH)を2.5mol/L、ZnOを0.5mol/Lを溶解させた9mol/LのKOH水溶液を調製した。第一の水溶液のZn濃度C(mol/L)をICP発光分光分析法により測定したところ、表1に示される値であった。また、第二槽46に入れるための第二の水溶液50として、ZnOを溶解させることなく、Al(OH)を2.5mol/Lを溶解させた9mol/LのKOH水溶液を調製した。先に作製した試料ホルダ42が組み込まれた測定装置40において、第一槽44及び第二槽46にそれぞれ第一の水溶液48及び第二の水溶液50を注入し、試料ホルダ42に保持された緻密膜52にZnを透過させた。この状態でZn透過を表1に示される時間tで行った後、第二の水溶液の液量V(ml)を測定し、第二の水溶液50のZn濃度C(mol/L)をICP発光分光分析法により測定した。得られた値を用いてZn透過割合を算出した。Zn透過割合は、Zn透過開始前の第一の水溶液のZn濃度C(mol/L)、Zn透過開始前の第一の水溶液の液量V(ml)、Zn透過終了後の第二の水溶液のZn濃度C(mol/L)、Zn透過終了後の第二の水溶液の液量V(ml)、Znの透過時間t(min)、及びZnが透過する膜面積S(cm)を用いて、(C×V)/(C×V×t×S)の式により算出した。得られた結果は表1及び図5に示されるとおりであった。
例B1〜B5
以下に示される例はHe透過度及びZn透過割合の評価を行った例ではないが、各種多孔質基材上にLDH緻密膜を形成できることを示す参考例である。
例B1
(1)多孔質基材の作製
<試料B1〜B3>
ベーマイト(サソール社製、DISPAL 18N4−80)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ベーマイト):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、表2に示される温度で3時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。焼成後、アルミナ製多孔質基材を2cm×2cm×0.3cmの大きさに加工した。
<試料B4及びB5>
ジルコニア(東ソー社製、TZ−3YS(試料B4の場合)又はTZ−8YS(試料B5の場合))、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ジルコニア):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、表2に示される温度で3時間焼成して、ジルコニア製多孔質基材を得た。焼成後、ジルコニア製多孔質基材を2cm×2cm×0.3cmの大きさに加工した。
得られた多孔質基材について、画像処理を用いた手法により、多孔質基材表面の気孔率を測定したところ、表2に示されるとおりであった。この気孔率の測定は、1)表面微構造を試料B1に対しては電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を、試料B2〜B5に対して走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて所定の加速電圧(試料B1では1kV、試料B2〜B5では10〜20kV)で観察して多孔質基材表面の電子顕微鏡画像(倍率10000倍以上、試料B1の場合は100,000倍)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールの電子顕微鏡画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は多孔質基材表面の試料B1に対して600nm×600nmの領域について、試料B2〜B5に対しては6μm×6μmの領域について行われた。
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ、表2に示されるとおりであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(FE−SEM又はSEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(FE−SEM又はSEM)画像の倍率は試料B1では100,000倍、試料B2〜5では20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、FE−SEM又はSEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
(2)多孔質基材の洗浄
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO =4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)で洗浄した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料B1〜B5という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.5μmであった。こうして、層状複水酸化物含有複合材料試料(以下、複合材料試料B1〜B5という)を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとしての形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
例B2:膜試料の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料B2の結晶相を測定したところ、図6に示されるXRDプロファイルが得られた。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定した。その結果、膜試料B2は層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。なお、図6に示されるXRDプロファイルにおいては、膜試料B2が形成されている多孔質基材を構成するアルミナに起因するピーク(図中で○印が付されたピーク)も併せて観察されている。膜試料B1及びB3〜B5についても同様に層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。
例B3:微構造の観察
膜試料B2の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。得られた膜試料B2の表面微構造のSEM画像(二次電子像)を図7に示す。
また、複合材料試料B2の断面をCP研磨によって研磨して研磨断面を形成し、この研磨断面の微構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。こうして得られた複合材料試料B2の研磨断面微構造のSEM画像を図8に示す。
例B4:気孔率の測定
膜試料B2について、画像処理を用いた手法により、膜の表面の気孔率を測定した。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して膜の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は膜試料表面の6μm×6μmの領域について行われた。その結果、膜の表面の気孔率は19.0%であった。また、この膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出したところ、81.0%であった。
また、膜試料B2について、研磨断面の気孔率についても測定した。この研磨断面の気孔率についても測定は、例B3に示される手順に従い膜の厚み方向における断面研磨面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得したこと以外は、上述の膜表面の気孔率と同様にして行った。この気孔率の測定は膜試料断面の膜部分について行われた。こうして膜試料B2の断面研磨面から算出した気孔率は平均で3.5%(3箇所の断面研磨面の平均値)であり、多孔質基材上でありながら非常に高密度な膜が形成されていることが確認された。
例B5:緻密性判定試験(参考)
膜試料B1〜B5が透水性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図9Aに示されるように、例B1において得られた複合材料試料120(1cm×1cm平方に切り出されたもの)の膜試料側に、中央に0.5cm×0.5cm平方の開口部22aを備えたシリコンゴム122を接着し、得られた積層物を2つのアクリル製容器124,126で挟んで接着した。シリコンゴム122側に配置されるアクリル製容器124は底が抜けており、それによりシリコンゴム122はその開口部122aが開放された状態でアクリル製容器124と接着される。一方、複合材料試料120の多孔質基材側に配置されるアクリル製容器126は底を有しており、その容器126内にはイオン交換水128が入っている。すなわち、組み立て後に上下逆さにすることで、複合材料試料120の多孔質基材側にイオン交換水128が接するように各構成部材が配置されてなる。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定した。図9Bに示されるように組み立て体を上下逆さに配置して25℃で1週間保持した後、総重量を再度測定した。このとき、アクリル製容器124の内側側面に水滴が付着している場合には、その水滴を拭き取った。そして、試験前後の総重量の差を算出することにより緻密度を判定した。その結果、25℃で1週間保持した後においても、イオン交換水の重量に変化は見られなかった。このことから、膜試料B1〜B5(すなわち機能膜)はいずれも透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
10 He透過度測定系
12 圧力計
14 流量計
16 試料ホルダ
16a ガス供給口
16b 密閉空間
16c ガス排出口
18 緻密膜
20 多孔質基材
22 接着剤
24 治具
26a,26b 密封部材
28a,28b 支持部材
30 締結手段
32 継手
34 ガス供給管
40 Zn透過測定装置
42 試料ホルダ
44 第一槽
46 第二槽
48 第一の水溶液
50 第二の水溶液
52 緻密膜
54 多孔質基材
56 接着剤
58 治具
60a,60b 密封部材
62a,62b フランジ
64 締結手段

Claims (16)

  1. 水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する方法であって、
    水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にHeガスを供給して前記緻密膜にHeガスを透過させる工程と、
    単位時間あたりの前記Heガスの透過量F、前記Heガス透過時に前記緻密膜に加わる差圧P、及び前記Heガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式によりHe透過度を算出し、該He透過度に基づいて前記緻密膜の緻密性を評価する工程と、
    前記He透過度が10cm/min・atm以下である緻密膜を二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に適したものとして認定し、該認定された緻密膜を二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に供する工程と、
    を含む、方法。
  2. 前記差圧Pが0.001〜10atmの範囲内となるようにHeガスが供給される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法が、前記Heガスの供給に先立ち、前記緻密膜を試料ホルダに保持する工程をさらに有し、前記試料ホルダが、
    前記Heガスの試料ホルダ内への導入を可能とするガス供給口と、
    前記緻密膜の前記一方の面の所定領域への前記Heガスの供給を可能とする密閉空間と、
    前記緻密膜を透過したHeガスの排出を可能とするガス排出口と、
    を備えてなる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記He透過度が1.0cm/min・atm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記認定された緻密膜は、水接触下で評価した場合における単位面積あたりのZn透過割合が10m−2・h−1以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記Zn透過割合が1.0m−2・h−1以下である、請求項に記載の方法。
  7. 前記緻密膜が、水酸化物イオン伝導性を有する無機材料及び/又は有機材料を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記水酸化物イオン伝導性を有する無機材料が、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)で表される層状複水酸化物を含んでなる、請求項に記載の方法。
  9. 前記一般式において、少なくともM2+にMg2+を、M3+にAl3+を含み、An−にOH及び/又はCO 2−を含む、請求項に記載の方法。
  10. 前記層状複水酸化物が複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が前記緻密膜と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなる、請求項又はに記載の方法。
  11. 前記緻密膜が、100μm以下の厚さを有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記緻密膜が、多孔質基材の少なくとも一方の表面に設けられた複合材料の形態で用意される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記多孔質基材が、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記多孔質基材が、セラミックス材料で構成され、該セラミックス材料が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記多孔質基材が、0.001〜1.5μmの平均気孔径を有する、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記多孔質基材の表面が、10〜60%の気孔率を有する、請求項1215のいずれか一項に記載の方法。
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